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明細書 :質量分析用プローブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-004844 (P2021-004844A)
公開日 令和3年1月14日(2021.1.14)
発明の名称または考案の名称 質量分析用プローブ
国際特許分類 G01N  27/62        (2021.01)
FI G01N 27/62 V
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 35
出願番号 特願2019-119846 (P2019-119846)
出願日 令和元年6月27日(2019.6.27)
公序良俗違反の表示 1.プルロニック
発明者または考案者 【氏名】北 将樹
【氏名】木越 英夫
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
Fターム 2G041CA01
2G041DA04
2G041FA06
2G041JA09
要約 【課題】より高感度で検出できる質量分析用プローブを提供すること。
【解決手段】ピレンが-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)で置換されてなるピレン誘導体構造を含む質量分析用プローブ。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2021004844A_000032t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。R6は水素原子又はリンカー構造を示す。]
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物からなる、質量分析用プローブ。
【請求項2】
前記R3が水素原子である、請求項1に記載の質量分析用プローブ。
【請求項3】
前記R2が水素原子である、請求項2に記載の質量分析用プローブ。
【請求項4】
前記R4及びR5がアルキル基である、請求項3に記載の質量分析用プローブ。
【請求項5】
前記リンカー構造がアジド基又はアルキン構造を含む、請求項1~3のいずれかに記載の質量分析用プローブ。
【請求項6】
一般式(2):
【化2】
JP2021004844A_000033t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基がリンカー構造を介してリガンドに連結してなる、ラベル化リガンド。
【請求項7】
前記リンカー構造が求核性基に対する反応性基を含む、請求項6に記載のラベル化リガンド。
【請求項8】
請求項5に記載の質量分析用プローブと、アルキン構造又はアジド基が連結されてなるリガンドとを反応させる工程を含む、請求項6又は7に記載のラベル化リガンドを製造する方法。
【請求項9】
一般式(2):
【化3】
JP2021004844A_000034t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が直接又はリンカー構造を介してタンパク質に連結してなる、ラベル化タンパク質。
【請求項10】
請求項7に記載のラベル化リガンドと、求核性基を有する標的タンパク質とを結合させて、前記反応性基と前記求核性基との反応を経て、前記一般式(2)で表される基をリンカー構造を介して前記標的タンパク質に連結させる工程を含む、請求項9に記載のラベル化タンパク質を製造する方法。
【請求項11】
一般式(2):
【化4】
JP2021004844A_000035t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が直接又はリンカー構造を介してペプチドに連結してなる、ラベル化ペプチド。
【請求項12】
請求項9に記載のラベル化タンパク質を断片化する工程を含む、請求項11に記載のラベル化ペプチドを製造する方法。
【請求項13】
一般式(2):
【化5】
JP2021004844A_000036t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子を含有する混合物をポリスチレン担体に接触させる工程を含む、前記ラベル化分子の精製方法。
【請求項14】
一般式(2):
【化6】
JP2021004844A_000037t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子をイオン化し、その質量電荷比を測定する工程を含む、質量分析方法。
【請求項15】
抗ベンゾピレン抗体を含有する、一般式(2):
【化7】
JP2021004844A_000038t.gif
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子の検出剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析用プローブ等に関する。
【背景技術】
【0002】
リガンドの標的分子の同定および結合様式の解明は、創薬やケミカルバイオロジーの研究で重要である。リガンド-標的分子複合体の構造は、一般にX線回折やNMRで解析されることが多いが、その不安定さ及び希少さにより適用できない場合も多い。これらの方法を補完する標的分子解析法の一つに、リガンドに反応性官能基と検出基を導入した誘導体(ケミカルプローブ)を用いる手法がある。標的分子がタンパク質の場合、ラベル化後、酵素消化と断片ペプチドのMS解析あるいはアミノ酸配列分析などにより、標的分子の種類や結合位置を推定できる。一方でケミカルプローブを用いる場合、ラベル化反応の効率や検出感度の低さが課題となっており、本手法をより高感度且つハイスループットで実施できる方法の開発が望まれている。
【0003】
芳香族炭化水素であるピレン基を持つ化合物はマトリックスを使用しないラベル支援レーザー脱離イオン化による質量分析法(LA-LDI MS)で選択的に励起、検出される(非特許文献1)。しかしながら、レーザーによりdmpyがイオン化した際の強度が高過ぎて、標的分子をフラグメント化してしまうことがあり、このため、LA-LDI MSでは十分な検出感度が得られないという問題があった。本発明者はこれまでに、LA-LDI MSにおいて、非修飾のピレン基よりも約1,000倍の高感度で検出できるアミドピレン基を開発した(非特許文献2)。しかし、この検出感度は一般にペプチドの質量分析で用いられるMALDI法と比べて低感度であった。またピレン基は疎水性が高く、一般的な生体分子の脱塩・精製に用いる方法(分子ふるい・透析・逆相HPLCなど)ではピレン標識ペプチドの回収率が低く、MSにおける検出感度が低いことが大きな問題であった(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. R. Cabrera-Pardo, D. I. Chai, S. Liu, M. Mrksich, and S. A. Kozmin, Nature Chemistry, 2013, 5, 423-427.
【非特許文献2】K. Yoneda, Y. Hu, M. Kita, and H. Kigoshi, Scientific Reports, 2015, 5, 17853.
【非特許文献3】R. Watanabe, Y. Hu, K. Iio, K. Yoneda, A. Hattori, A. Arai, H. Kigoshi, and M. Kita, Organic & Biomolecular Chemistry 2018, 16, 7883-7890.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より高感度で検出できる質量分析用プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を進めた結果、ピレンが-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)で置換されてなるピレン誘導体であれば、質量分析においてより高感度に検出でき、質量分析用プローブとして利用できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. 一般式(1):
【0009】
【化1】
JP2021004844A_000002t.gif

【0010】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。R6は水素原子又はリンカー構造を示す。]
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物からなる、質量分析用プローブ。
【0011】
項2. 前記R3が水素原子である、項1に記載の質量分析用プローブ。
【0012】
項3. 前記R2が水素原子である、項2に記載の質量分析用プローブ。
【0013】
項4. 前記R4及びR5がアルキル基である、項3に記載の質量分析用プローブ。
【0014】
項5. 前記リンカー構造がアジド基又はアルキン構造を含む、項1~3のいずれかに記載の質量分析用プローブ。
【0015】
項6. 一般式(2):
【0016】
【化2】
JP2021004844A_000003t.gif

【0017】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基がリンカー構造を介してリガンドに連結してなる、ラベル化リガンド。
【0018】
項7. 前記リンカー構造が求核性基に対する反応性基を含む、項6に記載のラベル化リガンド。
【0019】
項8. 項5に記載の質量分析用プローブと、アルキン構造又はアジド基が連結されてなるリガンドとを反応させる工程を含む、項6又は7に記載のラベル化リガンドを製造する方法。
【0020】
項9. 一般式(2):
【0021】
【化3】
JP2021004844A_000004t.gif

【0022】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が直接又はリンカー構造を介してタンパク質に連結してなる、ラベル化タンパク質。
【0023】
項10. 項7に記載のラベル化リガンドと、求核性基を有する標的タンパク質とを結合させて、前記反応性基と前記求核性基との反応を経て、前記一般式(2)で表される基をリンカー構造を介して前記標的タンパク質に連結させる工程を含む、項9に記載のラベル化タンパク質を製造する方法。
【0024】
項11. 一般式(2):
【0025】
【化4】
JP2021004844A_000005t.gif

【0026】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が直接又はリンカー構造を介してペプチドに連結してなる、ラベル化ペプチド。
【0027】
項12. 項9に記載のラベル化タンパク質を断片化する工程を含む、項11に記載のラベル化ペプチドを製造する方法。
【0028】
項13. 一般式(2):
【0029】
【化5】
JP2021004844A_000006t.gif

【0030】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子を含有する混合物をポリスチレン担体に接触させる工程を含む、前記ラベル化分子の精製方法。
【0031】
項14. 一般式(2):
【0032】
【化6】
JP2021004844A_000007t.gif

【0033】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子をイオン化し、その質量電荷比を測定する工程を含む、質量分析方法。
【0034】
項15. 抗ベンゾピレン抗体を含有する、一般式(2):
【0035】
【化7】
JP2021004844A_000008t.gif

【0036】
[式中:R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される基が連結してなるラベル化分子の検出剤。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、より高感度で検出できる質量分析用プローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】試験例1におけるdmpyの検出感度の測定結果を示す。縦軸はS/N比の常用対数を示し、横軸は測定試料の量の常用対数を示す。丸のプロットはdmpy-OMe・HCl(合成例2)の測定平均値を示し、菱形のプロットはapy-OMe(比較例)の測定平均値を示す。バーは標準偏差を示す。
【図2】(a)試験例2におけるdmpyラベル化ペプチドの精製結果(担体はTSK-G3000S)を示す。縦軸は、各ペプチドの相対量を示し、横軸は測定画分(Fはフロースルー、0は水、25~100はメタノール水溶液(数字はメタノール濃度(%))、及びEtOHはエタノール)を示す。バーは標準偏差を示す。(b)試験例3における、非標識アビジンをサンプルとして使用した場合のCBB染色結果を示す。写真下方は泳動画分(INはインプット、Fはフロースルー、0は水、25~100はエタノール水溶液(数字はエタノール濃度(%)))を示す。(c)試験例3における、dmpyラベル化アビジンをサンプルとして使用した場合の銀染色結果(上段)、蛍光検出結果(中段)、ウェスタンブロットの結果(下段)を示す。写真下方の表示については(b)と同じである。矢印はdmpyラベル化アビジンのバンドを示す。
【図3】試験例2におけるdmpyラベル化ペプチドの精製結果(担体はHP-20)を示す。縦軸は、各ペプチドの相対量を示し、横軸は測定画分(Fはフロースルー、0は水、25~100はメタノール水溶液(数字はメタノール濃度(%))、及びEtOHはエタノール)を示す。バーは標準偏差を示す。
【図4】試験例4における、MALDI MSスペクトルデータを示す。縦軸が検出強度を示し、横軸がm/z値を示す。(a)は試験例4-1のデータを示し、(b)は試験例4-2のデータを示し、(c)は試験例4-3のデータを示す。黒丸はdmpyラベル化ペプチドのピークを示し、白丸は非標識ペプチドのピークを示す。
【図5】リガンドの結合部位を推測する方法の一態様の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0040】
1.質量分析用プローブ
本発明は、その一態様において、
一般式(1):

【0041】
【化8】
JP2021004844A_000009t.gif

【0042】
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物からなる、質量分析用プローブ(本明細書において、「本発明の質量分析用プローブ」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0043】
R1、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子又は-NR4R5(R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。

【0044】
本発明の一態様においては、検出感度の観点から、R3が水素原子であることが好ましく、さらにR3に加えてR2も水素原子であることがより好ましい。

【0045】
R4及びR5は同一又は異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す。

【0046】
R4又はR5で示される炭化水素基としては、特に制限されず、例えばアルキル基、アリール基等、さらにはこれらが任意に組み合わされてなる基(例えば、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基)等が挙げられる。本発明のある態様においては、検出感度の観点から、好ましくは、炭化水素基がアルキル基、アラルキル基であり、より好ましくは、炭化水素基がアルキル基である。

【0047】
R4又はR5で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の場合)の炭素数は、特に制限されず、例えば1~8である。該炭素数は、検出感度の観点から、好ましくは1~5、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましくは1である。該アルキル基(環状の場合)の炭素数は、特に制限されず、例えば3~7、好ましくは4~6である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。

【0048】
R4又はR5で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。

【0049】
R4又はR5で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~3)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。該アラルキル基としては、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。

【0050】
R4又はR5で示されるアルキルアリール基は、特に制限されないが、例えば上記アリール基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~2)のアルキル基に置換されてなるアルキルアリール基等が挙げられる。該アルキルアリール基としては、具体的には、例えばトリル基、キシリル基等が挙げられる。

【0051】
R4又はR5で示されるアルキルアラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アラルキル基の芳香環上の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~2)のアルキル基に置換されてなるアルキルアラルキル基等が挙げられる。

【0052】
R4又はR5で示される炭化水素基の置換基としては、例えばアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。該置換基の数としては、特に制限されず、例えば0~6個、好ましくは0~3個、より好ましくは0~1個、さらに好ましくは0個である。

【0053】
上記炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~8、好ましくは1~5、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましく1のアルコキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~6個、好ましくは0~3個、より好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、パーフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基等が挙げられる。

【0054】
上記炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、特に制限は無く、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。

【0055】
R6は水素原子又はリンカー構造を示す。

【0056】
リンカー構造は、鎖状構造を含む。鎖状構造としては、特に制限されないが、主鎖構成原子数が例えば1~100、2~50、2~20、2~10、3~8、3~5の鎖状構造が挙げられる。主鎖構成原子としては、例えば炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。鎖状構造の一部又は全部は、アルキル基(若しくはアルキレン基)、又はヘテロアルキル基(若しくはヘテロアルキレン基)であることができる。また、鎖状構造は、例えば-C(=O)-ORA(又は-C(=O)-O-)、-CO-NRA-、-C(=O)-、-NRARA-(又は-NRARARA)等の部分構造を含むことができる。なお、RAは同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基(上記したR4又はR5で示される炭化水素基と同様)を示す。鎖状構造は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい。

【0057】
リンカー構造は、好ましくは求核性基に対する反応性基を含む。これにより、求核性基を含む他の分子に、例えばタンパク質又はペプチド中の求核性基を含むアミノ酸残基(例えばリシン等)に、本発明の質量分析用プローブを容易に連結することができる。反応性基の位置は、特に制限されず、例えばリンカー構造の末端、2つの鎖状構造を介在する位置、鎖状構造の側鎖上が挙げられる。反応性基としては、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド由来の基、具体的には以下の基が挙げられる。

【0058】
【化9】
JP2021004844A_000010t.gif

【0059】
また、反応性基としては、これら以外にも、例えば以下の基が挙げられる。

【0060】
【化10】
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【0061】
リンカー構造は、環、例えば芳香環を含むことができる。環の位置は、特に制限されず、例えばリンカー構造の末端、2つの鎖状構造を介在する位置、鎖状構造の側鎖上が挙げられる。環としては、特に制限されないが、例えばベンゼン環やベンゼン環を部分構造として含む環等が挙げられる。

【0062】
リンカー構造は、本発明の質量分析用プローブをクリック反応により他の分子に連結するための官能基、構造を含むことができる。官能基、構造の位置は、特に制限されず、例えばリンカー構造の末端、2つの鎖状構造を介在する位置、鎖状構造の側鎖上が挙げられる。このような官能基、構造としては、例えばアジド基、アルキン構造等が挙げられる。アルキン構造としては、CuAAC(Cu-catalyzed Azide Alkyne Cycloaddition)に利用できる末端アルキン(-C≡CH)のみならず、SPAAC(Strain-Promoted Azide-Alkyne Cycloaddition)に利用できる大環状のアルキン(歪み環状アルキン)等も挙げられる。大環状アルキンとしては、例えばシクロオクチン又はその誘導体(例えば環構成炭素原子の一部が窒素原子に置換してなる誘導体、ベンゼン環が縮合してなる誘導体等)が挙げられる。

【0063】
リンカー構造は、クリック反応により生成される構造を含むことができる。この構造の位置は、特に制限されず、例えばリンカー構造の末端、2つの鎖状構造を介在する位置、鎖状構造の側鎖上が挙げられる。このような構造としては、例えばトリアゾール環、トリアゾール環が縮合してなる環(例えば上記歪み環状アルキンにトリアゾール環が縮合してなる環等)が挙げられる。

【0064】
本発明の一態様においては、リンカー構造はアジド基又はアルキン構造を含む。この場合、後述するように、アルキン構造又はアジド基が連結されてなるリガンドと反応させることにより、容易に、後述の本発明のラベル化リガンドを得ることができる。好ましくは、アジド基又はアルキン構造は、リンカー構造の末端に存在する。

【0065】
一般式(1)で表される化合物の塩は、特に制限されるものではない。該塩としては、例えば酸性塩を採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。

【0066】
一般式(1)で表される化合物及びその塩は水和物、溶媒和物とすることもできる。溶媒としては、例えば、各種有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。

【0067】
一般式(1)で表される化合物は、様々な方法で合成することができる。例えば、一般式(1X):

【0068】
【化11】
JP2021004844A_000012t.gif

【0069】
[式中:R1X、R2X及びR3Xは同一又は異なって、水素原子又は-NH2を示す(但し、R1、R2及びR3が全て水素原子である場合を除く)。]
で表される化合物とアルデヒドとを還元剤及び酢酸の存在下で反応させることにより、一般式(1)で表される化合物を得ることができる。

【0070】
アルデヒドは、目的物(一般式(1)で表される化合物中のR4又はR5で示される炭化水素基)に応じて、適切なものを選択することができる。アルデヒドの使用量は、収率、合成の容易さ等の観点から、通常、一般式(1X)で表される化合物1モルに対して3~150モルが好ましい。

【0071】
本反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、例えばアセトニトリル、アセトン等が挙げられ、好ましくはアセトニトリルが挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。

【0072】
還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを好適に使用できる。縮合剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。還元剤の使用量は、一例として、一般式(1X)で表される化合物1モルに対して、例えば1~8モルであり、2~5モルが好ましい。

【0073】
酢酸の使用量は、一例として、一般式(1X)で表される化合物1モルに対して例えば1~8モルであり、2~5モルが好ましい。

【0074】
本反応においては、上記成分以外にも、反応の進行を著しく損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。

【0075】
反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、10~30℃で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、1時間~30時間とすることができる。

【0076】
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法等の通常の方法で単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(ESI-MS)分析、IR分析、1H-NMR、13C-NMR等により同定することができる。

【0077】
本発明の質量分析用プローブは、質量分析において高感度で検出される。よって、該プローブを、一般式(1)におけるR6を介して他の分子(タンパク質、ペプチド等)に連結することによって、得られた分子を高感度で検出することができる。

【0078】
質量分析におけるイオン化法は、特に制限されない。イオン化法としては、例えば電子イオン化法(EI法)、正化学イオン化法(PCI法)、負化学イオン化法(NCI法)、高速原子衝撃法(FAB法)、レーザー脱離イオン化法(LDI法)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI法)等が挙げられる。これらの中でも、LDI法が好適に採用される。イオン化は、マトリックスを使用する方法でも、マトリックスを使用しない方法でも行うことができる。マトリックスを使用しない方法(例えばLA-LDI法)であれば、試料を精製せずとも、本発明の質量分析用プローブが連結された分子を選択的に検出することができる。マトリックスを使用する方法(例えばMALDI法)の場合であっても、試料を精製することにより(好適には、後述の本発明の精製方法で精製することにより)、本発明の質量分析用プローブが連結された分子を選択的に検出することができる。

【0079】
2.ラベル化リガンド
本発明は、その一態様において、一般式(2):

【0080】
【化12】
JP2021004844A_000013t.gif

【0081】
で表される基がリンカー構造を介してリガンドに連結してなる、ラベル化リガンド(本明細書において、「本発明のラベル化リガンド」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0082】
R1、R2、R3、及びリンカー構造については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。

【0083】
リガンドとしては、標的分子(例えばタンパク質)との関係で決定され、タンパク質が受容体の場合には受容体に結合する物質、タンパク質が酵素の場合には酵素の基質、タンパク質が抗原の場合には抗体もしくは抗体断片などが挙げられる。

【0084】
標識対象のタンパク質としては、特に限定されず、例えば受容体、酵素、抗原などが挙げられる。

【0085】
抗体もしくはその断片としては、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、例えばFv、scFv、Fab、F(ab')2、Fab'、Fd、dAb、CDR、scFv-Fc断片、ナノボディ、アフィボディ、ダイアボディ、アビマー、バーサボディなどが挙げられる。

【0086】
酵素としては、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素などが挙げられる。酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ホルムアルデヒドオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、フルクトースオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼなどが挙げられる。加水分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、インベルターゼ、マルターゼ、β-ガラクトシダーゼ、リゾチーム、ウレアーゼ、エステラーゼ、ヌクレアーゼ、ホスファターゼなどが挙げられる。転移酵素としては、例えば、各種アシル転移酵素、キナーゼ、アミノトランスフェラーゼなどが挙げられる。異性化酵素としては、例えば、ラセマーゼ、ホスホグリセリン酸ホスホムターゼ、グルコース6-リン酸イソメラーゼなどが挙げられる。

【0087】
受容体としては、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、アンギオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、ヒスタミン受容体、嗅覚受容体、オピオイド(エンケファリン、エンドルフィン等)受容体、ロドプシン、セクレチン受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体、ガストリン受容体、P2Y受容体、HER2受容体、EGF受容体、エリスロポエチン受容体、インスリン受容体、成長因子受容体、サイトカインの受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体、グリシン受容体、グルタミン酸受容体(NMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体)、イノシトール3リン酸(IP3)受容体、P2X受容体、性ホルモン(アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン)受容体、ビタミンD受容体、糖質コルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、甲状腺ホルモン受容体、レチノイド受容体、ペルオキシソーム増殖剤受容体(PPAR)、などが挙げられる。

【0088】
抗原としては、任意のタンパク質、例えばHsp90が挙げられる。

【0089】
標識分子と該分子に結合するリガンドの組み合わせはこれらに限定されず、現在知られている標的分子とリガンドの組み合わせ、或いは将来発見される標的分子とリガンドの組み合わせのいずれを使用してもよい。

【0090】
本発明のラベル化リガンドは、様々な方法で合成することができる。例えば、リンカー構造がアジド基又はアルキン構造を含む本発明の質量分析用プローブとアルキン構造又はアジド基が連結されてなるリガンドとを反応させる工程を含む方法により、本発明のラベル化リガンドを簡便且つ効率的に合成することができる。

【0091】
リガンドの使用量は、収率、合成の容易さ等の観点から、通常、本発明の質量分析用プローブ1モルに対して、例えば0.3~3モル、好ましくは0.7~1.5モルである。

【0092】
本反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、例えば水、メタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。

【0093】
本反応は、必要に応じて適当な触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、例えば銅触媒が挙げられる。銅触媒を使用する場合は、例えば、硫酸銅などの2価の銅と、還元剤(例えばヒドロキノン、アスコルビン酸ナトリウム)を系内に導入し、一価の銅を反応させる方法が挙げられる。銅触媒の使用量は、収率などの観点から適宜設定することができる。

【0094】
本反応においては、上記成分以外にも、反応の進行を著しく損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。

【0095】
反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、10~30℃で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、1時間~30時間とすることができる。

【0096】
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法等の通常の方法で単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(ESI-MS)分析、IR分析、1H-NMR、13C-NMR等により同定することができる。

【0097】
本発明のラベル化リガンドにおいては、リンカー構造が求核性基に対する反応性基を含むことが好ましい。この場合、より好ましくは、リンカー構造は、2つの鎖状構造を介在する位置又は鎖状構造の側鎖末端に反応性基を含む。このようなラベル化リガンドと、求核性基を有する標的タンパク質とを結合させて、反応性基と求核性基との反応を経て、一般式(2)で表される基をリンカー構造を介して標的タンパク質に連結させることにより、後述の本発明のラベル化タンパク質を得ることができる。

【0098】
3.ラベル化タンパク質
本発明は、その一態様において、一般式(2):

【0099】
【化13】
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【0100】
で表される基が直接又はリンカー構造を介してタンパク質に連結してなる、ラベル化タンパク質(本明細書において、「本発明のラベル化タンパク質」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0101】
R1、R2、R3、及びリンカー構造については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。

【0102】
タンパク質については、上記「2.ラベル化リガンド」における標的分子(タンパク質)と同様である。

【0103】
本発明のラベル化タンパク質は、様々な方法で合成することができる。例えば、リンカー構造が求核性基に対する反応性基を含む本発明のラベル化リガンドと、求核性基を有する標的タンパク質とを結合させて、前記反応性基と前記求核性基との反応を経て、一般式(2)で表される基をリンカー構造を介して前記標的タンパク質に連結させる工程を含む方法により、本発明のラベル化タンパク質を合成することができる。該ラベル化タンパク質からペプチドを得て、それを質量分析してラベル化部位を特定すれば、分子モデリングを併用することによりリガンドの結合部位を推測することができる。

【0104】
ラベル化リガンドと標的タンパク質との結合は、両者の種類及び反応性基の種類に応じて、適切な条件下(例えば、反応性基がスクシンイミド由来の基である場合は、例えば炭酸水素ナトリウム等の適当な塩基の存在下)で両者を接触させることにより実行することができる。結合後、リンカー構造中の反応性基は、該反応性基の比較的近傍に存在する求核性基(例えばリジン残基上のアミノ基等)と反応する。これにより一般式(2)で表される基をリンカー構造を介して標的タンパク質に連結させることができる(図5)。

【0105】
また、本発明のラベル化タンパク質は、リンカー構造が反応性基等の官能基を含む本発明の質量分析用プローブとタンパク質を反応させる工程を含む方法でも、合成することができる。

【0106】
4.ラベル化ペプチド
本発明は、その一態様において、一般式(2):

【0107】
【化14】
JP2021004844A_000015t.gif

【0108】
で表される基が直接又はリンカー構造を介してペプチドに連結してなる、ラベル化ペプチド(本明細書において、「本発明のラベル化ペプチド」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0109】
R1、R2、R3、及びリンカー構造については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。

【0110】
ペプチドは、アミノ酸がペプチド結合により連結されてなるポリマーであり、この限りにおいて特に制限されない。アミノ酸には、天然アミノ酸のみならず、非天然アミノ酸も包含される。アミノ酸残基数は、例えば80以下、50以下、30以下、15以下である。アミノ酸残基数の下限は、特に制限されず、例えば2、3、5、8である。

【0111】
本発明のラベル化ペプチドは、様々な方法で合成することができる。例えば、本発明のラベル化タンパク質を断片化する工程を含む方法により、得ることができる。

【0112】
断片化の方法は、特に制限されず、熱、酸、アルカリ、加水分解酵素等による断片化方法を採用することができる。酸としては、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、パラ-ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。加水分解酵素としては、例えばトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、テルモリシン、ペプシン、パパイン等が挙げられる。また、加水分解酵素を使用する場合は、必要に応じて、酵素処理の前に、変性剤(例えばグアニジン塩酸等)によりタンパク質を変性させることができる。

【0113】
また、本発明のラベル化ペプチドは、リンカー構造が反応性基等の官能基を含む本発明の質量分析用プローブとペプチドを反応させる工程を含む方法でも、合成することができる。

【0114】
5.精製方法
本発明は、その一態様において、一般式(2):

【0115】
【化15】
JP2021004844A_000016t.gif

【0116】
で表される基が連結してなるラベル化分子を含有する混合物をポリスチレン担体に接触させる工程を含む、前記ラベル化分子の精製方法に関する。

【0117】
R1、R2、及びR3については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。

【0118】
ラベル化分子は、特に制限されず、例えば本発明の質量分析用プローブ、本発明のラベル化リガンド、本発明のラベル化タンパク質、本発明のラベル化ペプチド等が挙げられる。

【0119】
ポリスチレン担体は、ポリスチレン構造を含む担体である限り特に制限されない。該担体としては、例えば各種市販品、例えばTSK-G3000Sポリスチレン樹脂(東ソー社製)、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体樹脂(三菱ケミカル社製、HP-20樹脂)等を使用することができる。

【0120】
ラベル化分子を含有する混合物をポリスチレン担体に接触させる態様は、特に制限されない。例えば、ポリスチレン担体が充填されたカラム上に該混合物をロードすることにより、接触させることができる。この接触により、ラベル化分子は、ポリスチレン担体に吸着される。この担体を、ポリスチレン担体に吸着しない物質(例えば一般式(2)で表される基が連結していない分子、塩等)と分離することにより、ラベル化分子を精製することができる。分離は、カラムを使用する場合であれば、特段の操作を要せず(好ましくはカラム洗浄操作により行われ)、カラムを使用しない場合は遠心分離等の固液分離により行うことができる。

【0121】
吸着後、ポリスチレン担体からのラベル化分子の溶出を行うことができる。溶出は、例えばアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)又はアルコール溶液(好ましくは水溶液、より好ましくは高濃度(例えば50%以上、70%以上、80%以上、90%以上)のアルコール溶液)を溶出液として、実行することができる。

【0122】
本発明の一態様においては、上記混合物として、本発明のラベル化タンパク質の断片化処理物、本発明のラベル化ペプチドと非ラベル化ペプチドとの混合物等を使用することができる。

【0123】
6.質量分析方法
本発明は、その一態様において、一般式(2):

【0124】
【化16】
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【0125】
で表される基が連結してなるラベル化分子をイオン化し、その質量電荷比を測定する工程を含む、質量分析方法に関する。

【0126】
R1、R2、R3、及びイオン化については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。ラベル化分子は、上記「5.精製方法」における説明のとおりである。

【0127】
質量電荷比の測定方法は、特に制限されず、例えば飛行時間型、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型、タンデム型等を採用することができる。

【0128】
7.検出剤
本発明は、その一態様において、抗ベンゾピレン抗体を含有する、一般式(2):

【0129】
【化17】
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【0130】
で表される基が連結してなるラベル化分子の検出剤に関する。

【0131】
R1、R2、及びR3については、上記「1.質量分析用プローブ」における説明のとおりである。ラベル化分子は、上記「5.精製方法」における説明のとおりである。

【0132】
抗ベンゾピレン抗体は、ベンゾピレンに対して特異的結合性を有する抗体である限り、特に制限されず、該抗体としては、例えば各種市販品(例えばmouse monoclonal anti-benzo[a]pyrene (BAP-13) (cat. no. sc51508, Santa Cruz Biotechnology)等)を使用することができる。

【0133】
抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。

【0134】
抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology , Chapter 11.12~11.13(2000))。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、ベンゾピレンに適当なタンパク質(BSA等)が連結されてなる物質を抗原として用いて、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、抗原をマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4~11.11)。

【0135】
抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット-ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム-パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。

【0136】
抗体は、適当な標識物、例えば蛍光色素、酵素、放射性同位体、化学発光物質などが付加された状態であってもよい。
【実施例】
【0137】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0138】
特に断りの無い限り、各測定及び操作は次のようにして行った。NMRスペクトルは、Bruker Biospin AVANCE 600分光計(1Hでは600 MHz、13Cでは150 MHz)またはBruker Biospin AVANCE 400分光計(1Hでは400 MHz、13Cでは100 MHz)で記録した。化学シフトは、溶媒ピークに対する百万分率(ppm)で報告され、δH 7.26(残留CHCl3)、δH 2.50(残留CHD2S(O)CD3)、δC 77.0(CDCl3)、およびδC 39.5 [(CD3)2S=O]である。カップリング定数(J)はヘルツで示されている。IRスペクトルはJASCO FT/IR-230分光計で記録した。高分解能エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(HR-ESIMS)は、Agilent 6120 TOF分光計またはJEOL AccuTOF CS分光計で測定した。UV-Visスペクトルは、JASCO V-650分光計によって記録した。特記しない限り、すべての化学薬品は市販されている通りに使用した。N-α-Fmoc保護線状ペプチドの固相ペプチド合成はInvitrogen Co.によって行われ、合成生成物は逆相HPLCによって精製されて>99%純度グレードのサンプルを得た。有機溶媒および感湿反応用の試薬は標準的な方法で蒸留した。カラムクロマトグラフィーには、富士シリシアシリカゲルBW-820MHおよびFL60Dを用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)にはMerckプレコートシリカゲル60F254プレートを使用した。
【実施例】
【0139】
合成例1.N,N-ジメチルアミノピレン1の合成
【実施例】
【0140】
【化18】
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【実施例】
【0141】
アセトニトリル(12mL)中の6-アミノピレン7(345mg、1.09mmol)の攪拌溶液に、37重量%ホルムアルデヒド水溶液(0.45mL、5.5mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(123mg、1.96mmol)を添加した。室温で15分間撹拌した後、酢酸(0.2mL)を加え、得られた混合物をさらに85分間撹拌した。CHCl3(50mL)を添加し、そして得られた混合物を飽和NaHCO3水溶液及び塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗精製物をSiO2カラム(70g、ヘキサン/CHCl3=1/4)で精製して、N、N-ジメチルアミノピレン1(321mg、86%)を褐色油状物として得た。
Rf = 0.50 (CHCl3); UV (MeOH) λmax 203 (ε 30000), 242 (ε 39000), 282 (ε 24000), 357 (ε 19000) nm; IR (CHCl3) 3734, 3019, 2977, 1733, 1653, 1540, 1507, 1214, 929 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.42 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.14 (d, J= 8.2 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.36 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 3.05 (s, 6H), 2.47 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.20 (tt, J = 7.7, 7.7 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 173.9, 148.8, 134.9, 130.1, 129.1, 127.4, 127.3, 126.8, 126.4, 126.3, 125.6, 125.0, 124.7, 124.1, 122.7, 121.4, 116.4, 51.5, 45.6 (2C), 33.6, 32.8, 26.6; HRMS (ESI) m/z 346.1796 (calcd for C23H24NO2 [M+H]+, Δ -0.6 mmu).
【実施例】
【0142】
合成例2.N,N-ジメチルアミノピレン塩酸塩 1 HCl(dmpy-OMe・HCl)の合成
【実施例】
【0143】
【化19】
JP2021004844A_000020t.gif
【実施例】
【0144】
1,4-ジオキサン(0.4mL)の4M塩化水素溶液中のN、N-ジメチルアミノピレン1(13.3mg、38.5μmol)の溶液を室温で30分間撹拌した。反応混合物をトルエンと共沸濃縮して、N,N-ジメチルアミノピレン塩酸塩1・HCl(14.7mg、定量的)を薄茶色の無定形固体として得た。
Rf = 0.05 (CHCl3/ acetone = 9/1); mp 152.5-153.0 ℃; UV (MeOH) λmax 204 (ε 24000), 242 (ε 39000), 282 (ε 22000), 357 (ε 19000) nm; IR (CHCl3) 3733, 3019, 2976, 1733, 1653, 1540, 1507, 1215, 929 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 14.08 (br s, 1H), 9.19 (br s, 1H), 8.42 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 8.33 (d, J= 9.3 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.14 (br s, 1H), 8.09 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.55 (s, 6H), 3.40 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.47 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.17 (tt, J = 7.2, 7.8 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 173.7, 138.0, 134.8, 132.0, 130.9, 129.1, 128.7, 128.6, 126.6, 126.5, 125.7, 125.3, 124.8, 124.4, 123.8, 119.6, 116.7, 51.6, 47.6 (2C), 33.5, 32.9, 26.8.
【実施例】
【0145】
合成例3.カルボン酸8の合成
【実施例】
【0146】
【化20】
JP2021004844A_000021t.gif
【実施例】
【0147】
THF(2mL)中のN,N-ジメチルアミノピレン1(19.3mg、55.9μmol)の溶液に、1M LiOH水溶液(2mL)を加えた。室温で24時間撹拌した後、反応混合物を1M HCl水溶液で酸性化した。そしてCHCl3(5mL×4)で抽出した。合わせた抽出物を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、カルボン酸8(18.5mg、定量的)を褐色油状物として得た。
Rf = 0.19 (CHCl3/ acetone = 9/1); IR (CHCl3) 3160 (br), 3023, 2989, 1710, 1603, 1499, 1302 cm-1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.32 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.35 (br s, 1H), 3.29 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.98 (s, 6H), 2.37 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.99 (tt, J = 7.2 Hz, 2H); 13H NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 174.4, 148.7, 135.5, 129.5, 128.6, 127.6, 127.3, 126.3, 126.1, 125.5, 125.3, 124.9, 124.2, 123.7, 122.4, 121.3, 116.8, 45.2 (2C), 33.4, 32.1, 26.7; HRMS (ESI) m/z 332.1642 (calcd for C22H22NO2[M+H]+, Δ -0.3 mmu).
【実施例】
【0148】
合成例4.dmpy-OSu 4の合成
【実施例】
【0149】
【化21】
JP2021004844A_000022t.gif
【実施例】
【0150】
乾燥DMF(0.3mL)中のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(2.6mg、23μmol)およびEDC・HCl(4.3mg、23μmol)の溶液をカルボン酸8(5.0mg、15μmol)に加えた。室温で20時間撹拌した後、得られた混合物を真空中でトルエンと共沸濃縮し、CHCl3(4mL)に懸濁し、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗精製物をSiO2カラム(0.5g、CHCl3/アセトン=1/0~10/1)で精製して、淡黄色油状物としてdmpy-OSu 4(5.3mg、82%)を得た。
Rf = 0.63 (CHCl3/ MeOH = 10/1); IR (CHCl3) 3030, 2944, 2868, 2832, 2790, 1815, 1788, 1741, 1603, 1595, 1240, 1046 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.41 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.13 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.10 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.44 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.04 (s, 4H), 2.86 (br s, 6H), 2.73 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.30 (tt, J = 7.2, 7.6 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 169.1 (2C), 168.6, 140.2, 134.1, 130.3, 129.1, 127.6, 127.6, 126.8, 126.4, 126.3, 125.6, 125.1, 124.6, 124.2, 122.8, 121.3, 116.5, 45.7 (2C), 32.3, 30.5, 26.3, 25.6 (2C); HRMS (ESI) m/z 429.1810 (calcd for C26H25N2O4[M+H]+, Δ +0.1 mmu).
【実施例】
【0151】
合成例5.アミド11の合成
【実施例】
【0152】
【化22】
JP2021004844A_000023t.gif
【実施例】
【0153】
無水DMF(0.2mL)中のカルボン酸9(6.9mg、23μmol)の溶液に、HOBt(6.1mg、45μmol)、EDC・HCl(6.9mg、36μmol)、およびジベンゾシクロオクチンアミン10(5.0)を添加した。室温で20時間撹拌した後、反応混合物を真空中でトルエンと共沸濃縮し、CHCl3(4mL)に懸濁し、飽和NH4Clおよび塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして濃縮した。粗精製物をSiO2カラム(0.5g、CHCl3/アセトン=9/1、4/1から2/1)で精製してアミド11(9.9mg、定量的)を無色油状物として得た。
Rf = 0.66 (CHCl3/ MeOH 9/1); IR (CHCl3) 3437, 3007, 2935, 2840, 1787, 1725, 1667, 1613, 1516, 1441, 1401, 1252, 1176, 1064 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.67 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.44-7.26 (m, 7H), 7.42 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.10 (br s, 1H), 5.13 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 5.05 (s, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.71 (d, J= 7.0 Hz, 1H), 3.34 (m, 1H), 3.18 (m, 1H), 2.92 (m, 1H), 2.78 (ddd, J = 18.0, 9.1, 4.6 Hz, 1H), 2.50 (br dd, J = 16.3, 4.2 Hz, 1H), 2.47-2.29 (m, 3H), 1.96 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 173.6 [173.5], 172.1 [172.1], 170.7 [170.7], 168.7, 160.4 [160.4], 150.9 [150.9], 147.9 [147.9], 132.0 [132.1], 131.7 [131.6] (2C), 129.0 [129.0], 128.7 [128.7], 128.5 [128.4], 127.9, 127.3 [127.3], 125.7 [125.6], 122.8, 122.5 [122.4], 114.7 [114.8], 113.8 (2C), 107.8, 78.1, 77.2, 55.5, 55.3, 35.9, 35.5, 35.4 [35.4], 34.5 [34.5], 33.7 [33.7], 31.9 [31.9]; HRMS (ESI) m/z 574.1945 (calcd for C32H29N3NaO6 [M+Na]+, Δ -0.4 mmu).
【実施例】
【0154】
合成例6.N-ヒドロキシイミド12の合成
【実施例】
【0155】
【化23】
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【実施例】
【0156】
乾燥CH2Cl2とトリフルオロ酢酸(0.3mL)の1:1混合物中のアミド11(4.5mg、8.2μmol)の溶液を室温で10分間撹拌し、真空中でトルエンと共沸濃縮した。粗精製物をSiO2カラム(0.5g、CHCl3/MeOH=1/0、49/1、19/1~9/1)で精製して、N-ヒドロキシイミド12(2.9mg、82%)を無色油状物として得た。
Rf 0.35 (CHCl3/ MeOH = 9/1); IR (CHCl3) 3432 (br), 3012, 2931, 2859, 2158, 1786, 1718, 1663, 1520, 1440 cm-1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.54 (s, 1H), 7.81 (m, 1H), 7.63 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.61-7.52 (m, 2H), 7.52-7.45 (m, 2H), 7.39 (t, J= 7.5 Hz, 1H), 7.35 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.31 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 5.04 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 3.63 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 3.08 (m, 1H), 3.00-2.88 (m, 2H), 2.67 (ddd, J = 17.5, 9.0, 4.0 Hz, 1H), 2.47-2.31 (m, 3H), 2.24 (ddd, J= 17.5, 9.3, 4.5 Hz, 1H), 1.82 (m, 1H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 174.8, 171.9, 170.1, 169.3, 148.4, 132.4, 129.5, 129.0, 128.2, 128.1, 127.7, 126.8, 125.2, 122.4, 121.5, 121.4, 81.4, 79.2, 54.9, 34.6, 34.1, 34.0, 33.2, 31.4; HRMS (ESI) m/z 454.1368 (calcd for C24H21N3NaO5[M+Na]+, Δ -0.5 mmu).
【実施例】
【0157】
合成例7.dmpy-OSu-DBCO 5の合成
【実施例】
【0158】
【化24】
JP2021004844A_000025t.gif
【実施例】
【0159】
乾燥DMF(0.15mL)中のカルボン酸8(1.6mg、4.8μmol)およびN-ヒドロキシイミド12(1.9mg、4.4μmol)の溶液に、HOBt(2.0mg、15μmol)、およびEDC・HCl(2.5mg、13μmol)を添加した。室温で35時間撹拌した後、反応混合物を真空中でトルエンと共沸濃縮し、CHCl3(4mL)に懸濁し、そして塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして濃縮した。粗精製物をSiO2カラム(FL60D 0.5g、CHCl3/MeOH=1/0、49/1、19/1、9/1~1/1)で精製して、dmpy-OSu-DBCO 5(2.0mg、61%)を淡黄色油状物として得た。
Rf 0.18 (CHCl3/ acetone = 9/1); IR (CHCl3) 3437, 3010, 2942, 2867, 2833, 2790, 1786, 1739, 1671, 1516, 1300, 1232, 1068, 849 cm-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.40 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 8.13 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.02 (m, 2H), 7.84 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.72-7.64 (m, 3H), 7.55-7.50 (m, 2H), 7.42-7.27 (m, 3H), 6.13 (br s, 1H), 5.12 (dd, J = 13.9, 5.7 Hz, 1H), 3.68 (dd, J = 13.9, 7.4 Hz, 1H), 3.44 (t, J= 7.7 Hz, 2H), 3.35 (m, 1H), 3.21 (m, 1H), 3.05 (s, 6H), 3.00 (m, 1H), 2.73 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.55 (m, 1H), 2.44 (m, 1H), 2.35-2.26 (m, 3H), 1.99 (m, 1H), 1.68 (tt, J = 7.7, 7.2 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 171.7, 168.7 (2C), 168.6, 168.5, 148.9, 148.4, 134.2, 132.2, 130.3, 129.2, 129.0, 128.7, 128.5, 128.4, 128.4, 128.0, 127.6, 127.6, 127.3, 126.8, 126.4, 126.3, 125.7, 125.6, 125.1, 124.7, 124.2, 122.8, 122.4, 121.3, 116.5, 107.9, 79.3, 77.2, 55.5, 45.7 (2C), 35.5, 34.6, 32.4, 31.7, 30.6, 29.7, 29.3, 26.4; HRMS (ESI) m/z 767.2827 (calcd for C46H40N4NaO6[M+Na]+, Δ-1.3 mmu).
【実施例】
【0160】
合成例8.dmpyビオチンプローブ6の合成
【実施例】
【0161】
【化25】
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【実施例】
【0162】
【化26】
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【実施例】
【0163】
DMSO中の10mM dmpy-OSu-DBCO 5の溶液(10μL、100nmol)と、DMSO中の10mMアジド-PEG3-ビオチンコンジュゲート(Cat.No.762024、Sigma-Aldrich)の溶液(10μL、100nmol)とを混合し、室温で12時間静置して、dmpyビオチンプローブ6の5mM溶液をトランス異性体とシス異性体の1:1混合物として定量的に得た。
Rf 0.38 (CHCl3 / MeOH = 9/1); ; IR (CHCl3) 3464, 3339 (br), 3004, 2935, 2870, 1738, 1704, 1660, 1209, 1054 cm-1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.33 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 8.31 (s, 2H), 8.22 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.15 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.10 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.92 (m, 2H), 7.83 (m, 2H), 7.81 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.64 (m, 1H), 7.58-7.45 (m, 3H), 7.44-7.22 (m, 3H), 6.42 (br s, 1H), 6.35 (br s, 1H), 5.87 (m, 1H), 4.59 (m, 1H), 4.52-4.41 (m, 2H), 4.29 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 3.76 (m, 1H), 3.60 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.56-3.47 (m, 8H), 3.30-3.28 (m, 2H), 3.17 (m, 2H), 3.14-3.01 (m, 2H), 2.98 (s, 6H), 2.90-2.74 (m, 2H), 2.63-2.51 (m, 2H), 2.15-1.98 (m, 6H), 1.89 (m, 1H), 1.66-1.40 (m, 6H), 1.35-1.21 (m, 4H).; 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 178.5, 174.3, 172.6, 172.2, 169.7 (2C), 162.7, 149.0, 148.8, 135.5, 134.9, 134.9, 131.6, 131.6, 130.0, 129.7, 129.5, 129.3, 129.3, 129.1, 128.9, 128.6, 128.3, 127.7, 127.5, 126.3, 126.1, 125.5, 125.4, 124.9, 124.3, 123.7, 122.6, 121.2, 116.9, 79.2, 70.6, 69.8, 69.8, 69.7, 69.6, 69.5, 69.3, 69.2, 69.1, 61.1, 59.2, 55.4, 50.0, 55.8, 45.3 (2C), 39.2, 39.0, 38.5, 35.1, 32.1, 31.6, 30.2, 29.6, 28.2, 28.1, 26.7, 25.3; HRMS (ESI) m/z 1211.5005 (calcd for C64H72N10NaO11S [M+Na]+, Δ+1.0 mmu).
【実施例】
【0164】
合成例9.dmpy又はapyラベル化ペプチドの調製
N-α-Fmoc保護直鎖ペプチド(360nmol)を10mM dmpy-OSu 4またはapy-OSuのDMSO(66μL、660nmol)溶液および1M N-メチルモルホリンのDMSO(6.6μL、6.6μmol)溶液に溶解した。室温で42時間静置した後、40%水溶液中のメチルアミン(5μL、60μmol)を添加し、そして得られた混合物を8時間静置した。Fmoc基を除去するために、ピペリジン(10μL)を添加し、そして13時間静置した。反応混合物を濃縮し、30%MeCN水溶液/0.1%TFA(200μL)に懸濁し、そして濾過した。ろ液を濃縮し、逆相HPLC[Develosil ODS-HG-5(φ10×250mm)、30%MeCN/0.1%TFA、2mL/分、280nm]で精製して、dmpy又はapyラベル化ペプチドを無色油状物として得た。試料をUV(280nm)および蛍光(λex/em 365/407nm)に基づく分析用HPLCにより定量した。
(a)IK(dmpy)IIAPPER(アミノ酸配列:配列番号1): yield, 90 nmol (25%); MS (MALDI) m/z1349.9 (M+H)+; HRMS (ESI) m/z675.4017 (calcd for (C70H106N14O13)/2 [M+2H]2+, Δ -1.0 mmu).
(b)IK(apy)IIAPPER(アミノ酸配列:配列番号1): yield, 32 nmol (9%); MS (MALDI) m/z1363.7 (M+H)+; HRMS (ESI) m/z682.3940 (calcd for (C70H104N14O14) [M+2H]2+, Δ +1.7 mmu).
【実施例】
【0165】
合成例10.4,6-ジメチルアミノピレン7の合成
【実施例】
【0166】
【化27】
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【実施例】
【0167】
100 mLナス型フラスコにメチルエステル13a(331.2 mg, 1.08 mmol)[既知化合物:Sci. Rep. 2015, 5, 17853] を秤りとり、無水酢酸(6.94 mL)に溶解した。室温にて69%硝酸(69 μL, 1.07 mmol)を加え、6時間撹拌した。反応混合物をトルエン共沸により減圧濃縮し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに(7 g, CHCl3)より精製すると、ジニトロピレン13bの異性体混合物(385.8 mg、一部モノニトロ体を含む)が橙色油状物として得られた。
【実施例】
【0168】
20 mLナス型フラスコに13b(341.8 mg)を秤りとり、酢酸エチル(8.8 mL)に溶解した。10%パラジウム-活性炭素(117.7 mg, 0.051 mmol)、酢酸(0.68 mL)を加えた後、水素雰囲気下室温にて3.5 時間撹拌した。反応系内を窒素雰囲気下とした後、反応溶液をセライトで濾過し、残渣を酢酸エチルで洗浄した。ろ液、洗液をまとめてトルエン共沸にて減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5 g, toluene / EtOAc = 100/1 → 19/1 → 9/1 → 6/1 → 3/1 → 0/1)により精製すると、4,6-ジアミノピレン13c(26.9 mg, 13aからの2段階の収率8.5%)が黄色油状物として得られた。
【実施例】
【0169】
20 mLナス型フラスコに13c(26.9 mg, 80.9 μmol)を秤りとり、アセトニトリル(0.6 mL)に溶解した。37%ホルムアルデヒド水溶液(60.6 μL, 0.808 mmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(20.9 mg, 0.333 mmol)を加え、室温にて15分間撹拌した。反応混合物に酢酸(26 mg, 0.432 mmol)を加え、室温にて20時間撹拌した。反応溶液をクロロホルム(7 mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(7 mL ×3)と飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を2回のシリカゲルカラムクロマトグラフィー((1)5 g, hexane / CHCl3 = 1/4 → CHCl3 / acetone = 4/1)、(2)7 g, toluene / EtOAc = 19/1 → 15/1)で精製すると、4,6-ジメチルアミノピレン13(38.4 mg, 73%)が茶色油状物として得られた。
13 : Rf= 0.47 (toluene / EtOAc = 9/1); 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.33 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 8.25 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.22 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 3.66 (s,3H), 3.33 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 3.00 (s, 12H), 2.47 (t, 7.7 Hz, 2H), 2.13 (tt, J = 7.7, 7.6 Hz, 2H); MS (MALDI) m/z 388.2 (M+・).
【実施例】
【0170】
合成例11.1-ピレンカルボン酸から誘導したdmpy誘導体14の合成
【実施例】
【0171】
【化28】
JP2021004844A_000029t.gif
【実施例】
【0172】
50 mLナス型フラスコにアミノピレン14a(76.0 mg, 0.276 mmol, 約5:4:2の位置異性体混合物)[既知化合物:J. Phys. Chem. A 2016, 120, 6004] を秤りとり、テトラヒドロフラン(2.0 mL)に溶解した。37%ホルムアルデヒド水溶液(1.0 mL, 36.3 mmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(62.0 mg, 0.987 mmol)を加えた後、室温にて15分間撹拌した。反応混合物に酢酸(26 mg, 0.432 mmol)を加え、室温にて21時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム(5 mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(5 mL ×3)と飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5 g, hexane / CHCl3 = 1/2 → 1/4)で精製することで、ジメチルアミノピレン14(82.0 mg, 98%, 約5:4:1の位置異性体混合物、6位が主異性体)が茶色油状物として得られた。
14: Rf= 0.43 (hexane / CHCl3 = 1/4); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.22 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 9.10 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 9.08 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 8.58 (m, 3H), 8.50 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 4.06 (s, 3H), 3.08 (s, 6H) (主異性体のスペクトルデータを記載); MS (MALDI) m/z 303.1 (M+・).
【実施例】
【0173】
合成例12.dmpy誘導体15, 16, 17の合成
【実施例】
【0174】
【化29】
JP2021004844A_000030t.gif
【実施例】
【0175】
化合物7から化合物1への変換と同様に行った。7(1当量)の0.1 Mアセトニトリル溶液にアルデヒド(5当量、p-メトキシベンズアルデヒド、3-フェニルプロピオンアルデヒド、もしくはアセトアルデヒド)、およびシアノ水素化ホウ素ナトリウム(1.8当量)を加え、室温で15分間撹拌した。酢酸(アセトニトリルの1/60量、体積比)を加え、さらに室温で85分間撹拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液と飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane / EtOAc)で精製することで、誘導体15(45%)、誘導体16(58%)、誘導体17(46%)をそれぞれ黄色油状物として得た。
15: Rf= 0.44 (hexane / EtOAc = 3/1); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.62 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.23 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.10 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 6.92 (t, J = 8.2 Hz, 4H), 3.81 (s, 4H), 3.70 (s, 3H), 3.69 (s, 6H), 3.38 (t, 7.6 Hz, 2H), 2.46 (t, 7.7 Hz, 2H), 2.19 (tt, J = 7.7, 7.6 Hz, 2H); MS (MALDI) m/z 557.3 (M+・).
16: Rf= 0.70 (hexane / EtOAc = 4/1); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.56 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.19 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.07 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.30 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 7.20 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 7.07 (d, J = 7.0 Hz, 4H), 3.70 (s, 3H), 3.37 (t, 7.6 Hz, 2H), 3.32 (t, 7.2 Hz, 4H), 2.46 (t, 7.7 Hz, 2H), 2.60 (t, 7.8 Hz, 4H), 2.19 (tt, J = 7.7, 7.6 Hz, 2H), 1.81 (tt, J = 7.8, 7.2 Hz, 4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 174.0, 145.9, 142.1 (2C), 135.1, 130.2, 129.0, 128.6, 128.3 (4C), 128.3, 128.2 (4C), 127.8, 127.4, 127.3, 126.7, 126.3, 125.6 (2C), 124.8, 124.3, 122.9, 121.9, 120.5, 54.6 (2C), 51.6, 33.6, 33.5 (2C), 32.8, 29.1 (2C), 26.7; MS (MALDI) m/z553.3 (M+・).
17: Rf= 0.52 (CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.52 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.36 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.33 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.45 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 2.19 (tt, J = 8.0, 7.3 Hz, 2H), 1.07 (t, J = 7.1 Hz, 6H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 174.1, 146.2, 135.1, 130.4, 129.2, 128.2, 128.1, 127.5, 127.4, 126.6, 126.3, 125.7, 124.9, 124.3, 123.3, 121.9, 120.4, 51.7, 48.9 (2C), 33.8, 33.0, 26.8, 12.8 (2C); MS (MALDI) m/z 373.2 (M+・).
【実施例】
【0176】
試験例1.dmpyの検出感度の測定
N,N-ジメチルアミノピレン(dmpy)とアセトアミドピレン(apy)の質量分析用プローブとしての検出感度をLA-LDI(label-assisted laser desorption/ionization) MS(mass spectrometry)によって測定した。具体的には、測定試料として、dmpy-OMe・HCl(合成例2)、及び以下の式:
【実施例】
【0177】
【化30】
JP2021004844A_000031t.gif
【実施例】
【0178】
で表される化合物(apy-OMe、既知化合物、比較例)を用いて、以下のようにして行った。
【実施例】
【0179】
LA-LDI MSは、355nmのNd:YAGレーザー(Smartbeam 1000または200MHz)を備えたBruker UltrafleXtremeまたはUltraflex III分光計を用いて行った。測定試料を50%MeOHまたはMeCN/0.1~1%TFA水溶液に溶解し、MTP384研磨鋼ターゲットプレート上にスポットし、風乾した。LA-LDI MSでのdmpy-OMe・HClおよびapy-OMeの分子イオンピークの検出感度を決定するために、MALDI MSのリフレクターポジティブモードの標準パラメーターを20%のレーザー強度で使用した。測定は、トリプリケートで行った。
【実施例】
【0180】
結果を図1に示す。図1に示されるように、dmpy-OMe・HClはapy-OMeの約100倍の検出感度であった。このことから、dmpyは従来のピレン誘導体よりも質量分析用プローブとして有用であることが分かった。
【実施例】
【0181】
試験例2.dmpyラベル化ペプチドの精製
dmpyラベル化ペプチド及びapyラベル化ペプチドをポリスチレン担体で精製した。具体的には、以下のようにして行った。
【実施例】
【0182】
非標識ペプチド(LLHDHPNPR、1 nmol)と、dmpyラベル化ペプチド[IK(dmpy)IIAPPER(合成例9)、250 pmol]またはapyラベル化ペプチド[IK(apy)IIAPPER(合成例9)、750 pmol]の50μLの混合液を、TSK-G3000Sポリスチレン樹脂(東ソー社製)(10μL)にロードした。濾液を除去した後、樹脂を0%、25%、50%、75%、及び100%MeOH水溶液で順に洗浄した(各50μL)。1/25量の溶出液(非標識ペプチド、dmpyラベル化ペプチド、およびapyラベル化ペプチドそれぞれについて、合計40、10、及び30pmol)をMALDI MSによって分析した。MALDI MSは、マトリックスを使用する点以外は、LA-LDI MS(試験例1)と同様にして行った。
【実施例】
【0183】
結果を図2の(a)に示す。図2(a)に示されるように、dmpyラベル化ペプチドは、ポリスチレン担体で精製できることが分かった。また、dmpyラベル化ペプチドの溶出ピークはapyラベル化ペプチドの溶出ピークよりも、非標識ペプチドの溶出量がより少ない(メタノール濃度がより高い)画分であった。このように、dmpyラベル化ペプチドは、apyラベル化ペプチドよりも効率的に精製できること、すなわち非標識ペプチドと分離できることが分かった。
【実施例】
【0184】
また、上記試験を、ポリスチレン担体としてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体樹脂(三菱ケミカル社製、HP-20樹脂)を用いて、同様に行った。結果を図3に示す。dmpyラベル化ペプチドは90%近くが吸着され、75%~100%メタノール画分で主に溶出された。一方で非ラベル化ペプチドは主に素通り画分にみられた。このことから、ポリスチレン担体として他の担体を使用しても、dmpyラベル化ペプチドを効率的に精製できることが分かった。
【実施例】
【0185】
試験例3.dmpyラベル化タンパク質の精製・抗ベンゾピレン抗体による検出
dmpyラベル化タンパク質をポリスチレン担体で精製し、抗ベンゾピレン抗体で検出た。具体的には、以下のようにして行った。
【実施例】
【0186】
アビジン(85μg、5 nmol)のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)および2 mM NaHCO3の溶液(240μL)に、10 mM dmpy-Osu 4(合成例4)のDMSO溶液(10μL、100 nmol)、またはDMSO(10μL)を添加し、得られた混合液を室温で48時間静置して、dmpyラベル化アビジンを得た。
【実施例】
【0187】
得られたdmpyラベル化アビジン溶液(20μL、400 pmol、約7μgタンパク質)を水(80μL)で希釈し、TSK-G3000S樹脂(10μL)にロードした。濾液を除去した後、0%、25%、50%、75%、及び100%EtOH水溶液で順に洗浄した(各100μL)。濾液をさらにAmicon Ultra YM-10(MWCO 10 kDa、Merck Millipore)で脱塩し、すべての溶出液を凍結乾燥し、SDS-PAGEで分析した。検出は、CBB染色、銀染色、蛍光検出(ATTO, WSE-5200 Printgraph 2M, excitation UV 365 nm)、ウェスタンブロット(一次抗体として、ベンゾピレン抗体(mouse monoclonal anti-benzo[a]pyrene (BAP-13) (1:50~1:100, cat. no. sc51508, Santa Cruz Biotechnology))を使用)で行った。
【実施例】
【0188】
結果を図2の(b)及び(c)に示す。図2(b)(c)より、非標識タンパク質はほぼ全てがフロースルーに含まれる一方、dmpyラベル化タンパク質はエタノール溶出画分においてのみ検出された。このことから、dmpyラベル化タンパク質は、ポリスチレン担体で効率的に精製できることが分かった。また、ベンゾピレン抗体により、dmpyラベル化タンパク質を検出できることも分かった。
【実施例】
【0189】
試験例4.dmpyラベル化タンパク質の酵素消化物(ペプチド)の質量分析
dmpyラベル化タンパク質をトリプシンで消化して、得られたペプチドをMALDI MSによって分析した。具体的には、以下のようにして行った。
【実施例】
【0190】
<試験例4-1.非特異的ラベル化、Zip-Tip C18による脱塩>
試験例3と同様にして得られたdmpyラベル化アビジン溶液を、凍結乾燥し、50mM NH4HCO3水溶液(60μL)中の6Mグアニジン・HClに溶解し、95℃で15分間加熱した。得られた変性タンパク質に、50mM NH4HCO3水溶液(4μL)中の45mM DTTを加え、50度で15分間インキュベートした。次に溶液を50mM NH4HCO3水溶液(4μL)の100mMヨードアセトアミドと、室温で15分間反応させた。得られた溶液を50mM NH4HCO3水溶液(512μL)で希釈(高グアニジン濃度でのトリプシンの失活を避けるため)した後、酢酸緩衝液(20μL)中の修飾トリプシン(100ng/μL、#V5111、Promega社製)添加し、得られた混合物を37℃で20時間インキュベートした。10%TFA水溶液(15μL)を加えることによって加水分解を停止させて、トリプシン消化ペプチド溶液を得た。得られたトリプシン消化ペプチド溶液の1/500量(1.2μL)を、ピペット付きチップカラム(Zip-Tip C18、Millipore社製)を用いて脱塩した。溶出は、50%MeCN/0.1%TFA水溶液中のα-CHCAで溶出した。溶出サンプルをMALDI MSによって分析した。MALDI MSは、マトリックス(α-CHCA)を使用する点以外は、LA-LDI MS(試験例1)と同様にして行った。
【実施例】
【0191】
<試験例4-2.非特異的ラベル化、ポリスチレン担体による脱塩>
試験例3と同様にして得られたDmpyラベル化アビジン溶液を、試験例4-1と同様に処理して、トリプシン消化ペプチド溶液を得た。トリプシン消化ペプチド溶液の1/10量(62μL)を水(36μL)で希釈し、TSK-G3000S樹脂(10μL)にロードした。遠心分離フィルターユニットを用いて濾液を除去した後、樹脂を0%、25%、50%、75%、及び100%MeOH水溶液で順に洗浄した(各100μL)。1/50量の溶出液(2μL、元のアビジンタンパク質に基づいて10pmol)をMALDI MS分析に使用した。MALDI MSは、マトリックスを使用する点以外は、LA-LDI MS(試験例1)と同様にして行った。
【実施例】
【0192】
<試験例4-3.リガンド-標的分子結合に基づくラベル化、ポリスチレン担体による脱塩>
PBSおよび2mM NaHCO3中のアビジン(85μg、5nmol)の溶液(240μL)に、DMSO中の1.5mM dmpyビオチンプローブ6(合成例8)(10μL、15nmol)を加え、得られた混合物を48時間室温で静置して、リガンド-標的分子結合に基づくdmpyビオチンプローブ6-アビジン複合体の溶液を得た。該複合体溶液を試験例4-1と同様にして処理して、トリプシン消化ペプチド溶液を得た。試験例4-2と同様に、ポリスチレン担体により脱塩して、MALDI MSにより分析した。
【実施例】
【0193】
<結果>
結果を図4に示す。(a)と(b)との比較より、ポリスチレン担体で脱塩することにより、dmpyラベル化ペプチドが精製され、該ペプチドを明瞭に検出できることがわかった。
【実施例】
【0194】
また、リガンド-標的分子結合に基づくラベル化アビジンを使用した場合((c))は、K135がラベル化されたペプチドが特異的に検出された。分子モデリングソフトを用いた解析により、リガンド-標的分子結合に基づくdmpyビオチンプローブ6-アビジン複合体においては、dmpyビオチンプローブ6内の反応性基(スクシンイミド)がアビジンのK135に近接することが分かっている。このことから、リガンド-標的分子結合に基づくラベル化タンパク質からペプチドを得て、それを質量分析してラベル化部位を特定すれば、分子モデリングを併用することによりリガンドの結合部位を推測できることが分かった(図5)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4