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明細書 :不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法とその不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法と不飽和ポリエステル樹脂の製造方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5526402号 (P5526402)
公開番号 特開2011-016971 (P2011-016971A)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成23年1月27日(2011.1.27)
発明の名称または考案の名称 不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法とその不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法と不飽和ポリエステル樹脂の製造方法。
国際特許分類 C08J  11/24        (2006.01)
B01J   3/00        (2006.01)
C08G  63/52        (2006.01)
C08G  63/82        (2006.01)
C08F 283/01        (2006.01)
FI C08J 11/24
B01J 3/00 A
C08G 63/52
C08G 63/82
C08F 283/01 ZAB
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2009-164290 (P2009-164290)
出願日 平成21年7月10日(2009.7.10)
権利譲渡・実施許諾 特許権者において、実施許諾の用意がある。
審査請求日 平成24年5月17日(2012.5.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
発明者または考案者 【氏名】友永 文昭
【氏名】山田 和男
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査官 【審査官】中村 英司
参考文献・文献 特開2006-219640(JP,A)
特開2007-146080(JP,A)
特開平10-147621(JP,A)
特開2006-213873(JP,A)
調査した分野 B29B 17/00
C08J 11/00
B01J 3/00
C08G 63/00
C08F283/01
特許請求の範囲 【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を、触媒を添加することなく、温度が220℃~300℃で圧力が10MPa~15MPaの亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみを用いて分解し、前記低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,前記低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成する工程と、前記低級アルコールに可溶な前記フタル酸エステル及び前記グリコールと,前記低級アルコールに不溶な前記ポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離して、前記低級アルコールと前記フタル酸エステルと前記グリコールとを含む第1の再生原料を生産する工程と、この第1の再生原料から前記低級アルコールを除去して第2の再生原料を生産する工程と、を有することを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法。
【請求項2】
不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を、触媒を添加することなく、温度が220℃~300℃で圧力が10MPa~15MPaの亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみを用いて分解し、前記低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,前記低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成する工程と、前記低級アルコールに可溶な前記フタル酸エステル及び前記グリコールと,前記低級アルコールに不溶な前記ポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離して、前記低級アルコールと前記フタル酸エステルと前記グリコールとを含む第1の再生原料を生産する工程と、この第1の再生原料から前記低級アルコールを除去して第2の再生原料を生産する工程と、前記第2の再生原料にエステル交換触媒を添加して加熱し、フタル酸ジグリコールを合成する工程と、前記フタル酸ジグリコールに不飽和酸を添加して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂を合成する工程と、を有することを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法。
【請求項3】
前記エステル交換触媒が、カルシウム,鉛,亜鉛,マンガン,コバルト,カドミウムの酢酸塩又は炭酸塩、チタンテトラn-ブトキシドのうちの少なくとも2種を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2に記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を亜臨界状態から超臨界状態のアルコールに溶解させて不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産し、その再生原料を用いて不飽和ポリエステル樹脂を再合成する不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法とその不飽和樹脂を再合成する方法と不飽和ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱硬化性樹脂は耐熱性、耐薬品性及び機械的性質等に優れており、日用品から工業製品まで幅広い分野で利用されている。中でも、常温常圧で容易に成形可能な不飽和ポリエステル樹脂はガラス繊維等の強化材と一体化させて強度を向上させた繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、以下、FRPという。)の母材として大量に使用されている。しかしながら、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂は、硬化後は不溶不融となり再使用できないことから、熱硬化性樹脂を使用したFRP製品の廃棄物はリサイクルが困難であり、その大部分は焼却や埋め立て処分されているのが現状である。近年、FRPについてはいくつかリサイクル方法が提案されており、樹脂成分を燃料としてガラス繊維やフィーラーは原料として使用するセメント原料に関する方法や、樹脂成分を分解可溶化して残分のガラス繊維等を再利用する方法や、乾留法でガス化や油化する方法などがあるが、いずれも樹脂成分は燃料として付加価値の低い用途にしか利用できなかった。また、亜臨界状態や超臨界状態の水やアルコールで熱硬化性樹脂を化学的に分解可溶化して分解生成物を再利用する方法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「熱硬化性樹脂の分解処理方法と熱硬化性樹脂を母材とした繊維強化プラスチック廃材の分解処理方法」という名称で、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂を母材とした繊維強化プラスチック廃材を亜臨界状態から超臨界状態のアルコールに溶解させて、含有成分を分離回収し再利用可能な有用物を得ることができる熱硬化性樹脂の分解処理方法と熱硬化性樹脂を母材とした繊維強化プラスチック廃材の分解処理方法に関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示された発明は、エステル結合を含む熱硬化性樹脂又はエステル結合を含む熱硬化性樹脂を母材とする繊維強化プラスチック廃材を触媒の存在下において、温度が200℃~350℃で圧力が5MPa~15MPaの亜臨界状態から超臨界状態の1価の低級アルコールに接触させて熱硬化性樹脂を溶解する工程を有するものである。
詳細には、数cmから数十cmに粗破砕したエステル結合を含む熱硬化性樹脂又はエステル結合を含む熱硬化性樹脂を母材とする繊維強化プラスチック廃材に1価の低級アルコールであるメタノール又はエタノールを添加して、さらに、触媒となるジメチルアミノピリジン又はその誘導体で金属を含まない有機物又はナトリウムよりも原子番号が大きいアルカリ金属の炭酸塩やリン酸塩等の塩基性塩を添加する。そして、これらの混合物をアルコールが亜臨界温度から超臨界温度となる200℃から350℃に加熱し、圧力は5MPa~15MPaの範囲とする。亜臨界状態から超臨界状態のアルコールは、熱硬化性樹脂のエステル結合を選択的に分解して、主に、アルコールに可溶なフタル酸エステルとアルコールに不溶な架橋剤由来のポリスチレンを生成する。そして、生成した可溶分と不溶分を遠心分離法などによって分離すると、可溶分のフタル酸エステルは、プロピレングリコール等のグリコールと酢酸カルシウム等の触媒とともに加熱してエステル交換反応させ、さらに不飽和酸を添加して加熱し縮合反応させて再び不飽和ポリエステル樹脂を再合成することができる。
一方、不溶分には、ポリスチレンの他にも、FRP廃材を用いる場合は、FRP廃材を構成する強化材や炭酸カルシウム等の増量剤が含まれており、まず、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を用いて洗浄することによってポリスチレンが有機溶剤に溶解して分離することでき、次に、篩分けすることに、FRP廃材の強化材と増量剤等の無機粉体が容易に分離することができ、廃材などから複数の有用な再生原料を回収することが可能になっている。
【0004】
また、特許文献2には、「プラスチックの分解方法」という名称で、プラスチックから有機酸の化合物や多価アルコール及び有機酸を高収率で回収し、再びプラスチックを合成することができるプラスチックの分解方法に関する発明が開示されている。
この特許文献2に開示された発明は、不飽和ポリエステル樹脂部と架橋部とを有する不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックを、亜臨界水を用いて分解し、不飽和ポリエステル樹脂の原料モノマーである多価アルコール及び有機酸と、架橋部と有機酸の化合物とを含む水溶液とし、この水溶液にアルコールを投入して架橋部と有機酸の化合物の固形物と、多価アルコールと有機酸を含む水溶液に分離して、多価アルコールと有機酸を含む水溶液から水を除去して多価アルコールと有機酸とを得るものである。
不飽和ポリエステル樹脂部と架橋部とを有する不飽和ポリエステル樹脂を含むプラスチックは、例えば、FRPであり、粉砕したFRPに純水を加えて水の亜臨界温度となる280℃以下の温度で加熱、7MPaの圧力で加圧すると、不飽和ポリエステル樹脂の原料モノマーである多価アルコール及び有機酸と、固形化する架橋部と有機酸の化合物とに分解される。そして、これらの成分を含む水溶液に、有機酸の化合物には相溶性の低いアルコールを添加して、多価アルコール及び有機酸を含む溶液と固形の架橋部と有機酸の化合物を分離し、ろ過などよって架橋部と有機酸の化合物を除去する。最後に、水とアルコールを除去すると、多価アルコールと有機酸を得ることができる。このように亜臨界水を用いるので、不飽和ポリエステル樹脂の熱分解温度未満となる280℃以下での分解が可能となり、分解生成物が二次分解することとなく、高収率で原料モノマーを回収することができる。
また、亜臨界水にはアルカリを含有させることが可能であり、この場合は、pHを調整するために酸を添加して、さらに所望のアルコールを添加して塩を析出させてこの塩を逆浸透膜などを用いて除去する工程が適宜追加される。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-219640号公報
【特許文献2】特開2006-232942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、不飽和ポリエステル樹脂を分解するために触媒を添加しているので、分解反応が進み、再合成工程を優先的に考える場合には、再合成には不要なポリスチレンを単体にまで分解してしまうという課題があった。また、分解生成物であるフタル酸エステルを用いて不飽和ポリエステル樹脂を合成する際の適当な触媒がなく、反応率が不十分で良質な再生樹脂を得ることができないという課題もあった。そして、添加する触媒は、分解生成物である再生原料中に残存し、樹脂化反応を阻害するため、分解触媒残渣を分離する工程を必要とするという課題もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載された従来の技術では、高沸点の水を用いているので、分解生成物から水を除去する際に高温にする必要があり、また、水に加えてアルコールを添加しているので、水とは別にアルコールも分離する必要があり、製造工程が複雑になるという課題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールを用いて分解して再生原料を生成し、この再生原料を用いて良質な再生樹脂を得る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法とその不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法と不飽和ポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法は、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を、触媒を添加することなく、温度が220℃~300℃で圧力が10MPa~15MPaの亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみを用いて分解し、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成する工程と、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離して、低級アルコールとフタル酸エステルとグリコールとを含む第1の再生原料を生産する工程と、この第1の再生原料から低級アルコールを除去して第2の再生原料を生産する工程とを有するものである。
上記構成の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法では、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材の樹脂部分は、触媒を添加することなく、亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみによって分解されて、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成するという作用を有する。また、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離すると、低級アルコールとフタル酸エステルとグリコールとを含む第1の再生原料が生産され、さらに、この第1の再生原料から低級アルコールを除去すると第2の再生原料が生産されるという作用を有する。
【0010】
また、請求項2に記載の発明である不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法は、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を、触媒を添加することなく、温度が220℃~300℃で圧力が10MPa~15MPaの亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみを用いて分解し、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成する工程と、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと,低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離して、低級アルコールとフタル酸エステルとグリコールとを含む第1の再生原料を生産する工程と、この第1の再生原料から低級アルコールを除去して第2の再生原料を生産する工程と、第2の再生原料にエステル交換触媒を添加して加熱し、フタル酸ジグリコールを合成する工程と、フタル酸ジグリコールに不飽和酸を添加して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂を合成する工程とを有するものである。
上記構成の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法では、まず、分解工程において、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材の樹脂部分は、触媒を添加することなく、亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみによって分解されて、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成するという作用を有する。
また、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物とを分離すると、低級アルコールとフタル酸エステルとグリコールとを含む第1の再生原料が生産され、さらに、この第1の再生原料から低級アルコールを除去すると第2の再生原料が生産されるという作用を有する。そして、合成工程においては、第2の再生原料にエステル交換触媒を添加して加熱するとフタル酸ジグリコールを生成し、続いて、このフタル酸ジグリコールに不飽和酸を添加して加熱すると不飽和ポリエステル樹脂を生成するという作用を有する。
【0011】
そして、請求項3に記載の発明である不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法は、請求項2記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法において、エステル交換触媒が、カルシウム,鉛,亜鉛,マンガン,コバルト,カドミウムの酢酸塩又は炭酸塩、チタンアルコキシドのうちの少なくとも2種を組み合わせたものである。
上記構成の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法では、請求項2に記載の発明の作用に加えて、カルシウム,鉛,亜鉛,マンガン,コバルト,カドミウムの酢酸塩又は炭酸塩、チタンアルコキシドのうちの少なくとも2種を組み合わせたエステル交換触媒によって、エステル交換反応が迅速に進むという作用を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法では、不飽和ポリエステル樹脂の樹脂部分は、亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみの作用によって分解されて、フタル酸エステルとグリコールとポリスチレンとマレイン酸の化合物を生成することができる。そして、これらの生成物は、アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと、アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物であるので、ろ過などによって不溶分を除去すると、第1の再生原料であるフタル酸エステル及びグリコールとアルコールを含む溶液を容易に分離することができる。
また、低沸点の低級アルコールのみを用いているので、第1の再生原料から簡単な蒸留によってアルコールを除去され、フタル酸エステルとグリコールを含む第2の再生原料を得ることができる。
しかも、分解反応には触媒を使用しないので、第2の再生原料には不純物となる触媒が残存しないという利点がある。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法では、触媒を添加しないで、不飽和ポリエステル樹脂を亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみを用いて分解して、フタル酸エステル及びグリコールと、ポリスチレンとマレイン酸の化合物とを生成可能であり、また、ポリスチレンとマレイン酸の化合物とアルコールを除去した第2の再生原料にエステル交換触媒を添加して加熱し、フタル酸ジグリコールを合成し、このフタル酸ジグリコールに不飽和酸を添加して加熱し、再生樹脂となる不飽和ポリエステル樹脂を合成することができる。この再生樹脂は、分解時の触媒が添加されていないので、不純物が少なく、バージン樹脂と同等の優れた特性を備えている。
【0016】
そして、本発明の請求項3に記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法では、エステル交換触媒に、カルシウム,鉛,亜鉛,マンガン,コバルト,カドミウムの酢酸塩又は炭酸塩、チタンアルコキシドのうちの少なくとも2種を組み合わせており、エステル交換反応の反応効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法の工程を示す概念図である。
【図2】本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における分解反応の機構を示す概念図である。
【図3】本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法におけるエステル交換反応の機構を示す概念図である。
【図4】本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における縮合反応の機構を示す概念図である。
【図5】本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する装置の概念図である。
【図6】本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法による再生樹脂を用いたFRPの実物写真である。
【図7】本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法におけるエステル交換反応率とエステル交換触媒量の関係を示すグラフ図である。
【図8】本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における縮合反応率とエステル交換触媒量の関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0019】
1…FRP廃材処理装置 1a…分解部 1b…合成部 2…高温高圧反応容器 3…遠心分離器 4…送液ポンプ 5…樹脂合成反応槽 6…反応薬液タンク 7…スチレン溶解槽 8…スチレン溶液 9…撹拌機
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法を図1乃至図8に基づき説明する。(請求項1乃至請求項に対応)
図1は、本発明の本実施の形態に係るフタル酸系の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解してフタル酸系の不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法の工程を示す概念図である。
図1において、本実施の形態に係るフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法は、狭義にはステップS2の分解工程及びステップS3の合成工程から構成され、広義にはステップS1の粗破砕工程、ステップS2の分解工程、ステップS3の合成工程及びステップS4の選別工程から構成される。なお、本実施の形態では、原料として、フタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を含むFRP廃材を選定している。FRPとは、繊維強化プラスチックであり、不飽和ポリエステル樹脂を母体とし、ガラス繊維等の強化材と一体化させた複合材料である。また、FRPのような複合材料でなくても、他の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を用いることもできる。なお、本実施の形態に係るフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂におけるフタル酸は、主としてオルトフタル酸及びイソフタル酸であるが、パラフタル酸でもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。

【0021】
まず、ステップS1の粗破砕工程では、このFRP廃材を数cmから数十cm程度に粗破砕する。なお、FRPは反応容器中に入れば、特にどのような形状であってもよく、原形の状態でも構わないが、充填率及びガラス繊維の再利用を考慮すると、2~10cm角程度が好ましい。また、繊維の破断の防止や反応表面積を広げるためには剪断破砕法による破砕が好ましい。

【0022】
次に、ステップS2の分解工程では、まず、ステップS2-1において、ステップS1で粗破砕したFRP廃材にアルコールを添加する。添加するアルコールは低級であれば特に限定されるものではないが、低級アルコールは低級であるほど反応性が大きいことや、沸点が低く分解生成物との分離が容易であることから炭素数1のメタノールから炭素数4のブタノールが好ましく、また、炭素数3以上ではアルキル基に分岐のない直鎖状アルコールが好ましい。但し、低級アルコールの反応性は低級であるほど大きいが臨界点も高く、反応条件が厳しくなるので不飽和ポリエステル樹脂の種類や製造環境などに応じて選択する必要がある。また、アルコールの価数は特に限定しないが、アルコールの価数が上がると沸点が上昇するため1価であることが望ましい。なお、本願明細書内において、特に説明のない限り、アルコールとは1価の低級アルコールのことをいう。
また、ステップS2の分解工程では、分解触媒を添加して反応性を向上させることが可能であるが、分解触媒を添加すると、過剰に反応して副反応が起こり目的の再生樹脂の原料成分以外の物質が生成したり、後述する合成工程において残存する触媒が樹脂合成を阻害する可能性があったりするので、分解触媒は用いずに低級アルコールのみを用いた分解反応が好ましい。なお、分解触媒を添加しない場合、残渣が溶剤に溶ける程度までの完全な分解はできないが、メタノールのみを用いて分解した場合、不溶の残渣に、さらに分解触媒を加えて完全に分解しても、フタル酸成分の溶出はほとんど無く、フタル酸成分のエステル結合の分解はメタノールのみで十分進んでいることを見出している。
次に、ステップS2-2では、FRP廃材とアルコールの混合物を密閉状態で加熱及び加圧する。加熱及び加圧の条件は、アルコールが亜臨界状態から超臨界状態になればよく、220℃から300℃の範囲、好ましくは、超臨界温度に達して圧力が急激に増大する前の250℃から280℃の範囲に設定するとよい。このとき圧力は10MPa~15MPaの範囲になる。このステップS2-2では、亜臨界状態から超臨界状態のアルコールによって、不飽和ポリエステル樹脂のエステル結合が選択的に分解反応して、フタル酸エステルとグリコールと架橋剤由来のポリスチレンとマレイン酸の化合物を生成する。なお、フタル酸エステルとグリコールはアルコールに溶解するが、ポリスチレンとマレイン酸の化合物は溶解せず、アルコール中に不溶物として残存する。
そして、ステップS2-3では、ステップS2-2において分解されてアルコールに溶解する可溶物と溶解しない不溶物とを濾過や遠心分離器を用いて固液分離する。このステップS2-3の固液分離では、液体としては、アルコールとこのアルコールに可溶な分解生成物であるフタル酸エステル及びグリコールが得られ、一方、固体としては、アルコールに不溶な分解生成物であるポリスチレンとマレイン酸の化合物の他に、FRP廃材を構成する強化材や炭酸カルシウム等の増量剤があり、また、用途によっては顔料が含まれることがある。

【0023】
次に、ステップS3の合成工程では、ステップS2において分解されて分離されたフタル酸エステルとグリコールを用いて、再生樹脂となる不飽和ポリエステル樹脂を合成する。
まず、ステップS3-1において、アルコールとフタル酸エステルとグリコールの混合溶液を加熱して蒸留によってアルコールを除去して、フタル酸エステルとグリコールを含む第2の再生原料となる溶液を作製する。用いるアルコールは低級アルコールであるので、沸点が低く、加熱すると100℃以下で揮発するので容易に回収することができる。なお、回収される1価の低級アルコールは再利用が可能である。
次に、ステップS3-2において、第2の再生原料にエステル交換触媒を添加する。添加するエステル交換触媒は、カルシウム、鉛、亜鉛、マンガン、コバルト、カドミウムの酢酸塩又は炭酸塩、チタンアルコキシドの中でも例えば、チタンテトラn-ブトキシドのうちの少なくとも2種を組み合わせたものを用いると、エステル交換反応が迅速に進み、効率良くエステル交換を行うことができる。
続いて、ステップS3-3において、これらの混合物を160℃程度の温度で窒素気流下で加熱し、エステル交換反応を行う。このエステル交換反応では、フタル酸エステルのエステル基がグリコールに置換されてフタル酸ジグリコールとアルコールが生成する。フタル酸ジグリコールは次の工程で使用するが、生成するアルコールは加熱によって留出してくるので回収する。回収されたアルコールは再利用が可能である。なお、前述のステップS3-1の1価の低級アルコールの蒸留工程は、ステップS3-3の加熱工程における加熱を利用して回収することも可能であり、この場合、ステップS3-1の工程は省略することができる。
そして、ステップS3-4では、ステップS3-3において生成したフタル酸ジグリコールに無水マレイン酸等の不飽和酸を添加する。
次に、ステップS3-5では、これらの混合物を180℃程度に加熱し、さらに、600mmHg程度に減圧して約2.5時間保持する。このステップS3-5の加熱によって、フタル酸ジグリコールと不飽和酸が縮合反応して、不飽和ポリエステル樹脂と水が生成する。
最後に、ステップS3-6では、ステップS3-5において生成した不飽和ポリエステル樹脂をスチレン中に滴下して撹拌溶解させると、硬化剤等を使用する一般的な熱硬化性樹脂の使用方法にしたがって再利用することができる再生樹脂となる。

【0024】
一方、ステップS4の選別工程では、ステップS2においてアルコールに不溶で固液分離された固体の選別を行う。まず、ステップS4-1では、得られた固体をテトラヒドロフラン(以下、THFという。)等の有機溶剤を用いて洗浄し、乾燥する。このステップS4-1の洗浄工程では、固体に含まれる分解生成物であるポリスチレンとマレイン酸の化合物がTHF等の有機溶剤に溶解し、除去される。
次に、ステップS4-2において篩分けを行う。このステップS4-2の篩い分けによって、FRP廃材の強化材であるガラス繊維と増量剤等の無機粉体であるフィーラーが容易に分離することが可能であり、これらは各々再利用が可能である。なお、原料にFRP廃材のような強化材を含む複合材料でない不飽和ポリエステル樹脂の成形品廃材を用いる場合は、ステップS4の選別工程を行う必要はない。
ここで、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法とは、図1に示すステップS2の分解工程と、ステップS3の合成工程のうちステップS3-1のアルコールの蒸留工程を行うものである。また、不飽和ポリエステル樹脂の製造方法とは、ステップS3の合成工程のうちステップS3-2の触媒の添加工程からステップS3-6スチレン溶解工程を行うものである。

【0025】
次に、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における分解反応、エステル交換反応及び縮合反応について、図2乃至図4を参照しながら説明する。
図2は、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における分解反応の機構を示す概念図である。
図2において、フタル酸とプロピレングリコールとマレイン酸が結合し、マレイン酸に架橋したポリスチレンからなる不飽和ポリエステル樹脂に、亜臨界状態から超臨界状態のメタノールを添加すると、メタノールは、フタル酸とプロピレングリコールの結合部分とマレイン酸とプロピレングリコールの結合部分に作用して、これらの結合を切断し、フタル酸にメタノールのメチル基が結合したフタル酸ジメチルと、プロピレングリコールと、ポリスチレンにマレイン酸が結合したポリエステルとマレイン酸の化合物が生成する。ここで、メタノールを用いた分解反応には、触媒を用いていないので、架橋部のポリスチレンはポリスチレン単体として生成することなく、ポリスチレンとマレイン酸の化合物として残存する。

【0026】
また、図3は、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法におけるエステル交換反応の機構を示す概念図である。
図3において、前述の分解反応によって生成されたフタル酸ジメチルとプロピレングリコールをエステル交換触媒の存在下で加熱すると、フタル酸ジメチルとプロピレングリコールの主鎖がそれぞれ入れ替わり、フタル酸ジグリコールとメタノールが生成される。なお、生成するメタノールは回収すると、再利用が可能である。

【0027】
そして、図4は、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における縮合反応の機構を示す概念図である。
図4において、フタル酸ジグリコールに無水マレイン酸を添加して加熱すると、縮合反応により、フタル酸ジグリコールの水酸基と無水マレイン酸の酸素原子によって、水が生成し、不飽和ポリエステル樹脂が生成される。そして、この不飽和ポリエステル樹脂にスチレンを添加すると、未硬化状態の再生樹脂となる。

【0028】
次に、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法を実施する装置の一例について図5を参照しながら説明する。
図5は、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する装置の概念図である。
図5において、FRP廃材処理装置1は、大まかには、FRP廃材の樹脂部分を分解する分解部1aと、分解生成物を用いて再合成する合成部1bから構成されている。

【0029】
分解部1aは、高温高圧反応容器2、遠心分離器3及び送液ポンプ4を有している。まず、高温高圧反応容器2に、FRP廃材と1価の低級アルコールが投入される。そして、図示していないが、加熱及び加圧装置を用いて高温高圧反応容器2内は加熱及び加圧され、1価の低級アルコールを亜臨界状態から超臨界状態にする。亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールの作用によってFRP廃材の樹脂部分が分解し、低級アルコールに可溶なフタル酸エステル及びグリコールと、低級アルコールに不溶なポリスチレンとマレイン酸の化合物が生成される。なお、高温高圧反応容器2は耐熱性及び耐圧性のある容器でなければならない。
そして、分解反応が終了すると、高温高圧反応容器2内の混合物は遠心分離器3に送られて、アルコールに溶解している液体と、アルコールに不溶の固体に分離され、液体は送液ポンプ4によって合成部1bに送液される。
なお、ここで、不溶の固体は遠心分離器3から取り出してTHF溶液等の有機溶剤で洗浄後篩分けすることによってFRP廃材中の強化材であるガラス繊維とフィーラーとに選別することができる。

【0030】
次に、合成部1bは、樹脂合成反応槽5、反応薬液タンク6、スチレン溶解槽7及び撹拌機9を有しており、分解部1aから送られてくるアルコールに溶解した分解生成物は樹脂合成反応槽5に注入されて、反応薬液タンク6から適宜必要な薬液を滴下して合成が行われる。
樹脂合成反応槽5には、分解部1aから低級アルコールに可溶化したフタル酸エステルとグリコールが送液されるので、まず、エステル交換触媒を添加して加熱して、エステル交換反応を行ってフタル酸ジグリコールを生成し、続いて、反応薬液タンク6から不飽和酸を添加して加熱して、縮合反応により不飽和ポリエステル樹脂を合成することができる。
そして、得られる不飽和ポリエステル樹脂をスチレン溶液8が注入されたスチレン溶解槽7に滴下して撹拌機9で撹拌してスチレン溶液8に溶解させると再生樹脂として使用することができる。
但し、図示していないが、合成部1bには、樹脂合成反応槽5を加熱する加熱装置と、樹脂合成反応槽5内に送液される1価の低級アルコールとエステル交換反応の際に生成するアルコールを回収する回収装置を具備している。

【0031】
以下、本実施の形態に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法について実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0032】
不飽和ポリエステル樹脂を母材としたFRP廃材の破砕物7kgと、これに1価の低級アルコールとしてメタノール15L(リットル)を、内容積36Lのオートクレーブ中に投入した。そして、この反応容器をメタノールが十分超臨界状態に達し急激な圧力増大する前の250℃から280℃程度に加熱した。このときの容器内圧力はメタノールで10~15MPa程度となった。この加熱・加圧条件下で約3時間保持すると、不飽和ポリエステル樹脂の樹脂部分において分解可能なエステル結合のほとんどを分解して可溶化できた。冷却後、ろ過して固体と液体に分離し、液体においてメタノールを蒸留して除去すると、高沸点の残部としてフタル酸ジメチルとプロピレングリコールの混合物が得られた。
フタル酸ジメチル約1モルとプロピレングリコール約2.1モルを含む分解混合物340gに触媒として酢酸カルシウム0.007モルとチタンテトラn-ブトキシド0.001モルを加えて、窒素気流下で160℃程度に加熱して1時間保持するとフタル酸ジメチルとプロピレングリコールの主鎖が入れ替わり、アルコールが留出してエステル交換が行われ、フタル酸ジグリコールが生成した。続いて、無水マレイン酸1モルを加えて180℃程度に加熱し、時々600mmHg程度に減圧し、縮合反応を起こさせると不飽和ポリエステル樹脂ができた。この不飽和ポリエステル樹脂を110℃から120℃に冷却し、所定量のスチレンを加えて再生樹脂とした。なお、エステル交換触媒の沈殿が生じたので、濾過して沈殿を回収した。
【実施例1】
【0033】
次に、得られた再生樹脂を用いて作製したFRPについて図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法による再生樹脂を用いたFRPの実物写真である。
図6において、再生樹脂を用いたFRPは、茶褐色に着色しているが、これは、分解反応時の加熱に起因するものであり、樹脂の特性に及ぼす影響は小さいと考えられる。
再生樹脂及び市販樹脂と、市販のガラス繊維マットを使用してそれぞれFRPを作製し、機械的性質を測定した。表1に測定結果を示す。
【実施例1】
【0034】
【表1】
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【実施例1】
【0035】
表1に示すように、引張強度、曲げ強度、衝撃強度及びバーコル硬さは、再生樹脂と市販樹脂はほぼ同値を示しており、再生樹脂がバージン樹脂に劣らない優れた特性を有する樹脂であることがわかる。
【実施例2】
【0036】
実施例1と同様に不飽和ポリエステル樹脂を分解して、フタル酸ジメチルとプロピレングリコールを作製した。ここで、エステル触媒に酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドを用いて、これらの触媒の量を変化させて、エステル交換反応及び縮合反応を行って再生樹脂を作製し、エステル交換反応時及び縮合反応時のエステル化反応率及び縮合反応率について検討した。さらに、生成した再生樹脂を用いて硬度の測定を行った。
図7は、本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法におけるエステル交換反応率とエステル交換触媒量の関係を示すグラフ図である。また、表2には、図7の測定結果を示す。なお、エステル交換反応率とは、エステル交換反応の際に生成するアルコールの生成量(回収率(%))を指標としたものである。なお、回収率(%)は、理論上得られるアルコールの生成量に対して実測で得られたアルコールの生成量の百分率で得られるものである。
【実施例2】
【0037】
【表2】
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【実施例2】
【0038】
図7及び表2において、エステル交換反応率は、酢酸カルシウムのみを使用した場合では、酢酸カルシウムの量が増加すると増大し、また、チタンテトラn-ブトキシドのみを使用した場合でも、チタンテトラn-ブトキシドの量が増加すると増大する傾向がある。また、チタンテトラn-ブトキシドのみを使用した場合よりも、酢酸カルシウムのみを使用した場合の方がエステル交換反応率は高く、エステル交換反応には、チタンテトラn-ブトキシドよりも酢酸カルシウムの方が有用であると考えられる。
さらに、酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドを組み合わせると、酢酸カルシウム及びチタンテトラn-ブトキシドの量の増加とともに、エステル交換反応率が増大しており、触媒を組み合わせることによってエステル交換反応率が良好となることを示している。
【実施例2】
【0039】
図8は、本実施例に係る不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法における縮合反応率とエステル交換触媒量の関係を示すグラフ図である。また、表3には、図8の測定結果を示す。なお、縮合反応率とは、縮合反応の際に生成する水の生成量(回収率(%))を指標としたものである。なお、回収率(%)は、理論上得られる水の生成量に対して実測で得られた水の生成量の百分率で得られるものである。
【実施例2】
【0040】
【表3】
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【実施例2】
【0041】
図8及び表3において、縮合反応率は、チタンテトラn-ブトキシドのみでその使用量が多いときは、高い値を示しており、一方、酢酸カルシウムのみを使用した場合では、酢酸カルシウムの量が増加すると低下する傾向がある。また、酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドを組み合わせると、酢酸カルシウム及びチタンテトラn-ブトキシドの量が増加すると、縮合反応率は低下する傾向を示している。
【実施例2】
【0042】
次に、表4に、HDD硬度の測定結果を示す。なお、硬度の測定は、デュロメーター硬さ測定法(JISK7215-1986)によって行い、測定器具として硬質用のHDDを用いた。
【実施例2】
【0043】
【表4】
JP0005526402B2_000005t.gif
【実施例2】
【0044】
表4に示すように、HDD硬度は、酢酸カルシウムのみ及びチタンテトラn-ブトキシドのみでは、硬化が不十分であり、酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドを組み合わせた方が良好になっていることがわかる。
したがって、エステル交換触媒は、酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドを組み合わせて、その使用量を増大させると、エステル交換反応率は増大するが、一方で、縮合反応率は低下する傾向があるので、両方の反応率と、さらに、再生樹脂の硬度を考慮すると、再生原料であるフタル酸エステル1モルに対して、酢酸カルシウムを2~6ミリモルとし、チタンテトラn-ブトキシドを0.5~1.5ミリモルの範囲であるのが好ましいことがわかった。
【実施例2】
【0045】
このように構成された本実施の形態においては、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材に亜臨界状態から超臨界状態の1価の低級アルコールのみを作用させると、触媒を添加しなくても分解反応が起こり、1価の低級アルコールに可溶で再利用可能なフタル酸エステルとグリコールを高収率で生成することができる。
そして、生成したフタル酸エステルとグリコールと、不飽和酸を用いて、適切なエステル交換触媒を選定し、組み合わせることにより、エステル交換反応率及び縮合反応率に優れた反応の遂行が可能であり、また、得られる再生樹脂はバージン樹脂に比べて遜色ない良質の樹脂を製造することができる。
なお、本実施例においては、酢酸塩として酢酸カルシウムを用い、チタンアルコキシドとしてチタンテトラn-ブトキシドを用いたが、反応機構を考えると、酢酸カルシウムとチタンテトラn-ブトキシドの触媒反応から、金属酢酸塩とチタンアルコキシドの組み合わせでは同様の結果が予想されるものである。また、金属塩では酢酸カルシウム、チタンアルコキシドではチタンテトラn-ブトキシドとチタンテトラi-プロポキシドが最も安価で安全性が高いと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項5に記載された発明は、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を亜臨界状態から超臨界状態の低級アルコールのみによって分解して、再利用可能な有用物を得ることができる不飽和ポリエステル樹脂を含む成形品廃材を分解して不飽和ポリエステル樹脂を再合成するための再生原料を生産する方法とその不飽和ポリエステル樹脂を再合成する方法と不飽和ポリエステル樹脂の製造方法を提供可能であり、FRPなどの廃材の処分方法等に利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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