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明細書 :グラファイト又はグラフェン様の層状構造を有する重合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月26日(2020.3.26)
発明の名称または考案の名称 グラファイト又はグラフェン様の層状構造を有する重合体
国際特許分類 C08G  61/12        (2006.01)
H01M   4/62        (2006.01)
H01M   4/60        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
FI C08G 61/12
H01M 4/62 Z
H01M 4/60
C25B 11/06 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 48
出願番号 特願2019-517594 (P2019-517594)
国際出願番号 PCT/JP2018/017519
国際公開番号 WO2018/207699
国際出願日 平成30年5月2日(2018.5.2)
国際公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
優先権出願番号 2017092533
優先日 平成29年5月8日(2017.5.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】緒明 佑哉
【氏名】佐藤 宏亮
【氏名】矢野 翔一郎
【氏名】鈴木 惇平
出願人 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4J032
4K011
5H050
Fターム 4J032BA02
4J032BA12
4J032BA13
4J032BB06
4J032BC12
4J032CA02
4K011AA29
4K011DA01
5H050AA19
5H050BA08
5H050CA22
5H050CA23
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB22
5H050CB23
5H050CB25
5H050CB26
5H050DA09
5H050EA26
5H050EA27
5H050EA28
5H050FA12
5H050FA20
5H050GA11
5H050GA15
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA13
要約 互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよいベンゾキノンと、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含む重合体又はその還元体が開示される。
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよいベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含む重合体又はその還元体。
【請求項2】
置換基を有してもよいベンゾキノン、又は電子求引性の置換基を有し2位及び3位の炭素、並びに5位及び6位の炭素のうちの少なくともいずれか一方の組の炭素が置換されていない単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又はパラ位にアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含む重合体又はその還元体。
【請求項3】
前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物であり、前記ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と前記複素環式芳香族化合物とが炭素-炭素結合している部分と、2分子の前記ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と1分子の前記複素環式芳香族化合物とが縮環を形成する部分とを有する請求項1又は2に記載の重合体又はその還元体。
【請求項4】
前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、置換基を有してもよいアゾール、ピリジン、ピリミジン、又はピリダジンである請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体又はその還元体。
【請求項5】
前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、ピロール、ピリジン、ピリダジン又はチアゾールである請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体又はその還元体。
【請求項6】
下記式(i)~式(iv)で表わされるいずれかの部分を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体。
【化1】
JP2018207699A1_000036t.gif
(式中、Cy1は5員環の含窒素複素環であり、
Cy2は単環式芳香族炭化水素であり、
Cy3は6員環の含窒素複素環であり、
Aはビニル基、アシル基、シアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基;ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、若しくはヒドロキシ基により置換されたアルケニル:から選択される電子求引性の置換基であり、
AとCyの間の結合は単結合又は二重結合である。)
【請求項7】
下記式(I)又は式(II)で表わされる部分を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体。
【化2】
JP2018207699A1_000037t.gif
【化3】
JP2018207699A1_000038t.gif

【請求項8】
下記式(III)又は(IV)で表わされる部分を含む請求項7に記載の重合体。
【化4】
JP2018207699A1_000039t.gif
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)
【化5】
JP2018207699A1_000040t.gif
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
6は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)
【請求項9】
下記式(IX)で表わされる部分を含む請求項1~8のいずれかに記載の重合体又はその還元体。
【化6】
JP2018207699A1_000041t.gif
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
kは1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。)
【請求項10】
下記式(X)で表わされる部分を含む請求項1~8のいずれかに記載の重合体又はその還元体。
【化7】
JP2018207699A1_000042t.gif
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
23、R25、及びR26はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
24、R27、及びR30はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
28、R29はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
m、nはそれぞれ1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。)
【請求項11】
式(XI)で表わされる部分を含む重合体。
【化8】
JP2018207699A1_000043t.gif
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
nは1以上の整数であり、
xは0~20の実数である)
【請求項12】
前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素であり、
前記ベンゾキノンと前記複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とが縮環を形成する部分とを有する請求項1又は2に記載の重合体又はその還元体。
【請求項13】
前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素がジビニルベンゼンである請求項1、2又は12に記載の重合体又はその還元体。
【請求項14】
式(XII)~(XVII)のうちの少なくとも一つで表わされる部分を含む請求項1、2、12、又は13に記載の重合体。
【化9】
JP2018207699A1_000044t.gif

【請求項15】
平面状に延びる請求項1~14のいずれかに記載の重合体を有する厚さ0.2nm~2.0nmのシート。
【請求項16】
0.2nm~2.0nmの層間間隔で複数の請求項15に記載のシートが積層された積層体。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載の重合体を含む長さ1~1000nm及び厚み1~100nmのナノフレーク。
【請求項18】
互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを重合させることを含む重合体の製造方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれかに記載の重合体のコーティング材料としての使用方法。
【請求項20】
請求項1~14のいずれかに記載の重合体を含む電極材料。
【請求項21】
電極活物質または電極触媒である請求項20に記載の電極材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト又はグラフェン様の層状構造を有する重合体、及び該重合体を含むシート、該重合体を含むナノフレーク、該重合体の製造方法、並びに該重合体のコーティング又は電極材料としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
層状無機化合物のはく離による無機ナノシートの作製と応用が盛んに研究されており、ナノシート化により、二次元異方的な形状の形成、高比表面積化、量子サイズ効果など、バルクとは異なる性質を示すことが報告されている。
【0003】
一方、層状有機化合物のナノシートの作製には、複雑な分子設計や合成が必要となるため、報告例がまだ少ない。例えば非特許文献1には、o-CVD法及びVPP法による、気相からの共重合体の酸化的合成とコーティングが記載されている。非特許文献2には、bis-アシル尿素誘導体等を用いた層状有機化合物(二次元高分子のナノ構造)の合成が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics, 2012, 50, 1329-1351
【非特許文献2】Nanoscale, 2012, 4, 6102-6117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の共重合体の合成では、合成条件として高温又は真空条件が必要である。また、酸化剤を事前に対象基板に塗布しておく必要があるため、コーティング対象の基板又は基材の種類が限定されるという問題がある。
【0006】
非特許文献2の高分子の合成には、設計された分子及び分子間の相互作用(水素結合を初めとする、錯形成などの非共有結合)を利用しており、グラファイト又はグラフェン様の共有結合を利用した高分子及びその積層構造は合成できていない。
【0007】
本発明の課題は、100℃以下及び常圧という穏和な環境下でも合成できる、グラファイト又はグラフェン様の共有結合を有する重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを反応させると、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とが縮環を形成することにより、グラファイト又はグラフェン類似の層状構造を有する重合体を合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[1]互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよいベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含む重合体又はその還元体。
[2]置換基を有してもよいベンゾキノン、又は電子求引性の置換基を有し2位及び3位の炭素、並びに5位及び6位の炭素のうちの少なくともいずれか一方の組の炭素が置換されていない単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又はパラ位にアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含む重合体又はその還元体。
[3]前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物であり、前記ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と前記複素環式芳香族化合物とが炭素-炭素結合している部分と、2分子の前記ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と1分子の前記複素環式芳香族化合物とが縮環を形成する部分とを有する[1]又は[2]に記載の重合体又はその還元体。
[4]前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、置換基を有してもよいアゾール、ピリジン、ピリミジン、又はピリダジンである[1]~[3]のいずれか一項に記載の重合体又はその還元体。
[5]前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、ピロール、ピリジン、ピリダジン又はチアゾールである[1]~[4]のいずれか一項に記載の重合体又はその還元体。
[6]下記式(i)~式(iv)で表わされるいずれかの部分を含む[1]~[5]のいずれか一項に記載の重合体。
【0010】
【化1】
JP2018207699A1_000003t.gif

【0011】
(式中、Cy1は5員環の含窒素複素環であり、
Cy2は単環式芳香族炭化水素であり、
Cy3は6員環の含窒素複素環であり、
Aはビニル基、アシル基、シアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基;ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、若しくはヒドロキシ基により置換されたアルケニル:から選択される電子求引性の置換基であり、
AとCyの間の結合は単結合又は二重結合である。)
[7]下記式(I)又は式(II)で表わされる部分を含む[1]~[6]のいずれか一項に記載の重合体。
【0012】
【化2】
JP2018207699A1_000004t.gif

【0013】
【化3】
JP2018207699A1_000005t.gif

【0014】
[8]下記式(III)又は(IV)で表わされる部分を含む[7]に記載の重合体。
【0015】
【化4】
JP2018207699A1_000006t.gif

【0016】
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)
【0017】
【化5】
JP2018207699A1_000007t.gif

【0018】
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
6は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)
[9]下記式(IX)で表わされる部分を含む[1]~[8]のいずれかに記載の重合体又はその還元体。
【0019】
【化6】
JP2018207699A1_000008t.gif

【0020】
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
kは1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。)
[10]下記式(X)で表わされる部分を含む[1]~[8]のいずれかに記載の重合体又はその還元体。
【0021】
【化7】
JP2018207699A1_000009t.gif

【0022】
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
23、R25、及びR26はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
24、R27、及びR30はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
28、R29はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
m、nはそれぞれ1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。)
[11]式(XI)で表わされる部分を含む重合体。
【0023】
【化8】
JP2018207699A1_000010t.gif

【0024】
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
nは1以上の整数であり、
xは0~20の実数である。)
[12]前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は、複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素であり、前記ベンゾキノンと前記複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とが縮環を形成する部分とを有する[1]又は[2]に記載の重合体又はその還元体。
[13]前記置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素がジビニルベンゼンである[1]、[2]又は[12]に記載の重合体又はその還元体。
[14]式(XII)~(XVII)のうちの少なくとも一つで表わされる部分を含む[1]、[2]、[12]、又は[13]に記載の重合体。
【0025】
【化9】
JP2018207699A1_000011t.gif

【0026】
[15]平面状に延びる[1]~[14]のいずれかに記載の重合体を有する厚さ0.2nm~2.0nmのシート。
[16]0.2nm~2.0nmの層間間隔で複数の[15]に記載のシートが積層された積層体。
[17]請求項1~14のいずれかに記載の重合体を含む長さ1~1000nm及び厚み1~100nmのナノフレーク。
[18]互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよいベンゾキノンと、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを重合させることを含む重合体の製造方法。
[19][1]~[14]のいずれかに記載の重合体のコーティングとしての使用方法。
[20][1]~[14]のいずれかに記載の重合体を含む電極材料。
[21]電極活物質または電極触媒である[20]に記載の電極材料。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、従来よりも穏和な条件で、モノマーが共有結合により組み込まれた二次元状又は平面状の重合体を得ることができる。また、本発明の重合体を含有するコーティングは、任意の基板又は基材に適用することができる。さらに、平面状の本発明の重合体が複数個積層した積層体は、種々の液相中ではく離でき、はく離による比表面積の向上、反応性の向上等が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】気相法によるBQ/Py重合体の合成の反応系を説明する略図。
【図2】BQ/Py重合体、BQ 標品、HQ 標品、及びPPy標品のIR スペクトル。
【図3】熱重量測定装置により測定したBQ/Py重合体、BQ 標品、BQ/HQ電荷移動錯体、及びPPy標品の質量減少率のグラフ。
【図4】BQ/Py重合体における酸化体と還元体と水分子からなる推定構造式。
【図5】(A)BQ/Py 重合体のXRD データ。(B)BQ/Py重合体の層間方向の分子模型、(C)BQ/Py重合体の面方向の分子模型。
【図6】(A)~(F)BQ/Py重合体のSEM像。(A)~(C)は表面が滑らかな粒子、(D)~(F)は表面が粗い粒子。
【図7】重合体BQ/Pyのモデル図。点線で囲んだ箇所は重合体が延びる平面に対して上方向又は下方向へ結合が延びる部分を示す。
【図8】BQ/Py 重合体及び2つの還元体のIRスペクトル。
【図9】(A)~(D)BQ/Py 重合体のはく離後のBQ/PyナノシートのTEM像。
【図10】(A)図9のBQ/PyナノシートのAFM像。(B) BQ/Py15 mgを純水20 mL中に分散させることではく離し、その分散液を単結晶シリコン基板上にキャストし、シートの厚さを測定したグラフ。
【図11】(A)ベンゾキノン(BQ)標品とアントラキノン(AQ)標品のサイクリックボルタモグラム、(B)重合体BQ/Pyのサイクリックボルタモグラム、(C)ベンゾキノン(BQ)の酸化及び還元状態を示す説明図、(D)BQ類似箇部位(I)とAQ類似部位(II)の構造式。
【図12】重合体BQ/Pyのはく離前後におけるサイクリックボルタモグラム。理論容量: 317.2 mA h g-1
【図13】Linear Sweep Voltammetry(LSV)のグラフ。縦軸は反応電流値、横軸は電位である。
【図14】BQ/Th重合体及びBQ/Py重合体のIR スペクトル。
【図15】熱重量測定装置により測定したBQ/Py重合体、BQ/Th重合体、及びBQ/Pyr重合体の質量減少率のグラフ。
【図16】BQ/Th重合体の一部の構造式。
【図17】BQ/DVB重合体、BQ及びDVBのIR スペクトル。
【図18】熱重量測定装置により測定したBQ及びBQ/DVB重合体の質量減少率のグラフ。
【図19】BQ/DVB重合体のXRD測定の結果を示すグラフ。
【図20】BQ/DVB重合体の質量分析の結果を示すグラフ。
【図21】BQ/DVB重合体の分子モデルの模式図。
【図22】BQ/DVBナノフレークのTEM像((a),(b))、及び長さのヒストグラム(c))。
【図23】BQ/DVBナノフレークのAFM像(A)及び厚さのグラフ(B)。
【図24】BQ/DVB重合体及びBQ/DVBナノフレークのサイクリックボルタモグラム。
【図25】BQ/DVBナノフレークのサイクルレート特性(a)及び充放電曲線(b)。
【図26】TCNQ/DVB重合体のIR スペクトル。
【図27】熱重量測定装置により測定したTCNQ/DVB重合体の質量減少率のグラフ。
【図28】TCNQ/DVB重合体の一部の推定構造式。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.重合体
本発明の重合体は、互いに付加環化反応を起こす、置換基を有してもよいベンゾキノン(以下、単にベンゾキノンと称する場合もある)又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物(以下、単に複素環式芳香族化合物と称する場合もある)又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを構成単位として含む。すなわち、本発明の重合体は、モノマー成分としての置換基を有してもよいベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、モノマー成分としての置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを重合してなる重合体である。複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素は好ましくはパラ位にアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素である。

【0030】
付加環化反応は、ペリ環状反応(π電子系を含む複数の結合が、環状の遷移状態を経て反応中間体を生成せずに同時に形成、切断される反応)の一つであり、二つの不飽和分子が二つのπ結合を失って新しい二つのσ結合でつながり環状化合物を生成する反応を指す。付加環化反応には、共役ジエンとアルケン(二重結合)から六員環が形成されるDiels-Alder反応、及び三重結合と二重結合のそれぞれがπ結合を失って新しい二つのσ結合でつながり環状化合物を生成する反応が含まれる。

【0031】
本願発明において、付加環化反応は好ましくは、置換基を有してもよいベンゾキノンのベンゼン環と置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物の複素環との間のDiels-Alder反応であるか、置換基を有してもよいベンゾキノンのベンゼン環と複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素のアルケニル基との間のDiels-Alder反応であるか、電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素の電子求引性と複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素のアルケニル基との間の付加環化反応である。

【0032】
本発明には、かかる重合体の還元体も包含される。つまり、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを重合反応した後で、水素等により還元したものも含まれる。例えば、ベンゾキノン(A)を用いて重合反応を行った後で重合体を還元し、ベンゾキノン(A)の酸素原子が水素原子により還元されてヒドロキノンとなった重合体も本発明に含まれる。

【0033】
本発明において、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)は、置換基の一つを1位とした場合に、2位及び3位の炭素、並びに5位及び6位の炭素のうちの少なくともいずれか一方の組の炭素が置換されていない。一実施形態では、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)の2位並びに3位、及び5位並びに6位がいずれも水素である。

【0034】
ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)が電子求引性の置換基を有することで、置換基が結合している炭素の隣の炭素が電子不足になる。他方で、複素環式芳香族化合物(B)は芳香環上にヘテロ原子(O、S、N)を有する。このため、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物(B)との求電子置換反応により、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物(B)との間に炭素-炭素結合が新たに形成される。

【0035】
また、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とは、いずれも芳香環のπ共役骨格を有するため、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)の2位並びに3位、及び/又は5位並びに6位の位置において、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)との間で付加環化反応(Diels-Alder反応または三重結合と二重結合の間の付加環化反応)が起こり、縮合環が形成される。本発明において、単環式芳香族炭化水素(B)は複数のアルキレン基を置換基として有するため、各アルキレン基が異なるベンゾキノン(A)と反応することにより、重合体の高分子化を達成している。

【0036】
ベンゾキノン(A)又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、アゾール、ピリジン等の複素環式芳香族化合物とを反応させると、2分子のベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と、1分子の複素環式芳香族化合物(B)との間で付加環化反応(Diels-Alder反応または三重結合と二重結合の間の付加環化反応)が起こり、縮合環が形成される。

【0037】
ベンゾキノン(A)又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素と、複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを反応させると、1分子のベンゾキノン(A)と、1分子又は2分子の単環式芳香族炭化水素(B)との間で付加環化反応(Diels-Alder反応または三重結合と二重結合の間の付加環化反応)が起こり、縮合環が形成される。

【0038】
このように、置換基を有してもよいベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と、置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とをモノマー成分として用いて重合させることにより、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)の間の炭素-炭素結合と、縮合環形成とが起こり、重合体が平面上又は立体状に延び、グラファイト又はグラフェン類似の層状構造を合成することができる。

【0039】
以前から、染料の合成の分野において、1,4-ナフトキノンと1-メチルピロールの求電子置換反応によりこれらの分子間に炭素-炭素結合が新たに形成されること(Heterocycl.Chem.2000,37,1635)、及びナフトキノンとインドールのDiels-Alder反応によりこれらの分子の間に縮環が形成されること(Tetrahedron Lett.1974,15,1361)が個別に知られてはいたが、多環式化合物である等の理由からいずれの文献で重合させても層状の重合物を得るには至っていなかった。本発明の重合体では、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを選択することで、これら2つの反応が起こることを見出した。

【0040】
重合体の平均分子量は特に限定されないが、1000~10000000であることが好ましく、10000~1000000であることが好ましい。

【0041】
ベンゾキノン(A)は非置換でも置換されていてもよい。置換されている場合、置換基としては、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ等が挙げられる。

【0042】
電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)の芳香環としては、ベンゼン環、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン等が挙げられる。

【0043】
電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)の電子求引性の置換基としては、特に限定されないが、ビニル基、アシル基、シアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基;ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、又はヒドロキシ基により置換されたアルケニル基;等が挙げられ、ビニル基が好ましい。アルケニル基の炭素鎖は2~5個が好ましい。

【0044】
電子求引性の置換基の数は、1つ、2つ又は3つ以上であることができるが、2つであることが層状の重合体形成のために好ましい。電子求引性の置換基が2つである場合、置換基はオルト位、メタ位、パラ位をとり得るが、パラ位であることが好ましい。

【0045】
好ましいベンゾキノン(A)の例としては、1,2-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノンが挙げられる。好ましい電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)の例としてはジビニルベンゼン等が挙げられる。1,4-ベンゾキノンと置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを重合させた後、重合体を還元させて、1,4-ベンゾキノンのカルボニル基の酸素に水素が付加してヒドロキシとなった重合体の還元体も、本発明に包含される。

【0046】
複数のアルケニル基を置換基として有する複素環式芳香族化合物(B)は、芳香環上にヘテロ原子を有する化合物である。複素環式芳香族化合物は、含窒素複素環式芳香族化合物であることが好ましい。本発明の重合体を製造するために、含窒素複素環式芳香族化合物は窒素複素環中に炭素-炭素二重結合を有する必要がある。複素環は3~10員環であることができ、単環式化合物であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましく、5員環又は6員環の含窒素複素環式芳香族化合物であることがさらに好ましく、5員環の含窒素複素環式芳香族化合物はアゾールであることが好まししい。

【0047】
アゾールは1つ以上の窒素を含む複素5員環化合物を指し、ピロール(1H-アゾールとも言う)、2H-ピロール(2H-アゾールとも言う)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、チアゾール、イソチアゾール(1,3-チアゾール)、オキサゾール、イソオキサゾール(1,3-オキサゾール)、フラザン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,2,5-チアジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,3-トリアゾール等が挙げられ、ピロール、チアゾールが好ましい。

【0048】
6員環の含窒素複素環式芳香族化合物は、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等が好ましい。

【0049】
複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)の芳香環としては、ベンゼン環、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン等が挙げられる。

【0050】
複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。 アルケニル基がさらに置換基を有してよく、そのような置換基としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等の複素芳香環基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基;tert-ブチルジメチルシリルオキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ基等の三置換シリルオキシ基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基等のアリールスルフィニル基;メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、フェニルオキシスルホニル基等のスルホン酸エステル基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。

【0051】
単環式芳香族炭化水素(B)の複数のアルケニル基は同じであることもできるし、異なることもできるが、製造上の利点から同じであることが好ましい。単環式芳香族炭化水素(B)におけるアルケニル基の数は2~4個であることが好ましく、2個であることが好ましい。2個のアルケニル基の位置はオルト、メタ、パラのいずれであってもよいが、パラ位であることが好ましい。好ましい単環式芳香族炭化水素(B)の例はジビニルベンゼンである。なお、複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)は、電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)とは異なる構造とする。

【0052】
一実施形態では、本発明の重合体は、置換基を有してもよい1,4-ベンゾキノン又は置換基を有してもよい1,4-ヒドロキノンと、置換基を有してもよいアゾール又はピリジンとを構成単位として含み、1,4-ベンゾキノン又は1,4-ヒドロキノンとアゾール又はピリジンとが炭素-炭素-炭素結合している部分と、1,4-ベンゾキノン又は1,4-ヒドロキノンとアゾール又はピリジンとが縮環を形成する部分とを有する。

【0053】
別の実施形態では、本発明の重合体は、置換基を有してもよい1,4-ベンゾキノン又は置換基を有してもよい1,4-ヒドロキノンと、置換基を有してもよいピロール又はチアゾールとを構成単位として含み、1,4-ベンゾキノン又は1,4-ヒドロキノンとピロール又はチアゾールとが炭素-炭素-炭素結合している部分と、1,4-ベンゾキノン又は1,4-ヒドロキノンとピロール又はチアゾールとが縮環を形成する部分とを有する。

【0054】
さらに別の実施形態では、本発明の重合体は、置換基を有してもよい1,4-ベンゾキノン又は置換基を有してもよい1,4-ヒドロキノンと、パラ位にアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素とを構成単位として含み、1,4-ベンゾキノン又は1,4-ヒドロキノンと単環式芳香族炭化水素とが縮環を形成する部分を有する。

【0055】
特に、ベンゾキノン(A)として1,4-ベンゾキノンを、複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)としてアゾール(特にはピロール、チアゾール等)又はジビニルベンゼンを用いた場合、反応性有機酸化剤として作用するベンゾキノンと、モノマー液体であるアゾール又はジビニルベンゼンとを1つの密閉容器に封入しておくだけで、低温(100℃以下)及び常圧という穏和な環境下でもグラファイト又はグラフェン類似の層状構造を有する重合体を合成できるため、従来法と比較して有利である。

【0056】
上述の構成をとるため、本発明の重合体(その還元体を含む)は、平面状すなわち二次元のシート状に延びることができ、さらには複数のシート状の重合体が積層することにより三次元の積層体を形成することができる。シート構造にすることで、積層体の比表面積の向上、反応性の向上などが見込まれる。

【0057】
さらに、本発明の重合体(その還元体を含む)は、水又はベンジルアルコール、エタノール、トルエン、クロロホルム、ヘキサン等の有機溶媒に分散させ、超音波処理を加えて分散液とすることにより、ナノフレーク状にすることもできる。ナノフレークとは、長さ及び厚みの寸法の少なくとも一方が1~1000nmの範囲にあり、長さの寸法が厚みの寸法よりも大きい薄片状の材料を指す。超音波処理の温度と長さを調節することにより、ナノフレークの寸法を変更することができる。ナノフレークの寸法は特に限定されないが、長さ1~1000nm及び厚み1~100nmであることが好ましい。なお、ナノフレークの長さとは、ナノフレークを水平な面に置いた場合に当該面の垂直方向から見た最大の長さを指す。ナノフレークの厚みは、当該面に垂直な方向におけるナノフレークの厚みを指す。ナノフレークが複数ある場合は、平均長さが1~1000nm、平均厚みが1~100nmであることが好ましい。ナノフレークが10個以上ある場合、10個の平均の長さ及び厚みを測定すればよい。

【0058】
本発明の重合体をナノフレーク化することで、過電圧が減少すると共に、静電容量が増大するため、電荷貯蔵能力を向上させることができる。

【0059】
別の実施形態では、本発明の重合体は、下記式(i)~(iv)のいずれかで表わされる部分を含む。

【0060】
【化10】
JP2018207699A1_000012t.gif

【0061】
(式中、Cy1は5員環の含窒素複素環であり、
Cy2は単環式芳香族炭化水素であり、
Cy3は6員環の含窒素複素環であり、
Aはビニル基、アシル基、シアノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基;ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、若しくはヒドロキシ基により置換されたアルケニル:から選択される電子求引性の置換基であり、
AとCyの間の結合は単結合又は二重結合である。)
Cy1は好ましくはピロール(1H-アゾールとも言う)、2H-ピロール(2H-アゾールとも言う)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、チアゾール、イソチアゾール(1,3-チアゾール)、オキサゾール、イソオキサゾール(1,3-オキサゾール)、フラザン(1,2,5-オキサジアゾール)、1,2,5-チアジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、又は1,2,3-トリアゾールである。

【0062】
Cy2は好ましくはベンゼン環、シクロヘキサジエン、又はシクロペンタジエンである。

【0063】
Cy3は好ましくはピリジン、ピリミジン、又はピリダジンである。

【0064】
別の実施形態では、本発明の重合体は、下記式(I)又は式(II)で表わされる部分を含む。

【0065】
【化11】
JP2018207699A1_000013t.gif

【0066】
【化12】
JP2018207699A1_000014t.gif

【0067】
一実施形態において、上記重合体は、下記式(III)又は(IV)で表わされる部分を含む。

【0068】
【化13】
JP2018207699A1_000015t.gif

【0069】
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはピロリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うピロール基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)

【0070】
【化14】
JP2018207699A1_000016t.gif

【0071】
(式中、
1及びR2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
1及びR2は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、アルキル基、若しくはチアゾリル基であるか、又は
3及びR4は共に、隣り合うチアゾリル基及び隣り合うベンゾキノリル基と縮環形成し、
ただし、R1及びR2、若しくはR3及びR4が縮環形成する場合は、いずれか一方の組が縮環形成し、
6は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、又はベンゾキノリル基である。)
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7がアルキル基である場合、それぞれ独立して、C1~C6のアルキル基であることが好ましい。C1~C6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基および1,3-ジメチルブチル基が挙げられる。

【0072】
一実施形態では、R1及びR2と縮環を形成するベンゾキノリル基、並びにR3及びR4と縮環を形成するベンゾキノリル基は、式(V)で表わされる。

【0073】
【化15】
JP2018207699A1_000017t.gif

【0074】
特定の実施形態では、R1及びR2と縮環を形成するベンゾキノリル基、並びにR3及びR4と縮環を形成するベンゾキノリル基は、式(VI)で表わされる。

【0075】
【化16】
JP2018207699A1_000018t.gif

【0076】
8、R9はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基である。好ましくは、R8、R9はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基である。

【0077】
10は水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基である。

【0078】
一実施形態では、R5、R6及びR7であるベンゾキノリル基は、式(VII)で表わされる。

【0079】
【化17】
JP2018207699A1_000019t.gif

【0080】
特定の実施形態では、式(VII)で表わされるベンゾキノリル基は、式(VIII)で表わされるベンゾキノリル基である。

【0081】
【化18】
JP2018207699A1_000020t.gif

【0082】
11、R12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基である。好ましくは、R11、R12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基である。

【0083】
13は水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基である。
式(V)及び式(VII)は同一であることもできるし、異なることもできるが、製造効率の点では同じであることが好ましい。式(VI)の基と式(VIII)の基は同一であることもできるし、異なることもできるが、製造効率の点では同じであることが好ましい。

【0084】
一実施形態では、本発明の重合体は、下記式(IX)で表わされる部分を含む重合体又はその還元体を包含する。

【0085】
【化19】
JP2018207699A1_000021t.gif

【0086】
式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
kは1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。

【0087】
kは好ましくは1~1000であり、より好ましくは5~40である。

【0088】
15、R16、R17、R18、19、R20、R21、R22がアルキル基である場合、それぞれ独立して、C1~C6のアルキル基であることが好ましい。C1~C6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基および1,3-ジメチルブチル基が挙げられる。
特には、R15、R16、R17、R18、19、R20、R21、R22がいずれも水素である。

【0089】
別の実施形態では、本発明の重合体は、下記式(X)で表わされる部分を含む重合体又はその還元体を包含する。

【0090】
【化20】
JP2018207699A1_000022t.gif

【0091】
式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
23、R25、及びR26はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
24、R27、及びR30はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
28、R29はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
m、nはそれぞれ1以上の整数であり、
xは0~100の実数である。

【0092】
m、nはそれぞれ好ましくは1~1000であり、より好ましくは5~40である。 式中、R15、R16、R17、R18、19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30がアルキル基である場合、それぞれ独立して、C1~C6のアルキル基であることが好ましい。C1~C6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基および1,3-ジメチルブチル基が挙げられる。

【0093】
特には、R15、R16、R17、R18、19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30がいずれも水素である。

【0094】
さらなる実施形態では、本発明の重合体は、式(XI)で表わされる部分を含む重合体を包含する。

【0095】
【化21】
JP2018207699A1_000023t.gif

【0096】
(式中、
15、R17、及びR18はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミド、チオール、ヒドロキシ、又はアルキル基であり、
16、R19、及びR20はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
21、R22はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ又はアルキル基であり、
nは1以上の整数であり、
xは0~20の実数である)
一つの実施形態では、本発明の重合体は、下記式(XII)~(XVII)で表わされる部分を含む重合体を包含する。

【0097】
【化22】
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【0098】
特定の実施形態では、本発明の重合体は、式(XII)、(XIII)、(XIV)、及び(XV)で表わされる部分と、水和水とを含む重合体を包含する。

【0099】
本発明は、本発明の重合体を含む機能性ナノシートを包含する。つまり、本発明のシートは、平面状に延びる上述の本発明の重合体を含む、厚さ0.2nm~2.0nmのシートである。本発明はさらに、上記のシートが複数積層された積層体を包含する。シートの層間間隔は0.2nm~2.0nmである。積層体の厚さは限定されず、例えば5nm~10000nmであってよい。この積層構造は、種々の液相中で、所望の厚みにはく離できることができる。はく離により、積層体の比表面積の向上、反応性の向上などが見込まれる。

【0100】
2.重合体、シート及び積層体の製造方法
本発明の重合体は、互いに付加環化反応を起こす、モノマー成分としての置換基を有してもよいベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と、モノマー成分としての置換基を有してもよい複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを重合させることにより製造される。これらの2つのモノマー成分を、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とが炭素-炭素結合を形成し、縮環を形成するように重合させることにより、二次元状若しくは平面状、又は立体状に延びる重合体が得られる。

【0101】
ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)及び複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)については「1.重合体」で説明した通りである。

【0102】
ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)、及び複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)の各々は、任意選択で溶媒に溶解させてもよく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、エタノール、N-メチル-2-ピロリドン、2、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド等が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。一実施形態において、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)及び複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)は、溶媒に溶解させずに重合させる。

【0103】
重合反応の温度は、生成物の揮発を防ぐため、低温、すなわち100℃以下であることが好ましい。温度の下限値は0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることが好ましい。反応を促進するために、60℃以上であってもよい。ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)及び複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)のうちのいずれか一方、特には複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)を液体状態とするために、重合反応温度は複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)の融点よりも高い温度であることが好ましい。

【0104】
重合時間は特に限定されないが、0.5分~120時間であることが好ましく、15分~72時間であることがより好ましい。重合時間を長くすると、重合体は平面状に延びてシートを形成し、平面状に延びたシート構造がさらに複数積層し、積層体構造となる。得られた重合体は、導電性に優れたグラファイト又はグラフェン類似の層状構造を有する。

【0105】
上述のシート及び積層体の厚みは、重合反応時間の調節によっても調節することができるし、種々の溶媒中で、重合体からなる積層体を所望の厚みにはく離することによっても調節することができる。そのような溶媒の例としては、公知の溶媒を用いることができ、ヘキサン、トルエン等の低極性溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等の中極性溶媒、水、メタノール、エタノール等の高極性溶媒等又は各種イオン性の界面活性剤や有機イオンなどの添加分子を含む水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。

【0106】
重合圧力は特に限定されず、通常は常圧(標準気圧とも言う、1.01325×105Pa)であるが、反応を促進するために常圧よりも低い圧力で行ってもよい。

【0107】
重合反応は、通常は空気雰囲気下で行われるが、これに限定されない。

【0108】
合成方法としては、例えば、(i)気相法による合成、(ii)液相法による合成、又は(iii)直接混合による合成が挙げられる。(i)の気相法による合成では、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを別の容器に入れ、これら2つの容器を1つの密封容器に封入することにより行うことができる。ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)が揮発性を有する場合、反応は自発的に進行し得る。反応生成物は、溶媒により洗浄し、任意選択で乾燥させ得る。(ii)の液相法による合成では、容器にベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と溶媒を加えてベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)を溶媒に溶解させたのち、さらに複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)を加え、一定温度で一定時間撹拌し、反応後の溶液を溶媒により洗浄し、任意選択で乾燥させる。(iii)の直接混合による合成では、ベンゾキノン又は電子求引性の置換基を有する単環式芳香族炭化水素(A)と複素環式芳香族化合物又は複数のアルケニル基を置換基として有する単環式芳香族炭化水素(B)とを同一のガラス容器に入れ、これを密閉容器に入れて封入し、一定温度で一定時間静置することにより行うことができる。反応生成物は、溶媒により洗浄し、任意選択で乾燥させ得る。

【0109】
さらに、重合反応の開始前に、密封容器内に種々の基板又は基材を配置しておくことにより、基板又は基材に直接、重合体からなるコーティングを施すことができる。

【0110】
基板又は基材の状態は限定されず、液体状態であっても固体であってもよい。または、基板又は基材の種類も限定されず、金属、ガラス、セラミックス、プラスチック、木材、繊維、これらの複合材等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0111】
このようにして、反応容器内に入れた任意の材質及び状態の基板又は基材に、本発明の重合体からなるコーティングを施すことができるため、本発明の重合体はコーティング材料としての応用範囲が広い。かかるコーティングは例えば電極の成膜や電子回路の相互接続に使用することができる。

【0112】
さらに、本願発明の重合体及び該重合体より製造したフレークはベンゾキノンのキノン部位又は単環式芳香族炭化水素の電子求引性の置換基の酸化還元に伴う充放電反応を起こし、高容量を示すことから、スーパーキャパシタを初めとする電極材料による電荷貯蔵に応用可能である。例えば、本願発明の重合体及び該重合体より製造したフレークは、電極活物質として使用することができる。

【0113】
さらに、本願発明の重合体は水素発生過電圧が小さいため、優れた水素発生電極触媒としての役割を果たすことができる。本願発明の重合体は、省エネルギーで高効率に水から水素を取り出すことができるため、再生可能エネルギーの分野に応用可能である。

【0114】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0115】
実験手順
1.フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
試料の重合の確認のためにフーリエ変換赤外分光装置(FT/IR-4200typeA, JASCO)を用いた。KBr 法にてサンプルをディスク状に成形し、測定範囲を4000-400cm-1、分解能を4 cm-1、積算回数を128 回と設定し測定を行った。
2.熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
試料の重合の確認のためにTG-DTA(TG/DTA7200, EXSTER)を用いた。温度範囲は25℃から 1000℃と設定し測定を行った。BQ/Py重合体、BQ 標品、BQ とヒドロキシキノン(HQ) の電解移動錯体であるキンヒドロン、ポリピロール(Ppy)標品のTG を測定した。
3.元素分析
試料の元素比の測定のため、慶應義塾大学理工学部中央試験所にて元素分析を行った。
4.X線回折装置(XRD)による層状構造の解析
BQ/Py重合体の試料の層間距離を解析するために、X 線回折装置(Mini Flex and Bruker D8 Advance, Rigaku)を用いた。粉末試料を試料ホルダーに圧着し、CuKα 線により連続スキャン法で、走査速度は 5 degree min-1、走査範囲は 3~80 degree と設定して測定した。
また、層間の距離は以下に示す Bragg の式を用いて計算した。
2dsinθ = nλ (n = 1)
dは結晶面の間隔(nm)、λは X 線の波長(λ = 0.1542 nm)、θは回折角である。
5.質量分析法(MALDI-TOFMS)
分子量の確認のため、質量分析装置(MALDI-7090 : SHIMADZU)を用いて測定を行った。試料及びマトリックス(2,5-dihydroxybenzonic acid)をNMPに分散させプレートにキャストし乾燥させ、m/z値1-5000、積算回数50回で測定した。
6.分子力学法(MM2)
合成した試料の分子模型のエネルギー最安定状態のシミュレーションをChemBioProfessionalを用いて行った。ソフトウェアからChemBio3Dを用いて分子模型を作製し、上下方向に重ね、分子力学法(MM2)プログラムを用いてエネルギー最安定状態のシミュレーションを行った。
7.走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
剥離前のBQ/Py重合体の試料の形状を観察するために、SEM(VE-9800, KEYENCE)を用いた。観察のため、試料を導電性テープでアルミニウム台に固定した。固定後の各試料はOSMIUM COATER(HPC-1S,真空デバイス株式会社)を用いて、表面に約5 nm のオスミウムコーティングを行い、導電性を確保した後に観察した。
8.透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
はく離したシート(下記の実施例3の試料)の形状観察のためにFE-TEM(Tecnai F20, FEI)とTEM-120( TecnaiSpirit, FEI)を用いた。
9.原子間力顕微鏡(AFM)による観察
はく離したシート(下記の実施例3の試料)の厚さの測定のために原子間力顕微鏡(SPM9600, 島津製作所(株))を用いた。シリコン基板をメタノール/塩酸(1:1(体積比))、濃硫酸にそれぞれ 30 分間浸漬した。
基板を取り出して水洗し、アルゴンガスを吹きかけて乾燥させた。洗浄した基板をホットプレート上で100℃に加熱し、 分散液を滴下し、観察を行った。
10.サイクリックボルタンメトリー
得られた試料の電気化学的活性を調べるため、サイクリックボルタンメトリー(VerasSTAT/PARSTAT,プリンストンアプライドリサーチ)を用いた。水系の測定においては、参照極は銀-塩化銀電極、対極はPt 基板、電解液は1 mol cm-3H2SO4 を用いた。走査範囲を-0.5~1.2 V (vs. Ag/AgCl) とし,走査速度を1 mV S-1 と設定し測定を行った。
11.充放電測定
充放電装置(HJ1001SD8:HOKUTO)を用いて測定を行った。測定セルはサイクリックボルタンメトリー測定と同じものを用い、同様に-0.3 Vの定電位で30分間電流を流した後、充放電測定を行った。
12.接触角測定
コーティング前後におけるガラス基板のぬれ性の測定のため、接触角測定装置(DMe-201,協和界面化学(株))を用いた。液適法によって水とガラス基板の接触角の測定を行った。
【実施例】
【0116】
実施例1 BQ/Py重合体の合成
(合成方法)
1,4-ベンゾキノン(BQ)の粉末(純度98.0%、東京化成工業株式会社)とピロール(Py)の液体(純度99,0%、東京化成工業株式会社)を図1に示すように別々の容器1,2に入れ、それらを空気雰囲気の密閉容器3に入れて48時間静置した。BQを入れていた容器1から粗生成物を回収した。粗生成物から未反応のモノマー分子を取り除くために吸引ろ過を用い、アセトンで洗浄した。次に、低重合度分子を取り除くため、テフロン(登録商標)性遠沈管にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)(純度99.0%、和光純薬工業株式会社)25 cm3 と回収物を加え13500rpm で15 分間遠心分離を行い、沈殿物を回収した。その後、残存NMP を取り除くため、吸引ろ過をもちいてアセトン洗浄した。さらに、試料の層間に残存するヒドロキノン、NMP を取り除くため、190℃で16 時間真空乾燥し、1,4-ベンゾキノンとピロールからなる共重合体(以下、BQ/Py重合体と称する)を得た。さらにこれを水に分散させることでナノシートの分散媒を得た。
【実施例】
【0117】
BQとPyの比を、10nmol:50nmolから50nmol:10nmolまで変えたサンプルで重合体を生成したが、生成物の組成は変化しなかった(データ非図示)。Pyの供給量を十分にするため、以後、BQとPyの比を30nmol:30nmolとした。
【実施例】
【0118】
(結果)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
まず、フーリエ変換赤外分光装置で測定した、BQ/Py重合体、BQ 標品、HQ 標品、及びPPy標品のIR スペクトルを図2に示す。各スペクトルの比較から、(1)のピークはN-H 伸縮、(2)のピークはO-H 伸縮、(3)のピークはC=O 伸縮と帰属できた。また、(4)のピークは芳香族C-H 伸縮、であり、BQ/Py重合体では大きく減少していることが確認された。
【実施例】
【0119】
BQ/Py重合体は、BQとPyを含む高分子化した構造であることが示唆された。また、HQ標品と比較することで構造の一部が還元体になっていることや、水分子の存在についても考えられた。
【実施例】
【0120】
熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
次に、図3に示すように、TG グラフの比較から、BQ/Py重合体の質量減少開始温度は400℃程度であり、この値はPPy標品やBQ/HQ電荷移動錯体の質量減少温度よりも非常に高いことから、IRの結果と合わせて重合体が高分子化していることが確認された。
【実施例】
【0121】
元素分析
次に、表1に示すように、BQ/Py 重合体の元素分析の結果は、重量比でC = 67.02 wt%、H = 2.79 wt%、N = 6.22 wt%、O= 23.97 wt%であった。なお、O の重量比は、得られる生成物にはC、H、N、O のみが含まれていると仮定した際に得られる計算値を記載した。その結果から得られた各原子の重量比と、先の結果をもとに推定した構造により算出される原子の重量比を比較すると、表1に示すように、酸化体と還元体、および水和水から成る構造が推定された。
【実施例】
【0122】
また、TGの結果から200℃までの質量減少を水の蒸発によるものと仮定した際の実験値と計算値についても誤差は少ないことから、推定構造の整合性が確認された。
【実施例】
【0123】
【表1】
JP2018207699A1_000025t.gif
【実施例】
【0124】
BQ/Py重合体において、図4に示すように、BQとPyの炭素-炭素-炭素結合と、BQとPyの縮環反応により平面方向に広がる二次元高分子化反応が起こっていると考えられる。
【実施例】
【0125】
X線回折装置(XRD)による層状構造の解析
次に、BQ/Py 重合体のXRD の結果を図5Aに示す。また、BQ/Py重合体の層間方向のMM2計算後のChemBio3Dでの分子模型を図5Bに、BQ/Py重合体の面方向のMM2計算後のChemBio3Dでの分子模型を図5Cに示す。図5Aの(1)のピークにおけるd 値は0.37 nm(図5A,5B)、図5Bの(2)のピークにおけるd 値は0.21 nm (図5A,5C)と算出された。これらの周期の値、および回折パターンの形状はグラフェンが乱層構造を形成した際のものと類似していることが判明した。このことから、重合体は二次元高分子が乱層構造を形成していると考えられる。
【実施例】
【0126】
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
次に、BQ/Py重合体のSEM像を図6A~Fに示す。マクロには100~500 μm程度の大きさの粒子が観察された。一つの粒子についてその表面を拡大して観察すると、凹凸の無い非常に滑らかな面と、小さな粒子が集まっている荒い面が観察された。荒い面における一つの粒子の大きさは 100 nm程度であり、それらが集まって二次粒子を形成していることが確認された。
【実施例】
【0127】
実施例2 BQ/Py重合体の元素分析及びモデルの構築
実施例1で得られたBQ/Py重合体を元素分析した。その結果、表2に示すように、CHN元素比の計算値は実測値と0.5%以内で一致した。
【実施例】
【0128】
また、得られたBQ/Py重合体をChemBio3Dによりモデルで表わしたところ、図7に示すように、BQ/Py重合体は2次元平面内に広がる構造を有すると共に、該平面に対して上下方向へ結合が延びる部分を備えていることが判明した。
【実施例】
【0129】
【表2】
JP2018207699A1_000026t.gif
【実施例】
【0130】
実施例3 BQ/Py重合体の還元
(実験方法)
気相法によって得られたBQ/Py 重合体5 mg と所定濃度のヒドラジン溶液15 cm3 をガラス容器に入れ、空気雰囲気下、所定の時間攪拌した。攪拌時間は、ヒドラジン/純水(1:1(体積比))については10 分間、ヒドラジン原液については24 時間と設定した。次に、吸引ろ過を用いて試料を純水で洗浄、その後60℃で12 時間真空乾燥行うことでヒドラジンの除去を行った。
【実施例】
【0131】
(結果)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
ヒドラジン溶液と水を体積比で1:1 混合させた溶液にBQ/Py 重合体を加え、10 分間攪拌した際得られた還元体(以降、還元体1と記載)について、反応時に気体が発生していることが目視で確認できたため、還元反応が進行したと考えられた。また、図8に示すIR スペクトルからも3400 cm-1付近に大きくO-H 伸縮のピークが確認できることから、キノン由来のC=O部分における還元反応が進行していることがいえた。しかし、1650 cm-1 付近にC=O 由来のピークも存在するため、還元反応は十分に進行していないことが分かった。
【実施例】
【0132】
次に、ヒドラジン原液に生成物を加え24 時間攪拌した際にも気体が発生していることが先の実験と同様に確認されたため、還元体(以降、還元体2と記載)が得られ、還元反応が進行していることが確認できた。しかし、図8のIR スペクトルの結果を見ると、1650 cm-1 付近のC=O 伸縮由来のピークが消失している一方で、3400 cm-1 付近の鋭いピークが観測されず、PPy のN-H ピークに類似したピークが観測された。
【実施例】
【0133】
元素分析
また、表3に示すように、元素分析の結果から、還元体のN の割合が大きく増加していることが確認された。
【実施例】
【0134】
【表3】
JP2018207699A1_000027t.gif
【実施例】
【0135】
図8の還元体1 から還元体2 へのIR スペクトルの変化から、還元前のBQ/Py重合体のIR と比較して還元体1 ではC=O 部分は一部ヒドラジンによる還元によってC-OH に還元されていることが考えられるが、還元体2 ではOH 伸縮のピークは消失し、NH 伸縮が大きく確認されることが分かる。このことから、ヒドラジンによる反応はC=O 部のC-OH への還元以外の反応が進行しているものと考えられた。
【実施例】
【0136】
上記元素分析の結果から、重合体への窒素原子の増加が伴う付加反応等が進行していることが考えられた。
【実施例】
【0137】
ここで、1,4-ジカルボニル化合物のヒドラジンによる反応で、Fig. 5-2a に示すような酸素原子が窒素原子に置き換わり、新たにピリダジンが合成される反応(Tetrahedron Lett.,1974,15,1361)に着目すると、すべての1,4-ジカルボニル部位がピリダジンに変化したと仮定し、BQ/Py 重合体の推定構造に当てはめると、下記スキーム(I)のような反応が起こると考えられる。
【実施例】
【0138】
【化23】
JP2018207699A1_000028t.gif
【実施例】
【0139】
ここから、下記式(VI)に示すように推定構造の分子のn 量体とのモル比がxである水分子が存在すると仮定すると、その原子の重量比は表4に示すようになる。
【実施例】
【0140】
【化24】
JP2018207699A1_000029t.gif
【実施例】
【0141】
【表4】
JP2018207699A1_000030t.gif
【実施例】
【0142】
このことから、BQ/Py 重合体をヒドラジンによって還元した際に得られる化合物の構造はn=5 に対しx= 17 が還元体2 の元素分析の結果と最も近いことから、水分子を還元前のBQ/Py 重合体よりも非常に多く含むことが考えられた。1,4-ジカルボニル部位の存在から、BQ/Py 重合体において推定構造との整合性が確認できた。
【実施例】
【0143】
実施例4 BQ/Py重合体からのナノシートの形成
(実験方法)
実施例1で得られたBQ/Py重合体15 mg と純水20 mL をガラス容器に入れ、2 時間超音波をかけたのち、室温で16 時間攪拌することで試料のはく離を行った。得られた分散液を、凍結乾燥することで純水を取り除き、はく離された試料を回収した。
試料のナノシートが形成されているかどうかを観察した。
【実施例】
【0144】
(結果)
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
実施例1のSEM像の観察では、剥離操作前の重合体の粒子は100 μm以上の大きな粒子であることが確認された。
【実施例】
【0145】
透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察
これに対し、図9のはく離後の生成物(以下、BQ/Pyナノシートとよぶ)のTEM 像に示すように、本実施例では剥離操作を行うことで、ナノシートの存在が確認された。次に、図10のBQ/Py ナノシートのAFM 像に示すように、シート一枚の厚さは約5 nm 程度であることが分かった。
【実施例】
【0146】
サイクリックボルタンメトリー
次に水系電解液での酸化還元反応の確認のために行った電気化学特性の評価の結果を図11及び図12に示す。
【実施例】
【0147】
図11Bに示すように酸化還元ピークが確認されたことから、BQ/Py重合体はキノン部位由来の酸化還元能を有することが確認された(図11B,図11C)。また、BQ/Py重合体の形状とBQ標品及びAQ標品とを比較することで、重合体は0.5V付近にBQ類似の部位および0 V付近にAQ類似の部位を持つことが確認された(図11A,11B)。このことから、BQ/Py重合体の構造として、図11Dに示すようなベンゾキノンに対応するBQ部位(i)とアントラキノンに対応するAQ部位(ii)の存在が考えられ、BQ/Py重合体の構造が1,4-ベンゾキノンとピロールが炭素-炭素結合している部分と、1,4-ベンゾキノンとピロールが縮環を形成する部分とを有する構造という推定が支持された。
【実施例】
【0148】
BQ/Py重合体では組み込まれたキノン部位が電気化学的に活性であり、効率的な電荷貯蔵へ応用できると考えられる。
【実施例】
【0149】
図12は、BQ/Py重合体のはく離前後におけるサイクリックボルタモグラムを示す。はく離前の容量が50.1mA h g-1 であるのに対し、はく離後の容量は152.5 mA h g-1 に増加した。これははく離により積層していたBQ/Py共重合体では、ナノシート化による反応界面の増加が確認された。
【実施例】
【0150】
実施例5 BQ/Py共重合体の基板へのコーティング
(実験方法)
コート対象となる基板を、BQ の入ったガラス瓶の上部に位置するよう、実施例1のBQとPyを気相法で反応させる反応系の密閉容器の蓋に固定した。反応終了後、基板の表面をアセトンで洗浄した。基板としてはガラス基板、ITO ガラス基板、KBr 基板、Ti 基板、Cu メッシュ、Ti メッシュを選択した。
【実施例】
【0151】
(結果)
いずれの基板の場合も、基板の表面が茶色くコートされていることが確認された。
【実施例】
【0152】
接触角測定
また、ガラス基板(n=10)について、コート前後の基板の接触角を測定したところ、表5に示すように、コートされたガラス基板(コート板)では、コート前のガラス基板(ガラス板)と比較して、接触角の増大が確認された。
【実施例】
【0153】
【表5】
JP2018207699A1_000031t.gif
【実施例】
【0154】
実施例6 重合体の水素発生電極触媒としての特性評価
実験方法
グラッシーカーボン電極(GC電極)にBQ/Py共重合体の分散媒をキャストし、60℃恒温槽で乾燥させたのちにLinear Sweep Voltammetry(LSV)で評価した。このとき、分散媒として 2-プロパノール200 μLにBQ/Py共重合体を1 mg分散させた。GC電極は直径3 mm BAS社製CPEカーボンペースト電極を用いた。LSV測定は、走査範囲-0.19 ~-0.8 V (vs. Ag/AgCl)すなわち 0~-0.61 V(vs. SHE)、走査速度 5 mV/sで測定し、電解液は0.5M H2SO4、参照極はAg/AgCl、対極はPtを用いた。
【実施例】
【0155】
実験結果
図13に示すグラフにおいて、横軸の切片は水素発生に要する過電圧に相当する。このLSVの結果から、キャスト回数3回のBQ/Py共重合体について還元操作を行うことで優れた水素発生能を有することがわかった。また、同一の条件でキャストした市販粉末のグラフェンと比較しても非常に高い活性を有することがわかった。
【実施例】
【0156】
実施例7 BQ/Th重合体の合成
(合成方法)
実施例1において、ピロール(Py)を同じ物質量のチアゾール(Th)に置き換えた以外は同じ条件とし、1,4-ベンゾキノンとチアゾールからなる共重合体(以下、BQ/Th重合体と称する)を得た。BQとThの比を30nmol:30nmolとした。
【実施例】
【0157】
得られたBQ/Th重合体に対して、実験手順の「1.フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析」~「3.元素分析」を行った。
【実施例】
【0158】
【化25】
JP2018207699A1_000032t.gif
【実施例】
【0159】
(結果)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
まず、フーリエ変換赤外分光装置で測定した、BQ/Th重合体及びBQ/Py重合体のIR スペクトルを図14に示す。各スペクトルの比較から、(1)のピークはC=O 伸縮、(2)のピークはC=S 伸縮、(3)のピークはC=S伸縮と確認できた。BQ/Th重合体は、BQとThを含む高分子化した構造であることが示唆された。
【実施例】
【0160】
熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
次に、図15に示すように、TG グラフによると、BQ/Th重合体の質量減少開始温度はBQ/Py重合体の400℃よりも低いものの、300℃を超えており、BQ/Th重合体のグラフはBQ/Py重合体と類似している。このTGの結果とIRの結果を合わせて、BQ/Th重合体が高分子化していることが確認された。図16にBQ/Th重合体の一部の構造式を示す。
【実施例】
【0161】
元素分析
次に、BQ/Th 重合体の元素分析の結果は、重量比でC = 62 wt%、H = 2.98 wt%、N = 2.27 wt%、S=4.894 wt%、O= 27.856 wt%であった。元素分析の結果からもSおよびNの存在が確認される。TGの結果から高分子化していることがわかる。一方でDiels-Alder反応およびC-C結合の形成のみを仮定した推定構造と比較してSの重量が少ないことから、Th とBQ の結合だけでなく、BQ同士での結合も含む形での高分子化が考えられる。
【実施例】
【0162】
実施例8 BQ/Pyr重合体の合成
(合成方法)
実施例1において、ピロール(Py)を同じ物質量のピリジン(Pyr)に置き換えた以外は同じ条件とし、1,4-ベンゾキノンとピリジンからなる共重合体(以下、BQ/Pyr重合体と称する)を得た。BQとPyrの比を30nmol:30nmolとした。
【実施例】
【0163】
得られたBQ/Pyr重合体に対して、実験手順の「2.熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定」及び「3.元素分析」を行った。
【実施例】
【0164】
【化26】
JP2018207699A1_000033t.gif
【実施例】
【0165】
(結果)
熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
図15に示すように、TG グラフによると、BQ/Pyr重合体の質量減少開始温度はBQ/Py重合体の400℃よりも低いものの、300℃を超えており、BQ/Pyr重合体のグラフはBQ/Py重合体と類似している。このTGの結果から、BQ/Pyr重合体が高分子化していることが確認された。
【実施例】
【0166】
元素分析
次に、BQ/Pyr 重合体の元素分析の結果は、重量比でC = 65.76 wt%、H = 3.506 wt%、N = 0.974 wt%、O= 29.76 wt%であった。元素分析の結果からNの存在が確認され、ピリジンを組み込んだ構造であることが分かる。TGの結果から高分子化していることがわかる。一方でDiels-Alder反応およびC-C結合の形成のみを仮定した場合よりもNの重量が少ないことから、PyrとBQ の結合だけでなく、BQ同士での結合も含む形での高分子化が考えられる。
【実施例】
【0167】
実施例9 BQ/DVB重合体の合成
(合成方法)
1,4-ベンゾキノン(BQ)の粉末(純度98.0%、東京化成工業株式会社)4.32 gと1,4-ジビニルベンゼン(DVB)液体(純度>50%、東京化成工業株式会社)1.14 cm3とを密封容器に入れ、それらを110℃恒温槽内に48時間静置し、粗生成物を回収した。粗生成物から未反応のモノマー分子を取り除くために吸引ろ過を用い、アセトンで洗浄した。次に、低重合度分子を取り除くため、テフロン(登録商標)性遠沈管にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)(純度99.0%、和光純薬工業株式会社)25 cm3 と回収物を加え13500rpm で10 分間遠心分離を行い、沈殿物を回収した。その後、残存NMP を取り除くため、210℃で16時間真空乾燥し、1,4-ベンゾキノンと1,4-ジビニルベンゼンからなる共重合体(以下、BQ/ DVB重合体と称する)を得た。
【実施例】
【0168】
(結果)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
図17に、精製したBQ/DVB重合体のIR測定結果を示す。(1)の3400 cm-1付近のピークはO-H伸縮振動、(2)の1600 cm-1付近のピークはC=O伸縮振動、(3)の1400 cm-1付近のピークは炭素芳香環伸縮振動に帰属した。
【実施例】
【0169】
C=O伸縮振動および炭素芳香環伸縮振動のピークが確認されたことから、共重合体はキノン部位が組み込まれた分子構造を有すると考えられる。
【実施例】
【0170】
重合時のBQとDVBの比を変化させた結果(非図示)から、以後の実験では、BQ/DVB重合体の比を5nmol:1nmolとした。
【実施例】
【0171】
熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
図18に示すように、TG グラフによると、BQ/DVB重合体の質量減少開始温度は400℃であり、BQ標品と比較して高い温度で質量減少が始まっていることが分かった。これよりBQ/DVB重合体は高分子化していることが確認された。
【実施例】
【0172】
元素分析
BQ/DVB重合体の元素分析の結果は、重量比でC=74.32 wt%、H=3.87 wt%、N=0.00 wt%、O=21.81 wt%であった。なお、Oの重量比は得られる生成物にはC、H、N、Oのみが含まれていると仮定した際に得られる計算値として記載した。これより、分子構造を下記の式(XIX)と推定すると、p:q:r:s:t:uの分子構造の比は2:6:2:2:0:0であり、水和水として3H2Oを含む構造であると考えられた。
【実施例】
【0173】
【化27】
JP2018207699A1_000034t.gif
【実施例】
【0174】
X線回折装置(XRD)による層状構造の解析及び質量分析法
図19にXRD測定の結果を、図20に質量分析の結果を示す。
【実施例】
【0175】
これよりBQ/DVB重合体の分子量は700~4000程度であることが判明した。分子構造と分子量から分子モデルを作製した。そのモデルを図21に示す。このモデルよりBQ/DVB重合体の分子は直線状で枝分かれを有する構造であると考えられる。
【実施例】
【0176】
実施例10 BQ/DVBナノフレークの合成
(合成方法)
実施例9で得られたBQ/DVB重合体を30 mgをベンジルアルコール20 cm3中に入れ、これに90分超音波処理を加え、その後60℃で48 時間撹拌を行い、分散液を得た。この分散液をBQ/DVBナノフレーク懸濁液とした。
【実施例】
【0177】
(結果)
透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による観察
図22にBQ/DVBナノフレークのTEM像(図22(a),(b))を示す。TEMで観察されるナノフレークの平均長さを測定したところ(図22(c))、約50 nmであった。
【実施例】
【0178】
図23にBQ/DVBナノフレークのAFM像を示す。BQ/DVBナノフレークの平均厚さは約15nmであった。
【実施例】
【0179】
サイクリックボルタンメトリー
次に図24に、BQ/DVB重合体およびBQ/DVBナノフレークのサイクリックボルタンメトリーの結果をに示す。
【実施例】
【0180】
これより、BQ/DVB重合体の酸化ピークは0.8 V付近であり、BQ/DVBナノフレークの酸化ピークは0.6 V付近であり、過電圧の減少が見られた。また、BQ/DVB重合体の静電容量70.0 mA h g-1に対し、BQ/DVBナノフレークの静電容量は209.0 mA h g-1と向上した。
【実施例】
【0181】
充放電測定
図25に、BQ/DVBナノフレークの充放電測定の結果を示す。これより、0.2 A g-1で162 mA h g-1の静電容量を示した。また、充放電曲線から0.2~0.6 V付近にキノン部位に由来するプラトーが見られ、これは図24のサイクリックボルタンメトリーの結果と一致した。
【実施例】
【0182】
実施例11 TCNQ/DVB重合体の合成
(合成方法)
実施例1において、1,4-ベンゾキノン(BQ)を7, 7, 8, 8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)に置き換えた以外は同じ条件とし、7, 7, 8, 8-テトラシアノキノジメタンと1, 4-ジビニルベンゼンからなる共重合体(以下、TCNQ/DVB重合体と称する)を得た。TCNQとDVBの比を5mmol:1mmolとした。
【実施例】
【0183】
得られたTCNQ/DVB重合体に対して、実験手順の「1.フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析」~「3.元素分析」を行った。
【実施例】
【0184】
【化28】
JP2018207699A1_000035t.gif
【実施例】
【0185】
(結果)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による構造解析
まず、フーリエ変換赤外分光装置で測定した、TCNQ/DVB重合体のIR スペクトルを図26に示す。各スペクトルの比較から、(1)のピークはN-H 伸縮、(2)のピークはN-H変角と確認できた。TCNQ/DVB重合体は、TCNQとDVBが組み込まれて高分子化した構造であることが示唆された。なお、シアノ基が付加環化反応に関与したため、CN三重結合のピークが消失したと考えられる。
【実施例】
【0186】
熱重量測定装置(TG‐DTA)による質量減少の測定
次に、図27に示すように、TG グラフによると、TCNQ/DVB重合体の質量減少開始温度は、TCNQ単体の重量減少開始温度300℃を超えている。このTGの結果とIRの結果を合わせて、TCNQ/DVB重合体が高分子化していることが確認された。図28にTCNQ/DVB重合体の一部の構造式を示す。
元素分析
次に、TCNQ/DVB 重合体の元素分析の結果は、重量比でC = 74.4 wt%、H = 4.99 wt%、N = 11.1 wt%、O= 9.15 wt%であった。元素分析の結果からもNの存在が確認される。TGの結果から高分子化していることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27