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明細書 :超音波診断装置、情報処理装置及び超音波診断プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-080972 (P2020-080972A)
公開日 令和2年6月4日(2020.6.4)
発明の名称または考案の名称 超音波診断装置、情報処理装置及び超音波診断プログラム
国際特許分類 A61B   8/14        (2006.01)
FI A61B 8/14
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2018-215353 (P2018-215353)
出願日 平成30年11月16日(2018.11.16)
発明者または考案者 【氏名】福原 隆宏
【氏名】森崎 剛史
【氏名】松田 枝里子
【氏名】植木 賢
【氏名】上原 一剛
出願人 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002789、【氏名又は名称】特許業務法人IPX
【識別番号】100200872、【弁理士】、【氏名又は名称】押谷 昌宗
【識別番号】100210103、【弁理士】、【氏名又は名称】奥村 光平
審査請求 未請求
テーマコード 4C601
Fターム 4C601DE01
4C601EE11
4C601EE20
4C601JC06
4C601JC15
4C601KK25
4C601KK31
4C601LL23
要約 【課題】音響分析を専門とする耳鼻咽頭科以外の医師でも非侵襲的に音声分析を実行可能な超音波診断装置、情報処理装置及び超音波診断プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明によれば、発生部、受信部及び速度計算部を備え、前記発生部は、超音波を発生可能に構成され、前記受信部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した前記超音波を受信可能に構成され、前記速度計算部は、前記受信した前記超音波をドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、超音波診断装置が提供される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
発生部、受信部及び速度計算部を備え、
前記発生部は、超音波を発生可能に構成され、
前記受信部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した前記超音波を受信可能に構成され、
前記速度計算部は、前記受信した前記超音波をドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、
前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記喉頭・気管壁は、前記被検者の喉頭の下方の一部と、前記被検者の気管の上方の一部と、を含む領域である、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記喉頭・気管壁は、前記被検者の喉頭の平面視における面積S3のうち、10~50%を含む領域である、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記喉頭・気管壁は、前記被検者の気管の平面視における面積S4のうち、10~50%を含む領域である、
請求項2又は請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記速度計算部は、前記喉頭・気管壁に反射した前記超音波のドプラ偏移周波数に基づいて、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成される、
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
画像生成部を備え、
前記画像生成部は、前記喉頭・気管壁が振動する速度と時間を対応付けた画像を生成可能に構成される、
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
比較部を備え、
前記比較部は、前記生成された画像と、予め記憶された複数の症例画像と、を比較可能に構成され、
前記症例画像は、前記喉頭・気管壁に生じる症例毎に記憶された画像である、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、前記比較結果に基づいて、前記生成された画像に対応する前記症例を表す画像を生成可能に構成される、
請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
がん評価部を備え、
前記がん評価部は、前記受信した前記超音波に基づいて、前記被検者の声帯病変についての評価を実行可能に構成される、
請求項1~請求項8の何れか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
記憶部及び速度計算部を備え、
前記記憶部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶し、
前記速度計算部は、前記データをドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、
前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、
情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、記憶部及び速度計算部として機能させ、
前記記憶部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶し、
前記速度計算部は、前記データをドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、
前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、
超音波診断プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、情報処理装置及び超音波診断プログラムに関する。
【0002】
ヒトの声帯の疾患には、様々なタイプの疾患が存在する。例えば、声帯結節、声帯ポリープ、声帯嚢胞、声帯肉芽腫、喉頭がん等が挙げられる。また、甲状腺の手術により生じた反回神経麻痺により、声帯麻痺が引き起こされる場合がある。さらに、甲状腺の手術後により生じた上喉頭神経麻痺により、高い声が出なくなる場合がある。
【0003】
これらの声帯疾患の観察及び診断は、一般的に喉頭ファイバースコープによる直接観察により行われる。特許文献1には、迅速にファイバースコープを挿入して声帯を診察するための補助具が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-191552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、被検者の鼻から挿入する喉頭ファイバースコープは侵襲的であり、被検者は痛みを感じるとともに咽頭反射を引き起こす。また、甲状腺を診断する内分泌内科及び内分泌外科は通常喉頭ファイバースコープ検査を行わず、耳鼻咽頭科でないと検査を行うことができない。さらに、特に診断が困難な変声疾患、声帯不全麻痺、術後の合併症による音程調整障害等については、耳鼻咽頭科の中でも、特に音声を専門とする医師の診断が必要である。このとき、防音室の中で集音した声を専門の音響分析ソフトで解析する場合があるが、防音室を設置した耳鼻咽頭科は少なく、さらに、複雑な音響分析ソフトを使いこなすためには多くの訓練を要する。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、音響分析を専門とする耳鼻咽頭科以外の医師でも非侵襲的に音声分析を実行可能な超音波診断装置、情報処理装置及び超音波診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、発生部、受信部及び速度計算部を備え、前記発生部は、超音波を発生可能に構成され、前記受信部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した前記超音波を受信可能に構成され、前記速度計算部は、前記受信した前記超音波をドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、超音波診断装置が提供される。
【0008】
本発明では、ドプラモードで発生させた超音波を喉頭・気管壁に照射し、反射した超音波を解析することにより、喉頭・気管壁の振動速度を計算することで音声分析を実行可能になる。このように、喉頭・気管壁に超音波を照射するだけで音声分析を実行できるので、被検者への負担を大きく低減することが可能になる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置100の概略を示す図である。
【図2】互いに通信可能な超音波発生器1と情報処理装置2の機能ブロック図である。
【図3】喉頭・気管壁の場所を説明するための図である。
【図4】超音波診断装置100による診断処理のフローチャートの一例である。
【図5】超音波ドプラによる喉頭・気管壁の振動評価の結果の一例である。
【図6】音響分析ソフトのサウンドスペクトラムの一例である。
【図7】図7Aは、第2記憶部27に記憶された基準波形を表す概念図である。図7Bは、異常波形1の概念図である。図7Cは、異常波形2の概念図である。
【図8】超音波発生器1を喉にあて、「あ」を発声した際のPWD(Pulsed Wave Doppler)モードの波形を表す図である。
【図9】シグナル発生機により発生させた超音波をイヤホンから出力し、超音波発生器1で受信した後、情報処理装置2により周波数を可視化した結果である。
【図10】音響分析ソフトによる定量値確認の様子を表す写真である。
【図11】超音波診断装置100を用いた次のステップの研究について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。

【0012】
1.超音波診断装置100の構成
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、発生部11、受信部12及び速度計算部21を備える。本実施形態では、超音波診断装置100は、超音波発生器1及び情報処理装置2により構成される。そして、超音波発生器1から発生された超音波を被検者Pの喉頭・気管壁に照射し、喉頭・気管壁から反射された超音波を情報処理装置2により解析することにより、被検者Pの音声分析を実行するものである。さらに、情報処理装置2に表示装置3を通信可能に接続してもよい。表示装置3は第1表示部31を備え、種々の画像又は動画を表示可能に構成される。

【0013】
図2に示すように、超音波診断装置100は、有線により互いに通信可能な超音波発生器1及び情報処理装置2により構成される。超音波発生器1は、例えば超音波プローブにより構成される。また、情報処理装置2は、例えばコンピュータにより構成される。

【0014】
また、本実施形態では、超音波診断装置100には、主な検査モードとしてBモード及びドプラモードが搭載されている。Bモードは、生体の解剖(形態)を描出するモードである。

【0015】
<超音波発生器1>
超音波発生器1は、発生部11、受信部12、第1制御部13、第1記憶部14及び第1通信部15を備える。発生部11は、超音波を発生可能に構成される。発生部11は任意の構成とすることができ、例えば圧電素子の両側に電極を貼り付けた構成とすることができる。そして、電極に電圧を加えることにより圧電素子が伸縮と膨張を繰り返して振動し、超音波が発生する。

【0016】
受信部12は、被検者Pの喉頭・気管壁に反射した超音波を受信可能に構成される。第1制御部13は、第1記憶部14に記憶された種々のプログラムに基づいて、超音波発生器1を構成する種々の要素を制御するものである。第1記憶部14は、種々のプログラムを記憶するものであり、例えばメモリ、ハードディスク、SSD等により構成される。第1通信部15は、情報処理装置2の第2通信部28、超音波発生器1を構成する他の構成要素、又は他の情報処理装置と有線又は無線によりデータ通信可能に構成される。

【0017】
<情報処理装置2>
情報処理装置2は、速度計算部21、画像生成部22、比較部23、がん評価部24、第2表示部25、第2制御部26、第2記憶部27及び第2通信部28を備える。

【0018】
速度計算部21は、受信部12が受信した超音波をドプラモードに基づいて解析し、喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成される。ここで、図3に示すように、喉頭・気管壁は、(被検者Pの喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(被検者Pの喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である。(被検者Pの喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(被検者Pの喉頭隆起の平面視における面積S2)の値は、好ましくは、3~45であり、さらに好ましくは、5~40であり、さらに好ましくは、7~35である。具体的には、(被検者Pの喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(被検者Pの喉頭隆起の平面視における面積S2)の値は、1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0019】
また、喉頭・気管壁は、被検者Pの喉頭の下方の一部と、被検者Pの気管の上方の一部と、を含む領域である。本実施形態では、喉頭・気管壁は、被検者Pの喉頭の平面視における面積S3のうち、10~50%を含む領域である。好ましくは、喉頭・気管壁は、被検者Pの喉頭の平面視における面積S3のうち、15~45%、さらに好ましくは、20~40%、さらに好ましくは、25~35%を含む。具体的には、喉頭・気管壁は、被検者Pの喉頭の平面視における面積S3のうち、10、15、20、25、30、35、40、45、50%を含む領域であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0020】
また、本実施形態では、喉頭・気管壁は、被検者Pの気管の平面視における面積S4のうち、10~50%を含む領域である。好ましくは、喉頭・気管壁は、被検者Pの気管の平面視における面積S4のうち、15~45%、さらに好ましくは、20~40%、さらに好ましくは、25~35%を含む。具体的には、喉頭・気管壁は、被検者Pの気管の平面視における面積S4のうち、10、15、20、25、30、35、40、45、50%を含む領域であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0021】
このように規定された喉頭・気管壁により、超音波の位置合わせが容易になる。ここで、喉頭・気管壁は、被検者Pの皮膚直下の領域であり、皮膚を含む概念である。

【0022】
本実施形態では、速度計算部21は、喉頭・気管壁に反射した超音波のドプラ偏移周波数に基づいて、喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成される。具体的には、速度計算部21は、以下の数式に基づいて、喉頭・気管壁の振動速度を計算する。

【0023】
(数1)
Δf=(2Vf×cosθ)/C

:音源の周波数[MHz]
Δf:ドプラ偏移周波数[MHz]
V:喉頭・気管壁の振動速度[m/sec]
θ:超音波の喉頭・気管壁に対する入射角
C:生体中の超音波の速度(1,530m/secの固定値とする)


【0024】
本実施形態では、V以外の値が取得可能であり、Δfを計測することにより、Vの値を求めることができる。

【0025】
ここで、音源とは、被検者Pの声帯のことである。また、ドプラ偏移周波数は、喉頭・気管壁が超音波発生器1に向かって移動するときに正の値となり、喉頭・気管壁が超音波発生器1から遠ざかる方向に移動するときに負の値となる。このとき、超音波の周波数について、以下の関係が成立する。
(数2)
(受信部12で受信する超音波の周波数)=(発生部11で発生させた超音波の周波数)+Δf

【0026】
画像生成部22は、喉頭・気管壁が振動する速度と時間を対応付けた画像を生成可能に構成される。具体的には、画像生成部22は、横軸を時間に、縦軸を振動速度としたグラフを表す画像を生成する。そして、画像生成部22により生成された画像が、第2表示部25又は第1表示部31に表示される。

【0027】
比較部23は、画像生成部22により生成された画像と、予め記憶された複数の症例画像と、を比較可能に構成される。ここで、症例画像は、喉頭・気管壁に生じる症例毎に記憶された画像である。好ましくは、症例画像は、第2記憶部27に記憶される。

【0028】
ここで、画像生成部22は、比較部23による比較結果に基づいて、生成された画像に対応する症例を表す画像を生成可能に構成される。具体的には、画像生成部22により生成された画像と、症例画像を比較し、画像生成部22により生成された画像がいずれの症例に対応するかを特定した後、かかる症例についての情報を画像として生成する。例えば、画像生成部22により生成された画像が症例1を表す場合、症例1を表す文字、図形、エフェクト等が症例を表す画像となる。そして、第2表示部25又は第1表示部31は、症例を表す画像をもとの画像とともに表示させる。

【0029】
がん評価部24は、受信部12が受信した超音波に基づいて、被検者Pの声帯病変についての評価を実行可能に構成される。例えば、がん評価部24は、被検者Pの喉頭・気管壁に当てた超音波(ドップラーモード)に基づいて、声帯病変の有無を評価する。本実施形態では、がん評価部24は、速度計算部21等で求めた喉頭・気管壁の振動速度に基づいてがん等の異常部位の有無を評価する。

【0030】
第2表示部25は、画像生成部22により生成された画像や、症例を表す画像を表示するものである。

【0031】
第2制御部26は、第1制御部13と同様に、第2記憶部27に記憶された種々のプログラムに基づいて、情報処理装置2を構成する種々の要素を制御するものである。第2記憶部27は、種々のプログラム及び症例画像を記憶するものであり、例えばメモリ、ハードディスク、SSD等により構成される。症例画像については、図7A~図7Cを用いて後述する。また、本実施形態では、第2記憶部27は、被検者Pの喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶する。このとき、速度計算部21は、第2記憶部27に記憶されたデータをドプラモードに基づいて解析し、喉頭・気管壁が振動する速度を計算することができる。

【0032】
第2通信部28は、第1通信部15、情報処理装置2を構成する他の構成要素、表示装置3又は他の情報処理装置と有線又は無線によりデータ通信可能に構成される。また、第2通信部28は、情報処理装置2に搭載された電力生成部(不図示)により生成された電力を、第1通信部15を介して発生部11に印加可能に構成される。これにより、発生部11が振動し、超音波を発生する。このとき、第2制御部26により、発生部11により発生される超音波の周波数及び振幅を制御するパラメータが、第2通信部28から第1通信部15に送信される。

【0033】
上記の各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRP等の種々の回路によって実現することができる。本実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、上記のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。

【0034】
また、超音波発生器1及び情報処理装置2の各構成要素を部分的に交換又は追加することも可能である。例えば、第1記憶部14及び第2記憶部27を一つのストレージとして構成してもよい。また、第1制御部13及び第2制御部26を一つの制御部として構成してもよい。

【0035】
<表示装置3>
本実施形態では、表示装置3は、上述の情報処理装置2に通信可能に接続される。そして、表示装置3は、情報処理装置2が生成した画像を受信し、第1表示部31に表示する。これにより、情報処理装置2と離れた場所に勤務する医師が遠隔で画像を確認することができる。

【0036】
2.超音波診断装置100による診断処理
次に、図4~図9を用いて、超音波診断装置100を利用した音声分析について説明する。

【0037】
まず、S1において、発生部11により超音波を発生させる。ここで、超音波の周波数及び振幅については、被検者Pの年齢や健康状態を考慮し、医師が適切に決定することが好ましい。そして、超音波発生器1を被検者Pの喉頭・気管壁に向け、超音波を被検者Pの喉頭・気管壁に当てる。

【0038】
次に、S2において、受信部12により、被検者Pの喉頭・気管壁に反射した超音波を受信する。その後、受信した超音波を表すデータが、第1通信部15から第2通信部28に送信される。そして、かかるデータが第2記憶部27に記憶される。

【0039】
次に、S3において、速度計算部21により、(数式1)に基づいて、被検者Pの喉頭・気管壁の振動速度が計算される。

【0040】
次に、S4において、画像生成部22により、喉頭・気管壁の振動速度と時間を対応付けた画像が生成される。そして、生成された画像が第2表示部25又は第1表示部31に表示される。

【0041】
ここで、図5は、画像生成部22により生成される画像の一例である。図5は、低い声、普通の声、高い声毎に、横軸に時間を、縦軸に喉頭・気管壁の振動速度をとったグラフである。

【0042】
ところで、図6に示すように、喉頭・気管壁のドプラ波形と、防音室の中で集音した声を専門の音響分析ソフトで解析したサウンドスペクトグラムは類似している。本発明者らは、かかる事実を発見したことにより、特別な検査環境や分析ソフトウェアを用いることなく、超音波を利用することにより、音声解析可能なシステムのアイデアを想起した次第である。

【0043】
次に、S5において、比較部23により、画像生成部22により生成された画像と症例画像を比較する。図7A~図7Cに、症例画像の一例を示す。図7Aに示すように、普通の声(正常な音声)に対応する波形を基準波形として第2記憶部27に記憶している。そして、図7Bに示すように、声帯麻痺に対応する波形を異常波形1として第2記憶部27に記憶している。また、図7Cに示すように、声帯病変(喉頭がん等)に対応する波形を異常波形2として第2記憶部27に記憶している。

【0044】
これらの波形は、事前に専門医の指導のもと、どのような波形を基準波形又は異常波形とするかについて決定される。例えば、声帯麻痺(異常波形1)の場合には、傾きが正負の値をとる変化点が観察され、それらの間においては、時間の経過とともに波形が右肩下がりになっている。また、途中でグラフの一部が途切れることが観察されることがある。一方、声帯病変(喉頭がん等)の場合には、波形の乱れが観察される度合いが高い。これらを参酌し、専門医の知見に基づいて、基準波形及び異常波形が適宜決定される。

【0045】
本実施形態では、図5に示される波形(白丸で囲まれた箇所)の形状が、基準波形及び異常波形のいずれに対応するかについての比較がなされる。

【0046】
次に、S6において、S4において生成された画像が、複数の症例画像のいずかに該当する否かが判定される。具体的には、波形の特徴量(波形の変曲点、極値、振幅等)と、症例画像の特徴量と、を比較し、画像と症例画像の一致度を判定することにより、かかる判定がなされる。そして、この判定結果が「YES」の場合、S7に進み、画像生成部22により症例を表す画像が生成される。具体的には、S4において生成された画像が声帯麻痺を表す波形と類似する場合には、「声帯麻痺」を表す文字、文字、図形、エフェクト等を、症例を表す画像として生成する。

【0047】
そして、S8において、S4で生成された画像と合わせ、症例を表す画像を第2表示部25又は第1表示部31に表示する。一方、S6における判定結果が「NO」の場合、S7,S8をスキップし、処理を終了する。

【0048】
なお、ドプラモードで実行される図4に示されるフローの前に、Bモードにより通常の超音波検査が実施される場合もある。Bモードとドプラモードを適宜切り替えれば、通常の超音波検査に加えて音声分析も実行できるため、検査効率を大幅に高めることができる。

【0049】
3.効果
上述の超音波診断装置100は、以下のような有利な効果を奏する。
・超音波診断装置100を用いることにより、非侵襲的な音声分析を行うことができる。
・超音波診断装置100を用いた音声分析は汎用性が高く、耳鼻咽頭科以外の医師でも簡単に行うことができる。
・防音室を必要とする音響分析ソフトを利用することなく、簡単に音声分析を行うことができる。
・Bモードによる超音波検査で直接声帯を可視化する従来の手法では、生体内の空気により超音波の進行が阻害され、声帯の観察が困難であったところ、超音波診断装置100では、空気の介在による超音波の阻害がなく、喉頭・気管壁の振動速度が直接計算できるため、正確な音声分析ができる。
・従来のBモードによる超音波検査は形態観察を主な目的とし、喉頭隆起を含む甲状軟骨に超音波を当てるため、甲状軟骨の凹凸により超音波を正確に声帯に届けることが困難な場合があったところ、超音波診断装置100では、凹凸の少ない喉頭・気管壁に超音波を当てるため、超音波発生器1の位置合わせが容易になる。
・加齢による甲状軟骨及び喉頭隆起の硬化により、従来のBモードによる超音波検査では超音波が十分に声帯に届かず、声帯診断に耐え得る画像を取得できない場合が多かったところ、超音波診断装置100では、喉頭・気管壁の振動速度を直接計算することにより音声分析を行うことで、甲状軟骨及び喉頭隆起が硬化している場合であっても問題なく音声分析を行うことができる。
・従来のBモードによる超音波検査では、可視化された画像により声帯異常を診断するので、画像の読み方の訓練を積んだ医師以外では声帯診断が困難であるところ、超音波診断装置100では、喉頭・気管壁の振動のみから音声分析を行うことができるので、より多くの医療従事者にとって音声分析が行いやすくなった。

【0050】
4.検証実験
以下、超音波診断装置100の妥当性について、図8~図10を用いて説明する。図8は、超音波発生器1を被検者Pの喉頭・気管壁にあて、「あ」を発声した際のPWD(Pulsed Wave Doppler)モードの波形を表す図である。超音波発生器1は、喉頭・気管壁のどこに当ててもほとんど同じ波形を得ることができた。以下、超音波診断装置100により取得したドプラ波形についての定量評価について説明する。

【0051】
(1)検証実験1
図9は、シグナル発生機により発生させた超音波をイヤホンから出力し、超音波発生器1で受信した後、情報処理装置2により周波数を可視化した結果である。ここで、本検証では、シグナル発生機から0.5[kHz]の超音波を発生させ、超音波発生器1として高周波リニアプローブを利用した。また、高周波リニアプローブの超音波発信周波数は、7.27[MHz]にセットした。

【0052】
そして、(数式1)に種々の値を代入し、Δfを以下のように計算した。

Δf=(2Vf×cosθ)/C=(2×0.053)×7.27/1530=0.503[kHz]


【0053】
このように、超音波診断装置100により計算したΔfは、シグナル発生機により発生させた超音波の周波数(0.5[kHz])とほぼ一致した。つまり、かかる検証実験において、超音波診断装置100の妥当性が証明された。

【0054】
(2)検証実験2
図10は、音響分析ソフトによる定量値確認の様子を表す写真である。ここで、検証実験1における結果が、特定の装置に依存している可能性があるので、検証実験2では、別の機種、具体的には、超音波診断装置100を構成する種々の装置のメーカーを変更している。

【0055】
検証実験2では、音響分析ソフトにより算出した周波数が110[Hz]となった。

【0056】
一方、超音波診断装置100については、(数式1)に種々の値を代入し、Δfを以下のように計算した。ここで、検証実験2では、高周波リニアプローブの超音波発信周波数は、5.21[MHz]にセットした。

Δf=(2Vf×cosθ)/C=(2×0.016)×5.21/1530=109.0[kHz]


【0057】
このように、超音波診断装置100により計算したΔfは、音響分析ソフトにより算出された周波数(110[kHz])とほぼ一致した。つまり、かかる検証実験において、超音波診断装置100の妥当性が証明された。

【0058】
5.今後の研究について
図11に示すように、従来の音声分析ソフトウェア(防音室の中で集音した声を専門の音響分析ソフトで解析する態様)と、超音波診断装置100を用いた音声分析により、被検者Pの音声診断を非侵襲的に実施することが可能になる。そして、次のステップの研究として、これらの手法を組み合わせ、又は状況に応じてこれらの手法を使い分けることにより、被検者Pの声帯に病変があるかどうかを高精度に発見可能な声帯診断の実現を目指す所存である。

【0059】
<その他>
本発明に係る超音波診断装置100は、以下の態様でも実施可能である。

【0060】
記憶部及び速度計算部を備え、
前記記憶部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶し、
前記速度計算部は、前記データをドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、
前面記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、
情報処理装置。

【0061】
これにより、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶部(例:第2記憶部27)に記憶しておき、情報処理装置(例:情報処理装置2)がオフラインの場合でも、声帯疾患を診察することができる。

【0062】
また、上記の情報処理装置を、情報処理装置2とデータ通信可能に構成しておくと、情報処理装置2から遠隔に設置された情報処理装置により、遠隔診断を実施することもできる。この場合、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータが情報処理装置2から一旦サーバに格納され、サーバから当該情報処理装置にデータを送信する構成にしてもよい。

【0063】
また、超音波診断装置100は、以下の態様でも実施可能である。

【0064】
コンピュータを、記憶部及び速度計算部として機能させ、
前記記憶部は、被検者の喉頭・気管壁に反射した超音波を表すデータを記憶し、
前記速度計算部は、前記データをドプラモードに基づいて解析し、前記喉頭・気管壁が振動する速度を計算可能に構成され、
前記喉頭・気管壁は、(前記被検者の喉頭・気管壁の平面視における面積S1)/(前記被検者の喉頭隆起の平面視における面積S2)の値が1~50となるように定められた皮膚直下の領域である、
超音波診断プログラム。

【0065】
また、上述のプログラムを格納する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 :超音波発生器
2 :情報処理装置
3 :表示装置
11 :発生部
12 :受信部
13 :第1制御部
14 :第1記憶部
15 :第1通信部
21 :速度計算部
22 :画像生成部
23 :比較部
24 :評価部
25 :第2表示部
26 :第2制御部
27 :第2記憶部
28 :第2通信部
31 :第1表示部
100 :超音波診断装置
P :被検者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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