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Specification :(In Japanese)抗ウイルス薬

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2020-055774A
Date of publication of application Apr 9, 2020
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)抗ウイルス薬
IPC (International Patent Classification) A61K  35/76        (2015.01)
A61P  31/20        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61K  35/761       (2015.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
C12N  15/861       (2006.01)
C12N  15/864       (2006.01)
C12N  15/867       (2006.01)
C12N  15/55        (2006.01)
C12N  15/11        (2006.01)
FI (File Index) A61K 35/76
A61P 31/20
A61P 1/16
A61K 35/761
A61K 31/7105
A61K 31/713
A61K 48/00
C12N 15/861 ZNAZ
C12N 15/864 100Z
C12N 15/867 Z
C12N 15/55
C12N 15/11 Z
Number of claims or invention 8
Filing form OL
Total pages 14
Application Number P2018-187395
Date of filing Oct 2, 2018
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】小原 恭子
Applicant (In Japanese)【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4C084
4C086
4C087
F-term 4C084AA13
4C084NA01
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB33
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4C087NA01
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB33
Abstract (In Japanese)【課題】B型肝炎ウイルス(HBV)の複製を抑制するための抗ウイルス薬を提供する。
【解決手段】HBVゲノムDNA配列(配列番号1を参照したとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ、該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する有効量のベクターを含む、被験体においてHBV複製を抑制するための抗ウイルス薬。
【選択図】図7
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムDNA配列(配列番号1を参照したとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ、該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現するベクターを有効量で含む、被験体においてHBV複製を抑制するための抗ウイルス薬。
【請求項2】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、請求項1に記載の抗ウイルス薬。
【請求項3】
前記CRISPR酵素が、Cas9エンドヌクレアーゼ又はCas9ニッカーゼである、請求項1又は2に記載の抗ウイルス薬。
【請求項4】
前記ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号2、3及び4によって表されるポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗ウイルス薬。
【請求項5】
他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ、該他のガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する他のベクターをさらに含み、但し、該他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号5~14のいずれかによって表される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗ウイルス薬。
【請求項6】
前記ベクターにさらに、配列番号5~14のいずれかによって表されるポリヌクレオチド配列を含む他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を発現可能に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗ウイルス薬。
【請求項7】
前記被験体が、哺乳動物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗ウイルス薬。
【請求項8】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項7に記載の抗ウイルス薬。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、CRISPR/Casシステムを利用して作製されたB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(以下、「HBV」と称することもある)は、B型肝炎の原因ウイルスであり、ヘパドナウイルス科に分類される。このウイルスは、球状であって外被(エンベロープ)とコアの二重構造を有しており、エンベロープタンパク質がHBs抗原と呼ばれ、またコアタンパク質がHBc抗原と呼ばれる。コアの中には、不完全二本鎖のHBV・DNAやHBV関連DNAポリメラーゼが存在している。HBV・DNAは約3,200塩基からなり、HBs抗原、HBc抗原、X蛋白質、DNAポリメラーゼなどをコードしている。HBVは遺伝子レベルでの分類が行われ、これまでにA型からJ型まで10種類の遺伝子型(ゲノタイプ)が同定されている。我国(日本)の患者ではC型への感染が多く、それに続いてB型が多い。
【0003】
HBVに対する抗ウイルス薬の開発に関連してCRISPR/Casシステムを利用する試みがなされており、いくつか報告されている(特許文献1~5)。
【0004】
CRISPR/Casシステムについて、2011年にCas9と2本のガイド鎖RNA(crRNA及びtracrRNA)が複合体を形成し、標的DNAを切断することが報告された(非特許文献1)。その後、このようなゲノムDNAを特異的に切断する人工制限酵素を利用して、ゲノムDNAを編集したり遺伝子改変したりする技術(「ゲノム編集」と称する)が行われるようになった。ゲノム編集の技術の利用は広範囲に及んでおり、例えば植物の育種、水畜産への利用、創薬、遺伝子治療、再生医療、薬物スクリーニング、疾患診断、予後診断などが挙げられる(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】US2016/0317677A1
【特許文献2】特表2017-527256号公報
【特許文献3】特表2016-524472号公報
【特許文献4】特表2016-521995号公報
【特許文献5】特表2017-518075号公報
【0006】

【非特許文献1】Deltcheva, E. et al.,Nature,471:602-607,2011
【非特許文献2】真下知士、山本卓編集,実験医学(増刊),第34巻第20号,2016年,羊土社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゲノム編集技術を用いたHBVに対する抗ウイルス薬を提供することである。このような抗ウイルス薬は、HBV複製を高度に抑制して感染を防御し、並びにHBVによる肝炎の治療に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の特徴を包含する。
[1]B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムDNA配列(配列番号1を参照したとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ、該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現するベクターを有効量で含む、被験体においてHBV複製を抑制するための抗ウイルス薬。
[2]上記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、上記[1]に記載の抗ウイルス薬。
[3]上記CRISPR酵素が、Cas9エンドヌクレアーゼ又はCas9ニッカーゼである、上記[1]又は[2]に記載の抗ウイルス薬。
[4]上記ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号2、3及び4によって表されるポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の抗ウイルス薬。
[5]他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ、該他のガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する他のベクターをさらに含み、但し、該他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号5~14のいずれかによって表される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の抗ウイルス薬。
[6]上記ベクターにさらに、配列番号5~14のいずれかによって表されるポリヌクレオチド配列を含む他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を発現可能に含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の抗ウイルス薬。
[7]上記被験体が、哺乳動物である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の抗ウイルス薬。
[8]上記哺乳動物が、ヒトである、上記[7]に記載の抗ウイルス薬。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗ウイルス薬は、HBV感染肝細胞においてHBV複製を例えば約80%以上抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この図は、HBVゲノムの標的領域を示す。
【図2】この図は、ガイドRNA(gRNA)配列を示す。ヌクレオチド位置は、配列番号1のHBV(C型)のヌクレオチド配列を参照したときの領域である。
【図3】この図は、WJ10gRNAをコードするポリヌクレオチド(WJ10-gRNA)及びCas9酵素をコードするDNA(hspCas9)を含むベクターの例示である。
【図4】この図は、ベクター感染後72時間、96時間でのHBV感染ヒト肝臓癌細胞株(HepG2.2.15)の細胞及び上清におけるCRISPR/Cas9-U6-gRNA-レンチウイルスベクターによるHBV複製抑制を示す。YA113は、GFP陰性コントロールであり、YA118、119、120はそれぞれ、WJ10-gRNA、WJ11-gRNA、WJ12-gRNAを搭載している。縦軸は、総DNA1μgあたりのHBV・DNAコピー数である。
【図5】この図は、CRISPR/Cas9-AAVベクターの作製手順を示す。AAVはアデノ随伴ウイルスを示す。
【図6】この図は、AAV粒子を作製するために使用したプラスミドを示す。
【図7】この図は、HBV感染マウスにCRISPR/Cas9-AAVベクター(WJ11)を腹腔内投与(i.p.)したのち6日目のHBV複製抑制を示す。縦軸は、細胞の場合、総DNA1μgあたりのHBV・DNAコピー数であり、上清の場合、培養上清1mLあたりのHBV・DNAコピー数である。また、横軸は、ベクターのM.O.G.(多重感染度;すなわち細胞1個あたりのウイルスベクター遺伝子の数)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明をさらに詳細に説明する。

【0012】
1.B型肝炎ウイルス(HBV)
B型肝炎はHBVが血液や体液を介して感染して起きる肝臓の疾患である。感染後、1~6か月の潜伏期間を経て肝炎が発症する。炎症が持続すると慢性肝炎から肝硬変、さらには肝癌(肝細胞癌)へと進展する可能性がある。

【0013】
HBVを原因とするB型肝炎は、血液などの体液中のB型肝炎表面抗原が陽性と判定されることによって診断される。

【0014】
B型肝炎の治療には、ペグ化インターフェロン(PegINF)、ウイルス増殖抑制のための核酸アナログ製剤(例えば、ラミブジン(例えばゼフィックスTM、アデホビル(ヘプセラTM)、エンテカビル(バラクルードTM)及びテノホビル(テノゼットTM)))、ウルソデオキシコール酸/グリチルリチン製剤、B型肝炎ワクチン(予防)、肝庇護療法などの治療法が知られている。

【0015】
本発明の抗ウイルス薬は、HBVのゲノムDNAの機能性領域を特異的に切断して複製を顕著に抑制することができるため、急性B癌肝炎だけでなく慢性B癌肝炎の治療にも使用することができる新しい治療薬となり得る。

【0016】
HBVは、ヘパドナウイルスに属するDNAウイルスであり、直径約42nmで約3.2kbの環状の二本鎖DNAとそれを包むエンベロープからなる。HBVの内部にはDane粒子と呼ばれるコアを有しており、そのゲノムDNAには、互いに重複したS抗原遺伝子、C抗原遺伝子、X抗原遺伝子、P抗原遺伝子に対応する4つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する(飯島紗幸、田中靖人,ウイルス,第63巻第1号,pp.23-32,2013)。HBVの二本鎖DNAポリヌクレオチドは、感染細胞核内で自身の産生するDNAポリメラーゼの働きにより完全二本鎖DNA(covalently closed circular DNA;cccDNA(二本鎖共有結合閉環状DNA))となるので、本発明では、HBVの標的ウイルス核酸は、好ましくは、cccDNAであるエピソームウイルス核酸である。

【0017】
2.ガイドRNA(gRNA)配列
本発明の抗ウイルス薬は、ヒトを含む哺乳動物(以下、「被験体」という)にHBVが感染したとき肝細胞の核内の宿主ゲノムへのウイルスの組み込みによって生成したHBV二本鎖DNA(例えばcccDNA)を切断することによって、HBV複製を抑制することができる。好ましい標的ウイルス核酸は、生物のゲノムに組み込まれないHBVエピソーム核酸内に含まれるHBV二本鎖共有結合閉環状DNA(cccDNA)である。

【0018】
上記抗ウイルス薬は、HBVゲノムDNA配列(例えば、配列番号1を参照したとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する有効量のベクターを含む。

【0019】
本明細書中「ポリヌクレオチド」という用語は、特に断らない限り、RNA又はDNAのいずれかを指す。

【0020】
HBVゲノムDNA配列は、HBV遺伝子型A~JのいずれかのゲノムDNA配列であり、地域特異性がある。例えば日本を含むアジアのB型肝炎患者には遺伝子型B及びCのHBVに感染する人が多いと云われている。上記例示の配列番号1(GenBank Accession No.AB981580)、並びに、バリアントに関するGenBank Accession No.LC360507、LC365290、LC155820、LC155819、LC155818、LC155817、LC155816、LC155815、LC155814などの配列は、例えば日本人の患者(約85%)に多い遺伝子型CのHBVのゲノムDNA配列を示す。HBV遺伝子型A~HのゲノムDNA配列は、NCBI(米国)のGenBankに登録されている。GenBankアクセッション番号の例は、遺伝子型Aでは、LC365288など、遺伝子型Bでは、AB981583、AB981582、AB981581など、遺伝子型Cでは、AB981580など、遺伝子型Dでは、LT718449、LT717703、LT717702など、遺伝子型Eでは、HE974384、HE974380など、遺伝子型Fでは、LT935670、LT935669、LT935668など、遺伝子型Gでは、AB625343、AB625342など、遺伝子型Hでは、AB298362、AB846650、AB516395などである。

【0021】
本明細書中、「ガイドRNA」は、ガイド配列に連結されたcrRNA(CRISPRRNA)と、該crRNAにハイブリダイズしたtracrRNA(trans-activating crRNA)とを含む複合体、或いは、ガイド配列に連結されたcrRNAとtracrRNAがループ(例えばテトラループ)で連結されたsgRNA(single-guide RNA)を指す。

【0022】
ここで「ガイド配列」は、HBV・DNAポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズすることができる、該標的配列に相補的な配列を含む。

【0023】
ガイド配列は、限定されないが、例えば約10~約30ヌクレオチド長、好ましくは約15~約25ヌクレオチド長、さらに好ましくは約18~約22ヌクレオチド長、例えば20~21ヌクレオチド長を有する。

【0024】
ガイド配列とその対応する標的配列との間の配列同一性の程度は、約70%~100%、例えば、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上又は約99%以上、100%以下である。ガイド配列と標的配列の最適なアラインメントは、配列を整列させるための任意のアルゴリズム(例えばNCBI BLAST)を用いて決定することができる。

【0025】
標的配列は、Cas酵素の一例であるCas9が化膿連鎖球菌(S.pyogenes)又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9である場合に、その3’末端領域においてプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)により隣接される。

【0026】
Cas9は、II型CRISPR(clustered regurly interspaced short palindromic repeats)に属するRNA依存性DNAエンドヌクレアーゼであり、2つのヌクレアーゼドメイン(RuvCとHNH)をもち、crRNA、tracrRNAの2つのノンコーディングRNAとエフェクター複合体を形成し、crRNA中のガイド配列と相補的な標的二本鎖DNAを認識し切断する。標的二本鎖DNAのうち、crRNAと相補的なDNA鎖(相補的DNA)はHNHドメインにより切断され、もう一方のDNA鎖(非相補的DNA)はRuvCドメインにより切断される。Cas9による標的二本鎖DNAの認識には、特定の数個のヌクレオチド(例えば3~5ヌクレオチド)からなるPAMが標的配列の近傍に存在することが必要である。PAMの約3~4塩基上流に平滑末端又は一塩基突出の末端を生じるDNA二本鎖切断が誘導される(非特許文献2のpp.24-34(濡木理ら))。

【0027】
PAMは、例えば5'-NGG-3'、5'-NGCG-3'、5'-NGA-3'、5’-NGAC-3'、5’-NRG又は5’-NNGRR(NはA、G、C、T(もしくはU)のいずれかであり、RはG、Aのいずれかである。)である。また、化膿連鎖球菌(S.pyrogenes)Cas9酵素の場合、適切なPAMは5’-NRG(NはA、G、C、T(もしくはU)のいずれかであり、RはG、Aのいずれかである。)である。

【0028】
tracrRNA配列は1つ以上のヘアピンを有し、30以上のヌクレオチド長、40以上のヌクレオチド長、50以上のヌクレオチド長、又は60以上のヌクレオチド長である。

【0029】
ガイド配列は、HBVのゲノムDNAのS抗原遺伝子、C抗原遺伝子、X抗原遺伝子及び/又はP抗原遺伝子に対応する4つのORFのいずれかの標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる。標的配列は、HBVゲノムDNA配列(例えば「配列番号1」を参照したとき)の例えばヌクレオチド番号(nn)1859~1878、1865~1884、1815~1834、1775~1794、1578~1597、1551~1570、1521~1540、1520~1539、1273~1254、237~256、190~209、56~75などの領域において約10~約30ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列又はその相補的配列である。

【0030】
具体的には、ガイド配列は、限定されないが、例えば、図2(WJ11,WJ12,R8,S1,S2,X1,X2,W1,W7,W8,WJ10,R17,R21)、或いは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14に示されるヌクレオチド配列である。これらのガイド配列を、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチドと組み合わせるとき、HBVの複製数をコントロール(本発明のベクターを含まない場合の複製数)の約50%以上、好ましくは約75%以上、例えば約80%以上減少させることができる。

【0031】
ガイド配列は、例えば、配列番号2、3及び4によって表されるポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む。上記ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列はいずれも、発現可能に含まれる。

【0032】
3.CRISPR酵素
本明細書中「CRISPR酵素」は、HBVのゲノムDNAの標的配列(例えばウイルスの複製に関係する配列)を特異的に切断するヌクレアーゼである。この酵素には、例えばCas(CRISPR-associated protein)酵素が含まれる。CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列はDNA又はRNAであり、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二本鎖の一方の鎖の切断を誘導し、第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の切断を誘導して二本鎖切断を引き起こす。

【0033】
Cas酵素の非限定的な例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られている)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、又はこれらの改変型が挙げられる。好ましいCas酵素は、Cas9である。

【0034】
したがって、CRISPR酵素の好ましい例はCas酵素であり、さらに好ましい例はCas9エンドヌクレアーゼ、変異型(defective)Cas9、又はCas9ニッカーゼである。ここでニッカーゼは、二本鎖DNAの一方の鎖にニックを導入する酵素であり、一本鎖DNAのみ切断するためにCas9に変異が導入されている(例えばD10A)。Cas9(例えばStreptococcus pyogenesのCas9,GenBank Accession No.MH015238)の変異は、例えばD10A、E762A、H840A、N854A、N863A及びD986Aからなる群から選択されるが、HBVのゲノムDNAの標的配列を切断し、その複製を抑制する限り、上記の変異に限定されない。或いは、Cas9の変異には、Cas9のRuvC及びHNH触媒ドメイン内の触媒ドメインの1つにおける変異が含まれ得る。

【0035】
Cas9は、例えば、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(「spCas9」)、黄色ブドウ球菌(Streptococcus aureus)由来のCas9(「saCas9」)、サーモフィラス菌(S.thermophilus)由来のCas9、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)由来のCas9などである。好ましいCas9酵素は、spCas9又はsaCas9である。

【0036】
4.ベクター
本発明のベクターは、HBVゲノムDNA配列(配列番号1を参照したとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する第一のベクターである。

【0037】
ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、配列番号2、3及び4によって表されるポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列である。上記ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列はいずれも、発現可能に含まれる。

【0038】
本発明における別のベクターは、他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ該他のガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する他のベクターであり、但し、該他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号5~14のいずれかによって表される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、第二のベクターである。

【0039】
上記の第一のベクターは、本発明の抗ウイルス薬の有効性分であり、抗ウイルス薬に、該ベクターのみを含有させてもよいし、或いは、上記の第二のベクターの少なくとも1つを第一のベクターと組み合わせて含有させてもよい。

【0040】
或いは、上記第一のベクターには、配列番号5~14のいずれかによって表されるポリヌクレオチド配列を含む他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を発現可能に含んでもよい。

【0041】
本発明のベクターは、例えばウイルスベクター又はプラスミドベクターであり、DNA又はRNAのいずれでもよい。

【0042】
ウイルスベクターは、限定されないが、例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどであり、好ましくはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターである。

【0043】
プラスミドベクターは、限定されないが、例えばall-in oneTM vector(T. Sakuma et al.,SCIENTIFIC REPORTS;4:5400,2014;DOI:10.1038/srep05400)である。all-in oneTM vectorは、1つのプラスミドDNAにCas9ヌクレアーゼおよびguide RNAクローニング用カセットが搭載されたベクターである。

【0044】
ガイドRNAをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するためのプロモーターの非限定的な例は、U6プロモーター、H1プロモーター、T7プロモーターなどであり、さらに、U6プロモーターターミネーターなどのターミネーターを含んでもよい。

【0045】
Cas酵素などのCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するためのプロモーターの非限定的な例は、EF1αプロモーター、CMVプロモーターなどである。

【0046】
ベクターにはさらに、1つ以上の核局在化配列(NLS)、His-Tag配列、レポーター遺伝子配列、選択マーカー遺伝子配列(例えば、薬剤耐性遺伝子配列)などを挿入することができる。

【0047】
本発明のベクターは、その1つ以上を、例えばリポソーム又はリポフェクション製剤、ナノ粒子、エキソソームなどの送達システムに含有させてもよい。

【0048】
5.抗ウイルス薬
本発明はさらに、被験体においてHBV複製を抑制するための抗ウイルス薬を提供する。

【0049】
上記の抗ウイルス薬には、B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムDNA配列(配列番号1を参照するとき)のヌクレオチド番号1810~1890の領域の標的配列に結合可能である、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ該ガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する(第一の)ベクターを有効成分として(もしくは、有効量で)含む。

【0050】
本発明の抗ウイルス薬にはさらに、他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列と、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列とを含み、かつ該他のガイドRNA及び該CRISPR酵素を共発現する他のベクターを含み、但し、該他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号5~14のいずれかによって表される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、少なくとも1つの(第二の)ベクターを含有させることができる。

【0051】
或いは、上記第一のベクターには、配列番号5~14のいずれかによって表されるポリヌクレオチド配列を含む他のガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を発現可能に含んでもよい。

【0052】
上記ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列は、その5'末端領域にU6プロモーター又はH1プロモーターなどのプロモーター配列を結合して含み、また、複数の異なる(プロモーター配列)-(ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列)間には、プロモーターブロック配列を挿入することができる。また、各ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列の3'末端領域には、ターミネーターを含んでもよい。

【0053】
本明細書中「被験体」は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。

【0054】
抗ウイルス薬には、例えば、薬学的に許容可能な担体(例えば滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、グリセロール、ピーナッツ油、ゴマ油など)、さらに乳化剤、pH緩衝物質、マイクロスフェア、ポリマー、防腐剤、懸濁剤、酸化防止剤などの補助剤を適宜含有させることができる。

【0055】
投与経路は、非限定的に、例えば筋肉内、静脈内、動脈内、経皮、鼻腔内、経粘膜投与などである。投与は、1日あたり単回投与又は複数回投与のいずれでもよい。また、1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月の間隔で投与することができる。

【0056】
有効成分であるウイルスベクターを、1回投与あたり、例えば少なくとも1×105の粒子(粒子単位)、好ましくは少なくとも約1×106~1×1012の粒子の用量で投与することができる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されるべきではない。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
<HBVゲノム上のgRNA標的配列の設計>
HBVゲノム上のコア、ポリメラーゼ(Pol)、X遺伝子ならびにオーバーラップ領域等の15か所にgRNAの配列を設計した(図1、2)。
【実施例】
【0059】
[実施例2]
<gRNA発現ユニットの合成及びベクターへのクローニング>
gRNAはレンチウイルス作製用のall in one ベクター(図3)にクローニングした。各gRNAはU6プロモーターの下流にあって発現可能である。また、ベクターにはCas9酵素がコードされており、gRNAに作用できる。Cas9酵素の遺伝子は野生型(wild type)のものと、nickase型、変異型があるが、最終的にはwild typeとnickase型をクローニングに用いた。レポーター遺伝子のnanoluc(NL)を持ったHBV NLに対してgRNA発現ベクターを導入したところ、gRNA10,11,12を発現するベクターが最も抑制効果が高かった。
【実施例】
【0060】
[実施例3]
<CRISPR-Cas9レンチウイルスベクターの作製>
そこで、WJ10,11,12のgRNAを持つベクターをHEK293細胞にトランスフェクションしてレンチウイルスベクターを構築した(それぞれYA118,119,120)。この際にMission Lentiviral Packaging Mix(SIGMA-ALDRICH)を同時に加えて作製した。このレンチウイルスベクターをポリブレン4μg/mL存在下で、HBVが持続感染するHepG2.2.19細胞に約moi=1で感染した(図4)。また、陰性コントロールとして、GFP遺伝子を標的としたレンチウイルスベクターも作成した(YA113)。その結果、陰性コントロールに比べ、感染後72,96時間で、細胞内ならびに細胞上清でHBVの産生量が有意に抑制された。
【実施例】
【0061】
[実施例4]
<CRISPR/Cas9-AAVベクター(WJ11)の作製>
レンチウイルスベクターでgRNAの抗HBV効果が確認できたので、in vivoにおけるデリバリーの実績があるAAVを発現ベクターとして構築した(図5)。AAV2型をベクターとして用いたが、クローニングできる外来遺伝子が4kbまでなので、Cas9遺伝子を上流と下流の2つに別けて構築した。gRNAの効果を検証する場合には、pAAV-Guide it Upベクター(図6A)とpAAV-Guide it Downベクター(図6B)を共感染して行った。gRNA配列はpAAV-Guide it downベクターにU6プロモーターと共に組み込まれている。この他にAAVを作成するためにpRC-mi342ベクター(図6C)とpHelperベクター(図6D)を使用した。
【実施例】
【0062】
[実施例5]
<AAV-gRNA(WJ11)によるHBV複製抑制>
レンチウイルスベクターで最も高いHBV複製抑制の見られたWJ11のgRNA配列を搭載したAAVベクターをHBV持続感染細胞HepG2.2.19に感染させてその効果を検討した(図7)。その結果、感染6日後にはAAVのmoi(2x103~1x105)に用量依存的にHBVの感染が細胞内ならびに上清で抑制されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の抗ウイルス薬は、HBV感染によるB型肝炎の治療のために産業上利用しうる。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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