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明細書 :含フッ素多環芳香族化合物とその製造方法、並びに前記含フッ素多環芳香族化合物を用いる有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-070289 (P2020-070289A)
公開日 令和2年5月7日(2020.5.7)
発明の名称または考案の名称 含フッ素多環芳香族化合物とその製造方法、並びに前記含フッ素多環芳香族化合物を用いる有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の製造方法
国際特許分類 C07D 487/22        (2006.01)
C07F   5/02        (2006.01)
C07F   7/12        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
G03G   5/06        (2006.01)
FI C07D 487/22 CSP
C07F 5/02 D
C07F 7/12 W
C09K 11/06 660
C09K 11/06 610
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 250F
G03G 5/06 371
G03G 5/06 330
請求項の数または発明の数 17
出願形態 OL
全頁数 56
出願番号 特願2019-169266 (P2019-169266)
出願日 令和元年9月18日(2019.9.18)
優先権出願番号 2018174910
優先日 平成30年9月19日(2018.9.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】吾郷 友宏
【氏名】鈴木 晟眞
【氏名】菅野 康徳
【氏名】福元 博基
【氏名】久保田 俊夫
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査請求 未請求
テーマコード 2H068
4C050
4H048
4H049
Fターム 2H068AA19
2H068BA38
2H068BA39
2H068BA55
4C050PA13
4C050PA14
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA11
4H048VA32
4H048VA77
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ11
4H049VR24
4H049VU29
4H049VW02
要約 【課題】種々構造式と特性を有する含フッ素のペンタセン及びナフタロシアニンの新規化合物、及びこれらの容易で高収率な製造方法、及びそれを用いる有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の製造方法の提供。
【解決手段】3環以上の共役系多環芳香族基で両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つがパーフルオロアルキル基核置換の含フッ素多環芳香族化合物、及び反応中間体の下式化合物の使用を特徴とする製造方法。
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[式中、X1-2、Y1-2、Z1-2は特定の基。]
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
3環以上の共役系多環芳香族基を有し、前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つがパーフルオロアルキル基で核置換された含フッ素多環芳香族化合物であって、
下記(1)式、下記(2)式、下記(3)式、及び下記(4)式のいずれかで表される含フッ素多環芳香族化合物。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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【化4】
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[式中、Mは2個の水素原子、2価の金属、又は3価若しくは4価の金属若しくは半金属の誘導体を示し、X及びXは、それぞれ独立にパーフルオロアルキル基であり、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素化若しくはパーフルオロ化されてもよいアルキル基、フッ素化されないアルキル基、又はフッ素化されないフェニル基である。Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)式で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。R、R、Rは、それぞれ独立に水素、フッ素、塩素、フッ素化されていない直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよいアリール基である。]
【化5】
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[式中、A、A及びAは、アルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。]
【化6】
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[式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。]
【請求項2】
請求項1に記載の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物であり、且つ、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基であることを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(3)又は前記一般式(4)で表される化合物であり、且つ、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基であり、前記X及びXが、それぞれ独立に水素原子又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基であることを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物。
【請求項4】
含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物の合成において、反応中間体として下記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を使用することを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【化7】
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[式中、X及びXは、それぞれ独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(5a)式で表される置換基、下記(5b)式で示すフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(5b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。]
【化8】
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[式中、A、A及びAは、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。]
【化9】
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[式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。]
【請求項5】
前記X及びXは、それぞれ独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、
前記Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)で示す置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)で示すフェニル基であり、
前記Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基、若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)式で示す置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)式で示すフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
前記含フッ素単環芳香族化合物が、下記(6)式又は式(7)で表される化合物を用いて、臭素(Br)又はヨウ素(I)が核置換された位置に前記X及びXの置換基を導入することにより下記(8)式で表される化合物を合成する工程、及び下記(8)式で表される化合物のW及びWの置換基において単環芳香環と化学結合する炭素に結合する2つの水素原子を臭素化する工程、を有する合成方法によって製造されることを特徴する請求項4又は5に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【化10】
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【化11】
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【化12】
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[式中、Y、Y、X及びXは、前記と同じ置換基であり、W、Wは、それぞれ独立にメチル基、又はメチル基の1つの水素原子が前記Z,Zで置換される基である。]
【請求項7】
前記含フッ素単環芳香族化合物が、前記(6)式で表される化合物を用いて、臭素(Br)が核置換された位置に前記X及びXの置換基を導入することにより前記(8)式で表される化合物を合成する工程、及び前記(8)式で表される化合物のW及びWの置換基において単環芳香環と化学結合する炭素に結合する2つの水素原子を臭素化する工程、を有する合成方法によって製造されることを特徴する請求項6に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項8】
前記X及びXが、それぞれ独立にフッ素原子又はパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項4~7のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項9】
前記Y及びYが、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項8に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項10】
前記Z及びZが、水素原子であることを特徴とする請求項9に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項11】
前記含フッ素単環芳香族化合物と、フマロニトリルまたはマレオニトリルとのディールス・アルダー環化付加反応を行い、引き続いて環化四量化又は環化三量化の反応を行うことで含フッ素ナフタロシアニン化合物を製造することを特徴とする請求項4~10のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項12】
前記含フッ素単環芳香族化合物と、パラ-ベンゾキノンとのディールス・アルダー環化付加反応によって酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を合成する工程、及び前記酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物をシリルエチニル化した後、還元することによって含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物を合成する工程、を有することを特徴とする請求項4~10のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項13】
前記含フッ素単環芳香族化合物と、パラ-ベンゾキノンとのディールス・アルダー環化付加反応によって酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を合成する工程、及び前記酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を還元することによって含フッ素ペンタセン化合物を合成する工程、を有することを特徴とする請求項4~10のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、有機半導体材料として用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、電子輸送層、陰極側バッファ層、又は中間電極に接するバッファ層に含まれる電子移動材料として用いることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、電荷発生層に含まれる電荷発生材料として用いることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、発光層に含まれる発光材料として用いることを特徴とする有機発光素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物として新規な化学構造を有し、様々な物性と特性を向上することができる含フッ素多環芳香族化合物、及び少ない工数で容易に合成することができる含フッ素多環芳香族化合物の製造方法、並びに該含フッ素多環芳香族化合物を用いる有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナフタセン及びペンタセン等のアセン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアン化合物等の芳香族多環化合物は、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池等の有機エレクトロニクス材料、電子写真感光体等の表示材料、又は高分子機能材料といった広い分野に使用することができ、これらの分野において様々な素子又はデバイスへの適用が検討されている。
【0003】
これら多環芳香族化合物は、分子内にフッ素元素を導入することにより新たな機能や特性を付与することができる。例えば、特許文献1及び2には、n型の有機半導体材料として高い電子移動度を有するフッ素化アセン化合物(テトラデカフルオロペンタセン、テトラデカフルオロナフタセン、又は分子骨格内に導入するフッ素原子の数がテトラデカフルオロペンタセンよりも少ない各種のペンタセン)が提案されている。
【0004】
また、特許文献3には、溶媒への溶解性の向上を図るため、パーフルオロアルキル基を分子骨格内に導入したペンタセンが提案されている。パーフルオロアルキル基含有ペンタセンの製造方法については非特許文献1にも開示されている。また、ペンタセン化合物はシリルエチニル置換することにより有機溶媒への溶解性の向上を図ることができるため、その例としてフッ素化シリルエチニルペンタセン化合物が開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0005】
一方、フタロシアニン化合物又はナフタロシアン化合物は、それぞれ近赤外線領域に最大吸光度を有することから、電子写真感光体の電荷発生層、色素増感型太陽電池、光吸収フィルタ又は熱線遮蔽中間膜等に適用されている。それらの中で、有機溶媒中での調整が容易であるフッ素化フタロシアニン化合物、又は有機溶媒や樹脂に対する溶解性が良好なフッ素化ナフタロシアン化合物が、それぞれ特許文献5又は6に提案されている。前記特許文献6には、フッ素化ナフタロシアン化合物を合成するときに使用する反応中間体として、フッ素原子、又はフッ素原子若しくはフッ素原子を含むアルキル基で核置換されたアリール基を有するナフタレン-2,3-ジカルボニトリル化合物を使用することが記載されている。
【0006】
また、非特許文献2には、複数のトリフルオロメチル基を骨格内に導入した含フッ素フタロシアンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-235923号公報
【特許文献2】国際公開第2005/042445号
【特許文献3】国際公開第2014/115823号
【特許文献4】特開2015-7049号公報
【特許文献5】特表2012-507743号公報
【特許文献6】国際公開第2014/208484号
【0008】

【非特許文献1】Ogino et al.、Bull.Chem.Soc.J.、2008年、第81巻、p.530-535
【非特許文献2】Hanack et al.、Synth.Commun.、1981年、第11巻、p.351-363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素フタロシアニン化合物や含フッ素ナフタロシアニン化合物等の含フッ素多環芳香族化合物は、上述したように、フッ素を含有しない多環芳香族化合物に比べて優れた機能や特性を有するが、合成や製造が困難であり、原料となる材料コストも高価である。これまでも数種類の含フッ素多環芳香族化合物が提案されているが、導入される含フッ素置換基の種類と数が少なく、加えて、含フッ素置換基の結合位置が骨格構造の特定の箇所に限られるため、材料の選択幅が非常に狭い。そのため、含フッ素多環芳香族化合物が本来有する特徴と利点を、有機エレクトロニクス材料、電子写真感光体等の表示材料、又は高分子機能材料の分野において十分に活かしきれていないのが現状である。
【0010】
したがって、含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素フタロシアニン化合物や含フッ素ナフタロシアニン化合物等として、新規な含フッ素多環芳香族化合物を提案することによって材料の選択幅を広げるとともに、新規な含フッ素多環芳香族化合物の製造において合成が容易で、製造工程の簡略化と合わせて材料のコスト低減を同時に図ることができれば、有機エレクトロニクス分野を含めて様々な分野への適用が拡大すると期待される。
【0011】
しかしながら、前記特許文献1~6及び非特許文献1~2に開示される含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素のフタロシアニン化合物や含フッ素のナフタロシアニン化合物は、(i)特殊な原料を使用する必要があり、場合によっては原料が市販されていない場合があること、(ii)合成が複雑で多段階で行うこと、等の理由により容易に製造することができず、入手や利用がしづらく、合成できる化合物の種類が限られるという問題があった。加えて、多段階で合成を行うため反応副生成物や不純物の除去が困難であり、合成物の収率が大幅に低下することが避けられなかった。
【0012】
例えば、前記特許文献6に開示される含フッ素ナフタロシアニン化合物の合成方法では、フッ素原子又はフッ素原子を含む置換基を有するナフタレン-2,3-ジカルボニトリル化合物を合成原料として使用しているが、実際に開示されているのはナフタレン骨格を形成する炭素原子と結合する置換基がフッ素原子である化合物だけである。これは、フッ素を含むナフタレン-2,3-ジカルボニトリル化合物の合成が、例えば、Russian Journal of General Chemistry,Vol75, No.5, 2005、p795-799を参考にして、原料として2-メチルベンゾフェノンを用いてハロゲン化剤及びラジカル発生剤によって3つの化合物を経由することによって行われるため、目的とする合成物の単離が面倒であり、結果的に合成できるナフタレン-2,3-ジカルボニトリル化合物の種類が限定されるためと考えられる。このように、前記特許文献6に開示される合成方法では、得られる含フッ素ナフタロシアニン化合物の種類が限られていた。
【0013】
したがって、含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物の利用価値を高め、その適用範囲の拡大を図るためには、前記特許文献1~6及び非特許文献1~2に開示された化合物に限定されないで、含フッ素多環芳香族化合物の分子骨格内の所望の結合位置に、フッ素原子及び様々な含フッ素置換基を導入した新規な含フッ素多環芳香族化合物が望まれており、これら含フッ素多環芳香族化合物を容易に、且つ、低コストで合成するための製造方法も求められている。
【0014】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物の合成において、特殊な原料を使用しないでも、周知又は公知である汎用の合成方法を利用することにより、様々な化学構造式と特性を有する新規な含フッ素多環芳香族化合物、及びこれら含フッ素化合物を少ない工数で容易に合成することができる含フッ素多環芳香族化合物の製造方法、並びに該含フッ素多環芳香族化合物を用いる有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、含フッ素ペンタセン及び含フッ素ナフタロシアニンの製造において、従来の合成方法では検討されることがなかった特殊な含フッ素単環芳香族化合物を反応中間体として使用することにより、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0016】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、3環以上の共役系多環芳香族基を有し、前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つがパーフルオロアルキル基で核置換された含フッ素多環芳香族化合物であって、
下記(1)式、下記(2)式、下記(3)式、及び下記(4)式のいずれかで表される含フッ素多環芳香族化合物を提供する。
【化13】
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【化14】
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【化15】
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【化16】
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[式中、Mは2個の水素原子、2価の金属、又は3価若しくは4価の金属若しくは半金属の誘導体を示し、X及びXは、それぞれ独立にパーフルオロアルキル基であり、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素化若しくはパーフルオロ化されてもよいアルキル基、フッ素化されないアルキル基、又はフッ素化されないフェニル基である。Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)式で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、フッ素化されていない直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよいアリール基である。]
【化17】
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[式中、A、A及びAは、アルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。]
【化18】
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[式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。]
[2]本発明は、前記[1]に記載の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物であり、且つ、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基であることを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物を提供する。
[3]本発明は、前記[1]に記載の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(3)又は前記一般式(4)で表される化合物であり、且つ、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基であり、前記X及びXが、それぞれ独立に、水素原子又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基であることを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物を提供する。
[4]本発明は、含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物の合成において、反応中間体として下記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を使用することを特徴とする含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
【化19】
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[式中、X及びXは、それぞれ独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)式で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。]
【化20】
JP2020070289A_000010t.gif
[式中、A、A及びAは、アルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。]
【化21】
JP2020070289A_000011t.gif
[式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。]
[5]本発明は、前記X及びXが、それぞれ独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、
前記Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)で表される置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)で表されるフェニル基であり、
前記Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基、若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)式で表される置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)式で表されるフェニル基であることを特徴とする前記[4]に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[6]本発明は、前記含フッ素単環芳香族化合物が、下記(6)式又は式(7)で表される化合物を用いて、臭素(Br)又はヨウ素(I)が核置換された位置に前記X及びXの置換基を導入することにより下記(8)式で表される化合物を合成する工程、及び下記(8)式で表される化合物のW及びWの置換基において単環芳香環と化学結合する炭素に結合する2つの水素原子を臭素化する工程、を有する合成方法によって製造されることを特徴する前記[4]又は[5]に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
【化22】
JP2020070289A_000012t.gif
【化23】
JP2020070289A_000013t.gif
【化24】
JP2020070289A_000014t.gif
[式中、Y、Y、X及びXは、前記と同じ置換基であり、W、Wは、それぞれ独立にメチル基、又はメチル基の1つの水素原子が前記Z,Zで置換される基である。]
[7]本発明は、前記含フッ素単環芳香族化合物が、前記(6)式で示す化合物を用いて、臭素(Br)が核置換された位置に前記X及びXの置換基を導入することにより前記(8)式に示す化合物を合成する工程、及び前記(8)式に示す化合物のW及びWの置換基において単環芳香環と化学結合する炭素に結合する2つの水素原子を臭素化する工程、を有する合成方法によって製造されることを特徴する前記[6]に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[8]本発明は、前記X及びXが、それぞれ独立にフッ素原子又はパーフルオロアルキル基であることを特徴とする前記[4]~[7]のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[9]本発明は、前記Y及びYが、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項8に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[10]本発明は、前記Z及びZが、水素原子であることを特徴とする前記[9]に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[11]本発明は、前記含フッ素単環芳香族化合物と、フマロニトリル又はマレオニトリルとのディールス・アルダー環化付加反応を行い、引き続いて環化四量化又は環化三量化の反応を行うことで含フッ素ナフタロシアニン化合物を製造することを特徴とする前記[4]~[10]のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[12]本発明は、前記含フッ素単環芳香族化合物と、パラ-ベンゾキノンとのディールス・アルダー環化付加反応によって酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を合成する工程、及び前記酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物をシリルエチニル化した後、還元することによって含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物を合成する工程、を有することを特徴とする前記[4]~[10]のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[13]本発明は、前記含フッ素単環芳香族化合物と、パラ-ベンゾキノンとのディールス・アルダー環化付加反応によって酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を合成する工程、及び前記酸素原子が含まれる含フッ素多環芳香族化合物を還元することによって含フッ素ペンタセン化合物を合成する工程、を有することを特徴とする前記[4]~[10]のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を提供する。
[14]本発明は、前記[11]~[13]のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、有機半導体材料として用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
[15]本発明は、前記[11]~[13]のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、電子輸送層、陰極側バッファ層、又は中間電極に接するバッファ層に含まれる電子移動材料として用いることを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
[16]本発明は、前記[11]に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、電荷発生層に含まれる電荷発生材料として用いることを特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
[17]本発明は、前記[11]に記載の製造方法によって製造される含フッ素多環芳香族化合物を、発光層に含まれる発光材料として用いることを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、含フッ素ペンタセン及び含フッ素ナフタロシアニンの含フッ素多環芳香族化合物として、従来の含フッ素多環芳香族化合物では得られかった機能の付与、又は電子移動度の向上若しくは耐熱性及び耐久性の向上、等の物性若しくは特性の改良を図った新規の含フッ素多環芳香族化合物を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、少ない工数で本発明の含フッ素多環芳香族化合物を容易に合成することができるだけでなく、分子骨格内の所望の結合位置に、フッ素原子及び様々な含フッ素置換基を導入できるため、従来のフッ素多環芳香族化合物の製造方法では合成することが困難であった化合物の合成が可能になる。
【0018】
本発明の製造方法において反応中間体として使用する含フッ素単環芳香族化合物は、特注品として入手して使用できるだけでなく、市販の原料からも容易に合成できることから、汎用性と利用性が高い原料である。そのため、本発明による含フッ素多環芳香族化合物の製造方法において低コストで高純度の原料として使用することができ、結果的に、含フッ素多環芳香族化合物のコスト低減に貢献する。
【0019】
また、本発明の製造方法によって得られる含フッ素多環芳香族化合物は、通常の有機溶媒だけでなく、フッ素系(フルオラス)溶媒に対しても溶解性が高くなるため、有機エレクトロニクス材料、表示材料及び高分子機能材料の分野において素子又はデバイスを形成するときに必要な製膜を塗布、噴霧及び接触等によるウェットプロセスで行うことができるようになる。また、ウェットプロセスだけでなく、従来から行われている真空蒸着法、MBE法又は気相輸送成長法等のドライプロセスによっても製膜が可能であるため、素子化又はデバイス化において適用範囲の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によって製造される有機薄膜トランジスタの基本的な層構成を示す断面図である。
【図2】本発明によって製造される積層機能分離型電子写真感光体の基本的な層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、ペンタセン化合物とは、炭素6員環が5以上縮合した骨格をいい、シリルエチニル化されたペンタセン化合物も含まれる。含フッ素ペンタセン化合物とは、ペンタセン骨格を形成する炭素原子の少なくとも1つがフッ素原子、フッ素原子を含むアルキル基、又はパーフルオロアルキル基と結合している化合物をいう。

【0022】
また、ナフタロシアニン化合物とは、トリフェニルナフタロシアニン化合物及びテトラフェニルナフタロシアニン化合物をいい、含フッ素ナフタロシアニン化合物とは、ナフタレン骨格を形成する炭素原子の少なくとも1つがフッ素原子、フッ素原子を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基と結合している化合物をいう。

【0023】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、3環以上の共役系多環芳香族基を有する含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物において、前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つがパーフルオロアルキル基で核置換された含フッ素多環芳香族化合物である。さらに、下記の(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式のいずれかに表されるように、前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つが、2以上のパーフルオロアルキル基で核置換され、且つ、少なくとも前記芳香族基のオルト位に2つのパーフルオロアルキル基が結合する。

【0024】
含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物として、前記共役系多環芳香族基の少なくとも一つが1又は2以上のフッ素原子又はパーフルオロアルキル基で置換されたものは、すでに周知又は公知である。また、前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つに、パーフルオロアルキル基の一つが核置換した化合物についても公知である(例えば、前記非特許文献1を参照)。

【0025】
それに対して、本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、2以上のパーフルオロアルキル基によって、前記前記共役系多環芳香族基の両末端に位置する芳香族基の少なくとも一つがオルト位で核置換される構造を有する。その構造により従来の含フッ素多環芳香族化合物では得られかった機能の付与、又は電子移動度、耐熱性及び耐久性の向上を図ることができる。また、フッ素系(フルオラス)溶媒に対しても溶解性が高くなるため、有機エレクトロニクス材料、表示材料及び高分子機能材料の分野において素子又はデバイスを形成するときに必要な製膜をウェットプロセスで行うことができるようになる。さらに、パーフルオロアルキル基の種類、置換数及び置換位置は、原料となる材料(含フッ素単環芳香族化合物)を、物性や特性に応じて、適宜、選択することにより容易に変更することができるため、有機エレクトロニクス材料等の用途に対して材料の選択幅が広がるという利点を有する。

【0026】
以下、本発明の含フッ素多環芳香族化合物を詳細に説明する。本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、具体的に、下記の(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式のいずれかで表される含フッ素多環芳香族化合物である。

【0027】
【化25】
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【化26】
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【化27】
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【化28】
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【0028】
前記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式において、Mは2個の水素原子、2価の金属、又は3価若しくは4価の金属若しくは半金属の誘導体を示し、X及びXは、それぞれ独立にパーフルオロアルキル基であり、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素化若しくはパーフルオロ化されてもよいアルキル基、フッ素化されないアルキル基、又はフッ素化されないフェニル基である。Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)式で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(1a)式で表される置換基、下記(1b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。R、R、Rは、それぞれ独立に水素、フッ素、塩素、フッ素化されていない直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよいアリール基である。

【0029】
【化29】
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前記(1a)式中、A、A及びAは、アルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。

【0030】
【化30】
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前記(1b)式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。

【0031】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(1)で表されるトリフェニルナフタロシアニンの環化3量体、又は前記一般式(2)で表されるテトラフェニルナフタロシアニンの環化4量体から構成される含フッ素ナフタロシアニン化合物である場合は、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基である。それにより、有機半導体材料、電子移動材料、電荷発生材料及び発光材料のいずれかにおいて、電子移動度、耐熱性及び耐久性の向上、並びに溶媒に対する高い溶解性によってウェットプロセスを行うときに製膜性の向上が図れる。

【0032】
また、本発明の含フッ素多環芳香族化合物が、前記一般式(3)である含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物、又は前記一般式(4)で表される含フッ素ペンタセン化合物である場合は、前記X及びXが、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基であり、前記X及びXが、それぞれ独立に、水素原子又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021の群から選ばれるいずれか1つのパーフルオロアルキル基である。それにより、有機半導体材料又は電子移動材料において、電子移動度、耐熱性及び耐久性の向上、並びに溶媒に対する高い溶解性によってウェットプロセスを行うときに製膜性の向上が図れる。

【0033】
<含フッ素多環芳香族化合物の製造方法>
本発明による含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を、次に説明する。

【0034】
本発明の製造方法においては、含フッ素多環芳香族化合物として含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物を製造するとき、下記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を反応中間体として使用する。

【0035】
【化31】
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[式中、X及びXは、それぞれ独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(5a)式で表される置換基、下記(5b)式で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、下記(5a)式で表される置換基、下記(5b)で表されるフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。]
【化32】
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[式中、A、A及びAは、アルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。]
【化33】
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[式中、B、B、B、B及びBは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、第3級アルキル基、含フッ素第3級アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル置換基、アミド置換基、又はフェニル基である。]

【0036】
上記(5)式で示す含フッ素単環芳香族化合物は、単環芳香環に2つのジブロモアルキル基がオルト位で結合している。この化合物の脱ブロム化によってオルトキノジメタン中間体を発生させ、引き続きアルケンとのディールス・アルダー付加反応を行い、同時に脱臭化水素によって芳香環を形成することで、本発明による含フッ素ペンタセン化合物及び含フッ素ナフタロシアニン化合物の製造を行うことができる。

【0037】
<含フッ素ナフタロシアニン化合物の製造方法>
含フッ素ナフタロシアニン化合物は、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物とフマロニトリル又はマレオニトリルとを用いて、基本的に下記の合成スキーム1に従って製造される。下記の合成スキーム1は、上記(1)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物の中で、Mが2個の水素原子であって、環化四量化反応によって合成される含フッ素のテトラフェニルナフタロシアニン化合物、又は上記(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物の中で、Mが金属又はホウ素(B)であって、環化三量化反応によって合成されるトリフェニルナフタロシアニン化合物、のそれぞれの合成例である。
<スキーム1>

【0038】
【化34】
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【0039】
上記スキーム1において、ディールス・アルダー付加反応を、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)又はジメチルスルフォキシド(DMSO)等の極性非プロトン溶媒中でヨウ化ナトリウム(NaI)等の還元剤を用いて50℃以上の温度で所定時間加熱して行うことにより、上記スキーム1の式(9)で表されるナフタレン-2,3-ジカルボニトリル(又は2,3-ジシアノナフタレン)を合成することができる。得られたナフタレン-2,3-ジカルボニトリルを用いて、例えば、環化四量化反応を行う場合は、DMF、DMA又はDMSO等の極性非プロトン溶媒中で、硫酸ナトリウムと(CHSiNHSi(CH等のシリル化合物とを添加し、100℃以上の温度で所定時間加熱反応させることにより、含フッ素ナフタロシアニン化合物(上記スキーム1において(10)式で表される化合物)を製造することができる。

【0040】
上記(1)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物において、Mが2個の水原子を含む化合物(上記(10)式で表される化合物)に代えて、Mが2個の金属又は3価若しくは4価の金属の誘導体である場合でも、公知の合成方法で製造することができる(前記特許文献6又は日本結晶学会誌、Vol54、2012、p345-351を参照)。例えば、上記スキーム1において(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を用いて合成される含フッ素のナフタレン-2,3-ジカルボニトリル(スキーム3の(9)式で表される化合物)を、金属又は金属誘導体と反応させて環化四量化反応を行うことによって製造することができる。金属又は金属誘導体としては、例えば、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Rd、In、Sn、Pt、Pb等の金属及びこれらのハロゲン化合物、カルボン酸化合物、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。

【0041】
また、上記スキーム1の(9)で表される含フッ素のナフタレン-2,3-ジカルボニトリルを用いることにより、前記特許文献6で開示される合成方法に従って下記(12)式で表される含フッ素の1,3-ジイミノベンゾインドリドン化合物を合成してもよい。このようにして合成される含フッ素の1,3-ジイミノベンゾインドリドン化合物を、含フッ素のナフタレン-2,3-ジカルボニトリルの場合と同じように金属又は金属誘導体と反応させて環化四量化反応を行うことによって、上記(1)式で表される、Mが2個の金属又は3価若しくは4価の金属の誘導体である含フッ素ナフタロシアニン化合物を製造することができる。ここで、前記Mとしては、例えば、Cu、Zn、Ni、Pd、Ti、V等が挙げられる。

【0042】
【化35】
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【0043】
また、上記スキーム1において、Mとして、例えば、ホウ素(B)を含有する化合物を環化三量化反応によって合成を行う場合は、ジクロロベンゼン等の溶媒中で、三塩化ホウ素を含む非極性の炭化水素溶液(例えばヘプタン溶液)を添加し、100℃以上の温度で所定時間加熱反応させることにより、ホウ素を含む含フッ素トリフェニルナフタロシアニン化合物(上記スキーム1において(11)式で表される化合物)を製造することができる。

【0044】
上記スキーム1に示すように、反応中間体として上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を使用することにより、基本的にディールス・アルダー付加反応と環化四量化又は環化三量化の反応による2段階という少ない合成スキームで含フッ素ナフタロシアニン化合物を製造することができる。また、前記特許文献6に開示されているフッ素を含むテトラフェニルナフタロシアニンとは異なり、ナフタレン骨格を形成する炭素原子の少なくとも1つがフッ素原子だけでなく、フッ素原子を含むアルキル基、パーフルオロアルキル基と結合する化合物を製造することができる。特に、オルト位置で2つのパーフルオロアルキル基と核置換する化合物を容易に、且つ、低コストで得るためには、上記スキーム1に従って合成を行うのが好適である。それにより、耐熱性及び有機溶剤やフッ素系(フルオラス)溶媒又は樹脂に対する溶解性の向上だけでなく、電子移動度等の特性向上や新しい機能の付与を行うときに好適な化合物を提供することができる。

【0045】
<含フッ素シリルエチルペンタセン化合物の製造方法>
含フッ素シリルエチルペンタセン化合物は、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物とパラ-ベンゾキノンとを用いて、基本的に下記の合成スキーム2に従って製造される。
<スキーム2>

【0046】
【化36】
JP2020070289A_000026t.gif
[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に水素、フッ素、塩素、フッ素化されていない直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、フッ素化又はパーフルオロ化されてもよいアリール基である。]

【0047】
上記スキーム2において、シリルエチニル化反応は、例えば、前記特許文献4及び特表2010-520241号公報に開示された方法に従って行うことができる。具体的には、シリルアセチレン化合物から調製したアルキニルリチウムを対応するペンタセンキノン(スキーム2において(13)式で表される化合物)に付加してシリルエチニル化反応を行い、続いてヨウ化水素(HI)及び塩化スズ(II)等の還元剤による還元反応によって含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物(スキーム2において(3)式で表される化合物)を合成することができる。

【0048】
上記スキーム2に示すように、反応中間体として上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を使用することにより、基本的にディールス・アルダー付加反応、シリルエチニル化反応及び還元反応の3段階という少ない合成スキームで含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物を製造することができる。また、上記のスキーム2に従って合成される含フッ素シリルエチルペンタセン化合物は、前記特許文献1に記載される四フッ化硫黄及び/又はフッ化水素等のフッ素化剤を、合成途中で使用する必要がないため、安全性の点でも利便性の高い製造方法である。

【0049】
さらに、本発明の製造方法は、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物の化学構造を変更するだけで、同じ合成スキームに従い、ペンタセン骨格を形成する炭素原子の少なくとも1つがフッ素原子、フッ素原子を含むアルキル基、又はパーフルオロアルキル基と結合する含フッ素ペンタセン化合物を容易に製造することができる。一方、前記特許文献1~2又は特許文献3に開示された合成方法では、使用する原料及び合成方法に制約があるため、ペンタセン骨格を形成する炭素原子と結合する置換基がフッ素原子及びパーフルオロアルキル基のどちらかに制約される。このように、本願発明の製造方法は、様々な化学構造を有する含フッ素ペンタセン化合物を提供することができるため、従来の含フッ素多環芳香族化合物では得られかった機能の付与、又は電子移動度の向上や耐熱性及び耐久性の向上等の物性若しくは特性の改良を図ることが可能になる。

【0050】
<含フッ素ペンタセン化合物の製造方法>
含フッ素ペンタセン化合物は、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物とパラーベンゾキノン(1,4-ベンゾキノン)とを用いて、基本的に下記の合成スキーム3に従って製造される。
<スキーム3>

【0051】
【化37】
JP2020070289A_000027t.gif

【0052】
上記スキーム3においてディールス・アルダー付加反応は、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)又はジメチルスルフォキシド(DMSO)等の極性非プロトン溶媒中で、ヨウ化カリウム(KI)等の還元剤を用いて行うことができる。このディールス・アルダー付加反応においては、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物の脱臭化水素反応による芳香環の形成が同時に進行する。また、還元反応は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)または水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)を作用させた後、引き続いて塩化錫(II)(SnCl)又はその水和物、ヨウ化水素(HI)、及び有機金属錯体等の還元剤を使用して行うことができる。

【0053】
上記スキーム3に示すように、反応中間体として上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を使用することにより、基本的にディールス・アルダー付加反応と還元反応の2段階という少ない合成スキームで含フッ素ペンタセン化合物(上記スキーム3において(4)式で表される化合物)を製造することができる。また、上記スキーム3に従って合成される含フッ素ペンタセンは、上記のスキーム2に従って合成される含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物の場合と同様に、合成途中でフッ素化剤として四フッ化硫黄及び/又はフッ化水素等を使用する必要がないため、安全性の点でも利便性の高い製造方法である。

【0054】
<含フッ素単環芳香族化合物及びその合成方法>
次に、上記(5)式で示す含フッ素単環芳香族化合物について具体例を挙げて説明する。

【0055】
本発明は、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物において、X及びXは独立にフッ素原子又は含フッ素アルキル基であり、含フッ素アルキル基としては、フッ素原子を少なくとも1つ以上含む炭素1~12のアルキル基が挙げられる。前記含フッ素アルキル基には、パーフルオロアルキル基が含まれる。

【0056】
本発明においては、有機溶媒やフッ素系(フルオラス)溶媒又は樹脂への溶解性の付与だけでなく、電子移動度の向上や耐熱性及び耐久性の向上等の物性若しくは特性の改良を図った新規のフッ素多環芳香族化合物を提供するという本願発明の効果を奏するため、X及びXがフッ素又はパーフルオロアルキル基であることが好ましい。さらに、パーフルオロアルキル基としては、炭素数1~12の直鎖状パーフルオロアルキル基が好ましく、立体障害による分子間相互作用の低下を抑制するため炭素数1~10の直鎖状パーフルオロアルキル基がより好ましい。炭素数1~10の直鎖状パーフルオロアルキル基の具体例としては、材料の合成及び入手が比較的容易である点から、例えば、-CF、-C、-C13、-C17、-C1021等が挙げられる。本発明において上記(1)式~(4)式で表される化合物のいずれかを合成するときは、少なくともX及びXが、それぞれ独立に、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10の直鎖状パーフルオロアルキル基である含フッ素単環芳香族化合物を用いる。

【0057】
また、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、含フッ素アルキル基、上記(5a)式で表される置換基、上記(5b)式で示すフェニル基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環基である。なお、Y及びYとして、-CH、-CH-及び-CH<のように、ベンゼン環に結合する炭素に水素原子の少なくとも1個以上が結合する直鎖状又は分岐状の置換基は好ましくない。これらの置換基によって前記の化合物(5)の合成段階を阻害するのみならず、その脱ブロム化によるオルトキノジメタン中間体の生成が阻害されるためである。

【0058】
上記(5a)式で表される置換基において、A、A、Aは、独立に、それぞれアルキル基、フェニル基、又は含フッ素アルキル基である。また、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基とは、例えば、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等の骨格を形成する環構造の少なくとも1つ以上の環員に1個以上の原子を有する1価の置換基(例えば、ハロゲン、アルキル基、パーフルオロアルキル基を含むフッ素含有アルキル基等)で核置換されたものをいう。置換若しくは無置換の芳香族複素環基とは、環構造内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する環構造(例えば、チオフェン、ピリジン等)の少なくとも1つ以上の環員に1個以上の原子を有する1価の置換基(例えば、ハロゲン、アルキル基、パーフルオロアルキル基を含むフッ素含有アルキル基等)で核置換されたものをいう。

【0059】
本発明においては、有機溶媒やフッ素系(フルオラス)溶媒又は樹脂への溶解性の付与だけでなく、電子移動度の向上や耐熱性及び耐久性の向上等の物性若しくは特性の改良を図った新規のフッ素多環芳香族化合物を提供することができること、及び材料の合成や入手が比較的容易であること等の点から、上記Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)で表される置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)で表されるフェニル基であることが好ましい。

【0060】
さらに、上記Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。上記Y及びYがこれらの置換基を有する含フッ素単環芳香族化合物は、材料の合成や入手が容易であるため、他の化合物に比べて原料コストの低減を図ることができるだけでなく、高純度のものが得られやすい。原料入手がより容易であることから、上記Y及びYは同じ置換基であることが特に好ましい。

【0061】
また、上記Z及びZも、同じ理由により、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、パーフルオロアルキル基、前記A、A及びAがそれぞれ独立にアルキル基若しくはパーフルオロアルキルアルキル基である前記(5a)で表される置換基、又は前記B、B、B、B、及びBがそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、若しくはパーフルオロアルキル基である前記(5b)で表されるフェニル基であることが好ましく、原料入手の容易さの点から同じ置換基であることが特に好ましい。

【0062】
さらに、上記Z及びZは、水素原子であることがより好ましい。上記Z及びZが水素である含フッ素単環芳香族化合物は、材料の合成や入手が容易であるため、高純度のものが得られやすく、他の化合物に比べて原料コストの低減を図ることができる。

【0063】
<含フッ素単環芳香族化合物の合成方法>
上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物は、上記スキーム1~3の合成工程において基本の原料として使用されるが、本発明においては市販の別の原料から合成したものを使用してもよい。例えば、市販の原料として下記(6)式又は(7)式で表される単環状芳香族化合物を使用して下記の合成スキーム4によって合成することができる。下記(6)式又は(7)式で表される単環状芳香族化合物は、オルト位で2つの臭素(Br)又は2つのヨウ素(I)が核置換した化学構造を有する化合物である。
<スキーム4>

【0064】
【化38】
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【0065】
合成スキーム4に示すように、上記(1)式で表される含フッ素単環状芳香族化合物は、上記(6)式又は(7)式で表される単環状芳香族化合物において、それぞれ臭素(Br)又はヨウ素(I)が核置換された位置に前記X及びXの置換基を導入することにより、上記(8)式で表される化合物を合成する工程、及び上記(8)式で表される化合物のW及びWの置換基において単環芳香環と化学結合する炭素に結合する2つの水素原子を臭素化する工程、を有する合成方法によって製造される。

【0066】
上記スキーム4において前記X及びXとしてパーフルオロ基(以下、Rf-と略す。)を導入する場合は、例えば、極性非プロトン溶媒中で銅粉の存在下に、上記(6)式又は(7)式で表される化合物と、Rf-I又はRf-Br等の化合物とを反応させることにより導入することができる。また、前記X及びXとしてフッ素原子を導入する場合は、四フッ化硫黄及び/又はフッ化水素等のフッ素化剤を用いて上記(6)式又は(7)式で表される化合物をフッ素化してもよい。

【0067】
上記(6)式及び(7)式で表される化合物の中で、本発明においては、上記(8)で表される化合物の合成が容易で、高純度の原料が入手しやすいという点から、上記(6)式で表される化合物を使用することが好ましい。

【0068】
上記スキーム4において上記W及びW2の臭素化は、例えば、ラジカル置換、求電子付加反応において臭素源として一般的に使用されるN-ブロモスクシンイミド(NBS)等の化合物と、ベンゾイルパーオキシド(BPO)等の過酸化物とを反応させることによりラジカル反応機構を利用して行うことができる。ここで、臭素化反応によって生成する反応副生成物だけが溶解しない溶媒、例えば、四塩化炭素等を共存させて反応を行った後、濾過分別法等により上記(5)式で表される化合物の単離が容易になる。

【0069】
上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物の代表例を下記に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。下記の(5-1)~(5-12)で示す化合物において、(F)Rfは、フッ素原子、又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、C~Cは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はアルキル基を示す。

【0070】
【化39】
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【0071】
また、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を合成するための原料として使用する上記(6)式、(7)式、及び(8)式でそれぞれ表される化合物の代表例は、上記[5-1]~[5-12]に示す化合物に対応して、置換基として表されるW及びWが、-CH、-C(F)H、-C(Rf)H、C~Cに置換基を有するアリール基、-C[C(CH]H、-C(Cl)Hである。ここで、Rfは-CF、-C、-C13、-C17、-C1021のパーフルオロアルキル基である。

【0072】
<含フッ素多環芳香族化合物の代表例>
次に、上記(5)式で表される含フッ素単環芳香族化合物を用いて製造される含フッ素多環芳香族化合物の代表例を下記に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。

【0073】
まず、上記スキーム1に従って製造される上記(1)式で表される含フッ素のテトラフェニルナフタロシアニン化合物の代表例を下記に示す。下記の[1-1]~[1-9]で示す化合物において、(F)Rfは、フッ素原子、又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、C~Cは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はアルキル基を示す。

【0074】
【化40】
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【0075】
さらに、上記(1)式で表される含フッ素のテトラフェニルナフタロシアニン化合物の構造において、窒素と結合する水素原子(H)に変えて、Mとして2価、3価又は4価の金属が結合する化合物の代表例を下記に示す。下記の[1-10]~[1-18]で示す化合物において、(F)Rfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、C~Cは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はアルキル基を示す。

【0076】
【化41】
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【0077】
さらに、上記(2)式で表される含フッ素のトリフェニルナフタロシアニン化合物の代表例を下記に示す。下記の[2-1]~[2-9]で示す化合物において、(F)Rfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、C~Cは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はアルキル基を示す。

【0078】
【化42】
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【0079】
さらに、上記(2)式で表される含フッ素のトリフェニルナフタロシアニン化合物の構造において、窒素と結合する水素原子(H)に変えて、Mとして2価、3価又は4価の金属、又は4価のホウ素等が結合する化合物の代表例を下記に示す。なお、4価の元素の場合は前記トリフェニルナフタロシアニン化合物に含まれる3つの窒素以外にも別の配位子(例えば、ハロゲン等)と結合するが、下記の代表例では別の配位子の記載を省略している。

【0080】
【化43】
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【0081】
次に、上記スキーム2に従って製造される上記(3)式で表される含フッ素シリルエチニルペンタセン化合物の代表例を下記に示す。下記の[3-1]~[3-11]で示す化合物において、(F)Rfは、それぞれ独立に、フッ素原子又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、Rf(H,F)は、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基、又は水原子若しくはフッ素原子を示す。また、C~Cは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はアルキル基を示す。また、Siと結合するRは、炭素数が1~10のアルキル基を示す。

【0082】
【化44】
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【0083】
次に、上記スキーム3に従って製造される上記(4)式で表される含フッ素ペンタセン化合物の代表例を下記に示す。下記の[4-1]~[4-12]で示す化合物において、Rf(F)は、それぞれ独立に、フッ素原子又は-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基を示し、Rf(H,F)は、それぞれ独立に、-CF、-C、-C13、-C17、及び-C1021のいずれかのパーフルオロアルキル基、又は水原子若しくはフッ素原子を示す。。また、C~Cは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子又はアルキル基を示す。

【0084】
【化45】
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【0085】
<有機薄膜トランジスタの製造方法>
本発明によって製造される上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物は、有機薄膜トランジスタを構成する有機半導体層に含まれる有機半導体材料として使用することができる。そこで、本発明による有機薄膜トランジスタの製造方法について説明する。

【0086】
本発明によって製造される有機薄膜トランジスタの基本的な層構成を示す断面図を図1に示す。図1(a)はトップコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5、及び有機半導体層6を有し、有機半導体層6の上にソース電極4及びドレイン電極5が配置される構造である。図1(b)はボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、トップコンタクト型と同じ層構成を有するが、有機半導体層6の下にソース電極4及びドレイン電極5が配置される点で異なる。いずれも、金属基板-絶縁体—半導体の構造となっており、有機半導体層6に当接するソース電極4及びドレイン電極5の間における空隙の広さによって、有機半導体のチャネル長及びチャネル幅が決められる。

【0087】
図1に示す有機薄膜トランジスタにおいては、ソース電極4及びドレイン電極5の間に形成される有機半導体層6におけるチャネルを通じてキャリアが移動する。 ここで、ゲート電極2に印加する電圧を調整することによって、有機半導体層6に形成されたチャネルを通じたキャリアの移動を制御することができる。本発明による有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層が、上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを含むので、有機半導体層6を移動するキャリアは電子であり、ゲート電極に正の電圧を印加することで、有機半導体層6を移動する電子の流れ(電流)を制御する。すなわち、本発明による有機薄膜トランジスタは、n型の有機薄膜トランジスタである。

【0088】
図1(a)に示すトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの一般的な製造方法は、基板1 に ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを含む有機半導体層6、 並びにソース電極4及びドレイン電極5の薄膜を、順次積層することで行われる。一方、図1(b)に示すボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの一般的な製造方法では、基板上1にゲート電極2及びゲート絶縁膜3を積層し、次いでフォトプロセスによりソース電極4及びドレイン電極5の薄膜を精密に加工して形成した後、上記(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを含む有機半導体層6の薄膜を積層することで、有機薄膜トランジスタを得ることができる。

【0089】
基板1の材料としては、ガラス、石英、シリコン、金属及びセラミック等のような無機材料、並びにプラスチックのような有機材料を用いることができる。ここで、基板1の材料として、金属のような導電性物質を使用した場合には、基板1がゲート電極としての機能も果たすので、ゲート電極2としての機能を有する基板1に別のゲート電極の製作を省略することができる。本発明による有機薄膜トランジスタは 、 ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5、及び上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを含む有機半導体層6からなるMIS(metal-insulator-semiconductor)型薄膜トランジスタである。このようなMIS型薄膜トランジスタは、良好なn型の有機薄膜トランジスタの特性を示し、別の基板を必要としないので、低コストで容易に製造することができる。また、基板1の材料としてプラスチック基板を使用した場合には、プラスチック基板を含む有機薄膜トランジスタの全体が、柔軟性を有するため、本発明による有機薄膜トランジスタを、フレキシブルディスプレイの駆動回路、クレジットカードなどのICカード、及び商品に貼り付けて使用するIDタグなどのような様々な有機薄膜デバイスに用いることができる。ただし、プラスチック基板に用いられるプラスチック材料は、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性及び低吸湿性に優れていることが必要である。このようなプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポ スチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、及びポリイミド等が挙げられる。

【0090】
ゲート電極2の材料としては、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、マグネシウム、及びカルシウム等の金属並びにそれら金属の合金、並びにポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛、及び導電性ポリマーが挙げられる。ゲート電極2は、ゲート電極2の材料を用いて、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法、及び印刷法等の周知の成膜方法により形成される。

【0091】
ゲート絶縁膜3の材料としては、SiO、 SiN、SiON、Al、 Ta、アモルファスシリコン、ポリイミド樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、 ポリパラキシリレン樹脂、及びポリメチルメタクリレート樹脂等の材料が挙げられる。ゲート絶縁膜3は、上記の材料から選択される一種類の材料を用いて、ゲート電極2と同様の周知の成膜方法により形成されるか、又は上記の材料から選択される二種類以上の材料を混合し、ゲート電極2と同様の周知の成膜方法により形成される。

【0092】
ソース電極4及びドレイン電極5の材料としては、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、マグネシウム、及びカルシウムなどの金属並びにそれら金属の合金、並びにポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、酸化スズインジウム、酸化亜鉛、及び導電性ポリマー等の材料が挙げられる。ソース電極4及びドレイン電極5は、ソース電極4及びドレイン電極5の材料を用いて、ゲート電極2と同様の周知の成膜方法により(好ましくは同時に)形成される 。

【0093】
有機半導体層(有機活性層)6は、上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを用いて、真空蒸着法やMBE法などのドライプロセス、又は有機溶媒やフッ素系溶剤に溶解して溶液を用いて印刷法等のウェットプロセスによる周知又は公知の膜作製方法により形成される。本発明においては、ウェットプロセスを採用できるため、有機薄膜トランジスタの製造コストの低減を図ることができる。

【0094】
さらに、有機薄膜トランジスタの信頼性及び耐久性を向上させるため、基板1におけるゲート電極2と同じ側の面、基板1におけるゲート電極2と反対側の面、又はその両方に、透湿防止層(ガスバリア層)を設けることが好ましい。また、基板1に透湿防止層を設けることによって、有機半導体層に空気中の水分及び/又は酸素が進入することを防止することができる。その結果、有機半導体層の寿命が急激に減少することを防止することができる。このような透湿防止層用の材料としては、材質として無機又は有機の材料が使用できるが、信頼性及び耐久性を向上させる点から、窒化ケイ素及び酸化ケイ素等のような無機物を用いることが好ましい。また、透湿防止層は、高周波スパッタリング法等の周知の方法により成膜される。

【0095】
また、本発明による有機薄膜トランジスタにおいては、必要に応じて、基板1に有機又は無機によるハードコート層及びアンダーコート層のような保護層を設けてもよい。

【0096】
<太陽電池の製造方法>
本発明によって製造される上記(1)式及び(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物、及び記(3)式及び(4)式で表される含ペンタセン化合物は、太陽電池を構成する層に使用する材料として適用することができる。そこで、本発明による太陽電池の製造方法について説明する。

【0097】
本発明の太陽電池は、有機薄膜を積層した構造を有するものであり、一対の電極の間に各機能に応じた有機層を含む構造であれば特に限定されない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の素子構成を有する構造が挙げられる。
(1-1)下部電極/活性層(p層)/活性層(n層)/上部電極
(1-2)下部電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(n層)/上部電極
(1-3)下部電極/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極
(1-4)下部電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極
(1-5)下部電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(i層又はp材料とn材料の混合槽)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極
(1-6)下部電極/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/中間電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極
(1-7)下部電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/中間電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極
(1-8)下部電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(i層、p材料とn材料の混合槽)/活性層(n層)/バッファ層/中間電極/バッファ層/活性層(p層)/活性層(i層又はp材料とn材料の混合槽)/活性層(n層)/バッファ層/上部電極

【0098】
前記素子構成の中で、素子構成(1-2)~(1-8)のバッファ層、特に陰極側バッファ層及び/又は中間電極に接するバッファ層に本発明によって製造される上記の(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式で表される含フッ素多環芳香族化合物のいずれかを用いることが好ましく、素子構成(1-3)~(1-8)のバッファ層、特に陰極側バッファ層及び/又は中間電極に接するバッファ層に本発明による含フッ素多環芳香族化合物を用いることがより好ましい。以下、各構成部材について簡単に説明する。

【0099】
前記下部電極及び上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用することができる。例えば、活性層(p層)と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスニウム(Os)、パラジウム(Pd)等の金属が使用でき、活性層(n層)と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、カルシウム(Ca)、白金(Pt)、リチウム(Li)等の金属やそれらの金属からなる二成分金属系が使用できる。p層に接続する電極としては仕事関数の大きい金属が、また、n層に接続する電極としては仕事関数の小さい金属又は金属系が好ましい。有機太陽電池の少なくとも一方の面は十分に透明であることが望ましく、透明な面に形成する電極は、蒸着やスパッタリング等の方法で所望の透明性が確保できるような透明電極を形成する。

【0100】
上記活性層においてn層として使用される材料は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましく、例えば、C60等のフラーレン化合物、カーボンナノチューブ、ペリレン化合物、多環キノン及びキナクリドン等、高分子系ではC-ポリ(フェニレンービニレン)、MEH-CN-PPV、シアノ基又はパーフルオロメチル基含有のポリマー及びポリ(フルロレン)化合物が挙げられる。また、無機化合物の場合は、n型特性の無機半導体化合物を使用することができる。例えば、n-Si、GaAs、CdS、PbS、CDSe、InP、Nb、WO及びFe等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化ニチタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。

【0101】
上記活性層のp層として使用される電子供与性材料は特に限定されないが、電子供与性を示すことが必要であり、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば、N,N’-ビス(3-トリル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPD)及び4,4’,4’’-トリス(フェニル-3-トリルアミノ)トリファニルアミン(MTDATA)等の代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)及びチタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポリフィリン(OEP)、白金オクタエチルポリフィリン(PtOEP)及び亜鉛テトラフェニルポリフィリン(ZnTPP)等に代表されるポリフィリン類、ポリヘキシルチオフェン(P3H)及びメトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、並びにポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。

【0102】
上記活性層のi層は、電子受容性材料(n材料)と電子供与性材料(p材料)の中間の特性を有する材料を含有してもよいし、電子受容性材料と電子供与性材料とを混合して含有する混合層であってもよい。

【0103】
上記バッファ層は、有機薄膜太陽電池の上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留りの低下を防止するために積層して使用されており、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いため、特に有用な層構成である。本発明によって製造される上記の(1)式及び(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物、及び上記の(3)式及び(4)式で表される含フッ素ペンタセン化合物は、電子輸送性が高く、電極とのエネルギー障壁が小さいため、バッファ層、特に陰極側のバッファ層に用いることが好ましい。それ以外にも、中間電極に接するバッファ層に使用することも可能である。本発明による含フッ素ナフタロシアニン化合物又は含フッ素ペンタセン化合物は、これらのバッファ層として単独で使用しても、又は公知の化合物と混合して使用しても良い。また、本発明によって製造される含フッ素ナフタロシアニン化合物又は含フッ素ペンタセン化合物を含有するバッファ層と公知の化合物を含有するバッファ層とを併用して同じ有機太陽電池の層構成とすることもできる。公知の化合物としては、低分子の芳香族環状酸無水物、導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート及びポリアニリン:カンファースルホン酸等、無機半導体化合物であるCdTe、p-Si、SiC、GaAs、NiO、WO3及びV等が挙げられる。

【0104】
上記中間電極は、電子-正孔再結合ゾーンを形成することにより積層型素子の個々の光電変換ユニットを分離するために採用される層構成の一つである。この層は、前方の光電変換ユニット(フロントセル)のn層と後方の光電変換ユニット(バックセル)のp層との間の逆ヘテロ接合の形成を防ぐ役目をする。上記中間電極を形成する層は、Ag、Li、LiF、Al、Ti及びSnから選択される何れかの金属で、通常、厚さ20Å以下で形成される。

【0105】
本発明の太陽電池を構成する各層は、一般的に基板上に積層して形成される。本発明の太陽電池で使用する基板は、機械的強度が高く、耐熱性を有し、さらに透明性を有するものが好ましい。前記基板としては、ガラス基板や透明樹脂フィルムが挙げられる。

【0106】
本発明の太陽電池を構成する各層の形成は、公知の有機太陽電池の作製で採用される公知の方法で行うことができ、例えば、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ及びイオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング及びインクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。本発明によって製造される上記の(1)式及び(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物、及び上記の(3)式及び(4)式で表される含フッ素ペンタセン化合物は、溶液塗布による湿式成膜法を採用してバッファ層等を形成する場合に従来よりも良好な成膜性が得られるため、特に、高精細及び大面積化の素子を作製するときに作業性の向上及び製造コスト低減を図る上で大きな効果を奏する。

【0107】
各層の膜厚は特に限定されないが、適切な膜厚に調整して各層の形成が行われる。膜厚が厚すぎると光電変換効率が低下し、また、薄すぎるとピンホール等の発生がみられ所望の機能を発揮することができない。通常の膜厚は1nm~10μmの範囲で調整するが、5nm~1μmの範囲が特に好ましい。

【0108】
本発明の製造方法によって得られる太陽電池は、有機薄膜層において成膜性の向上、膜のピンホール発生の防止等だけでなく耐熱性及び耐久性をあげるために、必要に応じて樹脂や酸化防止剤、紫外線吸収剤及び可塑剤等の添加剤を使用してもよい。

【0109】
<電子写真感光体の製造方法>
上記(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物は、電子写真感光体の電荷発生層に含まれる電荷発生材料として使用することができる。そこで、本発明による電子写真感光体の製造方法を以下に説明する。

【0110】
電子写真感光体としては、毒性の低さ、波長域の選択の広さ、コスト低減の点から有機系の光導電性物質を用いた有機感光体(OPC)が数多く検討されており、近年は耐刷性、高速応答性、高諧調性、耐環境性等の高機能化及び高信頼性化がより一層進展している。OPCは、負帯電性の積層機能分離型と正帯電性の単層分離型に大きく分けられるが、汎用性が高く一般的に使用されている負帯電性の積層機能分離型OPCの基本的な層構成を図2に示す。

【0111】
図2に示すように、積層機能分離型OPCは、基本の層構成として、導電性基体7、下引き層8、電荷発生層9、及び電荷輸送層10を有する。また、下引き層8を形成しないで、導電性基体7の上に直接、電荷発生層9を設けたPCTが製造される場合がある。負帯電の積層機能分離型OPCの機能は次に説明する通りである。

【0112】
暗所で負帯電した積層型感光体は、光を電荷発生層9内に含まれる電荷発生材料が吸収し正孔(hole)と電子の電荷キャリアが生成する。生成した電子は電極である導電性基体7の電極に、正孔は電荷輸送層10にそれぞれ注入される。正孔は電荷輸送層10内を移動し、負帯電した感光体において表面電荷を一部中和するため、それ以外の部分は負帯電した状態で残る。この中和部分に、例えば、負帯電トナーを付着させるか、又は負帯電した部分に正帯電トナーを付着させて画像の印刷を行い、さらに定着を加熱や光等によって行うことにより所望の画像が形成される。本発明による電子写真感光体は、電荷発生層9に含まれる電荷発生材料として、上記(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物を用いることにより製造することができる。

【0113】
本発明で製造される上記(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物を電荷発生層9として形成する方法としては、(i)前記含フッ素ナフタロシアニン化合物を有機溶媒に溶解又は分散した後、導電性基体7又は下引き層8の上に塗布乾燥し成膜する方法、(ii)前記含フッ素ナフタロシアニン化合物と樹脂バインダーとを有機溶媒に分散又は溶解した後、導電性基体7又は下引き層8の上に塗布乾燥し成膜する方法、又は(iii)前記含フッ素ナフタロシアニン化合物と、樹脂バインダーと、他の有機光導電性物質を少量成分として添加し有機溶媒に分散又は溶解した後、導電性基体7又は下引き層8の上に塗布乾燥する方法等が挙げられる。前記含フッ素ナフタロシアニン化合物は、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントアントロン顔料、無金属フタロシアニン顔料、及びAl、In、V、Mg、Ti等の金属を含有するフタロシアニン顔料等の別の電荷発生材料と組わせて使用してもよい。

【0114】
このとき用いる樹脂バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチルセルロース等が挙げられ、これらの一種又は2種以上が使用できる。

【0115】
本発明における導電性基体7としては、アルミニウムをベースした基体が一般的に使用される。アルミニウムをベースした基体としては、例えば、アルミニウム板、アルミニウム円筒、アルミニウム箔、プレスチックフィルムの表面にアルミニウム等の導電性金属の薄膜又は箔を設けたものが挙げられる。

【0116】
下引き層8は、OPCのブロッキング性の向上と環境安定性の高度化が要求されるときに設けられるものであり、例えば、上記樹脂バインダーとして例示した樹脂を特性に応じて下引き層として用いることができる。

【0117】
電荷輸送層10を形成するために使用する電荷輸送材料としては、ポリーN-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、カルバゾール類、フルオレン類、ヒドラゾン類、トリアゾール類、アリールアミン類、キノン類、オキサゾール類、ポリシラン類等の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。本発明において電荷輸送層10の形成は、上記の電荷発生層9の形成方法と同じ方法で行うことができ、樹脂バインダー及び有機溶媒等も適宜、選択して使用することができる。

【0118】
<有機発光素子の製造方法>
また、上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物は、有機発光素子の発光層に含まれる発光材料として適用することができる。そこで、本発明による有機発光素子の製造方法を以下に説明する。

【0119】
有機発光素子は、陽極と陰極との間に一層若しくは多層の有機薄膜を積層した素子である。有機発光素子が一層の場合、陽極と陰極との間に発光層が設けられ、該発光層は発光材料を含有し、さらに発光材料、陽極から注入した正孔若しくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送する目的で、正孔輸送材料又は電子輸送材料を含有する。ここで使用する発光素子は、発光性能に加えて、正孔輸送能及び電子輸送能の少なくとも何れかの性能を単一の材料で有する場合や、それぞれの特性を有する化合物の混合で使用する場合に有用である。本発明によって製造される上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物は、電子輸送性を兼ね備える発光材料、若しくは発光層において発光材料とともに含有される電子輸送材料として使用される。

【0120】
多層型の有機発光素子は、例えば、基板の上に下記の多層構成で積層した構造が挙げられる。
(2-1)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(2-2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(2-3)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(2-4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(2-5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(2-6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極

【0121】
また、上記の構成に限らず、必要に応じて、正孔輸送層成分と発光層成分、又は電子輸送層成分と発光層成分を混合した層を設けても良い。さらに、電子輸送層と発光層との間には、正孔あるいは励起子(エキシントン)が陰極側に抜けることを阻害する層(ホールブロッキング層)又は励起状態の発光層へ、あるいは励起状態の発光層から隣接する層へエネルギー遷移と電子移動の両者を防止、又は抑制するための層(アンチクエンチング層)を挿入することもある。

【0122】
これら多層型の有機発光素子の構成において、発光層に含まれる発光材料として、本発明によって製造される上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物を使用する。

【0123】
本発明の有機発光素子は、上記の構成の他に、外部環境からの影響をできるだけ受けないように酸素及び水分等との接触を遮断するための保護層(封止層)を設けることができる。保護層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の何れかを用いて形成することができる。その他にも、本発明の有機発光素子をパラフィン、シリコーンオイル、フルオロカーボン等の不活性物質中に素子を封入することによって、外部環境から保護することができる。

【0124】
以下、本発明の有機発光素子の構成に関し、基板の上に、前記の(2-3)陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極を順次設けた構成を例として詳細に説明する。

【0125】
前記基板としては、従来の有機発光素子に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、石英ガラス等のガラス、透明プラスチック等の素材からなる基板が挙げられる。また、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明基板を用いても良い。

【0126】
前記陽極としては、仕事関数が大きなものが好適であり、例えば、金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体又はそれらの合金、酸化物、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料を使用することもできる。前記陽極は、これらの材料を、例えば、蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により基板上に形成することができる。陽極の膜厚は、一般に5~1000nm、好ましくは10~500nmで調整される。

【0127】
前記正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、従来から光導電材料において正孔の電荷注入輸送材料として使用されているものや有機発光素子の正孔輸送層に使用されている公知の材料から任意に選択して用いることができる。前記正孔郵送材料の例としては、銅フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジ(m-トリル)-N,N’-ジフェニルー4,4’-ジアミノビフェニル(TPD)、N,N’—ジ(1-ナフチル)—N,N’-ジフェニルー4,4’—ジアミノビフェニル(α-NPD)等のトリアリールアミン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。また、ポリビニルカルバゾール、(ファニルメチル)ポリシラン、ポリアニリン等の正孔輸送性ポリマーも使用するこができる。正孔輸送性ポリマーとしては、前記の低分子量正孔輸送材料をポリスチレンやポリカーボネート等のポリマーにドープしたものを使用しても良い。

【0128】
前記発光層に用いられる発光材料としては、少なくとも本発明によって製造される上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物が使用されるが、該含フッ素ナフタロシアニン化合物を、公知の発光材材料と組み合わせて使用してもよい。前記公知の発光材料としては、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、オキザゾン誘導体、ベンゾオキサゾン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、縮合多環式芳香族炭化水素及びその誘導体、トリアリールアミン誘導体、有機金属誘導体(例えば、アルミニウム又はイリジウムの有機金属錯体)等が挙げられ、単独又は複数の混合物で使用される。また、前記発光材料としては、ホスト材料にドーパント材料が含まれた材料、例えば、イリジウム金属錯体でドープされたポリカルバゾールや燐光白金錯体を含む電荷輸送ホスト材料等を使用することもできる。

【0129】
前記電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、従来から公知の化合物を使用することができる。前記公知の化合物としては、例えば、トリス(8-ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq)等の金属キレート化オキシノイド化合物、2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)等のアゾール化合物、フェナントロリン誘導体が挙げられる。また、本発明によって製造される上記(3)式及び(4)式で表される含フッ素ペンタセン化合物を使用してもよい。これらの電子輸送材料は、有機発光素子の特性に応じて単独又は複数の混合物で使用される。

【0130】
前記陰極としては、仕事関数の小さなものが好適であり、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体又は複数の合金が挙げられる。また、酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物を使用しても良い。前記陰極は、これらの材料を、例えば、蒸着、スパッタリング等の方法により薄膜を形成することにより、作製することができる。陰極の膜厚は、一般に5~1000nm、好ましくは10~500nmで調整される。

【0131】
本発明による有機発光素子において、上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物を含有する発光層及び他の有機化合物を含有する層は、一般的に真空蒸着法、又は適用な有機溶媒に溶解させて溶液とし、該溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、ロールツートール法等の塗布法により薄膜を形成する。上記の(1)式又は(2)式で表される含フッ素ナフタロシアニン化合物は、溶液塗布法による成膜において良好な成膜性が得られるため、特に、高精細及び大面積化の素子を作製するときに作業性の向上及び製造コスト低減を図る上で大きな効果を奏することができる。使用する有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン系溶媒、パーフルオロ系溶媒、水等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、複数の混合溶媒として使用しても良い。

【0132】
前記の正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の各層の膜厚は、従来の有機発光素子において一般的に採用されている膜厚であれば特に限定されないが、通常、1~1000nmになるように調整される。
【実施例】
【0133】
以下、含フッ素多環芳香族化合物の製造方法を具体的な実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0134】
[実施例1]
4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-o-キシレンの合成
【実施例】
【0135】
【化46】
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【実施例】
【0136】
150℃、0.1 mmHgで30分間乾燥させた銅粉(10.8 g, 170 mmol)を100mL三ツ口フラスコに入れ、4,5-ジブロモ-o-キシレン(4.50 g, 17.0 mmol) 、C6F13I (22.7 g, 17.0 mmol)、無水DMSO (45 mL) を加え、アルゴン雰囲気下110 ℃で22時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、クロロホルムを用いてセライトろ過を行った。ろ液の水層をクロロホルムで3回抽出し、有機層を水で5回洗浄することでDMSOを除去し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-o-キシレンを黄色液体として12.2 g(16.5 mmol、収率97%)得た。得られた生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0137】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.50 (s, 2H), 2.39 (s, 6H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ = -81.02 (t, J = 9.68, 6F), -103.31 (s, 4F), -118.34 (s, 4F), -122.12 (s, 4F), 122.91 (s, 4F), 126.23 (s, 4F).
【実施例】
【0138】
[実施例2]
4 ,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンの合成
【実施例】
【0139】
【化47】
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【実施例】
【0140】
100 mL三ツ口フラスコに、4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-o-キシレン (6.0 g, 8.1 mmol)、 N-ブロモスクシンイミド(NBS) (5.8 g, 3.2 mmol)、 ベンゾイルパーオキシド(BPO) (0.20 g, 0.081 mmol)、および乾燥四塩化炭素 (45 mL)を加え、24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (1.5 g, 2.0 mmol), BPO (0.049 g, 0.020 mmol) を加え、再び24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (1.5 g, 2.0 mmol), BPO (0.049 g, 0.020 mmol) を 加え24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (1.5 g, 2.0 mmol), BPO (0.049 g, 0.020 mmol) を加え24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (1.5 g, 2.02 mmol), BPO (0.049 g, 0.020 mmol) を加え4時間還流した。この時点で、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)によって原料の消失と目的物の生成を確認した。反応溶液を0 ℃に冷却し、生じたスクシンイミドをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、黄色固体を7.1 g得た。この固体の1Hおよび19F NMR分析から、4 ,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンと4 ,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1-ジブロモメチル-2-ブロモメチルベンゼンの混合物であり、モル比は8 : 1であることを確認した。4 ,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンの19F NMR収率は88%と見積もられた。反応生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0141】
4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼン
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 8.08 (s, 2H), 7.10 (s, 2H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ= -81.02 (t, J = 9.51, 6F), -103.93 (s, 4F), -118.11 (s, 4F), -122.03 (s, 4F), -122.87 (s, 4F), -126.28 (s, 4F).
【実施例】
【0142】
4 ,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1-ジブロモメチル-2-ブロモメチルベンゼン
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 8.31 (s, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 4.60 (s, 2H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ= -81.02 (t, J = 9.51, 6F), -103.93 (s, 4F), -118.11 (s, 4F), -122.03 (s, 4F), -122.87 (s, 4F), -126.28 (s, 4F).
【実施例】
【0143】
[実施例3]
2,3,9,10-テトラキス(パーフルオロヘキシル)ペンタセン-6,13-ジオンの合成
【実施例】
【0144】
【化48】
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【実施例】
【0145】
100mL三ツ口フラスコに、4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンと4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-1-ジブロモメチル-2-ブロモメチルベンゼンの混合物 (2.0 g、モル比8:1)、1,4-ベンゾキノン(0.082 g, 0.76 mmol)、ヨウ化カリウム (3.1 g, 19 mmol)および無水DMF (45 mL)を加え、アルゴン雰囲気下110 ℃で20時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、亜硫酸水素ナトリウムの飽和水溶液を150 mL加え、沈殿した固体を吸引ろ過した。得られた固体を水 (100 mL×2), アセトン (50 mL×2) で洗浄し、1H,1H-デカフルオロペンタンに溶解し、水で3回洗浄することでDMFを取り除き、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、2,3,9,10-テトラキス(パーフルオロヘキシル)ペンタセン-6,13-ジオンを褐色固体として 1.0 g (0.67 mmol、収率73%) 得た。生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0146】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 9.18 (s, 4H), 8.63 (s, 4H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ= -80.78 (t, J = 9.16, 6F), -103.17 (s, 4F), -118.12 (s, 4F), -121.93 (s, 4F), -122.70 (s, 4F), -126.08 (s, 4F).
【実施例】
【0147】
[実施例4]
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,3,9,10-テトラキス(パ—フルオロヘキシル)ペンタセンの合成
【実施例】
【0148】
【化49】
JP2020070289A_000062t.gif
【実施例】
【0149】
トリイソプロピルシリルアセチレン (0.12 mL, 0.55 mmol) のTHF 溶液(15 mL) に対し、0 ℃アルゴン雰囲気下、n-ブチルリチウムヘキサン溶液 (1.6 M、0.29 mL, 0.46 mmol) を加え、0 ℃で30分間攪拌した。6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-2,3,9,10-テトラキス(パーフルオロヘキシル)ペンタセン (0.16 g, 0.10 mmol) を加え、室温で16時間攪拌した。反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)により過剰のトリイソプロピルシリルアセチレンを除去した後、酢酸エチルで溶出した溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し中間体であるジオールを含む混合物を得た。これを脱気したTHF (10 mL)と塩酸 (6 M、10 mL) に溶解し、塩化スズ(II)二水和物(0.45g, 2.0 mmol)を加え遮光下3時間還流した。反応混合物をヘキサン (100 mL) で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)により精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、目的のペンタセン誘導体を青色固体として0.026 g (0.014 mmol、収率13%) 得た。生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0150】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 9.52 (s, 4H), 8.41 (s, 4H), 1.05-1.48 (m, 42 H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ= -80.74 (t, J = 9.51, 6F), -103.14 (s, 4F), -118.09 (s, 4F), -121.89 (s, 4F), -122.62 (s, 4F), -126.03 (s, 4F).

【実施例】
【0151】
[実施例5]
6,7-ビス(トリデカフルオロヘキシル)-2,3-ジシアノナフタレンの合成
【実施例】
【0152】
【化50】
JP2020070289A_000063t.gif
【実施例】
【0153】
アルゴン雰囲気下、4,5-ビス(トリデカフルオロヘキシル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼン (9.0 g、 8.5 mmol) の無水DMA (140 mL) 溶液に対し、フマロニトリル (1.1 g、15 mmol) とヨウ化ナトリウム (3.6 g、24 mmol) を加え、75 ℃で20時間撹拌した。飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL) を加えて反応を停止し、ろ別した固体を3M TMNovecTM 7100に溶解させ、蒸留水(50 mL)で5回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別し、ロータリーエバポレーターで濃縮して得た粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ヘキサン : ジクロロメタン = 1 : 1)により精製し、橙色の固体として目的物を得た(3.0 g, 3.7 mmol, 43%)。
【実施例】
【0154】
[実施例6]
ヘキサキス(パーフルオロアルキル)ナフタロシアニンの合成
【実施例】
【0155】
【化51】
JP2020070289A_000064t.gif
【実施例】
【0156】
アルゴン雰囲気下、6,7-ビス(トリデカフルオロヘキシル)-2,3-ジシアノナフタレン (0.33 g、 0.41 mmol) と乾燥DMF (0.03 mL、 0.33 mmol) の混合物に対し、硫酸アンモニウム (5 mg、 0.04 mmol)と1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン (0.18 mL、 0.85 mmol) を加え、150 ℃で24時間加熱した。室温まで冷却した後、生成した固体をろ過し、メタノールと水で1回ずつ洗浄することで黒色固体として目的物を得た(0.26 g、0.08 mmol、収率 20%)。
【実施例】
【0157】
MS (MALDI-FT-ICR): m/z 3259 (M+).
UV-vis: λmax = 762 nm (ε 9.5×103)
【実施例】
【0158】
[実施例7]
4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-o-キシレンの合成
【実施例】
【0159】
【化52】
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80℃、0.1 mmHgで30分間乾燥させた銅粉(43 g, 0.68 mol)を300mL三ツ口フラスコに入れ、4,5-ジブロモ-o-キシレン(18 g, 68 mmol) 、C4F9I (34 g, 0.20 mol)、無水DMSO (180 mL) を加え、アルゴン雰囲気下80 ℃で22時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、クロロホルムを用いてセライトろ過を行った。ろ液の水層をクロロホルムで3回抽出し、有機層を水で5回洗浄することでDMSOを除去し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、4,5-ビス(パーフルオロブチル)-o-キシレンを黄色液体として35 g(65 mmol、収率95%)得た。得られた生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0160】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.50 (s, 2H), 2.39 (s, 6H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -81.06 (t, J = 9.7 Hz, 6F), -103.36 (s, 4F), -119.20 (s, 4F), -126.16 (s, 4F).
【実施例】
【0161】
[実施例8]
4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンの合成
【実施例】
【0162】
【化53】
JP2020070289A_000066t.gif
【実施例】
【0163】
500 mL三ツ口フラスコに、実施例7で得られた4,5-ビス(パーフルオロブチル)-o-キシレン (35 g, 65 mmol)、 N-ブロモスクシンイミド(NBS) (46 g, 0.26 mol)、 ベンゾイルパーオキシド(BPO) (3.1 g, 13 mmol)、および乾燥四塩化炭素 (360 mL)を加え、24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (12 g, 65 mmol), BPO (0.78 g, 3.3 mmol) を加え、再び24時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、NBS (12 g, 65 mmol), BPO (0.78 g, 3.3 mmol) を 加え24時間還流した。この時点で、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)によって原料の消失と目的物の生成を確認した。反応溶液を0 ℃に冷却し、生じたスクシンイミドをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、黄色固体を59 g得た。この固体の1Hおよび19F NMR分析から、4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンと4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-1-ジブロモメチル-2-ブロモメチルベンゼンの混合物であり、モル比は33 : 1であることを確認した。4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼンの19F NMR収率は97%と見積もられた。反応生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
【実施例】
【0164】
4,5-ビス(パーフルオロブチル)-1,2-ビス(ジブロモメチル)ベンゼン
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.09 (s, 2H), 7.07 (s, 2H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.91 (t, J = 9.9 Hz, 6F), -103.94 (s, 4F), -118.90 (s, 4F), -125.99 (s, 4F).
【実施例】
【0165】
4 ,5-ビス(パーフルオロブチル)-1-ジブロモメチル-2-ブロモメチルベンゼン
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.31 (s, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 4.60 (s, 2H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.91 (t, J = 9.9 Hz, 6F), -103.94 (s, 4F), -118.90 (s, 4F), -125.99 (s, 4F).
【実施例】
【0166】
[実施例9]
6,7-ビス (パーフルオロブチル) -2,3-ジシアノナフタレンの合成
【実施例】
【0167】
【化54】
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【実施例】
【0168】
実施例8で得られた4,5-ビス (パーフルオロブチル) -1,2-ビス (ジブロモメチル) ベンゼンと4,5-ビス (パーフルオロブチル) -1- (ジブロモメチル) -2-ブロモメチルベンゼンの混合物 (2.5 g, 4,5-ビス (パーフルオロブチル) -1,2-ビス (ジブロモメチル) ベンゼン: 2.8 mmol, 4,5-ビス (パーフルオロブチル) -1- (ジブロモメチル) -2-ブロモメチルベンゼン: 0.096 mmol) のジメチルホルムアミド (25 mL) 溶液に対し、フマロニトリル (0.39 g, 5.0 mmol) とヨウ化ナトリウム (1.2 g, 8.2 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下75 ℃で20時間加熱した。室温まで冷却した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (25 ml) を加えて反応を停止し、析出した固体をろ別した。この固体をHCFC-225に溶解し、蒸留水を用いて5回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 8 : 2) により精製し、無色固体として標題化合物を0.90 g (1.5 mmol, 50%) 得た。
【実施例】
【0169】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.58 (s, 2H), 8.46 (s, 2H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.91 (t, J = 9.9 Hz, 6F), -103.94 (s, 4F), -118.90 (s, 4F), -125.99 (s, 4F).
【実施例】
【0170】
[実施例10]
パーフルオロアルキル基(C4F9)を有するサブナフタロシアニンの合成
【実施例】
【0171】
【化55】
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【実施例】
【0172】
20 mLシュレンク管に、実施例9で得られた6,7-ビス (パーフルオロブチル) -2,3-ジシアノナフタレン (0.14 g, 0.23 mmol)のo-ジクロロベンゼン (6 mL) 溶液を入れ、三塩化ホウ素 (1.0 Mヘプタン溶液, 0.15 mL, 0.15 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、150 ℃で1時間加熱した後、180 ℃で23時間加熱した。室温まで冷却し、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン : 酢酸エチル = 8 : 2)により精製し、黒紫色固体として標題化合物を0.12 g (0.064 mmol, 85%) 得た。
【実施例】
【0173】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.64 (s, 6H), 8.83 (s, 6H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.91 (t, J = 9.9 Hz, 18F), -103.94 (s, 12F), -118.90 (s, 12F), -125.99 (s, 12F).
【実施例】
【0174】
本実施例で得られた含フッ素のサブナフタロシアニン(トリフェニルナフタロシアニン)化合物の熱安定性を、先行技術(K.Shirai et al.、Tertahedron、2018年、第74巻、p.4220-4225)に開示された下記の含フッ素のトリフェニルナフタロシアニン化合物と対比して評価した。
【実施例】
【0175】
【化56】
JP2020070289A_000069t.gif
【実施例】
【0176】
熱安定性は、熱重量測定装置(TGA;(株)リガク製:Thermo Plus EVO示差走査熱量計)を用いて、室温から10℃/分の昇温速度で約500℃まで加熱し、重量が初期に比べて5%減量するときの温度Td(5%)で評価した。Td(5%)が高いほど、熱安定性に優れることを意味する。
【実施例】
【0177】
TGAによる測定の結果、本実施例はTd(5%)が271℃であるのに対して、前記先行技術による化合物はTd(5%)が221℃であった。このように、含フッ素のトリフェニルナフタロシアニン化合物において、共役系多環芳香族基の末端に位置する芳香族基に、フッ素原子に代えて、パーフルオロブチル基を導入することにより熱安定性を向上できることが分かった。
【実施例】
【0178】
また、本実施例の化合物について、紫外可視分光光度計(島津製作所製:UV-2550)を用いて光吸収の波長依存性を測定した結果、最大吸収を示す波長は647nmであった。この波長は、前記先行技術による化合物において最大吸収を示す波長(646nm)とほとんど差がみられないことから、トリフェニルナフタロシアニン化合物の基本骨格が有する光学特性に対して、共役系多環芳香族基の末端に位置する芳香族基で核置換される置換基は、その種類を変えても影響をほとんど与えないことが確認された。
【実施例】
【0179】
[実施例11]
2,3-ビス (パーフルオロヘキシル) ペンタセン-6,13-ジオン
【実施例】
【0180】
【化57】
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【実施例】
【0181】
実施例7及び8の合成方法において、4,5-ビス(パーフルオロブチル)-o-キシレンに代えて、4,5-ビス(パーフルオロヘキシル)-o-キシレンを用いて合成して得られた4,5-ビス (パーフルオロヘキシル) -1,2-ビス (ジブロモメチル) ベンゼンと4,5-ビス (パーフルオロヘキシル) -1- (ジブロモメチル) -2-ブロモメチルベンゼンの混合物 (2.0 g, 4,5-ビス (パーフルオロヘキシル) -1,2-ビス (ジブロモメチル) ベンゼン: 1.7 mmol, 4,5-ビス (パーフルオロブチル) -1- (ジブロモメチル) -2-ブロモメチルベンゼン: 0.2 mmol) のジメチルホルムアミド (55 mL) 溶液に対し、アントラセン-1,4-オン (0.55 g, 2.7 mmol) とヨウ化カリウム (4.5 g, 27 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下110 ℃で20時間加熱した。室温まで冷却した後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (55 ml) を加えて反応を停止させ、析出した固体をろ別した。この固体を、少量のジエチルエーテルとアセトンで洗浄し、淡褐色固体として標題化合物を0.90 g (0.95 mmol, 50%) 得た。
【実施例】
【0182】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.14 (s, 4H), 9.00 (s, 4H), 8.59 (s, 4H), 8.16 (q, J = 3.2 Hz, 4H). 7.77 (q, J = 3.1 Hz, 4H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.72 (t, J = 10.2 Hz, 6F), -102.91 (s, 4F), -117.77 (s, 4F), -121.86 (s, 4F), -122.66 (s, 4F), -126.03 (s, 4F).
13C NMR and HRMS could not be recorded due to poor solubility.
【実施例】
【0183】
[実施例12]
6,13-ビス [ (トリイソプロピルシリル) エチニル] -2,3-ビス (パーフルオロヘキシル) ペンタセン
【実施例】
【0184】
【化58】
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【実施例】
【0185】
アルゴン雰囲気下、 (トリイソプロピルシリル) アセチレン (0.20 mL, 0.92 mmol)のテトラヒドロフラン (30 mL) 溶液に対して、n-ブチルリチウム (1.6 Mヘキサン溶液, 0.50 mL, 0.80 mmol) を加え、0 ℃で0.5時間撹拌した後、実施例11で得られた2,3-ビス (パーフルオロヘキシル) ペンタセン-6,13-ジオン (0.16 g, 0.18 mmol) を加え、室温で16時間撹拌した。混合物を濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ヘキサンから酢酸エチル) によって分離し、中間体であるジオールを含む粗生成物を得た。この粗生成物のテトラヒドロフラン (10 mL) 溶液に対して、塩酸 (6M, 10 mL) と塩化スズ (II) 二水和物 (6.8 g, 36 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下66 ℃で3時間加熱した。室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、ろ液を蒸留水で5回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液を濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ヘキサン) により精製して、標題化合物を青色固体として0.084 g (0.070 mmol, 39%) 得た。
【実施例】
【0186】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.46 (s, 2H), 9.35 (s, 2H), 8.37 (s, 2H), 8.01 (q, J = 3.2 Hz, 2H). 7.48 (q, J = 3.5 Hz, 2H), 1.35-1.46 (m, 42 H).
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ -80.74 (t, J = 10.2 Hz, 6F), -103.05 (s, 4F), -118.14 (s, 4F), -121.93 (s, 4F), -122.64 (s, 4F), -126.05 (s, 4F).
13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): 134.2, 133.0, 131.6, 129.4, 129.3, 128.7, 126.8, 126.7, 119.6, 109.1, 103.8, 18.9, 11.6.
13C NMR signals corresponding to the C6F13 groups could not be observed.
HRMS (MALDI+) m/z calcd for C56H52F26Si2 1274.3192, found: 1274.3173 ([M]+).
【実施例】
【0187】
本実施例で得られた含フッ素シリルエチニルペンタセン、前記実施例4で得られた含フッ素シリルエチニルペンタセン、及び先行技術(Z.Bao et al.、Macoromolecules、2008年、第41巻、p.6977)に開示された、下記フッ素を含まないトリフェニルナフタロシアニン化合物について、紫外可視分光光度計(島津製作所製:UV-2550)を用いて光吸収の波長依存性を測定した。
【実施例】
【0188】
【化59】
JP2020070289A_000072t.gif
【実施例】
【0189】
紫外可視分光光度計による測定の結果、最大吸収を示す波長は、実施例4の化合物、本実施例の化合物、及び先行技術による化合物において、それぞれ648nm、656nm、及び668nmであった。このように、共役系多環芳香族基の末端に位置する芳香族基の片末端及び両末端に核置換したパーフルオロヘキシル基を導入することにより、導入するパーフルオロヘキシル基の結合位置及び数に応じて、化合物の分光特性を所望の範囲に変えることができる。本実施例及び実施例4では、パーフルオロアルキル基としてパーフルオロヘキシル基を例示したが、パーフルオロアルキル基の種類を含めて、その置換数及び置換位置をさらに検討し、化学構造を最適化することにより、含フッ素多環芳香族化合物の分光特性だけでなく、電子移動度を所望の範囲に変えることができるため、有機エレクトロニクス材料等の用途に対して材料の選択幅を広げることができる。
【実施例】
【0190】
以上のように、本発明によれば、含フッ素ペンタセン及び含フッ素ナフタロシアニンの含フッ素多環芳香族化合物として、従来の含フッ素多環芳香族化合物では得られかった機能の付与、又は溶媒に対する溶解性の向上、電子移動度の向上、若しくは耐熱性及び耐久性の向上等の物性又は特性の改良を図った新規の含フッ素多環芳香族化合物を提供することができる。また、本発明の製造方法によって本発明の含フッ素多環芳香属化合物を少ない工数で容易に合成することができる。本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、耐熱性又は耐溶剤性等の各種の特性が優れ、フッ素系溶剤への溶解性が高く、高温、非水又は特殊溶媒の環境下でも使用することが可能であるため、有機薄膜トランジスタ、太陽電池、電子写真感光体及び有機発光素子の適用する場合に、それらの適用範囲を従来よりも広げることができる。また、含フッ素のペンタセン及びナフタロシアニンにおいて従来の方法では合成が困難であった様々な化学構造を有する化合物を容易に製造することができるため、新たな機能を付与することにより様々な分野への適用が期待できることから、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0191】
1・・・基板、2・・・ゲート電極、3・・・ゲート絶縁膜、4・・・ソース電極、5・・・ドレイン電極、6・・・有機半導体層、7・・・導電性基体、8・・・下引き層、9・・・電荷発生層、10・・・電荷輸送層。
図面
【図1】
0
【図2】
1