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明細書 :水酸アパタイト触媒の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-089619 (P2018-089619A)
公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
発明の名称または考案の名称 水酸アパタイト触媒の製造方法
国際特許分類 B01J  37/18        (2006.01)
B01J  27/185       (2006.01)
B01J  27/18        (2006.01)
B01J  27/199       (2006.01)
C01B  25/45        (2006.01)
C07C  11/06        (2006.01)
C07C   5/333       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 37/18
B01J 27/185 Z
B01J 27/18 Z
B01J 27/199 Z
C01B 25/45
C07C 11/06
C07C 5/333
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2017-229439 (P2017-229439)
出願日 平成29年11月29日(2017.11.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:平成29年11月27日、掲載アドレス:https://drive.google.com/drive/folders/12DpFrAUdGvEOUl3n4IDwR1mUdot7IT9C
優先権出願番号 2016231804
優先日 平成28年11月29日(2016.11.29)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中里 勉
【氏名】久米田 幸徳
【氏名】甲斐 敬美
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H006
4H039
Fターム 4G169AA03
4G169AA08
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC09B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC59B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CB07
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB15
4G169FB20
4G169FB29
4G169FB44
4G169FC07
4G169FC09
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA06
4H006BA35
4H006BA81
4H039CA29
4H039CC10
要約 【課題】より高い触媒活性を有する水酸アパタイト触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】水酸アパタイト触媒の製造方法は、水酸アパタイト含有物を熟成させる熟成ステップと、該水酸アパタイト含有物を加熱する加熱ステップと、を含む。当該加熱ステップでは、還元雰囲気又は酸化雰囲気の反応器1内で、水酸アパタイト含有物を加熱する、こととしてもよい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水酸アパタイト含有物を熟成させる熟成ステップと、
前記水酸アパタイト含有物を加熱する加熱ステップと、
を含む水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項2】
前記加熱ステップでは、
還元雰囲気又は酸化雰囲気の反応器内で、前記水酸アパタイト含有物を加熱する、
請求項1に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項3】
前記加熱ステップでは、
前記反応器内で流動化させた媒体粒子の流動層で前記水酸アパタイト含有物を加熱する、
請求項2に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項4】
前記加熱ステップでは、
還元雰囲気の前記反応器内で、前記媒体粒子を水素ガス及び窒素ガスの混合ガスで流動化させる、
請求項3に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項5】
前記加熱ステップでは、
酸化雰囲気の前記反応器内で、前記媒体粒子を空気で流動化させる、
請求項3に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項6】
前記加熱ステップでは、
前記水酸アパタイト含有物を600~800℃に加熱する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項7】
前記熟成ステップでは、
水酸アパタイト含有物のpHをアルカリ性に調整してから熟成させる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
【請求項8】
前記水酸アパタイト含有物は、
コバルト及びバナジウムの少なくとも一方を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の水酸アパタイト触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸アパタイト触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン(「プロペン」ともいう)等の低級オレフィンは、基礎化学原料として重要である。低級オレフィンは、ナフサを熱分解することで製造されてきた。石油の枯渇問題もあり、ナフサの原料である原油の供給力は低下しつつある。そこで、低級オレフィンの合成において、パラフィン脱水素法が注目されている。
【0003】
例えば、プロピレンは、比較的安価なプロパンの脱水素反応により得ることができる。脱水素反応は大きな吸熱反応である。したがって、高温ほどプロピレンの合成に有利である。しかし、高温で反応を行うと触媒上に炭素質が析出し、急速に触媒活性が低下してしまう。そのため、発熱反応であり、炭素質の析出がない酸化脱水素反応を利用するプロピレンの製造方法の開発が極めて重要である。
【0004】
酸化脱水素反応を効率よく進めるためには触媒が必要である。主要な触媒として、バナジウム、ニッケル、クロム及びモリブデンといった金属の酸化物が利用されている。また、水酸アパタイト(HAp)又は金属を担持させた水酸アパタイトを触媒として用いたプロピレンの合成も報告されてきている。
【0005】
例えば、非特許文献1では、鉄担持水酸アパタイトを触媒としたプロパンの酸化脱水素反応について検討されている。非特許文献1では、0.5重量%の鉄を担持する水酸アパタイトが最も高いプロピレンの収率(5.5%)を示し、鉄の含有量が多くなるとプロパンの反応率及びプロピレンの収率が減少することが報告されている。さらに、非特許文献1では、鉄を担持させない水酸アパタイトでは、触媒活性が極めて低く、プロピレンの収率は1%にも満たなかったことが示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Mariam Khachani、外6名、「Iron-calcium-hydroxyapatite catalysts:Iron speciation and comparative performances in butan-2-ol conversion and propane oxidative dehydrogenation」、2010年、Applied Catalysis A:General、388、p.113-123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に開示された鉄担持水酸アパタイトでは、プロピレンの収率が十分とは言い難い。また、当該鉄担持水酸アパタイトでは、鉄によって燃焼が促進されるため、反応において生成する二酸化炭素及び一酸化炭素が増加する。このため、結果的にはプロピレンの選択率が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より高い触媒活性を有する水酸アパタイト触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に係る水酸アパタイト触媒の製造方法は、
水酸アパタイト含有物を熟成させる熟成ステップと、
前記水酸アパタイト含有物を加熱する加熱ステップと、
を含む。
【0010】
この場合、前記加熱ステップでは、
還元雰囲気又は酸化雰囲気の反応器内で、前記水酸アパタイト含有物を加熱する、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記加熱ステップでは、
前記反応器内で流動化させた媒体粒子の流動層で前記水酸アパタイト含有物を加熱する、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記加熱ステップでは、
還元雰囲気の前記反応器内で、前記媒体粒子を水素ガス及び窒素ガスの混合ガスで流動化させる、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記加熱ステップでは、
酸化雰囲気の前記反応器内で、前記媒体粒子を空気で流動化させる、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記加熱ステップでは、
前記水酸アパタイト含有物を600~800℃に加熱する、
こととしてもよい。
【0015】
前記熟成ステップでは、
水酸アパタイト含有物のpHをアルカリ性に調整してから熟成させる、
こととしてもよい。
【0016】
前記水酸アパタイト含有物は、
コバルト及びバナジウムの少なくとも一方を含む、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より高い触媒活性を有する水酸アパタイト触媒が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に係る製造装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る別の製造装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態2に係る製造装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態3に係る製造装置の構成を示す図である。
【図5】還元雰囲気下の熱処理で得られた鉄含有水酸アパタイト触媒を用いたプロパン酸化脱水素反応のプロピレンの収率を示す図である。
【図6】還元雰囲気下の流動層滴下熱処理で得られた水酸アパタイト触媒のプロパン酸化脱水素反応における触媒活性を示す図である。(A)は、600℃の熱処理で得られた水酸アパタイト触媒に係るプロパンの反応率、プロピレンの選択率及びプロピレンの収率を示す図である。(B)は、700℃の熱処理で得られた水酸アパタイト触媒に係るプロパンの反応率、プロピレンの選択率及びプロピレンの収率を示す図である。(C)は、800℃の熱処理で得られた水酸アパタイト触媒に係るプロパンの反応率、プロピレンの選択率及びプロピレンの収率を示す図である。
【図7】700℃の電気炉熱処理の雰囲気ガスの還元性が水酸アパタイト触媒のプロパン酸化脱水素反応における触媒活性に与える影響を示す図である。(A)は、プロパンの反応率を示す図である。(B)は、プロピレンの選択率を示す図である。(C)は、プロピレンの収率を示す図である。
【図8】600℃の還元雰囲気下又は酸化雰囲気下の流動層滴下熱処理で得られた水酸アパタイト触媒について、プロパンと酸素のモル比が1:0.5の反応ガスに対するプロパン酸化脱水素反応における触媒活性を示す図である。
【図9】600℃の還元雰囲気下又は酸化雰囲気下の流動層滴下熱処理で得られた水酸アパタイト触媒について、プロパンと酸素のモル比が1:1の反応ガスに対するプロパン酸化脱水素反応における触媒活性を示す図である。
【図10】600℃の酸化雰囲気下の電気炉熱処理で得られた水酸アパタイト触媒について、プロパンと酸素のモル比が1:1の反応ガスに対するプロパン酸化脱水素反応における触媒活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態および図面によって限定されるものではない。

【0020】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法について説明する。該水酸アパタイト触媒の製造方法は、水酸アパタイト含有物を熟成させる熟成ステップと、水酸アパタイト含有物を加熱する加熱ステップと、を含む。

【0021】
熟成ステップについて説明する。熟成ステップで熟成させる水酸アパタイト含有物の態様は、特に限定されず、混合調製された溶液、懸濁液又はスラリーであってもよい。例えば、水酸アパタイト含有物は、溶液法(湿式法)で調製される。溶液法では、アルカリ性又は中性の水溶液中でカルシウム源とリン源とを反応させることで水酸アパタイトが得られる。カルシウム源としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、卵殻粉末及びホタテ貝殻粉末等が挙げられる。リン源としては、リン酸、リン酸塩水溶液及びリン酸水素二アンモニウム水溶液等が挙げられる。具体的には、水酸化カルシウムの懸濁液に、リン酸水溶液を滴下し撹拌すれば、次式に示すように、水酸アパタイトが生成する。
10Ca(OH)+6HPO→Ca10(PO(OH)+18H

【0022】
例えば、上記の溶液法を採用した場合、熟成ステップでは、得られたスラリーを、加熱還流装置を用いて、80~120℃、好ましくは90~110℃、特に好ましくは100℃の温度下で、100~500rpm、好ましくは200~400rpmで攪拌することで熟成できる。攪拌時間は適宜設定されるが、例えば0.5~5時間、好ましくは1~2時間である。

【0023】
好適には、熟成ステップでは、水酸アパタイト含有物のpHをアルカリ性に調整してから水酸アパタイト含有物を熟成させる。水酸アパタイト含有物のpHは、例えば7.5以上、好ましくは8又は9である。水酸アパタイト含有物のpHは、公知の方法、例えばアンモニア水等で調整される。

【0024】
上記の水酸アパタイト含有物は、カルシウム源由来のカルシウム(Ca)とは異なる金属、例えばコバルト(Co)、バナジウム(V)及びモリブデン(Mo)の少なくとも1種の金属を含んでもよい。好ましくは、水酸アパタイト含有物は、コバルト及びバナジウムの少なくとも一方を含む。水酸アパタイト含有物中の金属Mの量は、特に限定されず、例えば、水酸アパタイト含有物中のカルシウムに対して、モル比でCa/M=9/0.1~1、9/0.2~0.8、好ましくは9/0.5である。水酸アパタイト含有物が2種の金属M及びMを含む場合、水酸アパタイト含有物中のカルシウムに対して、モル比でCa/M/M=9/0.1~1/0.1~1、9/0.2~0.8/0.2~0.8、好ましくは9/0.5/0.5である。

【0025】
カルシウム源として水酸化カルシウム懸濁液を、リン源としてリン酸水溶液を用いる場合、金属は水酸化カルシウム懸濁液に混合してもよいし、リン酸水溶液に混合してもよい。

【0026】
続いて、加熱ステップについて説明する。加熱ステップでは、還元雰囲気の反応器内で、上記水酸アパタイト含有物を加熱する。当該加熱ステップは、好ましくは、流動層滴下熱処理装置で行われる。流動層滴下熱処理装置は、反応器内において熱風で流動化させた媒体粒子に、反応器の頭頂部から原料を滴下させ熱処理を行い、飛散してくる生成物粉末を回収する装置である。

【0027】
図1に、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法に好適な製造装置100の概略を示す。製造装置100は、反応器1と、媒体粒子2と、ロータメータ3~5と、窒素ガスボンベ6と、水素ガスボンベ7と、分散板8、窒素発生装置9と、コンプレッサ10と、サイクロン回収器11と、電気炉12と、原料容器13と、送液ポンプ14と、コールドトラップ15と、を備える。

【0028】
反応器1の材質は、高温、例えば300℃以上の温度に耐える材質であれば特に限定されない。反応器1は、好ましくは石英ガラス製のカラムである。反応器1の内径、高さ及び形状等は特に限定されず、製造する水酸アパタイト触媒の量等に応じて適宜設定される。

【0029】
反応器1は、流動化する媒体粒子2を保持する。媒体粒子2は、流動化によって反応器1の内部で流動層16を形成する。媒体粒子2は、熱的に安定で、反応不活性で、かつ流動化に伴う媒体粒子2同士の衝突に耐性があれば特に限定されない。媒体粒子2としては、例えばアルミナ及びジルコニア等が例示される。好適には、媒体粒子2はアルミナ粒子である。媒体粒子2の平均粒径は、100~3000μm、好ましくは100~500μmである。反応器1に入れられる媒体粒子2の量は、反応器1における流動層16の高さに応じて適宜決定される。例えば、媒体粒子2は、流動層16の高さが反応器1の頭頂部から底部までの高さの10%~30%になるように、反応器1に入れられる。

【0030】
反応器1内は、還元雰囲気に維持される。還元雰囲気とは、酸素がなく、かつ水素(H)、一酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、二酸化硫黄(SO)及びホルムアルデヒド(CHO)等の少なくとも1種で満たされた環境をいう。例えば、製造装置100では、媒体粒子2を水素ガス及び窒素ガスの混合ガスで流動化させる。

【0031】
より詳細には、ロータメータ3で流量制御されながら窒素ガスボンベ6から供給される窒素ガスと、ロータメータ4で流量制御されながら水素ガスボンベ7から供給される水素ガスとを混合した混合ガスが反応器1の底部から反応器1の内部に主ガスとして供給される。供給された主ガスを反応器1内で分散させるために、反応器1は、分散板8を備える。分散板8は、例えば石英焼結板である。分散板8は、反応器1の底部から供給された主ガスを分散させ、媒体粒子2が流動化する。当該主ガスにおける窒素ガスと水素ガスとの体積比は、任意であるが、好ましくは4:1である。主ガスの供給速度は媒体粒子2の密度によって異なる。例えば、主ガスの供給速度は、空塔基準ガス速度が任意の値になるように調整される。空塔基準ガス速度は、例えば、最小流動化速度の10倍、具体的には0.2~1.0m/秒、好ましくは、0.3~0.8m/秒である。

【0032】
さらに、コンプレッサ10によって供給される空気を原料として窒素発生装置9で発生する窒素ガスが反応器1の頭頂部付近から反応器1の内部に補助ガスとして供給される。補助ガスは、サイクロン回収器11へ生成物が向かいやすくするためのガスである。補助ガスによって、媒体粒子2から離脱した水酸アパタイト触媒粒子を流動層16から取り出すことができる。補助ガスの空塔基準ガス速度は、0.1~0.5m/秒、好ましくは、0.1~0.3m/秒である。

【0033】
反応器1内の温度及び流動層16内の温度は、電気炉12によって制御される。電気炉12は、流動層16内の温度を、例えば500~900℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは600℃又は700℃に制御する。

【0034】
原料容器13に保持された原料17は、流動層16内の温度が所定温度になり次第、送液ポンプ14を介して反応器1内に滴下される。原料17は、上述の水酸アパタイト含有物である。流動層16への原料17の供給速度は適宜調整される。例えば、反応器1の内径が30~50mm、高さが0.5~0.8mの場合、原料17の供給速度は、例えば、50~200mL/時間又は80~120mL/時間である。

【0035】
滴下された原料17は、還元雰囲気の反応器1の流動層16内で加熱される。媒体粒子2の広い表面積によって、原料17の水分が蒸発し、前駆体が析出し、熱分解及び生成物の熱処理が効率的に行われる。この結果、粉体の水酸アパタイト触媒が生成する。

【0036】
粉体は、サイクロン回収器11で回収する。サイクロン回収器11は、例えばリボンヒータによって加熱されるサイクロンを備える。例えば、サイクロンは、110~350℃の温度に制御され、サイクロンの壁面に水蒸気が付着するのを防ぐことができる。これにより、良質の生成物微粒子を得ることができる。出口ガスは水分を含むため、出口ガスを氷冷するコールドトラップ15で水分を凝縮させた後に外気へ排出される。

【0037】
下記実施例4に示すように、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒をプロパンの酸化脱水素反応の触媒として用いた場合、プロパンの反応率及びプロピレンの選択率が高く、従来よりも一桁以上も高いプロピレンの収率が得られる。しかも、当該水酸アパタイト触媒は、上記の非特許文献1において触媒活性が極めて低かった鉄を担持していない場合でも、高い触媒活性を有する。

【0038】
また、本実施の形態では、加熱ステップにおいて、反応器1内で流動化させた媒体粒子2の流動層16で原料17を加熱するようにした。これにより、微粉末状の水酸アパタイト触媒を迅速脱水しながら効率よく還元雰囲気で熱処理することができる。このため、懸濁液の状態の水酸アパタイト含有物の脱水、乾燥及び粉砕後にさらに熱処理及び粉砕を行う等の多くの工程を経る通常の製法よりも、水酸アパタイト触媒を簡便に得ることができる。

【0039】
なお、上記の水酸アパタイト含有物は、コバルト、バナジウム及びモリブデンの少なくとも1種の金属を含んでもよいこととした。これにより、合成される水酸アパタイト触媒は、これらの金属を含有し、担持し、又はこれらの金属と複合化される。下記実施例6に示すように、これら金属を含有する水酸アパタイト触媒は、プロパンの酸化脱水素反応において高い触媒活性を有する。

【0040】
また、反応器1は、ガス分散のための分散板8を備えなくてもよい。この場合、反応器1の底部を円錐型とし、主ガスの入口を単孔ノズル型にすればよい。

【0041】
なお、別の実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法では、媒体粒子2を流動化させた流動層16を加熱する加熱ステップと、水酸アパタイト含有物を流動層16に供給する供給ステップと、媒体粒子2との接触によって水酸アパタイト含有物を乾燥して水酸アパタイトを生成する生成ステップと、水酸アパタイトを回収する回収ステップと、を含む。

【0042】
また、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法では、図1に示す製造装置100に代えて、図2に示す製造装置110を使用してもよい。以下では、製造装置110に関して、製造装置100と異なる点を主に説明する。

【0043】
製造装置110は、三方コック18と、四方コック19と、をさらに備える。三方コック18は、窒素発生装置9からの窒素ガスを流量制御しながら主ガス及び補助ガス各々に供給する。四方コック19は、三方コック18及びロータメータ5を介して窒素発生装置9に接続している。また、四方コック19は、ロータメータ4を介して水素ガスボンベ7に接続している。四方コック19は、三方コック18を介して供給される窒素ガスを排気し、水素ガスボンベ7から供給される水素ガスを主ガスに供給する状態と、水素ガスボンベ7から供給される水素ガスを排気し、三方コック18を介して供給される窒素ガスを主ガスに供給する状態とを切り替えることができる。これにより、製造装置110では、窒素発生装置9からの窒素ガスを、流動層16内の温度が一定温度に達するまで主ガスとして利用し、原料17を反応器1内に滴下する前に、主ガスを窒素ガスボンベ6から供給される窒素ガスに切り替えることができる。

【0044】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法は、還元雰囲気の反応器内で、熟成ステップで熟成させた水酸アパタイト含有物を加熱する加熱ステップ、を含む。

【0045】
水酸アパタイト含有物は、例えば、懸濁液の状態から脱水、乾燥及び粉砕された水酸アパタイトである。水酸アパタイト含有物は金属を含んでもよい。この場合、金属は、水酸アパタイトの主に表面に担持されてもよいし、複合化されてもよい。好ましくは、水酸アパタイト含有物が金属を含む場合、金属の含有量は、鉄の場合、0.5重量%以下である。金属がコバルト、バナジウム又はモリブデンの場合、金属の含有量は8重量%以下、好ましくは7.9又は7.8重量%以下である。

【0046】
水酸アパタイト含有物は、市販のものを利用してもよいし、公知の方法で合成してもよい。水酸アパタイトの製造方法としては、溶液法、固相法(乾式法)水熱法、アルコキシド法、フラックス法(融剤法)、噴霧熱分解法及び流動層滴下熱分解法等が挙げられる。

【0047】
上記加熱ステップに好適な製造装置200を例に、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法について、上記実施の形態1と異なる点について主に説明する。図3は、製造装置200の概略を示す。製造装置200は、反応器21と、電気炉22と、温度コントローラ23と、導線24と、熱電対25、26と、水素ガスボンベ27と、マスフローコントローラ28と、燃焼ボート29と、温度記録計30と、を備える。

【0048】
反応器21は、好ましくは外熱加熱式の石英反応管である。反応器21の内径は、反応器21の内径、長さ及び形状等は特に限定されず、例えば、内径が20~50mm、長さが700~1000mmである。

【0049】
反応器21の温度は、電気炉22を介して温度コントローラ23によって制御される。詳細には、温度コントローラ23は、導線24を介して電気炉22を加熱するとともに、熱電対25を介して電気炉22の温度を監視し、電気炉22に供給される電力を制御することで、反応器21の温度を制御する。これにより、反応器21の温度は、例えば500~900℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは700℃に制御される。

【0050】
反応器21には、内部を還元雰囲気にするために、水素ガスボンベ27からマスフローコントローラ28を介して水素ガスが継続的に供給される。反応器21に供給される水素ガスの流量は、マスフローコントローラ28によって任意に制御される。水素ガスの流量は、例えば、80~200mL/分、好ましくは100~150mL/分である。

【0051】
製造装置200によって、反応器21内に置かれた燃焼ボート29に保持された水酸アパタイト含有物は、還元雰囲気で加熱される。水酸アパタイト含有物を加熱する時間は、例えば、水酸アパタイト含有物の量等に応じて設定されるが、0.5~5時間、0.5~3時間又は0.5~1.5時間である。燃焼ボート29の温度は、熱電対26を介して接続された温度記録計30に記録される。

【0052】
下記実施例5に示すように、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒をプロパンの酸化脱水素反応の触媒として用いた場合、酸化雰囲気で加熱した水酸アパタイト触媒よりも高いプロピレンの収率が得られる。

【0053】
なお、本実施の形態では、加熱ステップにおいて、還元雰囲気の反応器内で水酸アパタイト含有物を加熱したが、酸化雰囲気の容器内で水酸アパタイト含有物を加熱してもよい。この場合、反応器21に水素ガスの代わりに空気を供給すればよい。

【0054】
(実施の形態3)
実施の形態3について説明する。本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法は、加熱ステップが、上記実施の形態1と異なる。以下では、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法について、実施の形態1と異なる点を主に説明する。

【0055】
本実施の形態における加熱ステップでは、酸化雰囲気の反応器内で、上記水酸アパタイト含有物を加熱する。好適には、加熱ステップでは、酸化雰囲気の反応器内で、媒体粒子を空気で流動化させる。

【0056】
図4に、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法に好適な製造装置300の概略を示す。製造装置300は、上記の製造装置110の構成に加え、レギュレータ31と、三方コック32と、コック33と、さらに備える。レギュレータ31は、コンプレッサ10から供給される空気を、流量制御によって窒素発生装置9を介さずに三方コック32へ供給できる。このとき、三方コック32を切り替えることで、空気を補助ガスとして反応器1内に供給することができる。また、レギュレータ31による空気の圧力制御によって空気がコック33に供給される。コック33を通った空気は、ロータメータ3を介して流量制御され、主ガスとして反応器1に供給される。

【0057】
これにより、製造装置300は、酸化雰囲気の反応器内で、上記水酸アパタイト含有物を加熱することができる。また、製造装置300は、レギュレータ31、三方コック18、四方コック19を適宜切り替えることで、水素ガス及び窒素ガスの混合ガスを主ガス及び補助ガスとして反応器1に供給することができる。

【0058】
本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法では、酸化雰囲気の反応器内で、水酸アパタイト含有物を加熱することとした。当該製造方法で製造された水酸アパタイト触媒は、下記実施例6に示すように、プロパンの酸化脱水素反応において、高い触媒活性を有し、高いプロピレンの収率が得られる。特に、本実施の形態に係る水酸アパタイト触媒の製造方法によれば、金属を含まない水酸アパタイト触媒でも、コバルト又はバナジウムを複合化した触媒に匹敵するプロピレンの収率が得られる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
(実施例1:流動層滴下熱処理装置による還元雰囲気での鉄含有水酸アパタイト触媒の合成)
まず、流動層滴下熱処理装置を用いた水酸アパタイト触媒の合成方法を説明する。水酸アパタイトのカルシウム源として試薬の酸化カルシウム(関東化学社製、高純度試薬)、リン源としてリン酸(和光純薬工業社製、特級、85.0%mass/mass)を用いた。
【実施例】
【0061】
蒸留水を100mL入れたビーカーをパラフィルムで覆い、窒素ボンベでビーカー内の蒸留水に窒素を吹き込んだ。ビーカーに2.8gの酸化カルシウムを入れ、撹拌子とスターラを用いて、300rpmで1時間撹拌することで0.5mol/L水酸化カルシウム懸濁液を得た。
【実施例】
【0062】
次に別のビーカーに、リン酸を3.459g入れ、60mLの蒸留水で希釈した。生成物の鉄含有量が0.5重量%、1.5重量%又は3.0重量%になるように、それぞれ0.1804g、0.5411g又は1.0821gの硝酸鉄(III)九水和物(関東化学社製、特級、99.0%)を加え、かき混ぜて溶かした。この溶液60mLを、上記の水酸化カルシウム懸濁液100mLにチューブポンプを用いて2mL/分の速度で滴下し、カルシウムとリンとのモル比が1.67になるように撹拌混合した。
【実施例】
【0063】
滴下終了後、アンモニア水(関東化学社製、特級、1mol/L)を用いて、スラリーのpHを9に調整した。化学量論的な水酸アパタイトを合成するために熟成する必要があるため、加熱還流装置を用いて攪拌速度300rpm、100℃でスラリーを1時間熟成した。加熱還流装置では、共通すり合わせジムロート冷却器TS14/23を接続した2口丸底フラスコ(500mL、φ105)を、アルミブロック(丸底フラスコ500mL用、φ105、BBS-105RB、EYELA 東京理化器械社製)に設置し、ホットプレート付マグネチックスターラー(RCH-20L、EYELA 東京理化器械社製)で加熱した。冷却水の供給には、低温恒温水槽(LTB-125、アズワン社製)を用いた。
【実施例】
【0064】
図1に示す製造装置100と同様の構成の流動層滴下熱処理装置で上記のスラリーを熱処理した。反応器は石英ガラス製で、直径0.040m、分散板から頭頂部までの高さが0.70mのものを使用した。また、ガス配管はSUS316ステンレス1/4インチ管(内径4.25mm、外径6.25mm)を使用し、反応管の枝管のボールジョイントと接続の際には途中でシリコンチューブ接続に切り替えた。
【実施例】
【0065】
反応管内に媒体粒子として、直径300μmのアルミナボールを層高0.1m(283.65g)まで入れ、補助ガス(窒素)を反応管上部より供給しながら、主ガス(体積比でHが20%、Nが80%、すなわち20%H/N)で媒体粒子を流動化させた。流動層内温度が所定の条件温度(600℃、700℃又は800℃)になるよう電気炉を調節し、条件温度になり次第、原料(上記のスラリー90gに蒸留水250mLを加えて3倍に希釈したもの)を100mL/時間で、3時間かけて流動層に滴下した。滴下されたスラリーは、流動層内で急速昇温によって瞬時に鉄含有水酸アパタイト触媒の粉体となった。リボンヒータで加熱した円錐状ガラス製サイクロン(サイクロン上部最大内径50mm、接線入口の管内径5mm)で当該粉体を回収した。
【実施例】
【0066】
なお、流動層内温度が600℃、700℃及び800℃の場合に、空塔基準ガス速度がそれぞれ0.584m/秒、0.547m/秒及び0.517m/秒となるように主ガスを供給した。補助ガスの供給速度は、5.0L/分とした。原料の濃度は、1.00g-HAp/100g-HOであった。
【実施例】
【0067】
(実施例2:電気炉を用いた還元雰囲気での熱処理による鉄含有水酸アパタイト触媒の合成)
実施例1と同様の方法で得られた熟成前のスラリーを減圧濾過した。その際、アンモニアイオンを洗い流すため蒸留水を数回かけた。続いて、マッフル炉を用いて、得られた沈殿物を70℃で12時間乾燥させた。乾燥後の原料を180μm未満に粉砕してふるい分けし、鉄含有量が0.5重量%の鉄含有水酸アパタイト粒子を得た。
【実施例】
【0068】
図3に示す製造装置200と同様の構成の製造装置を用いて、鉄含有水酸アパタイト粒子を燃焼ボートに2.0g程度入れ、外熱加熱式の石英反応管(内径25mm、長さ830mm)の中に燃焼ボートを設置した。水素ガスを115mL/分で反応管内に流通させ、還元雰囲気において1時間、鉄含有水酸アパタイト粒子を熱処理することで鉄含有水酸アパタイト触媒を得た。反応管内の温度は、600℃、700℃又は800℃とした。
【実施例】
【0069】
(実施例3:プロパン酸化脱水素(PODH)触媒評価試験)
上記の各条件で調製した鉄含有水酸アパタイト触媒0.2gと石英砂1.0gとを混合し、内径1.5cmの石英ガラス製の反応管に充填した。Arガスのみを56mL/分で反応管に流し、電気炉で反応管を550℃まで昇温させた。1時間保持したところで、いずれも7mL/分でC及びOを追加で反応管に流し、反応ガス(C:O:Ar=1:1:8(体積比))を70mL/分として流通させ、PODH触媒評価試験を開始した。出口ガスを0.1mLサンプリングし、水素炎イオン化型検出器(FID)付ガスクロマトグラフィー(GC-6A、島津製作所製)及びメタナイザー(MTN-1、島津製作所製)でガス分析を行った。同様の操作で出口ガスを30分毎に分析し、プロパンの反応率、プロピレンの選択率及び収率を求めた。
【実施例】
【0070】
ガス分析の条件は、次の通りである。
カラム寸法:内径3mm×長さ2m
充填剤:Shincarbon ST
メタナイザー触媒:Shimalite-Ni
キャリアガス:超高純度窒素
カラム温度:150-250℃
INJ/DET温度:280℃
昇温速度:10℃/分
サンプル量:0.1mL
ガス供給圧力(ガスクロマトグラフィー側):
(FID) 180kPa(250℃)
(メタナイザー) 60kPa
空気:50kPa
【実施例】
【0071】
プロパン酸化脱水素反応後の出口ガス0.1mLを、シリンジを用いて採取し、FID付ガスクロマトグラフィーによって、表1に示す出口ガス中の炭素成分に基づいて、以下のように組成を算出した。
【実施例】
【0072】
【表1】
JP2018089619A_000003t.gif
【実施例】
【0073】
まず、ガスクロマトグラフィーによって算出した各ガス成分の面積値に検量線の傾き(mol/面積)を掛けあわせてサンプルガス中の各成分の生成量(mol)を計算した。すべての成分はプロパンが直接反応して生成したものと仮定し、プロパンの供給量A0(mol)を次式より求めた。
【数1】
JP2018089619A_000004t.gif
【実施例】
【0074】
算出したプロパン供給量A0より反応率X及び各成分の収率Yn(n=1、2、3・・・7)を次の式で求めた。
X=(A0-A7)/A0
Yn=An/A0
【実施例】
【0075】
各成分の選択率Snは、反応率Xと収率Ynより次式で求めた。
Sn=Yn/X
【実施例】
【0076】
(結果)
図5は、流動層滴下熱処理(20%H/N)及び電気炉(100%H)での熱処理で得た鉄含有水酸アパタイト触媒の、PODH触媒評価試験において、反応がほぼ定常状態になった120分後のプロピレンの収率を示す。700℃の流動層滴下熱処理で比較した場合、鉄含有量が小さくなるほど触媒活性が向上していた。また、電気炉での熱処理で得た0.5重量%の鉄含有水酸アパタイト触媒では、700℃でのプロピレンの収率が4.5%になり、比較的高い触媒活性が得られた。
【実施例】
【0077】
(実施例4:流動層滴下熱処理装置で還元雰囲気にて製造した水酸アパタイト触媒のPODH触媒評価試験)
リン酸水溶液に硝酸鉄(III)九水和物を加えずに調製したスラリーを用いて、上記実施例1と同様の方法で鉄を含有しない水酸アパタイト触媒を製造した。製造した水酸アパタイト触媒の触媒活性を実施例3と同様に評価した。
【実施例】
【0078】
(結果)
図6は、PODH触媒評価試験におけるガス流通時間に対するプロパンの反応率、プロピレンの選択率及び収率を示す。図6(A)、図6(B)及び図6(C)は、それぞれ600℃、700℃及び800℃で流動層滴下熱処理した水酸アパタイト触媒の結果を示す。流動層内の温度がいずれの場合でもプロピレンの収率は5%をはるかに超えていた。プロピレンの収率は、700℃の場合に120分で12.6%に、180分では15.0%に達した。
【実施例】
【0079】
(実施例5:電気炉で還元雰囲気にて熱処理した水酸アパタイト触媒のPODH触媒評価試験)
リン酸水溶液に硝酸鉄(III)九水和物を加えずに調製したスラリーを用いて、上記実施例2と同様の方法で鉄を含有しない水酸アパタイト触媒を製造した。本実施例の電気炉による熱処理においては、窒素ガスボンベからのガス供給ラインを2つ設け、一方に水素ボンベからのガス供給ラインを連結し、四方コックを介して水素ガスを任意の濃度で反応管内に供給できるようにした。これにより、反応管に流通させるガスの水素濃度を100%、50%、20%又は0%に調整した。ガス流通量を100mL/分とし、鉄を含有しない水酸アパタイト粒子を1時間熱処理した。反応管内の温度は、700℃とした。
【実施例】
【0080】
実施例3と同様に、当該水酸アパタイト触媒についてPODH触媒評価試験を行った。
【実施例】
【0081】
(結果)
PODH触媒評価試験におけるガス流通時間に対するプロパンの反応率並びにプロピレンの選択率及び収率を、それぞれ図7(A)、図7(B)及び図7(C)に示す。図7(A)に示すように、水素濃度が0%の場合、プロパンの反応率が低かった。図7(B)に示すように、水素濃度が100%の場合、プロピレンの選択率が高かった。図7(C)に示すように、還元雰囲気での熱処理における水素濃度が高いほど、プロピレンの収率が高くなることが示された。水素濃度が100%の場合、鉄を含有しない水酸アパタイト粒子において、上記実施例3で示された0.5重量%の鉄を含有する鉄含有水酸アパタイト触媒のプロピレンの収率4.5%を上回る5.6%が得られた。
【実施例】
【0082】
実施例4において還元雰囲気(20%H/N)かつ熱処理温度700℃の流動層滴下熱処理で得られた水酸アパタイト触媒を触媒Aとする。実施例1において還元雰囲気(20%H/N)かつ熱処理温度700℃の流動層滴下熱処理で得られた0.5重量%の鉄含有水酸アパタイト触媒を触媒Bとする。実施例5において還元雰囲気(100%H)かつ熱処理温度700℃の電気炉で得られた水酸アパタイト触媒を触媒Cとする。実施例2において還元雰囲気(100%H)かつ熱処理温度700℃の電気炉で得られた0.5重量%の鉄含有水酸アパタイト触媒を触媒Dとする。触媒A~Dの製造条件及び触媒活性を表2に示す。
【実施例】
【0083】
【表2】
JP2018089619A_000005t.gif
【実施例】
【0084】
(実施例6:流動層滴下熱処理装置で酸化雰囲気又は還元雰囲気にて製造した金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒のPODH触媒評価試験)
実施例1と同様に、窒素雰囲気下で水酸化カルシウム懸濁液を得た。塩基側から金属を添加する場合及び酸側から金属を添加する場合の2種類の方法で、以下に説明するように水酸アパタイト触媒に金属(Co、V及びMoの少なくとも1種)を含有させた。金属の添加では、金属塩として、硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO・6HO)、酸化モリブデン(VI)(MoO)及び酸化バナジウム(V)を用いた。
【実施例】
【0085】
塩基側から金属Mを添加する場合、上記の水酸化カルシウム懸濁液に各金属Mをモル比Ca/M=9/0.5の割合で添加した。なお、水酸アパタイト触媒に金属を含有させない場合は金属を添加しなかった。これらの懸濁液にCa/Pのモル比が化学量論比である1.67となるよう0.5mol/Lのリン酸水溶液60mLを2mL/分の速度で各々滴下混合した。一方、酸側から金属Mを添加する場合、各金属Mをモル比Ca/M=9/0.5の割合となるように0.5mol/Lリン酸水溶液60mLへ添加した。その後、この溶液を水酸化カルシウム懸濁液へ2mL/分の速度で滴下混合した。なお、2種の金属M及びMを水酸アパタイト触媒に含有させる場合には、モル比Ca/M/M=9/0.5/0.5の割合とした。
【実施例】
【0086】
滴下混合終了後、アンモニア水を加えpHを9程度に上昇させ、100℃で1時間熟成を行った。熟成後のスラリー濃度を1.00g-HAp/100g-HOに希釈し原料を得た。図4に示す製造装置300と同様の構成の流動層滴下熱処理装置において、原料を流動層頭頂部より100mL/時間で3時間かけて滴下供給し、20%H/80%Nのガス又は空気を流動化ガスに用いて熱処理した。流動化ガスとして20%H/80%Nのガスを用いた熱処理を流動層滴下熱還元処理、流動化ガスとして空気を用いた熱処理を流動層滴下熱酸化処理という。飛散してくる触媒粒子を小型サイクロンにより回収した。なお、反応器の構成は実施例1と同じである。
【実施例】
【0087】
合成では、流動層内温度を600℃とし、空塔基準ガス速度が0.584m/秒となるように主ガスを供給した。補助ガスの供給速度は、5.0L/分とした。
【実施例】
【0088】
実施例3と同様に、得られた水酸アパタイト触媒を評価した。調製した触媒0.2gと石英砂1.0gとを混合し、内径1.5cmの石英ガラス製の反応管に充填後、Arガスを56mL/分で流通させながら550℃まで昇温し1時間保持した。次にプロパンと酸素のモル比Y=1の反応ガス(C:O:Ar=1:1:8)70mL/分又はY=0.5の反応ガス(C:O:Ar=1:0.5:8)66.5mL/分を3時間流通させ、この温度でPODH反応試験を行った。実施例3で説明したように反応率、プロピレンの選択率及びプロピレンの収率を求めた。
【実施例】
【0089】
(結果)
図8及び図9は、それぞれプロパンと酸素のモル比Y=0.5及び1.0の場合の各触媒のプロパンの反応率、プロピレンの選択率、及びプロピレンの収率10%と20%の曲線を示したものである。図8、9において、凡例の“-R”は流動化ガスが20%H/80%N(還元雰囲気)であることを示し、“-O”は流動化ガスが空気(酸化雰囲気)であることを示す。また、凡例において金属を示す元素記号に続く(a)は原料調製の際に、当該金属を酸側から添加したことを示し、(b)は当該金属を塩基側から添加したことを示す。
【実施例】
【0090】
図8、9に示すように、金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒は、還元雰囲気及び酸化雰囲気の少なくともいずれかの加熱処理によって、10%前後、高いもので20%を超えるプロピレンの収率を示した。図8に示すY=0.5の場合、金属非含有水酸アパタイト触媒、Co含有水酸アパタイト触媒及びCo-Mo含有水酸アパタイト触媒において、還元雰囲気での加熱処理で合成された触媒よりも、酸化雰囲気での加熱処理で合成された触媒の収率が高かった。一方、Mo含有水酸アパタイト触媒及びCo-V含有水酸アパタイト触媒においては、酸化雰囲気での加熱処理で合成された触媒よりも、還元雰囲気での加熱処理で合成された触媒の収率が高かった。
【実施例】
【0091】
図9に示すY=1.0の場合、金属非含有水酸アパタイト触媒、Co含有水酸アパタイト触媒、V含有水酸アパタイト触媒及びCo-V含有水酸アパタイト触媒において、還元雰囲気での加熱処理で合成された触媒よりも、酸化雰囲気での加熱処理で合成された触媒の収率が高かった。一方、Mo含有水酸アパタイト触媒、Co-Mo含有水酸アパタイト触媒及びV-Mo含有水酸アパタイト触媒においては、酸化雰囲気での加熱処理で合成された触媒よりも、還元雰囲気での加熱処理で合成された触媒の収率が高かった。
【実施例】
【0092】
Y=1.0の場合、金属非含有水酸アパタイト触媒、Co含有水酸アパタイト触媒及びCo-V含有水酸アパタイト触媒は、酸化雰囲気での加熱処理で合成された触媒の収率は20%を超えていた。特に金属非含有水酸アパタイト触媒は、Co又はVあるいはその両方を複合化した触媒に匹敵する収率を示した。
【実施例】
【0093】
(実施例7:電気炉で酸化雰囲気にて製造した金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒のPODH触媒評価試験)
実施例6と同様の方法で得られた、100℃で1時間の熟成後の金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒を、70℃で12時間乾燥させた後、乳鉢で粉砕した。粉砕した金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒をそれぞれ燃焼ボートに1.0g程度入れ、電気炉にて600℃で1時間、酸化雰囲気(空気雰囲気)にて熱処理を行った。その後篩い分けして得られた100μm未満の金属非含有水酸アパタイト触媒及び金属含有水酸アパタイト触媒について、実施例3と同様にPODH触媒評価試験を行った。
【実施例】
【0094】
図10は、各触媒のプロパンの反応率、プロピレンの選択率、及びプロピレンの収率10%と20%の曲線を示したものである。Co-Mo含有水酸アパタイト触媒のみ、実施例6の場合に比べて反応率及び選択率がともに増加し、プロピレンの収率が最も高かった。これ以外の他の触媒では、実施例6の場合に比べて、プロパンの反応率が低下し、プロピレンの選択率が増加又は減少した。
【実施例】
【0095】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0096】
1、21 反応器
2 媒体粒子
3、4、5 ロータメータ
6 窒素ガスボンベ
7、27 水素ガスボンベ
8 分散板
9 窒素発生装置
10 コンプレッサ
11 サイクロン回収器
12、22 電気炉
13 原料容器
14 送液ポンプ
15 コールドトラップ
16 流動層
17 原料
18、32 三方コック
19 四方コック
23 温度コントローラ
24 導線
25、26 熱電対
28 マスフローコントローラ
29 燃焼ボート
30 温度記録計
31 レギュレータ
33 コック
100、110、200、300 製造装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9