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明細書 :疎水性ゲルによる金属イオン抽出分離法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3374172号 (P3374172)
公開番号 特開2001-104704 (P2001-104704A)
登録日 平成14年11月29日(2002.11.29)
発行日 平成15年2月4日(2003.2.4)
公開日 平成13年4月17日(2001.4.17)
発明の名称または考案の名称 疎水性ゲルによる金属イオン抽出分離法
国際特許分類 B01D 11/04      
FI B01D 11/04 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 3
出願番号 特願平11-282547 (P1999-282547)
出願日 平成11年10月4日(1999.10.4)
審査請求日 平成12年4月18日(2000.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】小松 優
【氏名】國仙 久雄
審査官 【審査官】新居田 知生
参考文献・文献 特開 昭59-102826(JP,A)
調査した分野 B01D 11/00 - 11/04
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の同族金属イオンを含む水溶液を、疎水性ゲルからなる固相が分散しており、抽出剤を含む有機相との混合相に接触させ、イオン半径の大きい金属イオンを選択的に疎水性ゲル相へ移動させることを特徴とする金属イオンの分離方法。

【請求項2】
同族金属イオンが希土類金属イオンであることを特徴とする請求項1記載の金属イオンの分離方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属イオンや有害物質を効率よく分離し、高純度の金属イオンを得ることを目的とする分離、分配方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術とその課題】従来、金属イオンの分離方法には、イオン交換法、溶媒抽出法、3相間分配法等が採用されている。イオン交換法とは、水溶液中の金属イオンがイオン交換体中のイオンと置換し、相移動する反応を利用している。このときの反応量は、イオン交換体と水溶液量との比で決定され、一定値を示す。溶媒抽出法とは、水溶液中の金属イオンが有機溶媒に溶解させた抽出剤と反応し、有機相中に移動する反応を利用している。このときの抽出量は抽出剤の種類に依存し、分離能は抽出剤に固有の一定値を示す。また3相間分配法とは、溶媒抽出法とイオン交換法の反応力の違いを利用して、大きい金属イオンをイオン交換体へ、小さな金属イオンを有機相中に分配する分離方法である。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来法である溶媒抽出法では、抽出剤の種類により分離能が決定される。例えば、希土類金属イオンを抽出する場合、抽出剤の種類によっては、金属イオン間、すなわちLu-La間でLuを90%抽出した場合約3%の不純物が混入する。この不純物の混入は、抽出剤の種類を変えない限り改善されない。

【0004】
イオン交換法では、例えばチタニア水和物やシリカ系ゲルをイオン交換体とする場合、全ての希土類金属イオンに対して同量のイオン交換能を示し、分離は不可能である。これは、希土類金属イオン間でイオン半径に差が無いことに起因しており、相互分離は不可能である。

【0005】
また、3相間分配法に置いては、アルカリ土類金属イオン群等の特定の金属イオンに対して、溶媒抽出分離能とイオン交換能が類似のものを利用する。しかし、イオン交換分離能を持たない希土類金属イオン群などに対しては適用できない。また、有機相と固相の接触を避けること、反応速度が約2週間と遅いなどの欠点がある。

【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記したような問題を解消すべく案出されたものであり、利用した固相が有機相と相性が良いゲルである、金属イオン反応量が格段に増える、分離能が向上する、及び約3時間で平衡に達する等の特徴を持つものである。

【0007】
本発明の金属イオン分離方法は、その目的を達成するため、複数の同族イオンを含む水溶液を有機相中へ抽出し、有機相中に分散している固相へと反応を進行し、分離能を向上させることを特徴としている。

【0008】
溶媒抽出法及びイオン交換法は、抽出剤の種類及びイオン交換体の種類により、金属イオン間の分離能が決定してしまう。また3相間分配法では、溶媒抽出分離能とイオン交換分離能の両方を利用したものであり、両分離法の長所を兼ね備えているので、溶媒抽出及びイオン交換の分離能を兼ね備えた金属イオンに対しては、分離能を向上できる。しかし溶媒抽出能が弱いアルカリ金属群や、イオン交換分離能を持たない希土類金属イオンに対しては、効力を発揮しない。

【0009】
しかし本発明である疎水性ゲルによる金属イオン抽出分離法にて相移動反応を行うと、有機相へ抽出された金属イオンが分散している固相中へ移動し、反応量が増加するとともに分離能も発現する。この反応を利用することにより、他の金属イオンの混入を極めて少なくすることができる。また、反応に関与する抽出剤の濃度及び疎水性ゲル量を調整することにより、目的金属イオンを取り出す条件が高い自由度で設定できる。

【0010】
本発明に利用した疎水性ゲルは、通常のシリカゲルに機能性を付加するためにシランを加え、150℃で処理し乾燥したものを用いた。この操作により、疎水性ゲルに反応活性が発現し、分離剤として利用した。

【0011】
水溶液中の金属イオンは、疎水性ゲルと直接反応する量は極めて少なく、イオン交換反応はほとんど起こらない。この疎水性ゲルは、金属イオンが一旦有機相に抽出されると、有機相内の金属錯イオンと反応することを特徴とする。この原因は、疎水性ゲルの反応活性サイトが、単体の金属イオンより抽出剤との金属錯イオンのサイズに反応活性を示すためである。

【0012】
通常の溶媒抽出反応では、抽出剤の種類により、抽出量及び分離能が決定される。本発明では、有機相中に抽出された金属イオンが、さらに分散している疎水性ゲルと反応を行い、水溶液中に残る金属イオン量を下げることができる。

【0013】
溶媒抽出能をあげるため、共同抽出剤を用いる場合がある。一般に共同抽出剤を抽出剤と反応した金属イオンに付加することにより、金属錯体のサイズを大きくし、親有機性を向上させる効果がある。この作用により、金属イオン抽出能の向上は見られるが、いずれの共同抽出剤を用いても、分離能は減少する。一方、疎水性ゲルを用いた場合は、有機相から疎水性ゲル相への分離能が付加され、同じ抽出剤を用いた溶媒抽出反応の場合と比べ、分離能は向上する。

【0014】
例えば、希土類金属イオンを含む水溶液、抽出剤を含むトルエンを有機相とし、疎水性ゲルを加えた系で反応を行わせると、水溶液中の金属イオンは、イオン半径の小さい金属イオンほど良く抽出される。さらに抽出量の多い、小さな金属イオンがさらに選択的に疎水性ゲル中に移動するため、分離能がさらに向上する。

【0015】
抽出剤は、溶媒抽出の際にいずれも同じ反応機構を呈する。すなわち水より極性の小さい有機相では、小さい金属イオンほど有機相の極性を乱す割合が小さくなる。同族イオン間では、金属イオンと抽出剤の反応機構が同じであるため、小さい金属イオンは相対的に良く抽出される。

【0016】
【実施例】トルエンに抽出剤を溶解したものを有機相とし、希土類金属イオン(LuやLa等)を含む溶液を水相とし、疎水性ゲルを固相として加えた。2種類の液相と疎水性ゲルを3時間接触させ、各金属イオンを各相に分配させた。平衡状態に達したとき、各相内の金属イオン量を測定し、反応後に混入する不純物量を求めた。調査結果を疎水性ゲルによる金属イオン抽出分離法と同じ条件で行った溶媒抽出法の結果と対比させて表1に示す。
表1 水溶液中のpHと抽出量
Luの抽出量(pH) ゲルを入れなかった場合 ゲルを入れた場合
5 6.47 % 86.3 %
6 87.4 % 99.8 %
7 99.86 % 99.998%
Laの抽出量(pH) ゲルを入れなかった場合 ゲルを入れた場合
5 0.022% 0.33 %
6 2.24 % 24.88 %
7 69.6 % 97.07 %
表1より、同じ水溶液条件下では、いずれの金属イオンの場合も、ゲルを入れることにより、著しく抽出量が向上した。

【0017】
表1から明らかなように、いずれの場合もゲルを入れた系の抽出量が増加し、ゲルの添加効果が表れている。表2にゲルを添加した場合と添加しない場合の分離結果を示す。
表2 Lu抽出における、不純物であるLa混入量
Laの抽出量 ゲルを入れなかった場合 ゲルを入れた場合
50% 0.33 % 0.05 %
60% 0.50 % 0.08 %
70% 0.75 % 0.12 %
80% 1.43 % 0.21 %
90% 2.93 % 0.48 %
表2より、同じ条件下では、いずれの場合もゲルを入れることにより、不純物混入量が著しく減少したことがわかる。
【発明の効果】以上に説明したように、本発明である疎水性ゲルによる金属イオン抽出分離法を用いることにより、従来法を上回る抽出能及び分離能を発現できる。