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明細書 :耐水性材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5343197号 (P5343197)
公開番号 特開2010-013640 (P2010-013640A)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
発行日 平成25年11月13日(2013.11.13)
公開日 平成22年1月21日(2010.1.21)
発明の名称または考案の名称 耐水性材料
国際特許分類 C09D 201/00        (2006.01)
C01B  21/072       (2006.01)
C01F   5/28        (2006.01)
C01F   5/16        (2006.01)
C01F  11/02        (2006.01)
C01F  11/18        (2006.01)
C01F  11/22        (2006.01)
C01F   7/50        (2006.01)
C01F   7/02        (2006.01)
C09D   1/00        (2006.01)
C09D   1/02        (2006.01)
FI C09D 201/00
C01B 21/072 G
C01F 5/28
C01F 5/16
C01F 11/02 A
C01F 11/18 J
C01F 11/22
C01F 7/50
C01F 7/02 A
C09D 1/00
C09D 1/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2009-137356 (P2009-137356)
出願日 平成21年6月8日(2009.6.8)
優先権出願番号 2008149543
優先日 平成20年6月6日(2008.6.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年3月30日(2011.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
【識別番号】398074038
【氏名又は名称】株式会社材研
発明者または考案者 【氏名】前 英雄
【氏名】宮田 征一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100082164、【弁理士】、【氏名又は名称】小堀 益
【識別番号】100105577、【弁理士】、【氏名又は名称】堤 隆人
審査官 【審査官】内藤 康彰
参考文献・文献 特開2008-285737(JP,A)
特開2008-120636(JP,A)
特開2001-080911(JP,A)
特開平07-033415(JP,A)
特開平06-345538(JP,A)
特開平01-179711(JP,A)
特開昭62-207770(JP,A)
調査した分野 C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
特許請求の範囲 【請求項1】
水と反応することで水和物が生成するマグネシア、窒化アルミニウム、アルミニウムの群の中から選択された材料表面に耐水性皮膜が被覆された耐水性材料であって、
前記耐水性皮膜は、
この材料表面に形成された、質量換算でこの材料質量の、0.1~1質量%の厚さの水和物層表面に、少なくとも一つの水酸基と、少なくとも一つのカルボン酸基を持つ未重合の有機化合物が飽和吸着濃度吸着してなり、
且つ、前記飽和吸着濃度吸着してなる有機化合物は、前記水和物層の外に遊離した未重合有機化合物のカルボン酸基あるいは水酸基が酸素による架橋で化学結合することによって硬化した構造からなる耐水性材料。
【請求項2】
前記耐水性皮膜と前記材料表面の間に中間層が形成されてなり、前記中間層が、前記材料の金属成分とカルシウムの水和物層、またはフッ化ナトリウムあるいは/およびフッ化カルシウムからなるフッ化物層、または前記カルシウムの水和物とフッ化物の複合層からなる請求項1に記載の耐水性材料。
【請求項3】
前記中間層の厚さが、質量換算で前記材料質量の、0.1質量%以上の厚さである請求項2に記載の耐水性材料。
【請求項4】
前記耐水性皮膜中に、前記材料の金属成分とカルシウムの水和物、またはフッ化ナトリウムあるいは/およびフッ化カルシウムからなるフッ化物、または前記カルシウムの水和物とフッ化物の両方が混合されてなる請求項1に記載の耐水性材料。
【請求項5】
前記耐水性皮膜中の水和物、またはフッ化物の割合、または前記水和物とフッ化物の合計割合が、質量換算で前記材料質量の、0.1質量%以上である請求項4に記載の耐水性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性材料の構造に係り、詳しくは、水と反応して水和物を生成する粉末状、バルク体等の材料表面に、耐水性皮膜を被覆した構造の耐水性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム、カルシウム、イットリウム等の酸化物粉末、ペロブスカイトの複合酸化物粉末、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、チタンの窒化物、炭化物、マグネシウム、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、亜鉛等の、いわゆる水と反応して水和物を生成する材料表面は、水の存在する雰囲気中で加水分解されて表面に水和物が形成される。水和物の生成された材料を水の存在する雰囲気中にそのまま放置すると、加水分解が更に進行して材料本来の特性を失ってしまう。
【0003】
このため、従来より、水と反応して水和物を生成する材料の表面に水和防止の保護皮膜を被覆することが行われている。
【0004】
保護皮膜に用いられる材料は、無機系、有機系、有機無機複合系、キレート系、水性樹脂、シランカップリング系等があり、材料の特性と表面処理した材料の用途に応じて適宜選択されているが、いずれの場合も、材料全体を、欠陥のない保護皮膜で被覆することが必要不可欠であるが、従来方法では薄い皮膜は欠陥が発生するので、厚い皮膜を被覆することを余儀なくされている。
【0005】
皮膜が厚すぎると、被覆用材料が余分に沢山必要となるばかりか、厚くなり過ぎた被覆層が材料本来の特性を阻害する弊害も起こっている。
【0006】
かかる問題を解決して、薄く、欠陥のない保護皮膜を形成する方法として、化学蒸着法や金属アルコキシドの加水分解反応を利用する方法(特許文献1)、材料表面に最初にモノマーを吸着させ、これを高分子化させる方法(特許文献2)、材料表面に錯体を生成するキレートを吸着させる方法(特許文献3)が検討されている。
【0007】
ところが、特許文献1に記載された方法では、多量の粉体材料を一度に処理することは難しく、装置や分散用溶媒等の費用がかかり、保護皮膜の形成に多額の費用がかかる欠点がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載されたモノマーを吸着させ、これを高分子化させる方法、特許文献3に記載されたキレートを吸着させる方法のいずれの方法でも、材料粒子の一粒づつを被覆する必要があるために、材料粒子を溶媒に単分散させるために大量の溶媒が必要になり、処理後、大量の溶媒除去が必要であるために処理費用が高額になる上に、溶媒除去、乾燥して被膜を形成する際に、材料粒子同士の凝集も起こり、粒子の粒度分布が大きく変化してしまう欠点がある。
【0009】
また皮膜が薄いと、乾燥過程において皮膜と材料粒子の熱膨張差による皮膜の破壊が起こるために被覆用材料を厚く多量に被覆する必要があり、薄く、欠陥のない保護皮膜を形成する本来の目的は必ずしも達成されていないのが実情である。
【0010】
一方、溶媒に単分散させない乾式処理では、溶媒不使用のメリットはある反面、単分散状態にできないために、材料粒子が凝集したまま保護皮膜が被覆されており、一個一個の粒子の間には隙間が存在し、十分な耐水性がえられないのが実情である。
【0011】
また、水と反応して水和物を生成する金属材料の表面に水和防止の保護皮膜を形成する方法として、材料基材の金属表面にケイ酸塩被膜を形成する方法およびフッ化物被膜を形成する方法が特許文献4に記載されている。さらに、非特許文献1には、水酸化カルシウム液にアルミニウムを浸漬した後、ケイ酸塩溶液に浸漬して、ケイ酸塩とカルシウムアルミネイトの複合被膜を形成することが記載されている。
【0012】
しかしながら、この特許文献4、非特許文献1に記載された方法の保護膜は、通常の水あるいは塩水噴霧程度の環境には耐えることができるが、高温のアルカリ水溶液の中では被膜が溶解して全く耐食性を発揮することはできない。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2008-74683号公報
【特許文献2】特開平08-000987号公報
【特許文献3】特開2008-120636号公報
【特許文献4】特開2008-285737号公報
【0014】

【非特許文献1】軽金属学会誌大会講演概要 Vol.93RD 1997年10月20日 水酸化カルシウムを基液として「アルミニウム化学被膜の作製とケイ酸塩による二段階処理」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、その第一の課題は、薄くても保護効果に優れ、熱膨張差で皮膜が破壊されることもない保護被膜を被覆した耐水性材料を提供することである。
【0016】
また第二の課題は、高温のアルカリ水溶液に浸漬しても皮膜が溶解、侵食されない保護被膜を被覆した耐水性材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は上記課題に関して鋭意研究を行い、上記課題は下記の材料構造で解決できることを見出した。
【0018】
第一の課題を達成するための手段は下記の通りである。
【0019】
すなわち、水と反応することで水和物が生成するマグネシア、窒化アルミニウム、アルミニウムの群の中から選択された材料表面に耐水性皮膜を被覆して耐水性材料を製造するに際して、この材料総質量の0.01~0.87質量%の水に、スルホン酸基、アミン、第4級アミン塩、リン酸基、カルボン酸基からなる群の中から選択された少なくとも一つの官能基と少なくとも一つの水酸基を持つ未重合の有機化合物が飽和吸着濃度以上溶け込んだ水溶液に、この材料の総量を浸せき混合することで、この材料表面に、質量換算で、この材料質量の0.1~1質量%の厚さの水和物層を形成し、更に、この水和物層表面に未重合有機化合物を飽和吸着させることで、水和層の成長が停止し、更に、この未重合有機化合物の遊離した官能基あるいは水酸基が酸素によって架橋された化学結合をして、吸着した未重合有機化合物が硬化して、薄く、保護効果に優れ、熱膨張差によっても破壊されない耐水性皮膜が形成されることを見出した。そして溶媒を使用しないにもかかわらず、粉体材料でも単分散でき、しかも粉体材料同士の凝集もないことを見出した。
【0020】
上記した耐水性皮膜を持つ耐水性材料は下記の構造からなる。
すなわち、水と反応することで水和物が生成するマグネシア、窒化アルミニウム、アルミニウムの群の中から選択された材料表面に耐水性皮膜が被覆された耐水性材料であって、 前記耐水性皮膜は、この材料表面に、質量換算で、この材料質量の0.1~1質量%の厚さの水和物層を形成し、形成された水和物層表面に、少なくとも一つの水酸基と、少なくとも一つのカルボン酸基を持つ未重合の有機化合物を飽和吸着濃度吸着してなるとともに、且つ、前記飽和吸着濃度吸着してなる有機化合物は、前記水和物層の外に遊離した未重合有機化合物のカルボン酸基あるいは水酸基が酸素による架橋で化学結合することによって硬化した構造からなっている。
【0021】
水和物層の厚さが、質量換算で、材料質量の0.1質量%未満では、皮膜が薄すぎて欠陥が発生しやすくなり、十分な耐水性が得られない。また1質量%以下では、隣り合う水和物層の結晶間で隙間のない状態が得られるが、1質量%を越えると、水和物層が成長しすぎて、隣り合う水和物層の結晶間で隙間が発生して、十分な耐水性が得られなくなる。したがって水和物層の厚さは、質量換算で、0.1~1質量%の範囲が好ましい。
【0022】
0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するための実際の水分量は、下記のよって示されるとおりである。
【0023】
以下は、その対象を粉末としているが、バルク体の場合でも、その耐水効果は、同じである。
【0024】
【化1】
JP0005343197B2_000002t.gif

【0025】
マグネシア粉末表面に質量換算で、0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するためには、0.030~0.300質量%の水分が必要である。
【0026】
【化2】
JP0005343197B2_000003t.gif

【0027】
窒化アルミニウム粉末表面に質量換算で、0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するためには、0.068~0.680質量%の水分が必要である。
【0028】
【化3】
JP0005343197B2_000004t.gif

【0029】
アルミニウム粉末表面に質量換算で、0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するためには、0.068~0.680質量%の水分が必要である。
【0030】
【化4】
JP0005343197B2_000005t.gif

【0031】
イットリア粉末表面に質量換算で、0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するためには、0.02~0.20質量%の水分が必要である。
【0032】
【化5】
JP0005343197B2_000006t.gif
窒化ボロン粉末表面に質量換算で、0.1~1質量%の範囲の水和物層を形成するためには、0.087~0.87質量%の水分が必要である。
【0033】
未重合有機化合物は水溶性であり、水に溶けた未重合有機化合物は、水和物層に吸着する性質がある。水和物層の表面全面に未重合有機化合物を吸着させた時の未重合有機化合物の水中濃度(ミリモル%)が飽和吸着濃度である。因みに、マグネシア、窒化アルミニウムの場合、20ミリモル%である。
【0034】
飽和吸着濃度以上の未重合有機化合物を溶解した水溶液と粉末が接触すると、粉末表面に生成した水和物層1m当り、5マイクロモルの有機物が水和物層に吸着する。つまり水和物層1m当り、5マイクロモルの有機物が付着すると、水和物層の成長が停止することになる。
【0035】
水和物層に含まれる未重合有機化合物の第一の役割は、上記したように水和物層の厚さが1質量%以下で、隣り合う水和物層の結晶間で隙間のない状態の時に、水和物層全面に未重合有機化合物を吸着(飽和吸着)させて、水和物層の成長を停止させて水和物層を固定化することである。
【0036】
未重合有機化合物濃度が飽和吸着濃度未満では、水和反応が停止せず、水和層は成長して、遂には隣り合う水和物層の結晶間で隙間が発生して、耐水性が得られなくなる。
【0037】
水和物層から外に遊離した未重合有機化合物のカルボン酸基と水酸基は、カルボン酸基同士で、またはカルボン酸基と水酸基間で、または水酸基同士で脱水縮合することで、または空気中の酸素を取り込んで、酸素による架橋で化学結合することで硬化して水不溶性、耐水保護膜が完成する。
【0038】
本発明における未重合有機化合物の第二の役割は、この硬化作用を生起させて水不溶性、耐水保護膜を完成させることである。また隣同士のカルボン酸基が化学結合することで、有機化合物の鎖を三次元網目状に張った構造が生まれ、この網目構造が、薄くても欠陥のない、熱膨張差で割れることがない水和物層の形成を可能にしているものと推察される。
【0039】
本発明における未重合有機化合物の第三の役割は、水和物層に三次元網目状の補強構造を生起させることである。
【0040】
本発明の水和物層の形成、未重合有機化合物の吸着、水和反応の停止、酸素による架橋で化学結合、有機化合物の硬化は、順番に連続して起こるものであり、これによって水に対して不溶性、バリア性を持った保護膜が完成することとなる。
【0041】
本発明における有機物は、水和物に単分子層として吸着させることが必須であるので、未重合(モノマー)の有機化合物を使用することが必須条件である。重合が進んだ有機化合物では、水和反応を停止させることはできないので好ましくない。
【0042】
上記未重合の有機化合物は、いわゆるモノマーで、水溶性であり、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸、リシノール酸、イソクエン酸、クレオソート酸、グリシン、12ヒドロキシステアリン酸、o-ヒドロキシけい皮酸、p-ヒドロキシけい皮酸、m-ヒドロキシけい皮酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ馬尿酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-(ヒドロキシメチル)ピリジン、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、4-ヒドロキシフタル酸、2-ヒドロキシエチルアミンからなる群の中から選ばれた一種、または二種以上を適宜選択して使用できる。
【0043】
なお本発明は特に溶媒は使用しないにもかかわらず、粉末粒子が凝集せず単分散するのは、水和物層に含まれる未重合の有機化合物の水酸基やカルボン酸基が外側に向いていることで、表面は負に帯電している。これにより粉末同士の静電的な反発が起こりやすくなり、粒子同士の凝集は起こりにくくなるものと推察される。
【0044】
第二の課題を達成するための手段について、本発明者らは鋭意研究を行った結果、下記の知見を得た。
【0045】
第一の知見
すなわち、水と反応することで水和物が生成する材料に形成する耐水性被膜の構造を、請求項1に記載した構造の耐水性皮膜とこの材料表面の間に、中間層を形成し、この中間層の構造を、前記材料の金属成分とカルシウムの水和物層または、フッ化ナトリウムあるいは/およびフッ化カルシウムからなるフッ化物層、または前記カルシウムの水和物とフッ化物の複合層からなる構造にした時、高温のアルカリ水溶液にも浸食、溶解されないことを見出した。
【0046】
そしてこの中間層の厚さは、質量換算でこの材料質量の、0.1質量%以上の厚さが好ましいことを見出した。中間層の厚さが、下限値未満では、高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性が発現しない。上限は1質量%程度が好ましく、上限を越えても高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性は変わらないので、上限を越える厚さは経済的に不利になる。
【0047】
なお本発明で高温のアルカリ水溶液とは、70℃以上のアルカリ水溶液を意味する。また前記水和物とフッ化物の複合層とは、前記水和物とフッ化物が混合された層あるいは水和物の層とフッ化物の層が積層された層を意味する。
【0048】
第二の知見
また、請求項1に記載した構造の耐水性皮膜の中に、材料の金属成分とアルカリ土類金属成分の水和物を混合した構造、あるいはフッ化物を混合した構造、あるいはこの水和物とフッ化物の両方を混合した構造にした時、高温のアルカリ水溶液にも浸食、溶解されないことを見出した。
【0049】
そして、いずれの構造の場合も、水と反応することで水和物が生成する材料がAlやSi等の金属材料の場合、最もその効果が発揮されることを見出した。
【0050】
そして前記水和物層、あるいはフッ化物層、あるいはこの水和物とフッ化物の合計割合は、質量換算でこの材料質量の、0.1質量%以上の範囲が好ましいことを見出した。
【0051】
前記水和物、あるいはフッ化物、あるいは水和物とフッ化物の合計割合が、前記下限値未満では、高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性が発現しない。上限は1質量%程度が好ましく、上限を越えても高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性は変わらないので、上限を越える厚さは経済的に不利になる。
【0052】
材料の金属成分とカルシウムの水和物層、あるいはフッ化物層、あるいはこの水和物とフッ化物が混ざった層を、材料表面に単に被覆しても、被膜はすぐ剥がれるのに対し、前記第一、第二の知見で得られた構造にした時にはじめて、材料に対して密着性に優れ、高温のアルカリ水溶液にも侵食、溶解されない被膜が得られる。
【0053】
前記第一、第二の知見に基づいて、以下の耐水性被膜を形成させる方法を採用できる。
【0054】
第一の方法
すなわち、請求項1に記載した構造の耐水性皮膜と前記材料表面の間に、中間層を形成し、この中間層の構造を、この材料の金属成分とカルシウムの水和物層、またはフッ化ナトリウムあるいは/およびフッ化カルシウムからなるフッ化物層、または、この水和物とフッ化物の複合層からなる構造にするためには、先ず、処理材料(例えばAl)をカルシウムの水和物水溶液、またはフッ化物水溶液、または、水和物とフッ化物が共存する水溶液に浸漬し、しかる後に、請求項1に記載した構造の耐水性皮膜を形成する水溶液に浸漬することで形成することができる。
【0055】
中間層の厚さを調整するには、カルシウムの水和物水溶液、または、フッ化物水溶液、または、水和物とフッ化物が共存する水溶液中の各成分の濃度を調整すればよい。水溶液中の成分割合と得られた皮膜の成分割合はほぼ同等の割合になるので皮膜中の成分組成は水溶液の組成を調整することで得ることができる。
【0056】
第二の方法
請求項1に記載した構造の耐水性皮膜の中に、前記材料の金属成分とカルシウムの水和物、または、フッ化ナトリウムあるいは/およびフッ化カルシウムからなるフッ化物、または、この水和物とフッ化物の両方が混合された構造にするためには、請求項1に記載の耐水性被膜を形成させるための水溶液に、カルシウム塩または、フッ化物または、カルシウム塩とフッ化物の両方を共存させた水溶液に、処理材料を浸漬することで形成させることができる。
【0057】
そして、前記水和物、または、フッ化物、または、水和物とフッ化物の両方の割合を、この材料の全体の質量の、0.1~1%の範囲に調整するためには、請求項1に記載の耐水性被膜を形成させるための水溶液中に存在するカルシウム塩、フッ化物の濃度を調整すればよい。
【0058】
またさらに、下記構造の被膜でも、密着性に優れ、高温のアルカリ水溶液にも浸食、溶解されない被膜が得られることを見出した。そして下記構造の被膜は、前記第一、第二の方法で得られた構造の被膜よりも、高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性は、より優れている。
【0059】
すなわち、水と反応することで水和物が生成する材料に形成する耐水性被膜の構造を、請求項2~5のいずれかに記載した構造の耐水性皮膜の表面に、珪酸塩皮膜を積層させた構造にした時、または、請求項2~5のいずれかに記載した構造の耐水性皮膜の中に、珪酸塩が混合された構造にした時、密着性に優れ、かつ高温のアルカリ水溶液にも溶解、浸食されない極めて優れた被膜が得られる。
【0060】
そして前記珪酸塩の積層被膜の厚さは、質量換算で、材料質量の、0.1質量%以上の範囲が好ましい。
【0061】
珪酸塩被膜の積層被膜の厚さが、前記下限値未満では、第一、第二の方法で得られた構造の被膜よりも改善効果は得られない。上限は1質量%程度が好ましく、上限を越えても高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性は変わらないので、上限を越える厚さは経済的に不利になる。
【0062】
また上記珪酸塩が混合された被膜の、珪酸塩の割合は、質量換算で、材料質量の、0.1質量%以上の範囲が好ましい。
【0063】
珪酸塩の割合が、前記下限値未満では、前記第一、第二の方法で得られた構造の被膜よりも改善効果は得られない。上限は1質量%程度が好ましく、上限を越えても高温のアルカリ水溶液に対する耐浸食性は変わらないので、上限を越える厚さは経済的に不利になる。
【0064】
水酸化カルシウム水溶液(アルカリ土類金属塩水溶液)にアルミニウムを浸漬した後、ケイ酸塩水溶液に浸漬して、アルミニウム表面にアルカリ土類金属成分の水和物層(カルシウムアルミネイト)と珪酸塩の複合被膜を形成する従来方法(非特許文献1に記載のいわゆる二段階処理)でも、密着性に優れた耐水被膜が得られるが、この被膜は常温の水あるいは常温の塩水噴霧程度の腐食環境には耐えることができるが高温のアルカリ水溶液に浸食、溶解されて耐水性は発揮されない。
【0065】
これに対して、本発明においては、材料の金属成分とアルカリ土類金属の水和物、または、フッ化物、または、この水和物、フッ化物の両方と、珪酸塩の組合せ(従来の二段階処理)に、更に請求項1に記載の被膜成分とを組み合わせ、最表層に珪酸塩が来るように積層させる、または、請求項1に記載の被膜の中に、これらアルカリ土類金属の水和物、または、フッ化物、または、この水和物、フッ化物の両方と、珪酸塩を混合させると、高温のアルカリ水溶液に浸食、溶解されない極めて優れた耐浸食性を持つ耐水性材料が得られること、そしてこの被膜は、前記第一、第二の方法で得られた構造の被膜よりも高温のアルカリ水溶液に対して浸食、溶解されない極めて優れた性質を持つことを見出した。
【0066】
この知見に基づく耐水性被膜を形成させる方法は、下記のとおりである。
【0067】
すなわち、前記第1の知見によって得た耐水被膜を形成するための水溶液に、アルカリ土類金属塩、または、フッ化物、または、アルカリ土類金属塩とフッ化物が共存する水溶液に、ケイ酸塩を混合した溶液に、耐水処理する粉末(例えばAl)を浸漬することで形成させることができる。
【0068】
または、上記耐水被膜を形成するための水溶液に、アルカリ土類金属塩、または、フッ化物、または、アルカリ土類金属塩とフッ化物の両方が溶解した水溶液に、耐水処理する材料を浸漬した後、さらに、ケイ酸塩を含む溶液に浸漬する二段階浸漬処理することによって得られる。
【0069】
珪酸塩の積層被膜の厚さを調整するには、珪酸塩水溶液の珪酸濃度を調整すればよい。
珪酸塩の混合被膜の厚さを調整するには、本発明請求項1の耐水被膜を形成するための水溶液の中に、アルカリ土類金属塩、フッ化物、珪酸塩が溶け込んだ水溶液中の珪酸塩の濃度を調整すればよい。水溶液中の成分割合と得られた皮膜の成分割合はほぼ同等の割合になるので皮膜中の成分組成は水溶液の組成を調整することで得ることができる。
【0070】
本発明の他の態様においては、粉末成分としては、水と反応することで水和物が生成する全ての無機、金属粉末に好適に適用できるが、水と反応することで水和物が生成する金属粉末、例えばAl、Si等の粉末に最もその効果が発揮される。
【0071】
材料の金属成分とアルカリ土類金属成分の水和物層とは、例えば、金属成分がAlの場合、カルシウムアルミネイト、マグネシウムアルミネイト、バリウムアルミネイト、ストロンチウムアルミネイト等である。また、Siの場合では、カルシウムシリケイト、マグネシウムシリケイト、バリウムシリケイト等である。
【0072】
珪酸塩とは、水溶性の珪酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のアルカリ金属塩である。
【0073】
また、本発明の耐水皮膜を形成するに際して、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種着色染料・顔料や塗布性を改良するための濡れ剤、チクソトロピー性付与剤、希釈溶剤、消泡剤などを前記した水と有機化合物の混合液に適宜配合しても良い。
【0074】
本発明有機化合物を水、粉末と均一に分散させるための混合方法としては、ボールミルや振動ミルなどが好適である。
【0075】
本発明に適用できる材料は、その形状には特に制限はなく、板状、鱗片状、球状、破砕状等の粉末状のものからバルク体材料まで適宜使用できる。また、粉末にあっては、その粒径についても特に制限はない。一般的には平均粒径0.5~1000μm程度のものに適用される。
【0076】
本発明に適用できる材料は、マグネシウム、カルシウム、イットリウム等の酸化物、ペロブスカイトの複合酸化物、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、チタンの窒化物、炭化物、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、鉄、銅、ニッケル、亜鉛等の、いわゆる水と反応して水和物を生成する無機、金属材料全般である。
【発明の効果】
【0077】
本発明の耐水性材料は、高温のアルカリ水溶液にも浸食、溶解されない性質を有する。そしてその耐水被膜は、薄く、保護効果に優れ、熱膨張差によっても破壊されない特徴を有する。また耐水皮膜を被覆した材料が粉末の場合、溶媒を使用しないにもかかわらず、粉末を単分散でき、しかも粉末同士の凝集もない。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に本発明の実施の形態を酸化マグネシウムと窒化アルミニウム粉末を例に採り説明する。なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、本発明がこれのみに限定されるものではないことはもちろんである。

【0079】
実施例1
マグネシア粉末の例を示す。
比表面積8m/gのマグネシア粉末100gに対して下記条件で耐水処理をして耐水試験を行った。

【0080】
耐水処理の条件
未重合有機物としては、乳酸を使用した。
未重合有機物のマグネシア粉末に対する飽和吸着濃度は、6マイクロモル/mである。
本発明範囲の水和物厚さ(質量換算)番号1~5:5水準
未重合有機物は、5水準いずれも7マイクロモル/m(飽和吸着濃度以上)とした。各水準の値は、粉末質量の、0.1%、0.23%、0.32%、0.65%、0.97%である。

【0081】
本発明水和物厚さの範囲を逸脱する比較例、番号6、7:2水準
未重合有機物は、2水準いずれも7マイクロモル/m(飽和吸着濃度以上)とした。各水準の値は、粉末質量の0.05%、1.28%である。

【0082】
未重合有機物濃度が本発明飽和濃度未満の比較例、番号8、9:2水準(水和物厚さは本発明範囲)
未重合有機物濃度:3マイクロモル/m(水和物厚さ:0.100質量%)
未重合有機物濃度:4マイクロモル/m(水和物厚さ:0.970質量%)
無処理:1水準

【0083】
上記水和物層を形成する際に使用した水分%と耐水性試験の結果を表1に示す。

【0084】
水和物層の形成
ボールミル容器に表1に示した水分量の水と、100gのマグネシアと、番号1~5では、7マイクロモル/mの乳酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。

【0085】
同じく、番号6、7では、ボールミル容器に、表1に示した水分量の水と、100gのマグネシアと、7マイクロモル/mの乳酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。

【0086】
同じく、番号8、9では、ボールミル容器に、表1に示した水分量の水と、100gのマグネシアと、飽和濃度未満の、3マイクロモル/m、4マイクロモル/mの乳酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。
得られた各粉末について、耐水試験を行った。

【0087】
なお耐水性試験は、下記のように行った。
100mlの蓋のあるプラスチック容器の中に、粉末10gと蒸留水50mlを入れ、振とう機にセットしてサスペンジョンが沈殿しないように攪拌した。所定の時間にサスペンジョンを採取し、その中に含まれる粉末の水和物量を測定した。

【0088】
未処理粉末の場合、蒸留水に粉末を入れ攪拌するとすぐに、pHは11となり、水和反応が進行した。100時間を超えると完全に水和した。比表面積は5倍以上になり、微粒子の水酸化マグネシウムが形成されたことが確認された。

【0089】
【表1】
JP0005343197B2_000007t.gif

【0090】
結果
本発明範囲のものは、100時間経過後も水和物の増加は1.3~1.8で、極微量増加であった。本発明は、耐水保護膜として、極めて優れていることが確認できた。一方、本発明範囲を逸脱する比較例では、水和物の顕著な増加が確認された。

【0091】
酸素による架橋構造が存在するための確認テスト
番号3の試料粉末に対して、紫外および赤外吸収スペクトルを測定した結果、耐水処理した粉末表面に、本発明未重合有機化合物の水酸基の一部が反応し、酸素による架橋構造が生成していることが確認できた。

【0092】
実施例2
窒化アルミニウム粉末の例を示す。
比表面積3.2m/gの窒化アルミニウム粉末100gに対して下記条件で耐水処理をして耐水試験を行った。

【0093】
耐水処理の条件
未重合有機物としては、りんご酸を使用した。
未重合有機物の窒化アルミニウム粉末に対する飽和吸着濃度は、5マイクロモル/mである。

【0094】
本発明範囲の水和物厚さ(質量換算)番号1~5:5水準
未重合有機物は、5水準いずれも7マイクロモル/m(飽和吸着濃度以上)とした。
水和物厚さ(質量換算)は、粉末質量の、0.1質量%、0.15質量%、0.30質量%、0.73質量%、1.00質量%である。

【0095】
本発明の水和物厚さの範囲を逸脱する比較例、番号6,7:2水準
未重合有機物は、2水準いずれも7マイクロモル/m(飽和吸着濃度以上)とした。
水和物厚さ:粉末質量の0.006質量%、1.20質量%

【0096】
未重合有機物濃度が、本発明飽和吸着濃度未満の比較例、番号8、9:2水準(水和物厚さは本発明範囲)
未重合有機物濃度:3マイクロモル/m(水和物厚さ:0.20質量%)
未重合有機物濃度:4マイクロモル/m(水和物厚さ:1.00質量%)
無処理:1水準

【0097】
上記水和物層を形成する際に使用した水分%と耐水性試験の結果を表2に示す。

【0098】
水和物層の形成
ボールミル容器に表2に示した水分量の水と、100gの窒化アルミニウム粉末と、番号1~5では、7マイクロモル/mのりんご酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。

【0099】
同じく、番号6、7では、ボールミル容器に、表2に示した水分量の水と、100gの窒化アルミニウム粉末と、7マイクロモル/mのりんご酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。

【0100】
同じく、番号8、9では、ボールミル容器に、表2に示した水分量の水と、100gの窒化アルミニウム粉末と、飽和濃度未満の、3マイクロモル/m、4マイクロモル/mのりんご酸と、ジルコニアボールを加えて、ボールミル混合1時間行った。その後80℃に保温し、有機化合物同士のネットワーク(酸素で架橋)を形成させて水不溶性の耐水保護膜とした。
得られた各粉末について、耐水試験を行った。

【0101】
なお耐水性試験は、実施例1と同じ方法で行った。
すなわち100mlの蓋のあるプラスチック容器の中に、粉末10gと蒸留水50mlを入れ、振とう機にセットしてサスペンジョンが沈殿しないように攪拌した。所定の時間にサスペンジョンを採取し、その中に含まれる粉末の水和物の量を測定した。

【0102】
【表2】
JP0005343197B2_000008t.gif

【0103】
未処理粉末の場合、蒸留水に粉末を入れ攪拌するとすぐに、pH9以上となり、水和反応が進行した。100時間を超えると完全に水和した。比表面積は10倍以上になり、水酸化アルミニウムが形成されたことが確認された。

【0104】
結果
本発明範囲のものは、100時間経過後も水和物の増加は1.8~2.3で、微量増加であった。
一方、本発明範囲を逸脱する比較例では、水和物の顕著な増加(12~81)が確認された。
本発明は、耐水保護膜として、極めて優れていることが確認できた。

【0105】
番号3の試料粉末に対して、耐水処理した粉末表面に酸素による架橋構造が存在するための確認テストを実施例1と同じ方法で行い、酸素による架橋構造の存在を確認できた。

【0106】
実施例3
耐水性皮膜の中に、アルカリ土類金属成分の水和物とフッ化物が混合された例を示す。

【0107】
中心粒径が150μmのアルミニウム粉末(100g)と水酸化カルシウム(0.1g)、グリシン(0.5g)、12-ヒドロイシステアリン酸(0.15g)、クエン酸(0.5g)、フッ化ナトリウム(0.5g)、水(1g)、エタノール(5g)をプラスチック製のボールミルポットの中に入れ、3時間のボールミル混合を行った。取り出した粉末を洗浄し、80℃にて乾燥した。

【0108】
これにより、得られた粉末の表面の構造は、X線回折測定の結果、アルミニウム粉末表面に、カルシウムアルミネイトの水和物とアルミニウムのフッ化物、カルシウムのフッ化物、カルシウムの錯体、アルミニウムの錯体が存在する複合皮膜であった。

【0109】
皮膜の厚さは、質量換算で粉末のほぼ1%に相当するものであった。
この耐水処理粉末(10g)を70℃の水酸化ナトリウム溶液(1mol/L、300ml)に入れ、5時間のスターラー攪拌を行った。
脱水、濾過後、残渣のX線回折測定と熱分析を行った。
残渣の主成分はアルミニウム金属であった。アルカリ溶液処理前の重量に対して、処理後の重量減は5%にすぎなかった。

【0110】
比較例
一方、中心粒径が150μmのアルミニウム粉末(100g)と水酸化カルシウム(0.1g)、フッ化ナトリウム(0.5g)、水(1g)、エタノール(5g)をプラスチック製のボールミルポットの中に入れ、3時間のボールミル混合を行った。取り出した粉末を洗浄し、80℃にて乾燥した後、処理粉末(10g)を70℃の水酸化ナトリウム溶液(1mol/L、300ml)に入れ、5時間のスターラー攪拌を行った。
処理粉末は、水酸化ナトリウム溶液に完全溶解し、脱水、濾過後、残渣は認められなかった。

【0111】
これにより、本発明の耐水処理粉末は、熱アルカリ水溶液に対してほとんど浸食、溶解されないことを確認することができた。

【0112】
実施例4
上記実施例3のグリシンとフッ化ナトリウムの比率を調整して、質量換算で0.05%と0.1%、0.5%の3種類の耐水処理粉末を作製し、おのおのの粉末を実施例1と同様な方法で高温アルカリ性水溶液に対する耐食性を評価した。

【0113】
結果
0.05%の粉末については、溶液中に溶解して残渣は観察されなかった。
0.1%の粉末は、重量減は10%であった。
0.5%のものは、重量減は5%であった。
本発明の耐水性粉末は、熱アルカリ水溶液に対してきわめて優れた耐食性を有することが確認出来た。

【0114】
実施例5
請求項1に記載した構造の耐水性皮膜の下に、アルカリ土類金属成分の水和物層が積層された例を示す。

【0115】
中心粒径が80μmのアルミニウム粉末(100g)と水酸化カルシウム(0.25g)、フッ化ナトリウム(0.5g)、水(1g)、エタノール(9g)をプラスチック製のボールミルポットに入れ、30分間のボールミル混合を行った。X線回折法により、この一次処理品の中には、フッ化アルミニウムとカルシウムアルミネイト、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムが存在することが確認された。この一次処理品と12ヒドロキシステアリン酸(0.5g)とN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(0.5g)をプラスチック製のボールミルポットに入れ、3時間のボールミル混合を行った。この二次処理品を洗浄し、80℃にて乾燥した。

【0116】
X線回折法により、この二次処理品の中には、フッ化アルミニウムとカルシウムアルミネイト、アルミニウムとカルシウムと有機物成分から成る錯体と水和物が確認された。このことから、アルミニウム粉末表面に、アルミニウムのフッ化物と水和物、カルシウムアルミネイトの上に、アルミニウムとカルシウムと有機物成分から成る錯体と水和物が形成されたと推察される。

【0117】
中間層の厚さは、質量換算で1%相当であった。

【0118】
この耐水処理粉末(10g)を70℃の水酸化ナトリウム溶液(1mol/L、300ml)に入れ、5時間のスターラー攪拌を行った。脱水、濾過後、X線回折測定と熱分析を行った。残渣の主成分はアルミニウム金属であった。アルカリ溶液処理前の重量に対して、処理後の重量減は3%にすぎなかった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
半導体の封止に使用する樹脂に混ぜ込むマグネシアフィラー、窒化アルミニウムフィラーの耐水処理に有効である。窒化アルミニウム粉末の鋳込み成形、水バインダー使用の造粒に効果を発揮し、窒化アルミニウムの製造メーカーで多く利用されることが期待できる。またAlの耐水処理、耐火物用マグネシア原料の耐水処理に多く利用できる。