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明細書 :核物質検知装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-051895 (P2020-051895A)
公開日 令和2年4月2日(2020.4.2)
発明の名称または考案の名称 核物質検知装置
国際特許分類 G01N  23/222       (2006.01)
G21C  17/00        (2006.01)
FI G01N 23/222
G21C 17/00 D
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-181563 (P2018-181563)
出願日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明者または考案者 【氏名】米田 政夫
【氏名】藤 暢輔
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
【識別番号】100194146、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 明
【識別番号】100194283、【弁理士】、【氏名又は名称】村上 大勇
審査請求 未請求
テーマコード 2G001
2G075
Fターム 2G001AA04
2G001BA02
2G001CA04
2G001FA03
2G001FA18
2G001GA03
2G001GA04
2G001GA13
2G001HA02
2G001HA06
2G001JA08
2G001JA10
2G001KA05
2G001KA06
2G001LA08
2G001LA10
2G001NA14
2G075CA48
2G075DA08
2G075EA01
2G075FA05
2G075FA06
2G075FB04
2G075GA21
要約 【課題】小型の装置を用いて核物質を高精度で検知する。
【解決手段】中性子線源10と試料Sの位置関係は、円板20の回転の位相(角度)で定まる。円板20の回転軸20Aは、モーターで駆動され、この回転はコンピューター40で制御される。コンピューター40には、中性子検出器30の出力も入力する。コンピューター40は、円板20の回転に伴うカウント数の変遷を認識することができる。円板20を回転させることにより、中性子線源10と試料Sとの間の距離が変化し、かつこの動きがこの距離が最小となる状態の前後で対称となるように中性子線源10を移動させ、この際に試料S側から発せられる中性子の中性子検出器30によるカウント数の変遷を検出する。この結果における、距離が最小となる状態の前のカウント数と、距離が最小となる状態の後のカウント数との違いに基づいて、試料Sにおける核物質の存在の有無を認識する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
試料における核物質を検知する核物質検知装置であって、
前記核物質に核反応を発生させる一次放射線を連続的に発する放射線源と、
前記一次放射線が照射された前記試料から発せられた放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線源と前記試料との間の距離が変化し、前記距離の変化に伴って前記放射線検出器の検出強度が極大となる状態の前後で対称となる動きで前記放射線源、前記試料の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記試料側から発せられた放射線を検出する放射線検出器と、
前記距離の変動に伴う前記放射線検出器のカウント数の検出結果における、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数と、前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数との間の違いに基づいて、前記核物質の有無又は前記核物質の量を検知する判定手段と、
を具備することを特徴とする核物質検知装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数が、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数よりも大きな場合に、前記試料に前記核物質が存在すると認識することを特徴とする請求項1に記載の核物質検知装置。
【請求項3】
前記移動手段は前記放射線源を前記試料に対して移動させ、
前記判定手段は、
前記放射線源の移動速度を変えて前記放射線源の移動に伴う前記検出結果を取得し、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数と前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数を前記移動速度毎に認識し、
前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数の、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数に対する比率が、前記移動速度の上昇に伴って高くなった場合に、前記核物質が存在すると認識することを特徴とする請求項1に記載の核物質検知装置。
【請求項4】
前記移動手段において、前記放射線源が回転体に固定されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の核物質検知装置。
【請求項5】
前記検出強度が極大となる状態において、前記距離が極小とされたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の核物質検知装置。
【請求項6】
前記一次放射線は中性子線であり、前記放射線検出器は中性子を検出することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の核物質検知装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核物質が発する放射線を検出することによって試料中の核物質を検知する核物質検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核物質(核分裂物質)が発する中性子を認識することによって、核物質を検知する技術が知られている。中性子は物質透過性が高いため、これによって手荷物、コンテナ、車両等の内部に存在する核物質を検知することもできる。図11は、このような核物質検知方法の原理を模式的に説明する図である。
【0003】
ここでは、容器100の内部に、核物質の存在の有無が検知される対象となる試料Sが収容されている。中性子源110から発せられた中性子線120(一次中性子)は、容器100を透過して試料Sに照射される。これによって、試料S側から発せられる中性子として、一次中性子が試料Sによって散乱された成分である一次中性子成分130と、試料S中に核物質が存在する場合に一次中性子によって核物質が核反応を起こしたために発生した中性子(二次中性子)による二次中性子成分140とが存在する。容器100の外部の中性子検出器150は、一次中性子成分130、二次中性子成分140を共に検出し、特に二次中性子成分140を有意に認識した場合には、試料Sに核物質が存在すると判定することができる。一方、一次中性子成分130は、試料Sにおける核物質の有無に関わらず存在する。なお、図11においては便宜上一次中性子成分130と二次中性子成分140の向きは異なって示されているが、これらが発せられる向きは特に変わらず、実際にはこれらは混在している。
【0004】
中性子検出器150は、これに入射した中性子を検出することができるが、検出した中性子が一次中性子成分130、二次中性子成分140のどちらであるかを判定することは容易ではない。上記のような二次中性子成分140を認識することにより核物質を検知するための手法として、例えばDDT(Differential Die-Away Technique)法が知られている。DDT法においては、上記の中性子線120として、持続時間の短いパルス(短パルス)状に発せられた中性子線が用いられる。図12は、こうした場合における中性子検出器150のカウント数(対数表示)の時間経過を模式的に示す。この場合においては、中性子線120が制御された短パルス状に発せられれば、一次中性子成分130は、図12においては短い時定数で減衰する破線(1)の成分として観測される。一方、一次中性子による核反応は一次中性子の入射後の一定の時間にわたり発生するため、二次中性子成分140は一次中性子成分130から遅延して検出され、図12においては長い時定数で減衰する点線(2)の成分として観測される。実際にはこの(1)の成分と(2)の成分とは中性子検出器150で区別されずに検出されるため、こうした成分が混在する場合には、実際の検出結果は、図12において(1)と(2)が共に含まれる実線で示されるような特性となる。
【0005】
実際には図12における(1)の成分の最大強度は(2)の成分の最大強度よりも桁違いに大きいため、特に(2)の成分のみを認識することは一般的には容易ではない。DDT法においては、中性子線120(一次中性子)を短パルス状とし、(1)と(2)における時定数の違いを考慮し、中性子線120がオフとなった後で(1)の成分が十分に減衰した後で支配的となった(2)の成分を検出する。これによって二次中性子成分140を認識することができる。こうした技術は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0006】
ただし、(2)の成分も時間経過と共に指数関数的に減衰するという点は(1)の成分と同様であるため、中性子線120がオフとなってからの時間経過が長くなった場合には、(1)に対する相対的な(2)の成分の検出強度(カウント数)は大きくなるものの、(2)の成分の絶対的な検出強度は大きく減少する。このため、(2)の成分を十分な検出強度で検出するためには、中性子線120(一次中性子)のパルス幅を十分に短く制御することにより(1)の成分が十分早く減衰するようにした上で、比較的短い時間経過の後に検出を行う必要がある。
【0007】
ただし、電子線やX線等と比べて、中性子を短時間のパルス状に制御して発することは容易ではない。一般的にはこのようにパルス状に制御された中性子線120を発する中性子源としては加速器を用いて中性子を発するものや、より小型の中性子発生管が知られている。しかしながら、加速器は大型かつ非常に高価な設備となるため、この場合には核物質検知装置全体が非常に大型かつ高価となる。中性子発生管は、加速器を用いた場合よりも小型となるが、非常に高価であり、かつパルス形状の中性子線を安定して発生させることは困難である。一方、上記のように手荷物等の内部の核物質の検知を行うための核物質検知装置としては、小型で移動可能であり、かつ安定した測定が可能なものが望ましく、このような中性子源を用いたものは適さない。
【0008】
このため、特許文献1には、加速器や中性子発生管を利用せずに同様の分析を行う核物質検知装置が記載されている。この装置においては、測定対象となる試料及び中性子検出器は中性子減速材で囲まれる。一方、放射性同位体(Cf-252等)で構成された安価かつ小型の中性子線源が回転する円板に装着され、回転に応じて中性子減速材内部の試料に近接する。この中性子線源は中性子を連続的に発するが、上記の構成により、回転の際に中性子が中性子減速材の内部に留まる時間を例えば1ms程度に制限することができ、前記のパルス状の一次中性子を疑似的に実現することができる。このため、この時間の経過後に中性子検出器で検出された成分は、前記の二次中性子成分140(図12における(2)の成分)となり、この試料における核物質の検知をすることができる。この技術においては、試料を囲む中性子減速材と、回転により移動する中性子線源を用いて上記のような疑似的なパルス状の一次中性子を実現するため、前記のような大型、高価な中性子源を用いた場合と比べて、これによって小型、安価な核物質検知装置を得ることができる。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】「Newtron dieaway methods for critically safety measurements of fissile waste」、Coop.K.L、Los Alamos National Laboratory、LA-UR-89-2124(1989年)
【0010】

【特許文献1】特開平2-157696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の核物質検知装置においては、中性子減速材で囲まれた内部における中性子の滞在時間(例えば1ms後)は、加速器を用いた中性子源や中性子発生管におけるパルス長よりも桁違いに長い。このため、前記のように、図12における(1)の成分が十分に減衰してから検出を行った場合には、(2)の成分も大きく減衰した。このため、この核物質検知装置は小型となるものの、この装置における二次中性子の検出強度(カウント数)は非常に低くなり、核物質を高精度で検知することは困難であった。
【0012】
このため、小型の装置を用いて核物質を高精度で検知できることが望まれた。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の核物質検知装置は、試料における核物質を検知する核物質検知装置であって、前記核物質に核反応を発生させる一次放射線を連続的に発する放射線源と、前記一次放射線が照射された前記試料から発せられた放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線源と前記試料との間の距離が変化し、前記距離の変化に伴って前記放射線検出器の検出強度が極大となる状態の前後で対称となる動きで前記放射線源、前記試料の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、前記試料側から発せられた放射線を検出する放射線検出器と、前記距離の変動に伴う前記放射線検出器のカウント数の検出結果における、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数と、前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数との間の違いに基づいて、前記核物質の有無又は前記核物質の量を検知する判定手段と、を具備することを特徴とする。
本発明の核物質検知装置において、前記判定手段は、前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数が、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数よりも大きな場合に、前記試料に前記核物質が存在すると認識することを特徴とする。
本発明の核物質検知装置において、前記移動手段は前記放射線源を前記試料に対して移動させ、前記判定手段は、前記放射線源の移動速度を変えて前記放射線源の移動に伴う前記検出結果を取得し、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数と前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数を前記移動速度毎に認識し、前記検出強度が極大となる状態の後の前記カウント数の、前記検出強度が極大となる状態の前の前記カウント数に対する比率が、前記移動速度の上昇に伴って高くなった場合に、前記核物質が存在すると認識することを特徴とする。
本発明の核物質検知装置は、前記移動手段において、前記放射線源が回転体に固定されたことを特徴とする。
本発明の核物質検知装置は、前記検出強度が極大となる状態において、前記距離が極小とされたことを特徴とする。
本発明の核物質検知装置において、前記一次放射線は中性子線であり、前記放射線検出器は中性子を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されているので、小型の装置を用いて核物質を高精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置の構成を示す図(その1)である。
【図2】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置の構成を示す図(その2)である。
【図3】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、中性子線源と試料の間の4種類の位置関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置において、中性子線源の4種類の位置における一次中性子成分、二次中性子成分の検出強度の変遷を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、試料の中心に核物質が存在する場合における、円板の回転に伴う中性子検出器のカウント数の変遷を、回転速度毎にシミュレーションによって算出した結果である。
【図6】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置において、水平方向に非対称な構成を具備する大きな試料がある場合の水平方向の構成(a)、試料の垂直方向の断面図の例(b)を示す。
【図7】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、試料が非対称な構造を具備する場合(その1)における、低回転速度の円板の回転に伴う中性子検出器のカウント数の変遷をシミュレーションによって算出した結果である。
【図8】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、試料が非対称な構造を具備する場合(その1)における、高回転速度の円板の回転に伴う中性子検出器のカウント数の変遷をシミュレーションによって算出した結果である。
【図9】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、試料が非対称な構造を具備する場合(その2)における、低回転速度の円板の回転に伴う中性子検出器のカウント数の変遷をシミュレーションによって算出した結果である。
【図10】本発明の実施の形態に係る核物質検知装置における、試料が非対称な構造を具備する場合(その2)における、高回転速度の円板の回転に伴う中性子検出器のカウント数の変遷をシミュレーションによって算出した結果である。
【図11】従来の核物質検知方法を説明する図である。
【図12】従来の核物質検知方法において検出される中性子の検出強度の時間変化を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る核物質検知装置の構成を図1、2に示す。ここで、図1においてはその機械的構成を上面から見た構成が、図2においてはその機械的構成を側面から見た図が示されている。ここでは、中性子線源(放射線源)10が、鉛直方向に沿った回転軸20Aを具備する円板(回転体)20の外周近くに固定されている。中性子線源10としては、特許文献1に記載のものと同様に、放射性同位体(Cf-252等)が用いられる。このため、中性子線源10からは連続的に中性子線200(一次中性子)が発せられる。試料Sは、円板20(中性子線源10)と中性子検出器30の間に設置されるため、図11の構成と同様に、中性子線200が試料Sで散乱された一次中性子成分210と、試料Sにおける一次中性子による核反応で発生した二次中性子成分220は、区別なく中性子検出器30で検出される。なお、ここでは試料Sは容器100の内部に収容されているが、容器100は用いられなくともよい。

【0018】
中性子線源10と試料Sの位置関係は、円板20の回転の位相(角度)で定まり、これらの間の距離はこの位相に応じて変動する。図1、2においては、中性子線源10と試料Sとの間の距離が最も近接した場合が示されている。円板20の回転軸20Aは、モーター21で駆動され、この回転はコンピューター40で制御される。このため、円板20とモーター21は、中性子線源20を試料Sに対して相対的に移動させる移動手段として機能する。また、コンピューター40は、モーター21の回転角度、あるいは円板20に固定されたマーカーの位置等を検知すること等によって、この回転の位相を認識することができる。これにより、コンピューター40は、中性子線源10と試料Sの位置関係を認識することができる。

【0019】
コンピューター40には、中性子検出器30の出力も入力する。この出力は、円板20の回転周期よりも十分に短い一定時間内における中性子のカウント数である。試料Sに照射される中性子線200の強度は、中性子線源10と試料Sの距離に応じて変動するため、円板20の回転(回転時の位相)に応じて一次中性子成分210及び二次中性子成分220の強度は変化し、中性子検出器30のカウント数は、円板20の回転に伴って変化する。コンピューター40は、円板20の回転に伴うこのようなカウント数の変遷を認識することができる。

【0020】
上記の構成により、コンピューター40は、特に試料Sから発せられた二次中性子(二次中性子成分220)の強度を一次中性子(一次中性子成分210)の強度と分離して認識することができる。以下に、この動作について説明する。図3(a)~(d)は、図1における円板20の回転に伴う中性子線源10と試料Sの4種類の位置関係を示す。ここで、円板20の回転の向きは図中時計回りであるため、図3では時間の経過に伴い(a)から(d)の状態に向かうものとし、図3(a)~(d)における中性子線源10の位置をそれぞれP0、P1、P2、P3とする。また、単純化のために核物質を含む試料Sは充分に小さくその大きさは無視できるものとする。この状態は、小さな核物質が試料Sの中心にある場合とも等価である。図3(c)は中性子線源10と試料Sとが最も近接した状態となり、図3(a)は図3の中では中性子線源10と試料Sとが最も離間した状態となる。図3(b)の状態と図3(d)の状態は、図3(c)の状態から見て左右対称であるものとする。このため、図3(b)の状態と図3(d)の状態では中性子線源10と試料Sとの間の距離は等しく、この距離は図3(a)と図3(c)の場合の間となる。

【0021】
図4は、図3(a)~(d)(中性子線源10の位置がP0~P3)の場合における、中性子検出器30で検出される中性子における一次中性子成分210の検出強度(N10~N13)、二次中性子成分220の検出強度(N20~N23)の概要を示す。ここでは、これらの絶対値は模式的に示されている。図4における横軸は、円板20の回転時の位相、あるいは時間経過に対応し、試料Sから中性子検出器30までの中性子の到達時間はここに示された範囲内の時間に対して無視できるものとする。前記のとおり、中性子検出器30では実際にこれらの各成分を分離して認識することはできず、各位置における両成分の検出強度の和が実際のカウント数として認識される。

【0022】
図4において、中性子線源10の位置がP0(図3(a))である場合には、中性子線源10と試料Sの間の距離が最も大きいため、この際の一次中性子成分210の検出強度N10は最も小さく、これに伴ってこの際の二次中性子成分220の検出強度N20も小さい。その後、中性子線源10の位置がP1(図3(b))、P2(図3(c))となるに従い中性子線源10と試料Sの間の距離が小さくなるため、一次中性子成分210の検出強度N11、N12は徐々に大きくなり、これに伴って二次中性子成分220の検出強度N21、N22も徐々に大きくなる。特に、中性子線源10の位置がP2(図3(c))である場合には、中性子線源10と試料Sの間の距離は最も小さくなるため、一次中性子成分210の検出強度N12は最大となる。また、前記の通り、二次中性子成分220の検出強度N20、N21、N22は、それぞれ対応する一次中性子成分210による検出強度N10、N11、N12よりも小さい。

【0023】
その後、中性子線源10の位置がP3(図3(d))となると、中性子線源10と試料Sの距離はP2(図3(c))の場合よりも大きくなるため、一次中性子成分210の検出強度N13はN12よりも減少する。また、位置P3(図3(d))における場合と位置P1(図3(b))における場合では、中性子線源10と試料Sとの間の距離は等しいため、図示されるように、原理的にはN13はN11と等しい。

【0024】
一方、二次中性子成分220は、一次中性子成分210から遅延して発生するため、位置P3において検出される二次中性子成分220には、それよりも前、例えば位置P2における最も強度が高い一次中性子成分210(N12)に対応して発生したものが含まれる。このため、位置P3においては、一次中性子成分210の検出強度N13は位置P1における検出強度N11と等しいものの、二次中性子成分220の検出強度N23は位置P1における検出強度N21と比べて、N23>N21となる。このため、図4に示されるように、一次中性子成分210の検出強度分布(破線)は位置P2の前後で対称となるのに対して、二次中性子成分220の検出強度分布(一点鎖線)のピークは、位置P2より後(右側)となる。すなわち、二次中性子成分220による強度分布は、試料Sと中性子線源10の間の距離が最小となる位置P2の前後で非対称となる。

【0025】
前記の通り、実際に各位置P0~P3において中性子検出器30で検出されるカウント数は、それぞれN10+N20、N11+N21、N12+N22、N13+N23に対応する。ここで、N11=N13であれば、位置P3における中性子検出器30のカウント数と位置P1における中性子検出器30のカウント数の差はN23-N21=NN>0となる。NNは試料Sから発生した二次中性子のみに起因した成分であり、二次中性子の発生量に比例する。

【0026】
このため、コンピューター40がNNを算出し、例えばNNがある閾値を超えた場合には、試料Sが核物質を含むと認識することができる。上記の通り、NNは、位置P1、P3における中性子検出器30のカウント数の差分であるため、この算出は容易である。このため、試料Sにおける核物質の有無を容易に認識することができる。また、前記の通り、実際の中性子検出器30のカウント数においては一次中性子の寄与が二次中性子の寄与よりも大きい(N11>>N21、N13>>N23)にも関わらず、位置P3と位置P1におけるカウント数の差分を算出することによって、カウント数における一次中性子の寄与を相殺し、カウント数における二次中性子のみによる寄与を算出することができる。

【0027】
実際に円板20の回転に伴う中性子検出器30の検出強度の変遷をシミュレーションによって算出した結果について説明する。ここでは、核物質を含む試料Sにおいて核物質はその中心に存在するものとし、この特性の、円板20の回転速度依存性について調べた。図5(a)~(c)は、図1、2の構成において、回転速度以外のパラメータは同様としており、回転速度は2500rpm(a)、5000rpm(b)、10000rpm(c)である。ここで、横軸の範囲は、横軸の左右両端における中性子線源10の位置が(a)~(c)で等しくなるように調整されている。

【0028】
図5(a)~(c)においては、ピークの位置は、図3の位置P2(図3(c))に対応し、これらの特性におけるこのピークを中心とした前後(図中左右)の非対称性が、前記のように二次中性子によって発生する。上記のように検出されるNNを十分に大きくする、あるいは上記のような検出強度の非対称性を十分に大きくするためには、例えば位置P2における一次中性子によって発生した二次中性子が位置P3において十分な強度で検出されることが必要である。このためには、図12における(2)の成分が減衰しないうちに中性子検出器30で中性子を検出することが必要であり、回転速度(中性子線源10の移動速度)が十分に高いことが要求される。このため、回転速度が最も遅い図5(a)の場合には、二次中性子の影響が見えにくく、ピークの前後はほぼ対称の形状となる。一方、回転速度を高めるに従って、特にピークの後(右側)におけるカウント数が前側(左側)よりも高くなったためにピークの前後の非対称性が強くなることが確認できる。このようなピーク前後の検出強度の差は、前記の通り、二次中性子のみによって発生する。

【0029】
図5(c)より、少なくとも円板20の回転速度を10000rpmとすれば、上記のように試料Sにおける核物質の有無の判定をすることができる。また、上記の例では、位置P3における検出強度と位置P1における検出強度の差分を算出したが、図5の特性におけるピーク前後の非対称性を評価するために、他の手法を用いることもできる。例えば、図5の特性におけるピークを境界とした前後の検出強度の積分値(ピーク前:I、ピーク後:I)を算出し、I/I>1(あるいはI/I>a、ここでaはa>1であり予め定められた定数)の場合に、試料Sに核物質が存在するとすることができる。この場合には、積分値が用いられるため、中性子計測の際の統計的誤差の影響を低減することができる。また、図5の結果は、円板20の回転の1周期内における測定結果に対応しているが、回転に同期して測定を行い、同一位相の測定結果を積分することによって、統計的誤差を低減し、更に精密な測定を行わせることもできる。

【0030】
すなわち、上記の核物質検知装置において実行される核物質検知方法においては、円板20を回転させることにより、中性子線源10と試料Sとの間の距離が変化し、かつこの動きがこの距離が最小となる状態の前後で対称となるように中性子線源10を移動させ、この際に試料S側から発せられる中性子の中性子検出器30によるカウント数の変遷を検出する検出工程が、まず行われる。その後、この結果における、距離が最小となる状態の前のカウント数と、距離が最小となる状態の後のカウント数との違いに基づいて、二次中性子の発生があったか否か(試料Sにおける核物質の存在の有無)を認識する判定工程が、コンピューター(判定手段)40により行われる。

【0031】
また、核物質の種類や量(濃度)等が既知の標準試料を用いて同様の測定を行った結果をリファレンスとして予めコンピューター40が記憶し、実測結果とリファレンスとを比較することにより、核物質の定量評価を行うことも可能である。

【0032】
図3においては、核物質が試料Sの中心に存在するものとしたため、図4に示されるように、一次中性子成分210の強度N10~N13は、図4において、ピークとなる位置P2の前後で対称となった。しかしながら、実際には有限の大きさの試料S中における核物質が存在する位置は様々であり、かつ円板20の回転に際しての中性子線源10と試料Sとの間の位置関係も、図3に示されたものとは異なる場合がある。また、このように試料Sが有限の大きさをもつ場合において、その中で局所的に核物質が存在する場合もある。こうした場合には、一次中性子成分210の検出強度も一般的にはピークの前後で対称とならず、二次中性子成分220の有無に関わらず、カウント数の分布はピークの前後で対称とはならない。ただし、このように、二次中性子成分220以外の要因によって発生する検出強度の非対称性は、二次中性子成分220によって発生する非対称性とは異なり、図5(a)におけるような遅い回転速度においても発生する。

【0033】
図6は、このような非対称な構成をもつ試料の例である試料S1がある場合の水平方向の構成(a)、試料S1のA-A方向(垂直方向)の断面図(b)の例である。この試料S1においては、ポリエチレン300の中に局所的に核物質Rが存在し、核物質Rの上下には空洞V(空気層)が存在している。ここでは、核物質R、空洞Vは左側に存在しているため、二次中性子成分220、一次中性子成分210の検出強度は、共にピークの前後で非対称となる。

【0034】
図7は、このような試料S1に対する、回転速度が2500rpmの場合の検出強度の変遷のシミュレーション結果であり、図7(a)は、一次中性子成分210と二次中性子成分220の検出強度を個別に算出した結果を示す。図7(b)はこれらを合算した結果を同様に示し、実際に中性子検出器30で測定されるカウント数に対応する。前記の通り、二次中性子成分220の検出強度は一次中性子成分210の検出強度と比べて大幅に低いため、図7(a)においては、各々に対する縦軸のスケールは異なっている。図8(a)(b)は、回転速度が10000rpmの場合のシミュレーション結果を図7(a)(b)と同様に示す。

【0035】
また、図9(a)(b)は、試料S1の構造が図6と左右方向で反転した場合、すなわち核物質R及び空洞Vが右側にある場合に、回転速度が2500rpmの場合の検出強度の変遷のシミュレーション結果を図7(a)(b)と同様に、図10(a)(b)は、これと同様の試料に対する10000rpmの場合の結果を同様に示す。前記の通り、実際に中性子検出器30で検出されるカウント数は、一次中性子成分210と二次中性子成分220の検出強度の和に対応するため、実際の測定結果に対応するのは、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)となり、この場合には、実際に検出される成分の大部分は一次中性子成分210となる。

【0036】
図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)のどの結果においても、試料S1の構造を反映し、一次中性子成分210の検出強度と二次中性子成分220の検出強度は共に中心の前後で非対称な形状となっている。また、核物質Rの位置を反映し、図7(a)、図8(a)では二次中性子成分220の検出強度は前側(左側)で高く、図9(a)、図10(a)においては後側(右側)で高くなっている。また、核物質Rの位置以外の試料S1自身の非対称性に起因して、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)における一次中性子成分210の検出強度も中心の前後で非対称となっており、図7(a)、図8(a)と図9(a)、図10(a)では、前後がほぼ逆転した形状となっている。また、前記の通り、一次中性子成分210の検出強度が二次中性子成分220の検出強度よりも大幅に高いため、実際に検出される結果に対応した図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)の形状は、それぞれ図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)における一次中性子成分210の検出強度の形状とほぼ対応する。このため、この場合には、例えば図8(b)、図10(b)におけるピークを挟んだ横軸上のある2点間のカウント数の差から、核物質の有無を判定することは困難である。

【0037】
ここで、図7(a)と図8(a)を比較すると、一次中性子成分210の検出強度と二次中性子成分220の検出強度については、回転速度の上昇に伴う形状の変化の程度が異なる。図7(a)と図8(a)において、一次中性子成分210の検出強度は、その絶対値は変わっても、その形状は大きくは変わらない。一方、図7(a)と図8(a)を比較すると、二次中性子成分220の検出強度の分布(ピーク)は、回転速度が高い図8(a)の場合には、後側(右側:遅延側)に移動する。実際の測定結果に対応する図7(b)、図8(b)において、前記のI/Iの比を算出した場合には、元の前後非対称な形状を反映して共にI/Iは1よりも小さくなり、図7(b)の場合に0.980、図8(b)の場合に0.988となる。すなわち、回転速度が高い場合に、二次中性子によってI/Iが大きくなることが確認できる。

【0038】
図9(a)、図10(a)においては、核物質Rの位置に起因して二次中性子成分220の検出強度のピークは後側にあるが、回転速度が高い図10(a)の場合には、更にピークが後側に移動している。一方、一次中性子成分210の検出強度の形状については、図9(a)と大差がない。このため、実際の測定結果に対応する図9(b)、図10(b)において、元の左右非対称な形状を反映して共にI/Iは1よりも大きくなり、図9(b)の場合に1.028、図10(b)の場合に1.036となる。すなわち、この場合においても、回転速度が高い場合に、二次中性子によってI/Iが大きくなることが確認できる。

【0039】
すなわち、試料S1の非対称な構造に起因して中性子検出器30のカウント数に非対称性が存在する場合においても、回転速度を高めた場合には、時間経過が後となる側(右側)において二次中性子によってカウント数が高まるという傾向は、試料Sの大きさが無視できる場合と同様に見ることができる。この場合には、図7~図10におけるピークを挟んだ横軸上のある2点間のカウント数の差から核物質の有無を判定することは困難であるが、ピークを挟んだ前後の領域におけるカウント数の積分値を用いたI/Iが回転速度の上昇に伴って大きくなる場合に、核物質Rが存在すると判定することができる。

【0040】
このため、図1の構成において、コンピューター40が円板20(モーター21)の回転速度を制御可能であることが好ましく、回転に伴う中性子検出器30のカウント数の変遷を回転速度毎に検出して、記憶し、これによってI/Iの回転速度依存性を認識できることが好ましい。

【0041】
具体的には、回転速度が低い場合のI/Iの値をIRL、回転速度が高い場合のI/Iの値をIRHとし、IRH>IRL、(あるいはIRH-IRL>b、ここで、bはb>0であり予め定められた定数)の場合に、試料Sに核物質が存在すると認識することができる。あるいは、上記のような距離が最小となる点の前後の非対称性を数値的に評価する他の手法を用いてもよい。この場合においても、回転速度の上昇と共にこの非対称性が増大した場合に、核物質が存在すると認識することができる。

【0042】
なお、上記の例では、中性子線源10を移動させて中性子線源10と試料Sとの間の距離を変化させるために回転する円板20が用いられたが、中性子線源10の移動方法として、各種の方法を用いることができる。例えば、中性子源10を直線上あるいは平面上で往復運動(振動)させることによって、上記と同様に中性子線源10と試料Sとの間の距離を変化させてもよい。この際、上記の円板20を用いた場合と同様に、距離が最小となる点の前後での動きがこの点に対して対称となるようにすれば、上記と同様の測定を行い、同様の判定をすることができる。また、こうした場合においても、この運動を周期的な振動として行わせれば、その振動の位相毎に検出結果を積分することができる。

【0043】
あるいは、上記のような中性子線源10と試料Sの位置関係が実現できる限りにおいて、中性子線源10を固定し、試料Sを移動させてもよい。あるいは、両者を共に移動させてもよい。

【0044】
なお、上記の例では、中性子検出器30の検出強度(カウント数)は図3(c)の状態、すなわち、試料Sと中性子源10の距離が円板20の回転に伴って最小となる状態で最大になるものとした。しかしながら、中性子源を移動させる移動手段の構成や核物質の試料中の存在位置等により、この距離が最小となる状態で検出強度が最大になるとは限らない。また、場合によっては検出強度のピークが複数存在する場合もありうる。こうした場合においては、本願発明においては、距離が極小となった状態の前後の非対称性を評価するのではなく、距離の変動に際して検出強度が極大となった状態の前後の非対称性を前記と同様に評価すればよい。

【0045】
なお、上記の例においては、中性子(一次中性子)を吸収した核物質が核反応(核分裂)によって新たに中性子(二次中性子)を発するものとした。しかしながら、放射線(一次放射線)を吸収することによる反応で他の放射線(二次放射線)を発する放射性物質(核物質)の有無を放射線検出器を用いて検知する際に、二次放射線と一次放射線とが放射線検出器で区別なく同様に検出される場合には、上記の構成を同様に用いることができる。すなわち、上記の一次中性子、二次中性子の代わりに、他の放射線(γ線等)を検出して放射線を発する核物質を検知する場合においても、上記の構成は有効である。この際、一次放射線と二次放射線とが同様に放射線検出器で検出される限りにおいて、一次放射線と二次放射線の種類が異なっていてもよい。この場合において、一次放射線と二次放射線が放射線検出器で弁別可能な場合であっても、上記の構成によれば、この弁別を行う必要はないため、信号処理が容易となる。この際に、一次放射線を発する放射線源として、パルス状の放射線を発するものを用いることが不要であり、安価な放射線源(例えば放射性同位元素)を用いることができるため、装置を安価とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
10、110 中性子線源(放射線源)
20 円板(回転体:移動手段)
20A 回転軸
21 モーター(移動手段)
30、150 中性子検出器(放射線検出器)
40 コンピューター(判定手段)
100 容器
120、200 中性子線(放射線)
130、210 一次中性子成分
140、220 二次中性子成分
300 ポリエチレン
R 核物質
S、S1 試料
V 空洞
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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