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Specification :(In Japanese)口腔癌判定装置、口腔癌判定方法、プログラム及び口腔癌判定キット

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2020-068673A
Date of publication of application May 7, 2020
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)口腔癌判定装置、口腔癌判定方法、プログラム及び口腔癌判定キット
IPC (International Patent Classification) C12M   1/34        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C12Q   1/6813      (2018.01)
C12Q   1/686       (2018.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI (File Index) C12M 1/34 ZNAB
G01N 33/53 M
C12Q 1/6813 Z
C12Q 1/686 Z
C12N 15/113 Z
Number of claims or invention 8
Filing form OL
Total pages 26
Application Number P2018-203289
Date of filing Oct 29, 2018
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】中村 康大
【氏名】杉浦 剛
【氏名】浜田 倫史
Applicant (In Japanese)【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4B029
4B063
F-term 4B029AA07
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC08
4B029CC11
4B029FA01
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
Abstract (In Japanese)【課題】低侵襲で、かつ高い精度で口腔癌を判定できる口腔癌判定装置、口腔癌判定方法、プログラム及び口腔癌判定キットを提供する。
【解決手段】口腔癌判定装置100は、被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて被験者の口腔癌を判定する判定部1を備え、microRNAは、下記表1に示される群から選択される少なくとも1つである。
JP2020068673A_000020t.gif
【選択図】図1
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定部を備え、
前記microRNAは、
下記表1:
【表1】
JP2020068673A_000016t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである、
口腔癌判定装置。
【請求項2】
前記microRNAは、
hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-5100及びhsa-miR-144-3pの少なくとも1つであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量を基準値と比較することによって、前記被験者における口腔癌の有無を判定する、
請求項1に記載の口腔癌判定装置。
【請求項3】
前記microRNAは、
hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-24-3p及びhsa-miR-5100の少なくとも1つであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量を基準値と比較することによって、前記被験者における口腔癌の予後を判定する、
請求項1又は2に記載の口腔癌判定装置。
【請求項4】
前記microRNAは、
前記表1に示される群から選択されるhsa-miR-24-3p、hsa-miR-4419a及びhsa-miR-5100と、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-122-5p及びhsa-miR-150-3pとであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量及び該発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報を、それぞれ説明変数に対応する情報及び目的変数に対応する情報とする教師あり学習で構築されたモデルによって、前記被験者の前記microRNAの発現量から前記被験者における口腔癌の有無を判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の口腔癌判定装置。
【請求項5】
前記microRNAは、
前記表1に示される群から選択されるhsa-miR-423-5p及びhsa-miR-5100と、hsa-miR-150-3pとであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量及び該発現量に対応する口腔癌の予後を示す情報を、それぞれ説明変数に対応する情報及び目的変数に対応する情報とする教師あり学習で構築されたモデルによって、前記被験者の前記microRNAの発現量から前記被験者における口腔癌の予後を判定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の口腔癌判定装置。
【請求項6】
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定ステップを含み、
前記microRNAは、
下記表2:
【表2】
JP2020068673A_000017t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである、
口腔癌判定方法。
【請求項7】
コンピュータを、
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定部として機能させ、
前記microRNAは、
下記表3:
【表3】
JP2020068673A_000018t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである、
プログラム。
【請求項8】
被験者の体液試料におけるmicroRNAを定量する試薬を備え、
前記microRNAは、
下記表4:
【表4】
JP2020068673A_000019t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである、
口腔癌判定キット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔癌判定装置、口腔癌判定方法、プログラム及び口腔癌判定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
世界で毎年28万人が口腔癌に罹患する。口腔癌の患者は年々、増加傾向にある。多くの場合、口内炎に類似した前癌病変が癌化し口腔癌となる。初期には自覚症状に乏しく、類似した症状を呈する他の疾患が多くあることから、口腔癌は早期発見が難しい癌である。口腔癌の5年生存率は約65%である。口腔癌の早期発見によって、術後予後の改善が見込まれ、5年生存率の増加が期待される。口腔を対象とする外科手術での癌の切除によって、審美的な障害に加え、咀嚼、嚥下及び構音等の機能障害を遺すことがある。生存予後及び機能温存の両方の観点からも、口腔癌の早期発見の意義は極めて大きい。
【0003】
口腔癌の確定診断を得るためには、組織を切除して検査する生検しか方法がない。生検は侵襲的な検査であるため、出血及び治癒不全等のリスクを伴い、被験者に負担を強いることになる。被験者の負担を軽減するため、組織を切除するよりも低侵襲である液体生検の利用が考えられる。
【0004】
液体生検では、体液、例えば血液、尿及び唾液等における癌に関連する腫瘍マーカーが定量される。口腔癌の腫瘍マーカーとしては、扁平上皮癌関連抗原(SCC)及び癌胎児性抗原(CEA)が知られている。しかし、口腔癌におけるSCC及びCEAの陽性率は10~30%であり、検出精度が低い。また、SCC及びCEAによって早期の口腔癌が検出されることはほとんどない。
【0005】
液体生検の標的となる腫瘍マーカーとして、血中循環腫瘍DNA及びmicroRNA(以下、「miRNA」ともいう)等の腫瘍核酸が挙げられる。腫瘍核酸を標的とした液体生検は、低侵襲であるため、経時的に変化する腫瘍の性状をリアルタイムに監視する方法として有用である。さらに、腫瘍の性状として腫瘍の遺伝子プロファイリングを経時的に監視することは、遺伝情報、生活様式及び環境に基づいて同一疾患の患者を精緻にグループ化し、各グループに最適な治療法を最適な時期に選択していく最適治療(プレシジョンメディシン)においても有利である。
【0006】
miRNAは、18~22塩基程度の1本鎖RNAである。ヒトには2656種のmiRNAが存在し、約800種のmiRNAが癌関連遺伝子の発現を制御している。特許文献1には、病状等を同定するためのバイオマーカーとして多数のmiRNAが開示されている。また、特許文献2には、乳癌を除く癌のマーカーとして、2種のmiRNAが示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2014-522993号公報
【特許文献2】特開2015-51011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、口腔癌の液体生検で腫瘍マーカーとして用いられるSCC及びCEAは口腔癌の検出精度が低く、口腔癌を高精度に検出できる腫瘍マーカーは未だ見いだされていない。特許文献1には、前立腺癌及び肺癌等とmiRNAとの関連が示されている。一方、特許文献2では、大腸癌、胆嚢癌、胃癌及び肝臓癌等とmiRNAとの関連が示されている。しかし、特許文献1及び特許文献2では、口腔癌については何ら検討されていない。口腔癌で有効な液体生検の腫瘍マーカーがない以上、現状では、被験者の負担が大きい侵襲的な検査である生検を行わざるを得ない。
【0009】
さらに、口腔癌に関しては、術後の再発リスク等の予後を予測する検査方法が実用化されていない。低侵襲な検査方法であればリアルタイムに監視できるため、腫瘍の形質変化のタイミングと原因の両方を予測でき、より適切な治療法の選択が可能となる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、低侵襲で、かつ高い精度で口腔癌を判定できる口腔癌判定装置、口腔癌判定方法、プログラム及び口腔癌判定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る口腔癌判定装置は、
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定部を備え、
前記microRNAは、
下記表1:
【表1】
JP2020068673A_000003t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである。
【0012】
この場合、前記microRNAは、
hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-5100及びhsa-miR-144-3pの少なくとも1つであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量を基準値と比較することによって、前記被験者における口腔癌の有無を判定する、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記microRNAは、
hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-24-3p及びhsa-miR-5100の少なくとも1つであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量を基準値と比較することによって、前記被験者における口腔癌の予後を判定する、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記microRNAは、
前記表1に示される群から選択されるhsa-miR-24-3p、hsa-miR-4419a及びhsa-miR-5100と、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-122-5p及びhsa-miR-150-3pとであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量及び該発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報を、それぞれ説明変数に対応する情報及び目的変数に対応する情報とする教師あり学習で構築されたモデルによって、前記被験者の前記microRNAの発現量から前記被験者における口腔癌の有無を判定する、
こととしてもよい。
【0015】
また、前記microRNAは、
前記表1に示される群から選択されるhsa-miR-423-5p及びhsa-miR-5100と、hsa-miR-150-3pとであって、
前記判定部は、
前記microRNAの発現量及び該発現量に対応する口腔癌の予後を示す情報を、それぞれ説明変数に対応する情報及び目的変数に対応する情報とする教師あり学習で構築されたモデルによって、前記被験者の前記microRNAの発現量から前記被験者における口腔癌の予後を判定する、
こととしてもよい。
【0016】
本発明の第2の観点に係る口腔癌判定方法は、
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定ステップを含み、
前記microRNAは、
下記表2:
【表2】
JP2020068673A_000004t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである。
【0017】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
被験者の体液試料におけるmicroRNAの発現量に基づいて前記被験者の口腔癌を判定する判定部として機能させ、
前記microRNAは、
下記表3:
【表3】
JP2020068673A_000005t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
本発明の第4の観点に係る口腔癌判定キットは、
被験者の体液試料におけるmicroRNAを定量する試薬を備え、
前記microRNAは、
下記表4:
【表4】
JP2020068673A_000006t.gif
に示される群から選択される少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低侵襲で、かつ高い精度で口腔癌を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係る口腔癌判定装置のハードウエア構成を示すブロック図である。(B)は口腔癌判定装置の機能を示すブロック図である。
【図2】図1に示す口腔癌判定装置による判定処理のフローチャートを示す図である。
【図3】口腔癌群及び健常者群の各miRNAの発現量を示す図である。(A)はhsa-miR-19a-3pの発現量を示す図である。(B)はhsa-miR-19b-3pの発現量を示す図である。(C)はhsa-miR-20a-5pの発現量を示す図である。(D)はhsa-miR-122-5pの発現量を示す図である。(E)はhsa-miR-5100の発現量を示す図である。
【図4】miRNAの発現量に基づいて口腔癌の有無を判定するための指標の分布を示す図である。
【図5】口腔癌の有無を判定するための指標による判定精度を示す図である。
【図6】miRNAの高発現群及び低発現群の無病生存率を示す図である。(A)はhsa-miR-19b-3pの結果を示す図である。(B)はhsa-miR-24-3pの結果を示す図である。(C)はhsa-miR-122-5pの結果を示す図である。(D)はhsa-miR-5100の結果を示す図である。
【図7】miRNAの発現量に基づいて口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定するための指標の分布を示す図である。
【図8】口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定するための指標による判定精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。

【0022】
本実施の形態に係る口腔癌判定装置100について図1を参照して説明する。口腔癌判定装置100は、被験者の口腔癌を判定するための装置である。図1(A)に示すように、口腔癌判定装置100は、記憶部10、RAM(Random Access Memory)20、入力装置30、表示装置40及びCPU(Central Processing Unit)50が、バス60で接続された構成を有する。

【0023】
記憶部10は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)及びフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を備える。記憶部10は、各種データ及びソフトウェアプログラムの他、口腔癌判定プログラム11を記憶している。

【0024】
RAM20はCPU50のメインメモリとして機能し、CPU50による口腔癌判定プログラム11の実行に際し、口腔癌判定プログラム11がRAM20に展開される。RAM20には、入力装置30から入力されたデータが一時的に記憶される。

【0025】
入力装置30は、使用者が口腔癌判定装置100にデータを入力するためのハードウエアである。入力装置30は、被験者の体液試料におけるmiRNAの発現量を示すデータをCPU50に入力する。CPU50は、入力されたmiRNAの発現量を示すデータを記憶部10に記憶させる。

【0026】
体液試料は、血清、血漿及び全血等の血液検体、尿検体及び痰検体等である。好ましくは、体液試料は血液検体であって、特に好ましくは血清である。本実施の形態では、体液試料として被験者の血清を用いる。miRNAの発現量を示すデータは、血清におけるmiRNAの発現量の値である。miRNAの発現量の値は発現量の定量方法に応じて選択できるが、例えば、miRNAの濃度の値でもよいし、内因性コントロールのmiRNAの発現量に対する相対的な発現量を示す数値であってもよい。以下では、被験者の血清におけるmiRNAの発現量を示すデータを“発現量データ”ともいう。

【0027】
miRNAは、pri-miRNA、pre-miRNA及び成熟miRNAを含む。好ましくは、miRNAは、成熟miRNAである。miRNAの発現量は公知の方法で測定される。miRNAの発現量の測定方法としては、例えば、ノーザンブロッティング、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、リアルタイムPCR法及びマイクロアレイ法が挙げられる。miRNAの発現量の測定では、血清から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成し、リアルタイムPCRでmiRNAを定量してもよい。全RNAの抽出、cDNAの合成及びリアルタイムPCRによるmiRNAの定量は、市販のキットでも行うことができる。

【0028】
表示装置40は、CPU50による口腔癌に関する判定の結果を出力するためのディスプレイである。CPU50は、記憶部10に記憶された口腔癌判定プログラム11をRAM20に読み出して、口腔癌判定プログラム11を実行することにより、以下に説明する機能を実現する。

【0029】
図1(B)は、CPU50が実現する機能を示すブロック図である。口腔癌判定プログラム11は、CPU50に判定部1及び出力部2として機能させる。

【0030】
判定部1は、被験者の血清におけるmiRNAの発現量に基づいて被験者の口腔癌を判定する。判定部1は、被験者における口腔癌の有無、口腔癌の状態及び予後等を判定する。口腔癌の有無とは、被験者が口腔癌に罹患しているか否かである。特に、口腔癌の有無とは、口腔癌に係る腫瘍を被験者が有しているか否かである。口腔癌の状態とは、口腔癌の悪性度及びステージ等である。口腔癌の予後とは、口腔癌の将来的な状態又は状態に関する見込みであって、特には、腫瘍切除後の状態である。好適には、口腔癌の予後は、口腔癌の後発リンパ節転移の有無である。

【0031】
下記実施例に示すように、所定のmiRNAの血清における発現量は、健常者と比較して口腔癌の患者で増加又は減少している。より詳細には、口腔癌患者と健常者とで比較した場合、表5に示すmiRNAは健常者よりも口腔癌患者での発現量が高い。表5に示すmiRNAを亢進miRNA群とする。なお、IDはmiRNAのデータベースであるmiRBaseにおける識別情報を示す。

【0032】
【表5】
JP2020068673A_000007t.gif

【0033】
一方、表6に示すmiRNAは健常者よりも口腔癌患者での発現量が低い。表6に示すmiRNAを低下miRNA群とする。

【0034】
【表6】
JP2020068673A_000008t.gif

【0035】
詳細には、判定部1は、miRNAの発現量を基準値と比較して、被験者の口腔癌を判定する。好ましくは、判定部1は、亢進miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量を基準値と比較する。判定部1は、亢進miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量が基準値より高い場合に被験者が口腔癌を有していると判定し、亢進miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量が基準値より低い場合に被験者が口腔癌を有していないと判定する。また、判定部1は、低下miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量を基準値と比較する。判定部1は、低下miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量が基準値より高い場合に被験者が口腔癌を有していないと判定し、低下miRNA群に含まれる少なくとも1つのmiRNAの発現量が基準値より低い場合に被験者が口腔癌を有していると判定する。ここでの基準値は、例えば、健常者における当該miRNAの発現量の平均値又は中央値である。

【0036】
好ましくは、被験者における口腔癌の有無を判定するために、判定部1は、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-5100及びhsa-miR-144-3pの少なくとも1つの発現量を基準値と比較する。より詳細には、判定部1は、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p及びhsa-miR-144-3pの少なくとも1つの発現量を基準値と比較し、発現量が基準値より高い場合に被験者が口腔癌を有していると判定し、発現量が基準値より低い場合に被験者が口腔癌を有していないと判定する。一方、判定部1は、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-5100の少なくとも1つの発現量を基準値と比較し、発現量が基準値より高い場合に被験者が口腔癌を有していないと判定し、発現量が基準値より低い場合に被験者が口腔癌を有していると判定する。

【0037】
好ましくは、被験者における口腔癌の予後、例えば口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定するために、判定部1は、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-24-3p及びhsa-miR-5100の少なくとも1つの発現量を基準値と比較する。より詳細には、判定部1は、hsa-miR-19b-3p及びhsa-miR-24-3pの少なくとも1つの発現量を基準値と比較し、発現量が基準値より高い場合に口腔癌の後発リンパ節転移が有ると判定し、発現量が基準値より低い場合に口腔癌の後発リンパ節転移が無いと判定する。一方、判定部1は、hsa-miR-5100の発現量を基準値と比較し、発現量が基準値より高い場合に口腔癌の後発リンパ節転移が無いと判定し、発現量が基準値より低い場合に被験者に口腔癌の後発リンパ節転移が有ると判定する。

【0038】
判定部1は、複数のmiRNAの発現量を組み合わせて、被験者における口腔癌を判定してもよい。例えば、判定部1は、hsa-miR-19b-3pの発現量が第1の基準値より高く、かつhsa-miR-183-5pの発現量が第2の基準値より低い場合に被験者に口腔癌が有ると判定してもよい。

【0039】
判定部1は、miRNAの発現量と基準値との比較だけではなく、1つ以上のmiRNAの発現量から算出される指標に基づいて被験者における口腔癌を判定してもよい。例えば、判定部1は、公知のデータマイニングの手法を用いて構築されたモデルから得られる指標に基づいて、miRNAの発現量から被験者における口腔癌を判定してもよい。好ましくは、当該モデルは教師あり学習で構築されたモデルである。

【0040】
教師あり学習とは、説明変数とそれに付随する目的変数との組み合わせの集合を学習用データとして、学習用データに対するフィッティングを行うことにより学習を行う機械学習の一手法である。フィッティングは、学習用データに含まれる説明変数の特徴量を抽出して目的変数ごとの特徴量を選んだり、その目的変数に属するデータの特徴を抽出したり、目的変数を識別する判断基準を生成したりすることで行う。フィッティングによって、入力された説明変数からその説明変数に対応するべき目的変数を出力するモデルが構築される。モデルによって、学習用データに含まれない説明変数に対応する目的変数を出力することができる。

【0041】
口腔癌の有無を判定する場合、学習用データにおける説明変数は1つ以上のmiRNAの発現量データであって、目的変数は当該発現量データが示すmiRNAの発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報である。例えば、健常者の血清中における3つのmiRNAの各発現量がE1、E2及びE3とすると、説明変数“E1,E2,E3”に、口腔癌が無いことを示す情報である目的変数“0”が対応付けられる。一方、口腔癌患者の血清中における同じ3つのmiRNAの各発現量がE4、E5及びE6とすると、説明変数“E4,E5,E6”に、口腔癌が有ることを示す情報である目的変数“1”が対応付けられる。好ましくは、学習用データは、複数のmiRNAの発現量データと当該発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報との組み合わせの集合である。

【0042】
口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定する場合であれば、学習用データにおける説明変数は上記と同様に各miRNAの発現量データであって、目的変数は当該発現量に対応する口腔癌の後発リンパ節転移の有無を示す情報である。

【0043】
教師あり学習の方法には、公知の任意の方法を採用すればよい。教師あり学習の方法としては、例えば、判別分析、正準判別分析、線形分類、重回帰分析、ロジスティック回帰、サポートベクターマシーン、決定木、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、パーセプトロン及びk近傍法等が挙げられる。

【0044】
下記実施例に示すように、表5の亢進miRNA群に含まれるmiRNAの他に、hsa-miR-20a-5p(MIMAT0000075)、hsa-miR-26b-5p(MIMAT0000083)、hsa-miR-21-5p(MIMAT0000076)及びhsa-miR-122-5p(MIMAT0000421)は健常者よりも口腔癌患者での発現量が高い。また、下記実施例に示すように、表6の低下miRNA群に含まれるmiRNAの他にhsa-miR-29c-5p(MIMAT0004673)及びhsa-miR-150-3p(MIMAT0004610)は健常者よりも口腔癌患者での発現量が低い。したがって、判定部1は、これらのmiRNAと亢進miRNA群のmiRNA又は低下miRNA群を組み合わせて、被験者における口腔癌を判定してもよい。

【0045】
例えば、被験者のmiRNAの発現量から被験者における口腔癌の有無を判定する場合、判定部1は、表1から選択されるhsa-miR-24-3p、hsa-miR-4419a及びhsa-miR-5100に加え、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-122-5p及びhsa-miR-150-3pの発現量が説明変数であって、目的変数が該発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報であるモデルによって判定してもよい。

【0046】
また、被験者のmiRNAの発現量から被験者における口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定する場合、判定部1は、表1から選択されるhsa-miR-423-5p及びhsa-miR-5100に加え、hsa-miR-150-3pの発現量が説明変数であって、目的変数が該発現量に対応する口腔癌の後発リンパ節転移の有無を示す情報であるモデルによって判定すればよい。

【0047】
構築されたモデルは、記憶部10に記憶されている。判定部1は、被験者のmiRNAの発現量を、記憶部10に記憶されたモデルに入力することで、被験者における口腔癌の判定結果を示す情報を出力として得る。

【0048】
判定部1は、被験者における口腔癌の判定結果を示す情報を出力部2に入力する。例えば、口腔癌の有無を示す情報は、被験者が口腔癌を有することを示す情報又は被験者が口腔癌を有していないことを示す情報である。出力部2は、判定部1によって入力された判定結果を示す情報を表示装置40に表示する。

【0049】
続いて、口腔癌判定装置100による判定処理を図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、当該フローチャートでは、判定部1は、hsa-miR-19a-3pの発現量を用いて被験者における口腔癌の有無を判定する。hsa-miR-19a-3pの発現量と比較する基準値は、あらかじめ記憶部10に記憶されているものとする。

【0050】
判定部1は、使用者によって被験者のhsa-miR-19a-3pの発現量データが入力装置30を介して入力されるのを待つ(ステップS1;No)。被験者のhsa-miR-19a-3pの発現量データが入力されると(ステップS1;Yes)、判定部1は、記憶部10を参照し、基準値とhsa-miR-19a-3pの発現量とを比較し、被験者における口腔癌の有無を判定する(ステップS2)。hsa-miR-19a-3pの発現量が基準値より高い場合(ステップS2;Yes)、出力部2は、被験者が口腔癌を有することを示す情報を、表示装置40を介して表示する(ステップS3)。一方、hsa-miR-19a-3pの発現量が基準値より低い場合(ステップS2;No)、出力部2は、被験者が口腔癌を有していないことを示す情報を、表示装置40を介して表示する(ステップS4)。そして、判定部1は判定処理を終了する。

【0051】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る口腔癌判定装置100は、血清におけるmiRNAの発現量に基づいて被験者における口腔癌を判定する。血清は採血することで得られるため、組織を採取する生検よりも低侵襲で被験者の負担が軽減される。上述のmiRNAは、口腔癌の腫瘍マーカーであるため、高い精度で被験者における口腔癌を判定することができる。

【0052】
また、血清は比較的簡便に取得できるため、迅速に口腔癌を判定することができる。採血は低侵襲であるため、被験者の血清のmiRNAを任意のタイミングで適宜定量することができ、口腔癌をリアルタイムに監視できるため、最適治療においても有用である。

【0053】
本実施の形態に係るmiRNAは、早期の口腔癌にも関連が見られる腫瘍マーカーである。このため、口腔癌判定装置100は、早期の口腔癌の有無等についても精度よく判定することができる。

【0054】
また、口腔癌判定装置100は、口腔癌の後発リンパ節転移の有無を高い精度で判定することができる。後発リンパ節転移は、口腔癌の予後を決定する最も大きな術後イベントである。このため、口腔癌判定装置100は、口腔癌の予後を予測することができる。また、口腔癌判定装置100は、口腔癌の転移を予測すること、又は転移リスクを評価することもできる。したがって、口腔癌判定装置100は、治療法、術後の補助療法及び術後の検査頻度を決定に寄与することができる。

【0055】
なお、判定部1は、血清において定量されたmiRNAの発現量の値に対して任意の値を加減乗除した値で判定してもよく、発現量を公知の変換方法、例えば、指数変換、対数変換、角変換、平方根変換、プロビット変換、逆数変換、Box-Cox変換又はべき乗変換等で変換した値で判定してもよい。判定部1は、血清において定量されたmiRNAの発現量の値を男女別又は年齢別に重み付けをして変換して得られる値で判定してもよい。また、判定部1は、第1のmiRNAの発現量と第1のmiRNAとは異なる第2のmiRNAの発現量との比を基準値等と比較して判定してもよい。

【0056】
なお、CPU50は、上記モデルを構築するモデル構築部として機能してもよい。モデル構築部は、記憶部10に記憶された学習用データを用いた教師あり学習によってモデルを構築する。より詳細には、モデル構築部は、1つ以上のmiRNAの発現量及び当該発現量に対応する口腔癌の有無を示す情報をそれぞれ説明変数及び目的変数とした学習用データを用いて教師あり学習を実行する。モデル構築部は、構築したモデルを記憶部10に記憶させる。これにより、判定部1は、被験者のmiRNAの発現量を、記憶部10に記憶されたモデルに入力することで、被験者が口腔癌を有するか否かを判定する。

【0057】
なお、判定部1は、年齢差、性別、喫煙習慣及び飲酒習慣等の因子によるmiRNAの発現量の差を考慮して、被験者に関するこれら因子の影響を補正したmiRNAの発現量に基づいて、口腔癌について判定してもよい。

【0058】
なお、口腔癌判定装置100は、通信インターフェイスを備え、ネットワークに接続されてもよい。判定部1は、当該ネットワークに接続する外部の装置等から通信手段を介して送信された発現量データを受信し、被験者が口腔癌を有するか否か、又は被験者の口腔癌の予後を判定してもよい。さらに出力部2は、通信インターフェイスを介して被験者が口腔癌を有することを示す情報等を外部の装置に送信してもよい。

【0059】
なお、別の実施の形態では、口腔癌判定キットが提供される。口腔癌判定キットは、被験者の血清における亢進miRNA群及び低下miRNA群から選択される少なくとも1つのmiRNAを定量する試薬を備える。好適には、当該試薬は、miRNAをリアルタイムPCRで定量するためのプライマー及びプローブである。プライマーは、上記表1に記載されたmiRNAをPCR産物の塩基配列中に含むように設計されたものであれば特に限定されない。

【0060】
プライマー及びプローブの塩基配列としては、上記表1に挙げたmiRNAに加え、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-26b-5p、hsa-miR-21-5p及びhsa-miR-122-5p、hsa-miR-29c-5p及びhsa-miR-150-3p、又は当該miRNAをコードするcDNAの全体の塩基配列若しくは部分配列、あるいは当該全体の塩基配列若しくは部分配列に相補的な塩基配列が挙げられる。

【0061】
プローブは、PCR産物とハイブリダイゼーションするものである。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば、プローブが、塩基配列が相補的な核酸とはハイブリダイズするが、相補的ではない塩基配列の核酸にはハイブリダイズしないストリンジェントな条件である。ストリンジェントな条件は、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第3版(2001年)等に基づき適宜決定でき、例えば、0.2×SSC、0.1%SDS、65℃で保温、である。プライマー及びプローブは、例えば、市販の自動核酸合成機を用いて化学的に合成することができる。

【0062】
プローブは、蛍光物質等で標識されていてもよい。標識として、シアン、フルオレサミン、ローダミン、Cy3、Cy5、FITC(fluorescein isothiocyanate)、TRITC等の蛍光標識を用いることができる。口腔癌判定キットは、内在性コントロールとするmiRNAに対するプライマー及びプローブを備えてもよく、さらには緩衝液、miRNAの定量に使用するその他の試薬を備えてもよい。

【0063】
また、別の実施の形態では、被験者における口腔癌の有無を判定するためのデータを得るために、当該被験者の血清中の上記miRNAを検出する検出ステップを含む方法が提供される。また、他の実施の形態では、被験者の体液試料におけるmiRNAの発現量に基づいて被験者の口腔癌の判定を補助する方法が提供される。
【実施例】
【0064】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
(対象)
対象は、2015年から2018年に鹿児島大学口腔外科を受診し、病理組織学的検査により口腔扁平上皮癌と診断された治療前の口腔癌患者40例と、ボランティアとして協力を得た健常者40例とした。臨床的背景因子として、年齢、性別、部位、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無、病理組織型をカルテより取得した。口腔癌の解剖学的部位及びTNM分類は(TNM classification of malignant tumours)第8版(2017年)の規定に従った。リンパ節転移の有無は、画像診断および頸部郭清術におけるリンパ節の病理組織学的所見により診断した。遠隔転移の有無は画像診断にて診断した。上記の口腔癌患者40例及び健常者40例の臨床的背景を表7に示す。
【実施例】
【0066】
【表7】
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【実施例】
【0067】
(血液の採取)
口腔癌患者40例及び健常者40例から血清サンプルを採取した。口腔癌患者からは治療の前後にサンプル採取を行った。口腔癌患者の血清サンプルは、治療開始約2週間前に採取し、術後1カ月以内にも同様にサンプルを採取した。全症例で、採血管に血液10mLを採取し室温で30分静置し凝固させた後に1900g、4℃、30分間遠心分離を行い、上清を採取した。さらに細胞性の浮遊物を除去するために、1600g、4℃、10分間遠心分離を行いその上清を血清サンプルとし、解析まで-80℃で保存した。
【実施例】
【0068】
(miRNAの網羅的解析)
口腔癌群と健常者群の血清プール(各10例ずつ)から、3D-Gene RNA extraction reagent(東レ社製)を用いて全RNAを抽出し、3D-Gene miRNA labeling kit(東レ社製)を用いてラベル化後、3D-Gene Mouse miRNA Oligo chip(東レ社製)に対してハイブリダイゼーションした。シグナルは3D-Gene Scanner(東レ社製)を用いてスキャンし、3D-Gene Extraction software(東レ社製)を用いて数値化した。各スポットのシグナル値からブランクスポットの平均値を引くことによって補正を行なった。さらに、シグナル強度の平均値が25となるようにグローバルノーマライゼーションを用いて正規化を行った。
【実施例】
【0069】
(結果)
健常者群に対して口腔癌群で2倍以上又は1/2以下の発現量を示したmiRNAをマーカーとして同定した。健常者群に対して口腔癌群で2倍以上の発現量を示した68種を表8に示す。健常者群に対して口腔癌群で1/2以下の発現量を示した45種を表9に示す。miRNAをマーカーとして同定した。マーカーの中でも特に癌患者と健常者との間で差の大きかった表10に示す16種のmiRNAについて、以下でさらに検討した。
【実施例】
【0070】
【表8】
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【実施例】
【0071】
【表9】
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【実施例】
【0072】
【表10】
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【実施例】
【0073】
(口腔癌判定マーカーの同定)
次のように、表10に示すマーカーを標的としたリアルタイムRT-PCRによってmiRNAを定量し、口腔癌群と健常者群とを比較検討した。血清サンプルよりmiRNeasy serum/plasma kit(QIAGEN社製)とMS2(Roche Diagnostics社製)を用いてmiRNAを含む全RNAを抽出した。続いて、TaqMan(商標) MicroRNA RT kit(Applied Biosystems社製)を用いてcDNAを合成した。
【実施例】
【0074】
miRNAの発現量は、TaqMan(商標) MicroRNA Assays(Applied Biosystems社製)を用いたリアルタイム PCR システムで3回ずつ定量した。PCR反応は、熱変性95℃で10分間を1サイクル行い、2サイクル目以降は熱変性95℃で15秒、アニーリング/伸長反応は60℃で60秒を60サイクル行った。リアルタイムPCRにおいては内因性コントロールにはmiR16を用いた。各miRNAの発現量はΔCT法にて相対的に定量した。なお、以下の統計解析は、すべてJMP13及びRを用いた。統計解析では、両側検定p<0.05を有意差有りとみなした。
【実施例】
【0075】
(結果)
図3に示すように、リアルタイムPCRによる定量において、口腔癌群と健常者群との間でhsa-miR-19a-3p(A)、hsa-miR-19b-3p(B)、hsa-miR-20a-5p(C)、hsa-miR-122-5p(D)及びhsa-miR-5100(E)の発現量に有意差を認めた。口腔癌群において、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p及びhsa-miR-20a-5pに発現上昇を認めた。また、口腔癌群において、hsa-miR-122-5p及びhsa-miR-5100に発現低下を認めた。
【実施例】
【0076】
(口腔癌判定マーカーによる口腔癌の判定精度)
次に、各miRNAについて「腫瘍の存在」をエンドポイントにして受信者動作特性曲線(ROC)解析を行い、口腔癌の存在の判定に最適な発現量の基準値としてのカットオフ値を設定した。口腔癌群及び健常者群について、カットオフ値より低い発現量を“低発現グループ”、高い発現量を“高発現グループ”の2グループに整理し、低発現グループと高発現グループとの間に統計学的有意差を認める8種のmiRNAを決定した(表11及び表12)。
【実施例】
【0077】
8種のmiRNAうち、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-20a-5p及びhsa-miR-144-3pでは口腔癌群における有意な発現上昇を、hsa-miR-122、hsa-miR-183、hsa-miR-423-5p及びmiR-5100は口腔癌群における有意な発現低下を認めた。hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-144-3p、hsa-miR-122、hsa-miR-183、hsa-miR-423-5p及びmiR-5100のカットオフ値は、それぞれ4.9857、4.127、4.962、9.218、4.915、12.002、6.352及び4.021で、その際のAUCは、それぞれ0.659、0.571、0.637、0.588、0.608、0.616、0.579及び0.706であった。
【実施例】
【0078】
【表11】
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【実施例】
【0079】
【表12】
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【実施例】
【0080】
miRNAの発現量を用いた口腔癌の存在を判定するモデルを構築するため、線形分析を行ったところ、hsa-miR-24-3p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-150-3p、hsa-miR-4419a及びhsa-miR-5100が因子として選定された。モデルとして、口腔癌の存在を判定する指標(miRNA index-A)を算出する下記の式1が得られた。なお、式1で[miRNAのID]は、当該miRNAの発現量を示す。
miRNA index-A=-0.31567+(0.09049×[hsa-miR-24-3p])+(0.21063×[hsa-miR-20a-5p])-(0.04705×[hsa-miR-122-5p])-(0.08418×[hsa-miR-150-3p])+(0.14492×[hsa-miR-4419a])-(0.22962×[hsa-miR-5100]) (式1)
【実施例】
【0081】
式1を用いた場合、図4に示すように口腔癌及び健常者群のmicroRNA index-Aには両群間に著明な差がみられた(p<0.0001)。式1についてのROC曲線を図5に示す。miRNA index-Aのカットオフ値は0.517であり、その際のAUCは0.849、感度は67.5%、特異度は87.5%、陽性適中率(PPV)は27.1%、陰性適中率(NPV)は15.6%であった。当該モデルは、口腔癌の有無の判定に有用であることが示された。なお、上記式1による口腔癌の有無の判定は、TMN分類でI及びIIの早期の患者でも有意に判定することができた。
【実施例】
【0082】
(治療前後のリアルタイムモニタリングと予後判定マーカーの同定)
口腔癌患者の治療前後に経時的に液体生検し、上記マーカーと臨床病理学的事項との関連性を統計学的に検討した。口腔癌症例の予後を決定する最も大きな術後イベントは治療後の後発リンパ節転移である。そこで、各miRNAについて「後発リンパ節転移」をエンドポイントにしてROC解析を行い、後発リンパ節転移の判定に最適な発現量の基準値としてのカットオフ値を設定した。
【実施例】
【0083】
上記と同様に口腔癌群及び健常者群を低発現グループ及び高発現グループに整理し、低発現グループと高発現グループとの間に統計学的有意差を認めるhsa-miR-19b-3p、hsa-miR-24-3p及びhsa-miR-122-5p、並びに高発現と後発リンパ節転移との間に負の相関の傾向がみられるhsa-miR-5100を決定した(表13)。hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-24-3p、hsa-miR-122-5p及びhsa-miR-5100のカットオフ値は、それぞれ4.0129、5.0007、7.236及び3.997で、その際のAUCは、それぞれ0.683、0.607、0.660及び0.656であった。
【実施例】
【0084】
【表13】
JP2020068673A_000015t.gif
【実施例】
【0085】
図6に各miRNAについての無病生存率におけるカプランマイヤー曲線を示す。当該miRNAはすべて統計学的有意差を示し、治療後の予後予測に有用であることが示された。
【実施例】
【0086】
miRNAの発現量を用いた口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定するモデルを構築するため、線形分析を行ったところ、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-150-3p及びhsa-miR-5100が因子として選定された。モデルとして、口腔癌の後発リンパ節転移の有無を判定する指標(miRNA index-B)を算出する下記の式2が得られた。
miRNA index-B=-1.36744+(0.84173×[hsa-miR-423-5p])+(0.27273×[hsa-miR-150-3p])-(0.30080×[hsa-miR-5100])-(0.13447×[hsa-miR-423-5p]/[hsa-miR-150-3p])+(0.07004×[hsa-miR-150-3p]/[hsa-miR-5100]) (式2)
【実施例】
【0087】
式2を用いた場合、図7に示すように口腔癌及び健常者群のmicroRNA index-Bには両群間に著明な差がみられた(p<0.0001)。式2についてのROC曲線を図8に示す。miRNA index-Bのカットオフ値は0.608であり、その際のAUCは0.860、感度は83.3%、特異度は80.0%、PPVは38.5%、NPVは7.4%であった。当該モデルは、口腔癌の後発リンパ節転移の有無の判定に有用であることが示された。
【実施例】
【0088】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、口腔癌の検出、特に被験者における口腔癌の有無の判定及び予後の予測又は判定に好適である。
【符号の説明】
【0090】
1 判定部、2 出力部、10 記憶部、11 口腔癌判定プログラム、20 RAM、30 入力装置、40 表示装置、50 CPU、60 バス、100 口腔癌判定装置
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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