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Specification :(In Japanese)耐ストレス評価方法およびその装置

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2020-076753A
Date of publication of application May 21, 2020
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)耐ストレス評価方法およびその装置
IPC (International Patent Classification) G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C12Q   1/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
FI (File Index) G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
G01N 33/68
G01N 33/53 M
C12Q 1/00 Z
C12Q 1/02
C12Q 1/68
Number of claims or invention 16
Filing form OL
Total pages 24
Application Number P2019-188645
Date of filing Oct 15, 2019
Application number of the priority 2018210614
Priority date Nov 8, 2018
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】早川 洋一
Applicant (In Japanese)【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
Request for examination (In Japanese)
Theme code 2G045
4B063
F-term 2G045AA29
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4B063QX05
Abstract (In Japanese)【課題】 マウスなどの哺乳類を用いることなく、高い分析精度で、低コストかつ迅速に耐ストレス性を評価できる耐ストレス評価方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 耐ストレス評価方法は、被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価方法であって、複数の昆虫の幼虫に被検物質を投与し、前記幼虫を1個体あたり1つの容器に収容し、前記幼虫を前記投与後2~36時間放置し、前記放置後に各容器にストレス刺激を付与し、前記ストレス刺激が付与された前記幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価する。
【選択図】図1
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価方法であって、
複数の昆虫の幼虫に被検物質を投与し、
前記幼虫を1個体あたり1つの容器に収容し、
前記幼虫を前記投与後2~36時間放置し、
前記放置後に各容器にストレス刺激を付与し、
前記ストレス刺激が付与された前記幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の耐ストレス評価方法において、
前記昆虫の幼虫が、完全変態型に属することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐ストレス評価方法において、
前記昆虫の幼虫が、麟翅目に属することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記昆虫の幼虫が、ヤガ科に属することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記状態が、各幼虫の体液中のN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体の存在量により計測されることを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記状態が、各幼虫の生存率により計測されることを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記状態が、各幼虫の抗酸化酵素、FoxO転写調節因子の遺伝子の発現レベル、および/またはミトコンドリアの脱分極により計測されることを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記ストレス刺激が、加熱、冷却、振動、および光照射のうちの少なくとも1つであることを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記幼虫が、同じ日齢であることを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
前記幼虫が、一定範囲内の体重を有することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
複数の幼虫に対して、皮下注射又は摂食を用いて、前記被検物質を投与することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の耐ストレス評価方法において、
さらに、培養細胞に前記被検物質を投与し、培養細胞のミトコンドリアの脱分極および/または活性酸素種の発生にも基づいて、被検物質の耐ストレス活性を評価することを特徴とする
耐ストレス評価方法。
【請求項13】
被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価装置であって、
被検物質を投与された複数の幼虫を1個体ずつ収容する複数の容器から構成される個体収容手段と、
前記個体収容手段の複数の容器を均等に並べて収容する容器収容手段と、
前記幼虫を前記投与後2~12時間放置後に各容器全体に均一にストレス刺激を付与するストレス刺激付与手段と、
前記ストレス刺激が付与された各幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする
耐ストレス評価装置。
【請求項14】
請求項13に記載の耐ストレス評価装置において、
前記個体収容手段が、前記各容器内の底部に、吸湿性を有する基材から構成され、前記幼虫を支持する支持部を備えることを特徴とする
耐ストレス評価装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の耐ストレス評価装置において、
前記個体収容手段が、前記各容器内の底部に、一または複数の柱状体から構成され、前記幼虫を支持する支持部を備えることを特徴とする
耐ストレス評価装置。
【請求項16】
請求項12~15のいずれかに記載の耐ストレス評価装置において、
前記ストレス刺激が、加熱、冷却、振動、および光照射のうちの少なくとも1つであることを特徴とする
耐ストレス評価装置。


Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物質の抗ストレス作用(耐ストレス活性)を評価する耐ストレス評価方法に関し、特に、低コストで簡便な評価を可能とする耐ストレス評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康への関心の高まりに伴い、世間で健康に良いとされている物質を実際に数値的に測定して評価したいというニーズが高い。特に、現代のストレス社会では、ストレス軽減のニーズが高いことから、抗ストレス作用(耐ストレス活性)を有する物質を簡易に測定して評価できる手法が望まれている。
【0003】
その背景として、近年、地球温暖化に象徴される自然環境の変化や複雑化する社会生活に起因する多様なストレスによる健康への影響は深刻化の一途を辿っていることが挙げられる。それ故、『ストレス緩和や抵抗性』に関する生命科学的研究は非常に重要な研究分野と言え、今後益々必要性に迫られることは疑う余地がない。
【0004】
一方、2005年の「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法)改正を受け、近年、動物愛護の観点から脊椎動物(特に、哺乳類)を用いる動物実験は厳しい規制の下に置かれている。したがって、急務のはずの「ストレスに関する研究」に、マウスを始め哺乳類を用いる実験が現在でも敷居は高く、さらに、今後は一層困難な状況が予想される。
【0005】
このようなストレスを低減する物質が簡易に評価できれば、ヒトにおける健康・美容を大幅に増進することができると考えられ、医薬やサプリメントとしての利用を目指す薬品、健康食品、美容品製造関連の企業にとって、非常に関心が高いものとなる。この他にも、このようなストレスを低減する物質が簡易に評価できれば、犬や猫などのペット動物においても、ストレスを低減することによって、健康的な状態が維持されて、商品価値を高めることも可能となる。しかし、そのような簡易な耐ストレス評価方法はこれまでのところ知られていない。
【0006】
例えば、従来の耐ストレス評価方法には該当しないが、マウスなどの哺乳類の代替を目的とした各種のスクリーニング方法を例示すると、カイコ成虫を用いて抗菌性を評価するスクリーニング方法は知られている(特許文献1参照)。また、カイコ成虫を用いて薬剤(マイトマイシンCおよびブレオマイシン)の副作用を緩和する活性を有する物質の評価方法も知られている(特許文献2参照)。また、カイコ成虫を用いて薬剤(高血糖抑制剤)を予防または改善する効果を有する物質の薬剤評価方法も知られている(特許文献3参照)。また、カイコ成虫を用いた毒性試験方法も知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2010-133975号公報
【特許文献2】特開2008-39415号公報
【特許文献3】特開2011-95194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、マウスなどの哺乳類を代替するスクリーニング方法は提案されているものの、依然として、被検物質の耐ストレス性を評価する手法は現在のところ見当たらない。これは、ストレスという未病状態を検出することは、すなわち致死前というセンシティブな状態を検出することであり、従来の各種のスクリーニング方法のように、マウスなどの哺乳類を代替しようとするものでは、致死量などの強毒性の有無を測定するという大雑把なレベルでの測定となっており、ストレスという定義もある意味不明確な未病状態を明確に測定して検出するには、マウスなどの哺乳類を用いない場合には困難なものとなっている。
【0009】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、マウスなどの哺乳類を用いることなく、高い分析精度で、低コストかつ迅速に耐ストレス性を評価できる耐ストレス評価方法およびその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、マウスなどの哺乳類に代替して、昆虫の幼虫に被検物質を投与し、ある特定の条件下でストレス刺激を与えたところ、安定かつ高精度に耐ストレス活性を新たに評価できることを見出した。さらに、これまで測定した被検物質の活性は、マウスと昆虫を使ったそれぞれの場合で良く相関する結果であることを確認している。既に、哺乳類でそのストレス緩和作用が確認されているN-アセチルシステインに関しても、本評価方法でその耐ストレス活性が確認された(後述の実施例7および図10参照)。したがって、本評価方法(本昆虫ストレス試験)は、新しいタイプの耐ストレス評価方法であり、その用途の一例としては、健康食品・サプリメント候補となる被検物質の効率的なスクリーニング方法が挙げられる。
【0011】
すなわち、本願に開示する耐ストレス評価方法は、被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価方法であって、複数の昆虫の幼虫に被検物質を投与し、前記幼虫を1個体あたり1つの容器に収容し、前記幼虫を前記投与後2~12時間放置し、前記放置後に各容器にストレス刺激を付与し、前記ストレス刺激が付与された前記幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価するものである。
【0012】
また、本願に開示する耐ストレス評価装置は、被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価装置であって、被検物質を投与された複数の幼虫を1個体ずつ収容する複数の容器から構成される個体収容手段と、前記個体収容手段の複数の容器を均等に並べて収容する容器収容手段と、前記幼虫を前記投与後2~12時間放置後に各容器全体に均一にストレス刺激を付与するストレス刺激付与手段と、前記ストレス刺激が付与された各幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価する評価手段と、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るストレス評価方法のフローチャートを示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るストレス評価装置の構成図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るストレス評価装置の支持部についての構成図を示す。
【図4】本発明の実施例1に係る耐ストレス評価方法のハスモンヨトウ幼虫へのN-アセチルチロシン投与後(注射後)の所定時間後のストレス負荷影響を測定した結果を示す。
【図5】本発明の実施例2に係る耐ストレス評価方法のカイコ幼虫への被検物質としてのN-アセチルチロシン投与後(注射後)の所定時間後のストレス負荷影響を測定した結果を示す。
【図6】本発明の実施例3に係る耐ストレス評価方法のキイロショウジョウバエ幼虫への被検物質としてのN-アセチルチロシン投与後(経口投与後)によるストレス負荷までの時間の影響を測定した結果を示す。
【図7】本発明の実施例4に係る耐ストレス評価方法のキイロショウジョウバエ幼虫への被検物質としてのN-アセチルチロシン投与後(経口投与後)の所定時間後のストレス負荷影響を抗酸化酵素遺伝子発現により測定した結果を示す。
【図8】本発明の実施例5に係る耐ストレス評価方法のキイロショウジョウバエ幼虫への被検物質としてのN-アセチルチロシン投与後(経口投与後)の所定時間後のストレス負荷影響をFoxO遺伝子発現により測定した結果を示す。
【図9】本発明の実施例6に係る耐ストレス評価方法のアワヨトウ幼虫への被検物質としてのN-アセチルチロシン投与後(注射後)によるストレス負荷までの時間の影響を測定した結果を示す。
【図10】本発明の実施例7に係る耐ストレス評価方法のアワヨトウ幼虫への被検物質としてのN-アセチルシステイン、N-アセチルチロシン、およびチロシン投与後(注射後)による耐ストレス活性を測定した結果を示す。
【図11】本発明の実施例8に係る耐ストレス評価方法に関して、培養細胞に被検物質を作用させた際の培養細胞に、ミトコンドリア内膜に電位依存的に結合する蛍光指示薬を用いた結果を示す。
【図12】本発明の実施例9に係る耐ストレス評価方法のアワヨトウ幼虫の発育ステージと体重の関連性についての結果を示す。
【図13】本発明の実施例10に係る耐ストレス評価装置における容器である測定用プラスチックチューブの底面の支持部の有無の影響について確認した結果を示す。
【図14】本発明の実施例11に係る耐ストレス評価方法であるアワヨトウ幼虫を用いたエシャレット抽出液の耐ストレス活性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態に係るストレス評価方法を、図1のフローチャートと合わせて説明する。

【0015】
本願の第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法は、被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価方法であって、複数の昆虫の幼虫に被検物質を投与し、前記幼虫を1個体あたり1つの容器に収容し、前記幼虫を前記投与後2~36時間放置し、前記放置後に各容器にストレス刺激を付与し、前記ストレス刺激が付与された前記幼虫の状態に基づいて、前記被検物質の耐ストレス活性を評価するものである。

【0016】
この耐ストレス活性とは、動物が受けるストレスに対する耐性(抵抗性)であれば特に限定されるものではないが、例えば、温度抵抗性、薬剤抵抗性、感染抵抗性、寄生抵抗性、及び傷害抵抗性から成る群より選択される少なくとも1つの抵抗性を対象に挙げることができる。

【0017】
この温度抵抗性としては、高温または低温における熱ストレスに対する抵抗性や、低温における熱ストレスに対する抵抗性が挙げられる。薬剤抵抗性としては、化学的または薬学的なストレス(例えば、除草剤や農薬などの曝露)に対する抵抗性が挙げられる。感染抵抗性としては、ウイルスや細菌による感染に対する抵抗性が挙げられる。寄生抵抗性としては、寄生虫の寄生に対する抵抗性が挙げられる。傷害抵抗性としては、外傷に対する抵抗性が挙げられる。

【0018】
(投与工程)
先ず、図1に示すように、複数の昆虫の幼虫に被検物質を投与する(S1)。

【0019】
この昆虫の幼虫の種類は、特に限定されないが、好ましくは完全変態型に属すること、すなわち幼虫が蛹を経て成虫になるものであり、例えば、アワヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、イネヨトウ、シロナヨトウ、フタオビコヤガ、ツマジロクサヨトウ、アフリカシロナヨトウ、カイコ、ショウジョウバエ、キイロショウジョウバエなどを挙げることができる。より好ましくは麟翅目に属することであり、例えば、アワヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、イネヨトウ、シロナヨトウ、フタオビコヤガ、ツマジロクサヨトウ、アフリカシロナヨトウ、カイコを挙げることができる。さらにデータのバラつきをより抑えて安定的な測定を行うという観点からは、前記昆虫の幼虫は、継代飼育が容易に可能となるヤガ科に属することであり、例えば、アワヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、イネヨトウ、シロナヨトウ、フタオビコヤガ、ツマジロクサヨトウ、アフリカシロナヨトウを挙げることができる。

【0020】
特に、累代飼育(経代飼育)してきたアワヨトウは、飼育も容易で生理的状態も安定したものである。分析に使う終齢幼虫は体長2cm以上はあり、その体腔内への薬剤の微量注入も可能である。また、短時間でも絶食させた幼虫の食欲は旺盛であることから、人工飼料と共に薬剤を経口投与することも容易である。

【0021】
この昆虫の幼虫は、その日齢は特に限定されないが、複数の昆虫の幼虫同士がほぼ同じ日齢であることが好ましく、例えば、6齢程度の日齢とすることができ、安定的で再現性の高い高精度の評価を行うことができる。

【0022】
この昆虫の幼虫は、その体重は特に限定されないが、一定範囲内の同じ体重であることが好ましく、例えば、誤差0.1g範囲(±0.05g範囲)の平均0.3gのアワヨトウを用いることができ、安定的で再現性の高い高精度の評価を行うことができる(後述の実施例参照)。

【0023】
被検物質の投与の種類については、注射投与、経口投与、及び噴霧投与から成る群より選択される投与を用いて、前記複数の昆虫の幼虫に導入する。注射投与では、昆虫の幼虫に針注射によって液状とした被検物質を注射する。経口投与では、被検物質を食品(または餌)として(或いは他の食品(または餌)に混合して)昆虫の幼虫に与えて摂食させる。噴霧投与では、液状の被検物質を霧吹きを用いて液滴化し、昆虫の幼虫に対して噴霧する。

【0024】
例えば、平均0.3gのアワヨトウを用いる場合には、その血液量100~150μlに対して被検物質の投与量1~10μlとすることが好ましい。これは、10μlより多いと、血液量に対して高比率となるためで出血の可能性が高まるためであり、また、この点において少ない投与量であることが望ましいものの投与量が少な過ぎると却って個体間の検出精度にバラつきが出易いためである。このような点から、さらに好ましい投与量は、4~5μlである。

【0025】
被検物質の投与にあたっては、特に限定されないが、被検物質を多段階に希釈した複数サンプルを用いることが好ましく、より評価精度を高めることができる。例えば、被検物質の希釈なしサンプル、10倍希釈サンプル、および100倍希釈サンプルの3段階を用意して、被検物質の耐ストレス性を評価する。この他にも、被検物質の特性に応じて、被検物質の希釈なしサンプル、5倍希釈サンプル、および10倍希釈サンプルの3段階や、被検物質の希釈なしサンプル、2倍希釈サンプル、および10倍希釈サンプルの3段階を用意することが可能である。

【0026】
(収容工程)
次に、幼虫を1個体あたり1つの容器に収容する(S2)。例えば、被検物質を注射や摂食により投与した幼虫を直径2~5cm/高さ5~15cm程度の円筒状の透明容器である試験管(プラスチックチューブ)に収容することができる。

【0027】
(放置工程)
次に、幼虫を前記投与後2~36時間放置する(S3)。より好適には2~12時間、さらに好適には4~6時間放置することである。このように、被検物質の投与から2~36時間放置することによって、抗ストレス性の各種成分(例えばN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体)が昆虫の幼虫の体内で循環して拡散して、耐ストレス活性を強化するために各種遺伝子の発現を活性化し抗ストレスに最適化された生理的状態が形成される。例えば、抗酸化酵素のスーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase(SOD))及びカタラーゼ遺伝子の発現が活性化するのは、その一例と言える。

【0028】
(ストレス刺激付与工程)
この放置後に、各容器にストレス刺激を付与する(S4)。このストレス刺激としては、特に限定されないが、加熱、冷却、振動、および光照射のうちの少なくとも1つを用いることができる。例えば、上述した試験管(プラスチックチューブ)ごと40~50℃程度のウォーターバスに浸けて数時間、例えば1時間の熱ストレスを均一に与えることができる。これらストレス刺激が全ての幼虫に対して均一に与えられることによって、これにより評価精度を高めることができる。

【0029】
対象区として生理塩水処理した幼虫では、この熱ストレス条件によって2日以内にほぼ100%の致死が確認されている。ストレス緩和あるいは耐ストレス活性増強効果等が期待される被検物質を処理した幼虫に同様の熱ストレスを与え、生存率を経時的に対象区と比較することによって、迅速かつ正確に供試サンプルの生理的効果を評価することが可能となる。

【0030】
(耐ストレス活性評価工程)
ストレス刺激が付与された幼虫の状態に基づいて、被検物質の耐ストレス活性を評価する(S5)。この評価対象の状態とは、各幼虫の状態が把握できるものであれば特に限定されないが、例えば、各幼虫の体液中のN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体の存在量により計測された状態や、各幼虫の生存率により計測された状態を用いることができる。この他にも、前記状態が、各幼虫の抗酸化酵素、FoxO転写調節因子の遺伝子の発現レベル、および/またはミトコンドリアの脱分極により計測されることもできる。抗酸化酵素としては、例えば、カタラーゼ、SOD1、およびSOD2から成る群から選択される少なくとも1つを用いることができ、確かに本実施形態における耐ストレス活性の評価に有用な指標であることが確認されている(後述の実施例参照)。

【0031】
N-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体とは、以下の化学式に示すN-アセチルチロシン化合物単体の場合や、N-アセチルチロシン化合物の類縁体単体の場合も対象として含まれ、またこれらの誘導体も対象に含まれ、さらにこれらの混合物も対象に含まれる。
【化1】
JP2020076753A_000003t.gif

【0032】
このような第1の実施形態に係る耐ストレス活性付与組成物としては、特に限定されないが、例えば、以下の一般式(I)で表されるものが含まれる。
【化2】
JP2020076753A_000004t.gif

【0033】
上記一般式(I)中、R1は、水素原子、アルカリ金属原子、およびアルキル基のうちのいずれかであり、R2は、アルキル基である。R1におけるアルカリ金属原子としては、ナトリウム原子、カリウム原子が挙げられる。R1におけるアルキル基としては、特に限定されないが、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10の低級アルキル基とすることができ、例えば、メチル基またはエチル基とすることができ、nは0~10の整数でありアルキル鎖の長さを示す。

【0034】
R2は、アルキル基であれば特に限定されないが、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、炭素数1~10の低級アルキル基とすることができ、例えば、メチル基またはエチル基とすることができる。

【0035】
例えば、このような組成物の一例としては、R1が各種置換されたものとして、以下の化学式に示すN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosineと表記されることもある)、N-アセチルチロシンナトリウム、N-アセチルチロシンカリウム、及びN-アセチルチロシンエチルエステルなどが挙げられる。
【化3】
JP2020076753A_000005t.gif

【0036】
また、例えば、上記化合物において、R2がメチル基やエチル基などのアルキル基である場合の一例としては、以下の化学式に示すものが挙げられる。
【化4】
JP2020076753A_000006t.gif

【0037】
また、例えば、上記化合物において、nが0の場合の一例としては、以下の化学式に示すものが挙げられる。
【化5】
JP2020076753A_000007t.gif

【0038】
例えば、上記化合物のうち、以下の化学式で示されるN-アセチル-L-(4-ヒドロフェニル)グリシン(N-acetyl L-(4-hydrophenyl)glycine)(別名: N-アセチル-オクスフェニシン(N-acetyl Oxfenicine))を例に挙げることができる。
【化6】
JP2020076753A_000008t.gif

【0039】
上記のN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体の発現レベルの変動について、被検物質の投与から2~36時間経過後、より好適には2~12時間、さらに好適には4~6時間経過後、抗酸化酵素(SOD)及びカタラーゼ遺伝子の発現がピーク的に活性化し、ストレス(例えば、注射投与の場合には痛みのストレス)が、ピークを超えて低下すると共に、N-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体が昆虫の幼虫の体内で循環して拡散して、体内濃度が安定化することとなり、耐ストレス活性を最適に発揮できる状態が形成され、正確な耐ストレス性を評価することができる。

【0040】
また、前記状態としては、上記のN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体以外にも、各幼虫の生存率により計測された状態を用いることができる。この生存率を用いる点については、従来のマウスなどの哺乳類の生存率を用いた場合には、時間やコストさらに動物保護に関する各種制約が必要となる手法となっていたが、本実施形態では各幼虫の生存率を用いることで、従来よりも短時間かつ低コストで耐ストレス活性を評価することが可能となる。この他にも、前記状態が、各幼虫の抗酸化酵素、FoxO転写調節因子の遺伝子の発現レベル、および/またはミトコンドリアの脱分極により計測されることもできる。抗酸化酵素としては、例えば、カタラーゼ、SOD1、およびSOD2から成る群から選択される少なくとも1つを用いることができる。ミトコンドリアの脱分極の確認方法としては、ミトコンドリア内膜に特異的に結合する蛍光プローブを用いて内膜の生理的状態を測定する方法、あるいは、ミトコンドリアから発生する活性酸素種を定量する方法があり、確かに本実施形態における耐ストレス活性の計測に有用な指標であることが確認されている(後述の実施例参照)。

【0041】
特に、ミトコンドリアに関しては、ミトコンドリアは、昆虫でも哺乳類でも本質的に類似の細胞内小器官である。従って、被検物質(ストレス緩和物質)の標的部位(作用点)が、ミトコンドリアであるということは、本耐ストレス活性評価装置による試験の結果は、哺乳類を用いる結果と同等といえる。

【0042】
このようなことから、昆虫の幼虫に対して被検物質を投与して被検物質の耐ストレス活性を評価した後に、さらに追加して、この被検物質を培養細胞に投与し、この培養細胞のミトコンドリアの脱分極および/または活性酸素種の発生にも基づいて、被検物質の耐ストレス活性を評価することで、耐ストレス評価方法の精度をさらに高めることができる。培養細胞としては、特に限定されないが、例えば、ショウジョウバエS2細胞を用いることが可能である。

【0043】
さらに、上述の耐ストレス活性評価工程に後続する工程の例としては、熱ストレス後の生存率の上昇効果や、N-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体の存在量の減少効果が認められた被検物質(サンプル薬剤)に対して、サンプル処理後の各種器官(脳や脂肪体(ヒトの肝臓に相当)等)におけるストレス関連遺伝子発現レベルの測定、あるいは、体液中の活性酸素や抗酸化活性を定量分析することが挙げられ、これによって、ストレス緩和(耐性増強)効果の主要因を解析することも可能となる。

【0044】
このように、本実施形態に係る耐ストレス評価方法は、高い分析精度で、低コストかつ迅速に、被検物質が耐ストレス活性物質にどの程度該当するかという耐ストレス性を評価できる。このように簡便な手法であることから、特にファーストスクリーニングにも適するものとなる。

【0045】
すなわち、一連の昆虫の幼虫を用いるストレス試験で有望な薬効を示すサンプルを同定した上で、マウスやラットを用いるストレス試験あるいは毒性試験を行い、さらに、最終的にはヒトでの臨床試験に供する。こうした健康食品・サプリメント製品の開発戦略は極めてコストパフォーマンスに優れたものであり、昆虫ストレス試験はその基盤となるスクリーニング手段として大変理想的な分析手段である。

【0046】
被検物質としては、特に限定されない。例えば、その一例として、N-アセチルシステイン、メトフォルミン、玉ネギ成分のクエルセチン4-グルコシド(Quercetin 4-glucoside)やクエルセチン3,4-ジグルコシド(Quercetin 3,4-diglucoside)、野菜(アスパラガス、エシャロット、タマネギ、茶など)抽出液など種々のものをアッセイしてその耐ストレス活性が確認されている(後述の実施例参照)。さらに、既に、哺乳類でそのストレス緩和作用が確認されている被検物質に関しても、本評価方法でその耐ストレス活性が確認されており、本評価方法によって、哺乳類に対する耐ストレス活性の評価が可能であることが確認されている(後述の実施例参照)。

【0047】
このように、本実施形態に係る耐ストレス評価方法が優れた効果を奏するメカニズムは、未だ詳細には解明されていないが、前記幼虫を前記投与後2~36時間放置することによって、被検物質が高い耐ストレス活性を有する場合には、生体内でストレス順応に関連するマスターコントロール的機構を作動させる内在性因子が作用してミトコンドリアを活性化し、一時的に活性酸素の上昇を誘発し、抗酸化酵素などの遺伝子発現上昇を誘起し、抗酸化酵素の活性化がもたらされ、昆虫体内での抗酸化活性が上昇し、この上昇した抗酸化活性が耐ストレス活性の基盤となり、結果として、生体内で所定の耐ストレス活性が確立されるものと推察され、この耐ストレス活性の程度に基づいて、各種の被検物質の耐ストレス活性を測定し評価することが可能になっているものと推察される。

【0048】
また、本実施形態に係る耐ストレス評価装置としては、上述の耐ストレス評価方法を実現できるものであれば特に限定されないが、例えば、図2に示すように、被検物質の耐ストレス活性を評価する耐ストレス評価装置10であって、被検物質を投与された複数の幼虫100を1個体ずつ収容する複数の容器11から構成される個体収容手段1と、個体収容手段1の複数の容器11を均等に並べて収容する容器収容手段2と、各容器11全体に均一にストレス刺激を付与するストレス刺激付与手段3と、ストレス刺激が付与された各幼虫100の状態に基づいて、被検物質の耐ストレス活性を評価する評価手段と、を備えるものである。

【0049】
この複数の容器11は、円筒状の透明容器であるガラス製試験管(あるいは、プラスチックチューブ)とすることができる。サイズは特に限定されないが、例えば、直径2~5cm/高さ5~15cm程度とすることができる。図2の拡大図に示すように、容器11の内部には、幼虫100を支える支持部12を底部に備えることも可能であり、支持部12により幼虫100の収納および取出しを容易化することができる。

【0050】
すなわち、図2の拡大図に示すように、この個体収容手段1が、各容器11内の底部に、一または複数の柱状体から構成され、この個体収容手段1内に幼虫100を支持する支持部12を備えることができる。この支持部12を構成する柱状体は、一つであってもよく、また複数であってもよい。また、この柱状体は、先端に向かって先細りするテーパー形状、円錐形状、棒状、または針状体でもよい。柱状体は、幼虫100のサイズに応じて自在に設計することが可能である。

【0051】
また、この支持部12は、上記の他にも、または上記の構成と共に、吸湿性を有する基材から構成されることも可能である。このような基材としては、紙基材や複数の発泡スチロール球が挙げられる。これにより、熱ストレスを受けている最中に、吐き出し液に幼虫100全身が浸漬される状態が回避されることとなり、幼虫100自身の吐き出した液による高湿度(極端な場合は、幼虫100が全身吐き出し液に浸食された状態)による幼虫100のダメージが軽減され、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0052】
この支持部12の基材として、例えば、図3(a)に示すように、折畳んだ紙から構成することができる。また、図3(b)に示すように、棒状に形成された紙から構成することができる。このような構成により、紙の吸湿性と、折畳み構造や棒状形状とによりこの支持部12に形成される空隙から、幼虫100の吐き出し液の幼虫100への到達が抑制され、幼虫100が自らの吐き出し液から受けるダメージが軽減され、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0053】
また、この支持部12の基材として、図3(c)に示すように、針状に形成された紙を用いると共に、この針状の紙の上面に幼虫100を載置する紙から構成される載置面12aを配設することができる。この構成により、さらに幼虫100の足場がこの載置面12aにより安定し、幼虫100が自らの吐き出し液から受けるダメージが軽減され、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0054】
また、この支持部12の基材として、図3(d)に示すように、丸めた紙や複数の発泡スチロール球で形成されると共に、上記載置面12aを配設することができる。この構成により、丸めた紙や複数の発泡スチロール球による広い表面積での高い吸湿性により、幼虫100の吐き出し液の幼虫100への到達が抑制され、幼虫100の吐き出し液の幼虫100への到達が抑制され、幼虫100が自らの吐き出し液から受けるダメージが軽減され、足場も安定し、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0055】
この他にも、この支持部12の基材として、図3(e)に示すように、多孔質性の基材を使うことで、その高い吸湿性により、幼虫100の吐き出し液の幼虫100への到達が抑制され、幼虫100が自らの吐き出し液から受けるダメージが軽減され、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0056】
また、その他の支持部12の形状としては、図3(f)に示すように、可撓性を有する不定形状とすることも可能である。また、図3(g)に示すように、逆円錐形状とすることも可能である。このように、幼虫の足場が柔軟性を有することや足場面積が広がることで、幼虫100の円滑に移動することができ、幼虫100が自らの吐き出し液から受けるダメージが軽減され、耐ストレス評価装置の評価精度をさらに高めることが可能となる。

【0057】
この容器収容手段2は、個体収容手段1の複数の容器11を均等に並べて収容する。並べ方は特に限定されず、容器11を偏りなく並べることによって、各容器11に与えられるのストレス負荷を均等化して、より精度の高い耐ストレス活性評価が可能となる。

【0058】
このストレス刺激付与手段3は、各容器11全体に均一にストレス刺激を付与する。このストレス刺激としては、特に限定されないが、加熱、冷却、振動、および光や紫外線照射のうちの少なくとも1つを用いることができる。例えば、図2に示すように、各容器11を浸漬する40~50℃程度のウォーターバスとすることができ、ウォーターバスから均一な熱気が継続的に発生することから、この40~50℃程度の熱ストレスを全ての幼虫100に対して均一に与えられることとなり、再現性の高い耐ストレス活性を高い精度で測定し評価することができる。

【0059】
この評価手段は、ストレス刺激が付与された各幼虫100の状態に基づいて、被検物質の耐ストレス活性を評価する。この評価対象とされる状態とは、各幼虫の状態が把握できるものであれば特に限定されないが、例えば、上述したような各幼虫の体液中のN-アセチルチロシン化合物及び/又はその類縁体の存在量により計測された状態、抗酸化酵素および転写調節因子FoxO遺伝子の転写レベルを計測された状態や、ミトコンドリアの脱分極状態、各幼虫の生存率により計測された状態を用いることができる。

【0060】
ある被検物質を幼虫に投与した場合に、生体内のストレス耐性が上昇された場合において、一時的にミトコンドリアの脱分極状態が発生し、ミトコンドリアから少量の活性酸素種の発生を伴うことも確認されている(後述の実施例参照)。このことから、被検物質におけるストレス耐性作用は、ミトコンドリアの機能を短時間弱めることによってなされているものと推察される。すなわち、ある被検物質を幼虫に投与した場合に、ミトコンドリアから少量の活性酸素種が発生することは、生体内でその後のストレス耐性が増強される引き金となっているものと推察される。

【0061】
以上のように、第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法ならびにその装置は、昆虫の幼虫を用いることによって、目的の健康食品・サプリメント候補サンプルのストレス緩和や抵抗性への効果を、数日間という短い期間で生死判定試験または所定物質の体内濃度変化によって評価でき、さらに、耐ストレス活性の鍵を握る各種遺伝子の発現レベルの変化を正確に測定することも可能となる。こうした昆虫の幼虫を用いる一連の分析は、上記の動物愛護管理法の枠外である為、如何なる管理組織の認可も必要とせずニーズに即した依頼分析を実施できる。また、マウスなどの哺乳類を用いる分析に比べ遥かに迅速且つ安価な分析を提供できる。

【0062】
ヒトと昆虫は形態的に非常に異なる動物ではあるが、最新のストレス関連研究は、ストレス緩和や耐性へのミトコンドリアの重要な関与を示唆していることから、細胞内小器官であるミトコンドリアがストレス緩和や耐性の鍵を握っているのであれば、少なくともストレス研究に関しては昆虫も十分にヒトのモデル実験動物となる。

【0063】
従って、第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法を用いることによって、目的の被検物質を先ずは昆虫の幼虫を用いて迅速且つ安価に分析し、好ましい結果が得られた場合は、哺乳類を用いて詳細な分析を行うという手順も可能となる。この点において、第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法は、ファーストスクリーニングとしての位置付けとして用いることが可能である。

【0064】
現在、健康や美容に悪影響となるストレスの緩和や抵抗性強化に有効な健康食品・サプリメントの需要が高く、今後、益々高まることが予想されることからも、第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法の用途は、広範に及ぶものである。

【0065】
例えば、第1の実施形態に係る耐ストレス評価方法によって、ある被検物質の耐ストレス活性が高いことが明らかとなった場合には、例えば、この新たに見出された被検物質を哺乳類に投与することによって、多様なあるいは各種のストレス状況下において、哺乳類の弱体化または劣化を抑制することが可能となる。例えば、そのようなストレス状況の一つである高温条件下において、哺乳類が、このような被検物質が投与されることにより、熱中症による弱体化または劣化に対する改善効果が期待できる。

【0066】
本発明の特徴を更に明らかにするため、以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。

【0067】
(実施例1)
ハスモンヨトウ幼虫を用いて所定時間経過後のストレス負荷影響を確認した。被検物質としてはN-アセチルチロシンを用いた。

【0068】
ハスモンヨトウ終齢1日目幼虫に各濃度0、0.01、0.1、1.0μmol/幼虫の被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射し、4時間後に43℃/1 hの熱ストレスを与えた。その後、普通の人工飼料入りの容器に移して、24時間後の生存率を測定した結果を図4に示す。得られた結果から、注射から4時間後ではN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)による耐ストレス活性が認められた。得られた結果から、幼虫を被検物質の投与後4時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め、被検物質を投与し、この投与後4時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定しやすくなることも確認された。

【0069】
(実施例2)
カイコ幼虫を用いて所定時間経過後のストレス負荷影響を確認した。被検物質としてはN-アセチルチロシンを用いた。

【0070】
カイコ終齢1日目幼虫に各濃度0、0.01、0.1、1.0μmol/幼虫の被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射し、4時間後に43℃/1 hの熱ストレスを与えた。その後、普通の人工飼料入りの容器に移して、24時間後の生存率を測定した結果を図5に示す。得られた結果から、注射から4時間後ではN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)による耐ストレス活性が認められた。得られた結果から、幼虫を被検物質の投与後4時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め、被検物質を投与し、この投与後4時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定しやすくなることも確認された。

【0071】
(実施例3)
次に、上述の図2で示した第1の実施形態に係る耐ストレス活性評価装置を用いて、キイロショウジョウバエ(Drosophila melangaster)の幼虫を用いるストレス測定プロトコルを確認した。被検物質としてはN-アセチルチロシンを用いた。

【0072】
(採卵)
1.ファルコンチューブにハエを投入
2.グレープジュース(ウェルチ社製)100ml、2gアガーを電子レンジで溶かす
3.スライドガラスに添加
4.ドライイーストを塗る
5.上記のスライドガラスをファルコンチューブに入れる
6.採卵時間は約4時間
7.採卵直後からがAEL0時間

【0073】
(幼虫採取)
1.ハエエサをすりつぶして練りエサをつくる
2.採卵から36時間後(AEL36時間)のプレートから幼虫(1齢幼虫)を練りエサに移す

【0074】
(被検物質N-アセチルチロシン(NAT)入りエサ実験)
1.ハエエサをすりつぶして練りエサをつくる
2.1.5g練りエサをシャーレに移す
3.150μlのサンプル物質入りPBSを加える。コントロールとしてPBS150μl加える。
4.スパチュラでよくなじませる
5.キイロショウジョウバエ幼虫を移す
6.一つのエサ(1.5g)に幼虫は最大60匹まで

【0075】
(熱ストレス実験)
1.恒温槽を設定温度に合わせる
2.密閉できるガラス瓶に練りエサを少量加える
3.幼虫(AEL90時間~100時間)を移す(1つのガラス瓶につき幼虫は35匹まで)
4.ガラス瓶にキイロショウジョウバエ幼虫を入れ、ウォーターバス内で致死ストレスを与える(38.5℃ 60分) (致死)

【0076】
(寿命アッセイ)
1.ハエエサ作成時の水をN-アセチルチロシン(各濃度)のPBSを加える
2.1チューブにつき25匹入れる(オス、メスは分ける)
3.6~12時間毎に生死の幼虫数をチェック
4.2日に1回バイアルを変える

【0077】
得られた結果を、図6に示す。図6の結果から、キイロショウジョウバエ(Drosophila melangaster)の幼虫を用いて、N-アセチルチロシン(NAT:N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め、被検物質を投与し、この投与後2~36時間放置した後に、キイロショウジョウバエ幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定しやすくなることも確認された。

【0078】
(実施例4)
キイロショウジョウバエ幼虫を用いて所定時間経過後のストレス負荷影響を抗酸化酵素遺伝子発現により確認した。被検物質としてはN-アセチルチロシンを用いた。

【0079】
キイロショウジョウバエ幼虫に被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を経口投与し、所定時間(0、6、12時間)経過後、抗酸化酵素遺伝子発現を定量した。抗酸化酵素遺伝子発現レベルの有意な上昇が、被検物質N-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を12時間投与した区で認められた。この結果は、N-アセチルチロシン投与による耐ストレス活性上昇と顕著な相関を示している。得られた結果から、幼虫を被検物質の投与後12時間以上放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)と同様に、幼虫が体内に有する抗酸化酵素遺伝子発現を指標としても、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め被検物質を投与し、この投与後2~36時間、特に12時間以上放置した後に、幼虫が体内に有する抗酸化酵素遺伝子発現を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定できることも確認された。

【0080】
(実施例5)
キイロショウジョウバエ幼虫を用いて所定時間経過後のストレス負荷影響をFoxO遺伝子発現により確認した。被検物質としてはN-アセチルチロシンを用いた。

【0081】
キイロショウジョウバエ幼虫に被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を経口投与し、所定時間(0、6、12、24時間)経過後、図8の横軸は、当該所定時間を示す。FoxO遺伝子発現レベルの有意な上昇が、被検物質N-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を12時間投与した区で認められた。この結果は、N-アセチルチロシン投与による耐ストレス活性上昇と顕著な相関を示している。得られた結果から、幼虫を被検物質の投与後12時間以上放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)と同様に、幼虫が体内に有するFoxO遺伝子発現を指標としても、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め被検物質を投与し、この投与後2~36時間、特に12時間以上放置した後に、幼虫が体内に有するFoxO遺伝子発現を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定しやすくなることも確認された。

【0082】
(実施例6)
アワヨトウ終齢1日目幼虫に被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射し、所定時間(0、2、4、8、12、24時間)経過後、43℃/1 hの熱ストレスを与えた。その後、人工飼料入りの容器に移して、24時間経過の生存率を測定した結果を図9に示す。図9の横軸は、当該所定時間を示す。得られた結果から、2時間後から12時間後まではN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)による耐ストレス活性が認められた。得られた結果から、幼虫を被検物質の投与後2~36時間、特に2~12時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することが可能であることが確認された。また、この結果から、予め、被検物質を投与し、この投与後2~12時間放置した後に、幼虫が体内に有するN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の存在量を指標として、耐ストレス活性を測定することで、明確に耐ストレス活性を測定しやすくなることも確認された。

【0083】
(実施例7)
上記実施例6では、被検物質としてのN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の耐ストレス活性が確認された。特に、被検物質注射後、4時間経過後に熱ストレスを与えた場合に、最も高い耐ストレス活性を示したので、これと同じ条件で、他の被検物質であるN-アセチルシステインおよびチロシンの耐ストレス活性を上記実施例6と同様にアワヨトウ幼虫の生存率から測定した。特に、N-アセチルシステインは、既に、哺乳類でそのストレス緩和作用が確認されていることから、本耐ストレス評価方法でその活性が実際に確認できるかを確かめたものである。得られた結果を図10に示す。図10の結果から、確かに、N-アセチルシステインが高い耐ストレス活性を示したことから、本耐ストレス評価方法によって、哺乳類に対する耐ストレス活性の評価が可能であることが確かに示された。

【0084】
(実施例8)
上記の図10にあるように、被検物質であるN-アセチルシステイン(N-acetylcysteine)とN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)は、耐ストレス活性評価装置による測定試験の結果、アワヨトウ幼虫への注射によって試験幼虫のストレス耐性を高める活性があることを確認した。

【0085】
これら被検物質のこうした生理活性の作用機構を解析した結果、培養細胞(ショウジョウバエS2細胞)にこれら被検物質を作用させた。この培養細胞にミトコンドリア内膜に電位依存的に結合する蛍光指示薬MitoRed(同仁化学社製)を用いた結果を図11に示す。この結果から、3時間後に一時的なミトコンドリアの脱分極を誘起することが明らかになった。

【0086】
この際、ミトコンドリアから少量の活性酸素種が発生したことも確認された。この少量の活性酸素種の発生が、生体内でその後のストレス耐性増強の引き金となっているものと推察される。従って、これら被検物質はミトコンドリアの機能を短時間弱めることによって、生体内のストレス耐性を上昇させることが明らかになった。尚、昆虫ストレス試験において、活性を示さなかったチロシンは、本培養細胞試験でも有意な変化を示さなかった。

【0087】
ミトコンドリアは、昆虫でも哺乳類でも本質的に類似の細胞内小器官である。従って、被検物質(ストレス緩和物質)の標的部位(作用点)が、ミトコンドリアであるということは、本耐ストレス活性評価装置による試験の結果は、哺乳類を用いる結果と同じ結果であることが示されている。

【0088】
なお、本試験結果は、上述のように、培養細胞にミトコンドリア内膜に電位依存的に結合するMitoRed(同仁化学社製)という蛍光指示薬を用いた結果であるが、この試薬に限定されず、生細胞内のミトコンドリアを染色するテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)色素等、同様の性質を持つ試薬であれば同様の結果をもたらす。このような試薬としては、TMRM (サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、MitoTracker(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、JC-1 ミトコンドリアアッセイ(マーカージーンテクノロジーズ社製)などが挙げられる。従って、本耐ストレス活性評価装置による試験と培養細胞ミトコンドリア試験を併用すれば、極めて正確に、かつ、効率よく被検物質(ストレス緩和物質)のスクリーニングを実施することが可能となる。

【0089】
(実施例9)
本耐ストレス評価試験に用いる幼虫の発育ステージと体重の関連性について、以下の確認を行った。上述の図2で示した第1の実施形態に係る耐ストレス活性評価装置を用いた。

【0090】
測定に用いる終齢1日目幼虫(アワヨトウ)の体重を揃えた場合(<0.05g)と揃えていない場合(<0.2g)の比較を行った。試験幼虫に0.1 μmol/幼虫のN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射し、4時間室温に放置後、44℃の熱ストレスを50分間与えた。生存率を20時間後に測定した。得られた結果を、図12に示す。得られた結果から、明らかに体重を揃えた前者の方が被検物質であるN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)の効果が明確に測定できる上に、誤差も有意に小さくなることが明確になった。この結果から、本耐ストレス評価試験に用いる幼虫は、発育ステージと体重をある一定範囲に揃えて用いることが、より好ましく重要であることが確認された。【0091】
(実施例10)
本耐ストレス評価試験に用いる複数の容器である測定用プラスチックチューブの底面の支持部の有無について確認した。上述の図2で示した第1の実施形態に係る耐ストレス活性評価装置を用いた。

【0092】
試験幼虫に0.1 μmol/幼虫のN-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射し、4時間室温に放置後、支持部のあるチューブあるいは無いチューブにそれぞれ入れて、44℃の熱ストレスを50分間与えた。生存率を20時間後に測定した結果を図13に示す。この支持部無しで試験幼虫をチューブ内に入れ熱ストレスを与えた場合、試験幼虫自身の嘔吐物(液)による悪影響も加わり、N-アセチルチロシン(N-acetyl L-tyrosine)を注射した幼虫においても生理塩水(PBS)注射幼虫以上の死亡率になることが明らかになった。この結果から、この支持部は、幼虫の収納および取出しを容易化する役割のみならず、さらに、本耐ストレス評価試験の精度を高めることが確認された。

【0093】
(実施例11)
次に、上述の図2で示した第1の実施形態に係る耐ストレス活性評価装置を用いて、アワヨトウの幼虫を用いて、被検物質として野菜(エシャレット)抽出液の耐ストレス活性評価を行った。

【0094】
分析に使う終齢のアワヨトウ幼虫は体長2cm以上のもので、誤差0.1g範囲(±0.05g範囲)の平均0.3gのアワヨトウを用いた。被検物質としてエシャレット抽出液について濃度希釈1/1、1/2、および1/10の3つのサンプルを作成した。各サンプルをアワヨトウの幼虫に注射して投与し、各投与後4時間後に、このアワヨトウ幼虫を直径2.2 cm/高さ9 cmのプラスチックチューブに入れてチューブごと44℃のウォーターバスに浸けて1時間の熱ストレスを与えた。2日後の生存率を確認した結果を図14に示す。対象区として生理塩水(PBS)処理したアワヨトウ幼虫も確認し、この熱ストレス条件によって2日以内にほぼ100%致死することが確認された。得られた結果から、エシャレット抽出液について特に濃度希釈1/1および1/2のサンプルにおいて高い生存率を示したことから、高い耐ストレス活性を有することを簡単に確認することができた。

【0095】
このように、ストレス緩和あるいは耐性増強効果が期待されるサンプル薬剤を処理した幼虫に同様の熱ストレスを与え、生存率を経時的に対象区と比較することによって、迅速かつ正確に供試サンプルの生理的効果を評価することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
1 個体収容手段
2 容器収容手段
3 ストレス刺激付与手段
10 耐ストレス評価装置
11 容器
12 支持部
12a 載置台
100 幼虫


Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
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(In Japanese)【図12】
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(In Japanese)【図13】
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(In Japanese)【図14】
13