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明細書 :節足動物の給餌装置及び給餌方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-065548 (P2020-065548A)
公開日 令和2年4月30日(2020.4.30)
発明の名称または考案の名称 節足動物の給餌装置及び給餌方法
国際特許分類 A01K  67/033       (2006.01)
FI A01K 67/033 502
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2019-190196 (P2019-190196)
出願日 令和元年10月17日(2019.10.17)
優先権出願番号 2018197157
優先日 平成30年10月19日(2018.10.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 丈詞
【氏名】ガジイ ノルエディン アブルハドル
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】吸汁型の口器を有する節足動物に適用することができ、液体を経口摂取させる領域を任意の形状とすることができ、且つ、多くの個体に対して液体を経口摂取させる。
【解決手段】液体を含浸させた保水部材と、上記保水部材に密着させた薄膜フィルムとを含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
液体を含浸させた保水部材と、
上記保水部材に密着させた薄膜フィルムと
を含む、吸汁型節足動物に対する給餌装置。
【請求項2】
上記保水部材を一主面上に載置する基材を更に含み、
上記薄膜フィルムは、上記基材の一主面に載置された上記保水部材の全体を覆うことを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項3】
上記薄膜フィルムは、上記保水部材を挟み込む1組の薄膜フィルムであることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項4】
上記保水部材は、不織布又は樹脂製メッシュであることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項5】
上記保水部材は、目開き100~5000μmのメッシュ構造を有する樹脂製メッシュであることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項6】
上記薄膜フィルムは、伸展性及び防湿性を有するフィルムであることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項7】
上記薄膜フィルムは、プラスチックパラフィンフィルムであることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項8】
上記液体は、給餌させる成分を含む溶液又は分散液であることを特徴とする請求項1記載の給餌装置。
【請求項9】
吸汁型節足動物を飼育する空間部に、請求項1から7いずれか一項記載の給餌装置を配設し、上記吸汁型節足動物が口器を上記給餌装置における薄膜フィルムに刺入することで、上記給餌装置における保水部材に含浸させた液体を給餌させることを特徴とする吸汁型節足動物に対する給餌方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吸汁型の口器を有する節足動物に対して適用できる給餌装置及び給餌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、節足動物のナミハダニ(Tetranychus urticae)は、吸汁型の口器を有し、口器を植物の葉肉細胞に刺入して、葉肉細胞の内容物を吸汁する。
このような吸汁型口器を有する節足動物を飼育する際、例えば、濾紙に浸潤させた人工餌を吸汁させる方法が古くから試されている。しかしながら、このような方法では、濾紙にカビが生えて使用できなくなるといった問題があった(非特許文献1:Carter W (1927) A technique for use with homopterous vectors of plant disease, with special reference to the sugar-beet leafhopper, Eutettix tenellus (Baker). J Agric Res 34:449-451)。この問題を解決するために、薄膜フィルムを用いた給餌方法が考案された。初めての報告は、テンサイヨコバイ(Circulifer tenellus)を対象とした給餌システムである(非特許文献1)。具体的には、魚の皮膜を小袋の形状とし、その中に人工餌を入れて飼育容器内に吊るすシステムである。この給餌システムは,ネギアザミウマ(Thrips tabaci)の飼育にも適用されている(非特許文献2;Sakimura K, Carter W (1934) The artificial feeding of Thysanoptera. Ann Entomol Soc Am 27:341-342)。
【0003】
その後、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)を対象とし、伸展性と防湿性を備えるパラフィン製のフィルムを用いた給餌方法が報告された(非特許文献3:Mittler TE, Dadd RH (1962) Artificial feeding and rearing of the aphid, Myzus persicae (Sulzer), on a completely defined synthetic diet. Nature 195:404)。この報告が基盤となり、同様の或いは改変したシステムを用いて、アブラムシ類、ダニ類、ウンカ類、ヨコバイ類、カイガラムシ類、アザミウマ類、トコジラミ類、コナジラミ類及びカ類において広範な栄養学的および薬理学的研究が展開された(非特許文献4~23)。
【0004】
なお、ダニ類を対象とした最初の報告である非特許文献5では、伸展性フィルムButvar B-76(Monsanto社)が用いられていた。その後、例えば、非特許文献10、16、18、22及び23では、パラフィルムMが用いられている。
【0005】
ところで、パラフィルムMを使用したシステムでは、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、マダラヨコバイ(Psammotettix striatus)、ヒメフタテンヨコバイ(Macrosteles horvathi)及びヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)に対する給餌だけでなく、採卵(人工餌内に産卵)にも利用できることが報告されている(非特許文献24、13及び15)。
【0006】
また、吸汁型口器を有する節足動物の多くは、中空針状の口器(口針)を食物の吸汁だけでなく、唾液の注入にも用いている。唾液には、消化酵素の他、宿主の防御応答を誘導或いは抑制する成分等が含まれている。これら唾液成分は、宿主と寄生体の相互作用機構を解く鍵として、基礎研究だけでなく、耐虫性品種の作出を目的とした応用研究でも注目されている。例えば、ナミハダニでは、パラフィルムMを半球状に伸展させた給餌システムを唾液の回収にも利用できることが報告されている(非特許文献25)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Carter W (1927) A technique for use with homopterous vectors of plant disease, with special reference to the sugar-beet leafhopper, Eutettix tenellus (Baker). J Agric Res 34:449-451
【非特許文献2】Sakimura K, Carter W (1934) The artificial feeding of Thysanoptera. Ann Entomol Soc Am 27:341-342
【非特許文献3】Mittler TE, Dadd RH (1962) Artificial feeding and rearing of the aphid, Myzus persicae (Sulzer), on a completely defined synthetic diet. Nature 195:404
【非特許文献4】Dadd RH, Mittler TE (1966) Permanent culture of an aphid on a totally synthetic diet. Cell Mol Life Sci 22:832-833
【非特許文献5】Dadd RH (1968) Dietary amino acids and wing determination in the aphid Myzus persicae. Ann Entomol Soc Am 61:1201-1210
【非特許文献6】Walling M V, White DC, Rodriguez JG (1968) Characterization, distribution, catabolism, and synthesis of the fatty acids of the two-spotted spider mite, Tetranychus urticae. J Insect Physiol 14:1445-1458
【非特許文献7】Dadd RH, Krieger DL (1968) Dietary amino acid requirements of the aphid, Myzus persicae. J Insect Physiol 14:741-764
【非特許文献8】小山健二, 三橋淳 (1969) ヒメトビウンカの人工摂食. 日本応用動物昆虫学会誌 13:89-90
【非特許文献9】Mitsuhashi J, Koyama K (1969) Survival of smaller brown planthopper, Laodelphax striatellus FALLEN, on carbohydrate solutions (Hemiptera: Delphacidae). Appl Entomol Zool 4:185-193
【非特許文献10】Hanna MA, Hibbs ET (1970) Feeding phytophagous mites on liquid formulations. J Econ Entomol 63:1672-1674
【非特許文献11】小山健二 (1971) 糖類溶液に対するイナズマヨコバイの選択実験. 日本応用動物昆虫学会誌 15:269-271
【非特許文献12】Ekka I, Rodriguez JG, Davis DL (1971) Influence of dietary improvement on oviposition and egg viability of the mite, Tetranychus urticae. J Insect Physiol 17:1393-1399
【非特許文献13】三橋淳, 小山健二 (1972) ヒメトビウンカの人工飼育, 特に 1 令幼虫の飼育条件の検討. 日本応用動物昆虫学会誌 16:8-17
【非特許文献14】橋本晧, 広谷愛子, 北岡正三郎 (1973) イセリヤカイガラムシの人工摂食. 日本応用動物昆虫学会誌17:42-44
【非特許文献15】村井保, 石井卓爾 (1982) 花粉による訪花性アザミウマ類の簡易飼育法. 日本応用動物昆虫学会誌 26:149-154
【非特許文献16】Van Der Geest LPS, Bosse TC, Veerman A (1983) Development of a meridic diet for the two‐spotted spider mite Tetranychus urticae. Entomol Exp Appl 33:297-302
【非特許文献17】Montes C, Cuadrillero C, Vilella D (2002) Maintenance of a laboratory colony of Cimex lectularius (Hemiptera: Cimicidae) using an artificial feeding technique. J Med Entomol 39:675-679
【非特許文献18】Gotoh T, Korenaga T, Ikejima S, Hoshino T (2008) Acaricide-mediated suppression of Panonychus citri (Mcgregor) (Acari: Tetranychidae) in pear orchards in Japan. Int J Acarol 34:393-402
【非特許文献19】Upadhyay SK, Chandrashekar K, Thakur N, Verma PC, Borgio JF, Singh PK, Tuli R (2011) RNA interference for the control of whiteflies (Bemisia tabaci) by oral route. J Biosci 36:153-161
【非特許文献20】Costa-da-Silva AL, Navarrete FR, Salvador FS, Karina-Costa M, Ioshino RS, Azevedo DS, Rocha DR, Romano CM, Capurro ML (2013) Glytube: a conical tube and parafilm M-based method as a simplified device to artificially blood-feed the dengue vector mosquito, Aedes aegypti. PLoS One 8:e53816
【非特許文献21】Torres-Quintero MC, Arenas-Sosa I, Pena-Chora G, Hernandez-Velazquez VM (2013) Feeding chamber for Myzus persicae culture (Hemiptera: Aphididae). Florida Entomol 96:1600-1602
【非特許文献22】Suzuki T, Nunes MA, Espana MU, Namin HH, Jin P, Bensoussan N, Zhurov V, Rahman T, De Clercq R, Hilson P, Grbic V, Grbic M (2017) RNAi-based reverse genetics in the chelicerate model Tetranychus urticae: A comparative analysis of five methods for gene silencing. PLoS One 12:e0180654. doi: 10.1371/journal.pone.0180654
【非特許文献23】Suzuki T, Espana MU, Nunes MA, Zhurov V, Dermauw W, Osakabe M, Van Leeuwen T, Grbic M, Grbic V (2017a) Protocols for the delivery of small molecules to the two-spotted spider mite, Tetranychus urticae. PLoS One 12:e0180658. doi: 10.1371/journal.pone.0180658
【非特許文献24】Mitsuhashi J (1970) A device for collecting planthopper and leafhopper eggs (Hemiptera: Delphacidae and Deltocephalidae). Appl Entomol Zool 5:47-49
【非特許文献25】Jonckheere W, Dermauw W, Zhurov V, Wybouw N, Van den Bulcke J, Villarroel CA, Greenhalgh R, Grbic M, Schuurink RC, Tirry L (2016) The salivary protein repertoire of the polyphagous spider mite Tetranychus urticae: a quest for effectors. Mol Cell Proteomics mcp-M116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、伸展性と防湿性を備えるパラフィン製のフィルムを用いた従来の給餌装置では、吸汁型の口器を有する節足動物に液体を経口摂取させるとしても、経口摂取が可能な領域を任意の形状とすることができず、また、飼育可能な個体数が十分でないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、吸汁型の口器を有する節足動物に適用することができ、液体を経口摂取させる領域を任意の形状とすることができ、且つ、多くの個体に対して液体を経口摂取させることができる給餌装置及び給餌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1)液体を含浸させた保水部材と、上記保水部材に密着させた薄膜フィルムとを含む、吸汁型節足動物に対する給餌装置。
(2)上記保水部材を一主面上に載置する基材を更に含み、上記薄膜フィルムは、上記基材の一主面に載置された上記保水部材の全体を覆うことを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(3)上記薄膜フィルムは、上記保水部材を挟み込む1組の薄膜フィルムであることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(4)上記保水部材は、不織布又は樹脂製メッシュであることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(5)上記保水部材は、目開き100~5000μmのメッシュ構造を有する樹脂製メッシュであることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(6)上記薄膜フィルムは、伸展性及び防湿性を有するフィルムであることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(7)上記薄膜フィルムは、プラスチックパラフィンフィルムであることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(8)上記液体は、給餌させる成分を含む溶液又は分散液であることを特徴とする(1)記載の給餌装置。
(9)吸汁型節足動物を飼育する空間部に、(1)から(7)いずれか記載の給餌装置を配設し、上記吸汁型節足動物が口器を上記給餌装置における薄膜フィルムに刺入することで、上記給餌装置における保水部材に含浸させた液体を給餌させることを特徴とする吸汁型節足動物に対する給餌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸汁型節足動物に対する給餌装置は、吸汁型節足動物に液体を経口摂取させる領域を保水部材の形状に対応して所望の形状とすることがでる。また、本発明に係る吸汁型節足動物に対する給餌装置は、保水部材に密着した薄膜フィルムの表面を、吸汁型節足動物に液体を経口摂取させる領域とすることができる。このため、本発明に係る吸汁型節足動物に対する給餌装置は、より多くの個体に対して液体を経口摂取させることができる。
【0012】
また、本発明に係る吸汁型節足動物に対する給餌方法は、本発明に係る給餌装置を使用することで、吸汁型節足動物に対して効率的に液体を経口摂取させることができる。このため、本発明に係る吸汁型節足動物に対する給餌方法によれば、多くの吸汁型節足動物を飼育することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置の一例における要部断面図である。
【図2】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置の他の例における要部断面図である。
【図3】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、メッシュを保水部材として使用した給餌装置を作製する手順を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、メッシュを保水部材として使用した例における要部断面図である。
【図5】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、不織布を保水部材として使用した給餌装置を作製する手順を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、不織布を保水部材として使用した例における要部断面図である。
【図7】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、メッシュを保水部材として使用した給餌装置を用いて節足動物に対して給餌する状態を模式的に示す要部平面図である。
【図8】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置の更に他の例における要部断面斜視図である。
【図9】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置であって、メッシュを保水部材として使用した給餌装置の変形例を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置を植物の害虫防除装置として使用する形態を模式的に示す斜視図である。
【図11】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置の更に他の例における要部斜視図である。
【図12】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置を簡易検査装置として使用する形態を模式的に示す斜視図である。
【図13】本実施例で作製した給餌装置及び従来の給餌装置(保水部材なし)を定法から撮像した写真である。
【図14】ワタアブラムシを接種した本発明に係る給餌装置と、青色素を経口投与したワタアブラムシを撮像した写真である。
【図15】蛍光球形粒子を経口投与したナミハダニの可視光写真及び蛍光写真である。
【図16】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置を用いて二本鎖RNA水溶液を経口投与し、死亡した個体と産下された卵を計数した結果を示す特性図である。
【図17】本発明を適用した吸汁型節足動物に対する給餌装置を用いて経口毒性を評価した結果を示す特性図である。
【図18】内壁にアバメクチンを塗布したチューブを用いて接触毒性を評価した結果を示す特性図である。
【図19】アバメクチンを塗布した葉片を用いて接触毒性及び経口毒性を評価した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る給餌装置及び給餌方法は、節足動物のなかでも吸汁型の口器(口吻)を有する節足動物(以下、単に吸汁型節足動物と称する場合もある)を対象とする。吸汁型の口器は、動物の皮膚や植物の表皮に刺入することで内部の体液、養液、汁液、血液等の液体を体内に取り込むための器官である。

【0015】
本発明を適用した給餌装置は、図1及び2に示すように、液体を含浸させた保水部材1と、保水部材1に密着させた薄膜フィルム2とから構成される。図1に示した給餌装置は、保水部材1を基材3上に配設し、基材3上に配設した保水部材1を薄膜フィルム2で覆う構成としている。また、図2に示した給餌装置は、保水部材1を薄膜フィルム2で包み込む構成としている。吸汁型節足動物は、薄膜フィルム2に吸汁型口器を刺入し、保水部材1に含浸させた液体を体内に取り込む。

【0016】
ここで、保水部材1は、液体を含浸させた状態でその形状を保持できる素材からなる。このような素材としては、特に限定されるものではないが、天然素材及び高分子化合物等の合成素材のいずれであっても良い。また、これらの素材からなる保水部材1は、液体を含浸・保持するための構造としてメッシュ構造を有していても良いし、織布であっても良いし、不織布であっても良い。上述した素材がこのような構造を有することで液体を含浸して保持することができる。

【0017】
より具体的に、メッシュ構造を有する保水部材1としては、ナイロン製のメッシュ、ポリプロピレン製のメッシュ、ポリスチレン製のメッシュ、ポリエチレン製のメッシュ等の樹脂製メッシュを使用することができる。また、保水部材1は、目開き100~5000μmのメッシュ構造を有する樹脂製メッシュであることが好ましい。目開きがこの範囲の樹脂製メッシュを利用することで、メッシュ内に十分な量の液体を含浸して保持することができる。特に、目開きが100μmのメッシュを使用した場合には、ハダニ等の節足動物(例えば25頭/cm2)に対して24時間程度継続して吸汁させることができる。また、目開きを5000μmのメッシュ構造とすることで、カメムシ類等の大型の吸汁型節足動物がその口器を用いて吸汁することができる。したがって、目開き100~5000μmのメッシュ構造を有する樹脂製メッシュを保水部材1として使用することで、あらゆる吸汁型節足動物に対応する、十分量の液体を保持することができる。

【0018】
また、織布又は不織布の保水部材1としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維及びセルロース繊維からなる1以上の繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維からなるものを使用することができる。

【0019】
保水部材1は、このようなメッシュ構造を有するシートや、織布又は不織布からなるシートを使用することができる。保水部材1としてこれらのシートを使用する場合、1枚のシートを保水部材1として使用しても良いし、複数枚のシートを重ね合わせて保水部材1としても良い。複数枚のシートを重ね合わせて保水部材1とする場合には、全て同じ種類のシートを使用しても良いし、種類の異なるシートを使用しても良い。

【0020】
また、保水部材1としてメッシュ構造を有するシートを使用した場合には、織布又は不織布からなるシートを使用した場合と比較して、より多くの液体を吸汁させることができる。特に、織布又は不織布からなるシートとして、シートを構成する繊維が低密度なものを使用した場合には液体の吸汁量を増やすことができ、シートを構成する繊維が高密度なものを使用した場合には液体の吸汁量を減らすことができる。このように、保水部材1の材質に応じて、吸汁させる液体の量を制御することができる。

【0021】
一方、薄膜フィルム2は、一主面側から吸汁型節足動物における口器(口吻)を刺入して、他主面側に密着する保水部材1に含浸させた液体を吸汁型節足動物が吸汁できる素材からなる。また、薄膜フィルム2の厚みについても、同様に、一主面側から吸汁型節足動物における口器(口吻・口針)を刺入して、他主面側に密着する保水部材1に含浸させた液体を吸汁型節足動物が吸汁できる範囲で選択される。例えば、ダニ類のような小型の吸汁型節足動物の場合、薄膜フィルム2の厚みは、口器が貫通可能な厚みである20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とすることが好ましい。

【0022】
また、アブラムシ類等の吸汁型節足動物の場合には、上記小型の吸汁型節足動物の場合と比較してその口器を刺入することが可能な厚みはより大きくなる。具体的にワタアブラムシ(Aphis gossypii)は、厚み0.13mm(127μm)のパラフィルムM(Sigma社製)に対して口針を刺入し、保水部材1に含浸させた液体を吸汁することができる。したがって、この場合、薄膜フィルム2の厚みは、口器が貫通可能な厚みである130μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下とすることが好ましい。

【0023】
特に、薄膜フィルム2としては、伸展性及び防湿性を有するフィルムとすることが好ましい。伸展性を有する薄膜フィルム2を使用することで、薄膜フィルム2を保水部材1に密着させることができる。また、図1に示した構成の給餌装置では、伸展性を有する薄膜フィルム2を使用することで、保水部材1を基材3上に配設された保水部材1を当該基板3上に密着させることができる。さらに、伸展性を有する薄膜フィルム2を伸展させた状態で使用することで、薄膜フィルム2の厚みを伸展前より薄くすることができ、例えば、厚み0.13mm(127μm)のパラフィルムMであっても、伸展させることでダニ類のような小型の吸汁型節足動物に適した厚み(例えば10μm以下)とすることができる。

【0024】
また、伸展性を有するフィルムである低密度ポリエチレンフィルム(例えば、商品名:ダイヤストレッチフィルム)を薄膜フィルム2として使用することもできる。低密度ポリエチレンフィルムは、パラフィルムと比較して破断強度が大きいため、給餌装置を屋外環境において使用する場合に適用することが好ましい。

【0025】
なお、伸展性が少ない薄膜フィルム2を使用する場合には、例えば上述したダニ類のような小型の吸汁型節足動物の口器でも貫通可能な厚みを有するものを使用する。伸展性が少ない薄膜フィルム2としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム(商品名:トレリナ(東レ社製))、PET(ポリエステル)フィルム(商品名:ルミラー(東レ社製))及びアラミドフィルム(商品名:ミクトロン(東レ社製))を使用することができる。また、これらのフィルムについては、口器で貫通可能な程度の破断強度を有することが好ましい。

【0026】
また、防湿性を有する薄膜フィルム2を使用することで、保水部材1に含浸させた液体の蒸散を防止することができる。

【0027】
より具体的に、薄膜フィルム2としては、伸展性及び防湿性を兼ね備えるパラフィン製フィルムを使用することができる、パラフィン製フィルム以外にも薄膜フィルム2としては、例えば、低密度ポリエチレン製フィルム、ポリフェニレンサルファイド製フィルム、ポリエステル製フィルム、アラミド製フィルムを使用することもできる。

【0028】
なお、パラフィン製フィルムの一例として、パラフィルムM(Sigma社製)を使用することができ、その他、ラボピタ(ニプロ社製)及びシーロンフィルム(富士フィルム社製)を使用することができる。

【0029】
図1に示した給餌装置を作製するには、例えば、図3に示すように、基材3としてシャーレの外側底面を利用することができる。この給餌装置を作製するには、まず、シャーレ外側底面に保水部材1を載置し、図示しない液体を保水部材1に滴下する。その後、薄膜フィルム2を伸展した状態で保水部材1の全体を覆うように被せる。このとき、保水部材1とともに基材3全体を薄膜フィルム2で覆うようにしても良い。このように、保水部材1全体を覆うように薄膜フィルム2を被せることで、保水部材1に滴下した液体を、保水部材1全体に亘って含浸させることができる。

【0030】
例えば、保水部材1として樹脂製メッシュを使用した場合には、図4に示すように、メッシュに対応するように基材3上に複数の凹部4が形成される。そして、上述のように、液体を滴下した保水部材1を薄膜フィルムで覆うことによって、複数の凹部4に液体を行き渡らせることができ、メッシュからなる保水部材1の全体に液体を含浸させることができる。

【0031】
また、例えば、保水部材1として不織布を使用した場合には、図5及び6に示すように、基材3上に不織布(保水部材1)を載置し、図示しない液体を保水部材1に滴下する。その後、薄膜フィルム2を伸展した状態で保水部材1の全体を覆うように被せる。これにより、不織布からなる保水部材1に滴下された液体を不織布の全体に行き渡らせることができ、保水部材1全体に亘って含浸させることができる。

【0032】
一方、図2に示した給餌装置を作製するには、図示しないが、上述した薄膜フィルム2の上に保水部材1を載置し、液体を保水部材1に滴下する。その後、異なる薄膜フィルム2を伸展した状態で保水部材1の全体を覆うように被せる。このように、保水部材1全体を覆うように薄膜フィルム2を被せることで、保水部材1に滴下した液体を、保水部材1全体に亘って含浸させることができる。

【0033】
なお、図2に示した給餌装置は、上述のように1組の薄膜フィルム2を用いて保水部材1を包み込む構成に限定されず、1枚の薄膜フィルム2を折り返して保水部材1を包み込む構成としても良い。すなわち、薄膜フィルム2の長手方向における左右いずれか一方に保水部材1を載置し、液体を保水部材1に滴下する。その後、薄膜フィルム2の保水部材1を載置していない方を伸展した状態で保水部材1の全体を覆うように被せる。このように、1枚の薄膜フィルム2を用いて保水部材1全体を覆うように薄膜フィルム2を被せることで、図2に示した給餌装置を作製することができる。

【0034】
以上のように構成された給餌装置を用いることで、吸汁型節足動物に対して液体を経口摂取させることができる。ここで、吸汁型節足動物とは、節足動物門に分類される動物のうち吸汁型の口器を有するものである。節足動物門は、更に、鋏角亜門、多足亜門、甲殻亜門及び六脚亜門に分類される。吸汁型節足動物としては、これらの中でも特に鋏角亜門又は六脚亜門に分類される節足動物に含まれることが好ましい。

【0035】
さらに、鋏角亜門は、クモガタ綱(蛛形綱)、ウミグモ綱及びカブトガニ綱に分類される。鋏角亜門に分類される節足動物のうち、吸汁型の口器を有する種数が多い節足動物としてはダニ目の節足動物が挙げられる。すなわち、本発明に係る給餌装置は、これらの中でも特にダニ目に分類される節足動物に適用することができる。ダニ目は、アシナガダニ亜目、カタダニ亜目、マダニ亜目、トゲダニ亜目、ケダニ亜目、ササラダニ亜目、コナダニ亜目が含まれる。

【0036】
本発明に係る給餌装置は、これらの中でも特にケダニ亜目に分類される動物、さらにケダニ亜目の中でも特にハダニ科に属する動物に適用することが更に好ましい。

【0037】
ハダニ科(Tetranychidae)に属する動物は、ビラハダニ亜科(Bryobiinae)及びナミハダニ亜科(Tetranychinae)に分類される。ビラハダニ亜科は、更にビラハダニ族(Bryobiini)、サキハダニ族(Hystrichonychini)及びホモノハダニ族(Petrobiini)等に分類される。ナミハダニ亜科は、更にヒロハダニ族(Eurytetranychini)及びナミハダニ族(Tetranychini)等に分類される。

【0038】
ビラハダニ亜科のビラハダニ族には、アトヘリビラハダニ、キクビラハダニ、クローバービラハダニ、及びニセクローバービラハダニ等を含むビラハダニ属(Bryobia);及びマルビラハダニ等を含むマルビラハダニ属(Pseudobryobia)が含まれる。ビラハダニ亜科のサキハダニ族には、オニハダニ等を含むオニハダニ属(Tetranycopsis)が含まれる。ビラハダニ亜科のホモノハダニ族には、ホモノハダニ等を含むホモノハダニ属(Petrobia);及びカタバミハダニ等を含むカタバミハダニ属(Tetranychina)が含まれる。

【0039】
また、ナミハダニ亜科のヒロハダニ族には、アラカシハダニ等を含むアラカシハダニ属(Eurytetranychoides);トウヨウハダニ等を含むトウヨウハダニ属(Eutetranychus);及びイトマキヒラタハダニ及びタイリクヒラハダニ等を含むヒラハダニ属(Aponychus)が含まれる。ナミハダニ亜科のナミハダニ族には、ササマルハダニ、エルムマルハダニ、リンゴハダニ、クワオオハダニ、ミカンハダニ及びモクセイマルハダニ等を含むマルハダニ属(Panonychus);ミドリハダニ及びヒメミドリハダニ等を含むミドリハダニ属(Sasanychus);シイノキマタハダニ、ヤナギマタハダニ、ヒメササマタハダニ、カシノキマタハダニ、サヤマタハダニ、タケトリマタハダニ、カツラマタハダニ、コトマタハダニ等を含むマタハダニ属(Schizotetranychus);タケスゴモリハダニ、ケナガスゴモリハダニ、ススキスゴモリハダニ、ヒメスゴモリハダニ及びササスゴモリハダニ等を含むスゴモリハダニ属(Stigmaeopsis);ケウスハダニ等を含むケウスハダニ属(Yezonychus);ウチダアケハダニ、アンズアケハダニ、カジノキアケハダニ、ミチノクアケハダニ、ミズキアケハダニ、ルイスアケハダニ、ハンノキアケハダニ、クリアケハダニ、シナノキアケハダニ、クルミアケハダニ、スギナミハダニ、エノキアケハダニ、ムクノキアケハダニ、スミスアケハダニ、ヒメカエデアケハダニ、ホオノキアケハダニ、ウシノセアケハダニ、ニセカツラアケハダニ、イヌシデアケハダニ、コナラアケハダニ、オオカエデアケハダニ、コウノアケハダニ及びミヤケアケハダニ等を含むアケハダニ属(Eotetranychus);マツツメハダニ、エゾスギツメハダニ、カツラマツツメハダニ、スギノハダニ、リュウキュウツメハダニ、ウスコブツメハダニ、ツバキツメハダニ、トドマツノハダニ、ビャクシンツメハダニ、クリノツメハダニ、ブナカツメハダニ、マンゴーツメハダニ、ニョゴツメハダニ、サトウキビツメハダニ、イネツメハダニ、シュレイツメハダニ、ウルマツメハダニ及びススキツメハダニ等を含むツメハダニ属(Oligonychus);オウトウハダニ及びミズナラクダハダニ等を含むクダハダニ属(Amphitetranychus);及びアシノワハダニ、ミツユビナミハダニ、ナンゴクナミハダニ、サガミナミハダニ、カンザワハダニ、ニセカンザワハダニ、アララギナミハダニ、ナンセイナミハダニ、ナミハダニ、ナミハダニモドキ、ミスマイナミハダニ、イシイナミハダニ及びミヤラナミハダニ等を含むナミハダニ属(Tetranychus)等が含まれる。

【0040】
また、本発明に係る給餌装置は、ダニ目の中でも特にトゲダニ亜目に分類される動物、さらにトゲダニ亜目の中でも特にカブリダニ科に属する動物に適用することが更に好ましい。なお、トゲダニ亜目に分類される動物としては、カブリダニ科以外に、ヤドリダニ科、キツネダニ科、コシボソダニ科、ツブトゲダニ科、ヨコスジムシダニ科、マルノコダニ科、イソトゲダニ科、マヨイダニ科、カザリダニ科、ウデナガダニ科、ユメダニ科、ヤリダニ科、ホコダニ科、ハエダニ科、ダルマダニ科、トゲダニ科、ヘギイタダニ科、ワクモ科、オオサシダニ科、ハナダニ科、ハイダニ科、コウモリダニ科、イトダニ科、クロツヤムシダニ科又はイトダニモドキ科の動物を挙げることができる。

【0041】
一方、本発明に係る給餌装置は、六脚亜門に分類される節足動物において、吸汁型の口器を有する動物にも適用することができる。六脚亜門に分類される節足動物は、代表的には昆虫綱に分類される節足動物が挙げられる。吸汁型の口器を有する、昆虫網に分類される節足動物としては、カメムシ目、アザミウマ目及びハエ目の節足動物を挙げることができる。特にカメムシ目としては、セミ、ウンカ、アブラムシ及びカイガラムシを含むヨコバイ亜目と、カメムシ、サシガメ、グンバイムシ、トコジラミ、アメンボ、タガメ、コオイムシ、タイコウチ、ミズムシ及びマツモムシを含むカメムシ亜目を挙げることができる。また、ハエ目に分類される節足動物において、吸汁型の口器を有するものとしてはカ亜目を挙げることができる。

【0042】
本発明に係る給餌装置は、これらの中でも特にヨコバイ亜目に分類される動物、さらにヨコバイ亜目の中でも特に、ワタアブラムシ、エンドウヒゲナガアブラムシ、モモアカアブラムシ及びジャガイモヒゲナガアブラムシを含むアブラムシ科(Aphididea)に属する動物に適用することが更に好ましい。ヨコバイ亜目に分類されるアブラムシ科以外の動物としては、例えば、タデキジラミ科(Aphalaridae)、ヒメキジラミ科(Calophyidae)、ネッタイキジラミ科(Carsidaridae)、ヒゲブトキジラミ科(Homotomidae)、ヒラズキジラミ科(Lividae)、カワリミャクキジラミ科(Phacopteronidae)、ナシキジラミ及びクワキジラミを含むキジラミ科(Psyllidae)、カイガラキジラミ科(Spondyliaspididae)、トガリキジラミ科(Triozidae)、ミカンコナジラミ及びオンシツコナジラミを含むコナジラミ科(Aleyrodidae)、カサアブラムシ科(Adelgidae)、ネアブラムシ科(Phylloxeridae)、オオワラジカイガラムシ及びワタフキカイガラムシを含むワタフキカイガラムシ科(Margarodidae)、ハカマカイガラムシ科(Ortheziidae)、Phenacoleachiidae科、カタカイガラモドキ科(Aclerdidae)、Apiomorphidae科、フサカイガラムシ科(Asterolecaniidae)、カブラカイガラムシ科(Beesoniidae)、フジツボカイガラムシ科(Cerococcidae)、ルビーロウムシ、イボタロウムシ及びヒモワタカイガラムシを含むカタカイガラムシ科(Coccidae)、Conchaspididae科、Cryptococcidae科、コチニールカイガラムシ科(Dactylopiidae)、ヤノネカイガラムシを含むマルカイガラムシ科(Diaspididae)、フクロカイガラムシ科(Eriococcidae)、Halimococcidae科、タマカイガラムシ科(Kermesidae)、ラックカイガラムシ科(Kerriidae)、ニセタマカイガラムシ科(Lecanodiaspididae)、Phoenicococcidae科、コナカイガラムシ科(Pseudococcidae)、Putoidae科、Stictococcidae科、Tachardiidae科、Acanaloniidae科、コガシラウンカ科(Achilidae)、Achilixiidae科、ヒシウンカ科(Cixiidae)、ハネナガウンカ科(Derbidae)、ウンカ科(Delphacidae)、ツマグロスケバ及びテングスケバを含むテングスケバ科(Dictyopharidae)、ヒロズアシブトウンカ科(Eurybrachyidae)、アオバハゴロモを含むアオバハコロモ科(Flatidae)、ビワハゴロモ科(Fulgoridae)、Gengidae科、Hypochthonellidae科、マルウンカ及びキボシマルウンカを含むマルウンカ科(Issidae)、Kinnaridae科、アシブトウンカ科(Lophopidae)、シマウンカ科(Meenoplidae)、ハゴロモモドキ科(Nogodinidae)、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモを含むハゴロモ科(Ricaniidae)、アリヅカウンカ科(Tettigometridae)、グンバイウンカ科(Tropiduchidae)、セミ科(Cidadidae)、テチガルクタ科(Tettigarctidae)、アワフキムシ科(Aphrophoridae)、コガシラアワフキ科(Cercopidae)、Clastopteridae科、トゲアワフキ科(Machaerotidae)、Aetalionidae科、Biturritiidae科、ツマグロオオヨコバイ、ミミズク及びツマグロヨコバイを含むヨコバイ科(Cicadellidae)、Melizoderidae科、ツノゼミ科(Membracidae)、Myerslopiidae科及びNicomiidae科を挙げることができる。

【0043】
本発明に係る給餌装置を使用して、上述した吸汁型節足動物に対して経口投与する液体としては、特に限定されず、如何なる組成の液体であってもよい。吸汁型節足動物に対して経口投与する液体としては、水道水、蒸留水、純水、超純水及びRO水等の水、有機溶剤、水あるいは有機溶剤を溶媒とし、所定の物質を溶質とする溶液の何れであっても良い。溶液としては、吸汁型節足動物の餌となる養分を含む溶液、吸汁型節足動物に対して影響する物質を含む溶液、吸汁型節足動物に対する影響を検査するための物質を含む溶液等を挙げることができる。

【0044】
本発明に係る給餌装置では、液体を経口摂取させる領域を任意の形状とすることができ、且つ、多くの個体に対して液体を経口摂取させることができる。したがって、本発明に係る給餌装置を使用することによって、生体外物質の経口投与による生物検定を効率化することができる。換言すると、本発明に係る給餌装置は、生体外物質として新規な農薬の開発や、RNAiの誘導分子を経口投与することによる遺伝子機能解析を効率的に行うことができる。

【0045】
ところで、上述した吸汁型節足動物の中には、動物の皮膚や植物の表皮に吸汁型口器を刺入する際に、種々の物質(化合物、ウイルス、微生物を含む)を含む唾液を注入するものがある。また、上述した吸汁型節足動物の中には、動物の皮膚や植物の表皮に卵を埋め込むものがある。吸汁型口器を刺入する際に本発明に係る給餌装置を使用することで、このような吸汁型節足動物が分泌した唾液や卵を回収することができ、唾液に含まれる種々の物質や卵を分析することができる。

【0046】
具体的には、まず、本発明に係る給餌装置を用いて吸汁型節足動物に液体を経口摂取させる。次に、例えば光学顕微鏡下でマイクロシリンジ等を用いて、吸汁型節足動物がその口器を刺入した位置から液体を抜き出す。このように抜き出した液体には、吸汁型節足動物が唾液として分泌した種々の物質が含まれる。したがって、このように抜き出した液体を使用して、吸汁型節足動物の唾液に含まれる種々の物質を分析することができる。

【0047】
例えば、保水部材1としてメッシュを用いた場合(図3及び4参照)には、メッシュに対応するように基材3上に形成された複数の凹部4から液体を回収することができる。すなわち、図7に示すように、例えば光学顕微鏡下にメッシュ状の保水部材1及び薄膜フィルム2上にいる吸汁型節足動物5を観察することができる。この状態で節足動物5が液体を十分に経口摂取できる時間維持する。そして、十分な時間が経過したときに、節足動物5が吸汁型口器を刺入した凹部4aの内部から、図示しないマイクロシリンジ等にて液体を吸引する。これによって、節足動物5が分泌した唾液を、凹部4a内部から吸引した液体内に回収することができる。また、節足動物5がいない凹部4bの内部から同様にして回収した液体と、凹部4a内から回収した液体とを比較することで、節足動物5が分泌した唾液を分析することができる。なお、具体的に、目開きが3000~5000μmのメッシュ構造を有する保水部材1を使用することで、凹部4内から最大の外径が2.7mm(12G針)のニードルを用いて液体を回収することができる。

【0048】
以上のように、本発明に係る給餌装置を使用して唾液を回収する場合、吸汁型節足動物が口器を刺入した位置から液体を回収すればよく、従来よりも希釈倍数が小さい唾液を採集することができる。このため、本発明に係る給餌装置を使用して唾液を回収する場合には、唾液に含まれる各種成分に関する分析を効率化することができる。

【0049】
また、本発明に係る給餌装置を用いてダニ目の節足動物に対して液体を経口投与する場合、例えば、図8に示すように、ダニ目の節足動物5の行動領域を区画する枠部材6を配設しても良い。ダニ目の節足動物5は、水の上や十分に含水した保水材料の上を歩行することができない。したがって、枠部材6としては、十分に含水した保水材料とすることができる。ここで、保水材料としては、上述した保水部材1と同様の材料で作製することができる。図8に示したように、枠部材6によって保水部材1を含む領域を区画することによって、節足動物5が行動できる範囲を限定することができ、節足動物5が逃げることを防止することができる。

【0050】
なお、上述した例において、給餌装置は、保水部材1を1個有するものとし、当該保水部材1の形状を略矩形としたが、保水部材1の個数や形状はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、本発明に係る給餌装置は、略円形の保水部材1を有してもよく(図9(A))、複数の保水部材1を有していてもよい(図9(B))。複数の保水部材1を有する給餌装置では、複数の保水部材1に同じ液体を含浸させても良いし、それぞれ異なる組成の液体を含浸させても良い。

【0051】
本発明に係る給餌装置は、例えば、研究対象の節足動物5を飼育する施設(例えば実験室)において使用することができるが、使用する態様はこれに限定されるものではない。例えば、上述した給餌装置において、保水部材1に含浸させる液体を吸汁型節足動物に対する殺虫成分を含むものとし、上述した給餌装置を植物栽培における殺虫装置として使用することができる。具体的には、図10に示すように、栽培対象の植物10の茎11に上述した給餌装置を巻回する。ここで図1に示した給餌装置を使用する場合、可撓性を有する例えば樹脂等の材料から基材3を形成し、あらゆる太さの茎に巻回できるようにすることが好ましい。或いは、図2に示した給餌装置を使用する場合、薄膜フィルム2を茎11に巻回することができる。

【0052】
図10に示したように、殺虫成分を含む液体を保水部材1に含浸させることで、栽培対象の植物10に付着した吸汁型節足動物に対して当該液体を経口投与することができる。その結果、栽培対象の植物10に対する吸汁型節足動物の悪影響を抑えることができる。

【0053】
また、本発明に係る給餌装置は、図示しないが、光やフェロモン剤等を利用した吸汁型節足動物の誘引装置と組み合わせて使用することができる。例えば、保水部材1に含浸させる液体を吸汁型節足動物に対する殺虫成分とした本発明に係る給餌装置を誘引装置と組み合わせて使用することができる。この場合、誘引装置により吸汁型節足動物を誘引し、誘引した吸汁型節足動物を給餌装置により殺傷することができる。このように、本発明に係る給餌装置は、図10に示した栽培対象の植物に使用する系以外にも、あらゆる環境において吸汁型節足動物を誘殺することができる。

【0054】
特に、本発明に係る給餌装置を植物栽培やその他環境における殺虫装置として使用する場合、殺虫成分は保水部材1に保持され外部に散逸することを防止できるため、長期間に亘って殺虫効果を持続することができ、殺虫成分による周囲環境に対する影響を低減することができる。

【0055】
また、本発明に係る給餌装置は、吸汁型節足動物を農薬として使用する、いわゆる生物農薬に使用することができる。一般に、吸汁型節足動物を農薬成分とする生物農薬は、当該吸汁型節足動物の寿命に起因して使用可能な期間が短いといった問題がある。これは、農薬成分である吸汁型節足動物に対する給水又は給餌ができないことが主要因である。仮に、給水又は給餌のための液体を含浸させた保水部材を容器に入れておくと、カビが発生してしまい使用できなくなる。

【0056】
本発明に係る給餌装置は、このような生物農薬における問題を解決して、生物農薬の使用期限を比較的長期化することができる。すなわち、本発明に係る給餌装置を生物農薬に使用する場合、吸汁型節足動物に対する給水又は給餌のための液体を保水部材1に含浸させておく。そして、本発明に係る給餌装置を生物農薬の容器に格納することで、農薬成分である吸汁型節足動物に対して当該容器内で給水又は給餌することができる。その結果、容器内の吸汁型節足動物は寿命を延ばすことができ、比較的に長期間に亘って生物農薬として使用することができる。この場合、本発明に係る給餌装置としては図2に示すような形態が好ましい。例えば、図2に示すような給餌装置は、有効成分としての吸汁型節足動物とその他担体等とともにボトルに封入される。これにより、有効成分としての吸汁型節足動物の寿命を伸ばすことができ、長期間に亘って使用可能な生物農薬を提供することができる。

【0057】
このとき、液体を含浸させた保水部材1は薄膜フィルム2によって覆われているため、生物農薬の容器内におけるカビの発生を防止することができる。特に、薄膜フィルム2として防湿性の素材を使用した場合には、より長期間に亘ってカビの発生を防止することができる。

【0058】
さらに、本発明に係る給餌装置は、例えばトコジラミ(カメムシ目トコジラミ科の昆虫)等の人体に対する害虫を駆除する装置として使用することができる。なお、トコジラミは、吸血性を有し、アレルギー反応により激しいかゆみを引き起こす害虫である。トコジラミは、ベッドの裏や、絨毯の裏、畳の隙間といった人の住環境に隠れていることが知られている。トコジラミについては、ピレスロイド系のフェノトリン(商品名スミスリン)等が殺虫成分として有効であり、パラジクロロベンゼンなどの防虫剤を嫌うことが知られている。

【0059】
したがって、これら殺虫成分や防虫成分を含む液体を保水部材1に含浸させた給餌装置を上述した住環境に配置することで、トコジラミを防除することができる。このとき、給餌装置としては、例えば図11に示すように、少なくとも一端部に粘着テープ等の取り付け手段20を配設することが好ましい。取り付け手段20によって給餌装置をベッドの裏や、絨毯の裏、畳の隙間等に取り付けることができる。また、この場合、給餌装置には、防除対象の害虫を誘引する物質を塗布するなどしても良い。

【0060】
このとき、液体を含浸させた保水部材1は薄膜フィルム2によって覆われているため、殺虫成分や防虫成分が外部に散逸することが防止できるため、長期間に亘って害虫防除効果を持続することができ、殺虫成分や防虫成分による人体への影響を低減することができる。

【0061】
さらにまた、本発明に係る給餌装置は、発生している吸汁型節足動物に対する有効な農薬や殺虫剤を検査する簡易検査装置として使用することができる。例えば、図12に示すように、簡易検査装置30は、複数のウェル31a、31b及び31cと、各ウェル31a、31b及び31cに配設された給餌装置(図12においては便宜的に保水部材1のみ示している)とから構成されている。なお、簡易検査装置30において、ウェルの数は特に限定されず、検査したい農薬や殺虫剤の種類に応じて適宜変更することができる。簡易検査装置30は、市販の細胞培養プレートや、96穴マイクロタイタープレート等を適宜使用することができる。

【0062】
簡易検査装置30において、各ウェル31a、31b及び31c内には、異なる農薬や殺虫剤を含浸させた保水部材1を備える給餌装置をそれぞれ配設する。また、各ウェル31a、31b及び31c内には、同じ農薬や殺虫剤を異なる濃度で含浸させた保水部材1を備える給餌装置をそれぞれ配設してもよい。

【0063】
以上のように構成された簡易検査装置30を用いて発生している吸汁型節足動物に対する有効な農薬や殺虫剤を検査するには、1~数匹の当該吸汁型節足動物をウェル31a、31b及び31c内の給餌装置に接触させる。そして、ウェル31a、31b及び31c内の吸汁型節足動物を観察することで、供試した農薬や殺虫剤の当該吸汁型節足動物に対する有効性や至適濃度を判断することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
〔実施例1〕
色素の経口投与試験:ナミハダニ
ハダニ類(節足動物門鋏角亜門クモガタ綱ダニ目ケダニ亜目ハダニ科)は農作物生産現場における主要害虫グループの1つである。ハダニ類の中でもナミハダニは、1100種以上の植物(内150種の重要農作物)に寄生する広食性害虫である。ナミハダニが抵抗性を示す化学農薬の有効成分数は現時点で95種類が報告され、この数は昆虫も含めた害虫種の中で最も多い。そのため、新規農薬の開発が最も求められている害虫種であり、農薬のような生体外物質の効率的な経口投与法の開発は重要である。
【実施例】
【0066】
そこで、本実施例では、本発明に係る給餌装置を用いてナミハダニに対する液体の経口投与効率を検討した。なお、直径35mmのポリスチレン製のペトリ皿では500頭程度のナミハダニの飼育が可能である。本発明に係る給餌装置として、保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)を使用し、これに青色素水溶液量0.1mLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。この場合、図13に示すように、青色素水溶液量0.1mLでこのペトリ皿の底部(491mm2)をカバーすることができた(比表面積:4910mm2/mL)。
【実施例】
【0067】
一方、従来の給餌装置としては、保水部材を配設しなかった以外は、本発明に係る給餌装置と同様に作製した。従来の給餌装置の場合、同液量ではペトリ皿の底部の一部(171mm2)しかカバーできなかったが(比表面積:1710mm2/mL)、ネッタイシマカ用の給餌システム(Costa-da-Silva AL, Navarrete FR, Salvador FS, Karina-Costa M, Ioshino RS, Azevedo DS, Rocha DR, Romano CM, Capurro ML (2013) Glytube: a conical tube and parafilm M-based method as a simplified device to artificially blood-feed the dengue vector mosquito, Aedes aegypti. PLoS One 8:e53816)における比表面積(327mm2/mL)よりも大きかった。
【実施例】
【0068】
この結果から、本発明に係る給餌装置では、比表面積はさらに大きく、従来よりも約3倍、ネッタイシマカ用のそれよりも約15倍拡張することができた。
【実施例】
【0069】
また、本実施例では、それぞれの給餌装置を設置した各ペトリ皿内にナミハダニを放飼し、24時間吸汁させた後、体色の変化から経口投与効果を調査した。その結果、体色が青く変化した個体の割合は、本発明の給餌装置では99%(n=445)であった。これに対して、従来の給餌装置では32%(n=284)であった。つまり、従来と比較して、本発明に係る給餌装置では、経口投与効果は約3倍改善された。この効果は、図13に示した展着面積との相関があると考えられ、用量あたりの展着面積の大きい本発明の給餌装置を用いれば、ナミハダニに対して液体をより効率的に経口投与できることが示唆された。
【実施例】
【0070】
〔実施例2〕
色素の経口投与試験:ミヤコカブリダニ
カブリダニ類(節足動物門鋏角亜門クモガタ綱ダニ目トゲダニ亜目カブリダニ科)は、ナミハダニを含めたハダニ類に加え、ハダニ類と同様に主要害虫グループを構成するコナジラミ類やアザミウマ類の主要天敵であり、これら害虫に対する生物農薬として農作物生産現場での利用が増えつつある。
【実施例】
【0071】
国内における生物農薬の出荷金額では、スワルスキーカブリダニ剤が最も大きく、チリカブリダニ剤やミヤコカブリダニ剤も上位にある。この内、ミヤコカブリダニは国内土着の天敵生物であるため、生態系の撹乱の恐れが少なく、今後の利用拡大が期待されている。ミヤコカブリダニ剤を含め、これら生物農薬に共通する問題として、使用期限が短いことや農薬に対する高い感受性がある。そのため、栄養状態等の改善に資する人工餌や感受性の低い農薬の開発は重要である。
【実施例】
【0072】
ミヤコカブリダニへの従来の給餌装置では、液状の人工餌を浸潤させた濾紙片をミヤコカブリダニとともに密閉容器内に投入し、その濾紙片から人工餌を吸汁させていた(Ogawa Y, Osakabe M (2008) Development, long-term survival, and the maintenance of fertility in Neoseiulus californicus (Acari: Phytoseiidae) reared on an artificial diet. Exp Appl Acarol 45:123-136)。そこで本実施例では、この従来の給餌装置におけるミヤコカブリダニへの経口投与効果と、本発明に係る給餌装置おける同効果とを比較した。
【実施例】
【0073】
本実施例では、本発明に係る給餌装置として、保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:500μm)を使用し、これに青色素水溶液15μLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。また、従来の給餌装置として、濾紙片(100mm2)に同量の青色素水溶液を浸潤させたものを作製した。これらをそれぞれ直径35mmのポリスチレン製の容器内に各50頭のミヤコカブリダニとともに投入し、容器の開口部を防水フィルムで密閉した。24時間後、青い体色に変化した個体を計数した。
【実施例】
【0074】
その結果、体色が青く変化した個体の割合は、本発明の給餌装置では50%(n=50)であったのに対して、従来の給餌装置では2%(n=50)であった。本実施例では、本発明に係る給餌装置を使用することによって、ミヤコカブリダニへの経口投与効率は、従来の給餌装置と比較して25倍改善できることが示された。
【実施例】
【0075】
なお、容器の密閉後、24時間経過したときの各給餌装置を観察した結果、従来の給餌装置では、密閉した防水フィルムの内壁で結露していた。これに対して、本発明に係る給餌装置では防水フィルムの内壁に結露は見られなかった。この結果から、本発明に係る給餌装置では、保水部材に滴下した水溶液中の水が蒸発しておらず、長時間に亘って保水性が維持できることを示している。
【実施例】
【0076】
〔実施例3〕
本実施例では、吸汁型の口器を有する昆虫に対して色素の経口投与が可能であるか検討した。具体的には、アブラムシ類の中でも広食性であるワタアブラムシ(節足動物門六脚亜門昆虫綱カメムシ目ヨコバイ亜目アブラムシ科)を対象とした。実施例1で作製した本発明に係る給餌装置を用いて、青色素水溶液の経口投与を試みた。その結果、図14に示すように、ワタアブラムシ胴部の消化管への着色を確認することができた。この結果から、本発明に係る給餌装置は、吸汁型の口器を有する昆虫にも適用可能であることが示された。
【実施例】
【0077】
〔実施例4〕
本実施例では、本発明に係る給餌装置を使用することで、溶液だけでなく、球状粒子等を分散質とする分散液を経口投与できるか検討した。本実施例ではナミハダニを使用した。本実施例では、直径が50nmのポリスチレン製の蛍光球形粒子を水に分散した分散液を調製した。本実施例では、保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)に分散液を滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して給餌装置を作製した。その結果、ナミハダニの消化管内から蛍光シグナルが観察された(図15)。本実施例より、本発明に係る給餌装置は、吸汁型節足動物に対して微粒子を経口投与することも可能であることが判明した。
【実施例】
【0078】
また、供試した個体の内、蛍光シグナルを示した個体の割合から微粒子の経口投与効果を調査した結果、70~90%であることが分かった。
【実施例】
【0079】
〔実施例5〕
本実施例では、本発明に係る給餌装置の保水部材の種類による色素の経口投与効率の制御を検討した。本実施例では、ナミハダニを使用した。本実施例では、本発明に係る給餌装置として、100mm2の保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)又は濾紙片(不織布)を使用し、それぞれに青色素水溶液10μLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。これら給餌装置にナミハダニを接種し、48時間後、青い体色に変化した個体を計数した。
【実施例】
【0080】
その結果、体色が青く変化した個体の割合は、ナイロン製メッシュを保水部材として用いた給餌装置では94%(n=51)であったのに対して、濾紙片を保水部材として用いた給餌装置では18%(n=50)であった。本実施例により、本発明に係る給餌装置の保水部材の材質によって、ナミハダニへの経口投与効率を制御できることが示された。
【実施例】
【0081】
〔実施例6〕
本実施例では、本発明に係る給餌装置の保水部材の種類による殺虫成分の経口投与効率の制御を検討した。本実施例では、ナミハダニを使用した。本実施例では、本発明に係る給餌装置として、100mm2の保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)又は濾紙片(不織布)を使用し、それぞれ殺虫成分として18ppmのアバメクチン(商品名:アグリメック)水溶液10μLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。これら給餌装置にナミハダニを接種し、24時間後、死亡した個体を計数した。
【実施例】
【0082】
その結果、死亡した個体の割合は、ナイロン製メッシュを保水部材として用いた給餌装置では100%(n=52)であったのに対して、濾紙片を保水部材として用いた給餌装置では0%(n=40)であった。本実施例により、本発明に係る給餌装置の保水部材の種類によって、ナミハダニへの殺虫成分の経口投与効率を制御できることが示された。
【実施例】
【0083】
〔実施例7〕
本実施例では、本発明に係る給餌装置を使用することで、RNAiの誘導分子である二本鎖RNAの水溶液を経口投与できるか検討した。本実施例では、ナミハダニを使用した。本実施例では、本発明に係る給餌装置として、100mm2の保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)に、RNAiの誘導分子としてナミハダニの液胞型プロトンATPアーゼ遺伝子の配列(600bp)を標的とする二本鎖RNA水溶液(二本鎖RNAのセンス鎖の塩基配列;配列番号1、二本鎖RNA濃度0.01μg/μL又は0.1μg/μL)10μLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。陰性対照として、ナミハダニの遺伝子間配列(382bp、非特許文献22)を標的とする二本鎖RNA水溶液(二本鎖RNAのセンス鎖の塩基配列;配列番号2、二本鎖RNA濃度0.01μg/μL又は0.1μg/μL)を用いた。これら給餌装置にナミハダニを接種し、6日間、死亡した個体と産下された卵を計数した。
【実施例】
【0084】
結果を図16に示す。図16に示すように、二本鎖RNAの濃度が0.01μg/μL及び0.1μg/μLいずれの場合も、液胞型プロトンATPアーゼ遺伝子の配列を標的とする二本鎖RNA水溶液を経口摂取して死亡した個体の割合は、陰性対照の二本鎖RNA水溶液を経口摂取して死亡した個体の割合よりも有意に高かった(n=71~97)。さらに、濃度が0.01μg/μL又は0.1μg/μLいずれの場合も、液胞型プロトンATPアーゼ遺伝子の配列を標的とする二本鎖RNA水溶液を経口摂取した個体の6日間の産卵数は、陰性対照の二本鎖RNA水溶液を経口摂取して死亡した個体の割合よりも有意に低かった(n=71~97)。さらにまた、液胞型プロトンATPアーゼ遺伝子の配列を標的とする二本鎖RNA水溶液を経口摂取した個体の割合では、液胞型プロトンATPアーゼ遺伝子のRNAiによって生じる表現型である中腸内腔で黒化した細胞の蓄積(非特許文献22参照)が観察された。本実施例により、本発明に係る給餌装置によって、RNAiの誘導分子である二本鎖RNA水溶液をナミハダニに経口投与できることが示された。
【実施例】
【0085】
〔実施例8〕
本実施例では、本発明に係る給餌装置を使用することで、殺虫成分の接触毒性ではなく経口毒性のみを評価できるか検討した。本実施例では、ナミハダニを使用した。本実施例では、本発明に係る給餌装置として、100mm2の保水部材:ナイロン製メッシュ(目開き:100μm)に、殺虫成分として4段階の濃度(0.018ppm、0.18ppm、1.8ppm、18ppm)のアバメクチン(商品名:アグリメック)水溶液10μLを滴下した後、パラフィン製フィルム(商品名:パラフィルムM)を伸展した状態で被覆して作製した。陰性対照には水を用いた。この給餌装置にナミハダニを接種し、24時間後、死亡した個体を計数した。
【実施例】
【0086】
また、接触毒性のみを評価するために、同濃度に調整したアバメクチン水溶液0.5mLをポリプロピレン製のチューブ(1.5mL)の内壁に塗布し、風乾後、ナミハダニをチューブ内に封入し、24時間後、死亡した個体を計数した。また、経口毒性と接触毒性の双方を評価するために、同濃度に調整したアバメクチン水溶液8μLを餌植物であるインゲンマメの葉片(φ10mm)の向軸面に塗布し、風乾後、ナミハダニを接種し、24時間後、死亡した個体を計数した。
【実施例】
【0087】
本発明に係る給餌装置を使用したときの試験結果を図17に示し、チューブを用いたときの試験結果を図18に示し、葉片を用いたときの試験結果を図19に示した。図17に示すように、本発明に係る給餌装置におけるナミハダニに対するアバメクチンのLC50(半数致死濃度)は0.427ppmであった(n=30)。また、図18に示すように、アバメクチンを内壁に塗布したポリプロピレン製チューブ内のナミハダニに対するLC50は0.840ppmであった(n=30~40)。また、図19に示すように、アバメクチンを向軸面に塗布したインゲンマメの葉片上のナミハダニに対するLC50は0.291ppmであった(n=50)。すなわちLC50の値は、接触毒性(LC50=0.840 ppm)<経口毒性(LC50=0.427 ppm)<接触毒性+経口毒性(LC50=0.291 ppm)となった。本実施例より、本発明に係る給餌装置によって、ナミハダニに対する殺虫成分の経口毒性のみを評価できることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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