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明細書 :銅粒子混合物及びその製造方法、銅粒子混合物分散液、銅粒子混合物含有インク、銅粒子混合物の保存方法及び銅粒子混合物の焼結方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月20日(2020.2.20)
発明の名称または考案の名称 銅粒子混合物及びその製造方法、銅粒子混合物分散液、銅粒子混合物含有インク、銅粒子混合物の保存方法及び銅粒子混合物の焼結方法
国際特許分類 B22F   1/02        (2006.01)
B22F   9/24        (2006.01)
B22F   9/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
H01B   5/00        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01B   1/00        (2006.01)
H01B   1/22        (2006.01)
FI B22F 1/02 B
B22F 9/24 B
B22F 9/00 B
B82Y 30/00
H01B 5/00 ZNME
H01B 13/00 501Z
H01B 1/00 E
H01B 1/22 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 30
出願番号 特願2019-512483 (P2019-512483)
国際出願番号 PCT/JP2018/014637
国際公開番号 WO2018/190246
国際出願日 平成30年4月5日(2018.4.5)
国際公開日 平成30年10月18日(2018.10.18)
優先権出願番号 2017080971
優先日 平成29年4月14日(2017.4.14)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】川▲崎▼ 英也
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4K017
4K018
5G301
5G307
Fターム 4K017AA03
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA05
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA01
4K017DA07
4K017EJ01
4K017FB03
4K017FB07
4K018AA03
4K018BA02
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC12
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA06
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
5G301DE01
5G307AA08
要約 本発明は、銅の酸化が抑制されており、分散性が高く、且つ、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結が可能であるため、導電性銅インク材料に好適に用いることができる銅粒子混合物及びその製造方法、当該銅粒子混合物が分散されている銅粒子混合物分散液、及び当該銅粒子混合物分散液を含有する銅粒子混合物含有インクを提供する。
本発明は、銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物であって、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物である。
特許請求の範囲 【請求項1】
銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物であって、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物。
【請求項2】
前記銅ナノ粒子Bの粒度分布に基づく標準偏差が銅ナノ粒子Bの平均粒子径の20%以下である、請求項1に記載の銅粒子混合物。
【請求項3】
前記銅ナノ粒子B中の前記保護層の質量比は、前記銅ナノ粒子Bの質量を100質量%として10~30質量%である、請求項1又は2に記載の銅粒子混合物。
【請求項4】
前記炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種は、下記式(1)又は(2)で示される基を有する、請求項1~3のいずれかに記載の銅粒子混合物。
【化1】
JP2018190246A1_000008t.gif
(式(1)及び(2)中、*は結合手を示す。)
【請求項5】
前記銅微粒子Aの質量(Ma)と、前記銅ナノ粒子Bの質量(Mb)との合計(Ma+Mb)に対する前記銅ナノ粒子Bの質量(Mb)の割合が、2質量%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の銅粒子混合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物が分散媒中に分散されている銅粒子混合物分散液。
【請求項7】
請求項6に記載の銅粒子混合物分散液を含有する、銅粒子混合物含有インク。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物を、非還元性雰囲気中で、常圧又は減圧下で、120℃以下の温度で焼結させる、銅粒子混合物の焼結方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物を、大気中で、常圧で、150℃以下の温度で焼結させる、銅粒子混合物の焼結方法。
【請求項10】
銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物の製造方法であって、
(1)酢酸銅と、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とが、炭素数2~4のジオールに溶解した溶液を調製する工程1、
(2)前記溶液を大気圧下で100℃以下でヒドラジン還元して、前記溶液中で銅ナノ粒子Bを調製する工程2、及び
(3)前記銅ナノ粒子Bを含有する前記溶液に、前記銅微粒子A、並びにマロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸を添加する工程3
を有し、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粒子混合物及びその製造方法、銅粒子混合物分散液、及び銅粒子混合物含有インク、銅粒子混合物の保存方法及び銅粒子混合物の焼結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直径2nm~100nm程度までサイズの金属ナノ微粒子は、光特性、磁気特性、熱特性、及び電気特性等において、バルク金属とは異なった性質を示すことから、各種の技術分野への応用が期待されている。例えば、粒子サイズが小さくなると表面積が増加して融点の低下が起こるという特性を利用し、金属ナノ微粒子を含む微細配線印刷用インクを用いて、基板上に金属微細配線からなる電子回路を作製する研究が進められている。
【0003】
このような微細配線印刷用インクは、有機物で表面を保護した金属ナノ微粒子を含む分散液をインク材料とし、微細配線印刷技術を用いて基板の上に回路パターンを印刷し、低温加熱することにより、金属ナノ微粒子表面から有機物が除去されて金属ナノ微粒子間で金属接合を生じる。特に、直径10nm以下の金属ナノ微粒子を用いると、融点の低下が顕著である。これにより、熱伝導性及び電気伝導性が高い金属微細配線を形成することができる。
【0004】
金属配線として、バルク銅が用いられている。バルク銅は、酸化され易く導電率が低下すること、焼成温度が高いこと等の欠点を有する。これに対して、銅ナノ粒子はバルク銅よりも焼結温度が低く、熱に弱い紙やプラスチック等の基板上にも金属微細配線を形成できる材料として期待されている。
【0005】
しかしながら、銅ナノ粒子は、金、銀等の他の金属ナノ微粒子と比較して凝集し易く、数十nm~数百nmの凝集粒子径を有するため、インク材料として特に有用な平均粒子径が10nm以下の単分散の銅ナノ粒子の合成は困難である。
【0006】
熱に弱い紙やプラスチック等の基板上にも金属微細配線を形成できるナノインク材料として、融点降下が著しい平均粒子径10nm以下の銅ナノ粒子が望まれるが、150℃以下の低温領域で低温焼結可能な銅ナノ粒子を得ることは困難である。これは、平均粒子径10nm以下の銅ナノ粒子は、反応性が高いために不安定であり、銅ナノ粒子の酸化や凝集が容易に起こるためである。銅ナノ粒子を得た直後であっても銅ナノ粒子を安定に保存することは困難である。そのため、平均粒子径10nmの極微小サイズの銅ナノ粒子は、銅表面と強く結合する高分子などを保護剤に用いて製造される。しかしながら、当該保護剤は、低温加熱時に完全に除去できず、金属微細配線の電気伝導性の低下につながるという問題がある。
【0007】
また、銅ナノ粒子を用いて金属微細配線を形成すると、微細配線中の銅が酸化することでイオン化し、基板の絶縁物上を移動して短絡を誘導する、いわゆるマイグレーション現象を生じるという問題がある。
【0008】
上述のような問題を解決した微細配線印刷用インク材料として、銅の単結晶からなる中心部と、その周囲の保護層とから形成され、(1)銅ナノ粒子の平均粒子径が10nm以下であり、(2)保護層が、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含み、(3)保護層の沸点又は熱分解温度が150℃以下である銅ナノ粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載の銅ナノ粒子も、銅の酸化の抑制、融点降下、分散性に優れ、低温焼結可能であり、且つ保護層を150℃以下での低温焼結時に除去することができ、導電性銅ナノインク材料に好適に用いることができる点で優れた銅ナノ粒子であるが、焼結温度のさらなる低温化については検討の余地がある。微細配線印刷用インク材料には、非還元性雰囲気中で120℃以下の低温領域で焼結が可能であることが求められており、且つ、大気中等の非還元性雰囲気中であっても150℃以下の低温で、短時間で焼結が可能であることが求められる。
【0010】
従って、銅の酸化が抑制されており、分散性が高く、且つ、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結が可能であるため、導電性銅インク材料に好適に用いることができる銅粒子混合物、当該銅粒子混合物が分散されている銅粒子混合物分散液、及び当該銅粒子混合物分散液を含有する銅粒子混合物含有インクの開発が求められており、上記銅粒子混合物を安定的に保存可能な保存方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】国際公開第2015/053833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、銅の酸化が抑制されており、分散性が高く、且つ、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結が可能であるため、導電性銅インク材料に好適に用いることができる銅粒子混合物及びその製造方法、当該銅粒子混合物が分散されている銅粒子混合物分散液、及び当該銅粒子混合物分散液を含有する銅粒子混合物含有インクを提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、更に、上記銅粒子混合物の焼結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物において、銅微粒子Aが平均粒子径0.1μm以上5μm以下であり、特定のジカルボン酸により被覆されている構成とし、且つ、銅ナノ粒子Bが銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、平均粒子径1nm以上100nm未満であり、保護層が特定のアルコール等を含む構成とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の銅粒子混合物、銅粒子混合物分散液、銅粒子混合物含有インク、銅粒子混合物の製造方法、及び銅粒子混合物の焼結方法に関する。
1.銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物であって、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物。
2.前記銅ナノ粒子Bの粒度分布に基づく標準偏差が銅ナノ粒子Bの平均粒子径の20%以下である、項1に記載の銅粒子混合物。
3.前記銅ナノ粒子B中の前記保護層の質量比は、前記銅ナノ粒子Bの質量を100質量%として10~30質量%である、項1又は2に記載の銅粒子混合物。
4.前記炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種は、下記式(1)又は(2)で示される基を有する、項1~3のいずれかに記載の銅粒子混合物。
【化1】
JP2018190246A1_000002t.gif
(式(1)及び(2)中、*は結合手を示す。)
5.前記銅微粒子Aの質量(Ma)と、前記銅ナノ粒子Bの質量(Mb)との合計(Ma+Mb)に対する前記銅ナノ粒子Bの質量(Mb)の割合が、2質量%以上である、項1~4のいずれかに記載の銅粒子混合物。
6.項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物が分散媒中に分散されている銅粒子混合物分散液。
7.項6に記載の銅粒子混合物分散液を含有する、銅粒子混合物含有インク。
8.項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物を、非還元性雰囲気中で、常圧又は減圧下で、120℃以下の温度で焼結させる、銅粒子混合物の焼結方法。
9.項1~5のいずれかに記載の銅粒子混合物を、大気中で、常圧で、150℃以下の温度で焼結させる、銅粒子混合物の焼結方法。
10.銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物の製造方法であって、
(1)酢酸銅と、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とが、炭素数2~4のジオールに溶解した溶液を調製する工程1、
(2)前記溶液を大気圧下で100℃以下でヒドラジン還元して、前記溶液中で銅ナノ粒子Bを調製する工程2、及び
(3)前記銅ナノ粒子Bを含有する前記溶液に、前記銅微粒子A、並びにマロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸を添加する工程3
を有し、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の銅粒子混合物は、特定の平均粒子径の銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含むので、銅微粒子Aの粒子間で銅ナノ粒子Bが容易に溶解して、短時間で銅微細配線を形成することができる。また、銅微粒子Aが特定のジカルボン酸により被覆されており、銅ナノ粒子Bに対し、優れた反応性を示す。また、銅ナノ粒子Bが、特定のアルコール等を含むので、銅ナノ粒子Bの酸化が抑制されており、且つ、低温領域の温度範囲での加熱であっても、容易に除去することができる。このため、本発明の銅粒子混合物は、非還元性雰囲気中で120℃以下、大気中等の還元性雰囲気中で150℃以下の低温領域の温度範囲での加熱であっても、短時間で銅微細配線を形成することができ、導電性銅インク材料に好適に用いることができる。また、当該銅粒子混合物を含有する銅粒子混合物分散液、当該銅粒子混合物分散液を含有する銅粒子混合物含有インクも、導電性銅インク材料として好適に用いることができる。
【0017】
更に、本発明の銅粒子混合物の焼結方法は、上記銅粒子混合物を用いており、常圧又は減圧下で、非還元性雰囲気中で120℃以下の低温領域、常圧で、大気中等の還元性雰囲気中で150℃以下の低温領域で焼結することができるので、熱に弱い紙やプラスチック等の基板上にも銅微細配線を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例において、銅微粒子Aと銅ナノ粒子Bの割合の検討結果を示す図である。
【図2】実施例1で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間10秒、15秒、20秒、30秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図3】実施例1で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度100℃、焼成時間1分、5分、10分、20分、30分、40分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図4】実施例1で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、150℃で20秒加熱して形成した銅膜について、XRD測定を行った結果を示す図である。
【図5】実施例1及び4~7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間20秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図6】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間5秒、10秒、15秒、20秒、30秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図7】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間10秒の条件で形成した銅膜について、XRD測定を行った結果を示す図である。
【図8】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間10秒の条件で形成した銅膜について、SEM観察を行った結果を示す図である。
【図9】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、不活性雰囲気中(窒素雰囲気中)で焼成温度60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、焼成時間60分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図10】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度80℃、焼成時間60分の条件で形成した銅膜について、SEM観察を行った結果を示す図である。
【図11】実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度80℃、焼成時間60分の条件で形成した銅膜について、SEM観察を行った結果を示す図である。
【図12】比較例2で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間1分の条件で形成した銅膜について、XRD測定を行った結果を示す図である。
【図13】実施例において、銅微粒子Aのシュウ酸、マロン酸による被覆の検証結果を示す図である。
【図14】実施例において、還元剤の検討結果を示す図である。具体的には、参考例4~10で調製された銅ナノ粒子含有インクを用いて、不活性雰囲気中(窒素雰囲気中)で焼成温度100℃、焼成時間60分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した結果を示す図である。
【図15】参考例5(図15上段)、及び参考例10(図15下段)で調製された銅ナノ粒子含有インクを用いて、不活性雰囲気中(窒素雰囲気中)で焼成温度100℃、焼成時間60分の条件で形成した銅膜について、XRD測定を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0020】
1.銅粒子混合物
本発明の銅粒子混合物は、銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含み、上記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、上記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、上記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、上記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。

【0021】
(銅微粒子A)
銅微粒子Aは、銅の粒子であれば特に限定されず、銅の単結晶からなる銅微粒子であってもよいし、銅の一次粒子が凝集した二次粒子の形態の銅微粒子であってもよい。

【0022】
なお、本発明における単結晶とは、結晶のどの部分をとっても同じ結晶方位をもっており、それを構成している原子が空間的に規則正しい配列になっているものをいう。すなわち、本発明において、銅微粒子Aが銅の単結晶からなる場合の銅微粒子、又は、後述する銅ナノ粒子Bの中心部を形成する銅の単結晶は、粒子全体が一つの結晶であり、色々な方向に成長した結晶が混ざり合っておらず、銅粒子が凝集等していないことを意味する。これは、銅微粒子又は銅ナノ粒子のXRD解析のピーク測定と高分解能電子顕微鏡による原子配列の直接観察により確認することができる。

【0023】
銅微粒子Aの平均粒子径は0.1μm以上5μm以下である。銅微粒子Aの平均粒子径が0.1μm未満であると、銅微粒子Aが酸化し易くなり、銅膜の電気抵抗率が増大する。銅微粒子Aの平均粒径が5μmを超えると、低温で銅膜を十分に形成できない。銅微粒子Aの平均粒子径は、0.5μm以上が好ましく、0.9μm以上がより好ましい。また、銅微粒子Aの平均粒子径は、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。

【0024】
なお、本明細書における銅微粒子の平均粒子径は、TEM観察像中の任意の100個の粒子の粒子径の算術平均値である。

【0025】
銅微粒子Aは、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されている。ジカルボン酸の中でも、マロン酸、シュウ酸を用いることにより、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結が可能となり、銅膜の電気抵抗を低減することができる。これらの中でも、銅膜の電気抵抗をより一層低減できる点で、シュウ酸が好ましい。

【0026】
なお、本発明において、銅微粒子Aがマロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されているとは、銅微粒子Aの表面上で銅と上記ジカルボン酸が反応し、化学吸着することを意味する。これは、銅微粒子Aの赤外吸収スペクトルを測定することにより確認することができる。

【0027】
マロン酸及びシュウ酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。

【0028】
銅微粒子Aの質量(Ma)と、銅ナノ粒子Bの質量(Mb)との合計(Ma+Mb)に対する銅微粒子Aの質量(Ma)の割合は、(Ma+Mb)を100質量%として25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。また、上記銅微粒子Aの質量(Ma)の割合は、98質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。(Ma)の割合を上記範囲とすることにより、銅膜の電気抵抗をより一層低減することができる。

【0029】
(銅ナノ粒子B)
銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部と、その周囲の保護層とから形成される。

【0030】
銅ナノ粒子Bの中心部を形成する銅は、単結晶である。このため、銅ナノ粒子Bは、粒子全体が一つの結晶となっており、このような銅ナノ粒子Bの平均粒子径が特定の範囲の平均粒子径を有することにより、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結が可能となり、銅膜の電気抵抗を低減することができる。

【0031】
銅ナノ粒子Bは、上記銅の単結晶からなる中心部の周囲には、保護層が形成されている。上記保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。

【0032】
上記炭素数3~6の2級アルコール及びその誘導体としては、炭素数3~6の2級アルコール、及び、当該炭素数3~6の2級アルコールにアミノ基、カルボキシル基、水酸基等が付加された化合物が挙げられ、具体的には、1-アミノ-2-プロパノール、2- ヒドロキシ酪酸、3- ヒドロキシ酪酸、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられる。これらの2級アルコール等は、単独であってもよいし、混合して用いられてもよい。

【0033】
2級アルコールのヒドロキシ基は,溶媒及び銅表面ともに親和性が高く、分散性向上に寄与する。2級アルコールのヒドロキシ基は還元能を有するために、銅の酸化を抑制し、かつ低温焼結の際に生成する酸化物が、ケトン化合物であるため、揮発分解し易い。

【0034】
上記炭素数3~6の2級アルコール及びその誘導体は、モノアルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いることにより、保護層の沸点又は熱分解温度を150℃以下に調整し易くなる。

【0035】
上記炭素数3~6の2級アルコール及びその誘導体は、下記式(1)で示される基を有することが好ましい。なお、下記式(1)~(5)中、*は、結合手を示す。

【0036】
【化2】
JP2018190246A1_000003t.gif

【0037】
上記式(1)で示される基は、当該基が酸化されてケトンとなり、下記式(3)で示される基を生成する。

【0038】
【化3】
JP2018190246A1_000004t.gif

【0039】
上記式(1)及び(3)で示される基は、高い配位力を示し、銅の単結晶からなる中心部の表面の銅原子と5員環を形成して、下記式(4)及び(5)で示されるメタラサイクル構造を有する基となり、安定化する。このため、銅ナノ粒子の凝集がより抑制される。

【0040】
【化4】
JP2018190246A1_000005t.gif

【0041】
【化5】
JP2018190246A1_000006t.gif

【0042】
上記炭素数3~6の1級アルコール及びその誘導体としては、炭素数3~6の1級アルコール、及び、当該炭素数3~6の1級アルコールにアミノ基、カルボキシル基、水酸基等が付加された化合物が挙げられ、具体的には、2-アミノ-2エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-1-ブタノールが挙げられる。これらの1級アルコール等は、単独であってもよいし、混合して用いられてもよい。

【0043】
上記炭素数3~6の1級アルコール及びその誘導体は、モノアルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いることにより、保護層の沸点又は熱分解温度を150℃以下に調整し易くなる。

【0044】
上記炭素数3~6の1級アルコール及びその誘導体は、下記式(2)で示される基を有することが好ましい。

【0045】
【化6】
JP2018190246A1_000007t.gif

【0046】
上記式(2)で示される基も、銅の単結晶からなる中心部の表面の銅原子と5員環を形成して、メタラサイクル構造を有する基となり、安定化する。このため、銅ナノ粒子の凝集がより抑制されることとなる。

【0047】
上記炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等の中でも、1-アミノ-2-プロパノールが好ましい。1-アミノ-2-プロパノールは、低温焼結可能な銅ナノ粒子のための保護剤として好ましい、以下の条件を備えている。当該条件とは、銅ナノ粒子の分散性を高めることができること、銅ナノ粒子の酸化を抑制できること、製造時に、焼成の過程で銅の酸化を抑制しながら、150℃以下の低温で分解又は気化(蒸発)することである。このため、上記保護層の沸点又は熱分解温度は150℃以下が好ましい。ここで、保護層の熱分解温度とは、保護層を構成する物質が熱により銅の単結晶からなる中心部から脱離する温度であり、上記脱離には、保護層を構成する物質が熱により蒸散する形態を含む。上記1-アミノ-2-プロパノールを用いて銅ナノ粒子の製造を行うと、構造中のアミノ基による銅イオンへの配位で錯体を形成して、ヒドロキシル基がエチレングリコール等の炭素数2~4のジオールに対しての溶解性を高めることにより、高い銅イオン濃度(例えば、銅イオン換算で1000mM)であるにもかかわらず、平均粒子径が6nm以下の単分散の銅ナノ粒子の合成が可能である。更に、ヒドロキシル基を有しているために耐酸化性が向上し、かつ揮発性があるために150℃以下の低温加熱で分解、気化により除去できるとともに、低温加熱における銅の酸化を抑制することができる。例えば、1-アミノ-2-プロパノールの揮発性を利用することで、80℃(減圧下)で1-アミノ-2-プロパノールからなる保護層を除去することが可能となり、且つ、銅ナノ粒子の低温焼結が可能となるため、銅粒子混合物の低温焼結も可能となる。なお、保護層が、銅ナノ粒子合成の一般的なアミンとして使用されるオクチルアミン等からなる構成とした場合、製造時に、生成した銅ナノ粒子が凝集してしまい、バルク銅が生成して、銅ナノ粒子が得られない。

【0048】
銅ナノ粒子の保護層の沸点又は熱分解温度は、銅ナノ粒子の乾燥粉末を用いて、窒素雰囲気中でTG-DTAによる熱分析を行うことにより測定することができる。

【0049】
保護層は、上記炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以外の他の成分を含有していてもよいが、上記保護層は、銅ナノ粒子の低温焼結を容易にすることができる点で、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のみからなることが好ましい。

【0050】
銅ナノ粒子B中の保護層の質量比は、銅ナノ粒子の質量を100質量%として10~30質量%が好ましい。保護層の質量比が上記範囲であると、銅粒子混合物を焼結させる際に、150℃以下の低温で加熱した際に、保護層がより一層除去し易くなる。

【0051】
銅ナノ粒子Bの平均粒子径は、1nm以上100nm未満である。銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm未満であると、銅ナノ粒子Bの凝集を抑制できない。また、銅ナノ粒子Bの平均粒子径が100nmを超えると、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結ができず、銅膜の電気抵抗を低減することができない。上記銅ナノ粒子Bの平均粒子径は、1.5nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。また、上記銅微粒子の平均粒子径は、50nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。

【0052】
なお、本明細書における銅ナノ粒子の平均粒子径は、TEM観察像中の任意の100個の粒子の粒子径の算術平均値である。

【0053】
銅ナノ粒子Bは、粒度分布に基づく標準偏差が銅ナノ粒子の平均粒子径の20%以下であることが好ましい。すなわち、銅ナノ粒子の粒度分布に基づく標準偏差を銅ナノ粒子の平均粒子径で除して、百分率で示した値が20%以下であることが好ましい。銅ナノ粒子の粒度分布に基づく標準偏差を上述の範囲とすることで、銅ナノ粒子の平均粒子径が均一化されて、低温で焼結するのに適した銅ナノ粒子とすることができる。

【0054】
銅微粒子Aの質量(Ma)と、銅ナノ粒子Bの質量(Mb)との合計(Ma+Mb)に対する銅ナノ粒子Bの質量(Mb)の割合は、(Ma+Mb)を100質量%として2質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、上記銅ナノ粒子Bの質量(Mb)の割合は、75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。(Mb)の割合を上記範囲とすることにより、銅膜の電気抵抗をより一層低減することができる。

【0055】
2.銅粒子混合物の製造方法
本発明の銅粒子混合物の製造方法は、銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを含む銅粒子混合物の製造方法であって、
(1)酢酸銅と、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とが、炭素数2~4のジオールに溶解した溶液を調製する工程1、
(2)前記溶液を大気圧下で100℃以下でヒドラジン還元して、前記溶液中で銅ナノ粒子Bを調製する工程2、及び
(3)前記銅ナノ粒子Bを含有する前記溶液に、前記銅微粒子A、及びマロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸を添加する工程3
を有し、
前記銅微粒子Aは、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であり、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸により被覆されており、
前記銅ナノ粒子Bは、銅の単結晶からなる中心部、及びその周囲の保護層からなり、前記銅ナノ粒子Bの平均粒子径が1nm以上100nm未満であり、
前記銅ナノ粒子Bの保護層は、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする銅粒子混合物の製造方法である。
上記工程1~3を有する本発明の製造方法により、上述の本発明の銅粒子混合物を製造することができる。

【0056】
(工程1)
工程1は、酢酸銅と、炭素数3~6の1級アルコール、炭素数3~6の2級アルコール及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とが、炭素数2~4のジオールに溶解した溶液を調製する工程である。

【0057】
上記工程1に用いられる銅化合物は、酢酸銅[Cu(acac)]である。導電材料としての利用を考えた場合は、工程1に用いられる銅化合物には、炭素数2~4のジオールに溶解して、ハロゲンを含まない銅イオンが望ましい。工程1に用いられる銅化合物として酢酸銅を用いると、銅イオンが還元され易く、平均粒子径が10nm以下、特に、3~6nmの分散性の高い銅ナノ粒子が得られ易い。これに対し、工程1に用いられる銅化合物として、例えば、ギ酸銅[Cu(HCOO)]を用いた場合、ギ酸が強酸イオンであることから凝集が促進され、粗大銅粒子の凝集体が生成してしまうこととなる。

【0058】
上記工程1において、溶液中の酢酸銅の含有量は特に限定されないが、銅イオン換算で5~1000mM程度が好ましく、100~400mM程度がより好ましく、200~300mM程度が更に好ましい。溶液中の酢酸銅の含有量が少な過ぎると、銅ナノ粒子が得られ難いおそれがある。また、溶液中の酢酸銅の含有量が多過ぎると、生成した銅ナノ粒子が凝集してバルク銅が析出するおそれがある。

【0059】
上記工程1には、炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール並びにそれらの誘導体から選択される少なくとも1種が用いられる。上記炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等を用いることにより、銅の単結晶からなる中心部の周囲に、当該炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等からなる保護層を形成することができる。このような保護層は、150℃以下の低温で分解又は気化(蒸発)することが可能である。

【0060】
炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等としては、上述の銅ナノ粒子の保護層を形成するものと同一のものを用いることができる。

【0061】
上記工程1において溶液中の、炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等の濃度は、上述の溶液中の銅イオンの濃度の3~20倍が好ましく、3~10倍がより好ましい。溶液中の炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等の濃度が低過ぎると、保護層が十分に形成できないおそれがあり、また、得られる銅ナノ粒子の平均粒子径が大きくなるおそれがある。溶液中の炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等の濃度が高過ぎると、2級アルコール等が過剰に存在するので、銅ナノ粒子を分離精製することが困難となるおそれがある。

【0062】
上記工程1では、溶液を調製する際の溶媒として、炭素数2~4のジオールが用いられる。上記溶媒として炭素数2~4のジオールを用いると、酢酸銅及び炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等を溶解できるとともに、得られる銅ナノ粒子の凝集及び酸化を抑制することができる。上記炭素数2~4のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられ、これらの中でも、得られる銅ナノ粒子の分散性に優れる点で、エチレングリコールが好ましい。

【0063】
溶媒として用いられる炭素数2~4のジオールは、上記保護層を形成する1級及び/又は2級アルコール等として用いられるものと同一のものを用いてもよい。溶媒として、保護層を形成する1級及び/又は2級アルコール等と同一の炭素数2~4のジオールを用いることにより、溶媒の一部が銅ナノ粒子の保護層を形成するので、溶媒の他に保護層を形成するための1級及び/又は2級アルコール等を別途添加する工程が必要でないので、容易に銅ナノ粒子を製造することができる。上記保護層を形成する1級及び/又は2級アルコール等と同一の炭素数2~4のジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオールが挙げられる。

【0064】
工程1に用いられる溶媒として、炭素数2~4のジオールを単独で用いてもよいが、他の極性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコールモノメチルエーテル等)を混合して用いてもよい。2種以上の溶媒を混合する場合には、溶媒中の炭素数2~4のジオールの含有量は60重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。

【0065】
上記溶液には、酢酸銅、炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等、及び炭素数2~4のジオールの他に、他の添加剤が含まれていてもよい。当該他の添加剤としては、例えば、アンモニアのエタノール溶液が挙げられる。当該エタノール溶液中のアンモニアの含有量は、エタノール溶液を100vol%として、1~5vol%が好ましい。

【0066】
以上説明した工程1により、酢酸銅と炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等とが炭素数2~4のジオールに溶解した溶液が調製される。

【0067】
(工程2)
工程2は、工程1により調製された溶液を、大気圧下で100℃以下でヒドラジン還元して、溶液中で銅ナノ粒子Bを調製する工程である。ヒドラジン還元に用いられる還元剤としてはヒドラジン化合物が挙げられ、中でも、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、フェニルヒドラジンが好適に用いられる。一方、平均粒子径が6nm以下の金属ナノ粒子の合成に用いられる還元剤として、水素化ホウ素ナトリウムが知られているが、上記工程2において、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いると、生成した銅ナノ粒子が凝集してバルク銅が析出してしまう。

【0068】
上記工程2における溶液中のヒドラジン化合物の濃度は、溶液中の銅イオン濃度の5~30倍が好ましく、15~30倍がより好ましい。溶液中のヒドラジン化合物の濃度が低過ぎると、銅ナノ粒子への還元能が不十分となり、銅ナノ粒子の平均粒子径が大きくなるおそれがある。また、溶液中のヒドラジン化合物の濃度が高過ぎると、ヒドラジン化合物が過剰となり、銅ナノ粒子を分離精製することが困難となるおそれがある。

【0069】
上記工程2において、ヒドラジン還元は、大気圧下で行われる。上記工程1において、酢酸銅と炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等とが炭素数2~4のジオールに溶解した溶液を調製し、得られた溶液を、工程2によりヒドラジン還元することにより、工程2を大気圧下で行うことが可能となる。このため、上記製造方法によれば、製造工程において加圧が不要であるので、銅ナノ粒子Bを容易に製造することができる。

【0070】
上記工程2において、ヒドラジン還元は、100℃以下で行われる。すなわち、工程1において調製された溶液を100℃以下の温度に調整して工程2を行えばよい。上記ヒドラジン還元の温度は、100℃以下であり、50℃以下が好ましい。ヒドラジン還元の温度が高過ぎると、副生成物が生成するおそれがある。また、上記工程2において、ヒドラジン還元は、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。ヒドラジン還元の温度が低過ぎると、銅ナノ粒子が十分に製造できないおそれがある。

【0071】
以上説明した工程2により、工程1で調製された溶液が、大気圧下でヒドラジン還元される。

【0072】
以上説明した工程1及び2により、銅の単結晶からなる中心部と、その周囲の保護層とから形成される銅ナノ粒子Bを調製することができる。当該工程1及び2によれば、平均粒子径が小さく、1nm以上100nm未満、好ましくは10nm以下、より好ましくは3~6nm程度の銅ナノ粒子Bを得ることができる。また、保護層が、炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等を含むので揮発性を有しており、保護層の沸点又は熱分解温度を150℃以下とすることができるので、保護層を150℃以下の加熱で除去することができ、銅ナノ粒子Bを含有する銅粒子混合物を150℃以下の低温で焼結することが可能となる。また、上記工程2において、銅ナノ粒子Bは上記溶液中に均一に分散した状態で得られる。このため、得られた銅ナノ粒子Bが溶液中に分散した状態で、当該溶液を工程3に用いることができる。

【0073】
(工程3)
工程3は、銅ナノ粒子Bを含有する溶液に、銅微粒子A、並びにマロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸を添加する工程である。

【0074】
銅ナノ粒子Bを含有する溶液は、上記工程2により調製された溶液を用いることができる。

【0075】
上記溶液に添加される銅微粒子Aとしては、上記銅粒子混合物における銅微粒子Aと同一のものを用いることができ、平均粒子径は0.1μm以上5μm以下のものが用いられる。

【0076】
溶液に添加される銅微粒子Aの添加量は特に限定されず、溶液中の銅ナノ粒子Bの量に応じて適宜調整して添加すればよい。溶液中の銅微粒子Aの質量(Ma)と、銅ナノ粒子Bの質量(Mb)との合計(Ma+Mb)に対する銅微粒子Aの質量(Ma)の割合は、(Ma+Mb)を100質量%として25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。また、上記銅微粒子Aの質量(Ma)の割合は、98質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。(Ma)の割合を上記範囲とすることにより、得られる銅粒子混合物を用いて形成した銅膜の電気抵抗がより一層低減される。

【0077】
溶液には、マロン酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸が添加される。これにより、銅微粒子Aが上記ジカルボン酸により被覆される。また、ジカルボン酸の中でも、マロン酸、シュウ酸を用いることにより、得られる銅粒子混合物が還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中において短時間で低温焼結可能となり、銅膜の電気抵抗を低減することができる。これらの中でも、銅膜の電気抵抗をより一層低減できる点で、シュウ酸が好ましい。

【0078】
マロン酸及びシュウ酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。

【0079】
上記ジカルボン酸の添加量は特に限定されず、溶液の量を100質量%として0.1~5質量%が好ましく、0.5~2質量%がより好ましい。ジカルボン酸の添加量を上記範囲とすることにより、得られる銅粒子混合物が還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中においてより一層短時間で低温焼結可能となり、銅膜の電気抵抗をより一層低減することができる。

【0080】
上記製造方法では、銅粒子混合物は、溶液に分散した形態で得られる。上記製造方法は、工程3の後に、更に、溶液中の銅粒子混合物を沈殿させる工程を有していてもよい。上記工程を有する製造方法とすることにより、沈殿した銅粒子混合物を採取して用いることができる。溶液中の銅粒子混合物を沈殿させる方法としては特に限定されず、遠心分離により沈殿させる方法等、従来公知の方法が挙げられる。

【0081】
溶液中の銅粒子混合物を沈殿させる方法としては、また、上記溶液に沈殿溶媒を添加することにより銅粒子混合物を沈殿させる方法が挙げられる。上記沈殿溶媒としては、銅粒子混合物を沈殿させることができれば特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらの沈殿溶媒を用いることにより、銅粒子混合物を溶液中で沈殿させ、且つ、溶液中の不純物であるヒドラジン、及び炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等を溶解させることができるので、銅粒子混合物と、ヒドラジン並びに炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等とを分離させ易くなる。

【0082】
上記溶液中の銅粒子混合物を沈殿させる工程としては、上述の溶液に沈殿溶媒を添加することにより銅粒子混合物を沈殿させる方法の後に、遠心分離により沈殿させる方法を行ってもよい。上記方法により溶液中の銅粒子混合物を沈殿させることにより、より効率よく銅粒子混合物を沈殿させることができ、銅粒子混合物を分離し易くなる。

【0083】
上記製造方法は、更に、上記沈殿した銅粒子混合物を揮発性溶媒により洗浄する工程を有していてもよい。上記工程を有する製造方法とすることにより、銅粒子混合物の表面からヒドラジン、及び保護層以外の過剰の炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコール等を除去することができ、高純度の銅粒子混合物を得ることができる。なお、上記揮発性溶媒としてはアセトンを用いることも可能であるが、銅粒子混合物の酸化を抑制することができる観点から、ジメチルアセトアミド、又はN-メチルピロリドンが好ましい。

【0084】
3.銅粒子混合物分散液
本発明の銅粒子混合物は、分散媒に分散させることにより、銅粒子混合物がコロイドとして再分散した銅粒子混合物分散液(ペースト)とすることができる。このような、銅粒子混合物分散液も本発明の一つである。

【0085】
上記分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール等のアルコール、トルエン、アルカノールアミン、N,N-ジメチルホルミアミド等の極性溶媒が挙げられる。これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、プロピレングリコールとグリセロールとを体積比で1:1の割合で混合して用いてもよい。これらの中でも、アルカノールアミンを用いることが好ましく、高い分散安定性を維持できる点で、銅ナノ粒子Bの保護層を形成する炭素数3~6の1級及び/又は2級アルコールと同一の炭素数3~6のアルカノールアミンを用いることがより好ましい。これらの分散媒は、銅粒子混合物を適用する印刷手法、所望の粘度、形成したい銅回路の種類等によって適宜選択することができる。

【0086】
上記銅ナノ粒子分散液中の銅ナノ粒子の質量(Ma)と、銅微粒子の質量(Mb)との合計(Ma+Mb)の含有量は、銅ナノ粒子分散液を100質量%として、10~80質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。

【0087】
4.銅粒子混合物含有インク
上記銅粒子混合物分散液は、銅粒子混合物含有インクに含有されて用いられる。上記銅粒子混合物分散液を含有する銅粒子混合物含有インクも本発明の一つである。

【0088】
また、銅粒子混合物が底部に沈殿した溶液の液面が炭素数4~14のアルカン溶媒で被覆されている保存状態において、上澄みのアルカン溶媒、及び溶液を捨てて除去し、残った銅粒子混合物に上記分散媒を添加することにより、銅粒子混合物を分散媒に容易に分散させることができる。このため、上記銅粒子混合物の保存方法により保存された銅粒子混合物を容易に銅粒子混合物分散液、及び銅粒子混合物含有インクとすることが可能である。

【0089】
上記銅粒子混合物分散液、及び銅粒子混合物含有インクにおいては、溶媒やアミンは完全に除去することは必ずしも必要ではなく、用途に合わせて最適な濃度となるように残した上で、分散媒を添加して用いてもよい。また、銅粒子混合物含有インクには、用途に合わせてテルピネオール、ドデカノール、エチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール等を適宜添加してもよい。

【0090】
銅粒子混合物含有インク中の金属銅の含有量は、5質量%以上80質量%未満が好ましく、10質量%以上70質量%未満がより好ましい。金属銅の含有量が5質量%以上であることにより、銅粒子混合物含有インクを導電ペーストとしてより一層好適に用いることができる。一方、金属銅の含有量が80質量%以下未満であると、銅粒子混合物含有インクの粘度が低減され、より一層扱い易くなる。

【0091】
5.銅粒子混合物の焼結方法
本発明の銅粒子混合物は、上述の構成であるので、非還元性雰囲気中で120℃以下、大気中等の還元性雰囲気中で150℃以下の低温領域の温度範囲での加熱であっても、短時間で銅微細配線を形成することができる。このような、銅粒子混合物を、非還元性雰囲気中で、常圧又は減圧下で、120℃以下の温度で焼結させる銅粒子混合物の焼結方法も、本発明の一つである。また、銅粒子混合物を、大気中で、常圧で、150℃以下の温度で焼結させる銅粒子混合物の焼結方法も、本発明の一つである。

【0092】
上記銅粒子混合物を、非還元性雰囲気中で焼結させる場合、焼結温度は、120℃以下であり、100℃以下が好ましい。また、焼結温度は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。

【0093】
上記銅粒子混合物を、非還元性雰囲気中で焼結させる場合、常圧で焼結させてもよいし、減圧下で焼結させてもよい。減圧下で焼結させる際の圧力は特に限定されず、常圧よりも低い圧力であればよい。

【0094】
上記非還元性雰囲気としては特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。

【0095】
上記銅粒子混合物を、大気中で焼結させる場合、焼結温度は、150℃以下であり、140℃以下が好ましい。また、焼結温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。

【0096】
上記銅粒子混合物を大気中で焼結させる場合は、常圧で焼結させる。

【0097】
なお、本発明の銅粒子混合物及び銅粒子混合物分散液は、金属微細配線を形成するためのインク材料として好適に用いることができるが、当該用途に限られず、触媒材料(触媒又は触媒担体)としても利用することができ、また、ITOに変わる透明導電膜、反射防止コーティング材料としても利用することができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【実施例】
【0099】
実施例及び比較例で使用した装置及び試料は下記の通りである。
【実施例】
【0100】
透過型電子顕微鏡(TEM)
JEOL JEM-2010Fを用いて測定した。試料として、後述の操作2で得られた銅ナノ粒子のエタノール分散液を用いた。
【実施例】
【0101】
赤外分光(IR)測定
JASCOのFT/IR-4200を用いて測定した。
【実施例】
【0102】
四探針法による電気抵抗測定
焼成後銅膜のシート抵抗値を、四探針法により、ロレスターEP抵抗率計(Loresta-EP MCP-T360)及び四探針プローブ(MCP-TPQPP)を用いて測定した。
【実施例】
【0103】
粉末X線回折(XRD)測定
ブルカーD2 PHASERを用いて測定した。
【実施例】
【0104】
走査型電子顕微鏡(SEM)
JEOL FE-SEM;JSM-6700を用いて、5keVの条件で測定した。
【実施例】
【0105】
実施例1
(銅ナノ粒子Bの調製)
110mLスクリュー管にエチレングリコール(30mL)を採取し、1-アミノ-2-プロパノール(11.6mL)及び酢酸銅(II)無水物(2.73g)を添加して、超音波処理により溶解させて銅錯体溶液を調製した。次いで、スクリュー管に25×φ10mmのフットボール型撹拌子を入れ、磁気スターラーを用いて、約1000rpmで撹拌した。次いで、還元剤としてヒドラジン一水和物7.3mLを添加して、溶液を調製した。当該溶液を24時間撹拌することにより、少し赤みを帯びた焦げ茶色の、銅ナノ粒子が分散した溶液を得た。
【実施例】
【0106】
上述の反応では、原料溶液を1000rpmの速い撹拌スピードで撹拌したため、均一な還元反応の進行による単分散なサイズの銅ナノ粒子が生成し易く、生成した粒子の凝集の抑制が容易であった。
【実施例】
【0107】
銅ナノ粒子が分散した溶液からの銅ナノ粒子の分離を、下記の操作により行った。
【実施例】
【0108】
50mLの遠沈管中で、実施例1で得られた、銅ナノ粒子が分散した溶液と、ジメチルアセトアミド(DMA)との体積比が1:2となるように、銅ナノ粒子が分散した溶液12.5mLとDMA25mLとを混合した。これにより銅ナノ粒子の凝集が生じ、溶液が懸濁した。更に凝集を進めるために、遠沈管を軽く振り、数分放置して空気に曝した。懸濁した溶液に、6000rpm、3分間の条件で遠心分離を行い、銅ナノ粒子の沈殿物が沈殿した溶液を得た。溶液を除去して銅ナノ粒子の沈殿物を採取した。
【実施例】
【0109】
沈殿物にDMA7mLを添加してボルテックスにより分散処理を行い、洗浄した。次いで、6000rpmの条件で4分間遠心分離を行った。上澄み液を除去し、沈殿物に25mLのトルエンを添加し、超音波とボルテックスによって洗浄した。次いで、6000rpmで1分間遠心分離を行った。上澄み液を除去し、沈殿物に25mLのヘキサンを添加し、超音波とボルテックス分散処理により洗浄を行った。次いで、6000rpmで5分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した。最後に、沈殿した銅ナノ粒子に取り込まれているヘキサンをさらに除去するために、6000rpmで10分間の遠心分離を計3回行った。これらの操作により、合成時の過剰な保護剤や還元剤等の不要物が低減された銅ナノ粒子Bを調製した。銅ナノ粒子BのTEM観察像中の任意の100個の粒子の粒子径の算術平均値を算出して求めた平均粒子径は、3nmであった。
【実施例】
【0110】
(銅粒子混合物の調製)
銅微粒子Aとして、平均粒子径3μmの銅微粒子(フレーク状銅マイクロ粒子 MA-CO25KP、三井金属鉱業株式会社)を用意した。上記銅微粒子A、及び上述のようにして調製された銅ナノ粒子Bを、3:1の質量比となるように採取し、PFAベッセル容器に入れた。当該PFAベッセル容器にシュウ酸を添加し、更に、プロピレングリコールとグリセロールとを3:1の体積比となるように混合して、800μL添加し、銅粒子混合物が分散した溶液を調製した。シュウ酸の添加量は、調製された溶液を100質量%として、1質量%であった。また、調製された溶液中の、金属銅の含有量は60質量%であった。
【実施例】
【0111】
銅粒子混合物が分散した溶液からの銅粒子混合物の分離・精製、及び回収した銅粒子混合物の保存は、下記の操作により行った。
【実施例】
【0112】
(操作)
上述のようにして得られた、銅粒子混合物が分散した溶液から、上澄み液として除去できなかった洗浄溶媒のヘキサンを除くために、ボールミル処理を行った。ボールミル処理は、容器に7個のステンレス球(直径5mm)を加えて撹拌振とう機で約60分間振動を与えることにより行った。初めの約5分間は、分離してきたヘキサンの上澄み液を適宜除去した。残りの55分間は容器の蓋を軽く開けておくことで分離してきたヘキサンを揮発、蒸発させた。次いで、PFAベッセル容器から軟膏壺容器(6mL)に移し替え、自転・公転ミキサーで脱泡処理、混練処理を5分間ずつ行い、でインクの内容物を均一に分散させて、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。調製後の銅粒子混合物含有インクは、-30℃の冷凍庫で保管した。
【実施例】
【0113】
(実施例2及び3、比較例1及び2)
実施例2
銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを、1:1の質量比となるように採取した以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0114】
実施例3
銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bを、1:3の質量比となるように採取した以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0115】
比較例1
銅微粒子Aを用い、銅ナノ粒子Bを用いなかった以外は実施例1と同様にして、銅微粒子分散液である銅微粒子含有インクを調製した。銅濃度は、実施例1の3:1の銅粒子混合物含有インクの濃度に合わせ、金属銅の含有量が約60質量%となるように調製した。
【実施例】
【0116】
比較例2
銅ナノ粒子Bを用い、銅微粒子Aを用いなかった以外は実施例1と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した。
【実施例】
【0117】
(銅微粒子Aと銅ナノ粒子Bの割合の検討)
実施例1~3で調製された銅粒子混合物含有インク、比較例1で調製された銅微粒子含有インク、比較例2で調製された銅ナノ粒子含有インクを用いて、銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した。具体的には、調製した銅ナノインクをポリイミド基板上にドクターブレード(12μm)を用いて塗布し、製膜した。電気炉を用い、窒素フロー下(1NL/min)昇温速度5℃/min、100℃で60min保持の条件で焼成を行った。得られた熱焼成後銅膜のシート抵抗値(Ω/□)を四探針法によって測定した。マイクロメータにより膜厚を測定し、シート抵抗値との積により、体積抵抗率(Ωcm)を算出した。結果を図1に示す。
【実施例】
【0118】
図1において、比較例1の、銅微粒子含有インクの焼結により形成された銅膜は導通不可であった(flake only)。これは、銅微粒子Aの融点が100℃よりも高いため、焼結が進まなかったからであると考えられる。実施例1~3の銅粒子混合物含有インクの焼結後の銅膜の電気抵抗率はそれぞれ、6.5±2.0×10-5Ωcm(実施例1)、1.7±0.8×10-4Ωcm(実施例2)、3.4±0.5×10-4Ωcm(実施例3)であり、銅微粒子A及び銅ナノ粒子Bの質量比が3:1(実施例1)で最も低い値となった。実施例2(1:1)および実施例3(1:3)では、銅ナノインクの焼結により形成された銅膜の電気抵抗率は、比較例2(nano only)よりも高くなった。実施例1(3:1)の銅粒子混合物含有インクの焼結により形成された銅膜は、充填率が高いために電気抵抗率が低くなったと考えられる。
【実施例】
【0119】
(焼成温度の検討-1)
実施例1で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間10秒、15秒、20秒、30秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した(図2)。また、大気中で焼成温度100℃、焼成時間1分、5分、10分、20分、30分、40分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した(図3)。焼成は、銅粒子混合物含有インクを塗布したポリイミドを大気中で所定の時間加熱して行った。また、150℃で20秒加熱して形成した銅膜について、XRD測定を行った(図4)。結果を図2~4に示す。
【実施例】
【0120】
図2において、電気抵抗値はそれぞれ、10秒(1.1±0.8×10Ω/□)、15秒(4.5±0.8×10-1Ω/□)、20秒(3.8±0.7×10-1Ω/□)、30秒(5.1±1.4×10-1Ω/□)であった。また、電気抵抗率は、10秒(7.7±5.8×10-4Ωcm)、15秒(3.1±0.6×10-4Ωcm)、20秒(2.6±0.5×10-4Ωcm)であった(図2)。20秒焼成後銅膜のXRDスペクトルから、酸化銅のピークは検出されなかった(図4)。これにより、銅膜の酸化が十分に抑制されていることが分かった。図3において、100℃での焼成では、溶媒の蒸発と銅ナノ粒子Bの焼結に150℃での焼成よりも若干時間がかかり、10~20分程度必要であった(図3)。
【実施例】
【0121】
以上より、大気中では、150℃以下の低温焼成が可能であり、ホットプレート等の汎用加熱装置で焼成が可能であり、150℃程度の温度で、10~30秒程度の短時間で焼成が可能であることが分かった。
【実施例】
【0122】
(銅微粒子Aの平均粒子径の検討)
実施例4
銅微粒子Aとして、平均粒子径0.96μmの銅微粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0123】
実施例5
銅微粒子Aとして、平均粒子径0.75μmの銅微粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0124】
実施例6
銅微粒子Aとして、平均粒子径0.52μmの銅微粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0125】
実施例7
銅微粒子Aとして、平均粒子径0.30μmの銅微粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、銅粒子混合物を調製し、銅粒子混合物分散液である銅粒子混合物含有インクを調製した。
【実施例】
【0126】
実施例1及び4~7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間20秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0127】
図5の結果から、0.30μmの銅微粒子を用いた実施例7が、最も低い抵抗値を示した。
【実施例】
【0128】
(焼成温度の検討-2)
実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、大気中で焼成温度150℃、焼成時間5秒、10秒、15秒、20秒、30秒の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した(図6)。また、150℃で10秒加熱して形成した銅膜について、XRD測定を行い(図7)、SEM観察を行った(図8)。結果を図6~8に示す。
【実施例】
【0129】
図6の結果から、抵抗値は10秒の短い焼成時間で最も低い抵抗値を示した。はじめの約10秒間で銅膜が茶色(焼結の進んでいない銅粒子が分散している銅粒子混合物含有インクの色)から、ピンク色(焼結が進んだ銅の色)に変化した。このことから、10秒の焼成で導電阻害物質である溶媒の蒸発に伴い焼結が進み、電気抵抗率が減少したと考えられる(図6)。10秒焼成後銅膜のXRDスペクトルから、酸化銅のピークは検出されなかった(図7)。これにより、銅膜の酸化が十分に抑制されていることが分かった。SEM観察では、銅ナノ粒子の低温焼結性によって融解した銅ナノ粒子がバインダーとなって、銅微粒子を連結させて導電性の銅膜を形成している様子が観察された(図8)。
【実施例】
【0130】
(焼成温度の検討-3)
実施例7で調製された銅粒子混合物含有インクを用いて、不活性雰囲気中(窒素雰囲気中)で焼成温度60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、焼成時間60分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した(図9)。また、80℃で60分加熱して形成した銅膜について、SEM観察を行った(図10、11)。結果を図9~11に示す。
【実施例】
【0131】
図9の結果から、焼成温度が高くなるにつれて、銅膜の電気抵抗率がより一層低減されることが分かった。60℃での焼成では、1.8±0.7×10-3Ωcm(シート抵抗値:3.6±1.4×10Ωcm)となった。理由として、高沸点溶媒が残留し、導通阻害物質として作用したことが考えられる。70℃の焼成では、2.3±0.7×10-4Ωcm(シート抵抗値:4.7±1.4×10-1Ωcm)の抵抗値を示し、60℃での焼成よりも焼結が進んでいることが分かった。80℃、90℃、100℃での焼成後の銅膜の電気抵抗率は、それぞれ5.3±1.3×10-5Ωcm(シート抵抗値:1.4±0.5×10-1Ωcm)、3.1±1.0×10-5Ωcm(シート抵抗値:7.8±2.6×10-2Ωcm)、1.3±1.0×10-5Ωcm(シート抵抗値:3.2±1.0×10-2Ωcm)であった。これは、60℃、70℃での焼成よりも、更に焼結や溶媒の蒸発が進行したことによると考えられる。120℃での焼成後の銅膜の電気抵抗率は、8.4±1.0×10-6Ωcm(シート抵抗値:2.0±0.3×10-2Ωcm)であり、バルク銅の約5倍の低電気抵抗率を)示すことが分かった。
【実施例】
【0132】
80℃で焼成後の銅膜のSEM観察では、銅ナノ粒子の低温焼結性によって融解した銅ナノ粒子がバインダーとなって、銅微粒子を連結させて導電性の銅膜を形成している様子が観察された(図10)。また、図11では、銅微粒子間の隙間が、焼結により形成された銅膜に埋められている様子が観察された。
【実施例】
【0133】
以上より、不活性雰囲気中では、120℃以下の低温焼成が可能であり、これまで適用できないとされていた耐熱性が低い基材が使用可能であることが分かった。
【実施例】
【0134】
(大気中での銅ナノ粒子の焼成との対比)
比較例2で調製された銅ナノ粒子含有インクを用いて、150℃、1分間の条件で焼成して、銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した。また、当該銅膜について、XRD測定を行った。結果を図12に示す。
【実施例】
【0135】
銅膜の電気抵抗率は2.9±0.6×10-3Ωcmであり、実施例の銅粒子混合物含有インクを用いて形成した銅膜電気抵抗率よりも高い電気抵抗率であった。これは、図12から分かるように、酸化銅が形成されていることによることが分かった。
【実施例】
【0136】
(銅微粒子Aのシュウ酸、マロン酸による被覆の検証)
銅微粒子Aがジカルボン酸に被覆されていることを、以下の参考例により検証した。銅粒子混合物には、銅微粒子Aだけでなく、銅ナノ粒子Bも含んでいる。このため、銅微粒子Aがジカルボン酸に被覆されていることを明確に検証するため、以下の参考例のように、銅微粒子Aを含み、銅ナノ粒子Bを含まない銅微粒子分散液にジカルボン酸を添加して銅微粒子Aを調製し、銅微粒子Aのジカルボン酸による被覆を検証した。
【実施例】
【0137】
(参考例1)
銅微粒子(0.3μm)を、溶媒としてのプロピレングリコールに分散させ、1質量%のシュウ酸を添加して、銅微粒子分散液を調製した。この銅微粒子分散液を用いて14000rpm、10分の条件で遠心分離を行い、銅微粒子の沈殿物を得た。この沈殿物をプロピレングリコールで2回洗浄し、次いで、50℃の条件で3日間減圧乾燥を行い、溶媒(プロピレングリコール)を除去し、銅微粒子粉末を調製した。調製された銅微粒子粉末の赤外吸収スペクトルを測定した。
【実施例】
【0138】
(参考例2)
1質量%のシュウ酸を、1質量%のマロン酸に代えた以外は参考例1と同様にして、銅微粒子粉末を調製した。
【実施例】
【0139】
(参考例3)
ジカルボン酸を添加しなかった以外は参考例1と同様にして、銅微粒子粉末を調製した。
【実施例】
【0140】
結果を図13に示す。
【実施例】
【0141】
図13の結果から、銅微粒子分散液の溶媒にシュウ酸又はマロン酸を添加することにより、銅微粒子表面にカルボン酸由来のピーク(図13矢印)が確認された。以上より、銅微粒子分散液を調製する際に、溶媒にシュウ酸又はマロン酸を添加することにより、銅微粒子表面がシュウ酸又はマロン酸に被覆されることが分かった。このことから、銅粒子混合物を調製する際に、銅粒子混合物分散液の溶媒にシュウ酸又はマロン酸を添加することにより、銅微粒子Aがマロン酸及び/又はシュウ酸に被覆されることが検証された。
【実施例】
【0142】
(還元剤の検討)
還元剤の銅に対する効果を検証するために、銅ナノ粒子を用いて検討を行った。具体的には、参考例4~10で調製された銅ナノ粒子含有インクを用いて、不活性雰囲気中(窒素雰囲気中)で焼成温度100℃、焼成時間60分の条件で銅膜を形成し、電気抵抗率を測定した(図14)。
【実施例】
【0143】
参考例4
銅微粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のmalonic acid)。
【実施例】
【0144】
参考例5
マロン酸に代えて、シュウ酸を用いた以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のoxalic acid)。
【実施例】
【0145】
参考例6
マロン酸に代えて、コハク酸を用いた以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のsuccinic acid)。
【実施例】
【0146】
参考例7
マロン酸に代えて、クエン酸を用いた以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のcitric acid)。
【実施例】
【0147】
参考例8
マロン酸に代えて、アスコルビン酸を用いた以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のascorbic acid)。
【実施例】
【0148】
参考例9
マロン酸に代えて、ヒドラジンを用いた以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のhydrazine)。
【実施例】
【0149】
参考例10
還元剤(マロン酸)を添加しなかった以外は参考例4と同様にして、銅ナノ粒子を調製し、銅ナノ粒子分散液である銅ナノ粒子含有インクを調製した(図14のno additive)。
【実施例】
【0150】
結果を図14に示す。
【実施例】
【0151】
また、参考例5(図15のoxalic acid)、及び参考例10(図15のno addition)については、銅膜のXRD測定を行った(図15)。結果を図15に示す。
【実施例】
【0152】
クエン酸、アスコルビン酸、ヒドラジン、マロン酸を用いた場合の焼成後の銅膜の電気抵抗率はそれぞれ、2.2±0.4×10-3Ωcm、2.4±1.0×10-3Ωcm、4.2±0.4×10-4Ωcm、1.1±0.05×10-4Ωcmであった。これらの中で、マロン酸を用いた参考例4が最も低い電気抵抗率を示した。これは、クエン酸やアスコルビン酸は、分解温度が高いので銅膜に残留して導通阻害物質となり、電気抵抗率が高くなったと考えられる。還元剤として銅ナノ粒子表面の酸化銅に対して作用する場合、ヒドラジンは窒素と水に分解するが、マロン酸は酢酸と二酸化炭素に分解する。これらの物質は100℃、60分間の加熱により銅膜中にほとんど残留しないために、焼成後銅膜の電気抵抗率が低くなったと考えられる。また、ギ酸を添加すると銅ナノ粒子含有インクが凝集が進行して流動性が低下した。この銅ナノ粒子含有インクを塗布して焼成すると、多数の割れが生じ導通不可となった。これは、ギ酸の銅ナノ粒子に対する配位能が高いため保護層を剥がしてしまうので、銅ナノ粒子含有インクが凝集し、凝集した銅ナノ粒子含有インクを無理に塗布することで不均一な膜となったことが原因であると考えられる。
【実施例】
【0153】
また、図14において、ジカルボン酸は、シュウ酸(参考例5 n=0)、マロン酸(参考例4 n=1)、コハク酸(参考例6 n=2)が用いられている。これらの参考例の電気抵抗率はそれぞれ、7.5±1.5×10-5Ωcm、10±0.4×10-5Ωcm、260±180×10-5Ωcmであった。ジカルボン酸の中でも、マロン酸及びシュウ酸を用いた場合に、銅膜の電気抵抗率が特に低減されることが分かった。
【実施例】
【0154】
上記参考例4~10の結果から、還元剤としてマロン酸、シュウ酸を用いた場合に、銅膜の電気抵抗率が低減され、このような電気抵抗率の低減効果は、他の還元剤を用いた場合と比較して、顕著な効果であることが分かった。
【実施例】
【0155】
図15の結果から、参考例5で形成した銅膜のXRDスペクトルには、酸化銅のピークは検出されなかった(図15のoxalic acid)。これにより、銅に対する還元剤としてシュウ酸を用いると、銅膜の酸化が十分に抑制されることが分かった。
【実施例】
【0156】
これに対して、参考例10で形成した銅膜のXRDスペクトルには、酸化銅が検出のピークが検出されており(図15のno addition)、銅膜の酸化が十分に抑制されていないことが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14