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明細書 :卵白粉末の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-005564 (P2020-005564A)
公開日 令和2年1月16日(2020.1.16)
発明の名称または考案の名称 卵白粉末の製造方法
国際特許分類 A23L  15/00        (2016.01)
B01J   2/16        (2006.01)
FI A23L 15/00 B
B01J 2/16
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-129702 (P2018-129702)
出願日 平成30年7月9日(2018.7.9)
発明者または考案者 【氏名】中里 勉
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査請求 未請求
テーマコード 4B042
4G004
Fターム 4B042AC02
4B042AC10
4B042AD28
4B042AE01
4B042AE02
4B042AG07
4B042AH11
4B042AK04
4B042AP22
4B042AT10
4G004KA06
要約 【課題】脱糖処理を施さなくても、メイラード反応を抑えつつ、ゲル強度を高めることができる卵白粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】卵白粉末の製造方法は、脱糖処理を施していない卵白溶液12を、乾燥器1内で流動化させた媒体粒子の噴流層13に滴下して乾燥させる乾燥ステップと、乾燥ステップにおいて卵白溶液12が乾燥して生じた卵白粉末を回収する回収ステップと、回収ステップで回収された卵白粉末を加湿しながら加熱する熱蔵ステップと、を含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
脱糖処理を施していない卵白溶液を、乾燥器内で流動化させた媒体粒子の噴流層に滴下して乾燥させる乾燥ステップと、
前記乾燥ステップにおいて前記卵白溶液が乾燥して生じた卵白粉末を回収する回収ステップと、
前記回収ステップで回収された前記卵白粉末を加湿しながら加熱する熱蔵ステップと、
を含む、卵白粉末の製造方法。
【請求項2】
前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を60~70℃に加熱する、
請求項1に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項3】
前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を湿度40~60%に保持する、
請求項1又は2に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項4】
前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を2~5時間、加湿しながら加熱する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項5】
前記卵白溶液のpHは、
クエン酸溶液で6.5~6.8に調整される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の卵白粉末の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵白溶液を乾燥させて粉末化した卵白粉末が、ハム、ソーセージ、水産練り製品、麺類及び冷凍食品等の食品工業で利用される。市場に出ている卵白粉末は、一般的にスプレードライ法によって乾燥されている。スプレードライ法で乾燥された卵白粉末は、水で溶いた際のゲル強度が割卵後の卵白ほどでない。このため、特許文献1に開示された卵白粉末の製造方法では、ゲル強度を高めるために、スプレードライ法で得られた卵白粉末を加湿しながら加熱する熱蔵処理が行われている。
【0003】
特許文献1に開示されたように、スプレードライ法による卵白溶液の乾燥では、送風温度160℃及び排風温度70℃が用いられる。熱蔵処理の温度に関しては、数日間の熱蔵処理における好適な温度として70~80℃が特許文献1に開示されている。このようなスプレードライ法及び熱蔵処理の高温下では、卵白粉末にメイラード反応(褐変反応)が発生してしまう。メイラード反応とは、還元糖とアミノ化合物とが反応してメラノイジンと呼ばれる褐色物質が生成する反応である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平9-205984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メイラード反応による卵白粉末の着色を避けるために、原料である卵白溶液に脱糖処理が施される。脱糖処理には、酵素、酵母及び細菌等が利用される。例えば、脱糖処理にパン酵母を用いた場合、脱糖処理には少なくとも数時間かかる。脱糖処理に細菌を用いた場合は、脱糖処理に数日を要する。脱糖処理に酵母又は細菌を利用した場合、脱糖処理後の殺菌にも配慮しなければならず、煩雑な殺菌工程を追加しなければならない。スプレードライ法で乾燥させた場合は、脱糖処理に加えて熱蔵処理にも時間がかかるため、卵白粉末の製造が終了するまでに長時間を要する。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、脱糖処理を施さなくても、メイラード反応を抑えつつ、ゲル強度を高めることができる卵白粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点に係る卵白粉末の製造方法は、
脱糖処理を施していない卵白溶液を、乾燥器内で流動化させた媒体粒子の噴流層に滴下して乾燥させる乾燥ステップと、
前記乾燥ステップにおいて前記卵白溶液が乾燥して生じた卵白粉末を回収する回収ステップと、
前記回収ステップで回収された前記卵白粉末を加湿しながら加熱する熱蔵ステップと、
を含む。
【0008】
この場合、前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を60~70℃に加熱する、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を湿度40~60%に保持する、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記熱蔵ステップでは、
前記卵白粉末を2~5時間、加湿しながら加熱する、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記卵白溶液のpHは、
クエン酸溶液で6.5~6.8に調整される、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脱糖処理を施さなくても、メイラード反応を抑えつつ、ゲル強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る製造装置の構成を示す図である。
【図2】各湿度での熱蔵後の実施例1に係るゲル試験片の破断応力とひずみとの関係を示す図である。
【図3】各熱蔵時間での熱蔵後の実施例1に係るゲル試験片の破断応力とひずみとの関係を示す図である。
【図4】走査電子顕微鏡で撮像された卵白粒子を示す図である。(A)は比較例に係る卵白粒子の画像を示す図である。(B)は熱蔵後の実施例1に係る卵白粒子の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。

【0015】
本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法について説明する。本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法は、乾燥ステップ、回収ステップ、及び熱蔵ステップを含む。

【0016】
図1は、上記乾燥ステップ及び回収ステップに好適な卵白粉末の製造装置100の構成を示す。製造装置100は、乾燥器1、コンプレッサ2、メンブレンエアドライヤー3、流量調節バルブ4、流量計5、ヒータ6、温度制御部7、タンク8、撹拌器9、供給ポンプ10、及び円筒ろ紙のフィルタ11を備える。

【0017】
乾燥器1は、両端が開口した円筒部21及び円筒部21の下端に接続された漏斗形状の粒子接触器22から構成される。円筒部21の材質は、150℃程度の温度に耐える材質であれば特に限定されない。円筒部21は、好適には、ポリカーボネートで形成される。

【0018】
粒子接触器22は、漏斗形状の一部である円錐形の底面に相当する一端が円筒部21の下端にフランジ接続されることで、円筒部21に連結される。粒子接触器22は、円錐形の頂点に、一端が開口し、他端が粒子接触器22の内部に通じるガス入口23を有している。粒子接触器22は、好適には、ステンレス鋼で形成される。乾燥器1の大きさは、卵白粉末の製造量に応じて適宜調整される。例えば、乾燥器1全体の高さが高さ600~700mmで、円筒部21の内径50~55mmで、ガス入口23の口径が10~15mmである。

【0019】
乾燥器1の内部には、乾燥器1内で流動化する媒体粒子が入っている。媒体粒子としては、任意の材質の粒子を用いることができる。媒体粒子は、例えば、セラミックボール及びジルコニアビーズである。好ましくは、媒体粒子は、ガラスビーズである。媒体粒子の粒径は、任意であるが、例えば、0.1~1.5mm、好ましくは0.5~1.2mm、より好ましくは0.7~1.0mmである。乾燥器1における媒体粒子の密度は、適宜調整され、例えば、2000~3000kg/m、好ましくは2300~2700kg/mである。

【0020】
乾燥器1内には、コンプレッサ2によって空気が供給される。ガス入口23を通って乾燥器1内に供給された空気によって、乾燥器1内で媒体粒子が流動化し、媒体粒子の噴流層13となる。コンプレッサ2によって乾燥器1に供給される空気は、メンブレンエアドライヤー3によって除湿される。流量調節バルブ4は、乾燥器1内に供給される空気の流量を制御する。供給される空気の流量は、流量計5で測定される。乾燥器1内に供給される空気は、ヒータ6によって加熱される。

【0021】
温度制御部7は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、外部記憶装置と、RAM(Random Access Memory)と、温度センサと、を備える。CPUが外部記憶装置に記憶されたソフトウェアプログラムをRAMに読み出し、ソフトウェアプログラムを実行制御することで、温度制御部7は、次の各機能を実現する。温度制御部7は、温度センサを介して、乾燥器1内のガス入口23近傍、噴流層13、乾燥器1上部、及びヒータ6の温度を検出する。温度制御部7は、ヒータ6を介して、乾燥器1内に供給される空気の温度を80~150℃、90~130℃、好ましくは100~120℃に制御する。

【0022】
タンク8は、原料である卵白溶液12を貯留する。タンク8内に貯留された卵白溶液12は、タンク8内に配置された撹拌子14を介して、撹拌器9によって撹拌される。これにより、卵白溶液12は均一に維持される。供給ポンプ10は、タンク8に貯留された卵白溶液12を噴流層13に滴下する。

【0023】
卵白溶液12は、例えば、割卵後、卵黄を除去した卵白と水とを混合及び撹拌することで調製される。卵白溶液12は、脱糖処理を施さずに乾燥ステップで乾燥される。卵白溶液12のpHは、塩酸及びクエン酸等で調整されてもよい。卵白溶液12のpHは、クエン酸溶液で好ましくは6.5~6.8、より好ましくは6.6~6.7に調整される。

【0024】
卵白溶液12は、遠心分離することで、網目状タンパク質であるオボムシン等が除去されてもよい。卵白溶液12における卵白の濃度は、卵白粉末を効率よく製造するために高いほうがよいが、媒体粒子の流動を維持できる範囲で調整される。例えば、卵白溶液12における卵白の濃度は、40重量%以上で、50重量%以下又は60重量%以下である。

【0025】
また、卵白溶液12は、食品添加物を含んでもよい。食品添加物は、卵白粉末の品質等の維持のために使用される公知の食品添加物であれば特に限定されない。例えば、食品添加物は、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及び二酸化ケイ素等である。好適には、食品添加物は、二酸化ケイ素である。二酸化ケイ素は、微粒二酸化ケイ素であってもよい。

【0026】
卵白溶液12における食品添加物の濃度は、噴流層13の粒子の流動化を維持できる範囲であれば特に限定されない。例えば、卵白溶液12における食品添加物の濃度は、0.1~0.15重量%、好ましくは0.1~0.12重量%、より好ましくは0.1~0.11重量%である。好適には、卵白溶液12における食品添加物の濃度は、フィルタ11によって回収される卵白粉末における食品添加物の濃度に応じて決定される。例えば、食品添加物として二酸化ケイ素を用いる場合、回収される卵白粉末に含まれる二酸化ケイ素の濃度が2.0重量%以下になるように卵白溶液12における食品添加物の濃度を調整してもよい。

【0027】
噴流層13に滴下された卵白溶液12は、媒体粒子との接触によって卵白溶液12が乾燥して卵白粉末が生じる。フィルタ11は、卵白粉末を回収する。

【0028】
続いて、本実施の形態に係る製造装置100を用いた卵白粉末の製造方法について詳細に説明する。

【0029】
乾燥ステップでは、脱糖処理を施していない卵白溶液12を、乾燥器1内で流動化させた媒体粒子の噴流層13に滴下して乾燥させる。

【0030】
乾燥ステップにおける噴流層13への卵白溶液12の供給速度は、適宜調整される。例えば、乾燥器1が内径50~55mm、高さ600~700mmの大きさの場合、噴流層13への卵白溶液12の供給速度は、好ましくは3.0g/分以下、より好ましくは2.2g/分以上3.0g/分以下である。卵白溶液12が食品添加物を含む場合、噴流層13への卵白溶液12の供給速度を拡張できる。食品添加物を含む卵白溶液12の噴流層13への供給速度は、4.0g/分以下、好ましくは3.5g/分以下、より好ましくは2.2g/分以上3.5g/分以下である。

【0031】
乾燥ステップにおいて、温度制御部7は噴流層13内の温度を75~85℃、好ましくは80℃に制御する。例えば、温度制御部7は、乾燥器1のガス入口23近傍の温度を110~120℃に制御する。これにより、噴流層13の温度を90℃に制御できる。ここで、乾燥器1内に水を滴下供給することで、噴流層13の温度を80℃に制御できる。ここで、噴流層13へ卵白溶液12を供給すると、噴流層13の温度は60~70℃、好ましくは65℃となる。

【0032】
回収ステップでは、乾燥ステップにおいて卵白溶液12が乾燥して生じた卵白粉末を回収する。回収ステップでは、気流とともに飛散してくる卵白粉末がフィルタ11に回収される。

【0033】
熱蔵ステップでは、回収ステップで回収された卵白粉末を加湿しながら加熱する。卵白粉末の熱蔵には、例えば、電機湿温蔵庫が用いられる。熱蔵ステップでは、卵白粉末を60~70℃に加熱する。好ましくは、サルモネラ菌を死滅させるために、熱蔵ステップにおいて、卵白粉末を65℃に加熱する。

【0034】
熱蔵ステップでは、卵白粉末を湿度40~60%、好ましくは45~55%、より好ましくは48~52%、特に好ましくは50%に保持する。熱蔵ステップの時間は、卵白粉末の量に応じて適宜調整される。例えば、熱蔵ステップでは、卵白粉末を2~5時間又は2.5~4時間、好ましくは2.5~3.5時間、より好ましくは2.8~3.2時間、特に好ましくは3時間、加湿しながら加熱する。

【0035】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法によれば、下記実施例に示すように、脱糖処理を施さなくても、乾燥ステップにおける加熱によるメイラード反応を抑制することができる。当該卵白粉末は、熱蔵ステップにおける加熱によるメイラード反応も抑制できる。このため、脱糖処理を施さなくても、メイラード反応を抑えつつ、ゲル強度を高めることができる。

【0036】
また、本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法によれば、熱蔵ステップにおいて、卵白粉末を60~70℃に加熱してもよいし、卵白粉末を2~5時間、加湿しながら加熱してもよいこととした。下記実施例に示すように、本実施の形態に係る卵白粉末は、脱糖処理を施さなくても水分活性が極めて低いため、スプレードライ法によって乾燥させた卵白粉末の熱蔵条件と比較して低温化及び短時間化が実現できる。

【0037】
本実施の形態に係る卵白粉末の用途は特に限定されず、食品加工及び化粧品等の材料として用いることができる。具体的には、菓子類、麺類、洗顔剤及びパック剤等に利用することができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
原料液となる水様性卵白希釈液を以下の手順で調製した。割卵後の卵白に水を質量比で1:1になるように加え、撹拌しながら0.05Mのクエン酸溶液を滴下してpHを6~7に調整した。続いて、遠心分離機(himacCT6D、日立製作所製)を用いて5000rpmで10分間、水様性卵白希釈液を遠心分離にかけ、網目状タンパク質のオボムシンを分離し、原料液を得た。
【実施例】
【0040】
原料液を、図1に示す構成と同様の構成である噴流型粉粒流動層(PPSB)乾燥装置で乾燥した。PPSBに使用する媒体粒子には、ガラスビーズ(中心径850μm、粒径0.710~0.990mm、密度2500kg/m)を用いた(80℃における最小流動化速度及び最小噴流速度の計算値はそれぞれ0.938m/s、0.495m/s)。
【実施例】
【0041】
PPSB本体は全長0.650m、内径0.052m、粒子接触器の円錐形の頂角45°、ガス入口の口径0.013mであり、円筒部はポリカーボネート製、粒子接触器はステンレス鋼製である。粒子接触器はフランジ接続により円筒部に連結した。
【実施例】
【0042】
原料液の乾燥粉末化は以下の手順で行った。乾燥空気200L/分をあらかじめヒータで加熱し、ガス入口近傍温度で110~120℃となるようにして平均粒径830μmのガラスビーズ(使用量135g、静止層高0.075m)を媒体粒子として噴流層を形成させた。続いて、円筒部の上部より、蒸留水を所定の供給速度(2.8~5.3g/分)で供給ポンプ(MP-3、EYELA社製)を用いてシリコンチューブ(3×5mm)を通して噴流層内の中心に滴下供給した。噴流層内の温度が80℃で一定になったところで供給液を原料液に切り替えた。気流とともに飛散してくる乾燥卵白粉末を円筒ろ紙製フィルタ(68×75×210、ADVANTEC社製)で回収した。
【実施例】
【0043】
熱蔵は、電気湿温蔵庫(HIS-90AG、ニチワ電機社製)を用いて行った。4gの粉体試料をシャーレ(直径71mm×高さ17mm)に薄く広く分散させ、サルモネラ菌を死滅させるために熱蔵温度を65℃に設定し、庫内関係湿度20、50又は80%で1、3又は6時間熱蔵した。熱蔵後の卵白粉末の色の変化を目視観察した。
【実施例】
【0044】
水分活性(Aw)は、水分活性測定装置(SP-W、AS ONE社製)により3回測定し、その平均値とした。なお、水分活性は、同一条件下における試料の水蒸気圧を純水の水蒸気圧で除した値である。含水量については、赤外線水分計(FD-720、Kett社製)を用い、120℃で重量の変化がなくなるまで加熱することにより測定した。
【実施例】
【0045】
卵白粉末と水とを質量比1:7で混合し、スターラーで2時間撹拌後、溶液を内径7mmのシリコンチューブに充填した。溶液がシリコンチューブの両端から漏れないようラップでシリコンチューブの両端を覆い輪ゴムで留めた後、シリコンチューブの湾曲をなるべく避けるために試験管内に入れた。試験管とシリコンチューブとの間の空間を水で満たし、この試験管を40分間、80℃で湯浴して得られるゲル棒をシリコンチューブから取り出し、カッターで長さ8mmにカットして直径7mm、高さ8mmのゲル試験片を作製した。
【実施例】
【0046】
ゲル試験片に対して、テンシロン万能材料試験機(RTC-1210A、ORIENTEC社製)を用いて荷重スケール3N、押し付け速度1mm/分にて圧縮試験を行い、その破断応力とひずみとの関係を調べることでゲル強度を評価した。粒子形状については、低真空走査電子顕微鏡(Quanta400、FEI社製)を用いて観察した。なお、市販の乾燥卵白(Wタイプ、キューピータマゴ社製)を比較例とした。
【実施例】
【0047】
(結果)
得られた卵白粉末(実施例1及び実施例2)に関して、原料液の組成、PPSBの運転条件、水分活性及び含水量を表1に示す。
【実施例】
【0048】
【表1】
JP2020005564A_000003t.gif
【実施例】
【0049】
ゲル強度を測定するために、実施例1に係る卵白粉末を熱蔵し、上記のようにゲル化させ、ゲル試験片のゲル強度を測定し、比較例と比較した。表2に熱蔵(65℃で1時間)時の湿度の違いによる卵白粉末の水分活性及び含水率を示す。
【実施例】
【0050】
【表2】
JP2020005564A_000004t.gif
【実施例】
【0051】
熱蔵における湿度が高いほど卵白粉末の含水率は増加した。図2は、ゲル試験片の破断応力とひずみとの関係を示す。熱蔵における湿度が高いほどより右上にプロットされ、ゲル強度が高くなった。しかし、湿度80%では菌が繁殖する水分活性の値(0.65以上)となり、熱蔵湿度50%までが保存における限界条件であることがわかった。
【実施例】
【0052】
図3は、65℃、湿度20%又は50%を熱蔵条件として、1、3及び6時間の熱蔵後の卵白粉末から作製したゲル試験片の破断応力とひずみとの関係を示す。熱蔵時間が長いほど、ゲル強度は高くなった。これは熱蔵によりゲル内でタンパク質分子が複雑な構造を持つ高分子になり、これによって骨格となる成分が増えたためと考えられる。熱蔵時間が6時間を超えると比較例のゲル強度を上回るものの、メイラード反応が若干生じることが目視で確認された。よって、熱蔵の最適条件として、65℃、湿度50%、3時間が好ましいことがわかった。
【実施例】
【0053】
本実施例の原料液は比較例と異なり、乾燥前に脱糖処理を実施していない。酵母等を利用して脱糖を施す場合、メイラード反応は抑制できるものの、菌数が高くてそのままでは使用できないため、熱蔵において高温及び長時間(75~85℃、10~15日)が必要となる。本実施例では脱糖処理を施さなくても水分活性の極めて低い卵白粉末が得られるため、熱蔵条件の低温化及び短時間化(65℃、湿度50%、3時間)が実現でき、メイラード反応を抑制しつつ、ゲル強度の向上という機能改変も同時に達成できる。
【実施例】
【0054】
図4に走査電子顕微鏡で撮像した比較例及び熱蔵後の実施例1に係る卵白粉末の画像を示す。比較例は球状であるのに対し、実施例1に係る卵白粉末は非球形の粒子が観察された。比較例はスプレードライ法で製造されており、原料液を霧状に散布して乾燥させるため球状の粒子となる。一方、本実施例では流動している媒体粒子の表面に形成される原料液の液膜を乾燥させて剥離及び飛散によって回収するため、実施例1に係る卵白粉末は角ばった形状をしていた。
【実施例】
【0055】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、卵白粉末の製造に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 乾燥器
2 コンプレッサ
3 メンブレンエアドライヤー
4 流量調節バルブ
5 流量計
6 ヒータ
7 温度制御部
8 タンク
9 撹拌器
10 供給ポンプ
11 フィルタ
12 卵白溶液
13 噴流層
14 撹拌子
21 円筒部
22 粒子接触器
23 ガス入口
100 製造装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3