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明細書 :改質木材とその製造方法並びにその成形体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月30日(2020.4.30)
発明の名称または考案の名称 改質木材とその製造方法並びにその成形体
国際特許分類 B27K   5/00        (2006.01)
B27K   3/36        (2006.01)
FI B27K 5/00 B
B27K 3/36
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2019-526999 (P2019-526999)
国際出願番号 PCT/JP2018/024455
国際公開番号 WO2019/004315
国際出願日 平成30年6月27日(2018.6.27)
国際公開日 平成31年1月3日(2019.1.3)
優先権出願番号 2017125571
優先日 平成29年6月27日(2017.6.27)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】榎本 有希子
【氏名】三木 恒久
【氏名】関 雅子
出願人 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 2B230
Fターム 2B230AA30
2B230BA01
2B230CB08
2B230EA03
2B230EB02
2B230EB05
要約 塊状の木材の成形加工性、耐久性を向上させ、木材の組織や木目の特徴を保ちつつ、木材単独での成形加工を可能とする。
最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料が内部までエステル化処理された改質木材であって、ATR法によるIRスペクトルにおいて、前記木質原料の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をAとし、前記改質木材の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をBとした場合に、B/Aの値が3.0以上である改質木材とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料が内部までエステル化処理された改質木材であって、ATR法によるIRスペクトルにおいて、前記木質原料の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をAとし、前記改質木材の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をBとした場合に、B/Aの値が3.0以上であることを特徴とする改質木材。
【請求項2】
前記木質原料の細胞壁の厚みをCとし、前記改質木材の細胞壁の厚みをDとした場合に、CとDが1<D/C≦3の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の改質木材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の改質木材の成形体であって、細胞組織が残存していることを特徴とする成形体。
【請求項4】
脂肪酸化合物と、トリフルオロ酢酸無水物、硫酸、塩酸からなる群より選ばれる1種類以上の酸化合物と、を含む混合溶液に、最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料を浸して、50℃~60℃で、15分~5時間エステル化処理反応させることを特徴とする改質木材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、改質木材とその製造方法並びにその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材の成形加工性や耐久性を改善するための検討が様々な観点から行われてきている。このような検討の一つとして化学的処理の方法が知られている。その代表例として、木粉や木材小片を用いて、構成成分の水酸基をエステル化することにより、熱可塑性を付与することに成功しており、得られたエステル化木粉は熱流動性を示すことが報告されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、主に木粉を試料に用いており、木材のもとの組織構造を保持した成形体の作製にまでは至っていない。また成形加工性に乏しいという問題がある。この成形加工性を改良するために、樹脂との複合化による成形が検討されているものの(特許文献2)、木材単独での成形加工法や成形体の作製は依然として実現されるに至っていない。
一方、本出願人の研究グループにおいては、汎用金型を用いて木材を複雑形状に成形することに成功している(特許文献3)。ただ、このような画期的な発明方法ではあっても、成形加工時間が長いことや、得られた成形品の強度や耐久性が必ずしも満足できるものではないという問題点があり、さらなる改善が求められていた。石油由来樹脂との複合化によりこれらの問題点に対処していたが、石油由来樹脂を用いることは、環境保全や健康被害の面からも好ましくないため、木材そのものの抜本的な改質策が求められていた。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開昭57-103804号公報
【特許文献2】特開昭63-225658号公報
【特許文献3】特開2008-36941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、従来技術においては、木材はそのままでは熱可塑性が乏しいため、成形加工に要する時間やエネルギーが大きく、加工品の耐久性が低く、石油由来の熱硬化性樹脂等との複合化が必要であるなどの課題が残されている。本発明では、従来技術の問題点を解消して、塊状の木材の成形加工性や耐久性を向上させ、木材の組織構造や木目などの木材の特徴を保持しつつ木材単独での成形加工を可能にする改質木材とその製造方法並びに成形体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、セルロースやヘミセルロースなどの木材構成多糖あるいはリグニンの水酸基にエステル化処理を施すことで、熱可塑性を付与し、成形加工性を向上させるべく検討を進めた。そして、その際、木材そのものの性質を保持するため、塊状の木材試料を用いること、水酸基のエステル化度を上げつつも組織構造を保持した改質木材を得ることとした。
【0006】
本発明は、このような検討を踏まえて完成されたものである。
【0007】
本発明は以下の特徴を有している。
<1>最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料が内部までエステル化処理された改質木材であって、ATR法によるIRスペクトルにおいて、前記木質原料の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をAとし、前記改質木材の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をBとした場合に、B/Aの値が3.0以上である改質木材。
<2>前記木質原料の細胞壁の厚みをCとし、前記改質木材の細胞壁の厚みをDとした場合に、CとDが1<D/C≦3の関係を満たす改質木材。
<3>前記改質木材の成形体であって、細胞組織が残存している成形体。
<4>脂肪酸化合物と、トリフルオロ酢酸無水物、硫酸、塩酸からなる群より選ばれる1種類以上の酸化合物と、を含む混合溶液に、最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料を浸して、50℃~60℃で、15分~5時間エステル化処理反応させる改質木材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塊状の木材の成形加工性や耐久性が向上され、木材の組織構造や木目などの木材の特徴が保持され、木材単独での成形加工が可能とされる改質木材が提供される。また、本発明により、このような改質木材の製造方法と、改質木材の成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】木材構成成分のエステル化について示した概要図である。
【図2】ヒノキのプロピオニル化物のIRスペクトル図である。
【図3】ヒノキのアセチル化とプロピニオル化におけるカルボニル基と水酸基のIRスペクトルピーク強度比を示した図である。
【図4】ブナのアセチル化とプロピオニル化におけるカルボニル基と水酸基のIRスペクトル強度比を示した図である。
【図5】ヒノキプロピオニル化における重量変化率と寸法変化率を示した図である。
【図6】ヒノキプロピオニル化(50℃、4時間処理)のDMA曲線図である。
【図7】エステル化木材(処理温度50℃)の軟化点を示した図である。
【図8】エステル化ヒノキの圧縮試験での応力ひずみ曲線図である。
【図9】エステル化ブナの圧縮試験での応力ひずみ曲線図である。
【図10】ヒノキとブナのエステル化(50℃、4時間)における木口面のSEM写真(1000倍)である。
【図11】プレス成形体について示した外観写真である。
【図12】プロピオニル化ブナのプレス成形体(170℃、3t)の断面・内部写真である。
【図13】プロピオニル化スギ丸板のIRスペクトルである。
【図14】スギの成形体の写真である。
【図15】プロピオニル化4時間処理後のスギの成形体断面と光学顕微鏡写真(1000倍)である。
【図16】接触角測定時の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の改質木材は、前記のとおり、
1)最大長さが少なくとも10mm以上の、木粉ではない塊状の木質原料が内部までエステル化処理された改質木材である
2)ATR法によるIRスペクトルにおいて、木質原料の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をAとし、前記改質木材の1750cm-1のカルボニル基のピーク強度をBとした場合に、B/Aの値が3.0以上である改質木材である
ことを必須としている。

【0011】
なお、前記1)での「最大長さ」の用語については、木質原料における丸材でのT(接線方向)、R(半径方向)、L(繊維方向)のいずれかの最大寸法を示し、角材では断面の縦、横、長さ方向のいずれかの最大寸法を示している。

【0012】
IRスペクトルは、サンプルのスペクトルからブランクのスペクトルを差し引き、1515cm-1で規格化したものを用い、複数のIRスペクトル間においては、2000cm-1から4000cm-1までをベースラインとして揃えた状態で、ベースラインからの強度の絶対値によりピーク強度比を算出した。

【0013】
また、本発明の改質木材は、さらには、
3)木質原料の細胞壁の厚みをCとし、改質木材の細胞壁の厚みをDとした場合に、CとDが1<D/C≦3の関係を満たすことが好ましい。

【0014】
前記2)のカルボニル基のピーク強度比B/Aが3.0以上であるとのことは、本発明の改質木材が従来技術における解決すべき課題を解決して、所期の目的、効果を実現するために欠かせない。B/Aが3.0未満の場合には、本発明の目的、効果を確実に、かつ安定的に達成することが難しい。

【0015】
前記3)の細胞壁の厚み比D/Cについての範囲は、本発明に改質木材のより好ましい実施の形態である。
本発明での木質原料については、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを主な構成成分とする木質材であって、天然又は前処理済み、再利用、廃棄物としての木質材であってよく、前処理済み、再利用や廃棄物としての木質材においては、樹脂と複合化したものを含まない木材、竹などで、水酸基が未処理のまま存在するものがよい。これら木質原料は一種でも、二種以上であってもよい。木材の場合には、広葉樹、針葉樹の各種のものであってよい。

【0016】
エステル化処理においては、例えば図1に示したように、セルロース、ヘミセルロース、リグリン等の構成成分の水酸基がアセチル基(Ac)やプロピオニル基(Pr)によりエステル化されることになる。このエステル化処理の反応によって、カルボニル基の生成、存在が前記1)のIRスペクトルの強度比(B/A)が所定のものとされる。そして後述の説明にも見られるように、カルボニル基の生成、存在は、水酸基(-OH)の残存割合とも密接に関係している。この観点からは、本発明の改質木材は、木質原料のIRスペクトルでの水酸基由来の3400cm-1のピーク強度(E)に対し、改質木材のピーク強度(F)が、F/Eとして2/3以下、さらには、1/5以下であることが好ましい。

【0017】
エステル化処理反応については、最大長さが少なくとも10mm以上の木質原料を、例えば酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸等の一種以上の脂肪酸化合物と、トリフルオロ酢酸無水物、硫酸、塩酸等の一種以上の酸化合物とを含む混合溶液に浸して加熱処理することが例示される。
この場合の混合溶液には適宜に希釈剤や溶媒、さらにはエステル化反応触媒を配合してもよい。また、加熱処理は、前記の混合溶液の組成や木質原料の種類、そして目的とする改質木材の特性等を考慮して、加熱温度、処理時間等の条件を定めることができる。一般的には、加熱温度としては40℃~80℃、好ましくは50℃~60℃の範囲が、また処理時間は、10分~8時間、好ましくは15分~5時間の範囲が例示される。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、両端の数値を含む。

【0018】
本発明の改質木材は、公知の方法をはじめとして様々な形態で成形体に加工することができる。例えば、圧縮、引張り、曲げ、切削、切断等の各種の成形方法が採用される。本発明においては、改質木材の成形体として、成形後においても細胞組織が残存しているものが特徴的なものとして提供される。

【0019】
そこで以下に実施例を説明する。もちろん本発明は以下の例によって限定されることはなく、様々なバリエーションとしての形態が可能とされる。
【実施例】
【0020】
<試料>
試料木片は、ヒノキあるいはブナの木口試料(20(R)×20(T)×5(L)mm)と板目試料(2(R)×20(T)×20(L)mm)、板目試料(1(R)×10(T)×10(L)mm)を105℃で一晩乾燥したものの繊維方向連続試料を用いた。また、成形用試料には、スギの丸板(直径40mm厚さ3mm)のものを用いた。
<エステル化処理>
酢酸あるいはプロピオン酸とトリフルオロ酢酸無水物の1:1混合溶液に、木片を投入して浸漬し、50℃あるいは60℃で15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、それぞれ撹拌することで木材のアセチル化あるいはプロピオニル化を行った(図1)。エステル化処理後の木片をメタノール2Lで洗浄し、常温での送風乾燥後、105℃で乾燥させた。
<改質木材>
1)50℃、60℃でプロピオニル化したヒノキの試料を170℃で圧縮し、フィルム状に成形した試料のIRスペクトルを図2に示す。ピーク強度比の値は表1に示した。50℃で処理した試料では、全て処理時間のサンプルにおいて1750cm-1のカルボニル基のピークが見られ、ピーク強度比B/A3以上としてエステル化が進行したことを確認できた。しかしながら、4時間後も3400cm-1の水酸基由来のピークが見られ、ピーク強度比F/Eが2/3以下であるが、水酸基が一部残存していた。一方、60℃で処理した試料は2時間以降、水酸基のピークが消失しており、木質原料中に存在した水酸基は内部までほぼ全てエステル基で置換されたことを確認できた。
【実施例】
【0021】
【表1】
JP2019004315A1_000003t.gif
【実施例】
【0022】
2)ヒノキ、ブナのアセチル化あるいはプロピオニル化したものについて、未修飾のものに対するカルボニル基と水酸基のピーク強度比は図3,4のようになった。ピーク強度比の値は表1に示した。50℃で処理したものは、4時間処理後も水酸基が残存していること、60℃で処理した試料では2時間以降は水酸基がほぼ消失していることを確認できた。いずれの場合も、カルボニル基ピーク強度比B/Aは3以上で、水酸基ピーク強度比F/Eは2/3以下であった。木材試料をこの条件で処理したとき、溶液中で約2倍の大きさにまで、大きく膨潤することが確認された。この膨潤により、内部まで試薬が浸透し、木材内部の水酸基までエステル化反応が進行したと考えられる。既報の化学処理木材あるいは木粉では、ここまでの寸法変化は起こさず、表面処理にとどまる程度の条件と考えられ、本手法では過酷な条件で長時間反応させたために、木材内部にまでエステル化が施された目的の改質木材が得られたと考えられる。
3)ヒノキのプロピオニル化処理したものの重量増加率とかさ密度増加率、寸法変化率は図5のようになった。寸法変化率を示す図中の表記T、R、Lは、各々次のことを示している。T(接線方向)、R(半径方向)、L(繊維方向)。50℃で処理したものよりも60℃で処理したものの方が重量増加率は高くなり、反応がより進行したとされるIRのデータと一致する。60℃で処理したものの方が、寸法変化率が高く、変形の程度が大きかった。アセチル化における重量増加率は同様の傾向で、プロピオニル化のものよりも小さな値を示したが、これはエステル基の分子量が小さいためと考えられる。
4)50℃で処理した試料の動的粘弾性測定(DMA)の結果、DMA曲線は図6のようになり、2回目の昇温過程でも軟化が見られた。つまり、これらの試料は熱可塑性を示すことがわかった。DMA曲線から算出した軟化点は図7のようになった。10分処理した試料では、軟化点は観測されず、30分、45分処理の試料では、軟化点が高く検出されたが、内部まで反応が進行していないか、全ての水酸基を完全に置換する程度にまで反応が進行していないためと考えられる。アセチル基で約180℃、プロピオニル基で120℃(ヒノキ)、150℃(ブナ)で軟化点が見られた。
【実施例】
【0023】
5)エステル化ヒノキ、ブナ(5mm角)のR(半径)方向の170℃で圧縮時の応力ひずみ曲線を図8,9にそれぞれ示した。どちらの樹種においても、プロピオニル化した試料の方がアセチル化した試料に比べて小さな応力で大きな変位を示すことがわかった。また、未処理木材(ヒノキ)試料も同様の圧縮ひずみ曲線を示し、80%変位の時の応力は100MPa、90%変位のときの応力は約250MPaであった。ヒノキ、ブナとも60℃でプロピオニル化した試料で、未処理木材よりも小さな応力で変形可能であり、水酸基を完全にエステル化することと、軟化点の低いプロピオニル化を施すことで、成形性が向上したと考えられる。また、ヒノキの60℃プロピオニル化試料では、60%変位でショルダーピークが見られ、木材が大きく流動的に変形したことが示唆された。
【実施例】
【0024】
6)ヒノキとブナのアセチル化、プロピオニル化した試料の木口面の走査型電子顕微鏡写真を図10に示す。エステル化した後も、組織構造が保たれていることがわかった。また、エステル化後、未処理のものの細胞壁の厚みCに比べて、細胞壁の厚みDが分厚くなっており、1<D/C≦3の関係にあることが確認された。 ヒノキ、ブナのプロピオニル化した板目試料(10mm×10mm×1mm)を圧縮成形によりフィルム化した。水酸基が完全にプロピオニル化された60℃で処理した試料は、良好な成形性を示し、170℃1トンで容易に圧縮できた (図11)。一方、35℃で8時間処理した試料からは、180℃3トンで圧縮しても流動的な変形は起こらなかった。また、圧縮(170℃、3t)後の試料の断面のSEM写真から、圧縮後も細胞壁や繊維構造が保持されていることがわかった(図12)。
<改質木材の成形(容器)>
スギの丸板を50℃で1時間あるいは4時間プロピオニル化したもののIRを図13に示した。1時間処理したものでは水酸基が残存しており、4時間処理したものでは水酸基は完全にエステル化されており、ATR法によるIRスペクトルにおいて、1750cm-1のカルボニル基の木質原料のピーク強度(A)と、改質木材のピーク強度(B)の比(B/A)は、3.0以上であって、水酸基由来の3400cm-1の木質原料のピーク強度(E)に対しての改質木材のピーク強度(F)との比(F/E)は2/3以下であることが確認された。
これらの改質木材を成形体の作成に用いた。
容器の圧縮成形では、あらかじめ150℃で24時間乾燥させた改質木材片46gを金型に投入し、圧力400kN、温度170℃で圧縮、放冷後、型から取り出した。
【実施例】
【0025】
図14に示すように、未処理の試料は、流動が不十分で、完全な成形体は得られなかったが、4時間処理して水酸基が完全にエステル化された試料からは、良好な形状の成形体が得られた。
【実施例】
【0026】
また、容器の切断面は、図15のようになり、均一に成形体内部まで均一な状態で加工されていた。さらに断面を光学顕微鏡で観察したところ、細胞壁の組織構造が保持されていることも確認できた。
【実施例】
【0027】
未修飾木材とプロピオニル化木材から作製した成形品の耐水性を接触角測定により評価した。水滴を滴下後0, 10, 30, 60秒後の水滴の接触角は図16のようになり、プロピオニル化木材からの成形品では、滴下後60秒後でも優れた撥水性を保っており、耐水性が向上していることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、最大長さが少なくとも10mm以上の塊状木材に熱可塑性を付与することが可能になり、成形性や耐久性が向上した。木粉と樹脂を混合して得られるウッドプラスチックとは異なり、木材単独で成形可能となった。また、改質木材は木材の細胞壁や繊維構造を保持しているため、木粉単独では実現できない、強度や木目などの意匠性を有しており、木材そのものの特性を活かした部材の開発に活かすことができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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