TOP > 国内特許検索 > 発酵物の製造方法、エタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法、ならびに発酵促進剤 > 明細書

明細書 :発酵物の製造方法、エタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法、ならびに発酵促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-065549 (P2020-065549A)
公開日 令和2年4月30日(2020.4.30)
発明の名称または考案の名称 発酵物の製造方法、エタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法、ならびに発酵促進剤
国際特許分類 C12P   1/00        (2006.01)
C12P   7/10        (2006.01)
C12P   7/56        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
FI C12P 1/00 Z
C12P 7/10
C12P 7/56
C12N 1/00 Z
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 27
出願番号 特願2019-192950 (P2019-192950)
出願日 令和元年10月23日(2019.10.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)木科学情報 25巻 別冊1号(発行日:平成30年11月2日) (2)第25回日本木材学会九州支部大会(福岡)(開催日:平成30年11月16日) (3)福岡大学工学集報 第101・102号(発行日:平成31年3月20日) (4)福岡大学 新技術説明会(開催日:令和1年5月21日) (5)https://www.jst.go.jp/tt/fair/(ウェブサイトの掲載日:令和1年6月18日) (6)https://www.ij2019.jp/exhibitor/jss20190406.html(ウェブサイトの掲載日:令和1年7月18日) (7)イノベーション・ジャパン2019(開催日:令和1年8月29~30日) (8)アグリバイオ 2019年9月号(発行日:令和1年9月20日) (9)九州・山口ベンチャーマーケット2019 大学合同新技術説明会(開催日:令和1年10月7日)
優先権出願番号 2018199484
優先日 平成30年10月23日(2018.10.23)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】重松 幹二
【氏名】正本 博士
【氏名】松山 雅子
【氏名】田中 亜依
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
Fターム 4B064AC03
4B064AD33
4B064AH19
4B064CA06
4B064CC06
4B064CC07
4B064CC10
4B064CC12
4B064CD19
4B064DA16
4B065AA80X
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB26
4B065BB29
4B065BC02
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC12
4B065BC26
4B065CA06
4B065CA10
要約 【課題】 アルコール発酵や乳酸発酵を促進することができる、新たな添加剤を用いた発酵物の製造方法を提供する。また、前記発酵物の製造方法を利用したエタノールの製造方法および乳酸発酵物の製造方法を提供する。また、新たな発酵促進剤を提供する。
【解決手段】 マオウ由来組成物の存在下で、糖類を発酵させて発酵物を得る、発酵物の製造方法。マオウ由来組成物の存在下で、酵母により糖類をアルコール発酵させてエタノールを生成するエタノール製造工程を有するエタノールの製造方法。マオウ由来組成物の存在下で、乳酸菌により糖類を乳酸発酵させて乳酸発酵物を生成する乳酸発酵物製造工程を有する乳酸発酵物の製造方法。マオウ抽出残渣を含む発酵促進剤。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
マオウ由来組成物の存在下で、糖類を発酵させて発酵物を得る、発酵物の製造方法。
【請求項2】
前記マオウ由来組成物が、マオウ抽出物である請求項1に記載の発酵物の製造方法。
【請求項3】
前記マオウ由来組成物が、マオウ抽出残渣である請求項1に記載の発酵物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の発酵物の製造方法を利用するエタノールの製造方法であり、
前記マオウ由来組成物の存在下で、酵母により前記糖類をアルコール発酵させてエタノールを生成するエタノール製造工程を有するエタノールの製造方法。
【請求項5】
前記糖類が、セルロース系バイオマスを糖化したものである請求項4に記載のエタノールの製造方法。
【請求項6】
前記エタノール製造工程が、前記セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化する糖化処理と、前記糖化処理により得られた糖類を前記酵母によりアルコール発酵させてエタノールを生成する発酵処理とを行う糖化発酵工程である請求項5に記載のエタノールの製造方法。
【請求項7】
前記糖化発酵工程において、前記酵母の至適温度よりも高い温度で、前記糖化処理と前記発酵処理とを行う請求項6に記載のエタノールの製造方法。
【請求項8】
前記エタノール製造工程の前に、前記セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖類に糖化する糖化工程を有する請求項5に記載のエタノールの製造方法。
【請求項9】
前記セルロース系バイオマスが、リグニンを除去するための前処理が施されたものである請求項5~8のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
【請求項10】
請求項1から3のいずれかに記載の発酵物の製造方法を利用する乳酸発酵物の製造方法であり、
前記マオウ由来組成物の存在下で、乳酸菌により前記糖類を乳酸発酵させて乳酸発酵物を生成する乳酸発酵物製造工程を有する乳酸発酵物の製造方法。
【請求項11】
マオウ抽出残渣を含む発酵促進剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵物の製造方法に関する。特に、本発明は、酵母によるアルコール発酵によりエタノールを製造するエタノールの製造方法に関する。また、乳酸菌による乳酸発酵により乳酸発酵物を製造する乳酸発酵物の製造方法に関する。また、アルコール発酵や乳酸発酵等を促進させる発酵促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、燃料、化成品やポリマーなどの素材などの製造に、微生物による発酵が利用されている。
【0003】
従来、日本酒やビールなどの製造に、酵母を用いたアルコール発酵が利用されている。アルコール発酵を促進させる方法として、例えば、特許文献1には、サンショウの果皮又は果実の揮発成分をイオン交換樹脂又はゲル濾過材に吸着させた吸着物からなることを特徴とするアルコール発酵促進剤が開示されている。
【0004】
一方、近年、石油代替燃料としてエタノールが注目されており、セルロース系バイオマス等のバイオマス原料から酵母を利用してエタノールを製造する方法が検討されている。セルロース系バイオマスからエタノールを製造する場合、セルロース系バイオマスをグルコースに加水分解する糖化ステップと、グルコースからエタノールを得る発酵ステップの2つに大きく分けられる。これまで、糖化ステップにおける、セルロース系バイオマスに含まれる発酵阻害物質であるリグニンを除去するための前処理や、発酵阻害物質であるフルフラールが生成しない加水分解技術については、種々の検討がされている。
【0005】
また、製造効率の観点から、糖化ステップと発酵ステップとを同時に行う同時糖化発酵(Simultaneous Saccharification and Fermentation(SSF))が検討されている。この方法では1つの反応器で糖化と発酵が可能となる。さらに、糖化生成物であるグルコースも即座にエタノール発酵で消費されるため、セルラーゼ等の酵素の生成物阻害を抑えることができる。そのため、糖化ステップと発酵ステップとを分離して行う分離式よりエタノール生成効率が良いと考えられている。
【0006】
同時糖化発酵の場合、糖化で用いられる酵素の至適条件は通常約50℃で酸性であり、一方、発酵で用いられる酵母の至適条件は通常約30℃で中性と、両ステップの至適条件は大きく異なる。同時糖化発酵では、糖化または発酵のどちらかの条件に合わせる必要があり、他方の活性が低下するという問題がある。そのため、遺伝子組み換え等によって酵母や真菌類の高温耐性を改良する研究が行われている。また、同時糖化発酵によるエタノールの製造の改良のため、温度やpHなどの条件を制御する検討も行われている。
【0007】
例えば、特許文献2には、セルロース系原料を用いた同時糖化発酵によりエタノールを生産する方法において、同時糖化発酵反応の原料を調整する段階でpHの値が同時糖化発酵反応の目的とするpHの値よりも高い値に予め設定することを特徴とするエタノール生産方法が開示されている。
また、特許文献3には、セルロース原料を酵素によって加水分解する糖化工程と、発酵菌によるエタノール発酵工程を一つの反応槽内で同時に行う同時糖化発酵方法において、同時糖化反応中に初期反応温度から段階的にまたは連続的に反応温度を低下させることを特徴とする同時糖化発酵方法が開示されている。
【0008】
バイオマス原料からのエタノールの製造と同様に、環境負荷の観点から、バイオプラスチックが注目されている。セルロース系バイオマスを加水分解したグルコースを乳酸発酵させることで、乳酸を得ることができる。この乳酸は、バイオプラスチックの原料として使用することもできる。
【0009】
例えば、特許文献4には、D-乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD-乳酸を発酵生産するD-乳酸の製造方法であって、D-乳酸生産菌による発酵が、シアノコバラミンを添加した培地中で行われることを特徴とするD-乳酸の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2013-123411号公報
【特許文献2】特開2011-055715号公報
【特許文献3】特開2010-246422号公報
【特許文献4】特開2016-168030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、セルロース系バイオマスからエタノールを製造する場合、糖化ステップと発酵ステップとに分けることができる。発酵ステップでは、未分別の原料に由来する成分や糖化ステップで副生する成分により、酵母による発酵が阻害される可能性が考えられる。しかしながら、従来、発酵ステップよりも糖化ステップが律速となり、一旦グルコースになってしまえば酵母による発酵は当然進行するものとみなされていた。そのため、グルコース等のアルコール発酵を促進させるためには添加剤等の検討がされているが、セルロース系バイオマスからのエタノール製造においては、発酵ステップに着目した検討はほとんど行われていなかった。
【0012】
酵母の発酵反応を阻害する成分の影響により、発酵に対する反応促進剤等の添加剤の本来の効果が低下したり、発揮できない場合も考えられ、発酵反応の阻害成分の存在に影響されない添加剤が求められる。しかしながら、特許文献1のアルコール発酵促進剤についても、酵母による発酵を阻害する成分による影響等は検討されていない。
【0013】
また、同時糖化発酵における遺伝子組み換え等による高温耐性酵母や真菌類の改良については、環境への危険性やコストの面から問題があった。特許文献2や3に記載のエタノールの製造方法においても、温度やpHを細かく制御する必要があった。
【0014】
かかる状況下、本発明の目的は、アルコール発酵を促進することのできる新たな添加剤を用いたエタノールの製造方法を提供することである。
また、より簡単な方法で効率的にエタノールを製造することのできるエタノールの製造方法を提供することである。特に、セルロース系バイオマスから、より簡単な方法で効率的にエタノールを製造することのできるエタノールの製造方法を提供することである。
また、本発明は、新たなアルコール発酵促進剤の提供を目的とする。
【0015】
乳酸発酵についても、利用拡大の観点などから、乳酸発酵物を効率的に製造できる方法が求められていた。
【0016】
かかる状況下、本発明の目的は、乳酸発酵を促進することのできる新たな添加剤を用いた乳酸発酵物の製造方法を提供することである。また、本発明は、新たな乳酸発酵促進剤の提供を目的とする。
【0017】
本発明は、新たな添加剤を用いた発酵物の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、新たな発酵促進剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0019】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> マオウ由来組成物の存在下で、糖類を発酵させて発酵物を得る、発酵物の製造方法。
<2> 前記マオウ由来組成物が、マオウ抽出物である<1>に記載の発酵物の製造方法。
<3> 前記マオウ由来組成物が、マオウ抽出残渣である<1>に記載の発酵物の製造方法。
<4> <1>から<3>のいずれかに記載の発酵物の製造方法を利用するエタノールの製造方法であり、前記マオウ由来組成物の存在下で、前記酵母により糖類をアルコール発酵させてエタノールを生成するエタノール製造工程を有するエタノールの製造方法。
<5> 前記糖類が、セルロース系バイオマスを糖化したものである<4>に記載のエタノールの製造方法。
<6> 前記エタノール製造工程が、前記セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化する糖化処理と、前記糖化処理により得られた糖類を前記酵母によりアルコール発酵させてエタノールを生成する発酵処理とを行う糖化発酵工程である<5>に記載のエタノールの製造方法。
<7> 前記糖化発酵工程において、前記酵母の至適温度よりも高い温度で、前記糖化処理と前記発酵処理とを行う<6>に記載のエタノールの製造方法。
<8> 前記エタノール製造工程の前に、前記セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖類に糖化する糖化工程を有する<5>に記載のエタノールの製造方法。
<9> 前記セルロース系バイオマスが、リグニンを除去するための前処理が施されたものである<5>から<8>のいずれかに記載のエタノールの製造方法。
<10> <1>から<3>のいずれかに記載の発酵物の製造方法を利用する乳酸発酵物の製造方法であり、前記マオウ由来組成物の存在下で、乳酸菌により前記糖類を乳酸発酵させて乳酸発酵物を生成する乳酸発酵物製造工程を有する乳酸発酵物の製造方法。
<11> マオウ抽出残渣を含む発酵促進剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発酵を促進することのできる新たな添加剤を用いた発酵物の製造方法が提供される。また、本発明によれば、新たな発酵促進剤が提供される。
【0021】
本発明によれば、アルコール発酵を促進することのできる新たな添加剤を用いたエタノールの製造方法が提供される。
また、より簡単な方法で効率的にエタノールを製造することのできるエタノールの製造方法が提供される。前記エタノールの製造方法によれば、特に、セルロース系バイオマスから、より簡単な方法で効率的にエタノールを製造することができる。
また、本発明によれば、新たなアルコール発酵促進剤が提供される。
【0022】
さらに、本発明によれば、乳酸発酵を促進することのできる新たな添加剤を用いた乳酸発酵物の製造方法が提供される。また、本発明は、新たな乳酸発酵促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエタノールの製造方法の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明のエタノールの製造方法の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明のエタノールの製造方法の一例を示すフロー図である。
【図4】実験例1の同時糖化発酵によるエタノール発酵において、グルコース濃度[g/L]およびエタノール濃度[g/L]を、処理時間[h]に対してプロットした図である。
【図5】エタノール発酵における、二酸化炭素の発生量(y)と発酵時間(t)との関係の典型例を表す図である。
【図6】実験例2-1~実験例2-4のエタノール発酵の発酵遅延時間ts[h]を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした図である。
【図7】実験例2-1~実験例2-4のエタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした図である。
【図8】実験例2-1~実験例2-4のエタノール発酵の発酵終了後のエタノール収率[%]を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした図である。
【図9】実験例3-1、実験例3-2のエタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を、フルフラール濃度[g/L]に対してプロットした図である。
【図10】実験例3-1、実験例3-2のエタノール発酵の発酵から約6日後のエタノール濃度[g/L]を、フルフラールの濃度[g/L]に対してプロットした図である。
【図11】実験例4のエタノール発酵の発酵遅延時間ts[h]を麻黄湯残渣の煎じ回数に対してプロットした図である。
【図12】実験例4のエタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を麻黄湯残渣の煎じ回数に対してプロットした図である。
【図13】エキスの添加効果であるαs値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβs値を縦軸にとり、生薬毎の発酵遅延時間への影響を表した図である。
【図14】エキスの添加効果であるαr値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβr値を縦軸にとり、生薬毎の発酵速度への影響を表した図である。
【図15】エキスの添加効果であるαe値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβe値を縦軸にとり、生薬毎の発酵終了時間への影響を表した図である。
【図16】エキスの添加効果であるαEtOH値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβEtOH値を縦軸にとり、生薬毎の生成エタノール量への影響を表した図である。
【図17】廃糖蜜を用いたエタノール発酵における、発酵開始時間(発酵遅延時間)ts[h]、発酵速度r[(g/L)/h]、および発酵終了時間te[h]をプロットした図である。
【図18】乳酸発酵における、発酵時間[h]に対する生成有機酸量[mol/kg]をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。

【0025】
1.発酵物の製造方法
本発明は、マオウ由来組成物の存在下で、糖類を発酵させて発酵物を得る、発酵物の製造方法(以下、「本発明の発酵物の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。

【0026】
本発明の発酵物の製造方法の特徴のひとつは、マオウ由来組成物の存在下で発酵を行うことである。マオウ由来組成物の存在下で発酵を行うことにより、酵母や乳酸菌の活性を高めることができ、より短時間で発酵物を製造することができる。

【0027】
具体的には、本発明の発酵物の製造方法は、糖類からのエタノールの製造方法や、糖類からの乳酸発酵物の製造方法に利用することができる。

【0028】
以下、本発明の発酵物の製造方法を利用するエタノールの製造方法および本発明の発酵物の製造方法を利用する乳酸発酵物の製造方法を例にして、本発明の発酵物の製造方法に用いることのできるマオウ由来組成物や糖類、発酵条件などについて説明する。

【0029】
2.バイオエタノールの製造方法
本発明は、マオウ由来組成物の存在下で、酵母により糖類をアルコール発酵させてエタノールを生成するエタノール製造工程を有するエタノールの製造方法(以下、「本発明のエタノールの製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。

【0030】
本発明のエタノールの製造方法の特徴のひとつは、エタノール製造工程をマオウ由来組成物の存在下で行うことである。
マオウ由来組成物の存在下でアルコール発酵を行うことにより、酵母の活性を高めることができ、より短時間でエタノールを製造することができる。

【0031】
また、アルコール発酵させるときの原料に発酵阻害物質であるフルフラ—ル等が不純物として混入している場合にも、マオウ由来組成物は、酵母の働きを高める効果を発揮することができる。
バイオマス原料からエタノールを製造する場合、バイオマス原料を糖化して糖類とし、さらに糖類をアルコール発酵させることでエタノールを製造することができる。このようなバイオマス原料からのエタノールの製造では、フルフラール等が不純物としてバイオマス原料に混入しやすい。マオウ由来組成物による酵母の活性化に対してはフルフラール等による影響が小さいため、本発明のエタノールの製造方法をバイオマス原料からのエタノールの製造方法としても、効率的にエタノールを製造することができる。

【0032】
さらに、マオウ由来組成物を用いることで、同時糖化における反応温度の適用範囲を拡張できることを見出した。これにより、発酵の至適温度からずれて、糖化酵素の至適温度により近い条件においても、酵母の活性を維持したまま同時糖化発酵を進行させることができる。糖化酵素の至適温度により近い条件で反応を行うことで、律速となる糖化を促進することができるため、より短時間でエタノールを製造することができる。

【0033】
[マオウ由来組成物]
本発明で用いられるマオウ由来組成物は、マオウ生薬含有物、マオウ抽出物、マオウ抽出残渣やこれらの混合物等が挙げられる。

【0034】
マオウ(麻黄)とは、マオウ科マオウ属に属する常緑低木の植物である。マオウ由来組成物としては、このマオウの茎、葉、花、果実、根等に由来したものを用いることができ、マオウの地上茎に由来した組成物を用いることが好適である。
中でも、シママオウ(Ephedra sinca Stapf.)、チュウマオウ(Ephedra intermedia Schrenk et C.A. meyer)またはモクゾクマオウ(Ephedra equisetina Bunge)の地上茎を乾燥したものがマオウ生薬として用いられており、プソイドエフェドリンやエフェドリン等が有効成分として含まれている。このマオウ生薬を含むマオウ生薬含有物やこれに由来するマオウ抽出物、マオウ抽出残渣を用いることが好ましく、マオウ由来組成物は、マオウ抽出物またはマオウ抽出残渣がより好ましい。

【0035】
マオウ生薬含有物としては、マオウ生薬を含むものであればよく、マオウ生薬を単独で用いても、マオウ生薬とその他の生薬の混合物であるマオウ含有漢方薬を用いてもよい。マオウ含有漢方薬としては、葛根湯、麻黄湯、小青竜湯、麻杏甘石湯等が挙げられる。

【0036】
マオウ生薬やマオウ含有漢方薬の態様は特に限定されず、刻んだもの(刻み)や粉末等を用いることができる。

【0037】
マオウ抽出物は、マオウ生薬含有物からマオウに含まれる有効成分を溶媒抽出し、固形分と分離した液体成分由来のものである。マオウ抽出残渣は、マオウ抽出物の調製時に分離される固形分である。マオウ抽出物およびマオウ抽出残渣について詳しくは後述する。

【0038】
[酵母]
酵母としては、エタノール発酵ができるものであれば、特に限定されない。例えば、酵母は、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロマイセス属などを用いることができる。また、それらの遺伝子組換体でもよい。
これらの具体例としては、サッカロマイセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pasteurianus)、サッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)、シゾサッカロマイセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)等を挙げることができる。

【0039】
[糖類]
糖類は、酵母によりアルコール発酵されエタノールと二酸化炭素とを生成できるものであればよく、グルコース、フルクトース、スクロース(ショ糖)などが挙げられる。また、糖類は、サトウキビや甜菜などの糖蜜や廃糖蜜に含まれる糖類であってもよい。

【0040】
また、牛乳やヤギ乳などの動物乳、それらの脱脂乳、脱脂粉乳溶液、全粉乳溶液、ホエー等を糖類が含まれる原料として用いてもよい。

【0041】
また、糖類は、バイオマス原料を糖化したものでもよい。バイオマス原料は、特に限定されず、生物由来の有機資源であればよく、セルロースやでんぷん質を含むバイオマスを用いることができる。

【0042】
食料と競合しないことから、糖類は、セルロース系バイオマスを糖化したものであることが好ましい。このセルロース系バイオマスを糖化し得られる糖類は、後述の発酵糖化工程において反応途中に生成される糖類や糖化工程における糖化液に含まれる糖類である。すなわち、本発明のエタノールの製造方法は、セルロース系バイオマスからのエタノールの製造方法であることが好ましい。

【0043】
なお、糖化とは、バイオマス原料に含まれるセルロースやでんぷん質等を、アルコール発酵が可能な、グルコースやフルクトース等の単糖類、アミロースやセロビオース等の二糖類に分解することである。糖化は、糖化酵素を用いる方法や、酸やアルカリを用いる方法で行うことができる。環境への負荷が小さいことや過分解が起こりにくいため、糖化は、糖化酵素による糖化であることがより好ましい。

【0044】
(セルロース系バイオマス)
セルロース系バイオマスは、主に、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンにより構成されるバイオマスである。具体的には、木材やイナワラ、ムギワラ、コーンストーバー、バガス、もみがら、パーム椰子残渣、キャッサバ残渣、竹、パルプ等を上げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0045】
糖化や発酵の阻害物質となるため、セルロース系バイオマスは、リグニンを除去するための前処理が施されたものであることが好ましい。リグニンは、例えば、水熱分解等により除去することができる。リグニンを除去したセルロース系バイオマスを用いることで、糖化をより効率的に進行させることができる。なお、リグニンを除去するための前処理が施されたセルロース系バイオマスは、リグニンが完全に除去されている必要はなく、糖化を促進させることができれば、リグニンが残存していてもよい。

【0046】
また、前述のように、本発明のエタノールの製造方法では、前処理によりセルロース系バイオマスにフルフラール等が不純物として混入しても、マオウ由来組成物による発酵反応の活性向上の効果を得ることができる。そのため、本発明のエタノールの製造方法では、前処理に起因する副生成物を含むセルロース系バイオマスであっても、安定してエタノールを製造することができる。
本発明のエタノールの製造方法では、リグニン除去のための前処理において、副生しやすいフルフラールを含むセルロース系バイオマスを用いることができる。このようなセルロース系バイオマスは、リグニンを除去するための前処理工程後の精製を簡素化できる。

【0047】
(糖化酵素)
糖化酵素としては、バイオマス原料を加水分解(解糖)できる酵素であれば特に限定されず、バイオマス原料の種類に応じて適宜決定すればよい。セルロース系バイオマスをバイオマス原料とする場合、糖化酵素として、セルロースの分解酵素であるセルラーゼやヘミセルラーゼ等を用いることができる。具体的には、「セルロシンAC40」(エイチビィアイ株式会社)、「セルロシンAL8」(エイチビィアイ株式会社)、「スクラーゼ」(三菱ケミカルフーズ株式会社)、「セルラーゼ“オノヅカ”R-10」(ヤクルト薬品工業株式会社)、「セルラーゼ“オノヅカ”RS」(ヤクルト薬品株式会社)、「セルラーゼA「アマノ」3」(天野エンザイム株式会社)、「セルラーゼT「アマノ」4」(天野エンザイム株式会社)等が挙げられる。

【0048】
また、バイオマス原料がサトウキビ等のでんぷん質を主とする場合には、アミラーゼ等の酵素を用いることができる。

【0049】
本発明のエタノールの製造方法が、セルロース系バイオマス等のバイオマス原料からエタノールを製造する方法である場合、糖化およびアルコール発酵を行う必要がある。この糖化およびアルコール発酵は順次的に行っても、併行して行ってもよい。

【0050】
また、エタノール製造工程終了後、生成されたエタノールは、未反応の原料や糖化酵素、酵母等との混合物であるエタノール含有液として得られる。エタノールの回収は、エタノール製造工程後に、生成されたエタノールを含むエタノール含有液を蒸留や濃縮等することで行うことができる。蒸留や濃縮等によるエタノールの回収は従来公知の方法を用いることができる。

【0051】
以下、本発明のエタノールの製造方法の形態についてより詳しく説明する。

【0052】
[本発明のエタノールの製造方法(1)]
本発明のエタノールの製造方法は、エタノール製造工程を有し、エタノール製造工程が、セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化する糖化処理と、糖化処理により得られた糖類を酵母によりアルコール発酵させてエタノールを生成する発酵処理とを行う糖化発酵工程である製造方法(以下、「本発明のエタノールの製造方法(1)」とする。)とすることができる。

【0053】
すなわち、本発明のエタノールの製造方法(1)では、エタノール製造工程において、同一の反応容器の中で、セルロース系バイオマスと、糖化酵素と、酵母と、マオウ由来組成物とを混合して、セルロース系バイオマスと糖化酵素と酵母とマオウ由来組成物とを含む原料糖化発酵液を調製した後、この原料糖化発酵液を反応させることで、セルロース系バイオマスを糖化して糖類を生成させる反応を行いながら、得られた糖類をアルコール発酵させてエタノールを生成させる反応も併行して行うことができる。本発明のエタノールの製造方法(1)における糖化発酵工程は、いわゆる、糖化ステップ(糖化処理)と発酵ステップ(発酵処理)とを同時に行う同時糖化発酵を行う工程である。

【0054】
糖化酵素により糖化され生じた糖類は、直ちに酵母によるアルコール発酵に消費されるため、糖化における生成物阻害を低減することができる。さらに、本発明では、マオウ由来組成物を混合することにより、より高い温度域での酵母の活性を高めることができるため、糖化酵素の至適温度により近い条件で反応を行うことができる。

【0055】
糖化酵素は、セルロース系バイオマスに対して多すぎるとコスト高であり、少なすぎるとグルコースの生成速度が遅いという問題がある。そのため、セルロース系バイオマス1kgに対して、100g以上や500g以上とすることが好ましい。また、その上限は、セルロース系バイオマス1kgに対して、1kg以下や800g以下とすることが好ましい。例えばセルロシンAC40であれば、セルロース系バイオマス1kgに対して、600g程度とすることができる。

【0056】
酵母の使用量は、セルロース系バイオマスと、糖化酵素と、酵母と、マオウ由来組成物とを混合して調製される原料糖化発酵液において、初期酵母濃度が2×108cell/L程度がふさわしいが、初期酵母濃度は発酵に大きな影響を与えないため、特に限定されない。

【0057】
原料糖化発酵液の容積(L)に対するマオウ由来組成物の量(g)(マオウ由来組成物の量(g)/原料糖化発酵液の容積(L))は、セルロース系バイオマスや糖化酵素の種類等によって適宜調整されるものであるが、0.5g/L以上であることが好ましく、1g/L以上や3g/L以上としてもよい。また、その上限は、10g/L以下であることが好ましく、8g/L以下や7g/L以下としてもよい。マオウ由来組成物が少なすぎると発酵速度上昇の効果が十分に現れず、多すぎても発酵速度上昇には限界があるため不必要な添加となる。

【0058】
本発明のエタノールの製造方法(1)の糖化発酵工程における温度は、用いる糖化酵素や酵母の種類に応じて適宜決定される。前述のように、糖化と発酵とを併行して行う場合、糖化酵素の至適温度により近い温度条件とすることで、セルロース系バイオマスの糖化が促進されるが、酵母の至適温度からずれて反応を行うと、酵母の活性が低下するという問題があった。一方、本発明のエタノールの製造方法(1)では、マオウ由来組成物の存在下で糖化処理と発酵処理を行い、用いる酵母の至適温度よりも高い温度でも酵母の活性を維持することができる。そのため、本発明のエタノールの製造方法(1)では、糖化発酵工程において、酵母の至適温度よりも高い温度で糖化処理と発酵処理とを行うことが好ましい。これにより、糖化をより効率的に進行させることができる。

【0059】
酵母の至適温度よりも高い所定の温度で糖化処理と発酵処理を行うためには、糖化発酵工程において、原料糖化発酵液を所定の温度となるように加熱した後、反応終了までの原料糖化発酵液の液温の平均が所定の温度を維持するように管理し、反応を行えばよい。
糖化及び発酵処理を行う温度は、酵母の至適温度超、糖化酵素の至適温度以下で、酵母の活性を著しく低下させない範囲であればよい。例えば、原料糖化発酵液の液温が、酵母の至適温度より+1℃以上や+2℃以上高い温度となるように反応(糖化処理と発酵処理)を行うことが好ましい。その上限は、酵母の至適温度より+10℃以下や+7℃以下、+5℃以下程度の温度となるように反応を行うことができる。
なお、本発明において、「酵母の至適温度」とは、酵母の生育速度が最も速くなる温度を指す。また、「糖化酵素の至適温度」とは、糖化酵素の作用が最大となる温度を指す。

【0060】
具体的には、用いる酵母の種類にもよるが、原料糖化発酵液の液温を50℃以下として糖化処理と発酵処理とを行うことが好ましく、40℃以下がより好ましい。また、30℃以上で糖化処理と発酵処理とを行うことが好ましく、35℃以上がより好ましい。また、原料糖化発酵液の液温を36℃以上や37℃以上として糖化処理と発酵処理とを行ってもよい。

【0061】
原料糖化発酵液のpHは、用いる糖化酵素や酵母の種類に応じて適宜決定される。pHが低すぎても高すぎても、糖化酵素による反応性が低下したり、酵母が増殖できない。そのため、pHは、3.0以上が好ましく、4.0以上がより好ましく、4.5以上がさらに好ましい。また、pHの上限は、7.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましい。

【0062】
糖化発酵工程の時間は、製造スケール等により異なるものであるが、通常、12~120時間であり、12~72時間や12~24時間が好ましい。

【0063】
本発明のエタノールの製造方法(1)としては、例えば、図1に示すように、前処理工程と、糖化発酵工程と、エタノール回収工程とを有するエタノールの製造方法(1-1)とすることができる。
図1に示すエタノールの製造方法(1-1)では、前処理工程において、セルロース系バイオマスからリグニンを除去する。糖化発酵工程では、まず、リグニンが除去されたセルロース系バイオマスと、糖化酵素と、酵母と、マオウ由来組成物とを混合して原料糖化発酵液を調製する。次いで、原料糖化発酵液を糖化および発酵することで、エタノールを生成させて、エタノールを含むエタノール含有液を得る。さらに、エタノール回収工程において、糖化発酵工程で得られたエタノール含有液の蒸留、濃縮を行うことで、エタノールを得ることができる。

【0064】
[本発明のエタノールの製造方法(2)]
また、本発明のエタノールの製造方法は、エタノール製造工程を有し、エタノール製造工程の前に、セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖類に糖化する糖化工程を有する製造方法(以下、「本発明のエタノールの製造方法(2)」とする。)とすることができる。エタノール製造工程では、糖化工程にて得られた糖類が酵母によりアルコール発酵されてエタノールが生成するため、本発明のエタノールの製造方法(2)におけるエタノール製造工程は発酵工程といえる。

【0065】
(糖化工程)
本発明のエタノールの製造方法(2)の糖化工程は、エタノール製造工程(発酵工程)の前に行う工程であり、セルロース系バイオマスを糖化酵素により糖化する工程である。具体的には、バイオマス原料と、糖化酵素とを混合して原料糖化液を調製し、この原料糖化液中でバイオマス原料と糖化酵素とを反応させることで、セルロース系バイオマスが加水分解されて糖類を生成する。また、マオウ由来組成物は糖化速度に悪影響を与えないため、糖化工程において、原料糖化液を調製する段階で加えてもよいし、発酵工程にて加えてもよい。

【0066】
糖化工程における糖化反応の温度は、用いる糖化酵素の種類等に応じて適宜調整される。糖化反応の温度が高すぎると、糖化酵素が熱変性により失活しやすく、糖化反応の温度が低すぎると、反応速度が低下する傾向にある。本発明のエタノールの製造方法(2)では、通常、用いる糖化酵素の至適温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、反応終了までの原料糖化液の液温の平均が35℃以上となるように糖化反応を行うことが好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、その上限は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。

【0067】
糖化酵素は、セルロース系バイオマスに対して多すぎるとコスト高であり、少なすぎるとグルコースの生成速度が遅いという問題がある。そのため、セルロース系バイオマス1kgに対して、100g以上や500g以上とすることが好ましい。また、その上限は、セルロース系バイオマス1kgに対して、1kg以下や800g以下とすることが好ましい。例えばセルロシンAC40であれば、セルロース系バイオマス1kgに対して、600g程度とすることができる。

【0068】
原料糖化液のpHは、用いる糖化酵母の種類等に応じて適宜調整される。原料糖化液のpHが高すぎたり低すぎると反応速度が低下する傾向にある。そのため、原料糖化液のpHは2.5以上が好ましく、3以上がより好ましい。また、原料糖化液のpHの上限は、7以下が好ましく、6以下がより好ましい。
糖化工程の時間は、通常、12~120時間である。また、12~72時間や12~24時間であってもよい。

【0069】
(発酵工程)
本発明のエタノールの製造方法(2)の発酵工程(エタノール製造工程)は、マオウ由来組成物の存在下、糖化工程にて得られた糖類を酵母によりアルコール発酵させてエタノールを生成させる工程である。具体的には、糖化工程で得られた糖類を含む糖化液と、酵母とを混合し原料発酵液を調製し、この原料発酵液中で、糖類を酵母によりアルコール発酵することでエタノールを生成させる。また、マオウ由来組成物の存在下でアルコール発酵が進行するように、糖化工程においてマオウ由来組成物を混合しなかった場合は、原料発酵液を調製する段階において、マオウ由来組成物も混合する。

【0070】
発酵工程における酵母の使用量は、原料発酵液において、初期酵母濃度が2×108cell/L程度がふさわしいが、初期酵母濃度は発酵に大きな影響を与えないため、特に限定されない。

【0071】
マオウ由来組成物を糖化工程において混合する場合は、マオウ由来組成物は原料糖化液に対して任意の量となるように調整される。また、マオウ由来組成物を発酵工程において混合する場合は、マオウ由来組成物は原料発酵液に対して任意の量となるように調整される。
原料糖化液または原料発酵液の容積(L)に対するマオウ由来組成物の量(g)((マオウ由来組成物の量(g)/原料糖化液の容積(L))または(マオウ由来組成物の量(g)/原料発酵液の容積(L))は、0.5g/L以上であることが好ましく、1g/L以上や3g/L以上としてもよい。また、その上限は、10g/L以下であることが好ましく、8g/L以下や7g/L以下としてもよい。マオウ由来組成物が少なすぎると発酵速度上昇の効果が十分に現れず、多すぎても発酵速度上昇には限界があるため不必要な添加となる。

【0072】
発酵工程におけるアルコール発酵の温度は、用いる酵母の種類等に応じて適宜調整される。発酵の温度が高すぎても低すぎても、酵母が増殖しにくく、エタノールを得ることが困難となる。本発明のエタノールの製造方法(2)では、通常、用いる酵母の至適温度で反応を行うことが好ましい。そのため、高温耐性菌などの特殊な酵母でなければ、アルコール発酵終了までの原料発酵液の液温の平均が40℃以下となるようにアルコール発酵を行うことが好ましく、35℃以下がより好ましい。また、その下限は、25℃以上が好ましく、30℃以上がさらに好ましい。

【0073】
原料発酵液のpHは、用いる酵母の種類等に応じて適宜調整される。原料発酵液のpHが高すぎても低すぎても、酵母が増殖しにくく、エタノールを得ることが困難となる。そのため、原料発酵液のpHは5以上が好ましく、6以上がより好ましい。また、原料発酵液のpHの上限は、8以下が好ましく、7以下がより好ましい。

【0074】
発酵工程の時間は、通常、12~120時間であり、12~72時間や12~24時間が好ましい。

【0075】
本発明のエタノールの製造方法(2)としては、例えば、図2に示すように、前処理工程と、糖化工程(a)と、発酵工程(a)と、エタノール回収工程とを有するエタノールの製造方法(2-1)とすることができる。

【0076】
図2に示すエタノールの製造方法(2-1)では、前処理工程において、セルロース系バイオマスからリグニンを除去する。糖化工程(a)では、まず、リグニンが除去されたセルロース系バイオマスと、糖化酵素とを混合し原料糖化液を調製する。次いで、原料糖化液を糖化し、糖類を含む糖化液を得る。発酵工程(a)では、糖化工程(a)で得られた糖化液と、酵母と、マオウ由来組成物とを混合して原料発酵液を調製した後、発酵によりエタノールを生成させて、エタノールを含むエタノール含有液を得る。さらに、エタノール回収工程において、発酵工程(a)で得られたエタノール含有液の蒸留、濃縮を行うことで、エタノールを得ることができる。

【0077】
また、本発明のエタノールの製造方法(2)の例として、図3に示すように、前処理工程と、糖化工程(b)と、発酵工程(b)と、エタノール回収工程とを有するエタノールの製造方法(2-2)が挙げられる。
図3に示すエタノールの製造方法(2-2)は、図2に示すエタノールの製造方法(2-1)と糖化工程および発酵工程が異なる例である。
図3のエタノールの製造方法(2-2)では、糖化工程(b)において、リグニンが除去されたセルロース系バイオマスと、糖化酵素と、マオウ由来組成物を混合して原料糖化液を調製した後、糖化を行う。また、発酵工程(b)において、糖化工程(b)で得られた糖化液と、酵母とを混合し原料発酵液を調製した後、発酵を行い、エタノール含有液を得る。

【0078】
なお、糖化工程を必要としない、グルコース等の糖類からエタノールを製造する場合、エタノール製造工程は、グルコース等の糖類と、マオウ由来組成物と、酵母とを含む原料発酵液を調製した後、本発明のエタノールの製造方法(2)の発酵工程と同様にアルコール発酵を行う工程とすることができる。

【0079】
3.乳酸発酵物の製造方法
本発明は、マオウ由来組成物の存在下で、乳酸菌により糖類を乳酸発酵させて乳酸発酵物を生成する乳酸発酵物製造工程を有する乳酸発酵物の製造方法(以下、「本発明の乳酸発酵物の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。

【0080】
本発明の乳酸発酵物の製造方法の特徴のひとつは、乳酸発酵物製造工程をマオウ由来組成物の存在下で行うことである。マオウ由来組成物の存在下で乳酸発酵を行うことにより、より短時間で乳酸発酵物を製造することができる。

【0081】
[マオウ由来組成物]
本発明の乳酸発酵物の製造方法では、乳酸発酵促進剤として、マオウ由来組成物を含む組成物を用いる。用いられるマオウ由来組成物は、本発明のエタノールの製造方法で用いられるものと同様のものを用いることができる。中でも、マオウ抽出物またはマオウ抽出残渣が好ましい。

【0082】
[乳酸菌]
乳酸菌としては、乳酸発酵ができるものであれば、特に限定されない。例えば、乳酸菌は、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属などを用いることができる。また、それらの遺伝子組換体でもよい。
これらの具体例としては、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等を挙げることができる。

【0083】
[糖類]
糖類は、乳酸菌により発酵できるものであればよく、グルコース、フルクトース、スクロース(ショ糖)などが挙げられる。また、糖類は、サトウキビや甜菜などの糖蜜や廃糖蜜に含まれる糖類であってもよい。牛乳やヤギ乳などの動物乳、それらの脱脂乳、脱脂粉乳溶液、全粉乳溶液、ホエー等を糖類が含まれる原料として用いてもよい。

【0084】
また、糖類は、本発明のエタノールの製造方法と同様に、バイオマス原料を糖化したものでもよく、本発明のエタノールの製造方法と同様のバイオマス原料を用いることができる。バイオマス原料を糖化するための糖化酵素についても、バイオマス原料の種類等に応じて、本発明のエタノールの製造方法と同様の糖化酵素を用いることができる。

【0085】
乳酸発酵物製造工程では、糖類から乳酸を生成させる反応が起こればよく、用いる原料に応じて、その他の反応が併行して起こってもよい。
グルコース等の糖類を原料とする場合、乳酸発酵物製造工程は、発酵工程といえる。
また、セルロース系バイオマス等のバイオマス原料を糖化し乳酸発酵を行う場合、本発明のエタノールの製造方法と同様に、糖化および乳酸発酵は順次的に行っても、併行して行ってもよい。糖化および乳酸発酵を順次的に行う場合、乳酸発酵物製造工程は、糖化工程で得られた糖類を乳酸発酵させる発酵工程といえる。糖化および乳酸発酵を併行して行う場合、乳酸発酵物製造工程は、糖化発酵工程といえる。なお、糖化および乳酸発酵を順次的に行う場合、糖化工程における温度などの反応条件や、マオウ由来組成物を混合するタイミングなどは、本発明のエタノールの製造方法と同様にすることができる。

【0086】
乳酸発酵物製造工程における乳酸発酵の温度は、用いる乳酸菌の種類や反応系等に応じて、適宜調整される。発酵の温度が高すぎても低すぎても、乳酸菌が増殖しにくく、乳酸を得ることが困難となる。
糖類を原料とする場合や、バイオマス原料を用いて糖化および乳酸発酵を順次的に行う場合は、通常、用いる乳酸菌の至適温度で反応を行うことが好ましい。そのため、高温耐性菌などの特殊な菌でなければ、乳酸発酵終了までの原料発酵液の液温の平均が50℃以下となるように乳酸発酵を行うことが好ましく、45℃以下がより好ましい。また、その下限は、25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。

【0087】
また、バイオマス原料を用いて糖化および乳酸発酵を併行して行う場合は、用いる乳酸菌の至適温度超、糖化酵素の至適温度以下の温度で反応を行うことが好ましい。

【0088】
発酵時間は、通常、2~120時間であり、5~72時間や5~24時間が好ましい。

【0089】
また、混合対象となる液(原料糖化発酵液、原料糖化液または原料発酵液)に対するマオウ由来組成物の量や、乳酸菌の使用量、乳酸発酵時のpH(原料糖化発酵液のpHまたは原料発酵液のpH)などは、本発明のエタノールの製造方法と同様にすることができる。

【0090】
また、乳酸発酵物製造工程終了後、生成された乳酸発酵物は、乳酸発酵物の用途に応じて、適宜後処理を行うことができる。用途によっては、殺菌処理等を行いそのまま用いることができる。また、未反応の原料、乳酸菌等との混合物である乳酸発酵物を分離することで、乳酸発酵物中に含まれる乳酸を回収することもできる。中和による固液分離や溶媒抽出等による乳酸の回収は従来公知の方法を用いることができる。

【0091】
4.発酵促進剤
本発明は、マオウ抽出残渣を含む発酵促進剤(以下、「本発明の発酵促進剤」と記載する場合がある。)に関する。

【0092】
本発明の発酵促進剤は、本発明のエタノールの製造方法のマオウ由来組成物として用いることができる。

【0093】
また、本発明の発酵促進剤は、本発明の乳酸発酵物の製造方法のマオウ由来組成物として用いることができる。

【0094】
本発明者らは、マオウ抽出残渣は、マオウ生薬に含まれる有効成分の含有量が低減しているにもかかわらず、驚くべきことに、発酵促進効果があることを見出した。また、マオウ生薬含有物からの有効成分の抽出操作を複数回行った後のマオウ抽出残渣も同様に発酵促進効果があることを見出した。本発明の発酵促進剤は、これらの知見に基づくものである。
従来、漢方薬製造過程で抽出残渣は、廃棄物として排出され、焼却や埋め立て処理、あるいはコンポスト化によって減量処理されており、これらの有効利用が求められていた。本発明の発酵促進剤としての利用は、従来廃棄されていたマオウ抽出残渣を有効活用できる新たな用途であり、環境や経済的にも好ましい。

【0095】
本発明の発酵促進剤に含まれるマオウ抽出残渣は、マオウ抽出物の調製時に分離される固形分である。また、マオウ抽出物は、マオウ生薬に含まれる有効成分を溶媒抽出し、固形分を除去したものである。
抽出は、公知の抽出方法により行うことができる。例えば、マオウ生薬含有物を溶媒中で、必要に応じて撹拌を行いながら、一定時間浸漬させることで、マオウ生薬含有物中の有効成分を溶媒に抽出することができる。抽出温度は、例えば、常温~100℃とすることができる。抽出時間は、例えば、30分~1時間とすることができる。

【0096】
また、抽出に用いる溶媒は、一般的に水である。マオウ生薬含有物と溶媒との比率は、適宜調整されるが、例えば、マオウ生薬含有物1gに対して、溶媒を20~40gとすることができる。

【0097】
マオウ生薬含有物は、前述のように、マオウ生薬を含むものであれば、マオウ生薬以外を含んでもよい。マオウ生薬含有物中に含まれるその他の成分の種類等にもよるが、マオウ生薬含有物中のマオウ生薬が少なすぎると、発酵促進の効果を十分に得られない場合がある。そのため、マオウ生薬含有物中のマオウ生薬の量(マオウ生薬の質量/マオウ生薬含有物の質量)は、0.1~1が好ましく、0.2~1や0.3~1としてもよい。

【0098】
有効成分を抽出後に、液体成分と固形分とに分離することで、液体成分をマオウ抽出物とし、固形分をマオウ抽出残渣とすることができる。
液体成分と固形分との分離は、ろ過や遠心分離等により行うことができる。また、液体成分と分離して得られた固形分は、さらに水洗や乾燥等をして用いてもよい。
また、得られた固形分は、そのままマオウ抽出残渣として用いてもよいし、適宜所望の形状となるように、粉砕等を行ってもよい。

【0099】
なお、液体成分は、そのまま用いても、溶媒抽出後に適宜濃縮または希釈することで有効成分の濃度を調整して用いても、液体成分を乾燥させた乾燥物として用いてもよい。液体成分に由来するマオウ抽出物は、本発明のエタノールの製造方法のマオウ由来組成物として用いてもよいし、その他の用途において用いてもよい。水によって抽出した液体成分やその乾燥物は、そのまま医薬品として使用することができる。このような医薬品の製造時に廃出される固形分をマオウ抽出残渣として用いることができる。

【0100】
また、液体成分は、本発明の乳酸発酵物の製造方法のマオウ由来組成物として用いてもよい。

【0101】
マオウ抽出残渣は、マオウ生薬含有物から溶媒での抽出操作を1回行った後の抽出残渣であっても、溶媒での抽出操作を複数回行った後の抽出残渣であってもよい。実用的な観点からは、溶媒での抽出操作を1~3回行った後の抽出残渣であってもよい。

【0102】
前述のように、本発明の発酵促進剤は、本発明のエタノールの製造方法に用いることができる。また、本発明の発酵促進剤は、本発明のエタノールの製造方法以外の用途に用いてもよく、酒やパン等の食品の製造工程における発酵やメタンガス等のバイオガスの製造工程における発酵に用いてもよい。

【0103】
また、本発明の発酵促進剤は、本発明の乳酸発酵物の製造方法に用いることもできる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0105】
[実験例1]
マオウ生薬から抽出したマオウエキス(マオウ抽出物)を用いて、同時糖化発酵によるエタノール発酵を評価した。
【実施例】
【0106】
(1-1):マオウエキスの調製
生薬マオウ(栃本天海堂製、刻み)15gをイオン交換水300mLで30分間煎じた。溶液と残渣とに分離し、溶液を15,000rpmで5分間遠心分離し、さらに上清を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、マオウエキスとした。
【実施例】
【0107】
(1-2):同時糖化発酵によるエタノール発酵
酵母はSaccharomyces cervisiae(日本醸造協会6号)(至適温度:35℃)、基質(セルロース系バイオマス)はアドバンテック東洋株式会社製粉末ろ紙(セルロース粉末C)、糖化酵素はセルラーゼ(HBI株式会社製セルロシンAC40)を使用した。
同時糖化発酵はクエン酸緩衝液でpH4.5に調整したYP培地(酵母エキス10g、ペプトン20g、イオン交換水1L)50mL、酵素濃度25g/L、初期酵母濃度2×108cell/L、基質セルロース濃度50g/L、上記(1-1)で調製したマオウエキス3g/Lとなるように蓋付き試験管にとり、アズワン製ミックスロータVMRC-5を用い温度37℃において回転速度110rpmで72時間反応を行った(実験例1-1)。
なお、酵母初濃度は東亜DKK製AF-100型ATPアナライザーによる細胞内ATPの測定値から求めた。
また、マオウエキスを混合しなかったコントロールについても、同様に72時間反応を行った(実験例1-2)。
【実施例】
【0108】
(1-3):グルコース濃度とエタノール濃度の経時変化
上記(1-2)の実験中に、一定の処理時間(反応時間)ごとに、反応途中のグルコースおよびエタノール濃度を日本分光製LC-NetII/ADC型HPLCでそれぞれ測定し、グルコース濃度とエタノール濃度の経時変化を求めた。図4に、実験例1-1、実験例1-2において、グルコース濃度[g/L]およびエタノール濃度[g/L]を処理時間[h]に対してプロットした結果を示す。
【実施例】
【0109】
酵素糖化によってセルロースからグルコースが生成し、そのグルコースを酵母が即座に消費することによりエタノールが生成する。従って、図4に示すように、グルコースは低濃度に保たれている。
また、図4に示すように、実験例1-1(マオウエキスを添加したもの)は24時間でエタノール濃度8.3g/Lに到達し、これは実験例1-2(マオウエキス無添加時)の72時間で生成したエタノール濃度7.6g/L以上であった。マオウエキスを添加することで発酵時間を1/3以下に短縮できた。このように、酵母の至適温度よりも高い温度で反応を行っても、実験例1-1では、マオウエキスの存在により、至適温度での酵母の活性の低下を抑制し、活性を維持した状態で、エタノール発酵が進行させることができる。一方、実験例1-2では、酵母の至適温度よりも高い温度で反応を行ったことにより酵母の活性が低下しており、エタノールの生成速度が低下し、生成量も少ない結果となっている。
【実施例】
【0110】
[実験例2]
本発明の発酵促進剤として、マオウを含む漢方薬である葛根湯、麻黄湯、小青竜湯を用いて、マオウ抽出残渣を調製し、得られたマオウ抽出残渣を用いたエタノール発酵を評価した。
【実施例】
【0111】
(2-1):葛根湯残渣の調製
マオウを含有する漢方薬である葛根湯は、マオウ4g、カッコン4g、タイソウ4g、ケイヒ3g、シャクヤク3g、カンゾウ2g、カンショウキョウ1g(いずれも栃本天海堂製)計21gを、600mLのイオン交換水で30分間煎じることで調製した。溶液と残渣(固形分)とに分離し、残渣をイオン交換水にて水洗いし、105℃で乾燥させた。乾燥させた残渣を、遊星ボールミルで30分間粉砕し、葛根湯残渣を得た。得られた葛根湯残渣をマオウ抽出残渣(a)とした。
【実施例】
【0112】
(2-2):麻黄湯残渣の調製
葛根湯の代わりに麻黄湯として、マオウ5g、キョウニン5g、ケイヒ4g、カンゾウ1.5g(いずれも栃本天海堂製)計15.5gを用いて同様の操作をし、麻黄湯残渣を得た。得られた麻黄湯残渣をマオウ抽出残渣(b)とした。
【実施例】
【0113】
(2-3):小青竜湯残渣の調製
葛根湯の代わりに小青竜湯として、ハンゲ6g、マオウ3g、シャクヤク3g、カンゾウ3g、ケイヒ3g、サイシン3g、カンショウキョウ1.5g、ゴミシ1.5g(いずれも栃本天海堂製)計24gを用いて同様の操作をし、小青竜湯残渣を得た。得られた小青竜湯残渣をマオウ抽出残渣(c)とした。
【実施例】
【0114】
(2-4):酵母によるエタノール発酵
YPD培地(グルコース15g、ペプトン2g、酵母エキス1g、水100mL)を調整し、オートクレーブで滅菌を行った。フラスコ内で、滅菌処理後のYPD培地に、酵母(至適温度35℃)が2.0×108cell/Lとなる量の日本酒酵母液と、表1に示す固体成分濃度となる量の固体成分(別途オートクレーブ滅菌したマオウ抽出残渣(a)、マオウ抽出残渣(b)又はマオウ抽出残渣(c))を加えて、エタノール発酵試験用のサンプルを調製した。各サンプルを用いて、35℃において48時間反応させた。
また、固体成分による影響を考慮するため、表1に示す固体成分濃度となるようにアドバンテック東洋株式会社製粉末ろ紙(セルロース粉末C)を添加したコントロールも作製し、同様に反応させた。
【実施例】
【0115】
【表1】
JP2020065549A_000003t.gif
【実施例】
【0116】
(2-5)ロジスティック関数を用いた発酵遅延時間(ts)と発酵速度(r)の評価
(2-5-1)ロジスティック関数を用いた評価方法
図5は、エタノール発酵における、二酸化炭素の発生量(y)と発酵時間(t)との関係を表す典型的な例である。また、ロジスティック関数は、下記式(1)で表される関数である。発酵時間(t)に対する二酸化炭素発生量(y)をロジスティック関数で表されるロジスティック曲線(a)にフィッティングさせることで、ymax、t1/2、kの値を算出することができる。
【実施例】
【0117】
【数1】
JP2020065549A_000004t.gif
【実施例】
【0118】
kは、下記式(2)で表されるロジスティック関数のパラメータである。また、tsは、下記式(3)で表され、t1/2およびkの値から算出することができる。
【実施例】
【0119】
【数2】
JP2020065549A_000005t.gif
【実施例】
【0120】
なお、図5に示す通り、ymaxは、二酸化炭素最大発生量を表す。t1/2は、ymax/2となる発酵時間を表す。
rは、ロジスティック曲線におけるt=t1/2のときの接線(b)の傾きであり、発酵速度を表す。
sは、二酸化炭素発生量が0(縦軸が0)のときの横軸と、t=1/2の接線(b)の延長線との交点として定義され、発酵遅延時間を表す。この発酵遅延時間(ts)の値が小さいほど、発酵開始までの時間が早いことを意味する。
【実施例】
【0121】
(2-5-2)発酵遅延時間(ts)と発酵速度(r)の評価
上記(2-4)のエタノール発酵の実験中に、35℃のインキュベーター内に設置した電子天秤によりフラスコ全体の重量を経時的に測定し、重量の減少分を発酵に伴う二酸化炭素発生量とみなした。
処理時間(発酵時間)(t)に対する二酸化炭素発生量(y)は水分蒸発量を補正したのちロジスティック関数にフィッティングさせ、発酵遅延時間(ts)と発酵速度(r)を算出し、マオウ由来組成物の効果について評価した。
【実施例】
【0122】
図6に、実験例2-1~2-4のエタノール発酵の発酵遅延時間ts[h]を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした結果を示す。マオウ抽出残渣を加えることで発酵遅延時間が0.7~0.9倍に短縮し、発酵が開始する時間が短くなった。
特に、実験例2-1のマオウ抽出残渣(a)(葛根湯残渣)は固体成分の濃度に依らず発酵遅延時間の短縮がみられた。
【実施例】
【0123】
図7に、実験例2-1~2-4のエタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした結果を示す。実験例2-2のマオウ抽出残渣(b)(麻黄湯残渣)は添加量を多くすることで発酵速度が2倍以上速くなった。これは固体成分の作用に加えて残渣中に残存する薬効成分や水で抽出されない成分の働きなどにより発酵が促進したためと考えられる。
【実施例】
【0124】
なお、実験例2-2の発酵速度は、固体成分なしの場合に比べると約7倍であった。
【実施例】
【0125】
また、ロジスティック関数のフィッティングから算出したt1/2およびkの値を用いて、発酵終了時間を下記式(4)で定義し評価した。その結果、発酵終了時間(te)は、実験例2-1~2-3のいずれにおいても、実験例2-4(コントロール)に比べ約1/2に短縮し、固体成分なしの場合に比べて約1/3に短縮した。
【実施例】
【0126】
【数3】
JP2020065549A_000006t.gif
【実施例】
【0127】
(2-6):生成エタノール量の経時変化
上記(2-4)の実験での、生成エタノール量は、日本分光製LC-NetII/ADC型HPLCにより測定した。
図8は、実験例2-1~2-4のエタノール発酵終了後(約2日後)のエタノール収率[%](理論上のエタノール生成量(g)に対する実際に生成したエタノール量(g)の百分率)を、固体成分濃度[g/L]に対してプロットした結果を示している。生成したエタノールは理論収量に対して70~80%で、コントロールとマオウ抽出残渣を加えたものでは差は小さく、発酵阻害は見られなかった。
【実施例】
【0128】
[実験例3]
本発明の発酵促進剤として、実験例2で調製したマオウ抽出残渣(b)(麻黄湯残渣)を用い、エタノール発酵におけるフルフラールの影響を評価した。
【実施例】
【0129】
(3-2):フルフラール存在下での酵母によるエタノール発酵
YPD培地(グルコース15g、ペプトン2g、酵母エキス1g、水100mL)を作製し、所定量のフルフラールを添加した後、オートクレーブで滅菌を行った。フラスコ内で、滅菌処理後のYPD培地に、酵母(至適温度35℃)が2.0×108cell/Lとなる量の日本酒酵母液と、別途オートクレーブ滅菌したマオウ抽出残渣(b)又はコントロールとしてアドバンテック東洋株式会社製粉末ろ紙(セルロース粉末C)7g/Lとを加え、通気性シリコン栓を取り付け、エタノール発酵試験用のサンプルを調製した。
なお、サンプルは、表2に示すフルフラール濃度となるようにフルフラールの添加量を変えたものを複数調製した。各サンプルを用いて、35℃において72時間反応させた。
【実施例】
【0130】
【表2】
JP2020065549A_000007t.gif
【実施例】
【0131】
(3-3):発酵遅延時間(ts)と発酵速度(r)の評価
実験例2の(2-5)と同様に、上記(3-2)のエタノール発酵中の二酸化炭素発生量の経時変化を測定し、ロジスティック関数にフィッティングさせることで、発酵遅延時間(ts)と発酵速度(r)を算出し評価した。
【実施例】
【0132】
図9に、実験例3-1、3-2のエタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を、フルフラール濃度[g/L]に対してプロットした結果を示す。
実験例(3-1)のマオウ抽出残渣(b)を7g/L添加した場合、やはりフルフラール濃度の上昇とともに発酵速度は低下するものの、フルフラール2~3g/Lの場合でも2~3(g/L)/hの発酵速度を維持することができた。
一方、実験例(3-2)(粉末ろ紙を7g/L添加した系)は、フルフラール濃度の上昇とともに発酵速度が低下し、フルフラール2~3g/Lのときr≒0.15g/hと約半分の速度、そして4.5g/L以上では発酵が停止した。
【実施例】
【0133】
図10は、実験例(3-1)、実験例(3-2)のエタノール発酵から約6日後のエタノール濃度[g/L]を、フルフラール濃度[g/L]に対してプロットした結果を示している。エタノール濃度は麻黄湯残渣を加えたものと粉末ろ紙を加えたもので差は小さく、マオウ抽出残渣(b)が生成量に対して阻害しないことが示された。また、フルフラール濃度3g/L程度までであれば添加剤の効果が高く、エタノール濃度が維持されることが分かった。
【実施例】
【0134】
[実験例4]
実験例2の(2-2)のマオウ5g、キョウニン5g、ケイヒ4g、カンゾウ1.5gの計15.5gの代わりに、マオウ抽出残渣(b)(煎じ回数1回の麻黄湯残渣)を用いて、実験例(2-2)と同様の操作を行い、煎じ回数2回の麻黄湯残渣を調製した。さらに、同様の煎じ操作を繰り返し、煎じ回数3~8回の麻黄湯残渣を調製した。
次いで、煎じ回数1回~8回の麻黄湯残渣を用いて、実験例2の(2-4)と同様にしてエタノール発酵を行った。発酵時間に対する二酸化炭素の発生量から、実験例2の(2-5)と同様の方法で、発酵遅延時間および発酵速度を算出し、麻黄湯残渣の煎じ回数に対するエタノール発酵の効果を評価した。
また、麻黄湯残渣の代わりに、アドバンテック東洋株式会社製粉末ろ紙(セルロース粉末C)を用いた系と、酵母のみ(固体成分の添加なし)の系をコントロールとしてあわせて評価した。
図11に、エタノール発酵の発酵遅延時間ts[h]を、麻黄湯残渣の煎じ回数に対してプロットした結果を示す。図12に、エタノール発酵の発酵速度r[(g/L)/h]を、麻黄湯残渣の煎じ回数に対してプロットした結果を示す。図11および図12に示すように、麻黄湯残渣は、煎じ回数を増やしてもその効果が維持されることが確認された。
【実施例】
【0135】
[実験例5]
マオウ生薬(Ephedra sp.)のエキスおよび抽出残渣を用いて、エタノール発酵を評価した。また、実験例2で用いた漢方薬(葛根湯、麻黄湯および小青竜湯)に含まれるマオウ生薬以外の10種類の生薬(カッコン(Pueraria lobate)、カンキョウ(Zingiber officinale)、カンゾウ(Glycyrrhize uralensis)、キョウニン(Prumus sp.)、ケイヒ(Cinnamomum cassia)、ゴミシ(Schisandra Chinensis)、サイシン(Asiasarum sp.)、シャクヤク(Paeonia lactiflora)、タイソウ(Zizyphus jujuba)、ハンゲ(Pinellia ternata))についてもエタノール発酵を評価した。
【実施例】
【0136】
(5-1):各生薬のエキスおよび抽出残渣の調製
漢方薬煎じ器(栃本天海堂製 文火楽々EK-SA10)を用いて、各生薬30gをイオン交換水600mLで30分間煎じた。その後、30メッシュの金網で溶液と残渣を分離し、溶液を15,000rpmで5分間遠心分離し、さらに上清を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、各生薬のエキスとした。抽出残渣は、イオン交換水にて水洗いし、105℃の24時間乾燥させた後、遊星ボールミル(Fritsch製P-6)で30分間粉砕したものを用いた。
【実施例】
【0137】
(5-2):各生薬のエキス存在下での酵母によるエタノール発酵
YPD培地(グルコース15g、ペプトン2g、酵母エキス1g、水100mL)を調製し、各生薬のエキスを固形分濃度350mg/Lとなるように添加した後、オートクレーブ滅菌を行った。滅菌処理後のYPD培地に、酵母(至適温度35℃)が2.0×108cell/Lとなる量の日本酒酵母液を加え、通気性シリコン栓を取り付け、エタノール発酵試験用のサンプルを調製した。各サンプルを用いて、35℃で反応を行った。
【実施例】
【0138】
(5-3):各生薬の抽出残渣存在下での酵母によるエタノール発酵
YPD培地(グルコース15g、ペプトン2g、酵母エキス1g、水100mL)を調製し、オートクレーブで滅菌を行った。滅菌処理後のYPD培地に、酵母(至適温度35℃)が2.0×108cell/Lとなる量の日本酒酵母液と、別途オートクレーブ滅菌した各生薬の抽出残渣350mg/Lを加えて、エタノール発酵試験用のサンプルを調製した。また、固体成分による影響を考慮するため、アドバンテック東洋株式会社製粉末ろ紙(セルロース粉末C、350mg/L)を添加したコントロールも調製した。各サンプルを用いて、35℃で反応を行った。
【実施例】
【0139】
(5-4):評価
(5-2)および(5-3)について、実験例2の(2-5)、(2-6)に記載の方法にて評価した。また、異なる反応条件での発酵状況を比較するため、以下のパラメータを定義した。
【実施例】
【0140】
【数4】
JP2020065549A_000008t.gif
【実施例】
【0141】
ここで、α値(αs値、αe値、αr値、αEtOH値)は発酵促進剤無添加(none)をコントロールとしたときのエキス(extract)の添加効果を表し、β値(βs値、βe値、βr値、βEtOH値)はセルロース粉末添加(cellulose)をコントロールとしたときの抽出残渣(residue)の添加効果を表す。
【実施例】
【0142】
図13は、エキスの添加効果であるαs値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβs値を縦軸にとり、生薬毎の発酵遅延時間への影響を表した結果である。
ここで、発酵反応開始時間(ts)は、横軸(αs)が1未満であるものはエキスでの促進効果があることを示しており、縦軸(βs)が1未満であるものは抽出残渣での促進効果があることを示している。例えば、(αs<1)かつ(βs<1)の領域にプロットされた生薬は、エキスも残渣も発酵遅延時間に対して促進効果を発揮していることを示す。
【実施例】
【0143】
図14は、エキスの添加効果であるαr値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβr値を縦軸にとり、生薬毎の発酵速度への影響を表した結果である。
ここで、発酵速度(r)は、横軸(αr)が1を超えたものはエキスでの促進効果があることを示しており、縦軸(βr)が1を超えたものは抽出残渣での促進効果があることを示している。例えば、(1<αr)かつ(1<βr)の領域にプロットされた生薬は、エキスも残渣も発酵速度に対して促進効果を発揮していることを示す。
【実施例】
【0144】
図15は、エキスの添加効果であるαe値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβe値を縦軸にとり、生薬毎の発酵終了時間への影響を表した結果である。
ここで、発酵終了時間(te)は、横軸(αe)が1未満であるものはエキスでの促進効果があることを示しており、縦軸(βe)が1未満であるものは抽出残渣での促進効果があることを示している。例えば、(αe<1)かつ(βe<1)の領域にプロットされた生薬は、エキスも残渣も発酵終了時間に対して促進効果を発揮していることを示す。
【実施例】
【0145】
図16は、エキスの添加効果であるαEtOH値を横軸にとり、残渣の添加効果であるβEtOH値を縦軸にとり、生薬毎の生成エタノール量への影響を表した結果である。
ここで、生成エタノール量は、横軸(αEtOH)が1を超えたものはエキスでの促進効果があることを示しており、縦軸(βEtOH)が1を超えたものは抽出残渣での促進効果があることを示している。例えば、(1<αEtOH)かつ(1<βEtOH)の領域にプロットされた生薬は、エキスも残渣も生成エタノール量に対して促進効果を発揮していることを示す。
【実施例】
【0146】
また、各生薬と図13~図16のグラフ中の番号との対応は表3に示す通りである。
【実施例】
【0147】
【表3】
JP2020065549A_000009t.gif
【実施例】
【0148】
図13~図16に示すように、エタノール発酵に対する促進と阻害は、生薬の種類で異なることはもちろん、エキスと抽出残渣によっても効果は様々であった。
【実施例】
【0149】
図13に示すように、発酵遅延時間については、マオウ生薬は、エキスでは、促進効果を示し、抽出残渣では、粉末ろ紙を添加したコントロールと同等であった。また、多くの生薬の抽出残渣が阻害傾向を示した。しかし、全発酵過程に対しては発酵速度が大きく支配し発酵速度が促進されれば相殺されることになる。
【実施例】
【0150】
図14に示すように、発酵速度については、マオウ生薬は、エキスおよび抽出残渣ともに促進効果を示した。
【実施例】
【0151】
図15に示す発酵終了時間は、発酵遅延時間と発酵速度の総合結果とみなせる。マオウ生薬は、エキスおよび抽出残渣ともに発酵促進効果を示しており、発酵終了時間が約3/4に短縮した。なお、マオウ生薬の抽出残渣の結果は、セルロース粉末添加と比較したものである。固体成分なしの場合(無添加)と比較すると、発酵終了時間は、約1/2と大幅に短縮した。
【実施例】
【0152】
図16に示すように、生成エタノール量におけるエキスの添加効果を表すαEtOHおよび生成エタノール量における抽出残渣の添加効果を表すβEtOHは、いずれの生薬でも約1であり、生薬によらず、エタノール生成への影響は小さかった。マオウ生薬は、(αEtOH ,βEtOH )=(1,0.8)で、それぞれのコントロールと同等であり、発酵阻害は見られなかった。
【実施例】
【0153】
[実験例6]
マオウ5g、キョウニン5g、ケイヒ4g、カンゾウ1.5g(いずれも栃本天海堂製)計15.5gをイオン交換水600mLで30分間煎じた。その後、30メッシュの金網で溶液と残渣を分離し、溶液を15,000rpmで5分間遠心分離し、さらに上清を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、麻黄湯のエキスを得た。麻黄湯のエキスを用いて、同様にエタノール発酵に対する効果を評価したところ、無添加のコントロールと比較して、1.4倍の発酵速度であった。
【実施例】
【0154】
[実験例7]
廃糖蜜濃度350g/L、ペプトン20g/L、酵母エキス8g/L、初期酵母濃度2.0×108cell/L、マオウ生薬抽出残渣7g/Lを用いて、エタノール発酵試験用のサンプルを調整し、35℃で反応させた。マオウ生薬抽出残渣は、実験例5の(5-1)で調製したものを用いた。
実験例2と同様にして、エタノール発酵を評価した。結果を図17に示す。
図17に示すように、350g/Lという高濃度の廃糖蜜でもエタノールの発酵が可能であった。なお、廃糖蜜中には、発酵阻害物質であるアルデヒド類が含まれているため、高濃度での発酵が困難であり、また、高い糖濃度では基質阻害が発生するが、マオウ添加により高濃度での廃糖蜜でもエタノール発酵が可能で、いずれの発酵阻害も克服できた。
【実施例】
【0155】
[実験例8]
本発明の発酵促進剤として、マオウ生薬から抽出したマオウエキス(マオウ抽出物)を用いて、乳酸発酵を評価した。明治ブルガリアヨーグルト(登録商標)(明治乳業株式会社製)40gと、明治おいしい牛乳(登録商標)(明治乳業株式会社製)400gと、マオウエキス60g(最終エキス濃度5g/L)とを混合し、40℃で8時間反応させた。
また、マオウエキスに代えて、マオウ生薬抽出残渣5gおよび水60gを混合して同様に反応させた。
なお、明治ブルガリアヨーグルトには、乳酸菌として、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)とが含まれる。マオウエキスは、実験例1の(1-1)で調製したマオウエキスを用いた。マオウ生薬抽出残渣は、実験例5の(5-1)で調製したものを用いた。
また、マオウエキスに代えて、水60gを混合して同様に反応させたものをコントロール(無添加)とした。
乳酸発酵は、アルカリ滴定による生成有機酸量で追跡した。図18に、発酵時間に対する生成有機酸量をプロットした結果を示す。図18に示すように、乳酸発酵に対してもマオウエキスおよびマオウ抽出残渣ともに添加効果が見られ、有機酸生成量が1.2~1.3倍に増加した。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の発酵物の製造方法は、エタノールや乳酸発酵物を短時間で製造することができ、有用である。また、新たな発酵促進剤は、アルコール発酵を促進させるだけでなく、乳酸発酵にも適用できるとともに、従来、廃棄されていた生薬残渣や漢方薬残渣の有効利用することができる。
本発明のエタノールの製造方法は、マオウ由来組成物を混合することで、同時糖化発酵における発酵時間を短縮することができ、有益な方法である。また、新たなアルコール発酵促進剤は、アルコール発酵を促進させるだけでなく、従来、廃棄されていた生薬残渣や漢方薬残渣の有効利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17