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明細書 :ポリグルタミン病に関する医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年5月21日(2020.5.21)
発明の名称または考案の名称 ポリグルタミン病に関する医薬組成物
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/47        (2006.01)
A61K  31/5377      (2006.01)
A61K  31/444       (2006.01)
A61K  31/5025      (2006.01)
A61K  31/4709      (2006.01)
A61K  31/496       (2006.01)
A61K  31/404       (2006.01)
A61K  31/4412      (2006.01)
A61K  31/166       (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/6851      (2018.01)
G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 25/14
A61P 43/00 111
A61K 31/47
A61K 31/5377
A61K 31/444
A61K 31/5025
A61K 31/4709
A61K 31/496
A61K 31/404
A61K 31/4412
A61K 31/166
C12Q 1/02
C12Q 1/6851 Z
G01N 33/68
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
国際予備審査の請求
全頁数 36
出願番号 特願2019-515740 (P2019-515740)
国際出願番号 PCT/JP2018/017448
国際公開番号 WO2018/203559
国際出願日 平成30年5月1日(2018.5.1)
国際公開日 平成30年11月8日(2018.11.8)
優先権出願番号 2017091939
優先日 平成29年5月2日(2017.5.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】萩原 正敏
【氏名】奥野 友紀子
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B063
4C084
4C086
4C206
Fターム 2G045AA25
2G045CB01
2G045DA13
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4C206ZC20
要約 ポリグルタミン病に関する医薬組成物、それらの使用、それらを用いたポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制及び/又は治療方法、並びにポリグルタミン病に関する化合物のスクリーニング方法を提供する。
一形態において、血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-met遺伝子にコードされた受容体型チロシンキナーゼ(c-Met)阻害化合物、並びにVEGFR及びc-Metの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも1種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物に関する。その他の態様において、レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現する発現系が導入された細胞を培養した培養液中に形成されるポリグルタミン凝集体の指標として、細胞核を含む仮想細胞体領域にある前記レポーター蛋白質のシグナルを測定することを含む、ポリグルタミン凝集体の形成に影響を与える物質のスクリーニング方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-met遺伝子にコードされた受容体型チロシンキナーゼ(c-Met)阻害化合物、並びにVEGFR及びc-Metの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも1種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
【請求項2】
前記阻害化合物が、下記式(I):
【化1】
JP2018203559A1_000031t.gif
で表わされる化合物又はその製薬上許容される塩である、請求項1記載の医薬組成物
[式(I)において、
1は、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
Wは、
【化2】
JP2018203559A1_000032t.gif
であり、
2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
1は、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であり、
2及びYは、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であるか、あるいは、
2及びYは、aで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有し、
Zは、
【化3】
JP2018203559A1_000033t.gif
であり、
4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基、アミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基であるか、あるいは、
4及びR5は、b及びcで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有する。]。
【請求項3】
前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(II):
【化4】
JP2018203559A1_000034t.gif
で表わされる化合物である、請求項2記載の医薬組成物
[式(II)において、
Wは、
【化5】
JP2018203559A1_000035t.gif
であり、R1-R5、X1、X2及びYは式(I)と同様である。]。
【請求項4】
前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(III):
【化6】
JP2018203559A1_000036t.gif
で表わされる化合物である、請求項2記載の医薬組成物
[式(III)において、
Wは、
【化7】
JP2018203559A1_000037t.gif
であり、R1-R3、X1、X2及びYは式(I)と同様であり、
6及びR7は、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基である。]。
【請求項5】
前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(IV):
【化8】
JP2018203559A1_000038t.gif
で表わされる化合物である、請求項2記載の医薬組成物
[式(IV)において、R1-R5、X2及びYは式(I)と同様である]。
【請求項6】
下記化合物1-11、すなわち、
【化9】
JP2018203559A1_000039t.gif
からなる群から選択される少なくとも1種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
【請求項7】
前記ポリグルタミン病が、ハンチントン病、遺伝性脊髄小脳変性症、又は、球脊髄性筋萎縮症である、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の方法であって、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項9】
ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物を製造するための血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-met遺伝子にコードされた受容体型チロシンキナーゼ(c-Met)阻害化合物、並びにVEGFR及びc-Metの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の使用。
【請求項10】
ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物の有効成分の候補物質のスクリーニング方法であって、
レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現するアッセイ細胞をテスト物質と接触させて培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(A)を測定すること、
前記アッセイ細胞を該テスト物質と接触させることなく培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(B)を測定すること、
シグナル(A)とシグナル(B)とを比較すること、及び、
前記比較に基づいてシグナル(B)よりもシグナル(A)を低減させるテスト物質を候補物質として選択することを含む、スクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリグルタミン病に関する医薬組成物、それらの使用、それらを用いたポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制及び/又は治療方法に関する。本開示はまた、ポリグルタミン病に関する化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンチントン病等のポリグルタミン病と総括される遺伝性神経疾患においては、原因遺伝子内のCAGリピートが過伸長し、それを鋳型とするポリグルタミン過伸長を有する蛋白質が生成され、この蛋白質が神経細胞内で蓄積して凝集体を形成する。このポリグルタミン凝集体がトリガー、細胞障害と、それに続く神経細胞の欠落が生じる。ハンチントン病は神経疾患としてはアルツハイマー病、パーキンソン病に次いで頻度の高い疾病であるが、現在のところ上市されている主なハンチントン病薬は対症療法薬であり、まだ根本的な治療が可能な薬があるとはいえない。
【0003】
非特許文献1は、ハンチントン遺伝子エキソン1の150リピートと蛍光蛋白質とを融合したポリグルタミン凝集体形成のレポーター蛋白質を開示する。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Matsumoto, G et al.: Serine 403 Phosphorylation of p62/SQSTM1 Regulates Selective Autophagic Clearance of Ubiquitinated Proteins. Molecular Cell 44, 279289, October 21, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、一態様において、ポリグルタミン病に関する医薬組成物、それらの使用、それらを用いたポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制及び/又は治療方法を提供する。本開示は、その他の態様において、ポリグルタミン病に関する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一態様において、血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-met遺伝子にコードされた受容体型チロシンキナーゼ(c-Met)阻害化合物、及びVEGFRとc-Metとの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも1種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物に関する。
【0007】
本開示は、その他の態様において、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物の有効成分の候補物質のスクリーニング方法であって、
レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現するアッセイ細胞をテスト物質と接触させて培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(A)を測定すること、
前記アッセイ細胞を該テスト物質と接触させることなく培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(B)を測定すること、
シグナル(A)とシグナル(B)とを比較すること、及び、
前記比較に基づいてシグナル(B)よりもシグナル(A)を低減させるテスト物質を候補物質として選択することを含む、スクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ポリグルタミンとレポーター蛋白質との融合蛋白質の発現系の概略図である。
【図2】図2は、スクリーニングスキームの一例の概略図である。
【図3】図3は、スクリーニングに用いられるアッセイ系の発現誘導の様子、及びZ' factorを示す。
【図4】図4は、化合物4によるポリグルタミン凝集体形成阻害の濃度依存性を示すグラフである。
【図5】図5は、化合物4によるレポーター蛋白質発現量低下の濃度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンの凝集体の測定方法として、仮想細胞領域内のシグナルを測定する方法を採用すると、アッセイ感度が向上し、ポリグルタミン凝集体の形成に関わる物質を簡便にスクリーニングできる、という新しい知見に基づく。

【0010】
[ポリグルタミン病のための医薬組成物]
本開示は、一態様において、ポリグルタミン病のための医薬組成物の医薬組成物(以下、「本開示に係る医薬組成物」ともいう。)を開示する。
本開示において、ポリグルタミン病のための医薬組成物とは、一又は複数の実施形態において、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物をいう。
本開示において、ポリグルタミン病とは、一又は複数の実施形態において、原因遺伝子内のCAGリピートの過伸長、それを鋳型とするポリグルタミン過伸長を有する蛋白質の生成、又は、この蛋白質の神経細胞内での蓄積及び凝集体形成の少なくとも1つに起因する疾病をいう。ポリグルタミン病として、一又は複数の実施形態において、ハンチントン病、遺伝性脊髄小脳変性症、又は、球脊髄性筋萎縮症が挙げられる。

【0011】
[有効成分]
本開示に係る医薬組成物の有効成分として、一又は複数の実施形態において、血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)の阻害物質、c-Metの阻害物質、又はVEGFRとc-Metの両方の阻害物質が挙げられ、好ましくは、VEGFR2に対する阻害活性を有する物質、VEGFRとc-Metの両方に対する阻害活性を有する物質又はVEGFR2とc-Metの両方に対する阻害活性を有する物質が挙げられる。後述する本開示に係るスクリーニング方法により、ポリグルタミン凝集体の形成を抑制する物質として、複数の公知のVEGER阻害物質及びVEGFRとc-Metの両方に対する阻害活性を有する物質が選択された。

【0012】
有効成分であるVEGFR阻害物質の一又は複数の実施形態として、下記式(I)で表わされる構造を有するVEGFR阻害物質が挙げられる。ここで、下記式(I)におけるW、Z、R1は任意の基とする。
【化1】
JP2018203559A1_000003t.gif

【0013】
上記式(I)で表わされる構造を有するVEGFR阻害物質のその他の一又は複数の実施形態として、式(I)において、
1は、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
Wは、
【化2】
JP2018203559A1_000004t.gif
であり、
2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
1は、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であり、
2及びYは、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であるか、あるいは、
2及びYは、aで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有し、
Zは、
【化3】
JP2018203559A1_000005t.gif
であり、
4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基、アミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基であるか、あるいは、
4及びR5は、b及びcで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有する、化合物又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
なお、本開示において波線を付した結合手は、式(I)、(II)又は(III)で表される化合物又は基との結合部分を示す。

【0014】
本開示においてVEGFR阻害物質とは、一又は複数の実施形態において、インビトロ及びインビボの少なくとも一方における公知のVEGFR阻害アッセイ系において、前記物質を加えた場合のVEGFRの活性を、前記物質を加えないコントロールと比べて、例えば60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下にまで阻害できる化合物をいう。前記アッセイ系において、添加する物質の量は、一又は複数の実施形態において、0.01-10μMである。
本開示においてc-Met阻害物質とは、一又は複数の実施形態において、インビトロ及びインビボの少なくとも一方における公知のc-Met阻害アッセイ系において、前記物質を加えた場合のc-Metの活性を、前記物質を加えないコントロールと比べて、例えば60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下にまで阻害できる化合物をいう。前記アッセイ系において、添加する物質の量は、一又は複数の実施形態において、0.01-10μMである。
本開示においてVEGFR及びC-Metの両方の阻害物質とは、一又は複数の実施形態において、インビトロ及びインビボの少なくとも一方における公知のVEGFR阻害アッセイ系において、前記物質を加えた場合のVEGFRの活性を、前記物質を加えないコントロールと比べて、例えば60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下にまで阻害でき、かつ、インビトロ及びインビボの少なくとも一方における公知のc-Met阻害アッセイ系において、前記物質を加えた場合のc-Metの活性を、前記物質を加えないコントロールと比べて、例えば60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下にまで阻害できる化合物をいう。前記アッセイ系において、添加する物質の量は、一又は複数の実施形態において、0.01-10μMである。

【0015】
アルキル基又はアルキレン基としては、一又は複数の実施形態において、直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基又はアルキレン基が挙げられる。「C1-4アルキル基」とは、一又は複数の実施形態において、炭素数1-4個の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基である。炭素数1-4個の直鎖又は分枝のアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。炭素数3-4個の環状のアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル基、シクロブチル基などが挙げられる。

【0016】
ハロゲン原子としては、一又は複数の実施形態において、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「複素環」とは、一又は複数の実施形態において、環を構成する原子中に1-2個のヘテロ原子を含有し、環中に二重結合を含んでいてもよく、非芳香族性の環又は芳香族性の環を意味する。「複素芳香環」とは、芳香族性の複素環を意味する。「ヘテロ原子」とは、一又は複数の実施形態において、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を意味する。

【0017】
本開示において「製薬上許容される塩」とは、薬理上及び/又は医薬上許容される塩を含有し、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性アミノ酸塩又は塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。

【0018】
前記無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。

【0019】
前記無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。前記有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩などが挙げられる。

【0020】
前記酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。前記塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などが挙げられる。

【0021】
本開示において「化合物の塩」には、化合物が大気中に放置されることにより、水分を吸収して形成されうる水和物が包含され得る。また、本開示において「化合物の塩」には、化合物が他のある種の溶媒を吸収して形成されうる溶媒和物も包含され得る。

【0022】
上記式(I)のR1は、一又は複数の実施形態において、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基が挙げられ、限定されない一又は複数の実施形態において、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基が挙げられる。

【0023】
上記式(I)のWは、一又は複数の実施形態において、
【化4】
JP2018203559A1_000006t.gif
が挙げられる。
2及びR3は、一又は複数の実施形態において、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子が挙げられる。X1は、一又は複数の実施形態において、イミノ基であり、X2及びYは、一又は複数の実施形態において、それぞれ独立して、イミノ基若しくは
【化5】
JP2018203559A1_000007t.gif
あるいは、X2及びYは、aで印をつけた原子と共に、
【化6】
JP2018203559A1_000008t.gif
が挙げられる。

【0024】
上記式(I)のWは、VEGFRに対する阻害活性に加えて、c-Metに対する阻害活性を有する点から、一又は複数の実施形態において、
【化7】
JP2018203559A1_000009t.gif
が挙げられる。
2、R3、X2及びYは、上記と同様である。

【0025】
上記式(I)のZは、一又は複数の実施形態において、
【化8】
JP2018203559A1_000010t.gif
が挙げられる。R4及びR5は、一又は複数の実施形態において、それぞれ独立して、ハロゲン原子若しくはアミノ基、あるいは、R4及びR5は、b及びcで印をつけた原子と共に、
【化9】
JP2018203559A1_000011t.gif
が挙げられる。R6及びR7は、一又は複数の実施形態において、それぞれ独立して、メチル基、又は、
【化10】
JP2018203559A1_000012t.gif
が挙げられる。

【0026】
上記式(I)は、一又は複数の実施形態において、下記式(II)である。
【化11】
JP2018203559A1_000013t.gif
[式(II)において、
Wは、
【化12】
JP2018203559A1_000014t.gif
であり、R1-R5、X1、X2及びYは式(I)と同様である。]

【0027】
上記式(I)は、一又は複数の実施形態において、下記式(III)である。
【化13】
JP2018203559A1_000015t.gif
[式(III)において、
Wは、
【化14】
JP2018203559A1_000016t.gif
であり、R1-R3、R6及びR7、X1、X2及びYは式(I)と同様である。]

【0028】
上記式(I)は、一又は複数の実施形態において、下記式(IV)である。
【化15】
JP2018203559A1_000017t.gif
[式(IV)において、R1-R5、X2及びYは式(I)と同様である]

【0029】
有効成分であるVEGFR阻害物質の一又は複数の実施形態として、下記化合物1-5が挙げられる。VEGFR及びc-Metの両方の阻害活性を有する物質の一又は複数の実施形態として、下記化合物2-4が挙げられる。
【化16】
JP2018203559A1_000018t.gif

【0030】
本開示に係る医薬組成物の有効成分として、その他の一又は複数の実施形態において、下記化合物6-11も挙げられる。
【化17】
JP2018203559A1_000019t.gif

【0031】
本開示に係る医薬組成物の有効成分である上記化合物は、不斉炭素原子が存在する場合及び/又は立体異性体が存在する場合、一又は複数の実施形態において、各異性体の混合物又は単離されたものである。立体異性体の特に限定されない一又は複数の実施形態において、シス-トランス異性体が挙げられる。

【0032】
本開示に係る医薬組成物の有効成分である上記化合物は、プロドラッグの形態で医薬組成物に含有されていてもよい。「プロドラッグ」は、一又は複数の実施形態において、生体内で容易に加水分解され、上記化合物を再生するものが挙げられ、例えばカルボキシル基を有する化合物であればそのカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物、アルキルチオカルボニル基となった化合物、又はアルキルアミノカルボニル基となった化合物が挙げられる。また、例えばアミノ基を有する化合物であれば、そのアミノ基がアルカノイル基で置換されアルカノイルアミノ基となった化合物、アルコキシカルボニル基により置換されアルコキシカルボニルアミノ基となった化合物、アシロキシメチルアミノ基となった化合物、又はヒドロキシルアミンとなった化合物が挙げられる。また例えば水酸基を有する化合物であれば、その水酸基が前記アシル基により置換されてアシロキシ基となった化合物、リン酸エステルとなった化合物、又はアシロキシメチルオキシ基となった化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化に用いる基のアルキル部分としては後述するアルキル基が挙げられ、そのアルキル基は置換(例えば炭素原子数1~6のアルコキシ基等により)されていてもよい。一又は複数の実施形態において、例えばカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物を例にとれば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどの低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニル、メトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2-メトキシエトキシカルボニル、2-メトキシエトキシメトキシカルボニル、ピバロイロキシメトキシカルボニルなどのアルコキシ基により置換された低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニルが挙げられる。

【0033】
本開示の医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、上記阻害物質を有効成分として含有し、さらに、医薬的に許容される担体、防腐剤、希釈剤、賦形剤又はその他の医薬的に許容される成分を含んでよい。

【0034】
本開示において「医薬組成物」は、一又は複数の実施形態において、周知の製剤技術を適用し、投与形態に適した剤形とすることができる。その投与形態としては、これらに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤等の剤形による経口投与が挙げられる。或いは、注射剤、液剤、エアゾール剤、座剤、貼付剤、パップ剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤、点眼剤等の剤形による非経口投与を挙げることができる。これらの製剤は、これらに限定されないが、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造されうる。

【0035】
前記賦形剤としては、これらに限定されないがデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。前記コーティング剤としては、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。前記結合剤としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。前記崩壊剤としては、これらに限定されないが、前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。前記安定化剤としては、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。前記矯味矯臭剤としては、これらに限定されないが、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。

【0036】
また、液剤の製造には、溶媒として、これらに限定されないが、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができ、必要に応じて界面活性剤又は乳化剤等も使用できる。前記界面活性剤又は乳化剤としては、これらに限定されないが、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。

【0037】
本開示に係る医薬組成物の使用方法は、症状、年齢、投与方法等により異なりうる。使用方法は、これらに限定されないが、有効成分である上記化合物の体内濃度が100nM~1mMの間のいずれかになるように、間欠的若しくは持続的に、経口、経皮、粘膜下、皮下、筋肉内、血管内、脳内、又は腹腔内に投与することができる。限定されない実施形態として、経口投与の場合、対象(ヒトであれば成人)に対して1日あたり、前記一般式(I)で表される化合物に換算して、下限として0.01mg(好ましくは0.1mg)、上限として、2000mg(好ましくは500mg、より好ましくは100mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。限定されない実施形態として、静脈内投与の場合には、対象(ヒトであれば成人)に対して1日当たり、下限として0.001mg(好ましくは0.01mg)、上限として、500mg(好ましくは50mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。

【0038】
[ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療]
本開示は、一又は複数の実施形態において、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の方法であって、本開示に係る医薬組成物を対象に投与することを含む方法に関する。本開示に係る医薬組成物の投与は、一又は複数の実施形態において、前述の医薬組成物の使用方法に準じることができる。対象としては、ヒト、ヒト以外の動物が挙げられる。

【0039】
本開示は、一又は複数の実施形態において、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための有効成分である上記化合物又はその製薬上許容される塩の使用に関する。
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物を製造するための有効成分である上記化合物又はその製薬上許容される塩の使用に関する。

【0040】
[スクリーニング方法]
本開示は、一態様において、ポリグルタミン凝集体の形成に影響を与える物質のスクリーニング方法に関する。本態様のスクリーニング方法は、
レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現するアッセイ細胞をテスト物質と接触させて培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(A)を測定すること、
前記アッセイ細胞を該テスト物質と接触させることなく培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(B)を測定すること、
シグナル(A)とシグナル(B)とを比較すること、及び、
前記比較に基づいてシグナル(B)よりもシグナル(A)を低減させるテスト物質を候補物質として選択することを含む。

【0041】
本開示にかかるスクリーニング方法におけるアッセイ細胞は、レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現可能な遺伝子を有する。アッセイ細胞は、一又は複数の実施形態において、レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンのmRNAが発現されうるように構成及び適合された遺伝子発現ベクターを細胞に導入することで作製できる。アッセイ細胞の作製に使用する、すなわち、前記ベクターの導入対象となる細胞は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、哺乳類細胞である。哺乳類細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト、ウシ、ネコ、サル、イヌ、ハムスター、ミンク、マウス、ブタ、ウサギ、ラットの細胞である。細胞の種類は、特に制限されないが、一又は複数の実施形態において、神経細胞又はその培養細胞が挙げられる。前記ベクターは、一過性発現を行うタイプであってもよく、安定発現を行うタイプであってもよい。また、遺伝子発現ベクターのプロモーターは、アッセイ細胞内でタンパク質の発現を誘導できる、従前知られた又は今後開発されるプロモーターを使用できる。前記レポーター蛋白質としては、一又は複数の実施形態において、発光蛋白質が挙げられ、例えば、蛍光蛋白質が挙げられる。
レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現可能な遺伝子としては、実施例に記載のものが使用できる。

【0042】
本開示において、仮想細胞体領域とは、細胞核の周りを含む所定の領域をいう。この領域にあるレポーターシグナルを画像分析で測定することにより、ポリグルタミン凝集体を感度よく検出できる。
本態様のスクリーニング方法の一又は複数の実施形態として、仮想細胞体領域のポリグルタミンタンパク存在領域におけるシグナルの輝度総計と、存在領域の面積とから、ポリグルタミンタンパク存在領域内平均輝度を算出することが挙げられる。
仮想細胞体領域の設定は、例えば、核の周辺域を一定の画素数幅で拡張した領域を含む領域として行うことができる。一般に、哺乳細胞の画像における細胞核はDNA染色剤DAPIによって染色される一領域として定義される。細胞核は細胞に一つのみ存在し、細胞体はそれを囲む空間として捉えられる。例えば、DAPI染色領域の撮像画像において各細胞核領域を定義し、それより一定の画素数の幅を持つ領域までをその細胞核に付属する細胞質として定義する。この同定された細胞質領域の中に存在する一定輝度以上のレポーター蛍光領域を当該核/細胞に帰属するポリグルタミンタンパク存在領域とする。この存在領域内における輝度総計と、同定された存在領域の面積を計算し、ポリグルタミンタンパク存在領域内平均輝度を算出する。凝集体は画像上でレポーター由来蛍光値の高い領域として定義されるため、上記方法において同定されるポリグルタミンタンパク存在領域は形成されない場合と比べ相対的に狭く同定される。したがって、凝集体が仮想細胞体領域に有意に形成された場合、ポリグルタミンタンパク存在領域内平均輝度の凝集体形成有無に対する差は、総計の差よりも大きく、さらに凝集体の大小に由来する測定結果のバラつきが相殺され、したがって測定精度が上昇する。

【0043】
すなわち、本開示は以下の一又は複数の実施形態に関しうる;
[1] 血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-Met阻害化合物、及びVEGFRとc-Metとの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも一種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
[2] 前記阻害化合物が下記式(I)で表わされる化合物又はその製薬上許容される塩である、[1]記載の医薬組成物。
【化18】
JP2018203559A1_000020t.gif
[式(I)において、
1は、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
Wは、
【化19】
JP2018203559A1_000021t.gif
であり、
2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基であり、
1は、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であり、
2及びYは、それぞれ独立して、C1-4アルキレン基、ハロゲン原子で置換されたC1-4アルキレン基、又はイミノ基であるか、あるいは、
2及びYは、aで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有し、
Zは、
【化20】
JP2018203559A1_000022t.gif
であり、
4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、又はハロゲン原子で置換されたC1-4アルキル基、アミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基であるか、あるいは、
4及びR5は、b及びcで印をつけた原子と共に、芳香族環又は複素芳香族環を形成し、前記環は、無置換であるか、あるいは、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基、C1-4アルキルオキシ基、又はハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキルオキシ基である置換基を1つ以上有する。]
[3] 前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(II)で表わされる化合物である、[2]記載の医薬組成物。
【化21】
JP2018203559A1_000023t.gif
[式(II)において、
Wは、
【化22】
JP2018203559A1_000024t.gif
であり、R1-R5、X1、X2及びYは式(I)と同様である。]
[4] 前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(III)で表わされる化合物である、[2]記載の医薬組成物。
【化23】
JP2018203559A1_000025t.gif
[式(III)において、
Wは、
【化24】
JP2018203559A1_000026t.gif
であり、R1-R3、X1、X2及びYは式(I)と同様であり、
6及びR7は、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロゲン原子若しくは脂肪環若しくは複素環で置換されたC1-4アルキル基である。]
[5] 前記式(I)で表わされる化合物が、下記式(IV)で表わされる化合物である、[2]記載の医薬組成物。
【化25】
JP2018203559A1_000027t.gif
[式(IV)において、R1-R5、X2及びYは式(I)と同様である]
[6] 下記化合物1-11からなる群から選択される少なくとも1種類を有効成分として含有する、ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
【化26】
JP2018203559A1_000028t.gif
[7] 前記ポリグルタミン病が、ハンチントン病、遺伝性脊髄小脳変性症、又は、球脊髄性筋萎縮症である、[1]から[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8] ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の方法であって、[1]から[6]のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。[9] ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物を製造するための血管内上皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害化合物、c-Met阻害化合物、及びVEGFRとc-Metとの両方の阻害化合物からなる群から選択される少なくとも一種類の使用。
[10] ポリグルタミン病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物の有効成分の候補物質のスクリーニング方法であって、
レポーター蛋白質と融合したポリグルタミンを発現するアッセイ細胞をテスト物質と接触させて培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(A)を測定すること、
前記アッセイ細胞を該テスト物質と接触させることなく培養し、該アッセイ細胞の仮想細胞体領域にあるレポーターシグナル(B)を測定すること、
シグナル(A)とシグナル(B)とを比較すること、及び、
前記比較に基づいてシグナル(B)よりもシグナル(A)を低減させるテスト物質を候補物質として選択することを含む、スクリーニング方法。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本開示中に引用された文献は、すべて本開示の一部として組み入れられる。
【実施例】
【0045】
実験例1:ポリグルタミン凝集体の形成に影響を与える物質のスクリーニング
細胞内でポリグルタミン凝集体を形成させる系として、宿主の神経細胞(Neuro2a細胞)に図1に記載のようなレポーターが融合したポリグルタミンの発現系が導入された細胞(以下、「ポリQ細胞」という)を利用した(Matsumoto et al. Molecular Cell, 2011;44:279-289)。
ポリQ細胞を用い、図2に示すスキームでスクリーニングを行った。まず、ポリQ細胞を播種して1日培養したあと(高グルコースDMEM培地、10% FBS、100u/mL ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン)、4mM dibutylil cyclic AMP (dbcAMP)を添加して分化誘導するとともに、10μg/ml Doxicyclin (DOX)を添加してレポーターが融合したポリグルタミンの発現誘導を行い、さらに、テスト化合物を添加する(10μM、コントロールは0.1% DMSO)。この後2日間培養した細胞を4% パラホルムアルデヒド(PFA)、4℃、30分の処理で固定し、DAPIで核染色をした後、細胞イメージアナライザーArrayScan VTiで測定した。測定は、核の周辺領域と仮想細胞体領域と設定し、該領域にあるポリグルタミン凝集体(Venus)の輝度を測定した。仮想細胞体領域を設定してその領域内の凝集体の輝度を測定し、平均化することで、図3に示すように、発現誘導(dbcAMP+DOX)の有無に応じた凝集体平均輝度の差が顕著になり、アッセイ系の最適度を表す指標であるZ' factorが0.73という良好な数値を示した。
また、この系において、1視野あたりのポリグルタミンの相対平均輝度蛍光がDMSOコントロールの50%となる濃度をIC50として測定した。
なお、仮想細胞体領域は、細胞イメージアナライザーArrayScan VTi搭載20倍対物レンズで画像を取得し、DAPI染色領域の撮像画像において各細胞核領域を定義し、それより15ピクセルの幅を持つ領域として定義した。
【実施例】
【0046】
上記のスクリーニングシステムと、京都大学医学研究支援センター保有の機能既知化合物コレクション(2520化合物)とを用いてスクリーニングを行った。その結果、下記化合物1-11を選出した。これらの化合物について、上記スクリーニング系において1視野におけるポリグルタミン凝集体の相対平均輝度蛍光がDMSOコントロールの50%となる濃度をIC50として測定した(n=2)。その結果を下記表1に示す。
【化27】
JP2018203559A1_000029t.gif
【実施例】
【0047】
【表1】
JP2018203559A1_000030t.gif
【実施例】
【0048】
上記化合物のうち、化合物1-5は、VEGFRインヒビターとして既知の化合物であった。また、化合物2-4は、VEGFR2インヒビター及びc-METインヒビターとして既知の化合物であった。化合物8は、MAPK/ERK kinase(MEK)インヒビターとして既知の化合物であった。
【実施例】
【0049】
実験例2:化合物4のポリグルタミン凝集体形成抑制能
播種後1日培養したポリQ細胞の培養液(高グルコースDMEM培地、10%FBS、100u/mL ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)に、4 mM dbcAMP、10μg/ml Doxを添加して24hレポーターを発現誘導した。その後10μg/ml Doxを除いた培養液(高グルコースDMEM培地、10%FBS、100u/mL ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)に置換し、ついで化合物4(10nM-10μM)を添加して2日間培養後、4% PFAで固定し、DAPIで核染色をした後、仮想細胞体領域内の凝集体の発光輝度を細胞イメージアナライザーで測定した。その結果を図4に示す。
【実施例】
【0050】
図4に示すとおり、化合物4は、レポーター発現後に誘導濃度依存的にポリグルタミン凝集体の形成を阻害した。本実験では化合物4の添加はレポーターの一過的発現後に添加しても凝集体抑制効果が見られており、本薬剤の作用点はレポーター構築時に利用しているtet-onプロモーターの抑制による偽陽性でないことも示された。
【実施例】
【0051】
実験例3:化合物4とレポーター蛋白質量との関連性
播種後1日培養したポリQ細胞の培養液(高グルコースDMEM培地、10%FBS、100u/mL ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)に、4 mM dbcAMP、10μg/ml Doxを添加して24hレポーターを発現誘導した。その後10μg/ml Doxを除いた培養液(高グルコースDMEM培地、10%FBS、100u/mL ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)に置換し、ついで化合物4(10nM-10μM)を添加して2日間培養した。その後、細胞層タンパク及びRNAを回収し、ウェスタンブロッティングでレポーター蛋白質(Venus)量の測定、及びリバーストランスクリプション ポリメラーゼチェインリアクション(RT-PCR)法によりレポーター遺伝子発現量を測定した。その結果を図5に示す。
【実施例】
【0052】
図5に示すとおり、化合物4は濃度依存的にレポーター蛋白質の発現量、及びRNA量を減少させていた。図4の結果と合わせ、本化合物によりレポータータンパク質ないしRNAの分解促進が起こっていることが示唆される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4