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明細書 :流体の計測方法、計測装置および計測システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月30日(2020.4.30)
発明の名称または考案の名称 流体の計測方法、計測装置および計測システム
国際特許分類 G01N  21/85        (2006.01)
G01N  21/17        (2006.01)
G01P  13/00        (2006.01)
FI G01N 21/85 B
G01N 21/17 A
G01P 13/00 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 36
出願番号 特願2019-526683 (P2019-526683)
国際出願番号 PCT/JP2018/019417
国際公開番号 WO2019/003715
国際出願日 平成30年5月18日(2018.5.18)
国際公開日 平成31年1月3日(2019.1.3)
優先権出願番号 2017127827
優先日 平成29年6月29日(2017.6.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】畔津 昭彦
【氏名】北嶋 一慶
【氏名】倉辻 風樹
【氏名】落合 成行
出願人 【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001807、【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2F034
2G051
2G059
Fターム 2F034AA03
2F034AB01
2G051AA90
2G051AC21
2G051BA05
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB10
2G051DA08
2G051EA16
2G051EB01
2G051EB05
2G059BB04
2G059DD03
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
要約 流体(23)の流れを可視化する計測方法であって、変異発生光(31)を照射することで光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物を流体(23)に溶解する準備工程と、フォトクロミズムを生じさせる変異発生光(31)を流体(23)に照射する変異発生光照射工程と、変異発生光(31)を照射した後の流体(23)の画像を撮影する変異後画像撮影工程と、を有し、前記変異後画像撮影工程では、変異発生光(31)が照射されることによって光の吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて流体(23)を撮影することで第1画像(B)を生成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
流体の計測方法であって、
変異発生光を照射することで光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物を前記流体に溶解する準備工程と、
フォトクロミズムを生じさせる変異発生光を前記流体に照射する変異発生光照射工程と、
前記変異発生光を照射した後の前記流体の画像を撮影する変異後画像撮影工程と、を有し、
前記変異後画像撮影工程では、変異発生光が照射されることによって光の吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影することで第1画像を生成する、ことを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記変異後画像撮影工程では、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像をさらに生成し、
前記変異後画像撮影工程の後で、前記第1画像および前記第2画像を用いて第3画像を生成する画像処理工程を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記変異後画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度を「I11」とし、
前記変異後画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度を「I21」とした場合に、
前記画像処理工程では、次式(1)を用いて各画素における吸光度A1を計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成する
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
ことを特徴とする請求項2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記変異発生光照射工程の前で、前記変異発生光を照射する前の前記流体の第1画像および第2画像を撮影する変異前画像撮影工程を有し、
前記変異前画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度を「I10」とし、
前記変異前画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度を「I20」とした場合に、
前記画像処理工程では、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成する
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
ことを特徴とする請求項3に記載の計測方法。
【請求項5】
前記変異後画像撮影工程では、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像をさらに生成し、
前記変異後画像撮影工程の後で、前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する流体厚さ算出工程を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項6】
前記変異後画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度を「I11」とし、
前記変異後画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度を「I21」とし、
前記フォトクロミック化合物を溶解した後の前記流体の吸光係数を「μ」とした場合に、
前記流体厚さ算出工程では、
次式(1)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度A1を計算し、
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
さらに、次式(3)を用いて流体厚さlを計算する、
l=A1/μ ・・・式(3)
ことを特徴とする請求項5に記載の計測方法。
【請求項7】
前記変異発生光照射工程の前で、前記変異発生光を照射する前の前記流体の第1画像および第2画像を撮影する変異前画像撮影工程を有し、
前記変異前画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度を「I10」とし、
前記変異前画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度を「I20」とした場合に、
前記流体厚さ算出工程では、
次式(2)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度Aを計算し、
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
さらに、次式(4)を用いて流体厚さlを計算する、
l=A/μ ・・・式(4)
ことを特徴とする請求項6に記載の計測方法。
【請求項8】
フォトクロミズムを生じさせる変異発生光が照射されることによって特定の波長領域の光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物が溶解された流体の流れを可視化する計測装置であって、
前記吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影した第1画像を記憶する第1画像記憶手段と、
前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像を記憶する第2画像記憶手段と、
前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の流れを可視化した第3画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記画像処理手段は、前記変異発生光を照射した後の前記流体を撮影した前記第1画像および前記第2画像を用いて第3画像を生成する、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項9】
前記変異発生光を照射した後の第1画像を構成する画素の光強度を「I11」とし、
前記変異発生光を照射した後の第2画像を構成する画素の光強度を「I21」とした場合に、
前記画像処理手段は、次式(1)を用いて各画素における吸光度A1を計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成する
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
ことを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記変異発生光を照射する前の第1画像を構成する画素の光強度を「I10」とし、
前記変異発生光を照射する前の第2画像を構成する画素の光強度を「I20」とした場合に、
前記画像処理手段は、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成する
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
ことを特徴とする請求項9に記載の計測装置。
【請求項11】
フォトクロミズムを生じさせる変異発生光が照射されることによって特定の波長領域の光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物が溶解された流体の厚さを測定する計測装置であって、
前記吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影した第1画像を記憶する第1画像記憶手段と、
前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像を記憶する第2画像記憶手段と、
前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する流体厚さ算出手段と、を備え、
前記流体厚さ算出手段は、前記変異発生光を照射した後の前記流体を撮影した前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項12】
前記変異発生光を照射した後の第1画像を構成する画素の光強度を「I11」とし、
前記変異発生光を照射した後の第2画像を構成する画素の光強度を「I21」とし、
前記フォトクロミック化合物を溶解した後の前記流体の吸光係数を「μ」とした場合に、
前記流体厚さ算出手段は、
次式(1)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度A1を計算し、
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
さらに、次式(3)を用いて流体厚さlを計算する、
l=A1/μ ・・・式(3)
ことを特徴とする請求項11に記載の計測装置。
【請求項13】
前記変異発生光を照射する前の第1画像を構成する画素の光強度を「I10」とし、
前記変異発生光を照射する前の第2画像を構成する画素の光強度を「I20」とした場合に、
前記流体厚さ算出手段は、
次式(2)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度Aを計算し、
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
さらに、次式(4)を用いて流体厚さlを計算する、
l=A/μ ・・・式(4)
ことを特徴とする請求項12に記載の計測装置。
【請求項14】
請求項8ないし請求項10の何れか1項に記載された計測装置と、
前記第1の光および前記第2の光を含む照明光を前記流体に照射する照明手段と、
前記流体を透過した後の前記照明光を前記第1の波長領域の第1の光と前記第2の波長領域の第2の光とに分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された前記第1の光を撮像し、前記第1画像を生成する第1撮像手段と、
前記分離手段により分離された前記第2の光を撮像し、前記第2画像を生成する第2撮像手段と、を備え、
前記照明手段は、前記第1撮像手段および前記第2撮像手段が撮影を行うタイミングに前記照明光を照射するタイミングを合わせたパルス光として前記照明光を照射する、
ことを特徴とする計測システム。
【請求項15】
前記変異発生光を照射する変異発生光源を備え、
前記変異発生光源は、前記流体の流れを可視化する領域を決定するために光のサイズを任意の大きさに調整する機能と、前記変異発生光を前記流体の任意の位置に照射する機能とを備え、
前記任意の大きさの前記変異発生光を前記流体の流れを可視化する前記任意の位置にパルス光として前記流体に照射する、ことを特徴とする請求項14に記載の計測システム。
【請求項16】
往復動または回転する駆動部が前記流体の中にある場合に、前記駆動部の位置情報を受信し、前記照明手段または前記変異発生光源が前記流体に照射するタイミングを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記駆動部が特定の位置にあるときに前記変異発生光をパルス光として照射するとともに、前記駆動部が特定の撮影位置にあるときに撮影する、ことを特徴とする請求項15に記載の計測システム。
【請求項17】
前記照明手段は、前記第1の光と前記第2の光とを別々の光として選択的に発生させる、ことを特徴とする請求項14に記載の計測システム。
【請求項18】
請求項11ないし請求項13の何れか1項に記載された計測装置と、
前記第1の光および前記第2の光を含む照明光を前記流体に照射する照明手段と、
前記流体を透過した後の前記照明光を前記第1の波長領域の第1の光と前記第2の波長領域の第2の光とに分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された前記第1の光を撮像し、前記第1画像を生成する第1撮像手段と、
前記分離手段により分離された前記第2の光を撮像し、前記第2画像を生成する第2撮像手段と、
前記変異発生光を照射する変異発生光源と、を備え、
前記変異発生光源は、前記流体の厚さ方向に対して、フォトクロミック化合物を完全に変異させる、
ことを特徴とする計測システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の計測方法、計測装置および計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、機械的な運動を行う場合、互いに摺動する部材間に薄膜を形成して動作を滑らかにする潤滑剤等の流体を介在させている。例えば、ピストン、シリンダ、すべり軸受などでは機械的に円滑に作動させることが要求され、すべり面には潤滑油が入れられる。ピストン、シリンダ、すべり軸受などを円滑に作動するためには、形状、境界面の間隔、潤滑油の量や質などの最適化が必要になる。
【0003】
従来、ピストン-シリンダ間の油膜の潤滑状態を把握するために、フォトクロミック反応を生じる物質を用いて油膜内流れの可視化を実現する技術が提案されている(非特許文献1参照)。
フォトクロミック反応とは、紫外光などの光を特定の物質に照射することにより当該物質の色素の分子構造を変化させ、それに伴って吸収スペクトルが変化する現象である。つまり、色素の分子構造を変化する前の物質は吸収スペクトルが無いため、光を照射しても着色されないが、色素の分子構造が変化した物質は特定の波長領域の光を照射すると、光を吸収して着色する。
【0004】
非特許文献1に記載される技術では、潤滑油(エンジンオイル)にフォトクロミック化合物を含有し、フォトクロミック化合物の色素の分子構造を変化させるための光(例えば、紫外光)をエンジンオイルに照射し、色素の分子構造が変化した部分を時間経過と共に撮影する。ここで、潤滑油の撮影は、観測用の照明光(例えば、白色光)を照射した状態でカメラを用いて行われる。
【0005】
観測用の照明光を測定部のエンジンオイルに当てることによりエンジンオイルからの反射光(厳密にはエンジンオイルを透過し背面のエンジンから反射してくる光)を得られるが、この反射光は、フォトクロミズムにより吸収スペクトルが変化した影響で、吸収された波長域では反射光強度が低下する。その為、時間経過と共に反射光強度の結果を撮影し、撮影した撮影画像を解析することでエンジンオイルが流れる様子が分かる。
ここで、光の吸収量を表す指標として吸光度があり、撮影画像の解析は吸光度を用いて行われる。吸光度は以下の式で求められる。
【0006】
着色前後の光強度(撮影画像の強度値)を
before ・・・着色前の光強度
after ・・・着色後の光強度
とすると、吸光度Asの計算式は、以下の式となる。なお、LOGは常用対数である。
s=-LOG(Iafter/Ibefore
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】畔津昭彦、北嶋一慶著、「油膜内流れの可視化に関する研究」、日本機械学会2015年度年次大会講演論文集、一般社団法人 日本機械学会、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載される技術によれば、油膜の潤滑状態を把握することが可能であるが、駆動部の動き、油膜表面の動き、気泡の分布等による油膜の変動がノイズとして含まれ、詳細な油膜の流れを把握することができず、油膜のより詳細な潤滑状態を観測したいという要望がある。その為には、フォトクロミズムを従来技術よりも鮮明に撮影・解析する必要がある。
しかし、非特許文献1には、このような要望を満たす具体的な技術内容について、記載も示唆もされていない。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであって、動く物体中、変化する場のような測定環境でも測定対象物を計測することができる計測方法、計測装置および計測システムを提供することを課題とする。
ここで、フォトクロミズムを生じさせる変異発生光を照射することによって、特定の波長領域の吸収量が変化したフォトクロミック化合物のことを、変異フォトクロミック化合物と定義する。また、測定対象物の計測には、例えば、時間経過に伴う流れの可視化や特定時刻における厚さの測定などが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の一態様による計測方法は、流体の流れを可視化する計測方法であって、変異発生光を照射することで光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物を前記流体に溶解する準備工程と、フォトクロミズムを生じさせる変異発生光を前記流体に照射する変異発生光照射工程と、前記変異発生光を照射した後の前記流体の画像を撮影する変異後画像撮影工程と、を有する。
前記変異後画像撮影工程では、変異発生光が照射されることによって光の吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影することで第1画像を生成する。
【0011】
このような工程を有する計測方法は、光の吸収量が変化する第1の波長領域を用いて流体を撮影するので、第1画像では流体内の変異フォトクロミック化合物が着色された状態で写し出される。その為、第1画像を観察することにより、従来よりも正確に流体を計測することができる。例えば、第1画像を観察することで着色部がどこにあるのか、周りの流体と比べてどうなのかがダイレクトにわかり、流体の流れを鮮明に可視化することができる。また、着色部の着色濃度を観察することで、特定時刻における着色部の厚さを測定することができる。
【0012】
また、計測方法は、前記変異後画像撮影工程では、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像をさらに生成し、前記変異後画像撮影工程の後で、前記第1画像および前記第2画像を用いて第3画像を生成する画像処理工程を行うのがよい。
【0013】
例えば、第3画像は、第1画像と第2画像との比を取ってから対数を算出することにより生成される。具体的には、前記画像処理工程では、次式(1)を用いて各画素における吸光度A1を計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成するのがよい。なお、LOGは常用対数である。
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
ここで、「I11」は、前記変異後画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度である。「I21」は、前記変異後画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度である。
【0014】
また、計測方法は、前記変異後画像撮影工程では、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像をさらに生成し、前記変異後画像撮影工程の後で、前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する流体厚さ算出工程を行うのがよい。
【0015】
例えば、流体の厚さは、吸光度と厚さとの関係(例えば、比例)により算出する。具体的には、前記流体厚さ算出工程では、次式(1)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度A1を計算し、
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
さらに、次式(3)を用いて流体厚さlを計算するのがよい。
l=A1/μ ・・・式(3)
ここで、「I11」は、前記変異後画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度である。「I21」は、前記変異後画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度である。「μ」は、前記フォトクロミック化合物を溶解した後の前記流体の吸光係数である。
【0016】
また、本発明の一態様による計測装置は、フォトクロミズムを生じさせる変異発生光が照射されることによって特定の波長領域の光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物が溶解された流体の流れを可視化する計測装置である。
この計測装置は、前記吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影した第1画像を記憶する第1画像記憶手段と、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像を記憶する第2画像記憶手段と、前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の流れを可視化した第3画像を生成する画像処理手段と、を備える。
前記画像処理手段は、前記変異発生光を照射した後の前記流体を撮影した前記第1画像および前記第2画像を用いて第3画像を生成する。
【0017】
例えば、第3画像は、第1画像と第2画像との比を取ってから対数を算出することにより生成される。具体的には、前記画像処理手段は、次式(1)を用いて各画素における吸光度A1を計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成するのがよい。なお、LOGは常用対数である。
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
ここで、「I11」は、前記変異発生光を照射した後の第1画像を構成する画素の光強度である。「I21」は、前記変異発生光を照射した後の第2画像を構成する画素の光強度である。
【0018】
また、本発明の一態様による計測装置は、フォトクロミズムを生じさせる変異発生光が照射されることによって特定の波長領域の光の吸収量が変化するフォトクロミック化合物が溶解された流体の厚さを測定する計測装置である。
この計測装置は、前記吸収量が変化する第1の波長領域の第1の光を用いて前記流体を撮影した第1画像を記憶する第1画像記憶手段と、前記吸収量が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域の第2の光を用いて、前記第1画像の撮影と同時刻の前記流体を撮影した第2画像を記憶する第2画像記憶手段と、前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する流体厚さ算出手段と、を備える。
前記流体厚さ算出手段は、前記変異発生光を照射した後の前記流体を撮影した前記第1画像および前記第2画像を用いて前記流体の厚さを算出する。
【0019】
例えば、流体の厚さは、吸光度と厚さとの関係(例えば、比例)により算出する。具体的には、前記流体厚さ算出手段は、次式(1)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度A1を計算し、
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
さらに、次式(3)を用いて流体厚さlを計算するのがよい。
l=A1/μ ・・・式(3)
ここで、「I11」は、前記変異発生光を照射した後の第1画像を構成する画素の光強度である。「I21」は、前記変異発生光を照射した後の第2画像を構成する画素の光強度である。「μ」は、前記フォトクロミック化合物を溶解した後の前記流体の吸光係数である。
【0020】
このような工程を有する計測方法は、光の吸収量が変化する第1の波長領域を用いて流体の第1画像を撮影し、また、吸光度が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域を用いて流体の第2画像を撮影する工程を備えている。また、このような構成を備える計測装置は、光の吸収量が変化する第1の波長領域を用いて流体を撮影した第1画像を記憶し、また、吸光度が全くまたは殆ど変化しない第2の波長領域を用いて流体を撮影した第2画像を記憶する。
第1の波長領域は変異フォトクロミック化合物の光の吸収量が変化する領域なので、第1画像では流体内の変異フォトクロミック化合物が着色された状態で写し出される。ここで、流体の状況(例えば、油膜厚さ)が変化した場合に、第1画像に写し出される変異フォトクロミック化合物の分布と同時に、装置の汚れや傷等による変色や、流体表面の動き、気泡の分布等の流体の状況の変化の影響が同時にノイズとして反映される。
第2の波長領域は変異フォトクロミック化合物であっても光の吸収量が全くまたは殆ど変化しない領域なので、第2画像では流体内の変異フォトクロミック化合物が着色されずに、装置の汚れや傷等による変色や、流体表面の動き、気泡の分布等の流体の状況が写し出される。
ここで、同時刻の第1画像および第2画像には、同じ状態の流体表面の動き、気泡の分布等の流体の状況が写し出されるので、第1画像および第2画像を用いた第3画像では、流体の表面の動き、気泡の分布等の流体の状況の変化の影響等の様々なノイズが低減され、着色された変異フォトクロミック化合物の分布の変化がより鮮明に写し出される。また、同様に、第1画像および第2画像を用いて算出した流体厚さlは、様々なノイズの影響が低減されることにより正確な値となる。
【0021】
また、計測方法は、前記変異発生光照射工程の前で、前記変異発生光を照射する前の前記流体の第1画像および第2画像を撮影する変異前画像撮影工程を有し、前記画像処理工程では、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成するのがよい。なお、LOGは常用対数である。
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
ここで、「I10」は、前記変異前画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度である。「I20」は、前記変異前画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度である。
【0022】
また、計測方法は、前記変異発生光照射工程の前で、前記変異発生光を照射する前の前記流体の第1画像および第2画像を撮影する変異前画像撮影工程を有し、前記流体厚さ算出工程では、次式(2)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度Aを計算し、
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
さらに、次式(4)を用いて流体厚さlを計算するのがよい。
l=A/μ ・・・式(4)
ここで、「I10」は、前記変異前画像撮影工程で撮影した第1画像を構成する画素の光強度である。「I20」は、前記変異前画像撮影工程で撮影した第2画像を構成する画素の光強度である。
【0023】
また、計測装置は、前記画像処理手段が、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで前記第3画像を生成するのがよい。なお、LOGは常用対数である。
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
ここで、「I10」は、前記変異発生光を照射する前の第1画像を構成する画素の光強度である。「I20」は、前記変異発生光を照射する前の第2画像を構成する画素の光強度である。
【0024】
また、計測装置は、前記流体厚さ算出手段が、次式(2)を用いて変異発生光が照射された領域の画素における吸光度Aを計算し、
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
さらに、次式(4)を用いて流体厚さlを計算するのがよい。
l=A/μ ・・・式(4)
ここで、「I10」は、前記変異発生光を照射する前の第1画像を構成する画素の光強度である。「I20」は、前記変異発生光を照射する前の第2画像を構成する画素の光強度である。
【0025】
このような工程を有する計測方法、および、このような構成を備える計測装置は、前記変異発生光を照射する前の流体を撮影した第1画像および第2画像と、前記変異発生光を照射した後の流体を撮影した第1画像および第2画像とを用いて第3画像を生成し、または、流体厚さlを計算する。
ここで、第1の波長領域の光、第2の波長領域の光によって反射率が異なる部分がある場合(例えば、エッジ部)や、2つの光源を使う等によって第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の強度分布が異なる場合(例えば、第1画像上部が明るく、第2画像下部が明るい等の場合)であっても、変異発生光を照射する前の第1画像と変異発生光を照射した後の第1画像および変異発生光を照射する前の第2画像と変異発生光を照射した後の第2画像には、ほぼ同じ状態の第1の波長領域の光および第2の波長領域の光によって流体の状況が写し出される。
その為、第3画像には、装置の汚れや傷等による変色の影響の軽減だけではなく、第1の波長領域の光、第2の波長領域の光の波長の違いによって反射率が異なる部分や、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の強度分布が異なることによって生ずる光による様々なノイズが同時に低減され、着色された変異フォトクロミック化合物の分布の変化がより鮮明に写し出される。これにより、動く物体中や変化する場のような流体の状況が変化し易い測定環境でも、流体の流れをより鮮明に可視化することができる。また、同様に、流体厚さlは、これらのノイズの影響が低減されることにより正確な値となる。
【0026】
また、本発明の一態様による計測システムは、前記計測装置と、前記第1の光および前記第2の光を含む照明光を前記流体に照射する照明手段と、前記流体を透過した後の前記照明光を前記第1の波長領域の第1の光と前記第2の波長領域の第2の光とに分離する分離手段と、を備える。
また、計測システムは、前記分離手段により分離された前記第1の光を撮像し、前記第1画像を生成する第1撮像手段と、前記分離手段により分離された前記第2の光を撮像し、前記第2画像を生成する第2撮像手段と、を備える。
前記照明手段は、前記第1撮像手段および前記第2撮像手段が撮影を行うタイミングに前記照明光を照射するタイミングを合わせたパルス光として前記照明光を照射する。
【0027】
このような構成を備える計測システムは、撮影を行うタイミングで照明光を照射するので、撮影を行わない時間帯に照明光を照射せずにすむ。その為、照明光の光や熱による変異フォトクロミック化合物の変異を減衰させる期間を短くすることができ、また撮影に十分な照明光量を照射できるので、流体の長時間の流れを鮮明に可視化することができる。
【0028】
また、計測システムは、前記変異発生光を照射する変異発生光源を備えるのがよい。この変異発生光源が、前記流体の流れを可視化する領域を決定するために光のサイズを任意の大きさに調整する機能と、前記変異発生光を前記流体の任意の位置に照射する機能とを備え、前記任意の大きさの前記変異発生光を前記流体の流れを可視化する前記任意の位置にパルス光として前記流体に照射する。
【0029】
このような構成を備える計測システムは、流体の流れを可視化する領域を任意の大きさで、任意の場所に調節することができる。また、変異発生光源がパルス光を照射するので、流体の流れによって可視化する領域となる着色部の像のぶれを最小限にすることができる。
【0030】
また、計測システムは、往復動または回転する駆動部が前記流体の中にある場合に、前記駆動部の位置情報を受信し、前記照明手段または前記変異発生光源が前記流体に照射するタイミングを制御する制御部をさらに備えるのがよい。
前記制御部は、前記駆動部が特定の位置にあるときに前記変異発生光をパルス光として照射するとともに、前記駆動部が特定の撮影位置にあるときに撮影する。
【0031】
このような構成を備える計測システムは、変異発生光源がフォトクロミズムを生じさせる光をパルス光として照射するので、駆動部が流体の中にある場合であっても照射位置を流体の特定の位置に限定できる。また、駆動部の動きに同期させて撮影を行うので、撮影される変異発生光を照射する前の第1画像および第2画像と、変異発生光を照射した後の第1画像および第2画像には駆動部が同じ位置に写ることになる。その為、前記変異発生光を照射する前後の画像を対比することができるので、駆動部の移動に伴う流体の流れを可視化することができる。
【0032】
また、計測システムは、前記照明手段が、前記第1の光と前記第2の光とを別々の光として選択的に発生させるのがよい。
【0033】
このような構成を備える計測システムは、第1の照明光と第2の照明光とを明確に区別した照明光を同時に照射するため、余分な波長の照明光を含んでいないことから、照明光源による過剰な光の光強度や熱を抑えることができることから、変異フォトクロミック化合物の減衰を抑制することができ、高精度の第1画像および第2画像を生成することができる。
【0034】
また、計測システムは、前記計測装置と、前記第1の光および前記第2の光を含む照明光を前記流体に照射する照明手段と、前記流体を透過した後の前記照明光を前記第1の波長領域の第1の光と前記第2の波長領域の第2の光とに分離する分離手段と、を備える。
この計測システムは、前記分離手段により分離された前記第1の光を撮像し、前記第1画像を生成する第1撮像手段と、前記分離手段により分離された前記第2の光を撮像し、前記第2画像を生成する第2撮像手段と、前記変異発生光を照射する変異発生光源と、を備える。
前記変異発生光源は、前記流体の厚さ方向に対して、フォトクロミック化合物を完全に変異させる。
【0035】
このような構成を備える計測システムは、流体の厚さを正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、動く物体中、変化する場のような測定環境でも測定対象物を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムが備える分離手段の特性を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの全体動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの基準画像撮影工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムのフォトクロミズム発生工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの比較画像撮影工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの画像処理工程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの全体動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの基準画像撮影工程を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムのフォトクロミズム発生工程を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの比較画像撮影工程を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムの画像処理工程を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第1実施形態に係る流体の流れ可視化システムを用いて、ピストンを静止している状態で潤滑油を時間経過と共に撮影した画像から生成した第3画像を示す図であり、(a)はフォトクロミック化合物にフォトクロミズムを生じさせる光を照射した直後(0秒)の第3画像を示し、(b)は10秒後の第3画像を示し、(c)は20秒後の第3画像を示し、(d)は30秒後の第3画像を示す。
【図14】本発明の第2実施形態に係る流体の流体厚さ測定システムの概略構成図である。
【図15】吸光度と流体厚さとの関係を調べるための実験の様子を示した図である。
【図16】吸光度と流体厚さとの関係を示す図である。
【図17】当該実験で求めた吸光係数を用いて算出した試験溶液の厚さの分布を示す図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る流体の流体厚さ測定システムの全体動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第2実施形態に係る流体の流体厚さ測定システムのフォトクロミズム発生工程を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第2実施形態に係る流体の流体厚さ測定システムの流体厚さ算出工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施するための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。

【0039】
第1実施形態では、測定対象である流体の時間経過に伴う流れを可視化する場合について説明する。また、第2実施形態では、測定対象である流体の特定時刻における厚さを測定する場合について説明する。なお、流体の流れの可視化や流体の厚さの測定は、測定対象である流体の計測の一例である。

【0040】
[第1実施形態]
≪流体の流れ可視化システムの構成≫
流体の流れ可視化システム(以下では単に「可視化システム」)は、測定対象である流体の流れを可視化するシステムであり、例えばピストン、シリンダ、すべり軸受などのすべり面である動く物体中で使用される潤滑剤の潤滑状態を可視化する。なお、可視化システムは、流体の計測システムの一例である。

【0041】
本実施形態では、図1に示すように、ピストン21とシリンダ22との間に介在される流体23の流れを可視化する場合を想定して説明を行うことにする。
ピストン21はシリンダ22内をα方向に往復動する駆動部である。流体23は時間の経過と共に流れており、特にピストン21がシリンダ22内を駆動することによって流体23の状況(例えば、厚さ)は変化する。シリンダ22には開口部22aが形成されており、開口部22aにはガラスなどの透明な材料でできた嵌合部材22bが設置されている。これにより、シリンダ22の外部から開口部22aを介して、流体23を観察することができる。以下では、開口部22aを介して観察できる流体23の範囲を観察部と称する。

【0042】
流体23には、図示しないフォトクロミック化合物が溶解されている。フォトクロミック化合物は、例えば、スピロピラン系の1,3,3-Trimethylindolino-6'-nitrobenzopyrylospiranである。このスピロピラン系の化合物は、特定波長の光を吸収することで、無色のスピロピランから発色するメロシアニン構造へと変化する。流体23は、フォトクロミック化合物を溶解することができるものであればよく、例えば油である。流体23の粘度は特に限定されず、流体23には粘度が高い物質(例えば、ゲル状の物質)も含まれる。

【0043】
図1に示すように、本実施形態に係る可視化システム1は、位置発信手段2と、変異発生光源3と、ミラー4と、照明光源5と、分離手段6と、一組のCCDカメラ91,92と、流体の流れ可視化装置10(以下では単に「可視化装置10」)とを備えて構成される。なお、ここではCCDカメラとしたが、第1の波長領域および第2の波長領域の光を撮影できるカメラであれば、CMOSや撮像管を使うものなど様々なカメラであってよい。
分離手段6は、イメージスプリッティングダイクロイックミラー(DM)7と、一組のバンドパスフィルタ(BPF)81,82とを備えて構成される。
可視化装置10は、一組のイメージメモリ111,112と、画像処理手段12と、表示部15と、制御部16とを備えて構成される。画像処理手段12は、さらに吸光度演算部13と、2次元パターン化部14とを備えて構成される。なお、可視化装置10は、流体の計測装置の一例である。

【0044】
位置発信手段2は、駆動部であるピストン21の位置情報を可視化装置10に発信する。なお、ピストン21を静止させた状態で時間の経過による流体23の潤滑状態を観測する場合、可視化システム1は位置発信手段2を含まない構成でよい。
位置発信手段2は、例えばピストン21に繋がるクランク(図示せず)に取り付けられたエンコーダから回転位置を取得し、予め決められた回転位置で信号を可視化装置10に出力する。また、位置発信手段2は、エンジンへの制御信号に基づいて信号を出力するもの、ピストン21の位置を直接検出して信号を出力するもの、時間経過からピストン21の位置を予測して信号を検出するものなどであってもよい。高速回転している回転軸を支持する軸受の潤滑状態を観測する場合、回転軸の角度信号を可視化装置10に出力する。

【0045】
変異発生光源3は、開口部22aを介して流体23に含まれるフォトクロミック化合物にフォトクロミズムを生じさせる変異発生光31を照射する装置である。変異発生光31の波長は、フォトクロミック化合物の種類によって適宜選択されるのがよく、例えば紫外光である。変異発生光源3は、例えば窒素レーザー(波長337nm)やYAGレーザー(波長1064nm)であり、紫外光を発射する場合にはYAGレーザーの第三高調波や第四高調波を使う。ピストン21の往復動による流体23の潤滑状態を観測する場合、変異発生光31をパルス発振するのがよい。変異発生光31をパルス発振するタイミングは、ピストン21の往復動作に対応させるのがよく、変異発生光31は、ピストン21の特定の位置に照射される。流体中の測定する範囲を調整する方法としては、変異発生光源3にレーザーを用いることや、レンズで焦点を絞ることで変異発生光31を照射する範囲を狭めることができる。また、レンズで焦点を広げることで、変異発生光31を照射する範囲を広げることができる。なお、測定範囲の調整は、変異発生光31を照射する範囲を調整できれば、この方法に限定されない。

【0046】
流体23に溶解されたフォトクロミック化合物の色素の分子構造は、変異発生光31によって変異し、それに伴って特定の波長領域における光の吸収量が変化する。以下では、変異発生光31を照射されることにより光の吸収量が変化する波長領域を「第1の波長領域」と称し、変異発生光31を照射されても光の吸収量が全くまたは殆ど変化しない波長領域を「第2の波長領域」と称する。第1の波長領域は、例えば緑色の光に対応する波長領域であり、第2の波長領域は、例えば赤色の光に対応する波長領域である。
なお、フォトクロミズムによる色素の分子構造の変異は可逆的であり、熱や光の吸収によって元の分子構造に逆変異する。その為、分子構造が変異した後の流体23を撮影する場合には、変異フォトクロミック化合物に与える熱や光の量を最小限に抑えるのがよい。流体23の撮影についての詳細は後述する。

【0047】
ミラー4は、変異発生光31を反射する装置である。このミラー4は、変異発生光31を特定の照射位置に反射させるように設置されている。

【0048】
照明光源5は、開口部22aを介して撮影に必要な照明光32を流体23に照射する装置である。照明光32は、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光とを含む。以下では、照明光32の内で第1の波長領域の光を「第1の照明光」と称し、第2の波長領域の光を「第2の照明光」と称する。照明光源5は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)である。

【0049】
照明光源5は、流体23を撮影するタイミングに合わせて照明光32をパルス光として照射する。照明光32を照射する時間は、変異フォトクロミック化合物における分子構造の逆変異を最小限に抑えるために、流体23の撮影を行える範囲の内でできるだけ短い時間(例えば数ミリ秒)であるのがよい。原理的には、CCDカメラ91,92のシャッタが開き、CCD(撮像素子)が露光されている時間(以下では「シャッタ時間」と称する)より短ければよい。CCDカメラ91,92のシャッタ時間以上の露光は、変異フォトクロミック化合物の変異を減衰させるだけなので望ましくない。

【0050】
なお、照明光源5の形状は、本発明との関係で特に限定されるものではない。照明光源5は、例えばバー状(棒状)や矩形状のものであってもよい。また、照明光源5は、第1の照明光と第2の照明光とを選択的に発射する別々の装置として構成されていてもよい。

【0051】
分離手段6は、照明光32が流体23に反射された光(厳密には流体23を透過してピストン21に反射した光)である反射光33を、第1の波長領域と第2の波長領域とに分離する装置である。ここでは、イメージスプリッティングダイクロイックミラー7とバンドパスフィルタ81,82とを備える構成を例示したが、反射光33を第1の波長領域と第2の波長領域とに分離することができれば、分離手段6は他の方法であってもよい。また、ここでの分離手段6は、イメージスプリッティングダイクロイックミラー(DM)7と、一組のバンドパスフィルタ(BPF)81,82とを備える単一の装置として示しているが、イメージスプリッティングダイクロイックミラー7とバンドパスフィルタ81,82とは別々の装置として構成されてもよい。なお、分離手段6は、その処理過程において反射光33により撮像される画像形状を維持する必要がある。

【0052】
イメージスプリッティングダイクロイックミラー7は、反射波長帯と透過波長帯とを有しており、反射光33の内で反射波長帯の光341を反射し、反射光33の内で透過波長帯の光342を透過する。例えば、反射波長帯には第1の波長領域が含まれ、一方、透過波長帯には第2の波長領域が含まれる。

【0053】
図2を参照して、ここでのイメージスプリッティングダイクロイックミラー7の反射・透過特性について説明する。図2に示す曲線41は、変異フォトクロミック化合物の吸光特性を示すものであり、光の波長[nm]と流体23に溶解されるフォトクロミック化合物の吸光度(着色前の光強度と着色後の光強度との比率の対数)との関係を表している。ここでのフォトクロミック化合物は、変異発生光31を照射することにより、波長が520nm周辺の光の吸収量が最も変化し、波長が長くなる又は短くなるにつれて光の吸収量の変化も小さくなる。そして、波長が700nmを超えたあたりから光の吸収量は殆ど変化しない。

【0054】
また、図2に示す曲線42は、イメージスプリッティングダイクロイックミラー7の反射・透過特性を示すものであり、光の波長[nm]と透過率[%]との関係を表している(Semrock社,製品コード:FF560-FDi01-25×36)。ここでのイメージスプリッティングダイクロイックミラー7は、波長が570nm未満の光を反射し、波長が570nm以上の光を透過させる。つまり、イメージスプリッティングダイクロイックミラー7の反射波長帯(波長が570nm未満)には、第1の波長領域が含まれており、一方、透過波長帯(波長が570nm以上)には、第2の波長領域が含まれている。したがって、イメージスプリッティングダイクロイックミラー7は、第1の波長領域を含む光341を反射すると共に第2の波長領域を含む光342を透過することにより分離している。

【0055】
バンドパスフィルタ81,82は、特定の波長領域の光を通過させる装置である。図2を参照して、ここでのバンドパスフィルタ81,82の透過特性について説明する。図2に示す曲線43は、バンドパスフィルタ81の透過特性を示すものであり、光の波長[nm]と透過率[%]との関係を表している(Semrock社,製品コード:FF01-512/25-25)。ここでのバンドパスフィルタ81は、波長が490~540nm周辺の光を透過させ、それ以外の領域の波長を透過させない。バンドパスフィルタ81が透過させる波長の領域には、第1の波長領域が含まれる。以下では、バンドパスフィルタ81を通過した光を「第1の反射光351」称する。

【0056】
また、図2に示す曲線44は、バンドパスフィルタ82の透過特性を示すものであり、光の波長[nm]と透過率[%]との関係を表している(Semrock社,製品コード:FF01-630/92-25)。ここでのバンドパスフィルタ82は、波長が580~680nm周辺の光を透過させ、それ以外の領域の波長を透過させない。バンドパスフィルタ82が透過させる波長の領域には、第2の波長領域が含まれる。以下では、バンドパスフィルタ82を通過した光を「第2の反射光352」称する。

【0057】
CCDカメラ91,92は、流体23の撮影画像を生成する装置である。
CCDカメラ91は、バンドパスフィルタ81を通過した第1の反射光351(例えば、波長が490~540nm周辺の光)により流体23の第1画像Bを生成する。ここでの第1画像Bには、変異発生光31を照射する前のものと変異発生光31を照射した後のものとが含まれる。以下では、変異発生光31を照射する前のものを「第1画像B10」で表し、変異発生光31を照射した後のものを「第1画像B11」で表す場合がある。
CCDカメラ92は、バンドパスフィルタ82を通過した第2の反射光352(例えば、波長が580~680nm周辺の光)により流体23の第2画像Cを生成する。ここでの第2画像Cには、変異発生光31を照射する前のものと変異発生光31を照射した後のものとが含まれる。以下では、変異発生光31を照射する前のものを「第2画像C10」で表し、変異発生光31を照射した後のものを「第2画像C11」で表す場合がある。

【0058】
可視化装置10は、CCDカメラ91,92によって生成された第1画像B及び第2画像Cから流体23の流れを可視化する装置である。
イメージメモリ(IM)111,112は、CCDカメラ91,92によって生成された撮影画像を記憶する装置である。イメージメモリ111にはCCDカメラ91によって生成された第1画像Bが記憶され、イメージメモリ112にはCCDカメラ92によって生成された第2画像Cが記憶される。イメージメモリ111,112は、「第1画像記憶手段」、「第2画像記憶手段」の一例である。なお、イメージメモリ111,112は、一つの装置であってもよく、その場合には一つのイメージメモリ11に第1画像Bおよび第2画像Cが記憶される。

【0059】
バンドパスフィルタ81を通過した第1の反射光351は、第1の波長領域の光なので、時間経過と共に撮影された第1画像Bには流体23内の変異フォトクロミック化合物の各時刻における分布が写し出される。ここで、流体23の状況(例えば、油膜厚さ)が変化した場合に、第1画像Bに写し出される変異フォトクロミック化合物の分布には、流体の状況の変化の影響が反映される。一方、バンドパスフィルタ82を通過した第2の反射光352は、第2の波長領域の光なので、時間経過と共に撮影された第2画像Cには各時刻における流体23の状況が写し出される。

【0060】
画像処理手段12は、イメージメモリ111,112から第1画像B及び第2画像Cを取得し、取得した第1画像B及び第2画像Cを用いて画像処理を行い、第3画像Dを新たに生成する。画像処理手段12は、吸光度演算部13と、2次元パターン化部14とを備えて構成される。画像処理手段12は、例えばCPU(Central Processing Unit)によるプログラム実行処理や、専用回路等により実現される。

【0061】
吸光度演算部13は、変異発生光31を照射する前の流体23を撮影した第1画像B10および第2画像C10と、変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用い、これらの画像の比を取ってから対数を算出し、これらの差分を算出することで吸光度を算出する。
例えば、変異発生光31を照射する前の第1画像B10を構成する画素の光強度を「I10」とし、変異発生光31を照射する前の第2画像C10を構成する画素の光強度を「I20」と定義する。また、変異発生光31を照射した後の第1画像B11を構成する画素の光強度を「I11」とし、変異発生光31を照射した後の第2画像C11を構成する画素の光強度を「I21」と定義する。
この場合に、吸光度演算部13は、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算する。なお、LOGは常用対数である。
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
=-LOG((I11/I21)/(I10/I20)) ・・・式(2)

【0062】
2次元パターン化部14は、吸光度演算部13により算出された吸光度Aに基づいて第3画像Dを生成する。2次元パターン化部14は、例えば前記式(2)により計算された各画素の吸光度を2次元パターン化することで第3画像Dを生成する。
その為、第3画像Dには、流体の状況の変化の影響を低減した変異フォトクロミック化合物の分布の変化が写し出される。これにより、可視化装置10は、流体の流れをより鮮明に可視化することができる。

【0063】
表示部15は、例えばディスプレイであり、2次元パターン化部14により生成された第3画像Dを表示する。
制御部16は、可視化システム1を構成する装置(位置発信手段2、変異発生光源3、照明光源5、CCDカメラ91,92、画像処理手段12など)を制御する。詳細は後記する「流体の流れ可視化システムの動作」で説明する。制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。なお、可視化装置10以外の装置が制御部16を備える構成でもよい。

【0064】
≪流体の流れ可視化システムの動作≫
次に、本実施形態の可視化システム1の動作について説明する。本実施形態の可視化システム1は、駆動部であるピストン21が静止している状態、及び運動している状態の何れかの状態の流体23を開口部22aを通して撮影し、流体23の流れを可視化することができる。ここで、駆動部であるピストン21が静止している状態の流体23を時間経過と共に撮影することで、時間の経過による流体23の潤滑状態を観測することができる。一方、駆動部であるピストン21が運動している状態の流体23を時間経過と共に撮影することで、ピストン21の往復動による流体23の潤滑状態を観測することができる。なお、可視化システム1の動作は、流体の計測方法の一例である。

【0065】
<駆動部であるピストンが静止している場合の動作>
図3ないし図7を参照して(適宜、図1参照)、駆動部であるピストン21が静止している場合の動作について説明する。図3は、流体の流れ可視化システム1の全体動作を示すフローチャートであり、図4ないし図7は、各工程を説明するためのフローチャートである。

【0066】
最初に、可視化する流体23にフォトクロミック化合物を溶解し(ステップS1)、また、流体の流れ可視化システム1の測定環境を整える(ステップS2)。これにより、事前の準備が完了する。ステップS1,S2は、特許請求の範囲の「準備工程」である。

【0067】
次に、基準画像撮影工程を行う(ステップS3)。ここでの基準画像は、フォトクロミック化合物がフォトクロミズムを発生させる前の画像であり、第1画像B10および第2画像C10を少なくとも1枚ずつを撮影する。基準画像としての第1画像B10と第2画像C10とは、同時刻に撮影されたものである。ステップS3は、特許請求の範囲の「変異前画像撮影工程」である。

【0068】
次に、フォトクロミズム発生工程を行う(ステップS4)。フォトクロミズム発生工程は、紫外光などの変異発生光31を流体23に照射することにより、フォトクロミック化合物を変異させる工程である。この工程で、流体の可視化する領域が確定する。ステップS4は、特許請求の範囲の「変異発生光照射工程」である。

【0069】
次に、比較画像撮影工程を行う(ステップS5)。比較画像は、フォトクロミック化合物がフォトクロミズムを発生させた後の画像であり、第1画像B11および第2画像C11を少なくとも1枚ずつ撮影する。比較画像としての第1画像B11と第2画像C11とは、同時刻に撮影されたものである。ステップS5は、特許請求の範囲の「変異後画像撮影工程」である。

【0070】
次に、画像処理工程を行う(ステップS6)。画像処理工程は、基準画像撮影工程で撮影した第1画像B10および第2画像C10と、比較画像撮影工程で撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用いて第3画像Dを生成する。第3画像Dには、装置の汚れや傷等による変色の影響の軽減だけではなく、流体の表面の動き、気泡の分布等の流体の状況の変化の影響等の様々なノイズが同時に低減した変異フォトクロミック化合物の分布の変化が写し出される。そして、第3画像Dを表示部15で表示することで、流体23の流れを可視化する(ステップS7)。

【0071】
図4を参照して、基準画像撮影工程(ステップS3)について説明する。
まず、照明光源5は、(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、および(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の光を含む照明光32を観察部全体に照射する(ステップS11)。これにより、第1の照明光および第2の照明光は、観察部に同時に照射される。

【0072】
次に、分離手段6は、観察部全体から反射してくる反射光33を(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の波長領域に分光する(ステップS12)。

【0073】
次に、分光した波長領域のうちの(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域の第1の反射光351を用いて観察部全体を画像化し、基準画像としての第1画像B10を得る(ステップS13)。
また、分光した波長領域のうちの(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の第2の反射光352を用いて観察部全体を画像化し、基準画像としての第2画像C10を得る(ステップS14)。

【0074】
次に、可視化装置10は、画像化した第1画像B10および第2画像C10を記憶部であるイメージメモリ111,112に記憶する(ステップS15)。そして、測定を完了するか否かを判定する(ステップS16)。測定を完了する場合に本工程を終了する。一方、引き続き第1画像B10および第2画像C10を取得する場合に、ステップS11~S15の処理を繰り返し行う。これにより、複数の第1画像B10および第2画像C10が得られ、これらを平均したものを基準画像とすることで、流体23をより鮮明に可視化することができる。

【0075】
図5を参照して、フォトクロミズム発生工程(ステップS4)について説明する。
本工程では、変異発生光源3が、フォトクロミック化合物の組成を変異させる変異発生光31を観察部領域内の測定したい位置に照射する(ステップS21)。
これにより、流体23の測定したい位置に溶解しているフォトクロミック化合物が特定の波長領域の光を吸収する組成に変異する(ステップS22)。

【0076】
図6を参照して、比較画像撮影工程(ステップS5)について説明する。
まず、照明光源5は、(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、および(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の光を含む照明光32を観察部全体に照射する(ステップS31)。これにより、第1の照明光および第2の照明光は、観察部に同時に照射される。

【0077】
次に、分離手段6は、観察部全体から反射してくる反射光33を(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の波長領域に分光する(ステップS32)。

【0078】
次に、分光した波長領域のうちの(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域の第1の反射光351を用いて観察部全体を画像化し、比較画像としての第1画像B11を得る(ステップS33)。
また、分光した波長領域のうちの(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の第2の反射光352を用いて観察部全体を画像化し、比較画像としての第2画像C11を得る(ステップS34)。

【0079】
次に、可視化装置10は、画像化した第1画像B11および第2画像C11を記憶部であるイメージメモリ111,112に記憶する(ステップS35)。そして、測定を完了するか否かを判定する(ステップS36)。測定を完了する場合に本工程を終了する。一方、引き続き第1画像B11および第2画像C11を取得する場合に、ステップS31~S35の処理を時間の経過と共に繰り返し行う。これにより、時系列の第1画像B11および第2画像C11が得られる。

【0080】
図7を参照して、画像処理工程(ステップS6)について説明する。
本工程では、記憶部に記憶されている基準画像(第1画像B10、第2画像C10)および比較画像(第1画像B11、第2画像C11)の同じ位置にある画素の輝度値を使って、画素毎に吸光度Aを算出して第3画像Dを得る(ステップS41)。そして、生成した第3画像Dを画像処理手段12内の図示しない記憶部に記憶する(ステップS42)。

【0081】
<駆動部であるピストンが往復動している場合の動作>
図8ないし図12を参照して(適宜、図1参照)、駆動部であるピストン21が往復動している場合の動作について説明する。図8は、流体の流れ可視化システム1の全体動作を示すフローチャートであり、図9ないし図12は、各工程を説明するためのフローチャートである。

【0082】
駆動部であるピストン21が往復動している場合の全体動作は、ステップT1~ステップT7からなり、このうちのステップT1,T2,T7は、駆動部であるピストン21が静止している場合の動作のステップS1,S2,S7(図3参照)と同様である。以下では、処理の異なる基準画像撮影工程(ステップT3)、フォトクロミズム発生工程(ステップT4)、比較画像撮影工程(ステップT5)、および画像処理工程(ステップT6)について説明する。なお、ステップT1,T2は、特許請求の範囲の「準備工程」である。また、ステップT3は、特許請求の範囲の「変異前画像撮影工程」である。また、ステップT4は、特許請求の範囲の「変異発生光照射工程」である。また、ステップT5は、特許請求の範囲の「変異後画像撮影工程」である。

【0083】
図9を参照して、基準画像撮影工程(ステップT3)について説明する。
まず、可視化装置10の制御部16は、事前に設定した「測定する装置の駆動部(ここでは、ピストン21)の動作単位」で照明光源5が光を照射するための信号を送信する(ステップT11)。そして、照明光源5は、信号を受信した場合に、(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する波長領域、および(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない波長領域の2種類の光を含む照明光32を観察部全体に照射する(ステップT12)。これにより、第1の照明光および第2の照明光は、撮影位置にあるピストン21に同時に照射される。

【0084】
次に、分離手段6は、観察部全体から反射してくる反射光33を(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の波長領域に分光する(ステップT13)。

【0085】
次に、分光した波長領域のうちの(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域の第1の反射光351を用いて観察部全体を画像化し、基準画像としての第1画像B10を得る(ステップT14)。
また、分光した波長領域のうちの(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の第2の反射光352を用いて観察部全体を画像化し、基準画像としての第2画像C10を得る(ステップT15)。

【0086】
次に、可視化装置10は、「装置の駆動部の位置情報」と、「画像化した第1画像B10および第2画像B20」とを対応付けて記憶部であるイメージメモリ111,112に記憶する(ステップT16)。そして、測定を完了するか否かを判定する(ステップT17)。測定を完了する場合に本工程を終了する。一方、引き続き第1画像B10および第2画像C10を取得する場合に、ステップT11~T16の処理を繰り返し行う。これにより、駆動部の位置毎の第1画像B10および第2画像C10が得られる。

【0087】
図10を参照して、フォトクロミズム発生工程(ステップT4)について説明する。
まず、測定する装置の駆動部(ここでは、ピストン21)の位置情報をモニタリングし(ステップT21)、駆動部の位置が特定位置であるか否かを判定する(ステップT22)。駆動部の位置が特定位置である場合に処理をステップT23に進める。

【0088】
次に、変異発生光源3が、フォトクロミック化合物の組成を変異させる変異発生光31を観察部領域内の測定したい位置に照射する(ステップT23)。
これにより、流体23の測定したい位置に溶解しているフォトクロミック化合物が特定の波長領域の光を吸収する組成に変異する(ステップT24)。

【0089】
図11を参照して、比較画像撮影工程(ステップT5)について説明する。
まず、可視化装置10の制御部16は、事前に設定した「測定する装置の駆動部(ここでは、ピストン21)の動作単位」で照明光源5が光を照射するための信号を送信する(ステップT31)。そして、照明光源5は、信号を受信した場合に、(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、および(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の光を含む照明光32を観察部全体に照射する(ステップT32)。これにより、第1の照明光および第2の照明光は、撮影位置にあるピストン21に同時に照射される。

【0090】
次に、分離手段6は、観察部全体から反射してくる反射光33を(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域、(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の2種類の波長領域に分光する(ステップT33)。

【0091】
次に、分光した波長領域のうちの(1)変異したフォトクロミック化合物が吸収する第1の波長領域の第1の反射光351を用いて観察部全体を画像化し、比較画像としての第1画像B11を得る(ステップT34)。
また、分光した波長領域のうちの(2)変異したフォトクロミック化合物が全くまたは殆ど吸収しない第2の波長領域の第2の反射光352を用いて観察部全体を画像化し、比較画像としての第2画像C11を得る(ステップT35)。

【0092】
次に、可視化装置10は、「装置の駆動部の運動回数情報および位置情報」と、「画像化した第1画像B11および第2画像C11」とを対応付けて記憶部であるイメージメモリ111,112に記憶する(ステップT36)。なお、運動回数情報と位置情報との組合せは、時刻情報の一例である。そして、測定を完了するか否かを判定する(ステップT37)。測定を完了する場合に本工程を終了する。一方、引き続き第1画像B11および第2画像C11を取得する場合に、ステップT31~T36の処理を時間の経過と共に繰り返し行う。これにより、時系列の第1画像B11および第2画像C11が得られる。

【0093】
図12を参照して、画像処理工程(ステップT6)について説明する。
まず、記憶部に記憶されている基準画像(第1画像B10、第2画像C10)および比較画像(第1画像B11、第2画像C11)のうち、装置の駆動部の位置情報が同じである基準画像(第1画像B10、第2画像C10)および比較画像(第1画像B11、第2画像C11)を抽出する(ステップT41)。
次に、抽出した基準画像(第1画像B10、第2画像C10)および比較画像(第1画像B11、第2画像C11)の同じ位置にある画素の輝度値を使って、画素毎に吸光度Aを算出して第3画像Dを得る(ステップT42)。そして、生成した第3画像Dを画像処理手段12内の図示しない記憶部に記憶する(ステップT43)。

【0094】
以上のように、本実施形態に係る流体の流れ可視化システム1は、光の吸収量が変化する第1の波長領域を用いて流体23の第1画像Bを撮影し、また、光の吸収量が全くまたは殆ど変化しない波長領域を用いて流体23の第2画像Cを撮影する。
第1の波長領域は、変異発生光31によって変異したフォトクロミック化合物の光の吸収量が変化する領域なので、時間経過と共に撮影された第1画像Bには流体内の変異フォトクロミック化合物の各時刻における分布が写し出される。ここで、流体の状況(例えば、油膜厚さ)が変化した場合に、第1画像Bに写し出される変異フォトクロミック化合物の分布には、流体23の状況の変化の影響が反映される。
第2の波長領域は変異発生光31によって変異したフォトクロミック化合物の光の吸収量が全くまたは殆ど変化しない領域なので、時間経過と共に撮影された第2画像Cには各時刻における流体23の状況が写し出される。

【0095】
そして、可視化システム1は、変異発生光31を照射する前の流体23を撮影した第1画像B10および第2画像C10と、変異発生光31を照射した後の流体を撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用い、これらの画像の比を取ってから対数を算出し、これらの差分を算出することで第3画像Dを生成する。
ここで、第1の波長領域の光、第2の波長領域の光によって反射率が異なる部分がある場合(例えば、エッジ部)や、2つの光源を使う等によって第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の強度分布が異なる場合(例えば、第1画像上部が明るく、第2画像下部が明るい等の場合)であっても、変異発生光を照射する前の第1画像B10と変異発生光を照射した後の第1画像B11および変異発生光を照射する前の第2画像C10と変異発生光を照射した後の第2画像C11には、ほぼ同じ状態の第1の波長領域の光および第2の波長領域の光によって流体の状況が写し出される。
その為、第3画像Dには、装置の汚れや傷等による変色の影響の軽減だけではなく、第1の波長領域の光、第2の波長領域の光の波長の違いによって反射率が異なる部分や、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の強度分布が異なることによって生ずる光による様々なノイズが同時に低減され、着色された変異フォトクロミック化合物の分布の変化がより鮮明に写し出される。これにより、本実施形態に係る流体の流れ可視化システム1は、動く物体中や変化する場のような流体の状況が変化し易い測定環境でも、流体23の流れをより鮮明に可視化することができる。

【0096】
なお、従来技術では、白色光を用いて流体の撮影を行っていた。ここで、白色光で撮影した画像には、流体内の変異フォトクロミック化合物の各時刻における分布と、流体の状況の変化の影響とが反映されている。その為、白色光で撮影した画像から演算した吸光度は、変異フォトクロミック化合物の分布の変化のみならず流体の状況の変化の影響を受けることになる。したがって、従来技術では、動く物体中や変化する場のような流体の状況が変化し易い測定環境において、流れを鮮明に可視化することが難しかった。

【0097】
本実施形態に係る可視化システム1により生成した第3画像Dの具体例を図13に示す。図13に示す第3画像Dは、図1に示すピストン21を静止している状態で、流体23を時間経過と共に撮影した画像から生成したものである。
ここでは、フォトクロミック化合物として、スピロピラン系の1,3,3-Trimethylindolino-6'-nitrobenzopyrylospiran(東京化成工業株式会社,製品コード:T0366)を使用し、流体23としてエステルオイルを使用した。
また、フォトクロミック化合物にフォトクロミズムを生じさせる変異発生光31として紫外光を使用し、変異発生光源3としては窒素レーザー(波長337nm)又はYAGレーザー(波長1064nmの第三高調波355nm)を使用した。

【0098】
図13(a)は変異発生光31を照射した直後(0秒)の第3画像Dを示し、(b)は10秒後の第3画像Dを示し、(c)は20秒後の第3画像Dを示し、(d)は30秒後の第3画像Dを示す。図13では、吸光度を濃淡で表しており、色が濃いほど吸光度が高くなっている。
第3画像Dには流体の状況の変化の影響を低減した変異フォトクロミック化合物の分布の変化が写し出されるので、図13に示すように、変異発生光31を照射された部分(吸光度が高い部分)が時間経過と共に図面下側に移動しているのが鮮明に分かる。

【0099】
[第2実施形態]
≪流体の流体厚さ測定システムの構成≫
流体の流体厚さ測定システム(以下では単に「厚さ測定システム」)は、測定対象である流体の厚さを測定するシステムであり、例えばピストン、シリンダ、すべり軸受などのすべり面である動く物体中で使用される潤滑剤の厚さ(油膜厚さ)を測定する。なお、厚さ測定システムは、流体の計測システムの一例である。

【0100】
図14に示すように、本実施形態に係る厚さ測定システム1xは、位置発信手段2と、変異発生光源3と、ミラー4と、照明光源5と、分離手段6と、一組のCCDカメラ91,92と、流体の流体厚さ測定装置10x(以下では単に「厚さ測定装置10x」)とを備えて構成される。ここで、第1実施形態に係る可視化システム1(図1参照)と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下では主に機能の異なる構成要素について説明する。なお、流体23には、第1実施形態と同様に、図示しないフォトクロミック化合物が溶解されている。

【0101】
厚さ測定装置10xは、一組のイメージメモリ111,112と、流体厚さ算出手段12xと、表示部15と、制御部16とを備えて構成される。流体厚さ算出手段12xは、さらに吸光度演算部13と、流体厚さ演算部14xとを備えて構成される。なお、厚さ測定装置10xは、流体の計測装置の一例である。

【0102】
CCDカメラ91,92は、流体23の撮影画像を生成する装置である。
CCDカメラ91は、バンドパスフィルタ81を通過した第1の反射光351(例えば、波長が490~540nm周辺の光)により流体23の第1画像Bを生成する。ここでの第1画像Bには、変異発生光31を照射する前のものと変異発生光31を照射した後のものとが含まれる。以下では、第1実施形態と同様に、変異発生光31を照射する前のものを「第1画像B10」で表し、変異発生光31を照射した後のものを「第1画像B11」で表す場合がある。
CCDカメラ92は、バンドパスフィルタ82を通過した第2の反射光352(例えば、波長が580~680nm周辺の光)により流体23の第2画像Cを生成する。ここでの第2画像Cには、変異発生光31を照射する前のものと変異発生光31を照射した後のものとが含まれる。以下では、第1実施形態と同様に、変異発生光31を照射する前のものを「第2画像C10」で表し、変異発生光31を照射した後のものを「第2画像C11」で表す場合がある。

【0103】
厚さ測定装置10xは、CCDカメラ91,92によって生成された第1画像B及び第2画像Cから流体23の厚さを測定する装置である。
イメージメモリ(IM)111,112は、CCDカメラ91,92によって生成された撮影画像を記憶する装置である。イメージメモリ111にはCCDカメラ91によって生成された第1画像Bが記憶され、イメージメモリ112にはCCDカメラ92によって生成された第2画像Cが記憶される。イメージメモリ111,112は、「第1画像記憶手段」、「第2画像記憶手段」の一例である。なお、イメージメモリ111,112は、一つの装置であってもよく、その場合には一つのイメージメモリ11に第1画像Bおよび第2画像Cが記憶される。

【0104】
バンドパスフィルタ81を通過した第1の反射光351は、第1の波長領域の光なので、特定の時刻に撮影された第1画像Bには流体23内の変異フォトクロミック化合物の特定の時刻における分布が写し出される。ここで、流体23の状況(例えば、油膜厚さ)が変化した場合に、第1画像Bに写し出される変異フォトクロミック化合物の分布には、流体の状況の変化の影響が反映される。一方、バンドパスフィルタ82を通過した第2の反射光352は、第2の波長領域の光なので、特定の時刻に撮影された第2画像Cには特定の時刻における流体23の状況が写し出される。

【0105】
流体厚さ算出手段12xは、イメージメモリ111,112から第1画像B及び第2画像Cを取得し、取得した第1画像B及び第2画像Cを用いて流体23の厚さl(ここでは、油膜厚さ)を算出する。流体厚さ算出手段12xは、吸光度演算部13と、流体厚さ演算部14xとを備えて構成される。流体厚さ算出手段12xは、例えばCPU(Central Processing Unit)によるプログラム実行処理や、専用回路等により実現される。

【0106】
吸光度演算部13の機能は、第1実施形態と同様である。つまり、吸光度演算部13は、変異発生光31を照射する前の流体23を撮影した第1画像B10および第2画像C10と、変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用い、これらの画像の比を取ってから対数を算出し、これらの差分を算出することで吸光度を算出する。
例えば、変異発生光31を照射する前の第1画像B10を構成する画素の光強度を「I10」とし、変異発生光31を照射する前の第2画像C10を構成する画素の光強度を「I20」と定義する。また、変異発生光31を照射した後の第1画像B11を構成する画素の光強度を「I11」とし、変異発生光31を照射した後の第2画像C11を構成する画素の光強度を「I21」と定義する。
この場合に、吸光度演算部13は、次式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算する。なお、LOGは常用対数である。
A=-LOG(I11/I21)-(-LOG(I10/I20))・・・式(2)
=-LOG((I11/I21)/(I10/I20)) ・・・式(2)

【0107】
流体厚さ演算部14xは、吸光度演算部13により算出された吸光度Aに基づいて流体23の厚さlを算出する。例えば、フォトクロミック化合物を溶解した後の流体23の吸光係数を「μ」と定義する。
この場合に、流体厚さ演算部14xは、次式(4)を用いて測定対象部分の画素における流体23の厚さlを計算する。
l=A/μ ・・・式(4)

【0108】
表示部15は、流体厚さ演算部14xにより計算された流体23の厚さlを表示する。なお、表示部15は、第1実施形態と同様に、第3画像Dを併せて表示してもよい。つまり、流体厚さ算出手段12xは、第1実施形態で説明した2次元パターン化部14の機能を備え、表示部15は、2次元パターン化部14により生成された第3画像Dを流体23の厚さlとともに表示してもよい。また、嵌合部材22bから確認できる流体23全体に変異発生光31を照射した場合は、第3画像Dを構成している吸光度Aを、式(4)を用いて流体23の厚さlに変換することで、流体23の厚さlの分布として表示してもよい。

【0109】
前記式(4)についてさらに詳しく説明する。
本発明の発明者は、実験を行うことにより吸光度が流体厚さに比例し、吸光度と流体厚さとの関係を前記式(4)で表すことができることを確認した。実験の様子を図15に示す。流体厚さと吸光度との関係を調べるためには、既知の厚さの流体を用意する必要がある。そこで、図15に示すように、金属球61と平板状のガラス62とを接触させ、その間を流体である試験溶液63で満たすことで既知の厚さを作り出した。つまり、試験溶液63の厚さは、金属球61と平板状のガラス62との距離mであるので、金属球61の直径が分かれば、金属球61と平板状のガラス62との接触点61aからの距離からそれぞれの場所における流体厚さを計算できる。実験で使用した金属球61の直径は「100mm」である。試験溶液63としてはエステルオイルを使用し、試験溶液63にはスピロピラン系のフォトクロミック化合物が溶解されている。試験溶液63の質量パーセント濃度は、「0.4mass%」とした。なお、金属球61は、移動しないように設置台64に固定されている。

【0110】
次に、窒素レーザーに波長が近い紫外光LEDランプ(図示せず)を用いて、符号65で示す方向から試験溶液63に光を十分に照射する。実験で使用した紫外光LEDランプが発する光の波長は、「340nm」である。これにより、試験溶液63に溶解されるフォトクロミック化合物の色素の分子構造は変異し、試験溶液63は全体が着色される。ここで、試験溶液63は、完全に着色している必要があり、変異していない箇所が部分的に残っている場合には、流体厚さと吸光度との関係を調べることができない。そして、図14で示したのと同様に、分離手段6を用いて符号65で示す方向から撮影を行い、前記した式(2)を用いて各画素における吸光度Aを計算する。実験結果を図16に示す。図16に示すように、流体厚さ(ここでは、「油膜厚さ」と表示)に対して吸光度が線形に高くなっているのが分かる。この実験では、フォトクロミック化合物を溶解させた試験溶液63の吸光係数μが線形近似線より「0.03」程度であることが確認された。なお、吸光係数μは、試験溶液63およびフォトクロミック化合物の種類や質量パーセント濃度などにより決まる。当該実験で求めた吸光係数μを用いて算出した試験溶液63の厚さの分布を図17に示す。図17における中心は、金属球61と平板状のガラス62との接触点61a(図15参照)である。図17に示すように、接触点61aから離れるにつれて試験溶液63の厚さが大きくなるのが明確に分かる。

【0111】
≪流体の流体厚さ測定システムの動作≫
次に、図18を参照して(適宜、図14参照)、本実施形態の厚さ測定システム1xの動作について説明する。ここでは、駆動部であるピストン21が静止している状態の流体23を開口部22aを通して撮影し、流体23の厚さを測定する場合を説明する。なお、ここで説明する厚さ測定システム1xの動作は、流体の計測方法の一例である。

【0112】
図18は、厚さ測定システム1xの全体動作を示すフローチャートである。図18に示すように、厚さ測定システム1xの全体動作は、ステップS1~ステップS7xからなり、このうちのステップS1,S2,S3,S5は、第1実施形態におけるピストン21が静止している場合の動作(図3参照)と同様である。以下では、処理の異なる工程(ステップS4x,S6x,S7x)について主に説明する。なお、ステップS1,S2は、特許請求の範囲の「準備工程」である。また、ステップS3は、特許請求の範囲の「変異前画像撮影工程」である。また、ステップS4xは、特許請求の範囲の「変異発生光照射工程」である。また、ステップS5は、特許請求の範囲の「変異後画像撮影工程」である。

【0113】
図19を参照して、フォトクロミズム発生工程(ステップS4x)について説明する。
本工程では、変異発生光源3が、フォトクロミック化合物の組成を変異させる変異発生光31を観察部領域内の測定したい位置に十分に照射する(ステップS21x)。変異発生光31を十分に照射とは、流体23の表面のみならず厚さ方向に対して深くまで変異発生光31が届くことを意味する。
これにより、流体23の測定したい位置に溶解しているフォトクロミック化合物が特定の波長領域の光を吸収する組成に完全に変異する(ステップS22x)。フォトクロミック化合物が完全に変異とは、流体23の厚さ方向において変異していない箇所が部分的に残っていないことを意味する。

【0114】
図20を参照して、流体厚さ算出工程(ステップS6x)について説明する。
本工程では、記憶部に記憶されている基準画像(第1画像B10、第2画像C10)および比較画像(第1画像B11、第2画像C11)の同じ位置にある画素の輝度値を使って吸光度Aを算出する(ステップS41x)。
また、本工程では、予め確認しておいた流体23の吸光係数μと算出した吸光度Aとを用いて流体23の厚さlを算出する(ステップS42x)。そして、計算した流体23の厚さlを表示部15に表示する(図18のステップS7x)。

【0115】
以上説明した第2実施形態に係る厚さ測定システム1xによっても、第2実施形態と略同等の効果を奏することができる。つまり、第1画像Bおよび第2画像Cを用いて算出した流体厚さlは、様々なノイズの影響が低減されることにより正確な値となる。

【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。

【0117】
第1実施形態では、画像処理手段12は、イメージメモリ111,112から第1画像B及び第2画像Cを取得し、取得した第1画像B及び第2画像Cを用いて画像処理を行い、第3画像Dを新たに生成していた。具体的には、画像処理手段12は、変異発生光31を照射する前の流体23を撮影した第1画像B10および第2画像C10と、変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用い、これらの画像の比を取ってから対数を算出し、これらの差分を算出することで吸光度を算出し、計算された各画素の吸光度を2次元パターン化していた。
しかしながら、画像処理手段12は、イメージメモリ111から変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11を取得し、第1画像B11を表示部15に表示するようにしてもよい。この第1画像B11には、流体23内の変異フォトクロミック化合物の各時刻における分布が鮮明に写し出されるので、本実施形態の第3画像Dには及ばないまでも、動く物体中、変化する場のような測定環境でも測定対象物を鮮明に可視化することができる。

【0118】
また、画像処理手段12は、イメージメモリ111から変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11を取得し、また、イメージメモリ112から変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第2画像C11を取得し、これらの画像から第3画像Dを生成してもよい。
この場合、画像処理手段12は、次式(1)を用いて各画素における吸光度A1を計算し、各画素の計算結果を2次元パターン化することで第3画像Dを生成する。ここで、「I11」は、変異発生光31を照射した後の第1画像B11を構成する画素の光強度である。また、「I21」は、変異発生光31を照射した後の第2画像C11を構成する画素の光強度である。また、LOGは常用対数である。
A1=-LOG(I11/I21)・・・式(1)
同時刻の第1画像B11および第2画像C11には、同じ状態の流体表面の動き、気泡の分布等の流体の状況が写し出されるので、第1画像B11および第2画像C11を用いた第3画像Dでは、流体の表面の動き、気泡の分布等の流体の状況の変化の影響等の様々なノイズが低減され、着色された変異フォトクロミック化合物の分布の変化がより鮮明に写し出される。
なお、第1の波長領域の光、第2の波長領域の光の波長の違いによって反射率が異なる部分があったり、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の強度分布が異なる部分があったりする場合に、これらの光の影響が様々なノイズとして反映されることになる。そのため、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光の影響によって様々なノイズが発生する場合には、本実施形態で示した通り、変異発生光31を照射する前の流体23を撮影した第1画像B10および第2画像C10と、変異発生光31を照射した後の流体23を撮影した第1画像B11および第2画像C11とを用いて第3画像Dを生成するのが望ましい。

【0119】
なお、第2実施形態における流体厚さ算出手段12xについても同様であり、前記した式(1)を用いて第1画像B11及び第2画像C11から吸光度A1を計算し、また、次式(3)を用いて流体23の厚さlを計算してもよい。ここで、「μ」は、フォトクロミック化合物を溶解した後の流体23の吸光係数である。
l=A1/μ ・・・式(3)

【0120】
また、第1実施形態では、開口部22aを介して観察できる流体23は、駆動部を円滑に駆動させるための潤滑油であるため、液体膜(薄い膜)であるが、流体23の表面を可視化するのであれば、流体23は厚い液体であってもよい。つまり、観察対象である流体23の厚さは特に限定されない。
また、第1実施形態では、分離手段6は、照明光32が流体23に反射された光(厳密には流体23を透過してピストン21に反射した光)である反射光33を、第1の波長領域と第2の波長領域とに分離するが、観察部が光を透過する構造の場合(例えば、ガラスとガラスの間に流体23がある構造)は、分離手段6は、照明光32が観察部を透過してきた光である透過光を第1の波長領域と第2の波長領域に分離してもよい。つまり、分離手段6は、流体23を透過した透過光を分離するものであればよい。
また、本実施形態では、駆動部としてピストン21を想定していたが、駆動部は往復動または回転するものであればよい。つまり、駆動部は、時刻と駆動部の位置とが対応づけられるものであればよい。
【符号の説明】
【0121】
1 可視化システム(計測システム)
1x 厚さ測定システム(計測システム)
2 位置発信手段
3 変異発生光源
4 ミラー
5 照明光源(照明手段)
6 分離手段
7 イメージスプリッティングダイクロイックミラー
1,82 バンドパスフィルタ
1,92 CCDカメラ(第1撮像手段、第2撮像手段)
10 可視化装置(計測装置)
10x 厚さ測定装置(計測装置)
111,112 イメージメモリ(第1画像記憶手段、第2画像記憶手段)
12 画像処理手段
12x 流体厚さ算出手段
13 吸光度演算部
14 2次元パターン化部
14x 流体厚さ演算部
15 表示部
16 制御部
21 ピストン(駆動部)
22 シリンダ
23 流体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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