TOP > 国内特許検索 > タウタンパク質の凝集抑制剤 > 明細書

明細書 :タウタンパク質の凝集抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-095599 (P2018-095599A)
公開日 平成30年6月21日(2018.6.21)
発明の名称または考案の名称 タウタンパク質の凝集抑制剤
国際特許分類 A61K  31/22        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI A61K 31/22
A61P 25/28 ZNA
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2016-242230 (P2016-242230)
出願日 平成28年12月14日(2016.12.14)
発明者または考案者 【氏名】林田 直樹
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C206
Fターム 4C206AA01
4C206AA02
4C206DB04
4C206DB06
4C206DB56
4C206KA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZC41
要約 【課題】本発明の課題は、神経変性疾患の原因とるタウタンパク質の凝集を抑制する剤を提供することにある。
【解決手段】ホルボールエステルを有効成分とするタウタンパク質の凝集抑制剤を作成する。ホルボールエステルとしては、ホルボールエステルが、ホルボール12-ミリスタート13-アセタートであることが好ましい。また、上記タウタンパク質の凝集抑制剤を含有するタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬により、タウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療が可能となる。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
ホルボールエステルを有効成分とするタウタンパク質の凝集抑制剤。
【請求項2】
ホルボールエステルが、ホルボール12-ミリスタート13-アセタートであることを特徴とする請求項1記載のタウタンパク質の凝集抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のタウタンパク質の凝集抑制剤を含有するタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬。
【請求項4】
神経変性疾患が、前頭側頭型認知症又はアルツハイマー病であることを特徴とする請求項3記載の予防又は治療用医薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
ホルボールエステルを有効成分とするタウタンパク質の凝集抑制剤や、かかるタウタンパク質の凝集抑制剤を含有するタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症患者の増加は先進国を中心とした世界的な医療問題である。日本でも今後の認知症患者の急激な増加が予想されており、20年以内に350万人に達することや、65歳以上の有病率が10%以上に上ることが懸念されている。この認知症の患者のうち、およそ7割はアルツハイマー病(Alzheimer‘s disease)の患者である。
【0003】
アルツハイマー病に関与するタンパク質として、タウタンパク質とベータアミロイドタンパク質が知られている。タウタンパク質は、神経細胞内に存在し、微小管に結合する55~60kDのタンパク質である。かかるタウタンパク質が異常にリン酸化するとタウタンパク質の凝集体が形成され、神経原繊維変化と称される病変を生じる。一方、ベータアミロイドタンパク質は神経細胞外に存在し、凝集することで老人班と称される病変を生じる。
【0004】
これまでの基礎研究からはベータアミロイド説が主流だったため、ベータアミロイドに対する抗体の樹立に基づくワクチン療法(AN—1792)や、ベータアミロイドを産生する酵素の阻害剤(ガンマ-セクレターゼ阻害剤:Semagacestat)等の開発が進められてきた。しかしながら、老人斑が減少又は消失するにもかかわらず、前者のワクチン療法では認知機能の障害は進行し、後者の酵素阻害剤に至っては認知機能がより低下するという結果になってしまった。
【0005】
上記以外にも、これまでに神経変性疾患に対して様々な治療薬が開発されているが、実際に治療に使われているものはすべて対処療法のものであり、根治につながる治療薬の開発に成功していない。神経変性疾患はほぼすべてがアンメット・メディカル・ニーズであり、特に、アルツハイマー病においては、治療満足度、治療に対する薬剤の貢献度がいずれもワースト1の疾患に認定されている(非特許文献1参照)。そこで近年、タウタンパク質をターゲットとした認知症予防薬の開発がより進められている。
【0006】
ところで、ホルボールエステルは、ジテルペンのチグリアンファミリーの天然の植物由来有機化合物であり、東南アジア原産のトウダイグサ科の葉状灌木であるクロトンチグリウム(Croton tiglium)の種に由来するクロトン油の加水分解生成物として、1934年に初めて単離されたものである。ホルボールの中で、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)は、複数の細胞系及び初代細胞における分化及び/又はアポトーシスの誘発因子と考えられており、悪性腫瘍や白血病、HIV、パーキンソン病等の治療剤として用いることが開示されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、かかるホルボールエステルとタウタンパク質の凝集との関係はこれまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2015-513315号公報
【特許文献2】特開2016-056192号公報
【0008】

【非特許文献1】JPMA New Letter No.140(2010/2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、これまでに神経変性疾患に対して様々な治療薬が開発されているが、実際に治療に使われているものはすべて対処療法のものであり、根治につながる治療薬の開発に成功していない。そこで本発明の課題は、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症の原因とるタウタンパク質の凝集を抑制する剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、まず認知機能障害の研究を進める中で、熱ショック転写因子Heat Shock Transcription Factor 1(HSF1)がタウタンパク質の凝集に関与することを見出した。そこでさらに研究を進め、HSF1の活性化に関与する物質を発明者らの経験と勘に基づき網羅的に調べたところ、ホルボール12-ミリスタート13-アセタートによりタウタンパク質の凝集を抑制可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。
(1)ホルボールエステルを有効成分とするタウタンパク質の凝集抑制剤。
(2)ホルボールエステルが、ホルボール12-ミリスタート13-アセタートであることを特徴とする上記(1)記載のタウタンパク質の凝集抑制剤。
(3)上記(1)又は(2)記載のタウタンパク質の凝集抑制剤を含有するタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬。
(4)神経変性疾患が、前頭側頭型認知症又はアルツハイマー病であることを特徴とする上記(3)記載の予防又は治療用医薬。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、タウタンパク質の凝集を抑制することが可能となる。また、タウタンパク質の凝集を抑制することにより、タウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】変異型タウタンパク質導入細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図2】図2(a)は、活性型HSF1の各濃度で処理した場合の凝集体を生じた細胞の割合を示す図である。図2(b)は、活性型HSF1の各濃度で処理した細胞のウェスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図3】pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加と同時にPMAをNeuro-2a培養培地に加えた場合の、凝集体を生じた細胞の割合を示す図である。
【図4】pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加から6時間後にPMAをNeuro-2a培養培地に加えた場合の、凝集体を生じた細胞の割合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタウタンパク質の凝集抑制剤としては、ホルボールエステルを有効成分として含有していれば特に制限されず、ここで、タウタンパク質とは、神経細胞内に存在し、微小管に結合する55~60kDのタンパク質である。かかるタウタンパク質が異常にリン酸化することによってタウタンパク質の凝集体が形成される。

【0015】
本発明の他の態様としては、(1)ホルボールエステルを対象に投与することを特徴とするタウタンパク質の凝集抑制方法や、(2)タウタンパク質の凝集抑制剤として使用するための、ホルボールエステルや、(3)ホルボールエステルの、タウタンパク質の凝集抑制剤の調製における使用を挙げることができる。

【0016】
本発明において、ホルボールエステルとは、ホルボールの酸エステルであれば特に制限されず、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)、ホルボール12,13-ジブチレート、ホルボール12,13-ジデカノエート、ホルボール13-ブチレート、ホルボール12-デカノエート、ホルボール13-デカノエート、ホルボール12,13-ジアセタート、ホルボール13,20-ジアセタート、ホルボール12,13-ジベンゾアート、ホルボール12,13-ジヘキサノエート、ホルボール12,13-ジプロピオネート、ホルボール12-ミリステート、ホルボール13-ミリステート、ホルボール12,13,20-トリアセタート、12-デオキシホルボール13-アンゲレート、12-デオキシホルボール13-アンゲレート20‐アセタート、12-デオキシホルボール13-イソブチレート、12-デオキシホルボール13-イソブチレート20-アセタート、12-デオキシホルボール13-フェニルアセタート、12-デオキシホルボール13-フェニルアセタート20-アセタート、12-デオキシホルボール13-テトラデカノエート、ホルボール12-チグリエート13-デカノエート、12-デオキシホルボール13-アセタート、ホルボール12-アセタート、ホルボール13-アセタート等を挙げることができ、PMAを好適に挙げることができる。PMAはクロトン油などの天然植物から調製することや、化学的に合成することや、市販品を購入することによって得ることが可能である。

【0017】
本発明のタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬としては、上記本発明のタウタンパク質の凝集抑制剤を含んでいれば特に制限されず、ここで、タウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患とは、神経細胞内においてタウタンパク質の凝集によって認知機能が低下する疾患を意味する。かかる神経変性疾患としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTDtenfrontotemporal lobar dengeration)、ダウン症候群を挙げることができ、アルツハイマー病又は前頭側頭型認知症を好適に挙げることができる。前頭側頭型認知症(FTDL)は、臨床病型として主にFTLD-tau、FTLD-TDP、及びFTLD-FUSに分類され、FTLD-Ttauにはピック病、FTLD-17、皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、神経原線維変化型老年認知症(SD-NFT)、MSTD、WMT-GGIが含まれ、FTLD-TDPにはFTD-MND、FTD-TDPが含まれ、FTLD-FUSにはatypical FTLD-U、BIBD、NIFIDが含まれる。

【0018】
本発明のタウタンパク質の凝集抑制剤や、本発明のタウタンパク質の凝集に起因する神経変性疾患の予防又は治療用医薬には、製剤化のために通常使用され薬学的に許容される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、香味剤、緩衝剤等の添加物を含んでいてもよい。製剤の剤型としては散剤、顆粒剤等の固形製剤であってもよい。

【0019】
本発明の神経変性疾患の予防又は治療医薬の投与方法としては、所望の神経変性疾患の予防又は治療効果が得られる限り特に制限されず、静脈内投与、経口投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等を挙げることができる。また、本発明の神経変性疾患の予防又は治療医薬の投与量は特に制限されず、被検者や被検動物の体調、病状、体重、年齢、性別等によって適宜調整することができる。1日あたりの投与量は、上記の投与方法のうちいずれを用いるかによって異なるが、感受性の違いを踏まえ、10~500μg、好ましくは20~100μg、より好ましくは40~60μgを挙げることができる。さらに、本発明の神経変性疾患の予防又は治療医薬を他の神経変性疾患の予防又は治療医薬と併用してもよい。本発明の神経変性疾患の予防又は治療医薬の投与回数や投与期間等も特に制限されず、1日あたりの投与量を1日1回又は数回に分けて投与することもできる。また投与対象の細胞、組織の由来や生体は特に制限されず、好ましくは哺乳類であり、例えばヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター等を例示することができ、好ましくはヒトを例示することができる。なお、PMAはすでに白血病、特に急性骨髄性白血病の治療に用いられており、例えば白血病の治療においては、患者から取り出した白血球をPMA20μM及びイオノマイシンで処理したのち、患者の体内に戻す治療が定着している。

【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
<1.変異型タウタンパク質導入細胞の作製>
タウタンパク質の凝集抑制効果を解析するために、まずはタウタンパク質が凝集するモデル(細胞)を作製した。
【実施例1】
【0022】
(タウ遺伝子クローニング)
DMEM培地(ウシ胎児血清(FBS)10%及び抗生物質のペニシリンとストレプトマイシンを含む)で培養したヒト子宮頸がん細胞株のHeLa細胞からゲノムDNAを抽出し、PCR法によってヒトのタウタンパク質をコードするcDNAを得た。PCRに用いたフォワードプライマーの塩基配列を配列番号1に、リバースプライマーの塩基配列を配列番号2に、得られたcDNAの塩基配列を配列番号3に示す。得られたcDNAをテンプレートとして、PCR法を用いて、タウタンパク質の406番目のアミノ酸であるアルギニンがトリプトファンに置き換わるように塩基の置換を行い、ヒトの変異型タウタンパク質をコードするcDNAを得た。置換のためのPCRに用いたフォワードプライマーの塩基配列を配列番号4に、リバースプライマーの塩基配列を配列番号5に示す。PCR産物は、cDNAの塩基配列を調べて正しく変異が入っていることを確認した。かかるヒトの変異型タウタンパク質をコードするcDNAをpEGFP-N1ベクターに組み込み、pEGFP-N1-tauR406Wベクターを作製し、前記cDNAのC末端側に緑色蛍光タンパク質(GFP)のcDNAをつなげ、GFPの蛍光によって可視化出来るタウタンパク質が発現するようにした。さらに上記pEGFP-N1-tauR406WベクターをpShuttle-CMVベクター、次いでAd-Easyベクターに組み込み、HEK293細胞で発現させ、上清及び細胞を回収してpEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクターを作製した。なお、配列番号3における1240番目の塩基は正常型では「c」であるが、これが「t」に変わることによってタウタンパク質の406番目のアミノ酸のアルギニン(R)がトリプトファン(W)に変化し(R406W:タウタンパク質はアイソフォームが6種類知られており、慣例によりアミノ酸番号は441アミノ酸型最長アイソフォームに準じる)、前頭側頭型認知症(FTDL)の原因となる。
【実施例1】
【0023】
(細胞培養)
直径6cmの培養皿に上記DMEM培地4mLとマウス神経芽細胞Neuro-2a細胞1×10個を入れ、一晩培養した。
【実施例1】
【0024】
(Neuro-2aの分化)
細胞を入れて24時間培養したNeuro-2aの培養液を2%のFBSと20μMのレチノイン酸を含む培地に交換し、72時間培養した。
【実施例1】
【0025】
<2.変異型タウタンパク質の凝集体形成>
pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクターを、分化したNeuro-2aの培地に加えて6時間感染させた。得られた変異型タウタンパク質導入細胞の蛍光顕微鏡写真を図1に示す。
【実施例1】
【0026】
図1に示すように、変異型タウタンパク質は培養神経芽細胞において凝集体を形成することが明らかとなった。
【実施例2】
【0027】
<活性型HSF1による凝集抑制>
分化したNeuro-2a培養培地に上記変異型タウタンパク質導入細胞を培養してから6時間後に、発明者らが作製したアデノウイルスで発現する活性化型HSF1(Ad-HSF1 RDT:Nakai et al., EMBO J 19:1545-1554(2000))をそれぞれ0、2.0、8.0、20.0×10pfu/mLの濃度となるように加えて24時間培養した。さらに、培養後の細胞を遠心分離にて回収してペレットにしたのち、NP40(ナカライ社製)を含む緩衝液で破砕し、変異タウタンパク質溶液を作製した後、発明者らが作製した抗HSF1抗体HSF1j(Fujimoto et al., Molecular Cell 48:182-194(2012))、抗GFP抗体(ナカライ社製)、及び抗ベータアクチン抗体(Sigma-aldrich社製)を用いて可溶性のタウタンパク質及び不溶化して細胞内に沈殿したタウタンパク質の量を検出した。さらに、これらの細胞を回収し、同時に、ウェスタンブロットをそれぞれの細胞を用いて行い、可溶性のタウタンパク質及び不溶化して細胞内に沈殿したタウタンパク質の量を比較した。結果を図2に示す。
【実施例2】
【0028】
図2(a)は、培養後の凝集体を有する細胞の割合を調べた結果であり、図2(b)はウェスタンブロット解析の結果である。図2(a)の結果により、活性型HSF1の濃度が高まるにつれて、細胞内のヒト変異タウタンパク質の凝集が抑制されることが、図2(b)の結果により、活性型HSF1の濃度が高まるにつれて不溶性のヒト変異タウタンパク質が減少していることが明らかとなった。
【実施例3】
【0029】
<PMAによる凝集抑制>
上記図2の結果より、活性型HSF1がヒト変異タウタンパク質の凝集と関与することが明らかとなった。そこで本発明者は、HSF1の上流又は下流の経路に関与する膨大な因子の中にタウタンパク質の凝集を抑制する物質があるのではないかと考え、発明者の長年の経験と勘に基づき化合物を絞り込み、PMAがヒトタウタンパク質の凝集と関与するのではないかと考え、PMAによる凝集抑制効果を調べた。
【実施例3】
【0030】
(PMAの添加)
DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解したPMA(Sigma-Aldrich社製)を終濃度20μMになるように、pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加と同時に、又は、ベクター添加から6時間後に分化したNeuro-2a培養培地へ加えた。PMAを加えないコントロールとして、体積が同量となるようにDMSOを加えた。
【実施例3】
【0031】
(PMAの効果の判定)
蛍光を指標にして変異型タウタンパク質を発現した細胞を数え、次いで、その内、細胞内に凝集体を生じている細胞の数を数えた。さらに、PMAを添加していない細胞と添加した細胞の両方で、凝集体を生じた細胞の割合を比較した。pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加と同時にPMAをNeuro-2a培養培地に加えた場合の結果を図3に、pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加から6時間後にPMAを培地に加えた場合の結果を図4に示す。
【実施例3】
【0032】
図3に示すように、pEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加と同時にPMAを培地に加えた場合も、図4に示すようにpEGFP-N1-tauR406Wアデノウイルスベクター添加から6時間後にPMAを培地に加えた場合にも、凝集体を生じた細胞の割合が減少していた。したがって、PMAにより、タウタンパク質の凝集を抑制することや、タウタンパク質の凝集を分解することが可能であることが明らかとなった。なお、通常PMAはイオノマイシンと併用して特定のタンパク質を刺激する場合に用いられていたが、図3、4の結果から、イオノマイシンと併用せずにPMA単独であってもタウタンパク質の凝集抑制効果があることが明らかとなった。
【実施例3】
【0033】
タウタンパク質が凝集すると、神経原線維変化と呼ばれる構造物を形成し、これが神経細胞死を引き起こし、この神経細胞死が、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症に代表される神経変性疾患および認知症を引き起こすことが多くの研究から示されている。上記図3、4の結果より、PMAを用いれば、タウタンパク質の凝集の抑制だけでなく分解も可能である。したがって、本発明のPMAを用いることにより、アルツハイマー病等の神経変性疾患の予防又は治療、好ましくは予防及び治療をすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症等の神経変性疾患の治療又は予防分野で利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3