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明細書 :3Dカメラを用いた摂食嚥下機能検査システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月27日(2020.2.27)
発明の名称または考案の名称 3Dカメラを用いた摂食嚥下機能検査システム
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/11 310
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2019-513590 (P2019-513590)
国際出願番号 PCT/JP2018/015342
国際公開番号 WO2018/193955
国際出願日 平成30年4月12日(2018.4.12)
国際公開日 平成30年10月25日(2018.10.25)
優先権出願番号 2017082001
優先日 平成29年4月18日(2017.4.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】佐藤 秀夫
【氏名】山本 祐士
【氏名】岩下 洋一朗
【氏名】山▲崎▼ 要一
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100146916、【弁理士】、【氏名又は名称】廣石 雅紀
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038VA04
4C038VB07
4C038VB08
4C038VB09
4C038VC05
4C038VC15
要約 体表面動態取得部(11)は、タイミング情報発生部(10)でタイミング情報が発生したタイミングを含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得する。内部動態取得部(12)は、タイミング情報発生部(10)でタイミング情報が発生したタイミングを含み、嚥下動作が行われた期間における嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する。同期データ生成部(13)は、体表面動態データでタイミング情報が発生したタイミングと、内部動態データでタイミング情報が発生したタイミングとを合わせて、嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する。分析部(14)は、同期データに基づいて、嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する。
特許請求の範囲 【請求項1】
タイミング情報を発生させるタイミング情報発生部と、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得する体表面動態取得部と、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する内部動態取得部と、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生した時点と、前記内部動態データでタイミング情報が発生した時点とを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成部と、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析部と、
を備える嚥下機能検査システム。
【請求項2】
前記分析部は、
同一被検者における嚥下動作中の体表面動態を再度撮像して取得された体表面動態データと、前記同期データとに基づいて、被検者の嚥下機能の状態を推定する、
請求項1に記載の嚥下機能検査システム。
【請求項3】
前記分析部は、
前記体表面動態データから得られる嚥下動作中の体表面上の特定の部位の動態に関する項目に基づいて、被検者の嚥下機能の状態を分析する、
請求項1又は2に記載の嚥下機能検査システム。
【請求項4】
前記特定の部位には、口角間距離が含まれる、
請求項3に記載の嚥下機能検査システム。
【請求項5】
前記同期データ生成部は、
被検者毎に、前記同期データを生成し、
前記分析部は、
被検者毎の同期データを用いて、当該同期データに対応する被検者の嚥下機能を分析する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の嚥下機能検査システム。
【請求項6】
前記タイミング情報発生部は、前記タイミング情報として、音を発生させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の嚥下機能検査システム。
【請求項7】
タイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得すると同時に、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する動態取得工程と、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生したタイミングと、前記内部動態データでタイミング情報が発生したタイミングとを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成工程と、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析工程と、
を含む嚥下機能分析方法。
【請求項8】
コンピュータを、
タイミング情報を発生させるタイミング情報発生部、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得する体表面動態取得部、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する内部動態取得部、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生した時点と、前記内部動態データでタイミング情報が発生した時点とを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成部、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析部、
として機能させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dカメラを用いた摂食嚥下機能検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢者の割合が総人口の30%を超え、2042年には3878万人となる見通しである。高齢者に見られる特徴として摂食嚥下機能(以下、「嚥下機能」とする)の低下がある。嚥下機能の低下は、誤嚥を引き起こし、窒息の危険性があるうえ、誤嚥性肺炎の原因ともなる。したがって、嚥下機能を診断することは高齢者にとって重要である。
【0003】
しかしながら、嚥下機能を診断するには口腔、咽喉内の動きを把握する必要があり、例えば、Cアーム型透視装置(VF)、嚥下内視鏡(VE、往診用)で侵襲的に嚥下機能を検査するのが一般的である。一方で、体の外部の動き(体表面動態)から非侵襲に嚥下機能を診断する測定システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-31650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高齢化に伴い、国民医療費が2025年には50兆円規模に達するなかで、生活の質を確保しながら、安心した医療や介護を受けたいとの理由から在宅医療を希望する患者や家族のニーズが増加している。現在では、国民の60%が自宅での療養を望んでおり、ケアマネージャの50%が医師との連携をとりにくいと感じている。在宅での生活の質を担保する上で摂食嚥下障害への対応は必須である。
【0006】
しかしながら、上述したようなCアーム型透視装置等は、検査機器が高価であり、使用するのに専門的技術を要する。また、このような検査機器は侵襲的であり、検査場所が限定される。また、体の外部の動き(体表面動態)と嚥下機能との相関性には未知の部分が多い。医療現場においては、嚥下機能を顔や口の動きからスクリーニングすることがあるが、これには技術の熟練が求められる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、被検者の嚥下機能を、安価、簡便、非侵襲的かつ的確に検査することができる嚥下機能検査システム、嚥下機能分析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る嚥下機能検査システムは、
タイミング情報を発生させるタイミング情報発生部と、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得する体表面動態取得部と、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する内部動態取得部と、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生した時点と、前記内部動態データでタイミング情報が発生した時点とを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成部と、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析部と、
を備える。
【0009】
この場合、前記分析部は、
同一被検者における嚥下動作中の体表面動態を再度撮像して取得された体表面動態データと、前記同期データとに基づいて、被検者の嚥下機能の状態を推定する、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記分析部は、
前記体表面動態データから得られる嚥下動作中の体表面上の特定の部位の動態に関する項目に基づいて、被検者の嚥下機能の状態を分析する、
こととしてもよい。
【0011】
前記特定の部位には、口角間距離が含まれる、
こととしてもよい。
【0012】
前記同期データ生成部は、
被検者毎に、前記同期データを生成し、
前記分析部は、
被検者毎の同期データを用いて、当該同期データに対応する被検者の嚥下機能を分析する、
こととしてもよい。
【0013】
前記タイミング情報発生部は、前記タイミング情報として、音を発生させる、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る嚥下機能分析方法は、
タイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得すると同時に、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する動態取得工程と、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生したタイミングと、前記内部動態データでタイミング情報が発生したタイミングとを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成工程と、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析工程と、
を含む。
【0015】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
タイミング情報を発生させるタイミング情報発生部、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者の嚥下動作に伴って動作する体表面動態データを取得する体表面動態取得部、
前記タイミング情報発生部でタイミング情報が発生した時点を含み、前記嚥下動作が行われた期間における前記嚥下動作に伴って動作する同一被検者の内部動態データを取得する内部動態取得部、
前記体表面動態データでタイミング情報が発生した時点と、前記内部動態データでタイミング情報が発生した時点とを合わせて、前記嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する同期データ生成部、
前記同期データに基づいて、前記嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析する分析部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、嚥下動作中の被検者の体表面動態データと内部動態データとのタイミングを合わせた同期データを生成するので、嚥下動作中の被検者の体表面動態と内部動態との相関性を分析することができる。このため、体表面動態から、被検者の嚥下機能を、安価、簡便、非侵襲的かつ的確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る嚥下機能検査システムが用いられる全体環境を示す模式図である。
【図2A】3次元形状計測装置で撮像される被検者の上半身の一例を示す図である。
【図2B】3次元形状計測装置で計測される被検者の顔部の体表面動態の一例を示す図である。
【図3】嚥下機能検査システムを構成する体表面動態取得部の内部構成を示すブロック図である。
【図4】体表面動態データの一例を示す図である。
【図5】透視画像の一例を示す図である。
【図6】内部動態データの一例を示す図である。
【図7】(A)及び(B)は、同期データを生成する様子を示す模式図である。
【図8】同期データを表示した場合の画面の一例を示す図である。
【図9】嚥下機能検査システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る嚥下機能解析方法のフローチャートである。
【図11】動態を取得する手順のタイミングチャートである。
【図12A】内部動態データの具体例(その1)である。
【図12B】体表面動態データとの特定の部位の変動パターンの一例(その1)である。
【図13A】内部動態データの具体例(その2)である。
【図13B】体表面動態データとの特定の部位の変動パターンの一例(その2)である。
【図14A】内部動態データの具体例(その3)である。
【図14B】体表面動態データとの特定の部位の変動パターンの一例(その3)である。
【図15A】内部動態データの具体例(その4)である。
【図15B】体表面動態データとの特定の部位の変動パターンの一例(その4)である。
【図16】複数の被検者に対して現在の嚥下機能の検査を行うためのシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。

【0019】
図1には、本実施の形態に係る嚥下機能検査システム1が用いられる全体環境が示されている。図1に示すように、嚥下機能検査システム1は、被検者Pに試料を嚥下させ、その嚥下機能を検査するシステムである。嚥下機能検査システム1は、検査室2に設置された各種設備と通信可能に接続されている。検査室2には、そのような設備として、スピーカ3と、3次元形状計測装置4と、造影検査装置5と、が設置されている。

【0020】
スピーカ3は、タイミング情報として音(ブザー)を発生させる。この音は、被検者Pの嚥下動作等の各種動作を行う場合のトリガーとなる。また、この音は、後述するように、同期データの生成にも用いられる。

【0021】
3次元形状計測装置4は、RGBカメラ、深度センサを用いて、被検者Pの顔部及びその周辺(例えば図2A参照)を撮像し、撮像された被検者Pの顔部及びその周辺の3次元形状(例えば図2Bに示す格子データ6)を計測する。3次元形状計測装置4は、被検者Pの上半身に設定された複数の特徴点(ノード)の装置との間の距離を測定することによって、被検者Pの顔部の体表面動態(皮膚や表層筋の動き)を計測する。すなわち、3次元形状計測装置4は、非接触型のマーカレスモーションキャプチャシステムである。

【0022】
このような3次元形状計測装置4としては、例えばKinect(登録商標)がある。Kinect(登録商標)は、各計測点の3次元位置座標を、1/30秒ごとにリアルタイムに記録する。Kinect(登録商標)は、小型で持ち運び可能であり、低コストであり、3次元形状を算出するためのソフトウエアプログラムがオープンソース化されているという利点がある。3次元形状計測装置4は、対象物の3次元を撮像するとともに、マルチアレイマイクロフォンを用いて、周囲の音を録音する。

【0023】
造影検査(Video Fluorography)装置5は、被検者Pの顎部分の透視画像を撮像するX線撮像装置である。図5に示すように、撮像方向は、被検者Pの横方向となっている。造影検査装置5は、外部からの指示に従って被検者Pの顎部分の撮像を開始し、外部からの指示に従って撮像を終了する。この撮像結果により、被検者Pが嚥下動作を行う際の、嚥下動作に伴って動作する口腔、咽頭、食道の内部動態を観察することができる。造影検査装置5は、対象物の透視画像を撮像するとともに、周囲の音を録音する。

【0024】
図1に戻り、嚥下機能検査システム1は、タイミング情報発生部10と、体表面動態取得部11と、内部動態取得部12と、同期データ生成部13と、分析部14と、を備える。

【0025】
タイミング情報発生部10は、スピーカ3にタイミング情報として音を発生させる。本実施の形態では、発生させる音を、ブザーのような電子音とするが、これには限定されない。例えば、発生させる音を、人の音声としてもよい。

【0026】
体表面動態取得部11は、被検者Pの嚥下動作に関連する体表面動態データを取得する。取得される体表面動態データは、タイミング情報発生部10でタイミング情報が発生した時点T1,T2を含んでおり(例えば、図4参照)、嚥下動作が行われた期間を含む時系列データである。

【0027】
より詳細には、体表面動態取得部11が3次元形状計測装置4に計測の開始を指示すると、3次元形状計測装置4が被検者Pの撮像及び電子音の録音及び3次元形状の計測を開始する。また、体表面動態取得部11が3次元形状計測装置4に計測の終了を指示すると、3次元形状計測装置4が被検者Pの撮像及び電子音の録音及び3次元形状の計測を終了する。3次元形状計測装置4で撮像された映像データ、電子音データ及び3次元形状の計測結果は、体表面動態取得部11に送信される。

【0028】
体表面動態取得部11は、図3に示すように、体表面動態情報生成部11Aと記憶部11Bと、を備えている。体表面動態情報生成部11Aは、3次元形状計測装置4から受信した映像及び電子音データを、記憶部11Bに記憶する。このデータを、映像及び電子音データ11Cとする。さらに、体表面動態情報生成部11Aは、受信した3次元形状の計測結果に基づいて、体表面動態データ11Dを生成して、記憶部11Bに記憶する。

【0029】
体表面動態データ11Dとしては、様々なデータを含めることができる。例えば、図2Bに示すように、特定の計測部位を口角間距離Lと設定した場合には、体表面動態情報生成部11Aは、口角間距離Lの時間変化を示す時系列データを生成して、体表面動態データ11Dに含めて記憶する。図4には、体表面動態としての口角間距離Lの時系列データ(体表面動態データ11D)と、電子音の時系列データ(映像及び電子音データ11C)とが示されている。電子音の時系列データでは、インパルス状のピークが、電子音が発生したタイミング(時点T1,T2)を示している。

【0030】
図1に戻り、内部動態取得部12は、嚥下動作が行われた期間における同一被検者Pの口腔、咽頭、食道内の内部動態データ12Dを取得する。図6に示すように、内部動態データ12Dは、タイミング情報発生部10で電子音が発生した時点T1,T2を含み、被検者Pの顎部分を横から移した透視画像の時間変化を示す時系列データである。このデータを見れば、口腔相から咽頭相を経て食道相に至るまでの嚥下の過程を観察することができる。取得される内部動態データ12Dは、タイミング情報発生部10で電子音が発生した時点T1,T2を含む期間のデータである。内部動態取得部12は、内部動態データ12Dを取得すると同時に、電子音データ12Cを録音する。

【0031】
内部動態取得部12が造影検査装置5に撮像の開始を指示すると、造影検査装置5が被検者Pの透視撮像の撮像及び録音を開始し、内部動態取得部12が造影検査装置5に被検者Pの顔部の透視画像の計測の終了を指示すると、造影検査装置5が被検者Pの顔部の透視画像の撮像及び録音を終了する。造影検査装置5で撮像された内部動態データ12D及び電子音データ12Cは、内部動態取得部12に送信される。内部動態データ12D及び電子音データ12Cは、内部動態取得部12に記憶される。

【0032】
図1に戻り、同期データ生成部13は、嚥下動作中における内部動態と体表面動態との同期データを生成する。同期データは、体表面動態データ11Dでタイミング情報が発生した時点T1,T2と、内部動態データ12Dでタイミング情報が発生した時点T1,T2とを合わせることにより、行われる。

【0033】
具体的には、同期データ生成部13は、図7(A)に示すように、内部動態データ12Dに関連付けられた電子音データ12Cにおけるタイミング情報が発生した時点と、体表面動態データ(口角間距離L)11Dに関連付けられた映像音及び電子音データ11Cにおけるタイミング情報が発生した時点と、を合わせる。そして、同期データ生成部13は、図7(B)に示すように、両時点T1,T2を合わせた状態で、内部動態データ12Dと体表面動態データ11Dとを合成したデータを同期データ7として生成する。

【0034】
図8には、同期データ7に基づいて体表面動態と内部動態とが同時に表示された画面の一例が示されている。この画面左上には、内部動態データ12Dが示され、その右隣りには、体表面動態データ11Dが示されている。また、画面の下側には、体表面動態データ11Dの一部である口角間距離Lの時系列データが示されている。

【0035】
図1に戻り、分析部14は、同期データ生成部13から同期データ7を読み込んで解析する。具体的には、分析部14は、嚥下動作中における体表面動態と内部動態との相関性を分析する。相関性の分析は、例えば、体表面動態データ11Dから得られる嚥下動作中の体表面上の特定の部位の動態に関する項目に基づいて、被検者Pの嚥下機能の状態を分析することにより行われる。特定の部位には、口角間距離Lに関する情報が含まれる。この場合、例えば、安静時の口角間距離L、嚥下開始前の口角間距離L、嚥下動作の口角間距離Lの変位量、嚥下時間などを計測項目とすることができる。

【0036】
図9は、図1の嚥下機能検査システム1のハードウエア構成を示す。図9に示すように、嚥下機能検査システム1は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36を備える。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。

【0037】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されている。このCPUが、外部記憶部33に記憶されているプログラム39を実行することにより、図1に示す嚥下機能検査システム1の各構成要素が実現される。制御部31は、タイマを有している。

【0038】
主記憶部32は、RAM(Random-Access Memory)等から構成されている。主記憶部32には、外部記憶部33に記憶されているプログラム39がロードされる。この他、主記憶部32は、制御部31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。

【0039】
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部33には、制御部31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されている。また、外部記憶部33は、制御部31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。

【0040】
操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインターフェイス装置から構成されている。操作部34を介して、操作者が操作した内容に関する情報が制御部31に入力される。

【0041】
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(ElectroLuminescence)などから構成される。操作者が操作情報を入力する場合は、表示部35には、操作用の画面が表示される。

【0042】
通信部36は、外部機器との通信インターフェイスである。例えば、通信部36を介して、スピーカ3、3次元形状計測装置4及び造影検査装置5と通信可能に接続される。

【0043】
なお、制御部31のプログラム39の実行により、図1に示す嚥下機能検査システム1の構成において、タイミング情報発生部10、体表面動態取得部11、内部動態取得部12、同期データ生成部13及び分析部14の機能は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36がプログラム39の実行に従って動作することによって実現される。

【0044】
次に、嚥下機能検査システム1の動作について説明する。図10には、嚥下機能検査システム1で実行される処理(プログラム39の実行手順)、すなわち嚥下機能分析方法のフローチャートが示されている。

【0045】
図10に示すように、まず、体表面動態取得部11は、電子音が発生した時点T1,T2を含み、嚥下動作が行われた期間における被検者Pの嚥下動作に伴って変動する体表面動態データ11D(映像音及び電子音データ11C)を取得すると同時に、内部動態取得部12が、嚥下動作が行われた期間における嚥下動作に伴って変動する被検者Pの内部動態データ12D(電子音データ12C)を取得する(ステップS1;動態取得工程)。

【0046】
ここで、動態取得工程は図11に示すような手順で行われる。この手順は、嚥下機能検査システム1の制御の下で行われる。
1.被検者Pを計測位置にて待機させる。
2.3次元形状計測装置4による撮影を開始する。
3.造影検査装置5によるVF撮影を開始しタイマをスタートさせる。
4.時点T1で発生する1度目の電子音で試料(例えば、水)を取り込む。
5.時点T2で発生する2度目の電子音で試料の嚥下を行う。
6.嚥下終了時点で、被検者Pが挙手し、その時点で撮影を終了し、計測を終了する。この工程により、体表面動態データ11D及び内部動態データ12Dが取得される。

【0047】
次に、同期データ生成部13は、体表面動態データ11Dで電子音が発生したタイミング(T1,T2)と、内部動態データ12Dで電子音が発生したタイミング(T1,T2)とを合わせて、嚥下動作中における内部動態データ12Dと体表面動態データ11Dとの同期データ7を生成する(ステップS2;同期データ生成工程)。

【0048】
次に、分析部14は、同期データ7に基づいて、嚥下動作中の被検者Pの体表面動態と内部動態との相関性を分析する(ステップS3;分析工程)。

【0049】
図12Aには、ある被検者P1が水を5ml嚥下した時に取得された内部動態が示され、図12Bには、その時の体表面動態としての口角間距離Lの変動の様子が示されている。図12Bでは、時点t1が嚥下指示直後の時点であり、時点t2は、口角間距離Lが最小となった時点であり、時点t3は、水が第4頚椎を通過し、嚥下終了した時点である。時点t4は、被検者P1が挙手した時点である。図12Bに示すように、この条件では、口角間距離Lは、嚥下指示直後から収縮し、その後延伸しつつ嚥下が終了した後に、通常の長さに戻った。

【0050】
図13Aには、他の被検者P2が水を5ml嚥下した時に取得された内部動態が示され、図13Bには、その時の口角間距離Lの変動の様子が示されている。図13Bでは、時点t1が嚥下指示直後の時点であり、時点t2は、口角間距離Lが最大となった時点であり、時点t3は、水が第4頚椎を通過し、嚥下終了した時点である。また、時点t4は、口角間距離Lが最小となった時点であり、時点t5は、被検者P2が挙手した時点である。図13Bに示すように、この条件では、口角間距離Lは、嚥下指示直後から延伸し、その後収縮して嚥下が終了した後に、通常の長さに戻った。

【0051】
このように、被検者Pが異なれば、嚥下動作に伴う口角間距離Lの変動パターンも異なるようになることが確認された。この変動パターンは、大きく2つに分かれた。これは、主として、水を前方に保持する被検者P2(図13A参照)と、水を後方に保持する被検者P1(図12A参照)とに分かれたためであると考えられる。

【0052】
図14Aには、他の被検者P1が水を15ml嚥下した時に取得された内部動態が示され、図14Bには、その時の口角間距離Lの変動の様子が示されている。図14Bでは、時点t1が嚥下指示直後の時点であり、時点t2は、口角間距離Lが最大となった時点であり、時点t3は、水が第4頚椎を通過し、嚥下終了した時点である。また、時点t4は、口角間距離Lが最小となった時点であり、時点t5は、被検者P1が挙手した時点である。図14Bに示すように、この条件では、口角間距離Lは嚥下指示直後から延伸し、その後収縮して嚥下が終了した後、通常の長さに戻った。

【0053】
図15Aには、他の被検者P2が水を15ml嚥下した時に取得された内部動態が示され、図15Bには、その時の口角間距離Lの変動の様子が示されている。図15Bでは、時点t1が嚥下指示直後の時点であり、時点t2は、口角間距離Lが最大となった時点であり、時点t3は、水が第4頚椎を通過し、嚥下終了した時点である。また、時点t4は、口角間距離Lが最小となった時点であり、時点t5は、被検者P2が挙手した時点である。図15Bに示すように、この条件では、口角間距離Lは嚥下指示直後から延伸し、その後収縮して嚥下が終了した後、通常の長さに戻った。

【0054】
このように、保持する試料(水)が多い場合、口腔全体で試料(水)を保持する傾向があることが確認された。これまでのデータを総合すると、嚥下動作中の口角間距離Lは、一般的には、嚥下指示の後、しばらくすると最大となり、その後減少する中で試料が第4頚椎を通過して嚥下が終了し、最小となった後、緩やかに通常の口角間距離Lに戻るという共通点が観測された。したがって、嚥下中の体表面動態がこの変動パターンに従っていない場合には、被検者Pの嚥下機能に何らかの障害が発生していることを疑うことができる。

【0055】
しかしながら、厳密に言えば、口角間距離Lの変動パターンは被検者Pによって異なるため、より的確な嚥下機能の評価を行うため、同期データ生成部13は被検者P毎に同期データ7を生成し、分析部14は被検者P毎の同期データ7を用いて、その同期データ7に基づいて被検者Pの嚥下機能を分析するのが望ましい。図16では、分析部14が記憶部14Cを備え、記憶部14Cに、被検者PAの同期データ7Aと、被検者PBの同期データ7Bと、被検者PCの同期データ7Cが記憶されている例が示されている。

【0056】
図16に示すように、分析部14は、被検者PA~PCにおける嚥下動作中の体表面動態を撮像して取得された体表面動態データ11Dと、同期データ7A~7Cとに基づいて、被検者PA~PCの嚥下機能の状態を推定するようにしてもよい。嚥下機能検査システム1は、通信ネットワーク9を介して、被検者PA,PB,PCの自宅8に設置された3次元形状計測装置4に接続されているものとする。被検者PAの自宅8に設置された3次元形状計測装置4で被検者PAの体表面動態データ11Dが取得されると、そのデータは、通信ネットワーク9を介して、嚥下機能検査システム1に送信される。

【0057】
嚥下機能検査システム1の分析部14は、被検者PAの体表面動態データ11Dに基づいて、現在の被検者PAの嚥下機能の状態を推定する。例えば、受信した体表面動態データ11Dから得られる口角間距離Lの変動パターンと、同期データ7Aとして記憶された口角簡距離Lの変動パターンとが大きくなる場合(例えば、嚥下時間が長い場合や激しく変動する場合)には、被検者PAに摂食嚥下障害が発生した可能性があると推定する。このような推定結果が出れば、被検者PAに対してより精密な診断を行うことができるようになる。これは、被検者PB,PCについても同様である。このような仕組みを構築すれば、在宅診療が可能となり、被検者P等の負担は著しく軽減される。

【0058】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、嚥下動作中の被検者Pの体表面動態データ11Dと内部動態データ12Dとの同期データ7を生成するので、後から嚥下動作中の被検者Pの体表面動態を測定するだけで、被検者Pの嚥下機能の状態を推定することができる。このため、被検者Pの嚥下機能を、安価、簡便、非侵襲的かつ的確に検査することができる。

【0059】
上記実施の形態では、被検者Pの口角間距離Lを、嚥下機能を評価する特定の部位として用いたが、本発明はこれには限られない。嚥下動作に関する体表面動態に関する情報であれば、嚥下機能の評価に用いることが可能である。例えば、被検者Pの前頭部、眉間、鼻部、オトガイ部、前頚部を特定部位として採用してその動きを計測するようにしてもよい。

【0060】
また、上記実施の形態では、タイミング情報として音を用いたが、本発明はこれには限られない。タイミング情報として光を用いてもよい。また、バイブレータを用いて被検者Pにタイミングを報知するようにしてもよい。これらの場合、光源を発光させたりバイブレータを駆動させたりする電気信号をタイミング情報として体表面動態及び内部動態とともに記録すればよい。

【0061】
上記実施の形態では、時点T1、T2のタイミングで体表面動態データ11Dと内部動態データ12Dとを同期させたが、時点T2だけで、両データ11D,12Dを同期させるようにしてもよい。

【0062】
上記実施の形態では、被検者Pが嚥下する試料を水としたが、本発明はこれには限られない。他の飲料であってもよい。

【0063】
その他、嚥下機能検査システム1のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。

【0064】
制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35、通信部36及び内部バス30などから構成される嚥下機能検査システム1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する嚥下機能検査システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで嚥下機能検査システム1を構成してもよい。

【0065】
嚥下機能検査システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。

【0066】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。

【0067】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。

【0068】
なお、本願については、2017年4月18日に出願された日本国特許出願2017-82001号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2017-82001号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、嚥下機能の検査に適用することができる。特に、在宅医療で嚥下機能を診断する場合などに適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 嚥下機能検査システム、2 検査室、3 スピーカ、4 3次元形状計測装置、5 造影検査装置、6 格子データ、7,7A,7B,7C 同期データ、8 自宅、9 通信ネットワーク、10 タイミング情報発生部、11 体表面動態取得部、11A 体表面動態情報生成部、11B 記憶部、11C 映像及び電子音データ、11D 体表面動態データ、12 内部動態取得部、12C 電子音データ、12D 内部動態データ、13 同期データ生成部、14 分析部、14C 記憶部、30 内部バス、31 制御部、32 主記憶部、33 外部記憶部、34 操作部、35 表示部、36 通信部、39 プログラム、P,P1,P2,PA,PB,PC 被検者
図面
【図1】
0
【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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