TOP > 国内特許検索 > 配線構造 > 明細書

明細書 :配線構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-072184 (P2020-072184A)
公開日 令和2年5月7日(2020.5.7)
発明の名称または考案の名称 配線構造
国際特許分類 H01L  21/3205      (2006.01)
H01L  21/768       (2006.01)
H01L  23/522       (2006.01)
H01L  23/532       (2006.01)
H01L  23/14        (2006.01)
FI H01L 21/88 J
H01L 21/90 N
H01L 21/90 S
H01L 23/14 S
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-205406 (P2018-205406)
出願日 平成30年10月31日(2018.10.31)
発明者または考案者 【氏名】篠嶋 妥
【氏名】ヤズダン ザーレ
【氏名】大貫 仁
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
【識別番号】100194283、【弁理士】、【氏名又は名称】村上 大勇
審査請求 未請求
テーマコード 5F033
Fターム 5F033JJ08
5F033JJ11
5F033JJ19
5F033MM01
5F033MM30
5F033NN06
5F033NN07
5F033PP27
5F033PP28
5F033QQ48
5F033TT07
5F033WW00
5F033XX19
要約 【課題】シリコン基板中に配線層が埋め込まれて構成された配線構造において、熱サイクルの際の配線層が塑性変形して突出することを抑制する。
【解決手段】このためには、熱サイクルに際しての配線層に加わる最大応力を小さくして配線層の塑性変形の抑制をするようにバリア層を設定することが有効である。具体的には、バリア層としてヤング率の小さな材料を用いることが好ましい。このような材料として、有機材料がある。図6は、バリア層をこの有機材料(厚さ0.5μm)の単層構造とした場合(1)、ならびに有機材料層の内側もしくは外側あるいは両側に硬質膜を配置して多層構造とした場合(2~4)と、Tiで構成されたバリア層を用いた場合(0)における、温度サイクル(1サイクル)を印加した場合の温度と配線層の突出量の関係を計算した結果である。この結果より、この有機材料をバリア層として用いた場合には、配線層の塑性変形が抑制されるために、熱サイクル印加後の突出量Pをほぼ零とすることができる。
【選択図】図6
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン(Si)を主成分とし、孔部が形成された基板と、
前記孔部の中に埋め込まれて形成され、銅(Cu)を主成分として構成された配線層と、
前記孔部の深さ方向に沿った内面と前記配線層との間に形成され、ヤング率が1GPa以下、かつポアソン比が0.40以下である軟質バリア層と、
を具備することを特徴とする配線構造。
【請求項2】
前記軟質バリア層のヤング率が100MPa以下とされたことを特徴とする請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
前記軟質バリア層の熱膨張係数が1×10-5/K以下とされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線構造。
【請求項4】
前記軟質バリア層は有機材料で構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項5】
前記軟質バリア層は空孔を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項6】
前記内面と前記軟質バリア層との間、前記配線層と前記軟質バリア層との間の少なくともいずれかに、ヤング率が前記軟質バリア層よりも大きな硬質バリア層を具備することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項7】
前記硬質バリア層は金属材料で構成されたことを特徴とする請求項6に記載の配線構造。
【請求項8】
前記孔部は前記基板を貫通しないように形成され、
前記孔部の底面と前記配線層との間に前記軟質バリア層を具備することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項9】
前記孔部は前記基板を貫通しないように形成され、
前記孔部の底面と前記配線層との間に前記硬質バリア層を具備することを特徴とする請求項6又は7に記載の配線構造。
【請求項10】
前記孔部は前記基板を貫通して形成され、
前記配線層は、前記基板の両主面の間の電気的接続に使用されることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の配線構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンで構成された基板中に形成された孔部に、銅を主成分として構成された配線層が埋め込まれた構成を具備する配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路では、シリコン基板の表面において形成された半導体素子(トランジスタ等)同士を電気的に接続するための微細な配線が多く形成されている。一方、近年では、これとは異なり、シリコン基板を貫通しその厚さ方向の電流の経路となるシリコン貫通電極(TSV:Trough Silicon Via)も用いられている。TSVにより、TSVが形成されたシリコン基板の表面側と裏面側の素子やチップを電気的に接続することができる。
【0003】
一般的に、TSVは、シリコン基板中に形成された貫通孔中に導電性の材料で構成された配線層がめっき等の方法によって埋め込まれて形成される。この配線層を構成する材料としては、電気抵抗率が低い銅が主に用いられる。また、銅のシリコン基板への拡散を防止するため、あるいはこの配線層とシリコン基板との間の絶縁性を確保するために、銅で形成された配線層と貫通孔の内面との間には、配線層とは異なる材料で構成されたバリア層が形成される。TSVの大きさ(例えば貫通孔の内径)は、一般的な集積回路上の配線のサイズと比べると大きく、その製造方法や構成はTSV特有のものが用いられ、その製造方法、具体的構成については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-138118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、TSVは、例えばシリコン基板の表面と配線層の表面とが同一平面上にある、あるいはシリコン基板の表面からの配線層の突出量がある小さな値に制御されるように製造され、この状態で、この配線層がシリコン基板の表面側、裏面側でそれぞれ他の配線と接続される。
【0006】
ここで、シリコン基板を構成するシリコン(Si)の熱膨張係数は例えば4×10-6/K程度であるのに対して、TSVの配線層を主として構成する銅(Cu)の熱膨張係数は例えば15×10-6/K程度であり、これらの値は大きく異なる。このため、TSVに熱サイクルが加わった場合には、高温時に配線層がシリコン基板よりも大きく膨張した後に低温で収縮する。この際、高温から低温となる際に配線層がシリコン基板の表面から突出した状態に塑性変形する、あるいはその突出量が大きくなるように塑性変形する場合があった。更に、TSVを形成する際には、銅の粒径制御等のために熱処理が行われるため、上記のような状況は、TSVの製造後だけでなく、TSVの製造工程の途中にも発生した。
【0007】
このように、TSVにおいて、配線層がシリコン基板の表面から突出した場合、あるいは、この突出量が大きくなるように変化した場合には、シリコン基板の表面側と裏面側の配線との間のこの配線層を介した接続が不良となる場合があった。更に、このようにシリコン基板を貫通する配線層を具備する場合だけでなく、シリコン基板を貫通はしないが同様にシリコン基板の厚さ方向に埋め込まれて形成された配線層においても、同様であった。このため、シリコン基板中に配線層が埋め込まれて構成された配線構造において、熱サイクルの際に配線層が塑性変形して突出することを抑制することが望まれた。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の配線構造は、シリコン(Si)を主成分とし、孔部が形成された基板と、前記孔部の中に埋め込まれて形成され、銅(Cu)を主成分として構成された配線層と、前記孔部の深さ方向に沿った内面と前記配線層との間に形成され、ヤング率が1GPa以下、かつポアソン比が0.40以下である軟質バリア層と、を具備することを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記軟質バリア層のヤング率が100MPa以下とされたことを特徴とする。
本発明の配線構造は、前記軟質バリア層の熱膨張係数が1×10-5/K以下とされたことを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記軟質バリア層は有機材料で構成されたことを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記軟質バリア層は空孔を有することを特徴とする。
本発明の配線構造は、前記内面と前記軟質バリア層との間、前記配線層と前記軟質バリア層との間の少なくともいずれかに、ヤング率が前記軟質バリア層よりも大きな硬質バリア層を具備することを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記硬質バリア層は金属材料で構成されたことを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記孔部は前記基板を貫通しないように形成され、前記孔部の底面と前記配線層との間に前記軟質バリア層を具備することを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記孔部は前記基板を貫通しないように形成され、前記孔部の底面と前記配線層との間に前記硬質バリア層を具備することを特徴とする。
本発明の配線構造において、前記孔部は前記基板を貫通して形成され、前記配線層は、前記基板の両主面の間の電気的接続に使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されているので、シリコン基板中に配線層が埋め込まれて構成された配線構造において、熱サイクルの際に配線層が塑性変形して突出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】計算において想定された配線構造の基本的構成を示す平面図(上)、断面図(下)である。
【図2】熱サイクルが印加された場合における配線層の突出量の変化を模式的に示す図である。
【図3】計算において用いられた各種材料の物性値である。
【図4】従来の配線構造の熱サイクル(1サイクル)に際しての配線層の突出量の変化を算出した結果である。
【図5】従来の配線構造の熱サイクル(10サイクル)に際しての配線層の突出量の変化を算出した結果である。
【図6】本発明の実施の形態に係るバリア層(単層構造、多層構造)を用いた配線構造と従来の配線構造の、熱サイクルに際しての配線層の突出量の変化を比較した図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るバリア層(単層構造、多層構造)を用いた配線構造と従来の配線構造における高温時の配線層の突出量Pの印加熱サイクル数依存性を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るバリア層(単層構造、多層構造)を用いた配線構造と従来の配線構造における室温時の配線層の突出量Pの印加熱サイクル数依存性を示す図である。
【図9】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=1×10-6/Kの場合)である。
【図10】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=5×10-6/Kの場合)である。
【図11】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=1×10-5/Kの場合)である。
【図12】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=5×10-5/Kの場合)である。
【図13】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=1×10-4/Kの場合)である。
【図14】配線層の突出量P(a)、P(b)のポアソン比依存性をヤング率毎に算出した結果(熱膨張係数=3.3×10-4/Kの場合)である。
【図15】配線層の突出量P(a)、P(b)のヤング率依存性を熱膨張係数毎に算出した結果(ポアソン比=0.34の場合)である。
【図16】配線層の突出量P(a)、P(b)の熱膨張係数依存性をヤング率毎に算出した結果(ポアソン比=0.34の場合)である。
【図17】配線層の突出量P(a)、P(b)のヤング率、熱膨張係数(CTE)依存性を算出した結果(ポアソン比=0.34の場合)の3次元プロットである。
【図18】単層構造の軟質バリア層を用いる場合の配線構造の第1の例である。
【図19】多層構造(第2の例:2層構造)のバリア層を用いる場合の配線構造の例である。
【図20】多層構造(第3の例:2層構造)のバリア層を用いる場合の配線構造の例である。
【図21】多層構造(第4の例:3層構造)のバリア層を用いる場合の配線構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る配線構造について説明する。この配線構造においては、配線層とシリコン基板との間に設けられるバリア層、特にその物性値の設定に特徴を有する。この配線構造の構造を示す平面図(上)及びその中心軸に沿った断面図(下)である。この配線構造においては、シリコン(Si)で構成された基板(シリコン基板)10中に形成された孔部10A中に、薄いバリア層20を介して、銅(Cu)で構成された配線層30が埋め込まれている。図1に示された構成自身は、周知の配線構造と同様である。この構造は、例えば、周知のように、基板10に孔部10Aを形成した後で、バリア層20を構成する材料、配線層30を構成する材料(銅)を連続して成膜した後で、CMP(化学機械研磨)等を行うことによって、製造することができる。この場合、図1における断面図(下側)に示されるように、基板10の表面(上面)と配線層30の表面(上面)とが同一平面上にある形態とすることができる。実際には配線層30は図1の構造の上面側に設けられた他の配線(図示せず)と接するように形成され、図1の状態でこの接触が行われるように構成される。ただし、これらが完全に同一平面上にある必要はなく、実際には配線層30の基板10の表面からの突出量が予め定まった一定値以下であればよい。

【0013】
ここで、基板10を構成するSiの熱膨張係数は4×10-6/K程度であるのに対して、配線層30を構成するCuの熱膨張係数は15×10-6/K程度であり、これらの値は大きく異なる。このため、図1の配線構造に熱サイクル(低温→高温→低温)を印加した際の状況を図2に模式的に示す。ここで、図2(d)は、時間経過に対する温度変化の状況を模式的に示す図であり、この中におけるA、B、Cの時点の状況が図2(a)~(c)にそれぞれ模式的に示されている。図2(a)~(c)は図1下側に対応する図であり、ここでは、バリア層20の記載は省略されている。

【0014】
まず、初期状態である図2(a)(図2(d)におけるA)においては、図1下側に示されるように、配線層30と基板10の表面は同一平面を構成している(配線層30の突出量が零である)ものとする。この状態で温度が上昇した図2(b)(図2(d)におけるB)においては、上記のように配線層30の熱膨張率が基板10の熱膨張率よりも大きいために、配線層30が基板10の表面から大きく突出する(突出量P)。その後、温度が低下した場合には、配線層30は図2(b)の状態から収縮をするためにこの突出量は減少する。バリア層20が存在せず配線層30の外側が自由な表面となっている場合には、配線層30の膨張、収縮は弾性変形の範囲で行われるため、温度が再び室温となった場合(図2(d)におけるC)には、図2(a)の状態、すなわち、配線層30の突出量は零となる。

【0015】
しかしながら、図1の構造においては、配線層30の膨張、収縮の際には、その外側の構造(材料)の影響を受ける。特に、この膨張の際に、配線層30はバリア層20の存在により応力を受け、この応力が銅(配線層30を構成する材料)の降伏応力を超えた場合には、配線層30が塑性変形をする。このように配線層30がバリア層20の存在により熱サイクルに際して塑性変形をする場合には、再び低温となった図2(d)におけるCの状態では図2(c)に示されたように、一般的には配線層30の突出量Pは零とはならない。

【0016】
図2においては、低温→高温→低温の熱サイクルが1回のみである場合について示されたが、このような熱サイクルが複数回印加される場合には、配線層30が突出した図2(c)の状態が次の熱サイクルに際しての初期状態となるため、図2(c)における配線層30の突出量Pが熱サイクルの印加回数に応じて累積され、増大する。実際にこの配線構造が使用された半導体装置の使用時においてこのような熱サイクルが印加されることもあるが、それ以前の段階の製造時において使用された各種の熱処理工程がこのような熱サイクルとなる場合もある。

【0017】
このため、配線の接続の信頼性を高めるためには、特に図2(c)の状態における突出量Pを零に近づける(図2(a)の状態に近づける)ことが必要である。以下に、このような熱サイクルに際しての配線層30の突出量と、バリア層20の物性値の関係について有限要素法(FEM)によって調べた結果について説明する。ここで、基板10を構成する材料はSi、配線層30を構成する材料はCuでそれぞれ固定し、これらに対応した物性値が用いられた。

【0018】
図3は、上記の構造における各構成要素を構成する材料と、各材料において想定された物性値を示す表である。この計算で用いられた物性値としては、密度、比熱、ヤング率、ポアソン比、熱膨張係数、熱伝導率、降伏強度、接線弾性係数がある。この表において、一つの項目で複数の値が記載されているもの(銅の比熱等)においては、温度(単位℃)毎の値が温度(左側に記載)と共に右側に記載されている。表におけるreferenceは、http://www.azom.comに基づいた値であることを意味し、NAは該当物質が塑性変形しない(弾性変形のみが可能である)ことを意味する。また、計算において、図1の円筒形状の基板10における厚さT=200μm、直径D=100μm(円筒径)、円筒形状の配線層30においてH=100μm、D=20μmとされた。また、この計算において想定される熱サイクルは、図2(d)におけるA、Cの温度を室温(25℃)、Bの温度(高温)を300℃とした。

【0019】
シリコンの集積回路等において、一般的には配線に対するバリア層として、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)の金属材料やこれらの合金が広く用いられている。図4は、上記の条件において、バリア層20として厚さ3μmのチタンが用いられた場合における、上記の温度サイクル(1サイクル)を印加した場合の温度と配線層30の突出量の関係を計算した結果である。この特性において、突出量の初期値(初めの室温時における値)は零であり、温度が最大(300℃)となる点の突出量が図2(b)におけるPであり、再び温度が室温となった点の突出量が図2(c)におけるPである。突出量の時間経過は図中矢印で示されている。Pが零とならない、あるいは突出量にヒステリシス特性があるのは、温度上昇に伴う配線層30の膨張時に配線層30に加わった応力が銅の降伏強度を超えたために、配線層30が塑性変形したためである。この結果においては、P=0.27μm、P=0.208μmとなる。

【0020】
また、図5は、この熱サイクルを10回連続して印加した場合における突出量の変化を同様に示す。この場合においては、熱サイクル印加前の突出量(初期値)が零であるが、上記のように1サイクル後の突出量P>0となった状態が次のサイクル印加の初期値に対応するため、Nサイクル印加後のP、PをそれぞれP(N)、P(N)とすると、P(1)<P(2)< --- <P(10)、P(1)<P(2)< --- <P(10)となり、単純な積算とはならないものの、印加された熱サイクルのサイクル数に応じてP、Pは増大する。この結果においては、P(10)=0.38μm、P(10)=0.325μmとなり、1サイクルの結果(図4)よりも大きくなる。P、Pを共に小さくする(零に近づける)ことが好ましいが、例えば図5の結果より、1回の温度サイクル後のPを低減することによって、複数回の温度サイクル印加後あるいは印加途中での突出量を低減できることは明らかである。このため、1回の熱サイクル印加後の突出量Pを低減することが特に重要である。配線層30の塑性変形に起因して発生する突出量Pは、バリア層20の設定によって低減することが可能である。このため、本願発明の目的は、特にPを小さくする(零に近づける)ことである。

【0021】
このためには、熱サイクルに際しての配線層30に加わる最大応力を小さくし、配線層30の塑性変形の抑制をするようにバリア層20を設定することが有効である。具体的には、バリア層20としてヤング率の小さな材料を用いることが好ましい。このような材料として、図3中に示された有機材料がある。具体的には、ここで示されたような特性をもつ有機材料としては、パワー半導体素子の封止材料(製品名:ナノテクレジンKA-100、(株)ADEKA製)がある。

【0022】
以下に、このようなヤング率の小さな材料で構成されたバリア層(軟質バリア層)を用いた場合について、同様の計算を行った結果について説明する。ここで、このように軟質バリア層を用いる場合の形態として、第1の例(1)として図1におけるバリア層20をこの軟質バリア層単体で構成する場合と、バリア層20を軟質バリア層を含む多層構造とした場合がある。多層構造とする場合においては、第2の例(2)となる、図1における径方向内側に金属で構成された硬質バリア層、外側に軟質バリア層を設けた2層構造とした場合と、第3の例(3)となる、図1における径方向内側に軟質バリア層、外側に硬質バリア層を設けた2層構造とした場合と、第4の例(4)となる、軟質バリア層の内側と外側にそれぞれ硬質バリア層を設けた3層構造とした場合がある。

【0023】
ここで、軟質バリア層としては、上記の有機材料(厚さ0.5μm)を用い、(2)における内側の硬質バリア層は厚さ1μmのAl、(3)における外側の硬質バリア層は厚さ1μmのタングステン(W)、(4)における内側の硬質バリア層は厚さ0.5μmのAl、外側の硬質バリア層は厚さ0.5μmのWとした。図6は、このように軟質バリア層を用いた場合((1)~(4))における図4に対応した計算結果を示す。ここで、バリア層20としてTi単層を用いた場合の10サイクル印加の場合の図5の結果も図6において(0)として示されている。(1)~(4)の結果は1サイクルのみについて示されているが、後述するように、これらの特性は実際には複数サイクルにおいてもほぼ重複する。

【0024】
この結果より、少なくとも部分的に軟質バリア層が用いられた(1)~(4)の場合には、いずれもTi単層のバリア層20が用いられた(0)の特性とは異なり、突出量にヒステリシス特性が見られないために、Pが無視できる程度に小さくなる。また、図6においては,(1)(3)の結果、(2)(4)の結果にはそれぞれ有意差がなく、かつ(1)(3)の結果と(2)(4)の結果の差異も小さい。すなわち、軟質バリア層を用いることによるこうした特性は、その形態によらず主に軟質バリア層のみによって定まる。図6においてはいずれも(1)~(4)は1サイクルの結果が示されているが、Pはほぼ零となるため、複数サイクルを印加した場合でもPはほぼ零となり、Pはほぼ一定値となる。

【0025】
上記の突出量P、Pの印加サイクル数依存性を上記の(0)~(4)毎に示した結果が図7(P)、図8(P)である。図8より、軟質バリア層が用いられた上記の(1)~(4)の場合には、印加サイクル数によらずにPをほぼ零とすることができる。また、図7より、(1)~(4)の場合には、印加サイクル数が小さな場合には(0)と比べてPは大きくなるものの、印加サイクル数が大きな場合には、Pを(0)の場合よりも小さくすることもできる。すなわち、軟質バリア層を用いることは、印加サイクル数が多い場合にはPを小さくすることにも寄与する。

【0026】
以上の結果は、図3に示された各材料の物性値を用いた有限要素法によって得られた。次に、具体的な材料についての比較ではなく、単層構造のバリア層20における物性値の上記の特性に対する依存性について、上記と同様の手法により調べた。ここで着目した物性値は、図3の項目の中で上記の特性(配線層30の突出量)に特に大きな影響を与える量として、バリア層20のヤング率、ポアソン比、熱膨張係数である。図9(a)は突出量P、図9(b)は突出量Pのポアソン比依存性を、熱膨張係数を1×10-6/Kとした場合にヤング率毎に算出した結果であり、図10(a)、図10(b)は熱膨張係数を5×10-6/Kとした場合、図11(a)、図11(b)は熱膨張係数を1×10-5/Kとした場合、図12(a)、図12(b)は熱膨張係数を5×10-5/Kとした場合、図13(a)、図13(b)は熱膨張係数を1×10-4/Kとした場合、図14(a)、図14(b)は熱膨張係数を3.3×10-4/Kとした場合の同様の結果である。これらの図においては、グラフ中の各特性に付記された数字がヤング率である。

【0027】
図15(a)、図15(b)は、図9~14の結果において、ポアソン比を0.34と固定して、突出量P、Pのヤング率依存性を熱膨張係数毎に示した結果である。この図においては、グラフ中の各特性に付記された数字が熱膨張係数(1/K)である。図16(a)、図16(b)は、図9~14の結果において、ポアソン比を0.34と固定して、P、Pの熱膨張係数依存性をヤング率毎に示した結果である。この図においては、グラフ中の各特性に付記された数字がヤング率である。図17(a)、図17(b)は、図15(a)と図16(a)、図15(b)と図16(b)の結果を3次元プロットした結果である。

【0028】
これらの結果より、Pを小さくするためには、熱膨張係数によらず、ヤング率、ポアソン比は小さいことが好ましい。特に、どの結果を見ても、ヤング率が10GPaと1GPaの間の差異は大きいため、ヤング率を1GPa以下とすることが特に好ましい。また特に図16、17より、P,Pは熱膨張係数が大きな場合に顕著であるものの、ヤング率を100MPa以下とすることにより、熱膨張係数によらずにP、更にはPも小さくすることができる。このため、特に好ましいのは、ヤング率が100MPa以下、ポアソン比が0.40以下の範囲である。また、図16より、P、更にはPも小さくするためには、バリア層20の熱膨張係数は小さいことが好ましく、特に熱膨張係数を1×10-5/K以下とすることが好ましい。

【0029】
図3に示されるように、通常の配線材料でバリア層として用いられる金属材料(チタン、タングステン等)のヤング率は10GPa以上と大きい。これに対して、前記の有機材料のヤング率は上記のように低いため、特にこれをバリア層20あるいは軟質バリア層として好ましく用いることができる。

【0030】
また、バリア層20を構成する材料の微細構造によって、同様のヤング率、ポアソン比等を実現し、これを軟質バリア層とすることもできる。例えば、緻密な状態では高いヤング率を有する材料を、微細な空孔を多数有する形態(多孔質)の薄膜として成膜することによって、実質的に上記のような低いヤング率、ポアソン比を実現することができる。これによって、上記のような有機材料以外の材料を用いた軟質バリア層を実現することができる。

【0031】
このようなヤング率が小さなバリア層20(軟質バリア層)を使用する際の形態は、配線層の基板中における形態に応じて設定することができる。まず、バリア層20を上記のような軟質バリア層からなる単層構造とした場合の形態の代表的な例の断面構造を図18(a)~(c)に示す。図18(a)、図18(b)においては、孔部10Aは基板10を貫通せず、図18(c)においては、孔部10Aは基板10を貫通する。図1に示された通り、図6等の特性は、図18(a)の形態を仮定して算出された。しかしながら、上記のような配線層30の塑性変形に本質的に影響を及ぼすのは、配線層30とその側面における孔部10Aの内面との間のバリア層20である。このため、この部分に上記のバリア層20が形成された他の形態として、図18(b)のように、配線層30の底面側にはバリア層20を設けない構造をとることができる。また、TSVとして上記の配線構造を用いる場合には、孔部10Aを基板10を貫通するように形成し、孔部10Aの内面(側面)に上記のバリア層20を形成した図18(c)の構造をとることもできる。

【0032】
また、図6に示されたように、バリア層20として多層構造(2層以上)を用いた場合において、上記の効果はこの中に上記のようなヤング率の低い軟質バリア層を含ませれば得られる。この場合には、多層構造における軟質バリア層以外の層を、ヤング率の大きな材料で構成してもよい。これらの層(硬質バリア層))を構成する材料は、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、軟質バリア層と配線層30又は基板10との間の密着性を向上させるための介在層として、あるいは配線層30周囲の絶縁耐圧確保のために絶縁層として、この硬質バリア層を用いることができる。

【0033】
図19~図21は、このようにバリア層20を多層構造とした場合における形態の例を図18と同様に示す。図19、図20においては、バリア層20が2層構造とされ、上記のヤング率が低いバリア層(軟質バリア層201)の内側(図19)又は外側(図20)に金属等のヤング率の高い材料で構成された層(硬質バリア層:内側バリア層203、外側バリア層202)が設けられている。

【0034】
図19には、バリア層20が前記の軟質バリア層201と内側バリア層(硬質バリア層)203の2層構造とされ、図19(a)においては軟質バリア層201と内側バリア層203が孔部10A中で一様に成膜され、図19(b)、(c)においては、それぞれ孔部10Aの底面側で軟質バリア層201、内側バリア層203が形成されない形態とされている。図19(d)においては、孔部10Aの底面側で軟質バリア層201、内側バリア層203が共に形成されていない。図19(e)は、図18(c)と同様に、TSVに対応した構造を示す。

【0035】
図20には、バリア層20が前記の軟質バリア層201と外側バリア層(硬質バリア層)202の2層構造とされ、図20(a)においては軟質バリア層201と外側バリア層202が孔部10A中で一様に成膜され、図20(b)、(c)においては、それぞれ孔部10Aの底面側で外側バリア層202、軟質バリア層201が形成されない形態とされている。図20(d)においては、孔部10Aの底面側で軟質バリア層201、外側バリア層202が共に形成されていない。図20(e)は、図18(c)と同様に、TSVに対応した構造を示す。

【0036】
図21には、バリア層20が前記の軟質バリア層201、外側バリア層(硬質バリア層)202、内側バリア層(硬質バリア層)203からなる3層構造とされ、図21(a)においては軟質バリア層201、外側バリア層202、内側バリア層203が全て孔部10A中で一様に成膜され、図21(b)、(c)、(d)においては、それぞれ孔部10Aの底面側で外側バリア層202、軟質バリア層201、内側バリア層203が形成されない形態とされている。図21(e)においては孔部10Aの底面側で軟質バリア層201及び内側バリア層203が、図21(f)においては孔部10Aの底面側で外側バリア層202及び内側バリア層203が、図21(g)においては孔部10Aの底面側で外側バリア層202及び軟質バリア層201が、それぞれ形成されていない形態とされている。図21(h)においては、孔部10Aの底面側で軟質バリア層201、外側バリア層202、内側バリア層203が全て形成されていない。図21(i)は、図18(c)と同様に、TSVに対応した構造を示す。

【0037】
前記のように、軟質バリア層201は、Cuで構成された配線層30とSiで構成された孔部10A内の内面との間に存在すれば効果を奏するため、程度の違いは存在するものの、図19~21の全ての全ての構造において効果を奏する。この際、配線構造の目的や配線層30の他の配線への接続等の状況に応じて、いずれかの構造を用いることができる。この際、外側バリア層202、内側バリア層203を構成する材料としては、ヤング率等によらず、金属や絶縁体を用いることができる。

【0038】
なお、図18~21に示された構造においては、配線層30の側面と孔部10Aの内面の間の深さ方向の全域にわたり軟質バリア層201が形成されているものとした。しかしながら、その効果は小さくなるものの、深さ方向の一部においてのみ軟質バリア層201を設けてもよい。また、図1においては、孔部10A及び配線層30の平面形状が円形であるものとした。しかしながら、この形状は任意であり、シリコンで構成された基板中の孔部に埋め込まれた配線層が用いられる限りにおいて、同様に上記のバリア層(軟質バリア層)を用いることができる。

【0039】
また、上記の例では、配線層30は銅(Cu)で構成されるものとした。しかしながら、配線層30が純銅で構成されず銅を主成分とする銅合金で構成された場合であっても、その物性が銅と大差のない場合には、上記の構成が同様に有効であることは明らかである。
【符号の説明】
【0040】
10 基板(シリコン基板)
10A 孔部
20 バリア層
30 配線層
201 軟質バリア層
202 外側バリア層(硬質バリア層)
203 内側バリア層(硬質バリア層)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20