TOP > 国内特許検索 > 活性フィラーとして焼成カオリンを配合するジオポリマー高強度硬化体及びその製造方法 > 明細書

明細書 :活性フィラーとして焼成カオリンを配合するジオポリマー高強度硬化体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5066766号 (P5066766)
公開番号 特開2008-254939 (P2008-254939A)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発行日 平成24年11月7日(2012.11.7)
公開日 平成20年10月23日(2008.10.23)
発明の名称または考案の名称 活性フィラーとして焼成カオリンを配合するジオポリマー高強度硬化体及びその製造方法
国際特許分類 C04B  28/26        (2006.01)
C04B  14/10        (2006.01)
C04B  14/36        (2006.01)
C04B  18/08        (2006.01)
C04B  14/08        (2006.01)
C04B  14/04        (2006.01)
C04B  16/02        (2006.01)
C04B  18/24        (2006.01)
C04B  18/26        (2006.01)
C04B  14/16        (2006.01)
FI C04B 28/26
C04B 14/10 Z
C04B 14/36
C04B 18/08 Z
C04B 28/26
C04B 14:10 Z
C04B 14:36
C04B 18:08 Z
C04B 14:10 B
C04B 14:08
C04B 14:04 Z
C04B 16:02 Z
C04B 18:24 Z
C04B 18:26
C04B 14:16
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2007-095862 (P2007-095862)
出願日 平成19年3月31日(2007.3.31)
審査請求日 平成22年3月18日(2010.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
発明者または考案者 【氏名】三國 彰
【氏名】水沼 信
【氏名】橋本 雅司
【氏名】斉藤 孝義
【氏名】小川 友樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100090985、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 幸雄
審査官 【審査官】永田 史泰
参考文献・文献 特開昭60-204659(JP,A)
調査した分野 C04B7/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
特許請求の範囲 【請求項1】
活性フィラーとして850℃~950℃で熱処理した焼成カオリンと石膏を配合したフィラーと、ジオポリマーと水とを混合し、成形し、高温で養生することにより硬化して得られることを特徴とするジオポリマー高強度硬化体。
【請求項2】
石膏の成分として、PF灰を用いることを特徴とする請求項1記載のジオポリマー高強度硬化体。
【請求項3】
活性フィラーとして焼成カオリンと石膏を配合したフィラーと、ジオポリマーと水とを混合し、成形し、高温で養生することにより硬化することを特徴とするジオポリマー高強度硬化体の製造方法。
【請求項4】
石膏の成分として、PF灰を用いることを特徴とする請求項3記載のジオポリマー高強度硬化体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー法により、高強度、多機能な硬化体を得るもので、さらに詳しくは、新規活性フィラーを配合することで高強度の硬化体を作製する技術である。
【背景技術】
【0002】
近年の居住環境は断熱性の向上や暖房の設備の充実に伴い、内部結露が発生し、壁材の強度を劣化させ、腐食する場合ある、また、ダニやカビの発生に伴いアレルギー問題が発生している。
【0003】
このようなことから、建材自体に、調湿機能を持たせ、空調設備や電力を必要とせず、室内の湿度調節を行い,防露性、防カビ性を得ることができる調湿建材の開発が行われている。また建材から発生するVOCの発生からシックハウス症候群の問題からそのような有害な物質を吸着除去する建材も開発が期待されている。
【0004】
このような建材はすでに開発されているが水熱処理、高温焼成処理することにより得られる建材が主流でコスト高等の問題がある。またケイ酸カルシウム系材料のようにナノメートルオーダーの細孔がなされず湿度が飽和して能力が低下する材料(調湿能力が低い)も多い。またナノメートルオーダーの細孔制御のため製造工程が非常に煩雑な材料が多い。
【0005】
ジオポリマー法と呼ばれる粉体の硬化技術がある。
ジオポリマー法とは、珪酸の縮重合体を糊のようなバインダーとして利用することにより粉末同士をつなぎ合わせて、人造岩石を造る技術である。珪酸モノマー、すなわちポリマー源として珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を主体的に使用する。
フィラー粉末が水と接するとフィラー自身から金属が溶出し、特にアルカリ性溶液中では顕著になる。セメントの場合は、クリンカー鉱物から主としてカルシウムが溶出するのと似ているが、ジオポリマーの場合は、主としてアルミニウムが溶出する。カオリンという粘土鉱物を仮焼して得られる脱水カオリン、すなわちメタカオリンはこの溶出が顕著な鉱物である。このように溶出が比較的高いフィラーを活性フィラーと呼ぶ。
活性フィラーにはアルミニウムを溶出するカオリン系フィラーとカルシウムを溶出する微粉炭燃焼ボイラー灰(OF灰)や加圧型流動床灰(PF灰)等が知られている。
活性フィラーから溶出した金属は水ガラス成分を含む水と接すると、珪酸錯体を架橋しポリマー化する。この反応は天然現象でも多く見られ、例えば埋立地の真砂土が硬化したり、窓ガラスに付着した砂塵がなかなか取れないのも同じ理屈である。地殻中の堆積岩の生成機構はまさにジオポリマー反応で、ジオポリマーの語源もこれに由来する。セメントの場合は水の吸収、ジオポリマーの場合は水の蒸発であるから、原理上、両者は逆である。
反面、石英や赤鉄鉱等は溶出がほとんど無く、不活性フィラーと呼び、この場合は反応性がなくいつまでも硬化することはない。
【0006】
カルシウム系活性フィラー(カルシウムイオンを溶出する。)の場合、常温で作用し、硬化する特徴を有するが、反応に時間がかかると言った欠点がある。
カルシウム系活性フィラーの代表的なものにフライアッシュ(OF灰)がある。 主として塩基性成分であるCaOが水和し、消石灰となり、カルシウムイオンを溶出し、硬化するものである。しかしながら、OF灰は、CaOの含有量が少なく十分に硬化できない。
また加圧型流動床ボイラーを使用している発電所から排出される、加圧型流動床灰(PF灰)がある。加圧型流動床ボイラーは、塊状の石炭と石灰石を同時に混合し、850℃前後の低温で緩やかに循環し燃焼し、SOxは混合した石灰石と反応し、外に出ない構造になっている。循環燃焼中に灰は微粉状態になり、やはりフライアッシュとして回収されている。このフライアッシュは、融点以下で燃焼させるために融解せず角張った外観を呈し、ガラス質物質を含んでおらず、例えば、硬セッコウ(CaSO4)、水酸エレスターダイト(Ca10(SiO4)3(SO4)3(OH)2)、ポートランダイト(Ca(OH)2)を含有しており、フライアッシュと比較して多くのカルシウムイオンを溶出するため、高強度のものが得られる。
これらのカルシウム系フィラーを用いた場合、常温で硬化できるといった特徴を有しているが、その反面、硬化するために非常に長時間を要する。
そのため、収縮率が大きくなるという最大の欠点があり、調湿材料等の機能材を作製する上での最大の欠点となっている。
また、カルシウム系フィラーではアルミニウム系フィラー(アルミニウムイオンを溶出する。)と比較してNaイオンを結晶に取り込む量が少なく、Naイオンを過剰に抱えることができなくなり、再溶出し、強度の劣化や白華現象の原因にもなっている。
【0007】
アルミニウム系活性フィラーにはメタカオリンがある。メタカオリンはカオリンを仮焼することにより得られる物質であり、アルミニウムを溶出する活性フィラーである。
このフィラーは弱アルカリ溶液中で加熱することで溶出量が増加することは認められているがその溶出量は少ない。
そのため強アルカリを添加する方法が取られている。
しかし、ISO(国際標準化機構、JISの国際版)等の関係でこのような強アルカリを使用する場合、使用条件が限定されてしまう。
またアルカリを使用した場合、アルカリ添加で溶出速度を制御することは困難で成形時に硬化してしまう欠点があり、機能材等を配合し、十分な強度を発現できない等の問題がある。また、多量のメタカオリンを使用しなければならず緻密な硬化体しか得られない欠点がある。
先行特許文献には、次のような技術が開示されている。
特許文献1には、PF灰(加圧流動床ボイラー灰)とOF灰(微粉炭ボイラー灰)とゼオライト粉末と1号珪酸ナトリウムの2倍水希釈液を混合して、室温で成形、養生して硬化すること(実施例1参照)、メタカオリンがアルカリ処理されて人工ゼオライトになること(段落〔0014〕、〔0018〕)が開示されている。
【0008】
特許文献2には、メタカオリンに機械的エネルギーを作用させて得られる粉体とアルカリ金属珪酸塩と水とを含む組成物を硬化させた後、粉砕して得られる粉体と石膏とに水を混合して硬化した調湿建材が記載され、メタカオリンは、カオリン鉱物を500~900℃で脱水加熱によって得られる旨(特許請求の範囲1-4参照)、また、詳細な説明(段落〔0014〕-〔0016〕)には、次の記載があるが、加熱脱水温度は、600~800℃が好ましいとしている。
(1)加熱脱水工程 本発明において、必要に応じて、無機質粉体を得る工程に先だって、加熱脱水工程を行うことができる。上記加熱脱水工程は、カオリン鉱物を500~900℃で加熱脱水してメタカオリンを得る工程である。
上記工程で用いるカオリン鉱物としては、特に限定されるものではなく、化学式:Al2SiO5(OH)4で表される1:1層状珪酸塩鉱物が用いられる。具体的には、カオリナイト、デッカナイト、ナクライト、ハロイサイト等が挙げられる。
上記工程で用いる加熱温度は、500~900℃であり、600~800℃が好ましい。すなわち、加熱温度が500℃未満では、カオリン鉱物の水酸基が脱離しないのでメタカオリンへの変成が起こらない。一方、加熱温度が900℃を超えると、結晶化がおこりアルカリとの反応性が著しく低下するので、加熱硬化でのゼオライト構造物の生成率が下がる。

【特許文献1】特開2005-60175号公報
【特許文献2】特開2005-343751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
調湿度機能を防カビ機能を有するためには「呼吸をする建材」を提供することが必要であり、そのためにはナノメートルオーダーの細孔を有することが必要であり、強度が維持されなければならない。また吸着機能を有するためには機能性粉体を配合しても強度や品質の劣化を防ぐ必要がある。そのためには細孔径制御技術と特殊な硬化技術が必要である。また廃棄物粉体が利用できる。また、焼成によらない低温硬化技術により低コスト化が必要となる。
発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、細孔径制御技術により内装材等に用いられる吸放湿能が強く調湿性能に優れた建材とその効率的な製造方法を提供するだけでなく、材料の呼吸にともなう吸着機能他多機能な建材を開発することにある。また低コストで様々な部材へ適用できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、カオリンを各温度で焼成し、その溶出特性を徹底的に調べた。
本発明では珪酸モノマ-をポリマ-源として珪酸ナトリウム水溶液使用し新規活性フィラーを配合することで高強度の硬化体を作製する技術である。カオリンを所定の温度でアルミニウムイオンを溶出しやすい粉体とし、これをケイ酸アルカリ溶液の硬化材とし、溶出後のシリカ成分を細孔径制御に応用することにより低コストで多機能な硬化体を作製することに成功した。
【0011】
カオリンを各温度で焼成し、その溶出特性を徹底的に調べた結果、カオリンの最適焼成範囲を見いだした。
カオリンを焼成すると550℃付近でメタカオリンと呼ばれる非結晶質の相となる(図1参照)。結晶学的にはメタカオリンと呼ばれる非晶質な状態は550℃から900℃まで維持される。1000℃で仮焼した試料ではAl-Siスピネルの形成が検出され、1200℃で仮焼した試料ではスピネルはムライト及びクリストバライトに変化することが確認された。
図2はカオリンを熱分析したものであるが、その結果から530℃付近の吸熱ピークによりカオリンは非晶質物質のメタカオリンと呼ばれる物質に変化するかとがわかる。また994℃において発熱ピ-クが認められ、これはメタカオリンがAl-Siスピネル相に結晶化することを示している。
メタカオリンの模式的構造は図3のような構造になっていると推察されている。ジオポリマー製造において通常750℃で焼成したメタカオリンが用いられている。
【0012】
カオリンの仮焼温度によるグラム(g)あたりの溶出量の変化を図4に示す。
カオリン鉱石および熱処理した仮焼カオリン2gを100mlポリ容器に採取し、50mlの超純水を添加した。スターラーを用いて攪拌した後、遠心分離機により液体を分散液から分離し溶出液とした。溶出イオン濃度はICPプラズマ発光分析装置を用いて測定した。
80℃における溶出試験では25℃と比較して全仮焼温度において溶出量は高い値を示し、特に550℃から800℃のメタカオリンが生成する仮焼温度領域で高い溶出が認められた。
900℃で仮焼試料ではAl3+イオンの溶出量は特異的に増加し、急激に増加しピークが認められた。そして950℃以上で仮焼すると溶出量は急激に減少した。
この急激なAl3+イオンの溶出量の増加はメタカオリンからAl-Siスピネルへの結晶転移の直前のメタカオリン構造の不安定性によるものと考えられる。
図5にアルミニウムイオンのNMR測定結果を示す。メタカオリンのアルミニウム原子は4配位、5配位、6配位を含む構造を示しているが、900℃焼成では5配位が消滅しかけている。このことはメタカオリンの構造が変化していることを示すものである。この構造変化が溶出特性に影響を及ぼしているものと考えられる。
また、900℃以上ではシリカの溶出も考えられアルミニウムと反応している可能性がある、結果的にアルミニウムが選択的に溶出するのは900℃を中心とした(850℃~950℃)ごくわずかの温度領域である(950℃はスピネルになる直前の温度であり、アルカリ無添加ではシリカの溶出は減少し、アルミニウムの溶出量も増える。)。
【0013】
この実験結果から次のことが推察される。
すなわち900℃を中心とした(850℃~950℃)ごくわずかの温度領域で焼成したカオリン(以下、「焼成カオリン」という。)は、ジオポリマーの活性フィラーとして非常に有効ではないかと推察された。その理由は以下の3点である。
(1)焼成カオリンは、常温、高温の変化によりアルミニウムイオン溶出量が著しく変化する。
焼成カオリンは、温度にアルミニウムイオン溶出量が強く依存するため、温度制御によりその溶出量を制御することが可能である。
焼成カオリンを配合することにより、常温で成形した後に高温で硬化させることにより高強度な成形体の作製が可能である。
(2)焼成カオリンのアルミニウムイオン溶出量がメタカオリンより圧倒的に多い。
焼成カオリンは、低い温度で仮焼したメタカオリンと比較して少量配合で良く、アルカリを添加する必要がない。また反応が完結する、
(3)焼成カオリンは、アルミニウムイオン溶出後、カオリンの結晶構造を一部保持した多孔質となり高活性なアモルファスシリカが残留する。
アモルファスシリカにより、多様な機能を付与することが可能である。
【0014】
ジオポリマー技術において本発明の焼成カオリンを用いると成形上の利点としてアルカリを用いなくても硬化体の性能を飛躍的に改善できることできることが確認された。また従来にない特性を得ることができた。
それらの特徴は下記のとおりである。
(1)細孔径の制御が可能となる。
シリカが溶出しにくく、アモルファスシリカが残留することで微細孔組織にこのアモルファスシリカを残留させることができる。このことで様々な細孔径の制御が可能となる。
アモルファスシリカは周囲に反応性イオンが存在すれば反応の核となり、微細組織の生成を行うことが可能になるためである。
すなわち、成形条件及び配合条件から数μm~数百μmの細孔を数nm~数十nm領域にシフトさせることができる。プレス圧によっては細孔をなくすことも可能である。
数nm~数十nm領域に細孔を分布させれば調湿機能材料が得られる。
逆にエトリンガイトを過剰に生成させることで空隙を増加させることができる。
このように原料配合ならびに焼成カオリンの配合で細孔分布を自由に制御できる特徴を持つ。
(2)高強度で無収縮の硬化体が得られる。
次に反応が活性であり、反応生成物の検討を行うことで無収縮の硬化体が得られることがわかった。微細組織領域で針状物質を形成せしめることで。高強度で無収縮の硬化体が得られる。
(3)多量の機能材の配合が可能となる。
従来のジオポリマー技術では機能性粉体を硬化する場合、収縮することが最大の欠点であり、セオライト、珪藻土、セピオライト、吸着機能材を配合すると、収縮、変形が伴い、充分な強度が得られなかった。
(4)(1)~(3)の機能と組み合わせることでゼオライト、珪藻土、セピオライト、吸着機能材等の機能をそこなわずに強度を維持させることに成功した。
(1)~(3)の概要を図6a、bに示す。
活性フィラーは重縮合による硬化機能のみならず細孔制御、高強度化のメカニズムを持つ。
【0015】
すなわち結合材となるバインダー成分そのものがnm~数十nm領域に細孔を持つため調湿材を多量に含有させた硬化体も連続的にnm~数十nm領域に細孔を有することとなり、高機能な調湿材を得ることが可能となる、
【0016】
以上の検討を踏まえて、本発明の態様は、次のとおりである。
(1)活性フィラーとして850℃~950℃で熱処理した焼成カオリンと石膏を配合したフィラーと、ジオポリマーと水とを混合し、成形し、高温で養生することにより硬化して得られることを特徴とするジオポリマー高強度硬化体。
(2)石膏の成分として、PF灰を用いることを特徴とする前記(1)記載のジオポリマー高強度硬化体。
(3)活性フィラーとして焼成カオリンと石膏を配合したフィラーと、ジオポリマーと水とを混合し、成形し、高温で養生することにより硬化することを特徴とするジオポリマー高強度硬化体の製造方法。
(4)石膏の成分として、PF灰を用いることを特徴とする前記(3)記載のジオポリマー高強度硬化体の製造方法。
さらに、別の態様として下記の脱臭・調湿性硬化体を挙げることができる。
(5)上記(1)又は(2)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらにセピオライトを配合することを特徴とする脱臭・調湿性硬化体。
(6)上記(1)又は(2)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらに塩化カルシウムで処理したセピオライトを配合することを特徴とする脱臭・調湿性硬化体。
(7)上記(1)又は(2)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらに珪藻土を配合することを特徴とする調湿性硬化体。
(8)上記(1)又は(2)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらにシリカゾルまたはシリカゲルを配合することを特徴とする調湿性硬化体。
(9)上記(1)又は(2)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらに木質フィラーを配合することを特徴とする軽量調湿性硬化体。
(10)上記(9)に記載の硬化体において、フィラーとしてさらにシラスバルーンを配合することを特徴とする軽量断熱調湿性硬化体。
【発明の効果】
【0017】
(1)常温で成形した後に高温で硬化させることにより高強度な成形体の作製が可能である。
(2)焼成カオリンは、メタカオリンと比較して少量配合で良く、アルカリを添加する必要がない。また反応が完結する。
(3)焼成カオリンは、アルミニウムイオン溶出後、カオリンの結晶構造を一部保持した多孔質となり高活性なアモルファスシリカが残留する。
アモルファスシリカにより、多様な機能を付与することが可能である。
それらの特徴は下記のとおりである。
(4)細孔径の制御が可能となる。
(5)高強度で無収縮の硬化体が得られる。
(6)多量の機能材の配合が可能となる。
(7)(4)~(6)を同時に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実際の製造においてカオリンをアルカリ溶液中でアルミニウムイオンを選択的に溶出するのは900℃を中心とした850℃~950℃で焼成することが望ましい。
カオリン又はカオリンを含む鉱物を酸化雰囲気炉を用いて昇温速度1℃/min~100℃/minで昇温させ、850℃~950℃の温度範囲で30分から24時間の間で保持することが望ましい。ガス炉等灯油炉等あるいは還元炉を用いて焼成することもできる。
焼成カオリンの配合量は全フィラー100重量部に対し1~30重量部配合することが望ましい。
また、その他の活性フィラーとして、OF灰、PF灰が好適に使用できる。
【0019】
ケイ酸アルカリは、事前に水溶液に調製してから配合されるのが好ましい。ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等が利用できる。
上記アルカリ金属珪酸塩の水溶液中での濃度は、特に限定されるものではないが、5%以上が好ましく、10~80%がより好ましい。濃度が5%未満では、無機質粉体との反応性が低下し、一方、80%を超えると、粘度が高くなり成形が困難になる。
また、上記アルカリ珪酸塩水溶液の調製において、アルカリ金属珪酸塩を水に溶解してもよい。通常50%溶液が用いられる。ジオポリマー液は通常pH12程度であるが水酸化カリウムや水酸化ナトリウム溶液を配合し、フィラーの溶解性を高めることもある。
ケイ酸アルカリ溶液の配合量は全フィラー(OF灰+PF灰+焼成カオリン+機能性フィラー)100重量部に対し1~100重量部であることが望ましい。
【0020】
OF灰は球状粒子であり、PF灰はごつごつとした粒子である。この2つの粒子の配合により細孔径制御に必要な数μm~数十μmの空隙が形成される。
OF灰のような粒子として、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーン、パーライト、発泡シリカ等が挙げられる。なお、これらのフィラーの選択は、硬化体の使用形態に応じて適宜行われる。
PF灰のような粒子として、特に限定されるものではなく、例えば、珪砂、珪石粉、結晶質アルミナ、アルミナ、タルク、マイカ、珪藻土、雲母、岩石粉末(シラス、抗火石等)、玄武岩、長石、珪灰石、粘土、ボーキサイト、等のフィラーも利用可能である。
これらフィラーの粒度としては、調湿機能材を得る場合には中心粒径(5μm~200μm)程度の組み合わせが良好である。単なる構造体として利用する場合には特に限定されるものではない。
【0021】
焼成カオリンのアルミニウムイオンとケイ酸アルカリ溶液の珪酸モノマーの反応を主体に硬化反応が進行するが、OF灰とPF灰はカルシウム系活性フィラーであり、カルシウムイオンによる反応も徐々に進行する。
本発明の反応系ではOF灰とPF灰の組み合わせにおいて、OF灰の比率が高い方が強度が高く、ナノメートルの細孔が多い。逆にPF灰の比率が高くなると強度は弱くなるが多孔質となり空隙量が多くなる。PF灰中の石膏が反応系においてエトリンガイトの生成を促進するためと考えられる。
【0022】
調湿機能材としてセピオライト、珪藻土、ゼオライト、シリカゲルがある。本発明では、基本組成自体がナノメートルオーダーの細孔を有し、これらの調湿機能材を配合しても硬化体全体の細孔を連続的に制御できるため、調湿機能材の機能を充分を発揮できる。セピオライトやゼオライト、シリカゲルでは吸着機能や脱臭機能があり、VOCやにおいの吸着機能を有する。
またセピオライト及び珪藻土では軽量で断熱性能を有する建材の作製が可能である。
これら機能性フィラーの配合量は全フィラー(OF灰+PF灰+焼成カオリン+機能性フィラー)100重量部に対し1~80重量部であることが可能である、
シリカゾルはケイ酸アルカリ溶液に配合して用いることが可能であるこの場合は固形分の比率は、全フィラー(OF灰+PF灰+焼成カオリン+他のフィラー)100重量部に対し1~20重量部であることが望ましい。
【0023】
セピオライトを塩化カルシウム溶液で処理した粉体を調湿機能材として用いるとさらに硬化体の調湿機能を高めることができる。セピオライトは塩化カルシウム溶液で処理すると応答速度が速くなるだけでなく吸放出特性も良好となる。セピオライトを塩化カルシウム溶液(0.1%~20%)に浸析し、吸水させた後に乾燥することで塩化カルシウム溶液処理セピオライトが得られる。この粉体は無処理のセピオライトと同様に硬化体を作製することができる。
【0024】
調湿機能及び軽量化を目途にセルロースを含む木質フィラーを配合することもできる。
セルロース他木質粉砕品はそれ自体に調湿機能があり無機粉体を連結機能がありさらに調湿機能を高めることが可能である。また硬化体の軽量化を促進することが可能である。木質フィラーとして、セルロース、オガ屑粉、竹粉砕品、各種古紙の粉砕品等が利用できる。
木質フィラーの配合割合は、全フィラー(OF灰+PF灰+焼成カオリン+他のフィラー)100重量部に対し1~50重量部であることが望ましい、
【0025】
成形方法としては注型法、プレス法、押出成形法等を用いることが可能である。プレス法は収縮を最も抑制できる方法である。
【0026】
PF灰の少ない組成では石膏成分が少なく、エトリンガイトが生成しない。従って、石膏を配合してエトリンガイトの生成の促進をはかることがなされる。
少量の石膏配合の場合、補強強化があり、高強度化の働きをする。また多量に配合すると空隙量を増加させることができる。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれをも用い得る。
【0027】
本発明の調湿建材は、顔料、染料等の着色材を含んでいても良い。着色材料の配合量は建材の強度を損なわない範囲であれば任意である。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。本発明は当該実施例のみに限定されるものではない。
〔焼成カオリン〕
活性フィラーである焼成カオリンは以下の方法により焼成したものを用いた。
焼成カオリンは酸化焼成炉を用いて10℃/minで昇温し、900℃で5時間、保持した後炉冷したものを用いた。
〔実施例1〕
OF灰:PF灰=9:1の混合粉末に900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。その後、ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〔実施例2〕
OF灰:PF灰=7:3の混合粉末の混合粉末に900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。その後、ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した。
【0029】
〔実施例3〕
OF灰:PF灰=5:5の混合粉末の混合粉末に900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。その後、ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した。
〔実施例4〕
(OF灰:PF灰=9:1の混合粉末)とセピオライトの混合粉末(セピオライト含有量30重量%)に対し、900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。その後ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〔実施例5〕
(OF灰:PF灰=7:3の混合粉末)とセピオライトの混合粉末(セピオライト含有量30重量%)に対し、900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。その後ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〔実施例6〕
(OF灰:PF灰=7:3の混合粉末)とセピオライトの混合粉末(セピオライト含有量50重量%)に対し、900℃で焼成した焼成カオリンを混合粉末に対して5重量%を配合した。
その後ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
【0030】
〔比較例〕
〈比較例1〉
OF灰:PF灰=9:1の混合粉末にケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〈比較例2〉
OF灰:PF灰=7:3の混合粉末にケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〈比較例3〉
OF灰:PF灰=5:5の混合粉末にケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〈比較例4〉
(OF灰:PF灰=9:1の混合粉末)とセピオライトの混合粉末(セピオライト含有量30重量%)に対し、ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
〈比較例5〉
(OF灰:PF灰=7:3の混合粉末)とセピオライトの混合粉末(セピオライト含有量30重量%)に対し、ケイ酸ナトリウム溶液(1号ケイ酸ナトリウム:水=1:1)を粉体に対し30重量%配合し、水分調整した後、50kgf/cm2でプレス成形し、60℃で24時間蒸気養生した後、105℃で24時間乾燥した。
【0031】
〔評価方法〕
硬化体の細孔径分布をポロシメーターにより測定した。また収縮率及び曲げ強度試験を行った。吸放出試験は100mm×100mmの大きさに成形し、測定する面以外をシールした後、105℃で24時間乾燥した後、湿度を90%RH(相対湿度)と40%RHとし、それぞれ24時間放置後の吸収質量を求めた。(吸湿量=24時間後の重量-絶乾重量)
硬化体の微細組織を観察するため破断面の電子顕微鏡観察をおこなった。
【0032】
〔結果〕
図7aに実施例1及び比較例1により得られたジオポリマー硬化体のポロシメーターによる細孔分布測定結果を示す。図7bには、細孔径分布図と粒度範囲における頻度(百分率)を示す。
焼成カオリンの配合により細孔がnm付近~数十nmとμm~数十μmの細孔へと変化していることが確認される。このことは焼成カオリンの少量配合でnm付近~数十nmの細孔を容易に作成できることを示しており、従来のジオポリマーにはない性質を有している。
図8aに実施例3及び比較例3により得られたジオポリマー硬化体のポロシメーターによる細孔分布測定結果を示す。
図8bには、細孔径分布図と粒度範囲における頻度(百分率)を示す。
焼成カオリンの配合により細孔がnm付近~数十nmとμm~数十μmの細孔ともに増加させた例である、細孔容積を増大させた例であり、多孔体を作製できることを示しており、従来のジオポリマーにはない性質を有している。
このように原料配合ならびに焼成カオリンの配合で細孔分布を自由に制御できる特徴を持つ。
図9には実施例4及び実施例5により得られたジオポリマ-硬化体のポロシメータ-による細孔分布測定結果を示す。セピオライトを配合することにより累積細孔容積の増大お及びnm付近~数十nmの増大が確認された。細孔も連続的に存在しているものと考えられる。
【0033】
硬化体の収縮率、カサ密度及び曲げ強度を表1に示す。
【0034】
【表1】
JP0005066766B2_000002t.gif

【0035】
PF灰10重量%及び30重量%では収縮率が少なく、セピオライトを配合した硬化体は収縮がほとんど認められなかった。これはPF灰中の石膏の存在により超微細な準結晶あるいは結晶であるエトリンガイトやゼオライト鉱物(ヒドロキシソーダライト、カンクリナイト)が生成することにより硬化時に膨張し配合組成によって膨張と収縮がバランスよく硬化体の収縮率を0付近とし結果的に無収縮になるものと考えられる。
焼成カオリンからのアルミニウムの溶出、溶出後のアモルファスシリカの生成に従来にない反応がおこるものと考えられる。これらは硬化体の収縮率をなくすとともに収縮をおこさないため硬化体の細孔分布にも影響を与える。得られた超微細な準結晶あるいは結晶であるエトリンガイトやゼオライト鉱物(ヒドロキシソーダライト、カンクリナイト)はそれ自体ナノオーダーの大きさで粒子間隙で調湿機能や吸着機能を有するため、硬化体は大きな細孔構造で連続的な細孔分布を持つ材料となる。
ジオポリマー系材料は本来収縮する材料であるが本発明によりプレス成形後、蒸気養生することで収縮のほとんどない硬化体が得られることがわかった。
【0036】
硬化体のカサ密度は焼成カオリン配合の場合、セピオライト無配合で1.3~1.4の値を示す。セピオライトの配合により1.08まで減少し、軽量化することがわかる。カオリン配合の場合、焼成カオリン配合の場合と比較するとやや高い値を示す。本発明により得られる硬化体では軽量な硬化体が作製可能であり、高強度が維持できる。
【0037】
硬化体の曲げ強度はセピオライト無配合系ではPF灰10重量%で57Mpaと大きな値を示した。本発明ではセピオライトを多量に配合しても充分な強度が得られ、従来の硬化技術と比較して高強度の調湿材が作製できることが確認された。
従来のジオポリマー法では硬化反応に長時間を要するため、収縮することに加え、調湿材を配合した場合、特に表面乾燥が激しく硬化時に硬化体がそったり、変形していた。
本発明においては焼成カオリンのアルミニムの溶出が温度に対して非常に応答性が良いこと、配合量に対して溶出量が多いことにより、反応を短時間に行わせることができるため多量のアルミニムイオンが溶出し、ケイ酸アルカリ溶液と反応し、反応を短時間で終了させることができる、硬化条件において反応を短時間で行わせることにより、均質な材料を得ることができる。高強度化においてはエトリンガイト等の微細結晶が大きく影響しているものと考えられる。また本発明では成形体を高温で養生することにより均質な成形体を得ることができる。
【0038】
硬化体の調湿性能を表2に示す。
【0039】
【表2】
JP0005066766B2_000003t.gif

【0040】
図6a・図6bのように細孔がナノメートルの大きさにシフトした硬化体は非常に調湿性能に優れることがわかる。またセピオライトを配合することでさらに調湿性能が向上した。これはセピオライトを配合しても本発明の硬化体では図9のように累積細孔容積の増大及びnm付近~数十nmの増大により調湿性能も飛躍的に増大するものと考えられる。
【0041】
実施例4により作製した硬化体の電子顕微鏡観察を図10に示す。ナノメートルオーダーの微細組織が観察されると同時に粒子間隙におけるエトリンガイト等の微細結晶が確認される。このことからピオライトを多量に含有しても強度が維持できるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】カオリンの仮焼物のX線回折結果である。
【図2】カオリンの示差熱分析である。
【図3】カオリンの仮焼物の結晶の模式図である。
【図4】カオリンの仮焼物の溶出特性である。
【図5】カオリン仮焼物のMAS-NMR(27Al)スペクトルである。
【図6a】焼成カオリン無添加による細孔径制御のイメージ図である。
【図6b】焼成カオリン添加による細孔径制御のイメージ図である。
【図7a】ジオポリマー硬化体の細孔径分布曲線である。
【図7b】ジオポリマー硬化体の細孔径分布である。
【図8a】ジオポリマー硬化体の細孔径分布曲線である。
【図8b】ジオポリマー硬化体の細孔径分布である。
【図9】セピオライトを配合したジオポリマー硬化体の細孔径分布曲線である。
【図10】ジオポリマー硬化体の破断面のSEM写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6a】
4
【図6b】
5
【図7a】
6
【図7b】
7
【図8a】
8
【図8b】
9
【図9】
10
【図5】
11
【図10】
12