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明細書 :マイクロRNAによるB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月27日(2020.2.27)
発明の名称または考案の名称 マイクロRNAによるB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  31/20        (2006.01)
A61P  31/12        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  38/21        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/522       (2006.01)
A61K  31/675       (2006.01)
A61K  47/54        (2017.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K  47/69        (2017.01)
A61K  47/61        (2017.01)
A61K  47/64        (2017.01)
A61K  47/60        (2017.01)
C12N  15/113       (2010.01)
C12N   9/99        (2006.01)
C07D 473/18        (2006.01)
C12N   9/12        (2006.01)
FI A61K 31/7088
A61K 31/7105
A61K 48/00
A61P 31/20
A61P 31/12
A61P 1/16
A61P 35/00
A61K 38/21
A61P 35/04
A61P 43/00 121
A61K 31/522
A61K 31/675
A61K 47/54
A61K 9/127
A61K 47/69
A61K 47/61
A61K 47/64
A61K 47/60
C12N 15/113 ZNAZ
C12N 15/113 100Z
C12N 9/99
C07D 473/18
C12N 9/12
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 34
出願番号 特願2019-513563 (P2019-513563)
国際出願番号 PCT/JP2018/014970
国際公開番号 WO2018/193902
国際出願日 平成30年4月9日(2018.4.9)
国際公開日 平成30年10月25日(2018.10.25)
優先権出願番号 2017081717
優先日 平成29年4月18日(2017.4.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】田中 靖人
【氏名】堤 進
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査請求 未請求
テーマコード 4B050
4C076
4C084
4C086
Fターム 4B050DD01
4B050GG04
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB13
4C076DD63A
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要約 新しい機序の抗B型肝炎ウイルス薬を提供することを課題とする。hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗B型肝炎ウイルス薬が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項2】
前記マイクロRNAがhsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p及びhsa-miR-4681からなる群より選択されるマイクロRNAである、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項3】
前記マイクロRNAがhsa-miR-6133、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4272、hsa-miR-4633-5p及びhsa-miR-302c-3pからなる群より選択されるマイクロRNAである、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項4】
前記マイクロRNAがhsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p及びhsa-miR-548c-3pからなる群より選択されるマイクロRNAである、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項5】
前記マイクロRNAがhsa-miR-302c-3pである、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項6】
抗ウイルス効果に加え、がん細胞の浸潤能に対する抑制効果を発揮する、請求項5に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項7】
前記マイクロRNAがhsa-miR-6133である、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項8】
抗ウイルス効果に加え、肝線維化に対する抑制効果を発揮する、請求項7に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項9】
前記有効成分が、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAである、請求項1に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項10】
HBVの閉環状二本鎖DNA(cccDNA)からのmRNAの転写を抑制する作用、及び/又はHBVのpregenomic RNAと逆転写酵素の結合を阻害する作用、によって抗ウイルス効果を発揮する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【請求項11】
核酸アナログ及び/又はインターフェロン製剤と併用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はB型肝炎ウイルス(HBV)に対する薬剤に関する。詳しくは、抗HBV薬及びその用途に関する。本出願は、2017年4月18日に出願された日本国特許出願第2017-081717号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)はヒト肝細胞に特異的に感染するDNAウイルスであり、肝炎、肝硬変、肝がんなど、様々な肝疾患の原因となっている。HBVは3.2 kbpの不完全2本鎖DNAを持つウイルスであり、そのゲノムはヌクレオキャプシドに格納され、さらに外側をエンベローブが取り囲んでいる。肝細胞へHBVが侵入すると、まずエンベロープからヌクレオキャプシドが放出され、核へ移行する(図1)。核に入ったHBVゲノムは宿主細胞の様々な酵素により閉環状2本鎖DNA(cccDNA)に変換される。このcccDNAは子孫ウイルスのゲノムやタンパクを生成するために必須な鋳型であるが、一度形成されたcccDNAは極めて安定であり感染肝細胞の核内に長期間存在し続ける。
【0003】
cccDNAからは約3.5 kb、2.4 kb、2.1 kb、0.7 kb のmRNAが転写される。3.5 kbのmRNAの一部はpregenomic RNAとして遺伝情報を子孫ウイルスに伝えるとともに、ヌクレオキャプシドを構成する材料となるHBcタンパク及び逆転写酵素をコードしている。2.4 kb及び2.1 kbのmRNAは3種のエンベロープタンパクHBsをコードしている。0.7 kb mRNAはcccDNAからのウイルスmRNAの転写を制御するHBxタンパクをコードしている。HBVはDNAウイルスであるが、その遺伝情報は一度pregenomic RNAを経由して子孫ウイルスに伝達される。cccDNAから転写されたpregenomic RNAはウイルス由来の逆転写酵素とともにキャプシドに取り込まれる。ヌクレオキャプシド内で逆転写酵素はpregenomic RNAから1本鎖DNAを合成する。続いて鋳型RNAを分解した後、相補鎖DNAを合成する。その後ヌクレオキャプシドはエンベロープに包まれ、細胞外へ放出される。また、HBV感染細胞はエンベロープタンパクHBsと脂質二重膜から構成されるHBs抗原を大量に産生する(図1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2016-119900号公報
【特許文献2】特開2013-507987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HBV感染細胞は血中に大量の感染性粒子を放出し感染を広げる。さらに感染性ウイルスの数千倍に達するHBs抗原(ウイルス表面抗原HBsと脂質二重膜のみで構成された小型粒子)を血中に放出し、宿主免疫によるウイルス排除を妨害している。現在HBV治療に用いられる抗ウイルス薬は逆転写阻害剤及びポリエチレングリコール修飾インターフェロンα(PEG-IFN)を含むインターフェロンα製剤であり、このような特徴的な生活環を示すHBVに十分対処できない。そこで、新しい機序の抗ウイルス薬の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく研究を進める中、本発明者らはマイクロRNA(miRNA)に着目した。miRNAはヒト細胞の細胞質に存在する短い1本鎖RNA分子群(一般に20~25塩基の長さ)であり、ヒトでは6,000種類以上が同定されている。各miRNAの配列と相補的な配列が複数の遺伝子から転写されるmRNAの一部分に存在し、miRNAはそれら標的mRNAに結合し分解する。1種類のmiRNAに対して標的となる遺伝子は数十~数百種類存在し、miRNAは標的遺伝子の機能を減弱させることにより細胞の増殖、分化、形態、遊走能などを調節している。尚、miRNAに関する研究報告は多く、例えば癌の診断用バイオマーカーへのmiRNAの利用が提案されている(例えば、上掲の特許文献1、2を参照)。
【0007】
一方、HBV cccDNAからのウイルスmRNAの転写は肝細胞特異的、あるいは非特異的な数十種類の転写因子に依存しているが、それらの転写因子がmiRNAによって調節されていることが予想される。従って、細胞内の特定のmiRNAの量を増減させることによりHBVの複製、あるいはHBs抗原の産生が抑制または亢進することが期待される。また、HBV mRNA自体がmiRNAの標的分子となり、miRNAにより分解される可能性もある。そこで、miRNAが抗HBV薬の成分として有望であると考え、HBVの複製を抑制し得るヒトmiRNAの網羅的同定を試みた。
【0008】
網羅的な解析の結果(後述の実施例を参照)、HBVの複製を強く抑制する38種類のヒトmiRNAを同定することに成功した。これらのmiRNAの中には、HBs抗原の産生をも抑制するものが存在していた。次に、生物学的役割等についての報告が多数存在し、解析が進んでいるhsa-miR-302c-3pと、HBs抗原の産生抑制効果が特に高いhsa-miR-6133を選択し、更に検討を進めたところ、その作用機序等が判明するとともに、重要且つ興味深い事実が明らかとなった。即ち、hsa-miR-302c-3pは、以下の二つの作用機序(1)及び(2)を根幹とした多様な機序で抗ウイルス効果を発揮するという、驚くべき事実が明らかになるとともに、hsa-miR-302c-3pがHBV複製阻害効果のみならず、がん細胞の浸潤能抑制効果をも発揮するという、臨床上、極めて重要な知見が得られた。
(1)宿主標的遺伝子であるBMRP2遺伝子の発現抑制、及び宿主転写因子であるHNF4Aの間接的な発現抑制により、cccDNAからのmRNAの転写を抑制する。
(2)pregenomic RNAの5'末端付近の配列と相同性を示し、この特徴によってpregenomic RNAのε-loop構造の形成を妨げ、pregenomic RNAと逆転写酵素との結合を阻害する。
【0009】
一方、hsa-miR-6133については、hsa-miR-302c-3pと同様に転写レベルでHBV複製を阻害していることが示唆された。また、重要なことには、hsa-miR-6133はコラーゲンの産生抑制効果も示し、HBV複製阻害に加え肝線維化の阻止による治療効果も発揮し得るものであった。
【0010】
以上の通り、本発明者らによる詳細な検討によって、miRNAを利用してHBVの複製を抑制するという戦略(換言すれば、抗HBV薬の有効成分にmiRNAを利用すること)の有効性及び実効性が示されるとともに、有望なmiRNAが特定された。また、実用化を進める上で重要かつ有益な情報が得られた。以下の発明は、主としてこれらの成果ないし知見に基づく。
[1]hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む核酸を有効成分とする、抗B型肝炎ウイルス薬。
[2]前記マイクロRNAがhsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p及びhsa-miR-4681からなる群より選択されるマイクロRNAである、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[3]前記マイクロRNAがhsa-miR-6133、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4272、hsa-miR-4633-5p及びhsa-miR-302c-3pからなる群より選択されるマイクロRNAである、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[4]前記マイクロRNAがhsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p及びhsa-miR-548c-3pからなる群より選択されるマイクロRNAである、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[5]前記マイクロRNAがhsa-miR-302c-3pである、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[6]抗ウイルス効果に加え、がん細胞の浸潤能に対する抑制効果を発揮する、[5]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[7]前記マイクロRNAがhsa-miR-6133である、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[8]抗ウイルス効果に加え、肝線維化に対する抑制効果を発揮する、[7]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[9]前記有効成分が、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAである、[1]に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[10]HBVの閉環状二本鎖DNA(cccDNA)からのmRNAの転写を抑制する作用、及び/又はHBVのpregenomic RNAと逆転写酵素の結合を阻害する作用、によって抗ウイルス効果を発揮する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
[11]核酸アナログ及び/又はインターフェロン製剤と併用される、[1]~[10]のいずれか一項に記載の抗B型肝炎ウイルス薬。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】HBV生活環の概略図。
【図2】HBV複製を抑制するヒトmiRNAのスクリーニング。A: スクリーニングのスキーム。B: スクリーニングの結果(概要)。C:上清HBV DNA濃度(上)及び細胞生存率(下)に対する各miRNAの影響。
【図3】スクリーニングにより単離された38種のヒトmiRNA。上清HBV DNA濃度(上)、上清HBs抗原濃度(中)及び細胞生存率(下)に対する各miRNAの影響。
【図4】hsa-miR-302c-3pのHBV複製抑制効果。A: 実験スキーム。B: 定量PCR、ELISA、サザンブロット解析、及びノザンブロット解析の結果。ssDNAはHBV single strand DNA(複製中間体)を、pgRNAはpregenomic RNAを、miControlは対照群miRNAをそれぞれ表す(以下の図面でも同様)。
【図5】hsa-miR-302c-3pによるcccDNA抑制効果。A: 定量PCRの結果。B: ウエスタンブロット解析の結果。
【図6】hsa-miR-302c-3pによるHBV逆転写抑制効果。A: pregenomic RNAのε-loop構造(左)とhsa-miR-302c-3pの配列の相同性。B: 免疫沈降物のRT-qPCR解析の結果。
【図7】hsa-miR-302c-3pによって変動する宿主遺伝子群。A: 標的遺伝子の発現変化率。B: HBV関連宿主転写因子の発現変化率。
【図8】hsa-miR-302c-3pの抗HBV作用における宿主因子の関与。A: 標的遺伝子群の発現を単独で又は組み合わせて抑制した場合の上清HBV DNA濃度。B: 標的遺伝子群の発現を単独で又は組み合わせて抑制した場合の上清HBs抗原濃度。C: 宿主転写因子群の発現を単独又は組合せて抑制した場合の上清HBV DNA濃度。D: 宿主転写因子群の発現を単独又は組合せ抑制した場合の上清HBs抗原濃度。E:実際にHBV感染細胞にhsa-miR-302c-3pを導入した場合のBMPR2遺伝子とHNF4遺伝子の発現変化。F: BMPR2遺伝子をsiRNA法で抑制した場合のHNF4遺伝子の発現変化、HNF4遺伝子をsiRNA法で抑制した場合のBMPR2遺伝子の発現変化、及びBMPR2遺伝子とHNF4遺伝子の発現を単独又は組合せて抑制した場合の上清HBV DNA濃度と上清HBs抗原濃度の変化。
【図9】hsa-miR-302c-3pによるHBV複製抑制効果(動物モデルで確認)。A: 実験スキーム。B: 血清HBV、血清HBsAg及び血清ALTの測定結果。
【図10】hsa-miR-302c-3pによる、肝がん細胞株の浸潤能抑制。A: 実験スキーム。B: ギムザ染色像。C: 浸潤した細胞数の比較。
【図11】hsa-miR-302c-3pによるHBV複製阻害のメカニズム(A)と肝がん細胞株の浸潤能抑制(B)。
【図12】hsa-miR-6133によるHBV複製抑制効果。A: 実験スキーム。B: 定量PCR、ELISA、サザンブロット解析、及びノザンブロット解析の結果(Hep G2-NTCP細胞)。C: 定量PCRの結果(初代ヒト肝細胞)。
【図13】hsa-miR-6133によるHBV複製抑制効果(動物モデルで確認)。A: 実験スキーム。B: 血清HBV、血清HBsAg、血清ALT及び体重の測定結果。
【図14】hsa-miR-6133による、肝星細胞由来培養細胞のコラーゲン産生の抑制。A: 実験スキーム。B: 定量PCRの結果。C: ウエスタンブロット解析の結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は抗HBV薬に関する。本発明は、HBVの複製を抑制する38種類のmiRNAの同定に成功したという成果、及びこれらのマイクロRNAの中にはHBs抗原の産生も抑制するものがあるとの知見、更には、詳細な検討を進めたhsa-miR-302c-3p及びhsa-miR-6133の作用メカニズムや特徴的な効果を明らかにした成果に基づく。「抗HBV薬」とは、HBVに対して抗ウイルス効果を示し、HBV関連疾患(即ち、B型肝炎、肝硬変、肝がん等、HBVの感染に起因する疾患)の治療又は予防に有効な医薬である。従って、抗HBV薬はHBV関連疾患に対して治療的又は予防的効果を発揮する。治療的効果には、標的疾患/病態に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、標的疾患/病態に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。標的疾患/病態に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、標的疾患/病態に対する医薬に該当する。

【0013】
本発明の抗HBV薬は、HBVの複製を抑制すること、及び/又はHBs抗原の産生を抑制することによってその抗ウイルス効果を発揮する。本発明は既存の抗HBV薬とは異なる機序でその効果を発揮する。この点においてその臨床的意義は極めて大きい。また、この特徴に注目すれば、本発明の抗HBV薬を他の抗HBV薬と併用することは、好ましい使用形態の一つといえる。「他の抗HBV薬」の例はエンテカビルやテノホビル等の核酸アナログ、インターフェロン(Peg-IFNを含む)製剤である。本発明の抗HBV薬と、作用機序の異なる他の抗HBV薬を併用した場合には相加的又は相乗的な効果によって治療効果の増大や予後の改善などを期待できる。ここで、「併用」とは、同一の患者に対して本発明の抗HBV薬と他の抗HBV薬が投与されることを意味する。両者の投与のタイミング/時期は特に限定されず、即ち、いずれを先に投与してもよい。また、片方の抗HBV薬による治療開始後のある時点において他方の抗HBV薬による治療を開始したり、片方の抗HBV薬による治療と他方の抗HBV薬による治療を同時に開始したり、片方の抗HBV薬による治療を一旦終了した段階で他方の抗HBV薬による治療を開始するなど、様々な併用態様を採用し得る。

【0014】
本発明の抗HBV薬は、38種類のマイクロRNA、即ち、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む核酸(以下、「本発明の核酸」と呼称することがある)を有効成分とする。この特徴により、本発明の抗HBV薬は上記38種のマイクロRNAのいずれかと同様の作用を示し、HBVに対する抗ウイルス効果を発揮する。以下、上記38種のマイクロRNAの配列を示す。尚、本発明の核酸の具体例は、上記38種類のマイクロRNA自体である。
hsa-miR-1185-5p:AGAGGAUACCCUUUGUAUGUU(配列番号1)
hsa-miR-4456:CCUGGUGGCUUCCUUUU(配列番号2)
hsa-miR-4446-5p:AUUUCCCUGCCAUUCCCUUGGC(配列番号3)
hsa-miR-6133:UGAGGGAGGAGGUUGGGUA(配列番号4)
hsa-miR-519c-3p:AAAGUGCAUCUUUUUAGAGGAU(配列番号5)
hsa-miR-302c-3p:UAAGUGCUUCCAUGUUUCAGUGG(配列番号6)
hsa-miR-548c-3p:CAAAAAUCUCAAUUACUUUUGC(配列番号7)
hsa-miR-4681:AACGGGAAUGCAGGCUGUAUCU(配列番号8)
hsa-miR-4633-5p:AUAUGCCUGGCUAGCUCCUC(配列番号9)
hsa-let-7d-5p:AGAGGUAGUAGGUUGCAUAGUU(配列番号10)
hsa-miR-432-5p:UCUUGGAGUAGGUCAUUGGGUGG(配列番号11)
hsa-miR-1827:UGAGGCAGUAGAUUGAAU(配列番号12)
hsa-miR-519b-3p:AAAGUGCAUCCUUUUAGAGGUU(配列番号13)
hsa-miR-485-5p:AGAGGCUGGCCGUGAUGAAUUC(配列番号14)
hsa-miR-1275:GUGGGGGAGAGGCUGUC(配列番号15)
hsa-miR-548ao-3p:AAAGACCGUGACUACUUUUGCA(配列番号16)
hsa-miR-620:AUGGAGAUAGAUAUAGAAAU(配列番号17)
hsa-miR-4661-3p:CAGGAUCCACAGAGCUAGUCCA(配列番号18)
hsa-miR-766-5p:AGGAGGAAUUGGUGCUGGUCUU(配列番号19)
hsa-miR-382-5p:GAAGUUGUUCGUGGUGGAUUCG(配列番号20)
hsa-miR-4755-5p:UUUCCCUUCAGAGCCUGGCUUU(配列番号21)
hsa-miR-520b:AAAGUGCUUCCUUUUAGAGGG(配列番号22)
hsa-miR-6510-5p:CAGCAGGGGAGAGAGAGGAGUC(配列番号23)
hsa-miR-4493:AGAAGGCCUUUCCAUCUCUGU(配列番号24)
hsa-miR-4737:AUGCGAGGAUGCUGACAGUG(配列番号25)
hsa-miR-519a-3p:AAAGUGCAUCCUUUUAGAGUGU(配列番号26)
hsa-miR-520h:ACAAAGUGCUUCCCUUUAGAGU(配列番号27)
hsa-miR-4443:UUGGAGGCGUGGGUUUU(配列番号28)
hsa-miR-520c-3p:AAAGUGCUUCCUUUUAGAGGGU(配列番号29)
hsa-miR-1298:UUCAUUCGGCUGUCCAGAUGUA(配列番号30)
hsa-miR-1224-5p:GUGAGGACUCGGGAGGUGG(配列番号31)
hsa-miR-4272:CAUUCAACUAGUGAUUGU(配列番号32)
hsa-miR-2467-3p:AGCAGAGGCAGAGAGGCUCAGG(配列番号33)
hsa-miR-520g:ACAAAGUGCUUCCCUUUAGAGUGU(配列番号34)
hsa-miR-4690-5p:GAGCAGGCGAGGCUGGGCUGAA(配列番号35)
hsa-miR-1294:UGUGAGGUUGGCAUUGUUGUCU(配列番号36)
hsa-miR-4699-5p:AGAAGAUUGCAGAGUAAGUUCC(配列番号37)
hsa-miR-5197-5p:CAAUGGCACAAACUCAUUCUUGA(配列番号38)

【0015】
本発明の抗HBV薬を構成する核酸は、生体に存在するマイクロRNAと同一の形態の一本鎖であっても、或いは二本鎖であってもよい。前者の場合、本発明の抗HBV薬は、典型的には、上記38種類のマイクロRNAのいずれか、即ち特定のマイクロRNAを有効成分として含む。但し、生体内で当該マイクロRNAを生成するように設計された核酸(Pre-miRNA、Pri-miRNA等)を用いることにしてもよい。一方、二本鎖の核酸の場合には、RNAとRNAの二本鎖、RNAとDNAの二本鎖、RNAとペプチド核酸(PNA)との二本鎖等、様々な形態を取りうる。「ペプチド核酸(PNA)」とは、ポリペプチド骨格に核酸塩基が結合した構造を有する化合物である。ポリペプチド骨格の例として2-アミノエチルグリシンを骨格単位とするものが挙げられるが、本発明におけるPNAはこれに限定されるものではない。PNAは核酸分解酵素に耐性を示し、DNAやRNAよりも安定性が高い。また、一般に、ペプチド分解酵素に対しても高い耐性を示す。PNAはDNA又はRNAとハイブリダイズすることができる。

【0016】
所望の効果(即ち、HBVに対する抗ウイルス効果)を発揮し得る限りにおいて、有効成分となる核酸の長さは特に限定されない。但し、本発明の核酸の長さは、例えば17~28塩基長、好ましくは17~24塩基長である。

【0017】
本発明の抗HBV薬が、「上記38種類のマイクロRNAからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む」との条件を満たす2種類以上の核酸を含んでいてもよい。この場合、2種類以上の核酸による相加的ないし相乗的な効果を期待できる。

【0018】
後述の実施例に示すように、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p及びhsa-miR-4681はHBVの複製に対して高い抑制効果を示した。また、hsa-miR-6133、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4272、hsa-miR-4633-5p及びhsa-miR-302c-3pはHBs抗原産生に対する高い抑制効果を示した。この結果を踏まえ、好ましい一態様ではhsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p及びhsa-miR-4681からなる群より選択される核酸を有効成分として採用し、HBVの複製に対して高い抑制効果を期待できる抗HBV薬とする。好ましい別の一態様では、hsa-miR-6133、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4272、hsa-miR-4633-5p及びhsa-miR-302c-3pからなる群より選択される核酸を有効成分として採用し、HBs抗原産生に対して高い抑制効果を期待できる抗HBV薬とする。また、より好ましい一態様では、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p及びhsa-miR-548c-3pからなる群より選択される核酸を有効成分として採用し、HBVの複製に対して高い抑制効果を期待できる上に、HBs抗原産生に対しても高い抑制効果を期待できる抗HBV薬とする。

【0019】
特に好ましい一態様では、有効成分としてhsa-miR-302c-3p又はhsa-miR-6133が用いられる(但し、hsa-miR-302c-3p又はhsa-miR-613に加えて、他の核酸を有効成分としてもよい)。hsa-miR-302c-3pはHBVのpregenomic RNAの5'末端付近の配列に相同性を示し、この特徴により、pregenomic RNAのε-loop構造の形成を妨げ、pregenomic RNAと逆転写酵素との結合を阻害するという作用・効果を発揮し得る。hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4443、hsa-miR-4633-5pにも同様の作用・効果を期待できる。また、hsa-miR-302c-3pによれば、抗ウイルス効果に加え、がん細胞の浸潤能に対する抑制効果も発揮される。一方、hsa-miR-6133は抗ウイルス効果に加え、肝線維化に対する抑制効果も発揮し得る。

【0020】
有効成分である核酸を単独で、或いは適当なベクター(例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター)に当該核酸又はその前駆体を発現するコンストラクトを組み込んだ後、製剤化することができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、緩衝剤、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水、担体など)を含有させることができる。緩衝剤としてはリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などを用いることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0021】
製剤化する場合の剤型も特に限定されない。剤型の例は注射剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤及びシロップ剤である。

【0022】
患者へ投与後、効率的に標的細胞(典型的には肝細胞)へ取り込ませるためには、製剤化に際し、ドラッグデリバリー技術を利用するとよい。静脈内投与等によって投与した場合の血中安定性や肝細胞への取り込み効率を高めるため、例えば、以下の形態で薬剤送達することが可能である。これらのドラッグデリバリー技術はがん治療のために設計されたsiRNAをがん細胞に取り込ませるために開発されたものであるが、miRNA等、他の核酸の送達にも応用できる。

【0023】
(1)カチオン性脂質-核酸(典型的にはmiRNA)複合体
LNP(Lipid Nanoparticle、pH応答性カチオン性脂質)はカナダArbutus社が保有する技術であり(例えば2015 International Meeting Molecular Biology of Hepatitis B Virus における報告(P-41)を参照)、pH応答性カチオン性脂質と核酸およびその類似分子(以下、核酸等)の複合体を静脈内投与すると肝臓へ効率よく核酸等を送達することができる。

【0024】
(2)多機能性エンベロープ型ナノ構造体(Multifunctional envelope-type nanodevice、MEND)
この技術は北海道大学薬学研究院原島秀吉教授の研究グループにより開発されたリポソーム型ドラッグデリバリー技術であり(例えば秋田英万ら「多機能性エンベロープ型ナノ構造体」. (2007). Drug Delivery System, 22-2:115-122を参照)、PEG及びコレステロール修飾されたリポソーム内に核酸等を格納し、静脈内投与を行うことで肝臓へ核酸等を送達できる。

【0025】
(3)Nアセチルガラクトサミンポリマー修飾核酸(典型的にはmiRNA)
核酸等をNアセチルガラクトサミンポリマー修飾した分子は肝細胞に発現しているアシアロ糖タンパク受容体(ASGPR)に結合し、核酸等を効率よく細胞内へ送達することができる。

【0026】
(4)アテロコラーゲン-miRNA複合体
ウシの真皮から抽出したI型コラーゲンを酵素処理して生成したアテロコラーゲンと核酸等を混合し形成した複合体は静脈内投与により効率的に細胞に取り込まれる。この技術は国立がん研究センター研究所落谷孝広教授の研究グループにより開発されたものである(例えばOchiya, T et al. Biomaterials for gene delivery: atelocollagen-mediated controlled release of molecular medicines. (2001). 1(1):31-52を参照)。

【0027】
(5)高分子ミセル(PEG-ポリカチオンブロック共重合体)
ポリエチレングリコール又はその誘導体からなる親水性セグメントと、ポリペプチドからなるポリカチオン性セグメントの共重合体で高分子ミセルを形成できる。ミセル内に核酸等を格納し、肝細胞へ効率よく核酸等を送達できる。この技術は東京大学大学院工学系研究科片岡一則教授の研究グループにより開発された(例えばNuhn, L. et al. Size-Dependent Knockdown Potential of siRNA-Loaded Cationic Nanohydrogel Particles. 2014. Biomacromolecules. 15:4111-4121を参照)。

【0028】
本発明の抗HBV薬はその剤型に応じて非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内又は腹腔内注射、標的細胞又は組織への注射(局所投与)、経皮、経鼻、経粘膜など)又は経口投与によって対象に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、静脈内投与と並行して標的細胞又は組織への注射(局所投与)を行う)。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばヒト肝細胞置換キメラマウスやチンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ギボンである)を含む。好ましい一態様では、本発明の抗HBV薬はヒトに対して適用される。

【0029】
本発明の抗HBV薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールとしては例えば1日1回~数回、2日に1回、或いは3日に1回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。

【0030】
以上の記述から明らかな通り、本出願は、HBV関連疾患の患者に対して、hsa-miR-1185-5p、hsa-miR-4456、hsa-miR-4446-5p、hsa-miR-6133、hsa-miR-519c-3p、hsa-miR-302c-3p、hsa-miR-548c-3p、hsa-miR-4681、hsa-miR-4633-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-432-5p、hsa-miR-1827、hsa-miR-519b-3p、hsa-miR-485-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-548ao-3p、hsa-miR-620、hsa-miR-4661-3p、hsa-miR-766-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-4755-5p、hsa-miR-520b、hsa-miR-6510-5p、hsa-miR-4493、hsa-miR-4737、hsa-miR-519a-3p、hsa-miR-520h、hsa-miR-4443、hsa-miR-520c-3p、hsa-miR-1298、hsa-miR-1224-5p、hsa-miR-4272、hsa-miR-2467-3p、hsa-miR-520g、hsa-miR-4690-5p、hsa-miR-1294、hsa-miR-4699-5p及びhsa-miR-5197-5pからなる群より選択されるマイクロRNAの配列を含む核酸を治療上有効量投与することを特徴とする、HBV関連疾患の治療方法も提供する。
【実施例】
【0031】
miRNAが抗HBV薬の有効成分として有望であると考え、HBVの複製を抑制し得るヒトmiRNAの網羅的同定を試みた。
【実施例】
【0032】
1.方法
Darmacon社 miRIDIAN Human miRNA Mimic Libraryは2,048種のヒト由来miRNAの活性型分子と類似の作用を持つ化学修飾RNA分子(miRNA mimic)のライブラリであり、リポフェクション法で細胞に導入されるとmiRNAと同等に機能する。HBVが肝細胞に侵入するために利用する受容体NTCPを安定発現する肝がん由来細胞株Hep G2-NTCPはHBVに効率よく感染しその細胞内でHBVが複製する。また、感染したHep G2-NTCP細胞は培養上清中に感染性子孫ウイルスを分泌するとともに、多量のHBs抗原を産生することから、in vivo HBV持続感染モデルとして広く利用されている。そこで、このモデル細胞を用い、上述のmiRNAライブラリからHBV複製を抑制するmiRNAのスクリーニングを行なった(図2A)。
【実施例】
【0033】
Hep G2-NTCP細胞を播種し2日間培養した後、3% DMSO含有培地に交換し、さらに24時間培養した。次に、3% DMSO、4% PEG8000含有培地に細胞あたり3,000コピーのHBVを加えた培地に交換し、感染処理を行なった。感染24時間後に細胞をPBSで3回洗浄し、2% DMSO含有培地に交換した。同様の洗浄処理を感染48時間後に行なった後、HBV感染Hep G2-NTCP細胞をトリプシン処理により回収した。回収した細胞を1ウェルあたり25,000細胞の密度で0.5% DMSO含有培地に懸濁し96ウェルプレートに播種した。感染4日後、1.5 pmolの各miRNA mimicをリポフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAXと混合し複合体を形成させた後、その複合体を培地に添加することによりmiRNA mimicを感染細胞に導入した。感染後5日目に培地を0.5% DMSO含有培地に交換し培養を続け、感染9日目に培養上清を回収した。培養上清回収後、細胞生存率を確認するため、Promega社CellTiter96 Aqueous One Solution Cell Counting Kitを用いてMTS assayを行なった。
【実施例】
【0034】
2.結果
(1)HBVに対する抗ウイルス効果を持つヒトmiRNAの同定
各miRNA mimicを導入したHBV感染細胞の培養上清のHBV DNA濃度を定量PCR法で測定した結果、2,048種類のmiRNAのうち、上清HBV DNA濃度50%以上減少、かつ細胞生存率80%以上~120%以下に収まるmiRNAが154種類同定された(図2B、2C)。実験誤差による偽陽性を排除するため、miRNAあたりサンプル数3ウェルの条件で再実験を行なったところ、154種類のうち38種類の新規miRNAが上清HBV DNA濃度を50%以上減少させる効果を示すことが確認された。また、培養上清中のHBs抗原濃度を自動測定器により測定したところ、これら38種類のmiRNAのいくつかは上清HBs抗原濃度を減少させた(図2C、図3)。これらのmiRNAの塩基配列(上から順に配列番号1~38)とHBV抑制効果を表1に示す。
【表1】
JP2018193902A1_000002t.gif
【実施例】
【0035】
本発明で単離されたmiRNAのうち、hsa-miR-302c-3p(以下、「miR-302c-3p」と略称することがある)及びhsa-miR-6133(以下、「miR-6133」と略称することがある)について、HBV抑制のメカニズムを詳細に解析した結果を以下に示す。また、miR-302c-3pによるがん細胞の浸潤能抑制効果、miR-6133による線維形成抑制効果についても記した。
【実施例】
【0036】
(2)miR-302c-3pのHBVに対する抗ウイルス効果
miR-302c-3pは細胞のリプログラミングの促進や抗腫瘍効果が報告されているmiRNAである。上記スクリーニングの結果、miR-302c-3pはHBV感染細胞の上清HBV DNA濃度、HBs抗原濃度を減少させることが明らかとなった。そこで、miR-302c-3pのHBV複製に及ぼす効果をさらに詳細に解析した(図4A)。定量PCR、ELISA、サザンブロット、及びノザンブロット解析の結果、miR-302c-3pは対照群(control mimic導入群)と比較して上清HBV DNA濃度及びHBs抗原濃度を1/5以下に減少させた(図4B)。さらに、細胞内HBV DNA量とpregenomic RNA量も1/5以下に減少していた(図4B)。
【実施例】
【0037】
(3)miR-302c-3pによるcccDNA減少効果
cccDNAが長期間肝内に残存することはHBV排除を困難にする要因である。そこでmiR-302c-3pのcccDNA量に対する効果を検討した。Hep G2-NTCP細胞へHBVを感染後4日目にmiR-302cおよびcontrol mimicを導入した。また比較対照として未処理群(Mock)および、感染4日目から9日目まで核酸アナログentecavir 25 nMで処理した群を準備した。感染9日目に回収した細胞内DNAに含まれるcccDNAを定量PCRにより測定した結果、miR-302c-3p処理群ではcontrol mimic処理群と比較して有意にcccDNA量が低下していた(図5A)。Entecavir処理群では細胞内HBV DNAは顕著に低下したが、cccDNA量は未処理群に対して差異は認められなかった。感染9日目の細胞内タンパクに対してウエスタンブロット解析を行ったところ、興味深いことにmiR-302c-3p処理群ではヌクレオキャプシドを構成する主なタンパクであるHBVコアタンパクが顕著に減少していた(図5B)。Entecavir処理群では差は認められなかった。
【実施例】
【0038】
Hep G2-NTCP細胞ではHBV感染後約9~12日でウイルス複製が最大に達する。細胞内で生成した不完全2本鎖DNAを含むヌクレオキャプシドの一部は核へ輸送され、cccDNAの蓄積に寄与することが報告されている(図1)。miR-302c-3pのcccDNA減少効果が感染後4-9日で観察された結果より、miR-302c-3p処理群ではヌクレオキャプシド形成が強力に阻害されることにより間接的にcccDNA蓄積が抑制されたと推測される。
【実施例】
【0039】
(4)miR-302c-3pによるHBV逆転写阻害効果
興味深いことに、miR-302c-3pはpregenomic RNAの5’末端付近の配列に相同性を示し、pregenomic RNAに結合する可能性が考えられた。pregenomic RNAの該当部分はε-loopと呼ばれる高次構造を形成し、HBV逆転写酵素との結合に不可欠である(図6A)。このことから、もしmiR-302c-3pがpregenomic RNAに結合すれば、ε-loop構造の形成が阻害されるために逆転写酵素がpregenomic RNAに結合できないことが示唆される。この可能性を確かめるために、pregenomic RNAと逆転写酵素の結合をmiR-302c-3pが阻害するかどうかを検討した。具体的にはHA標識HBV逆転写酵素(Pol)とpregenomic RNAをHEK293細胞で共発現させ、同時に対照miRNAまたはmiR-302c-3pを導入した。その後、抗HA抗体を用いてHA標識逆転写酵素を免疫沈降し、沈降物に含まれるpregenomic RNAをRT-qPCR法を用いて定量した。その結果、対照miRNAを導入した対象群に比べてmiR-302c-3pを導入した実験群では沈降物のpregenomic RNAが減少していた(図6B)。従って、miR-302c-3pはpregenomic RNAとHBV逆転写酵素の結合を阻害することが示された。
【実施例】
【0040】
(5)宿主転写因子群及びmiR-302c-3p標的遺伝子群のHBV複製への影響
miR-302c-3pがHBV mRNAの転写を抑制することが明らかとなったが、その分子メカニズムを明らかにするため、宿主遺伝子の関与について検討した。HBVmRNAの転写に関わる既知の宿主転写因子群及びmiR-302c-3pの標的と予測された遺伝子の発現が、miR-302c-3pの導入により変化するかどうかをマイクロアレイ実験により解析した。具体的には、肝がん由来細胞株Hep G2にmiR-302c-3pを導入し、マイクロアレイ解析により宿主遺伝子の発現を対照群と網羅的に比較した。その結果、miR-302c-3pの導入により直接の標的遺伝子LEFTY1、DAZAP2、TGFBR2、BMPR2や、HBVの転写を制御する転写因子HNF4A、FOXA1、CREB1、PPARAの発現が有意に抑制されていた(図7A、7B)。そこでまず、miR-302c-3p標的遺伝子の発現をそれぞれ単独及び組み合わせでRNA干渉法(siRNA法)により抑制した結果、BMPR2の遺伝子発現を抑制した場合のみ、上清HBV濃度、HBs抗原濃度が共に抑制された(図8A、8B)。従って、miR-302c-3pによる、HBVに対する抗ウイルス効果の一部はBMRP2遺伝子の発現抑制に起因することが示唆された。次に、HNF4A、FOXA1、CREB1、PPARAの発現をそれぞれ単独及び組み合わせでsiRNA法により抑制した結果、HNF4遺伝子発現を抑制した場合のみ、上清HBV濃度、HBs抗原濃度が共に抑制された(図8C、8D)。従って、miR-302c-3pによる、HBVに対する抗ウイルス効果にはBMRP2遺伝子に加えHNF4遺伝子が関与していることが示唆された。BMPR2遺伝子、HNF4遺伝子の発現は実際にHBV感染細胞にmiR-302c-3pを導入した際に抑制されることが確かめられている(図8E)。一方、BMPR2遺伝子、HNF4遺伝子をsiRNA法で抑制した際に、それぞれHNF4遺伝子、BMPR2遺伝子の発現低下は観察されなかった(図8F)。従って、これら二つの遺伝子の発現は独立にmiR-302c-3pによって制御されていることが示唆される。この二つの遺伝子の発現をsiRNA法で同時に抑制すると、単独のsiRNA処理に比べ、特に上清HBs抗原濃度がさらに低下した(図8F)。従って、miR-302c-3pによるHBV遺伝子発現抑制はBMPR2遺伝子、HNF4遺伝子が相補的に関与していることが示唆された。
【実施例】
【0041】
(6)動物モデルにおけるmiR-302c-3pのHBV複製抑制効果
HBV治療薬としてのmiR-302c-3pの抗ウイルス効果をin vivoで検証するため、染色体に1.3倍長HBV DNAを保持するHBVトランスジェニックマウスを用いた試験を行った。このトランスジェニックマウスでは肝臓内でHBVが複製され、血中にウイルス粒子およびHBs抗原が存在する。このマウスにカチオン性脂質invivofectamineと混合したmiR-302c-3pを20 μg/bodyの条件で尾静脈より注射した(図9A)。miR-302c-3p投与直前および投与後3日目の血清を回収し、HBV DNAおよびHBsAgを測定した結果、未処理群に対してHBV DNA濃度は約1/10に、HBsAgは約半分に低下した(図9B)。肝傷害の指標である血中アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度は低く、正常値(30 IU/mL以内)であった。miR-302c-3pはin vivo HBV複製モデルに対しても有効であり、肝傷害も誘発しないことから、治療薬として有望である。
【実施例】
【0042】
(7)miR-302c-3pによる肝がん細胞株の浸潤能抑制効果
マイクロRNAは増殖、分化など細胞の挙動を多面的に制御している。また、多くのマイクロRNAががんの増殖、分化、浸潤能、転移を抑制することが報告されている。HBVは肝炎の原因であるのみならず、肝細胞がんを誘発する。そこで、肝細胞がんに対するmiR-302c-3pの有効性を探るため、がん浸潤能に対する効果を検証した。ヒト肝がん由来細胞株HuH-7およびHep G2にmiR-302c-3p mimicあるいはcontrol mimicをトランスフェクションにより導入した。24時間培養後細胞を回収し、invasion assayを行った(図10A)。Matrigel Invasion Chamber内に血清不含有培地に懸濁した1 x 105の細胞を加え、血清および50 ng/mLのhepatocyte growth factor (HGF)を含む培地を入れたウェルに移し、48時間培養した。HGF刺激により浸潤能を獲得した細胞はMatrigel Invasion Chamber下部のマトリゲル層を通過し、下側へ集まる。培養後マトリゲル層を通過した細胞をギムザ染色し、視野内の細胞数を計測した(図10B)。その結果、HuH-7、Hep G2のいずれの細胞株においてもmiR-302c-3p処理群では著明にがん細胞の浸潤が阻止された(図10C)。
【実施例】
【0043】
(8)miR-302c-3pによるHBV複製阻害メカニズムと抗腫瘍効果
以上の検討からmiR-302c-3pは多様な機序でHBV複製を阻害することが明らかとなった。miR-302c-3pをHBV感染細胞に導入するとHBV DNA、HBsAgのみならず細胞内ウイルスmRNA、cccDNAが減少していた。また、細胞内コアタンパクがほとんど消失していた。コアタンパクが産生されないことによりヌクレオキャプシド形成が抑制され、結果的にcccDNA蓄積が停止していると考えられる(図11A)。そのメカニズムとして、(i) miR-302c-3pは直接HBV pregenomic RNAに結合しε-loop形成を妨げ逆転写酵素とpregenomic RNAの結合が阻害され、その結果、HBV複製が低下することが示唆された。(ii) MiR-302c-3pは数百種類の宿主標的遺伝子の発現を抑制する。その結果、標的遺伝子BMPR2の発現抑制および、HBV mRNAの転写に必要な転写因子HNF4の間接的な発現抑制を介してHBV mRNAを減少させることが明らかとなった(図11A)。
【実施例】
【0044】
また、B型慢性肝炎患者では肝がん発症リスクが高い。がんの転移は予後を悪化させるが、原発巣からの転移に先立ってがん細胞は浸潤能を獲得する(図11B)。miR-302c-3pはHBV複製阻害効果のみならずがん細胞の浸潤能を抑制できることから、HBV関連肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝がん)に対する新たな治療戦略となり、臨床的優位性があると考えられる。
【実施例】
【0045】
(9)miR-6133のHBVに対する抗ウイルス効果
miR-6133は乳腺で発現が見られるが、生体内での機能は不明である。HBV感染4日後のHep G2-NTCP細胞に50 nMのmiR-6133 mimicおよびcontrol mimicをトランスフェクションした。感染後7日目に培地を0.5% DMSO含有培地に交換し培養を続け、感染9日目に培養上清、細胞内DNAおよびRNAを回収した(図12A)。miR-302c-3pと同様にmiR-6133はHBV感染細胞の上清HBV DNA濃度、HBs抗原濃度を約1/10に減少させた(図12B)。定量PCR、ELISA、サザンブロット解析、及びノザンブロット解析の結果、細胞内HBV DNA量とpregenomic RNA量も顕著に減少していた(図12B)。したがって、miR-6133は転写レベルでHBV複製を阻害していることが示唆された。さらに初代ヒト肝細胞においてもmiR-6133処理群において上清HBV DNA濃度、HBs抗原濃度が減少していた(図12C)。miR-6133のHBVに対する抗ウイルス効果の詳細な作用メカニズムを現在解析中である。
【実施例】
【0046】
(10)動物モデルにおけるmiR-6133のHBV複製抑制効果
miR-6133の抗ウイルス効果をin vivoで検証するため、HBVトランスジェニックマウスを用いた試験を行った。カチオン性脂質invivofectamineと混合したmiR-302c-3pまたはcontrol mimicを20 μg/bodyの条件で尾静脈より注射した(図13A)。miR-6133投与直前および投与後3日目、5日目の血清を回収し、HBV DNAおよびHBsAgを測定した結果、対照群に対してHBV DNA濃度は約1/10に、HBsAgは約1/3に低下した(図13B)。肝傷害の指標である血中アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度は低く、概ね正常値であった。また体重の増減もなかった。miR-6133はin vivo HBV複製モデルに対しても有効であり、肝傷害も誘発しないことから、同様に治療薬として有望である。
【実施例】
【0047】
(11)miR-6133の肝線維化に対する有効性
B型慢性肝炎患者では、宿主免疫系によるHBV感染細胞除去に伴って肝傷害が長期間持続する。肝臓内の細胞の約1割を占める肝星細胞は肝細胞と類洞内皮細胞の間に存在し、肝傷害に伴って活性化し肝内の創傷治癒を行う。しかし、長期にわたる持続感染(慢性肝炎)においては肝星細胞は過剰なコラーゲン繊維を産生し続けるため、徐々に線維化が進行し、最終的に肝硬変に至る。最近、いくつかのmiRNAが抗線維化作用を示すことが示された。そこで、HBVに対する抗ウイルス作用を有するmiR-6133の肝線維化に対する有効性を検証した。ヒト肝星細胞由来LX-2細胞株はTGF-β刺激によりコラーゲンを産生する。この細胞にmiR-6133 mimicまたはcontrol mimicをトランスフェクションし、24時間培養したのちヒト組換えTGF-β1(1 ng/mL)を培地に加えた。経時的にRNAまたは細胞内タンパクを回収し、定量PCRおよびウエスタンブロット解析によりコラーゲンType Iα1遺伝子の発現、コラーゲンタンパクの産生をそれぞれ測定した(図14A)。その結果、対照群ではTGF-β1刺激によりコラーゲン遺伝子発現が誘導されたが、miR-6133処理群では全く観察されなかった(図14B)。同様に、miR-6133処理群では細胞内のコラーゲンType Iα1タンパク産生も観察されなかった(図14C)。TGF-βシグナルの一部は転写因子プロテインキナーゼAKTを介して伝達される。miR-6133処理群ではAKTのリン酸化が減弱していた。したがって、miR-6133はAKTに作用することによりコラーゲン産生を抑制していることが示唆された。現在詳細なメカニズムを検討している。miR-6133はHBV複製阻害効果に加え肝線維化を阻止する効果が期待されることから、HBV関連肝疾患治療における新規性があると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の抗HBV薬は、核酸アナログやインターフェロン等の既存の抗HBV薬とは異なる作用機序によって抗ウイルス効果を発揮する。従って、既存の抗HBV薬では十分な効果が得られない症例に対しても治療効果を期待できる。また、既存の抗HBV薬と併用することにより、相加的又は相乗的な効果も期待できる。このように、本発明の抗HBV薬はHBV関連疾患に対する新たな治療戦略を提供するものであり、その臨床的意義は極めて大きい。
【0049】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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