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明細書 :神経変性疾患治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月12日(2020.3.12)
発明の名称または考案の名称 神経変性疾患治療剤
国際特許分類 A61K  31/352       (2006.01)
A61P  21/04        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI A61K 31/352
A61P 21/04
A61P 25/28
国際予備審査の請求
全頁数 41
出願番号 特願2019-514545 (P2019-514545)
国際出願番号 PCT/JP2018/016668
国際公開番号 WO2018/199109
国際出願日 平成30年4月24日(2018.4.24)
国際公開日 平成30年11月1日(2018.11.1)
優先権出願番号 2017085253
優先日 平成29年4月24日(2017.4.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】足立 弘明
【氏名】▲黄▼ 哲
出願人 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
【識別番号】100201558、【弁理士】、【氏名又は名称】亀井 恵二郎
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA94
要約 以下の一般式(I)で表される化合物を含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤等を提供する:
JP2018199109A1_000022t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(I)で表される化合物を含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤:
【化1】
JP2018199109A1_000016t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項2】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項1記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項3】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項1記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項4】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、請求項2記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項5】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、請求項3記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項6】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、請求項4または5記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項7】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、請求項2記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項8】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、請求項3記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項9】
以下の一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤:
【化2】
JP2018199109A1_000017t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項10】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項9記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項11】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項9記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項12】
オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌(Shigella)からなる群から選択される、請求項10記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項13】
オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、請求項11記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
【請求項14】
以下の一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジー活性化剤:
【化3】
JP2018199109A1_000018t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項15】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項14記載の活性化剤。
【請求項16】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項14記載の活性化剤。
【請求項17】
対象に有効量の以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法:
【化4】
JP2018199109A1_000019t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項18】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項17記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項19】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項17記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項20】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、請求項18記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項21】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、請求項19記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項22】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、請求項20又は21記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項23】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、請求項20記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項24】
異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、請求項21記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項25】
対象に有効量の以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法:
【化5】
JP2018199109A1_000020t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項26】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項25記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項27】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項25記載の治療又は予防方法。
【請求項28】
オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、請求項26記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項29】
オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、請求項27記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
【請求項30】
以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、オートファジーを活性化する方法:
【化6】
JP2018199109A1_000021t.gif
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【請求項31】
一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、請求項30記載のオートファジーを活性化する方法。
【請求項32】
一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、請求項30記載のオートファジーを活性化する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤等に関し、詳細には、以下に詳述する一般式(I)で表される化合物を含む、神経変性疾患をはじめとする異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病、パーキンソン病、運動ニューロン病等の神経変性疾患は、特定の神経が変性し脱落することにより、進行性かつ難治性の認知機能障害および運動機能障害を呈する。種々の神経変性疾患に共通した病理学的特徴は、異常なタンパク質の蓄積であり、この蓄積が神経変性の中心的な病態であると考えられている。しかし、ニューロンやその周囲に蓄積した異常なタンパク質が、どのようにニューロンの機能障害や細胞死を誘導するのかについては不明な点が多く、未だに病態そのものを抑止する根本的な治療法は確立されていない。
【0003】
オートファジーは、ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)と並び、細胞内の変異タンパク質を分解する重要なシステムである(非特許文献1)。近年、オートファジーの分子メカニズムの研究が盛んに行われており、特に、オートファジーのマスターレギュレーターである転写因子TFEB(転写因子EB)やオートファジーの活性化に係る化合物に関する研究が盛んに行われている(非特許文献2)。近年、オートファジーの機能低下が、様々な神経変性疾患の病態に関与することが示唆されたことから、オートファジーは神経変性疾患の重要な治療ターゲットとしても注目されている(非特許文献3)。現状、オートファジーの活性化機序として、mTORC経路に関する知見が蓄積されつつあるものの、その全体像は依然として不明な点が数多く残されている。また、オートファジーによる病因タンパク質の選択的な分解機構の全貌は解明されておらず、かかる機構を利用した疾患の治療法は開発段階であるのが現状である。本発明者らは、これまでに生薬の有効成分(芍薬の有効成分であるペオニフロリン、大豆等の植物に多く含まれているゲニステイン)を用いたオートファジーの活性化や、その分子メカニズムに関する研究、並びに該有効成分を用いたオートファジーの活性化が、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のトランスジェニックモデルマウスにもたらす治療効果に関する研究を行ってきた(非特許文献4、5)。これらの化合物は、治療薬としての有効性を示したものの、複数の経路を介することや、その薬理効果に改善の余地があること等がわかってきた。
【0004】
ケンペロールは、茶、フルーツ、野菜、及び豆類等をはじめとする多くの植物に含まれる天然フラボノールである。ケンペロールは、抗酸化、抗炎症、抗がん、抗糖尿病、抗骨粗鬆症、及び抗アレルギー活性等の様々な薬理作用を有しており、とりわけ、強い抗酸化作用が注目されている(非特許文献6、7)。また、ケンペロールは、NADPH oxidase (NOX)への結合により、神経変性を予防し得る可能性が示唆されている(非特許文献8)。さらに、ケンペロールを含むフラボノイドが、喫煙者の膵臓癌の発症を抑制し得る可能性などが示唆されている(非特許文献9)。
【0005】
ルテオリンは、セロリ、緑ピーマン、シソ(perilla)などの多くの植物性食品に含有される天然のフラボンの一種である(非特許文献10)。ルテオリンもまた、様々な薬理作用を有することが示されており、血中コレステロール低下作用(非特許文献11)、抗酸化作用(特許文献12)、抗炎症作用(特許文献12)などが報告されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Mizushima N et al., Cell. 2011 Nov 11;147(4):728-41.
【非特許文献2】Giacomelli C et al., Biochem Pharmacol. 2017 Jan 31. pii: S0006-2952(17)30047-3.
【非特許文献3】Nah J et al., Mol Cells. 2015 May;38(5):381-9.
【非特許文献4】Tohnai G et al., Hum Mol Genet. 2014 Jul 1;23(13):3552-65.
【非特許文献5】Qiang Q et al., J Neurochem. 2013 Jul;126(1):122-30.
【非特許文献6】Boam T, Ecancermedicalscience. 2015 Oct 22;9:585.
【非特許文献7】Kim SH et al., Toxicol Res. 2013 Dec 31;29(4):229-34.
【非特許文献8】Jang YJ et al., J Pharmacol Exp Ther. 2011 Jun;337(3):747-54.
【非特許文献9】Nothlings U et al., Am J Epidemiol. 2007 Oct 15;166(8):924-31.
【非特許文献10】Shimoi K et al., FEBS Lett. 1998 Nov 6;438(3):220-4.
【非特許文献11】Li J et al., J Biol Chem. 2015 Sep 25;290(39):24021-35.
【非特許文献12】Ueda H et al., Biol Pharm Bull. 2002 Sep;25(9):1197-202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、オートファジーによる病因タンパク質の選択的な分解機構の全貌は解明されておらず、かかる機構を利用した疾患の治療法の開発は、現時点において達成されていない。そこで、本発明者らは、オートファジーを強力に促進し得る物質を特定し、かかる物質を用いて異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の新規治療剤及び/又は新規治療方法を開発することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、オートファジーをより強力に促進し得る化合物を探索する目的で、多くの化合物のスクリーニングを行なった。その結果、一般式(I)で表される化合物(即ち、ケンペロールおよびルテオリン)がオートファジーを強力に促進し得ることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]ケンペロールを含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[2]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[1]の治療又は予防剤。
[3]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[2]の治療又は予防剤。
[4]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[1]の治療又は予防剤。
[5]ケンペロールを含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
[6]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌(Shigella)からなる群から選択される、[5]の治療又は予防剤。
[7]ケンペロールを含む、オートファジー活性化剤。
[8]対象に有効量のケンペロールを投与することを含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[9]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[8]の治療又は予防方法。
[10]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[9]の治療又は予防方法。
[11]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[8]の治療又は予防方法。
[12]対象に有効量のケンペロールを投与することを含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
[13]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[12]の治療又は予防方法。
[14]ケンペロールを投与することを含む、オートファジーを活性化する方法。
【0010】
[A-1]以下の一般式(I)で表される化合物を含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤:
【0011】
【化1】
JP2018199109A1_000003t.gif

【0012】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[A-2]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-1]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-3]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-1]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-4]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[A-2]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-5]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[A-3]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-6]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[A-4]または[A-5]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-7]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[A-2]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-8]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[A-3]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-9]以下の一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤:
【0013】
【化2】
JP2018199109A1_000004t.gif

【0014】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【0015】
[A-10]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-9]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-11]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-9]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-12]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌(Shigella)からなる群から選択される、[A-10]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-13]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[A-11]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤。
[A-14]以下の一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジー活性化剤:
【0016】
【化3】
JP2018199109A1_000005t.gif

【0017】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[A-15]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-14]記載の活性化剤。
[A-16]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-15]記載の活性化剤。
[A-17]対象に有効量の以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法:
【0018】
【化4】
JP2018199109A1_000006t.gif

【0019】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[A-18]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-17]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-19]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-17]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-20]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[A-18]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-21]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[A-18]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-22]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[A-20]又は[A-21]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-23]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[A-20]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-24]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[A-21]記載の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-25]対象に有効量の以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法:
【0020】
【化5】
JP2018199109A1_000007t.gif

【0021】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[A-26]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-25]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-27]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-25]記載の治療又は予防方法。
[A-28]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[A-26]または[A-27]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-29]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[A-27]記載のオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法。
[A-30]以下の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、オートファジーを活性化する方法:
【0022】
【化6】
JP2018199109A1_000008t.gif

【0023】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[A-31]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[A-30]記載のオートファジーを活性化する方法。
[A-32]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[A-30]記載のオートファジーを活性化する方法。
[B-1]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防における使用のための以下の一般式(I)で表される化合物:
【0024】
【化7】
JP2018199109A1_000009t.gif

【0025】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[B-2]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[B-1]記載の使用のための化合物。
[B-3]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[B-1]記載の使用のための化合物。
[B-4]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[B-2]記載の使用のための化合物。
[B-5]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[B-3]記載の使用のための化合物。
[B-6]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[B-4]または[B-5]記載の使用のための化合物。
[B-7]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[B-2]記載の使用のための化合物。
[B-8]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[B-3]記載の使用のための化合物。
[B-9]オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防における使用のための以下の一般式(I)で表される化合物:
【0026】
【化8】
JP2018199109A1_000010t.gif

【0027】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【0028】
[B-10]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[B-9]記載の使用のための化合物。
[B-11]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[B-9]記載の使用のための化合物。
[B-12]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌(Shigella)からなる群から選択される、[B-10]記載の使用のための化合物。
[B-13]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[B-11]記載の使用のための化合物。
[B-14]オートファジーを活性化における使用のための、以下の一般式(I)で表される化合物:
【0029】
【化9】
JP2018199109A1_000011t.gif

【0030】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[B-15]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[B-14]記載の使用における化合物。
[B-16]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[B-15]記載の使用における化合物。
[C-1]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防用の医薬の製造における以下の一般式(I)で表される化合物の使用:
【0031】
【化10】
JP2018199109A1_000012t.gif

【0032】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[C-2]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[C-1]記載の使用。
[C-3]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[C-1]記載の使用。
[C-4]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[C-2]記載の使用。
[C-5]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が神経変性疾患である、[C-3]記載の使用。
[C-6]神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症からなる群から選択される、[C-4]または[C-5]記載の使用。
[C-7]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[C-2]記載の使用。
[C-8]異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が、クローン病、SENDA病、及びVici症候群から選択される、[C-3]記載の使用。
[C-9]オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防用の医薬の製造のための以下の一般式(I)で表される化合物の使用:
【0033】
【化11】
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【0034】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
【0035】
[C-10]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[C-9]記載の使用。
[C-11]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[C-9]記載の使用。
[C-12]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌(Shigella)からなる群から選択される、[C-10]記載の使用。
[C-13]オートファジーにより殺菌される病原体が、A群連鎖球菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、及び赤痢菌からなる群から選択される、[C-11]記載の使用。
[C-14]オートファジーを活性化用の医薬の製造のための、以下の一般式(I)で表される化合物の使用:
【0036】
【化12】
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【0037】
(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は水酸基を示す(但し、R1及びR2のいずれか一方は水酸基である))。
[C-15]一般式(I)において、R1が水酸基であり、R2が水素である、[C-14]記載の使用。
[C-16]一般式(I)において、R1が水素であり、R2が水酸基である、[C-15]記載の使用。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、オートファジーの活性化を介して、対象における異常タンパク質の蓄積を抑制することが可能となる。その結果、神経変性疾患をはじめとする異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防が可能となる。加えて、本発明によれば、オートファジーの活性化を介して、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を効率よく治療又は予防すること等もできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、ケンペロールおよびルテオリンの構造を示す図である。
【図2】図2は、ケンペロールによるオートファジーの活性化を示す図である。(A)12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞に、ケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、又は100nMのラパマイシンを投与し、24時間後に細胞を回収した。該回収した細胞をウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールの投与により、LC3-IIの発現量が用量依存的に増加した。(B)12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞に、30μMのケンペロールを投与した。2、4、6、12、24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールの投与により、時間依存的にLC3-IIの発現量が増加した。
【図3】図3は、ケンペロールによるオートファジーの促進を示す図である。mCherry-EGFP-LC3レポーターベクターを導入したHela細胞をチャンバースライド上で培養し、100nMのバフィロマイシン、又は30μMのケンペロールを投与した。ケンペロールの投与により、EGFPのシグナルが減少し、オートライソソームの形成が促進された。
【図4】図4は、ケンペロールによるオートファジー関連タンパク質のリン酸化に対する効果を示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、100nMのラパマイシンを投与し、24時間後に当該細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールは用量依存的に各タンパク質のリン酸化を抑制した。
【図5】図5は、オートファジー関連タンパク質であるBeclin1及びアダプタータンパク質であるp62の発現量に対する、ケンペロールの影響を示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞に、ケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、100nMのラパマイシンを投与した。24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールは用量依存的にBeclin1の発現量を増加させた一方で、p62の発現量を減少させた。
【図6】図6は、ケンペロールによるオートファジー活性化が、オートファジー阻害剤によって障害され得ることを示す図である。(A)~(C)12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞に、30μMのケンペロール、及び(A)100nMのバフィロマイシン、(B)20mMのNH4Cl、又は(C)50mMの3-メチルアデニン(3-MA)を投与し、24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。LC3-IIの発現量は、ケンペロールとバフィロマイシンとの同時投与、又はケンペロールとNH4Clとの同時投与では増加したが、ケンペロールと3-メチルアデニンとの同時投与では減少した。
【図7】図7は、ケンペロールによるオートファジー活性化が、オートファジー関連タンパク質又はアダプタータンパク質のノックダウンによって障害されることを示す図である。(A)及び(B)12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にAtg5-siRNA又はp62-siRNAをトランスフェクションした。48時間後に該細胞に30μMのケンペロールを投与し、投与後12時間の時点で細胞を回収した。Atg5又はp62のノックダウンは、ケンペロールによるLC3-IIの発現量の増加を抑制した。
【図8-A】図8-Aは、ケンペロールが、神経変性疾患の原因タンパク質の分解を促進することを示す図である。Huntingtin exon1(Httex1)については、12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にpHttex1-18Q-EGFP及びpHttex1-140Q-EGFPベクターをトランスフェクションした。6時間後に当該細胞に、ケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、又は100nMのラパマイシンを投与した。投与後48時間の時点で該細胞を回収した。ケンペロールは、用量依存的にハンチントン病の原因タンパク質の凝集及び発現量を減少させた。
【図8-B】図8-Bは、ケンペロールが、神経変性疾患の原因タンパク質の分解を促進することを示す図である。チャンバースライド上で培養したNeuro2a細胞にpHttex1-140Qベクターをトランスフェクションして、6時間後に30μMのケンペロールを投与した。投与後48時間の時点で該細胞を固定し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞を観察した。ケンペロール投与群と対照群において、封入体を含有する細胞数を比較した。ケンペロール投与群では、封入体を含有する細胞数が有意に減少した。
【図8-C】図8-Cは、ケンペロールが、神経変性疾患の原因タンパク質の分解を促進することを示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にpFLAG-ATXN1(ataxin1)-30Q及びpFLAG-ATXN1-150Qベクターをトランスフェクションした。6時間後に当該細胞にケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、又は100nMのラパマイシンを投与した。投与後48時間の時点で細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールは用量依存的にataxin1タンパク質の発現量を減少させた。
【図8-D】図8-Dは、ケンペロールが、神経変性疾患の原因タンパク質の分解を促進することを示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にpAR(androgen receptor)-20Q-FLAG及びpAR-113Q-FLAGベクターをトランスフェクションした。6時間後に、当該細胞にケンペロール(0、5、15、30μM)、100nMのバフィロマイシン、又は、100nMのラパマイシンを投与した。投与後48時間の時点で細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ケンペロールは用量依存的にandrogen receptorの発現量を減少させた。
【図9-A】図9-Aは、ケンペロールによるARタンパク質の分解促進が、オートファジー阻害剤によって抑制され得ることを示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にpcDNA3.1-AR-20QとpcDNA3.1-AR-113Qベクターをトランスフェクションした。12時間後に当該細胞に30μMのケンペロールと50mMの3-メチルアデニン(3-MA)を同時に投与した。投与後12時間の時点で該細胞を回収した。ケンペロールによるARタンパク質の分解促進作用は、3-メチルアデニンによって抑制された。
【図9-B】図9-Bは、ケンペロールによるataxin1タンパク質の分解促進が、オートファジー阻害剤によって抑制され得ることを示す図である。12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞にpFLAG-ATXN1-2QとFLAG-ATXN1-84Qベクターをトランスフェクションした。12時間後に当該細胞に30μMのケンペロールと50mMの3-メチルアデニン(3-MA)を同時に投与した。投与後12時間の時点で該細胞を回収した。ケンペロールによるataxin1タンパク質の分解促進作用は、3-メチルアデニンによって抑制された。
【図10】図10は、ルテオリンによるオートファジーの活性化を示す図である。(A)12-wellプレートで培養したNeuro2aにルテオリン(0、5、15、30μM)を投与し、24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。ルテオリンの投与により、用量依存的に、LC3-IIの発現量が増加し、p62の発現量は減少した。この結果は、ルテオリンは用量依存的にオートファジーを亢進させることを示す。(B)および(C)12-well プレートで培養したNeuro2aに30μMのルテオリンと50nMのバフィロマイシンA1または20mMのNH4Clを投与し、24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。LC3-IIの発現量はルテオリン単独投与に比して、バフィロマイシンA1またはNH4Clと、ルテオリンとの同時投与のほうが増加した。p62の発現量はバフィロマイシンA1またはNH4Clの投与によって増加したが、ルテオリン投与によってp62の発現量の増加が抑制されることが分かる。これらの結果はルテオリンの投与によってオートファジーfluxが亢進されることを示す。
【図11】図11は、ルテオリンが神経変性疾患の原因遺伝子のタンパク質の分解を促進することを示す図である。(A)12-wellプレートで培養したNeuro2aに、pHttex1-18Q-EGFP及びpHttex1-140Q-EGFPベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。この結果は、ルテオリンは、用量依存的にハンチンチンタンパク質の発現量を減少させることを示す。(B)12-wellプレートで培養したNeuro2aにpFLAG-ATXN1-30Q及びpFLAG-ATXN1-150Qベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。この結果は、ルテオリンは用量依存的にataxin1タンパク質の発現量を減少させることを示す。(C)12-wellプレートで培養したNeuro2aにpAR-20Q-FLAG及びpAR-76Q-FLAGベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。この結果は、ルテオリンは用量依存的にARタンパク質の発現量を減少させることが示す。(D)12-wellプレートで培養したNeuro2aにpFLAG-ATN1-19Q及びpFLAG-ATN1-81Qベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。この結果は、ルテオリンは用量依存的にAtrophin1タンパク質の発現量を減少させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0041】
本発明は、一般式(I)で表される化合物を含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤(以下、単に「本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤」と称する場合がある)を提供する。本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤を対象に投与することにより、該対象のオートファジーが活性化され、これにより異常タンパク質を選択的且つ効率よく除去することができる。結果として、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を治療又は予防することができる。

【0042】
「オートファジー」とは、細胞質成分、不要となったオルガネラや外因性の病原体等をリソソームにおいて分解する生物学的機構の総称である。オートファジーにはこれまでに、マクロオートファジー、ミクロオートファジー、及びシャペロン介在性オートファジーの存在が報告されている。本明細書において単に「オートファジー」と記載する場合は、「マクロオートファジー」を意味するものとする。

【0043】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤に用いられる以下の一般式(I)で表される化合物は、具体的には、ケンペロール(R1が水酸基、R2が水素の場合)またはルテオリン(R1が水素、R2が水酸基の場合)である。

【0044】
【化13】
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【0045】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤に用いられるケンペロール(CAS登録番号:520-18-3)は、自体公知の方法により合成又は抽出することができるほか、市販されているものを使用することもできる。また、本発明に用いられるケンペロールは、その医薬上許容される塩等であってもよい。

【0046】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤に用いられるルテオリン(CAS登録番号:491-70-3)は、自体公知の方法により合成又は抽出することができるほか、市販されているものを使用することもできる。また、本発明に用いられるルテオリンは、その医薬上許容される塩等であってもよい。

【0047】
本明細書における「異常タンパク質」とは、遺伝子変異や化学修飾等に起因する立体構造変化等により本来の生物学的機能が失われ、低減し、亢進し、又は変化した結果、疾患の原因となり得るタンパク質を意味する。かかる異常タンパク質をもたらす一因である遺伝子変異の具体例としては、例えば、ハンチントン病の原因遺伝子であるhuntingtin遺伝子における変異が挙げられる。huntingtin遺伝子の第1エクソンには、CAGの繰り返し配列が存在するが、非病原性のhuntingtin遺伝子は11~34コピーのCAGの繰り返し配列を有する一方で、病原性のhuntingtin遺伝子は、37~876コピーのCAGの繰り返し配列を有する遺伝子へと変異している。

【0048】
本明細書における「異常タンパク質の蓄積に起因する疾患」は、疾患の原因となる異常タンパク質の蓄積がオートファジーにより抑制され得る疾患であれば特に限定されない。一態様において、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患は、神経変性疾患であり得る。本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤を用いて治療又は予防され得る神経変性疾患には、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、多系統萎縮症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性進行性筋萎縮症、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、海馬硬化症、進行性ミオクローヌスてんかん、及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症が含まれるが、これらに限定されない。

【0049】
また、一態様において、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤が適用され得る疾患には、オートファジー活性の低下に特に依存する異常タンパク質の蓄積に起因する疾患が含まれ得る。このような疾患には、例えば、クローン病、SENDA病、及びVici症候群等が含まれるが、これらに限定されない。

【0050】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤の有効成分として配合される一般式(I)で表される化合物の量の下限値としては、所望の効果を得られる限り特に限定されず、通常0.01重量%以上とすることができ、好ましくは、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、又は5重量%以上とすることができる。また、一般式(I)で表される化合物の配合量の上限としては、通常99.99重量%以下とすることができるが、コスト等の観点から、好ましくは、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下とすることができる。

【0051】
また、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤は、一般式(I)で表される化合物と医薬上許容される担体とを含む製剤として調製され得る。一般的に、医薬上許容される担体には、一般式(I)で表される化合物とは反応しない、無毒の増量剤、希釈剤、又はカプセル化材料等が含まれる。医薬上許容される担体の具体例としては、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、又は液体ポリエチレングリコール等)、それらの混合物、又は、植物性油等の溶媒等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0052】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤は、経口、又は非経口ルートにより投与することができる。経口投与における剤型としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、及び吸入剤等の剤型を採用し得る。また、非経口投与としては、例えば、経皮投与、皮下投与、粘膜投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、膣内投与、経肺投与、脳内投与、経眼投与、又は、鼻腔内投与が用いられ得る。また、非経口投与時の剤型としては、例えば、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤、及び貼付剤等の剤型へと調製し得る。

【0053】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤は、さらに医薬分野において慣用される添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、及び矯味剤等が含まれ、これらを必要に応じて単独で、又は組み合わせて使用できる。例えば、薬理作用を長時間持続させる目的で本発明の剤を徐放化する場合、既知の放出遅延剤等で本発明の剤をコーティングすることもできる。使用し得る賦形剤には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、及びリン酸水素カルシウム等が含まれ得る。結合剤には、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エタノール、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルピロリドン等が含まれ得る。崩壊剤には、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、及び、ヒドロキシプロピルスターチ等が含まれ得る。滑沢剤には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、及びロウ類等が含まれ得る。抗酸化剤には、例えば、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及び、アスコルビン酸等が含まれ得る。必要に応じて、その他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、及び胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、及び銅クロロフィリンナトリウム)等を加えてもよい。

【0054】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤を適用する対象としては、オートファジーを備え、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患に罹患し得る生物であれば特に限定されないが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、及びヒト等の哺乳動物が好ましく、サル及びヒト等の霊長類がより好ましく、ヒトが最も好ましい。

【0055】
なお、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤は、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患に罹患している対象だけでなく、遺伝的バックグラウンド解析等に基づき、将来的に異常タンパク質の蓄積に起因する疾患に罹患する可能性を有する対象に対して、予防的観点において投与することもできる。

【0056】
或いは、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤の投与対象には、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を罹患しており、且つ、何らかの原因により、オートファジー活性が低下している対象が含まれる。オートファジー活性の低下を引き起こす原因は、特に限定されないが、例えば、オートファジー活性は、加齢に伴い低下することが知られている。従って、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を罹患しており、且つ、加齢によりオートファジー活性が低下している対象が、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤の投与対象に含まれ得る。また、直接的又は間接的にオートファジーに関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異により、翻訳されるタンパク質の生物学的機能が、正常なタンパク質と比較して減弱している場合においても、オートファジー活性は低下し得る。従って、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を罹患しており、且つ、オートファジー関連遺伝子に変異等を有する対象も、投与対象に含まれ得る。さらに、オートファジー活性は、がん、肥満、高血糖、感染症、炎症性腸疾患等によっても低下することがあるため、がん、肥満、高血糖、感染症、炎症性腸疾患等を有する対象もまた投与対象に含まれ得る。

【0057】
本明細書において、「オートファジー活性が低下している対象」とは、正常な個体が有するオートファジー活性レベルと比較して、低いオートファジー活性レベルを有する対象を意味する。より具体的には、基準となる正常な個体の活性レベルに対して、少なくとも95%以下、好ましくは、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下のオートファジー活性レベルを有する対象を意味する。

【0058】
なお、対象におけるオートファジー活性レベルは、自体公知の方法を用いて容易に測定することができる。例えば、蛍光タンパク質をプローブとして用いたオートファジー活性測定方法(Kaizuka T et al. Mol Cell. 2016 Nov 17;64(4):835-849.)等が挙げられる。本測定方法では、LC3に緑色蛍光タンパク質(GFP)と赤色蛍光タンパク質(RFP)を融合させたGFP-LC3-RFP-LC3ΔGが蛍光プローブとして用いられる。本プローブは、細胞内で合成されると直ちにATG4タンパク質によって切断され、GFP-LC3とRFP-LC3ΔGを1対1の量比で生成する。GFP-LC3は、細胞質中では緑色の蛍光を発する。また、GFP-LC3は、オートファゴソーム膜に局在する。その後、GFP-LC3が局在するオートファゴソーム膜は、リソソームに運ばれ、分解される。これにより、GFP-LC3に起因する緑色の蛍光は消失する。一方で、RFP-LC3ΔGは細胞質中で赤色の蛍光を発する。RFP-LC3ΔGは、LC-3の末端におけるグリシンを欠くためオートファゴソーム膜へ局在することができない。従って、RFP-LC3ΔGは細胞内に留まることから、内部標準として利用される。GFPとRFPの蛍光強度の比を求めることで、オートファジー活性を評価できる。GFP/RFP比が低いほど、オートファジー活性が高いことが示され、GFP/RFP比が高いほど、オートファジー活性が低いことが示される。なお、GFP-LC3-RFP-LC3ΔG融合タンパク質を細胞内で発現させ得る組換えベクターは自体公知の方法により作製し得るほか、市販されているものを用いてもよい。市販されているベクターとしては、Addgene社より販売されているpMRX-IP-GFP-LC3-RFP-LC3ΔG(Plasmid #84572)等が挙げられるが、これに限定されない。また、これ以外にも、次のような方法によっても対象におけるオートファジー活性を測定することができる。例えば、対象より採取した細胞又は組織片や、培養細胞などの生物学的試料に対して、LC3抗体及びp62抗体を用いたwestern blot assay法を実施する。対照のレベルと比較して、LC3-IIタンパク質の発現量が増加し、且つ、p62タンパク質の発現量が減少している場合に、オートファジー活性が高いことが示される。なお、本方法に用いる各抗体は、市販されているものを用いることができる。

【0059】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤の投与対象への投与量は、適用対象の生物種、年齢、性別、体重、投与経路、投与間隔、及び症状等により適宜変更され得るが、当業者であれば有効な投与量を適宜設定することができる。

【0060】
本明細書における「治療」との用語には、疾患の治癒に加えて、疾患の寛解も含まれ得る。また、本明細書における「予防」との用語には、疾患の発症を防ぐことに加えて、疾患の発症を遅らせることも含まれ得る。

【0061】
また、別態様において、本発明は、一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防剤(以下、単に「本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防剤」と称する場合がある)を提供する。本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防剤は、対象におけるオートファジーを活性化することにより、オートファジーにより殺菌され得る病原体により引き起こされる疾患を治療又は予防することができる。

【0062】
本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防剤に用いられる一般式(I)で表される化合物、その配合量、剤型、投与経路、投与量、医薬上許容される担体及び添加剤等については、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤において説明したものと同様である。

【0063】
また、本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防剤の投与対象には、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患に罹患している対象のみならず、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を罹患しており、且つ、何らかの原因により、オートファジー活性が低下している対象が含まれ得る。従って、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を罹患しており、且つ、加齢によりオートファジー活性が低下している対象やオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を罹患しており、且つ、オートファジー関連遺伝子に変異等を有する対象等も、投与対象に含まれ得る。

【0064】
本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防剤により治療又は予防され得る疾患は、オートファジーにより殺菌され得る病原体に起因する疾患であれば特に限定されない。オートファジーにより殺菌され得る病原体には、例えば、細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫等が含まれ得るが、これらに限定されない。かかる病原体には、A群溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び赤痢菌(Shigella)等が含まれるが、これらに限定されない。

【0065】
また別態様において、本発明は、一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジー活性化剤(以下、単に「本発明のオートファジー活性化剤」と称する場合がある)を提供する。本発明のオートファジー活性化剤を、対象や培養細胞等に投与又は添加することにより、該対象又は培養細胞等のオートファジーを活性化させることができる。

【0066】
本発明のオートファジー活性化剤は、ケンペロール一般式(I)で表される化合物を配合させることにより容易に調製され得る。本発明のオートファジー活性化剤の形態は、所望の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、液体状、ペースト状、及び固体状等の形態であり得る。本発明のオートファジー活性化剤は、ケンペロール一般式(I)で表される化合物の他、必要に応じてその他の成分を配合してもよい。本発明のオートファジー活性化剤を、飲食品に添加することにより、オートファジー活性を促進用の健康食品又は機能性食品等を調製してもよい。また、本発明のオートファジー活性化剤を、オートファジー研究用試薬として、実験動物又は培養細胞等に投与又は添加することもできる。本発明のオートファジー活性化剤は、疾患に罹患している対象及び疾患に罹患していない対象のいずれにも投与し得る。

【0067】
本発明のオートファジー活性化剤の有効成分として配合される一般式(I)で表される化合物の配合量の下限としては、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常0.01重量%以上とすることができ、好ましくは、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、又は5重量%以上とすることができる。また、一般式(I)で表される化合物の配合量の上限としては、通常99.99重量%以下とすることができ、コスト等の観点から、好ましくは、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下とすることができる。

【0068】
また別態様において、本発明は、一般式(I)で表される化合物を含む、オートファジーを促進するための食品組成物(以下、単に「本発明の食品組成物」と称する場合がある)を提供する。本発明の食品組成物は、それを摂食した対象におけるオートファジー活性を促進することができる。

【0069】
本発明の食品組成物に含有される一般式(I)で表される化合物の量の下限としては、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常0.01重量%以上とすることができ、好ましくは、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、又は5重量%以上とすることができる。また、一般式(I)で表される化合物の含有量の上限としては、通常99.99重量%以下とすることができるが、コスト等の観点から、好ましくは、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下とすることができる。

【0070】
本明細書における食品組成物の形態は、所望の効果が得られる限り特に限定されず、固体状、液体状、ゲル状、ペースト状等のいかなる形態であってもよい。換言すれば、本明細書における「食品組成物」との用語には、飲料やヨーグルト等の固体状ではない飲食品も含まれ得る。なお、上述した通り、茶、フルーツ、野菜、及び豆類等をはじめとする多くの植物に含まれることから、それらの濃縮物や抽出物を配合した食品組成物であって、上記有効量の一般式(I)で表される化合物を含有するものも、本発明の食品組成物に含まれ得る。

【0071】
本明細書において、「治療又は予防剤」及び「活性化剤」との用語は、それぞれ、「治療又は予防用組成物」及び「活性化用組成物」とも言い換えられる。

【0072】
また、別態様において、本発明は、対象に有効量の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法(以下、単に「本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法」と称する場合がある)を提供する。

【0073】
本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法に用いられる一般式(I)で表される化合物、投与経路、及び投与対象等については、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤において説明したものと同様である。

【0074】
対象に投与され得る一般式(I)で表される化合物の治療又は予防有効量は、投与対象の生物種、年齢、性別、体重、投与経路、投与間隔、及び症状等により適宜変更され得るが、当業者であれば自体公知の方法を用いて一般式(I)で表される化合物の治療又は予防有効量を適宜設定することができる。

【0075】
また、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法の投与対象には、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を罹患しており、且つ、何らかの原因により、オートファジー活性が低下している対象が含まれ得る。従って、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法は、対象に有効量の一般式(I)で表される化合物を投与する前に、「オートファジー活性が低下している対象を選択するために、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患を罹患している対象のオートファジー活性レベルを測定すること」を含んでもよい。

【0076】
対象のオートファジー活性レベルを測定する手段は、本発明の異常蛋白質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤において記載した方法と同様である。

【0077】
また、別態様において、本発明は、対象に有効量の一般式(I)で表される化合物を投与することを含む、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患の治療又は予防方法(以下、単に「本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防方法」と称する場合がある)を提供する。

【0078】
本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防方法に用いられる一般式(I)で表される化合物、投与経路、及び対象等については、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤において説明したものと同様である。また、一般式(I)で表される化合物の有効量については、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防方法において説明したものと同様である。

【0079】
また、本発明の病原体に起因する疾患の治療又は予防方法を適用する対象には、対象に有効量の一般式(I)で表される化合物を投与する前に、「オートファジー活性が低下している対象を選択するために、オートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を罹患している対象のオートファジー活性レベルを測定すること」を含んでもよい。

【0080】
また、別態様において、本発明は、一般式(I)で表される化合物を投与(添加)することを含む、オートファジーを活性化する方法(以下、単に「本発明のオートファジーを活性化する方法」と称する場合がある)を提供する。

【0081】
本発明のオートファジーを活性化する方法は、オートファジーを備える生物であれば任意の生物に対して適用され得るが、上述したヒトを含む哺乳動物であることが好ましい。また、当該生物由来の細胞又は組織に適用することもできる。本発明のオートファジーを活性化する方法は、疾患に罹患している生物又は疾患に罹患していない生物のいずれにも適用し得る。投与又は添加する一般式(I)で表される化合物の量は、自体公知の方法に基づき、当業者により適宜設定され得る。

【0082】
また、別態様において、本発明は、オートファジー活性レベルを測定するための試薬と、一般式(I)で表される化合物を含む組成物を含む、キット(以下、単に「本発明のキット」と称する場合がある)を提供する。

【0083】
本発明のキットに含まれるオートファジー活性レベルを測定するための試薬としては、特に限定されないが、例えば、Addgene社から販売されている、pMRX-IP-GFP-LC3-RFP-LC3ΔG(Plasmid #84572)及びpMRX-IP-GFP-LC3-RFP(Plasmid #84573)等のオートファジー活性プローブ等を用いることができる。或いは、市販される抗LC3-II抗体及び抗p62抗体を含めてもよい。また、本発明のキットに含まれる組成物に含まれる一般式(I)で表される化合物の配合量は、本発明の異常タンパク質の蓄積に起因する疾患の治療又は予防剤において説明したものと同様とすることができる。本発明のキットは、必要に応じて、オートファジー活性レベルを測定するための試薬及び一般式(I)で表される化合物を含む組成物以外の構成要素を含めてもよい。

【0084】
本発明のキットは、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患又はオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患を治療又は予防するために用いられ得る。或いは、オートファジー研究用キットとして用いることもできる。

【0085】
本発明のキットを用いれば、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患又はオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患に罹患する対象であって、且つ、何らかの原因によりオートファジー活性が低下している対象を効率よく治療することができる。

【0086】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0087】
(1)試薬及び抗体
ケンペロール(11852)はCayman Chemical社から購入した。ルテオリン(0004161)は、Cayman Chemical社から購入した。バフィロマイシンA1(B1793)、ラパマイシン(R0395)、及び3-メチルアデニン(M9281)は、シグマアルドリッチ社から購入した。抗-AR抗体(sc-816)、抗-Ataxin-1抗体(sc-366868)は、Santa Cruz社から購入した。抗-DYKDDDDK tag抗体(sc-816)は、WAKO社から購入した。抗-FLAGM2抗体(F1804)は、Sigma社から購入した。抗-LC3抗体(M186-3)、抗-p62(SQSTM1)抗体(PM045)、及び抗-Beclin1抗体(PD017)は、MBL Life Science社から購入した。抗-mTOR抗体(#2983)、phospho-mTOR(Ser2448)抗体(#5536)、p70S6抗体(#2708)、phospho-p70S6Kinase(Thr389)抗体(#9234)、ULK1抗体(#8054)、phospho-ULK1(Ser757)抗体(#6888)、AMPK抗体(#2532)、phospho-AMPK(Thr172)抗体(#2535)、SAPK/JNK抗体(#9258)、phospho-SAPK/JNK抗体(#9251)、p38 MAPK抗体(#9212)、phospho-p38 MAPK抗体(#9215)、p44/42 MAPK(Erk1/2)抗体(#4695)、及びphospho-p44/42 MAPK (Erk1/2) (Thr202/Tyr204)抗体(#4370)等の抗体は、Call Signaling Technology社から購入した。コントロールsiRNA、マウスATG5-siRNA(Mm01_00089196)、及びマウスp62-siRNA(Mm01_00079384)は、シグマアルドリッチ社から購入した。Lipofectamine 2000(#11668)は、ThermoFisher Scientific社から購入した。Human AR Flexi ORF Clone(pF1KB0452:FXC11031)とhuman ataxin1 Flexi ORF Clone(pFN21AB7066: FHC29122)は、かずさDNA研究所から購入した。抗-DYKDDDDK tag抗体はATXN1の検出に使用し、抗-FLAGM2抗体(F1804)はATN1の検出に使用した。
【実施例】
【0088】
(2)発現ベクターの作成
ヒトLC3-cDNAは、ヒト脳cDNAライブラリを鋳型としてPCR法にて増幅した。PCR産物は、pmCherry-EGFP(mCherryとEGFPをタンデムに繋いたもの)ベクターのBglIとEcoRIサイトにフレームを合わせて挿入した。ヒトandrogen receptor-cDNA、atrophin1-cDNAとataxin1-cDNAは、human AR Flexi ORF Clone、human atrophin-1 Flexi ORF Cloneとhuman ataxin1 Flexi ORF Cloneを鋳型としてPCR法にて増幅した。野生型AR-20QのPCR産物は、pcDNA3.1(+)-FLAG(pcDNA3.1(+)にFlagタグを入れたもの)ベクターのBamHIとXhoIサイトに挿入し、C末にFlagタグが連結されるようにした。野生型AR-20QのPCR産物は、pCMV-Tag 2B (Agilent Technologies)ベクターのEcoRIとHindIIIサイトに挿入し、N末にFlagタグが連結されるようにした。野生型ATN1-19QのPCR産物は、pCMV-3Tag 1A (Agilent Technologies)ベクターのEcoRIとHindIIIサイトに挿入し、N末にFlagタグが連結されるようにした。ヒト野生型huntingtinタンパク質のエクソン1はHuman mosaic cDNA template(GENOFi)を鋳型としてPCR法にて増幅した。PCR産物はpEGFP-N1ベクター(TaKaRa Bio)のEcoRIとXhoIサイトに挿入し、C末に蛍光タンパクEGFPが連結されるようにした。AR-113Qは、野生型AR-20Qを制限酵素PstIで切断し、さらにbluntingした後に、annealingしたCAGリピートオリゴをクローニングすることにより作成した。ATN1-81Qは、野生型ATN1-19Qを制限酵素NhelとAgelで切断し、トランスジェニックマウスモデルからクローニングしたATN1-81Qで置き換えることにより作成した。Htt-140Qは、R6/2 DNAトランスジェニックマウスゲノムDNA、ATXN1-150QはSCA1154Q/2QノックインマウスゲノムDNAを鋳型として、PCR法にて増幅し、In-Fusion HD Cloningkit(TaKaRa Bio)を用いて作成した。
【実施例】
【0089】
(3)細胞培養とトランスフェクション
Neuro2a細胞とHela細胞は、10%のウシ胎仔血清含有のDulbecco’s modified Eagle’s medium (DMEM)を用いて37℃で培養した。培地にはペニシリン-ストレプトマイシン(それぞれ、20U/ml及び20μg/ml)を添加したものを用いた。トランスフェクション試薬はLipofectamine 2000を用いた。mCherry-EGFP-LC3-Hela stable cell lineの作成は、まず、pmCherry-EGFP-LC3ベクターをHela細胞にトランスフェクションした後、G418抗生剤で選択して陽性コロニーを得た。
【実施例】
【0090】
(4)ウエスタンブロット解析
12-wellプレートで培養したNeuro2a細胞に各種ベクターをトランスフェクションした。ケンペロール等の薬剤を投与後に、細胞を回収した。回収した細胞よりタンパク質を抽出して、SDS-PAGE電気泳動にて分離した。分離されたタンパク質を、SDS-PAGEゲルからメンブレンへトランスファーし、次いで、4℃下で一次抗体と反応させた。当該メンブレンを洗浄後、二次抗体と反応させ、これを用いてタンパク質の細胞内の蓄積量を検定した。
【実施例】
【0091】
(5)蛍光染色
チャンバースライド上で培養したNeuro2a細胞にpHttex1-140Qベクターをトランスフェクションした。6時間後、当該細胞に30μMのケンペロールを投与した。48時間後に細胞を固定及び封入し、LSM5 Pascal(Zeiss) 共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞の画像を撮影した。トランスフェクションされた細胞を少なくとも100個を選んで、異常なタンパク質封入体を含有する細胞数をケンペロール投与群と非投与群との間で比較した。また、mCherry-EGFP-LC3レポーターベクターを導入したHela細胞をチャンバースライド上で培養し、これに30μMのケンペロールを投与した。24時間後に細胞を固定、封入し、共焦点レーザー顕微鏡で観察、撮影した。
【実施例】
【0092】
[実施例1]マウス神経芽細胞腫細胞(本明細書においては、Neuro2a細胞又はN2a細胞とも称する場合がある)におけるケンペロールのオートファジー活性化効果
ケンペロールのオートファジーに対する影響を調べるため、N2a細胞を用いてウエスタンブロット解析、及びmCherry-EGFP-LC3レポーターアッセイによる検討を行った。まず、N2a細胞を12-wellプレートに播種した。1日後に、各濃度(0、5、15、30μM)のケンペロールを培地に投与した。同時に、コントロール群としてオートファジー阻害剤であるバフィロマイシン(Bafilomycin A1)、又はオートファジー誘導剤であるラパマイシン(Rapamycin)を投与した。24時間後に細胞を回収し、LC3-I及びLC3-IIの発現量を確認する目的でウエスタンブロット解析に供した。また、30μMのケンペロールをN2a細胞に投与し、投与後2、4、6、12、24時間の各時点において細胞を回収し、LC3-I及びLC3-IIの発現量を確認する目的でウエスタンブロット解析に供した(図2)。
【実施例】
【0093】
図2に示される通り、ケンペロールは投与量及び時間依存的に、オートファジー活性化のマーカーであるLC3-IIの発現量を有意に増加させた。
【実施例】
【0094】
次に、mCherry-EGFP-LC3を発現させたHela細胞に対して、オートファジー阻害剤であるバフィロマイシン(Bafilomycin A1)、又は30μMのケンペロールを投与した。24時間後に細胞の固定を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行った(図3)。
【実施例】
【0095】
図3に示される通り、ケンペロール投与群は、バフィロマイシン群と比較して、LC3のGFP蛍光よりもmCherry蛍光が強く観察された。これは、mCherryよりも酸性に弱いGFPタンパク質が、リソソームと融合することによって酸性環境に曝された結果、分解されたことに起因している(Kimura S et al., Autophagy. 2007 Sep-Oct;3(5):452-60.)。これらの結果より、ケンペロールはオートファジーを活性化することが判明した。
【実施例】
【0096】
[実施例2]ケンペロールのオートファジー活性化の分子機序
次に、ケンペロールが、オートファジーを活性化するメカニズムを明らかにするために、以下の実験を行った。まず、ケンペロールの作用部位を調べるために、オートファジーシグナル経路、オートファジーのアダプタータンパク質の発現量、及びそれらのリン酸化を調べた。N2a細胞を12-wellプレートに播種し、各濃度(0、5、15、30μM)のケンペロール、100nMのバフィロマイシン、又は100nMのラパマイシンを投与した。24時間後にウエスタンブロット解析を行った(図4、5)。ケンペロールの投与によってオートファジーシグナル経路に関わるタンパク質であるmTOR、p70S6、Akt、ERK44/42(MAPK)、p38MAPK、及びGSKbのリン酸化が有意に低下した。また、オートファジーのアダプタータンパク質であるp62の発現量が有意に下がり、且つ、beclin1の発現量が有意に上昇したことから、オートファジーが活性化したことが示された(図4、5)。
【実施例】
【0097】
次に、オートファジー阻害剤であるバフィロマイシン(Bafilomycin A1)、NH4Cl、又は3-メチルアデニン(3-MA)をケンペロールと併用投与することにより、ケンペロールのオートファジー活性化が、これらのオートファジー阻害剤により抑制され得るかを検証した。なお、3-MAは、PI3K-1に対する阻害効果を有し、オートファジー経路の上流に作用して、auotophagosomeの形成を抑制するが、LC3-IIの発現量そのものには影響を与えない。一方、バフィロマイシンとNH4Clは、auotophagosomeとlysosomeの融合をブロックして、LC3-IIの分解を抑制することにより、LC3-IIの細胞内の存在量を増加させる。結果を図6に示す。
【実施例】
【0098】
図6Cに示される通り、ケンペロールと3-MAの併用投与により、ケンペロールによるLC3-II量の増加作用は阻害された。また、図6Aに示される通り、ケンペロールとバフィロマイシンの併用投与では、LC3-II量が単独投与より増えることが示された。さらに、図6Bに示される通り、ケンペロールとNH4Clとの併用投与では、LC3-II量が単独投与より増えることが示された。
【実施例】
【0099】
次に、siRNAを用いて、オートファジー関連分子であるATG5及びオートファジーのアダプタータンパク質であるp62のノックダウンを行い、LC3-II量に対する影響を調べた。ATG5及びp62をノックダウンした細胞に対し、培養開始から48時間の時点で、ケンペロールを投与した。該投与から12時間後、細胞を回収し、ウエスタンブロッティング解析を用いてLC3-II量を調べた。これらのタンパクをノックダウンすることにより、ケンペロールによるLC3-II量の増加作用が減弱し、オートファジー活性化が抑制された(図7A、B)。これらの結果より、ケンペロールは1つのターゲット分子に作用するのではなく、オートファジーの複数の経路における、複数の分子に作用することが示唆された。
【実施例】
【0100】
[実施例3]ケンペロールのオートファジー活性化による神経変性関連タンパク質に対する抑制効果
ハンチントン病細胞モデル、脊髄小脳変性症1型(SCA1)、又は球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のモデル細胞(N2a細胞に各種神経変性疾患の原因タンパク質であるhuntingtin、ataxin1、又は変異androgen receptorの遺伝子を一過性強制発現させた細胞)に、各濃度(0、5、15、30μM)のケンペロールを添加し、48時間後に該細胞を回収した。各細胞群よりタンパク質を抽出し、ウエスタンブロット解析にて、各原因タンパク質量を決定した。ケンペロールは、用量依存的にhuntingtin及びataxin1の封入体あるいは凝集の形成とモノマーの存在量を抑制した(図8-A、-B、-C)。また、ケンペロールは、用量依存的に変異androgen receptorのモノマーの存在量を低下させた(図8-D)。
【実施例】
【0101】
次に、30μMのケンペロールの投与と同時にオートファジー阻害剤である3-メチルアデニン(3-MA)を50mMで加え、その阻害効果を確認した。ケンペロールと3-メチルアデニン(3-MA)とを同時に投与した場合は、ケンペロールによる変異androgen receptorのモノマー(図9-A)と変異ataxin1(図9-B)の減少効果は弱まった。以上の結果より、ケンペロールは、オートファジーの活性化において、オートファジー経路の比較的上流で作用すると考えられる。
【実施例】
【0102】
上述の通り、本発明者らは、オートファジーにおけるケンペロールの薬理効果及び神経変性疾患に関連したタンパク質の分解に対する効果を検討した。この結果、本発明者らは、ケンペロールが、強力なオートファジー活性化作用を有すること、及び、オートファジー経路の比較的上流に作用すること、を明らかにした。また、本発明者らは、神経変性疾患細胞モデルにおいて、ケンペロールが神経変性疾患の原因タンパク質の蓄積を強力に抑制し得ることを示した。これは、細胞内のオートファジー分解系の活性化を介して、原因タンパク質の分解が促進された結果と考えられる。神経変性疾患では、神経細胞内に変異タンパク質の凝集、蓄積、及び核内封入体形成の過程に病原性があると考えられている。従って、オートファジーの活性化を介して、変異タンパク質の凝集、蓄積、及び核内封入体形成を抑制し得るケンペロールは、神経変性疾患に対する治療薬として有望であることが本研究により実証された。
【実施例】
【0103】
[実施例4]マウス神経芽細胞腫細胞におけるルテオリンのオートファジー活性化効果
ルテオリンのオートファジーに対する影響を調べるため、Neuro2a細胞を用いてウエスタンブロット解析による検討を行った。12-wellプレートに播種したNeuro2a細胞に、各濃度(0、5、15、30μM)のルテオリンを培地に投与した。ルテオリンを投与した時点から24時間後に細胞を回収し、LC3-I、LC3-II、およびp62タンパク質量を確認する目的でウエスタンブロット解析に供した(図10A)。図10Aに示される通り、ルテオリンの投与により、用量依存的に、LC3-II量が増加し、p62タンパク質量は減少した。この結果は、ルテオリンが用量依存的にオートファジーを亢進させることを示す。
【実施例】
【0104】
また、12-wellプレートで培養したNeuro2aに30μMのルテオリンと50nMのバフィロマイシンA1または20mMのNH4Clを投与し、当該投与の時点から24時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。LC3-II量はルテオリン単独投与に比して、バフィロマイシンA1またはNH4Clと、ルテオリンとの同時投与のほうが増加した。p62タンパク質量はバフィロマイシンA1またはNH4Clの投与によって増加したが、ルテオリン投与によってp62タンパク質量の増加が抑制されることが分かる。これらの結果はルテオリンの投与によってオートファジーfluxが亢進されることを示す(図10BおよびC)。
【実施例】
【0105】
[実施例5]ルテオリンのオートファジー活性化による神経変性関連タンパク質に対する抑制効果
ケンペロールと同様、ルテオリンによるオートファジーの活性化により神経変性疾患の原因遺伝子のタンパク質(ハンチンチンタンパク質、ataxin1タンパク質、ARタンパク質、Atrophin1タンパク質)の分解が促進され得るかを、以下の手法により確認した。
【実施例】
【0106】
(ハンチンチンタンパク質)
12-wellプレートで培養したNeuro2aに、pHttex1-18Q-EGFP及びpHttex1-140Q-EGFPベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。ルテオリンを投与した時点から48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。結果を図11Aに示す。図11Aに示される通り、ルテオリンは、用量依存的にハンチンチンタンパク質量を減少させた。
【実施例】
【0107】
(ataxin1タンパク質)
12-wellプレートで培養したNeuro2aにpFLAG-ATXN1-30Q及びpFLAG-ATXN1-150Qベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。ルテオリンを投与した時点から48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。結果を図11Bに示す。図11Bに示される通り、ルテオリンは用量依存的にataxin1タンパク質量を減少させた。
【実施例】
【0108】
(ARタンパク質)
12-wellプレートで培養したNeuro2aにpAR-20Q-FLAG及びpAR-76Q-FLAGベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。ルテオリンを投与した時点から48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。結果を図11Cに示す。図11Cに示される通り、ルテオリンは用量依存的にARタンパク質量を減少させた。
【実施例】
【0109】
(Atrophin1タンパク質)
12-wellプレートで培養したNeuro2aにpFLAG-ATN1-19Q及びpFLAG-ATN1-81Qベクターをトランスフェクションして、6時間後にルテオリン(0、5、15、30μM)を投与した。ルテオリンを投与した時点から48時間後に細胞を回収し、ウエスタンブロット解析に供した。結果を図11Dに示す。図11Dに示される通り、ルテオリンは用量依存的にAtrophin1タンパク質量を減少させた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、異常タンパク質の蓄積に起因する疾患、及びオートファジーにより殺菌される病原体に起因する疾患に対する、安全且つ強力な治療剤又は予防剤を製造することができるため、医療分野において極めて有用である。
【0111】
本出願は、日本で出願された特願2017-85253(出願日:2017年4月24日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8-A】
7
【図8-B】
8
【図8-C】
9
【図8-D】
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【図9-A】
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【図9-B】
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【図10】
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【図11】
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