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明細書 :センサおよびセンサの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月16日(2020.4.16)
発明の名称または考案の名称 センサおよびセンサの製造方法
国際特許分類 G01N  21/41        (2006.01)
FI G01N 21/41 101
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2019-525590 (P2019-525590)
国際出願番号 PCT/JP2018/023039
国際公開番号 WO2018/230736
国際出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
優先権出願番号 2017118167
優先日 平成29年6月15日(2017.6.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】清水 大雅
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000877、【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059BB04
2G059DD01
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE05
2G059JJ17
2G059KK01
要約 表面プラズモンポラリトン励起構造を利用したセンサを提供する。基板と、基板の上方に設けられた強磁性体層と、強磁性体層の上方に設けられ、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層と、低屈折率層の上方に設けられ、低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層とを備えるセンサを提供する。また、基板を用意し、基板の上方に強磁性体層を設け、強磁性体層の上方に、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層を設け、低屈折率層の上方に、低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層を設けるセンサの製造方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられた強磁性体層と、
前記強磁性体層の上方に設けられ、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層と、
前記低屈折率層の上方に設けられ、前記低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層と
を備えるセンサ。
【請求項2】
第1の磁場と、前記第1の磁場と異なる第2の磁場のいずれかを前記強磁性体層に印加する磁場印加部を更に備える
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記磁場印加部は、前記第1の磁場として飽和磁場を前記強磁性体層に印加し、前記第2の磁場として前記飽和磁場の反転磁場を前記強磁性体層に印加する
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記低屈折率層は、
前記測定対象物質を前記低屈折率層に流入する流入部と、
前記測定対象物質を前記低屈折率層から外部に流出する流出部と
を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記低屈折率層の層厚は15000nm以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記低屈折率層は、予め定められた第1の層厚と、前記第1の層厚と異なる第2の層厚を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記低屈折率層は、前記第1の層厚から前記第2の層厚へと徐々に層厚が変化するくさび型の構造を有する
請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記強磁性体層と前記低屈折率層との間に設けられ、1より大きい屈折率の伝搬定数調整層を更に備える
請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記伝搬定数調整層の膜厚は、前記低屈折率層の層厚より薄い
請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記低屈折率層と前記強磁性体層との間に、前記強磁性体層よりも導電率が高い第1金属層を更に備える
請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記基板と前記強磁性体層との間に、前記強磁性体層よりも測定波長における導電率が高い第2金属層を更に備える
請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記第1金属層の膜厚は、前記第2金属層の膜厚よりも薄い
請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
ある入射角度θで測定された磁化反転時の反射率の変化をΔRとし、ある入射角度θで反射率を測定したとき、外部磁場(+M)、および、外部磁場(-M)のもとで得られた反射率の和をRとした場合に、
性能指数ΔR/Rが-1.0以上、-0.9以下、または、+0.9以上、+1.0以下を満たす
請求項1から12のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項14】
ある入射角度θで測定された、前記低屈折率層の層厚tが異なる2点(t1、t2)の反射率の変化をΔR'とし、ある入射角度θで反射率を測定したとき、前記層厚tがt1、t2のもとで得られた反射率の和をRとした場合に、
性能指数(ΔR/R)'が-1.0以上、-0.9以下、または、+0.9以上、+1.0以下を満たす
請求項1から12のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項15】
前記反射率の和R、前記性能指数の入射角度依存性を測定する際、入射角度の分解能を超える超分解能を有する
請求項13または14に記載のセンサ。
【請求項16】
基板を用意し、
前記基板の上方に強磁性体層を設け、
前記強磁性体層の上方に、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層を設け、
前記低屈折率層の上方に、前記低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層を設ける
センサの製造方法。
【請求項17】
前記強磁性体層と、前記低屈折率層と、前記高屈折率層との積層構造は、
前記強磁性体層の上面に支持層を設け、
前記支持層を介して、前記強磁性体層の上方に前記高屈折率層を積層することにより形成される
請求項16に記載のセンサの製造方法。
【請求項18】
前記強磁性体層と、前記低屈折率層と、前記高屈折率層との積層構造は、
前記高屈折率層を含む基板を更に用意し、
前記高屈折率層を含む基板に溝を形成し、
前記高屈折率層を含む基板の前記溝が形成された面を、前記強磁性体層に貼り合わせることにより形成される
請求項16に記載のセンサの製造方法。
【請求項19】
ある入射角度θで測定された磁化反転時の反射率の変化をΔRとし、ある入射角度θで反射率を測定したとき、外部磁場(+M)、および、外部磁場(-M)のもとで得られた反射率をRとした場合に、
性能指数ΔR/Rが-1.0以上、-0.9以下、または、+0.9以上、+1.0以下を満たす
請求項16から18のいずれか一項に記載のセンサの製造方法。
【請求項20】
ある入射角度θで測定された、前記低屈折率層の層厚tが異なる2点(t1、t2)の反射率の変化をΔR'とし、ある入射角度θで反射率を測定したとき、前記層厚tがt1、t2のもとで得られた反射率の和をRとした場合に、
性能指数(ΔR/R)'が-1.0以上、-0.9以下、または、+0.9以上、+1.0以下を満たす
請求項16から18のいずれか一項に記載のセンサの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、センサおよびセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面プラズモンポラリトン励起構造を利用したセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 国際公開第2011/142118号
【解決しようとする課題】
【0003】
表面プラズモンポラリトン励起構造を利用した、より高感度なセンサが要求されている。
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、基板と、基板の上方に設けられた強磁性体層と、強磁性体層の上方に設けられ、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層と、低屈折率層の上方に設けられ、低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層とを備えるセンサを提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、基板を用意し、基板の上方に強磁性体層を設け、強磁性体層の上方に、測定対象物質を流すための空間を含む低屈折率層を設け、低屈折率層の上方に、低屈折率層よりも屈折率の大きい高屈折率層を設けるセンサの製造方法を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1に係るセンサ100の構成の一例を示す。
【図2】センサ100の構成の一例を示す。
【図3】センサ100の製造方法の一例を示す。
【図4】図1のセンサ構成において表面プラズモンポラリトンの光波が基板10、金属層12、強磁性体層14、金属層16、低屈折率層20、高屈折率層22、プリズム24からなる積層構造の中で分布する様子の一例を示す。
【図5】センサ100の指標ΔR/Rの波長依存性を示す。
【図6】センサ100の指標ΔR/Rの入射角度θ依存性を示す。
【図7】実施例2に係るセンサ100の構成の一例を示す。
【図8】実施例3に係るセンサ100の構成の一例を示す。
【図9】実施例4に係るセンサ100の構成の一例を示す。
【図10】比較例1に係るセンサ500の構成を示す。
【図11】実施例2に係るセンサ100の感度と、比較例1に係るセンサ500の感度を示す。
【図12A】センサ100の指標ΔR/Rの具体的な入射角度θ依存性を示す。
【図12B】センサ500の指標Rの具体的な入射角度θ依存性を示す。
【図13】実施例4に係るセンサ100の指標(ΔR/R)'の具体的な入射角度θ依存性を示す。
【図14】センサ装置200の応用例の一例を示す。
【図15】センサ装置200の構成の一例を示す。
【図16】強磁性体層14への印加磁場と磁気光学効果との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0009】
[実施例1]
図1は、実施例1に係るセンサ100の構成の一例を示す。本例のセンサ100は、基板10と、金属層12と、強磁性体層14と、金属層16と、低屈折率層20と、高屈折率層22と、プリズム24と、分子認識素子32とを備える。センサ100は、測定対象物質30の屈折率を測定する。

【0010】
基板10は、ガラス基板や半導体基板等の任意の材料の基板であってよい。基板10の材料は、酸化シリコン(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)等の酸化物やシリコンなどの鉄(Fe)、銀(Ag)、金(Au)等の金属を成膜できる材料であることが好ましい。

【0011】
金属層12は、基板10の上方に設けられる。本例の金属層12は、基板10と金属層16との間に設けられている。金属層12と金属層16の材料は、強磁性体層14よりも測定波長における導電率が高い材料である。金属層12は、AgやAu等の貴金属、または、これらから選択される2種類以上の材料の合金であってよい。金属層12は、第2金属層の一例である。

【0012】
強磁性体層14は、磁気モーメントが予め定められた方向に揃った磁性材料を含む。一例において、強磁性体層14は、外部磁場の印加により磁気モーメントの方向が制御される。強磁性体層14に印加する外部磁場の大きさを変更することにより、センサ100の検出感度が変化する。例えば、強磁性体層14の材料は、コバルト、鉄、ニッケル等の強磁性材料、または、これらから選択される2種類以上の材料の合金を含む。

【0013】
金属層16は、強磁性体層14の上面に設けられる。本例の金属層16は、強磁性体層14と低屈折率層20との間に設けられている。金属層16の材料は、強磁性体層14よりも導電率が高い材料である。金属層16は、AgやAu等の貴金属、または、これらから選択される2種類以上の材料の合金であってよい。金属層12と、強磁性体層14と、金属層16とは、強磁性金属と貴金属の積層構造からなる複合金属薄膜を構成する。金属層12および金属層16として貴金属を用いることにより、複合金属薄膜におけるロスを減らして、後述するATRカーブを急峻にできる。本例の金属層16の膜厚は、金属層12の膜厚よりも薄い。金属層16は、第1金属層の一例である。

【0014】
低屈折率層20は、強磁性体層14の上方に設けられる。本例の低屈折率層20は、金属層16の上面に設けられている。低屈折率層20は、予め定められた屈折率の測定対象物質30を流すための空間を有する。低屈折率層20は、予め定められた層厚tを有する。一例において、低屈折率層20の層厚tは、15000nm以下であってよく、3000nm以下であってよく、1500nm以下であってよく、500nm以下であってもよい。低屈折率層20の屈折率は、測定対象物質に応じて決められる。決められた屈折率に対して強磁性金属を含む金属層と誘電体の組合せに対して低屈折率層20の層厚tを変えた時、放射モード(即ち、-Mで表記したモード)と閉じ込めモード(即ち、+Mで表記したモード)を強磁性金属の磁化反転によって切り替えることができるように高屈折率層22の屈折率を決める。低屈折率層20の端部は、複数の支持層21により支持されている。本例の支持層21は、基板10の平面形状が四角形の場合、基板10の四隅に設けられる。複数の支持層21は、測定対象物質30を流入するための流入口と、測定対象物質30を流出するための流出口を形成してよい。但し、低屈折率層20を流入する空間を確保できるものであれば、金属層16と高屈折率層22との間を支持する方法は特に限定されない。

【0015】
また、低屈折率層20の上面および下面は、平面に限定されず、センサ100が動作できるものであれば、曲面や凹凸等を有するものであってもよい。さらに、低屈折率層20と隣接する層を使い捨てにするため、金属層16や高屈折率層22などの部材を交換式としてもよい。

【0016】
測定対象物質30は、センサ100により特性を検出する対象となる物質である。測定対象物質30は、低屈折率層20の空間に導入できるものであれば、特に限定されない。本例の測定対象物質30は、液体または気体である。センサ100は、測定対象物質30の物性を測定する。一例において、センサ100は、予め測定対象物質30の情報を取得しておくことにより、屈折率の変化から測定対象物質30の種類、組成、濃度、分析物と抗体の結合・解離等を測定する。例えば、測定対象物質30が気体の場合、センサ100は、ガスセンサとして機能する。

【0017】
分子認識素子32は、測定対象物質30を吸着する。一例において、分子認識素子32は、測定対象物質30に対応する抗体である。分子認識素子32は、低屈折率層20の空間内に設けられる。本例の分子認識素子32は、金属層16の上面に設けられる。即ち、分子認識素子32は、低屈折率層20の底面側に設けられている。但し、分子認識素子32は、低屈折率層20の上面側に設けられても、中央に設けられてもよい。センサ100は、複数の分子認識素子32を設けることにより、複数の測定対象物質30を測定することができる。

【0018】
高屈折率層22は、低屈折率層20の上方に設けられる。高屈折率層22は、低屈折率層20よりも屈折率の大きい層である。一例において、低屈折率層20と高屈折率層22との屈折率差は以下のように決められる。測定対象物質30の屈折率に対して低屈折率層20の屈折率が決まる。決められた屈折率に対して強磁性金属を含む金属層と誘電体の組合せに対して低屈折率層20の層厚tを変えた時、放射モード(-Mで表記したモード)と閉じ込めモード(+Mで表記したモード)を強磁性金属の磁化反転によって切り替えることができるように高屈折率層22の屈折率を決める。

【0019】
また、別の例において低屈折率層20と高屈折率層22との屈折率差は以下のように決められる。測定対象物質30の屈折率に対して低屈折率層20の屈折率が決まる。決められた屈折率に対して強磁性金属を含む金属層と誘電体の組合せに対して低屈折率層20の層厚tを変えた時、放射モードと閉じ込めモードを低屈折率層20の層厚tの違いによって切り替えることができるように高屈折率層22の屈折率を決める。ある波長と低屈折率層20の層厚t、強磁性金属と貴金属の組み合わせに対して左記の条件を満たすように屈折率差が決められる。例えば、低屈折率層20の屈折率を1.02としたとき、高屈折率層22の材料は、SiOとできる。

【0020】
プリズム24は、高屈折率層22上に設けられる。プリズム24には、予め定められた波数の入射光110が入射する。入射光110は、予め定められた入射角度θでプリズム24に入射される。入射光110は、少なくともp偏光の光を含む。入射光110の波数および入射角度θは、センサ100で励起されるプラズモンや低屈折率層20および高屈折率層22を構成する材料等に応じて変更されてよい。一例において、プリズム24は、高屈折率層22と同一の材料で形成される。本例のプリズム24の材料は、SiOである。

【0021】
本例のセンサ100は、入射光110の反射率を測定し、測定した反射率の違いから測定対象物質30の屈折率の違いを検出する。入射光110の反射率の測定には、全反射減衰法(ATR法)が用いられる。例えば、センサ100は、強磁性金属の磁化がプラスの時とマイナスの時、反射率の入射角度θの依存性を測定し、磁化が反転したときの反射率の変化(ΔR/R)、もしくは反射率(R)を指標として屈折率の変化を検出する。これにより、センサ100は、測定対象物質30の物性を測定する。

【0022】
ここで、強磁性体層14の低屈折率層20側の界面において、表面プラズモンが励起される。表面プラズモンの励起条件および励起状態は、プリズム24から入射する入射光110の入射角度θおよび波数によって決まる。例えば、表面プラズモンは、高屈折率層22側から入射した光が、高屈折率層22と低屈折率層20との界面で全反射する際のエバネッセント波を通じて励起される。そして、表面プラズモンの励起状態は、低屈折率層20の空間を占める測定対象物質30の屈折率が変化することによって変化する。高屈折率層22側の波数のZ方向成分と表面プラズモン側の波数を一致させるように低屈折率層20の層厚tを設計することにより、入射光110の反射率をゼロに、または、ゼロに近づけることができる。

【0023】
センサ100の指標のうち、磁化反転時の反射率の変化(ΔR/R)は、(数1)式で示される。たとえば、センサ100の指標(ΔR/R)が屈折率の変化δnに対してδ(ΔR/R)だけ変化したとき、δ(ΔR/R)/δnが、センサ100の感度に対応する。本例の指標は、磁化反転時の反射率の差を反射率の和で規格化したものであり、-1から+1の間をとる。
【数1】
JP2018230736A1_000003t.gif
ΔRは、ある入射角度θで測定された磁化反転時の反射率の変化(即ち、反射率の差)を示す。磁化反転時とは、強磁性体層14に予め定められた外部磁場(+M)を印加し、当該外部磁場(+M)を反転した外部磁場(-M)を強磁性体層14に印加する場合を指す。Rは、ある入射角度θで反射率を測定したとき、外部磁場(+M)、および、外部磁場(-M)のもとで得られた反射率R(+M),R(-M)の和を示す。センサ100は、ΔRとRとの比である指標ΔR/Rから屈折率の変化を検出する。なお、(数1)式は、センサ100を用いた場合の指標ΔR/Rの一例であり、反射率の差や反射率の和を用いることに限定されるものではない。例えば、Rとして反射率の平均値を用いてもよい。

【0024】
なお、屈折率の変化に対する磁化反転時の反射率の変化(ΔR/R)の変化は、屈折率の変化に対する反射率の変化よりも大きくなる。即ち、磁化反転時の反射率の変化の屈折率に対する変化δ(ΔR/R)/δnは、反射率の屈折率に対する変化δR/δnよりも大きい。センサ100は、指標をΔR/Rとすることにより、Rを指標とする場合よりも感度を高められる。一例において、本例のセンサ100は、10のマイナス6乗の屈折率差を検出できる。

【0025】
センサ100のもう一つの指標として、低屈折率層20の層厚tが異なる2点(t1、t2)の反射率R(t1)、R(t2)を測定し、異なる位置の反射率の変化(ΔR/R)'を挙げる。(ΔR/R)'が屈折率の変化δnに対してδ(ΔR/R)'だけ変化したとき、δ(ΔR/R)'/δnが、センサ100の感度に対応する。本例の指標は、異なる位置の反射率の差を反射率の和で規格化したものであり、-1から+1の間をとる。強磁性金属の磁化状態は任意でよい。
【数2】
JP2018230736A1_000004t.gif
ΔR'は、ある入射角度θで測定された、低屈折率層20の層厚tが異なる2点の反射率の変化(即ち、反射率の差)を示す。R'は、ある入射角度θで測定された、低屈折率層20の層厚tが異なる2点の反射率R(t1),R(t2)の和を示す。センサ100は、ΔR'とR'との比である指標ΔR'/R'から屈折率の変化を検出する。なお、(数2)式は、センサ100を用いた場合の指標(ΔR/R)'の一例であり、反射率の差や反射率の和を用いることに限定されるものではない。例えば、R'として反射率の平均値を用いてもよい。

【0026】
本例のセンサ100は、高屈折率層22と、測定対象物質30を含む低屈折率層20と、金属との三層構造を備えるオット配置で構成される。オット配置では、高屈折率層側の波数のZ方向成分と表面プラズモンの波数を完全に整合させることができ、反射率が理論上ゼロとなる。これにより、センサ100の感度が向上する。なお、本例のセンサ100は、オット配置において、指標をΔR/R、(ΔR/R)'としたが、指標にRを用いた場合であっても、低屈折率層20の層厚tを分析物、測定波長に対して選んで測定することでクレッチマン配置と比較して感度を向上できる。

【0027】
以上の通り、センサ100は、反射率をゼロにし、且つ、強磁性金属と貴金属とを組み合わせることで、測定対象物質30の屈折率の変化に対する磁化反転時の反射率の変化(ΔR/R)の変化を急峻にする。センサ100は、反射率をゼロにすることにより、指標である磁化反転時の反射率の変化(ΔR/R)を1(即ち、100%)に近づけられる。また、測定対象物質30が一般に屈折率に波長依存性を有するので、適切な波長を選択することにより、大きな感度が実現される。例えば、センサ100は、測定対象物質30が最も大きな屈折率変化を示す波長に合わせて設計される。

【0028】
図2は、センサ100の構成の一例を示す。本例のセンサ100は、磁場印加部40をさらに備える。なお、図2では、センサ100の詳細な構造を省略しているものの、図1で示したセンサ100と同様の構造を有してよい。

【0029】
磁場印加部40は、強磁性体層14に磁場を印加する。一例において、磁場印加部40は、第1の磁場と、第1の磁場と異なる第2の磁場のいずれかを強磁性体層14に印加する。例えば、磁場印加部40は、第1の磁場として飽和磁場を強磁性体層14に印加し、第2の磁場として飽和磁場の反転磁場を強磁性体層14に印加する。但し、強磁性体層14に印加する磁場は、反転磁場に限られず、同一の極性の磁場であってよい。磁場印加部40は、強磁性体層14に印加する外部磁場を強磁性体層14の飽和磁場とすることにより信号が安定する。但し、強磁性体層14に印加する磁場は、飽和磁場に限られない。

【0030】
低屈折率層20は、両端において流入部26および流出部28と接続されている。流入部26および流出部28は、低屈折率層20の空間に接続される。流入部26は、測定対象物質30を外部から低屈折率層20の内部に流入させる。流出部28は、測定対象物質30を低屈折率層20の内部から外部に流出させる。

【0031】
本例のセンサ100は、強磁性体層14に印加する磁場の方向を変化させて、指標ΔR/Rで測定対象物質30の物性を測定する。センサ100は、表面プラズモンに磁気的作用を付加して高感度化を実現する。

【0032】
図3は、センサ100の製造方法の一例を示す。本例は、センサ100の製造方法の一例であり他の製造方法を用いてセンサ100が製造されてもよい。

【0033】
センサ100の製造では、基板10を用意する。基板10の上方には、強磁性体層14が設けられる。本例では、基板10の上面に金属層12と、強磁性体層14と、金属層16とが積層される。また、金属層16の上面には、低屈折率層20および高屈折率層22が積層される。一例において、強磁性体層14の上面に接着剤を塗布し、当該接着剤を介して、強磁性体層14の上方に高屈折率層22を積層する。センサ100が金属層16を有する場合、接着剤は金属層16の上面に塗布される。強磁性体層14と、低屈折率層20と、高屈折率層22との積層構造は、強磁性体層14の上方に接着剤を介して高屈折率層22を積層し、強磁性体層14と、接着剤と、高屈折率層22とを加熱することにより形成される。

【0034】
高屈折率層22は、金属層16の上面に支持層21を介して積層される。即ち、接着剤は、加熱により硬化して支持層21となる。例えば、支持層21の材料としてインジウムを金属層16上に設けた後に、高屈折率層22を積層し、窒素雰囲気中で加熱する。このように、高屈折率層22は、はんだの要領で金属層16の上方に形成される。これにより、低屈折率層20が高屈折率層22と金属層16との間に設けられる。

【0035】
なお、低屈折率層20の空間は、エッチングプロセス等の技術を用いて形成されてよい。例えば、高屈折率層22がSiOの場合、SiO基板上に溝を設けることにより流路を形成する。SiO基板の流路が形成された側を金属層16側に貼り合わせることにより、高屈折率層22と金属層16との間に低屈折率層20が形成されてよい。そして、プリズム24は、マッチングオイル等により、高屈折率層22の上面に貼り合わせられてよい。

【0036】
図4は、表面プラズモンポラリトンの光波が積層構造を主とするセンサ構造の中で分布する様子の一例を示す。同図は、センサ100の簡略化した構造と、センサ100のATRカーブを示す。ATRカーブの縦軸はプラズモン波の強度を示し、横軸はセンサ100の深さ方向の座標を示す。座標は、低屈折率層20と高屈折率層22との界面を原点として、低屈折率層20側を正の方向とし、高屈折率層22側を負の方向としている。また、グラフ中の実線は、磁場印加部40が磁場(-M)を印加する場合のプラズモン波の強度分布に対応し、破線は、磁場印加部40が磁場(+M)を印加する場合のプラズモン波の強度分布に対応する。

【0037】
プラズモン波は、強磁性体層14および低屈折率層20の界面付近で主に発生する。プラズモン波の強度は、強磁性体層14と低屈折率層20との界面で特に高くなる。プラズモン波の特性は、磁場印加部40による印加磁場の方向を磁場(+M)と磁場(-M)で変化させることにより変化している。プラズモン波は、高屈折率層22において、約一定の強度を有する。即ち、本例のグラフは、カットオフ時のプラズモン波の強度分布を示す。

【0038】
カットオフとは、高屈折率層22側の光の強度が一定になり、プラズモン波の波数が実数になる状態を指し、高屈折率層22側から入射した光の波数のz方向成分と一致することで反射率がゼロとなる。カットオフでは、表面プラズモンが励起されているが、強磁性体層14と低屈折率層20の界面で閉じ込められ、図4に示す座標-∞となる点において強度がゼロに収束する状態(プラズモン波が分布する様子)と、強磁性体層14と低屈折率層20がエバネセント波により結合しない状態の境界に対応し、プラズモン波の波数が実数になる。実際には高屈折率層22やプリズム24の厚さは有限であるが、低屈折率層20の層厚tと比べて十分厚く、座標-∞となる点を高屈折率層22の上端やプリズム24の半円の縁とみなしても、センサの使用上において問題はない。例えば、ある方向に磁場を印加し、+M状態を実現した際のカットオフの場合、(数1)式において、R(+M)が0となるので、指標が1となる。印加磁場の大きさが変化すると、プラズモンの波数が変化するので、カットオフが生じる入射光110の波長等の条件も変わる。本例のセンサ100は、オット配置で構成される構造および入射光110を最適に選択することにより、カットオフの状態を実現できる。

【0039】
図5は、センサ100の指標ΔR/Rの波長依存性を示す。縦軸は指標ΔR/Rを示し、横軸は入射光110の波長λ[nm]を示す。各グラフは、入射光110の入射角度θがθ=55°、θ=55.3°、θ=55.4°、θ=56°、θ=56.5°の場合をそれぞれ示す。グラフ中において、三角がθ=55°の場合を示し、黒丸がθ=55.3°の場合を示し、白丸がθ=55.4°の場合を示し菱形がθ=56°の場合を示し、四角がθ=56.5°の場合を示す。

【0040】
本例において、指標ΔR/Rは、入射角度θに応じて異なる挙動を示すことが分かる。また、入射角度θは、それぞれ異なる波長λ依存性を有することが分かる。例えば、入射角度θが55.3°の場合、性能指数ΔR/Rが+1.0と-1.0に近づく。また、入射光110は、ΔR/Rが+1.0と-1.0に近づく場合の2つの波長λの間で波長の変化に対してΔR/Rが大きく変化する波長を有することが好ましい。これにより、センサ100の感度が向上する。例えば、センサ100は、性能指数ΔR/Rが-1.0以上、-0.9以下であってよく、-0.9以上、+0.9以下であってよく、+0.9以上、+1.0以下を満たすように設計されてよい。

【0041】
図6は、センサ100の指標ΔR/Rの入射角度θ依存性を示す。縦軸は指標ΔR/Rを示し、横軸は入射光110の入射角度θ[°]を示す。本例のセンサ100は、低屈折率層20を真空(n=1)とSiO保護層からなる積層構造とし、高屈折率層22をSiOとし、強磁性体層14をFeとし、金属層12を貴金属であるAgとしている。

【0042】
本例の指標ΔR/Rは、入射角度θが46.1°付近において、+1.0と-1.0に近づく。また、入射角度θが46.1°付近において、指標ΔR/Rの変化が急峻になる。即ち、入射角度θが46.1°付近では、測定対象物質30の屈折率変化に対して最大の信号(指標)変化が得られるため、センサの測定条件に設定する。

【0043】
以上の通り、本例のセンサ100は、指標ΔR/R=1を実現できる。また、センサ100は、Feと貴金属であるAgを組み合わせることにより、指標の変化(傾き)を急峻にしている。これにより、センサ100の感度が向上する。なお、センサ100は、低屈折率層20の厚みを変えることにより、測定対象物質30に応じて計測波長を調整できる。

【0044】
[実施例2]
図7は、実施例2に係るセンサ100の構成の一例を示す。本例のセンサ100は、伝搬定数調整層18を備える。

【0045】
伝搬定数調整層18は、強磁性体層14の上面に設けられる。本例の伝搬定数調整層18は、強磁性体層14と低屈折率層20との間に設けられる。伝搬定数調整層18の屈折率は、1より大きい。伝搬定数調整層18の膜厚は、低屈折率層20の層厚より薄い。例えば、伝搬定数調整層18の材料は、SiOである。伝搬定数調整層18の膜厚は、低屈折率層20の層厚以下である。なお、本例では、金属層16の代わりに伝搬定数調整層18を設けたが、センサ100は、強磁性体層14と低屈折率層20との間に、金属層16と伝搬定数調整層18の両方を備えてもよい。伝搬定数調整層18は、センサ100の感度が向上するように、測定対象物質30に応じて屈折率が調整されてよい。

【0046】
[実施例3]
図8は、実施例3に係るセンサ100の構成の一例を示す。本例のセンサ100は、くさび状の低屈折率層20を有する。

【0047】
低屈折率層20は、予め定められた層厚t1の支持層21と、層厚t1と異なる層厚t2の支持層21とを有する。低屈折率層20は、異なる層厚t1および層厚t2の支持層21を有するので、低屈折率層20の断面積が位置によって変化している。本例の低屈折率層20は、層厚t1から層厚t2へと徐々に層厚が変化するくさび型の構造を有する。したがって、センサ100は、入射光110を入射する位置により、測定対象物質30の層厚が変化し、測定対象物質30を測定するための波長λも異なる。例えば、異なる層厚の支持層21をはんだで形成する場合、層厚の異なるはんだを金属層16上に設けられる。また、異なる層厚の支持層21をSiO基板に溝を設けることで形成する場合、SiO基板面内で空間層厚が異なるように、SiO基板をわずかに傾けて研磨する。これにより、低屈折率層20は、異なる層厚t1および層厚t2の支持層21が形成される。

【0048】
本例のセンサ100は、くさび型の低屈折率層20を備えるので、入射光110の入射位置と波長を選択することで入射角度θを変化させることなく、実質的に異なる入射角度θの反射率(図6に相当する測定結果)を検出できる。また、本例のセンサ100は、低屈折率層20の屈折率に応じて、測定対象物質30に対応する最適な入射位置(層厚t)と入射光110の波長を選択してよい。

【0049】
図9は、実施例4に係るセンサ100の構成の一例を示す。本例のセンサ100は、実施例3に係るセンサ100と同様に、低屈折率層20の異なる層厚t1および層厚t2を有する。本例では、実施例3と相違する点について特に説明する。

【0050】
センサ100は、入射光110を入射する位置を変更することにより、異なる反射率R(t)とR(t)で反射された入射光110を取得できる。異なる反射率で反射された入射光110は、異なるフォトダイオードでそれぞれ受光されてよい。本例のセンサ100は、異なる層厚t1および層厚t2の低屈折率層20を用いることにより、印加磁場を変更することなく測定対象物質30を測定することができる。なお、本例では、2つの異なる層厚を用いる場合について説明したが、3以上の異なる層厚を用いてもよい。

【0051】
[比較例1]
図10は、比較例に係るセンサ500の構成を示す。センサ500は、測定対象物質を含む誘電体層520と、貴金属層522と、プリズム524とを備える。センサ500は、測定対象物質を含む誘電体層520側に分子認識素子532を備える。

【0052】
測定対象物質を含む誘電体層520は、空気である。貴金属層522は、プリズム524上に形成されている。本例の貴金属層522は、Auである。プリズム524上に、貴金属層522が形成されている。本例のプリズム524は、SiOであり、プリズム524から入射した光が貴金属層522で全反射された際に発生するエバネセント波が貴金属層522と測定対象物質を含む誘電体層520の界面に励起されるプラズモン波を利用してセンサを実現している。即ち、センサ500は、クレッチマン配置で構成されている。

【0053】
入射光510が入射角度θでプリズム524に入射する。Rは、入射したp偏光の反射光の強度である。プラズモン波は、測定対象物質を含む誘電体層520と貴金属層522との間に形成される。

【0054】
ここで、センサ500の感度は、反射率の角度依存性を示したATRカーブの傾きで決まる。ATRカーブの傾きが急であること、もしくは、反射率の谷の半値幅の狭さが感度の目安となる。

【0055】
例えば、センサ500のSPRセンサの感度として、(数3)式で示される次の指標が用いられる。Aは、センサ100に入射した光の反射率を示す。
【数3】
JP2018230736A1_000005t.gif

【0056】
本例のセンサ500では、クレッチマン配置で構成されており、センサ500に用いられる入射光510の波長は、入射角度θ、測定対象物質を含む誘電体と金属の種類や膜厚等に応じて決まる。センサ500では、測定波長を決めると測定に適した入射角度θが決まるため、測定波長をセンサ500の測定対象物質が大きな屈折率を示す最適波長に合わせる際、入射角度を大きく変える必要があり、最適波長によっては入射角度を0°から90°の間に合わせることが困難な場合がある。また、センサ500では、プリズム524側から入射する光の波数のZ方向成分(実数)と、プラズモン波の波数(複素数)とを完全には一致させるために貴金属層522の層厚を設定する必要がある。金属層の層厚の設定精度はセンサ100における低屈折率層20の層厚の設定精度より高精度である必要がある。したがって、センサ500は、反射率をゼロに近づけ、急峻な変化を実現することが困難である。

【0057】
図11は、実施例2に係るセンサ100の感度と、比較例1に係るセンサ500の感度を示す。同図は、センサのATRカーブと、屈折率の変化に対する指標の変化を示している。縦軸は指標ΔR/RおよびRを示し、横軸は入射光110の入射角度θおよび時間を示す。屈折率の変化nに対する指標ΔR/Rの変化の比は、実施例に係るセンサ100の感度を示す。指標Rは、比較例1に係るセンサ500の感度を示す。θSPRは、センサ100においては、ある方向に磁場を印加し、+M状態を実現した際のカットオフ時の入射角度θである。θは、センサ500においては、指標Rが入射角度θの変化に対して最も大きな変化を示す入射角度に対応する。

【0058】
センサ100の指標ΔR/Rは、センサ500の指標Rよりも急峻に変化する。そのため、屈折率がnからn+δnに変化した場合、センサ100の指標の変化δ(ΔR/R)は、センサ500の性能指数の変化δ(R)よりも大きくなる。そのため、センサ100は、センサ500よりも屈折率の変化に対する感度が大きい。

【0059】
図12Aは、センサ100の指標ΔR/Rの具体的な入射角度θ依存性を示す。図12Bは、センサ500の指標Rの具体的な入射角度θ依存性を示す。縦軸は指標ΔR/Rおよび指標Rを示し、横軸は入射角度θを示す。

【0060】
実線は、屈折率がn=1の場合を示す。また、一点鎖線は、屈折率がn=1.0001の場合を示す。破線は、n=1およびn=1.0001の場合の指標の差を示す。屈折率が変化した場合に、指標の差分が大きい方が感度がよい。センサ100の場合、屈折率がn=1とn=1.0001の間で変化すると、δ(ΔR/R)の変化の大きさが1程度である。一方、センサ500の場合、屈折率がn=1とn=1.0001の間で変化すると、δ(R)の変化の大きさが0.003程度である。即ち、センサ100は、センサ500よりも1/0.003≒3×10倍の感度を有する。

【0061】
図12AのΔR/Rの具体的な入射角度θ依存性は、適切な入射角度θの間隔で測定して得られる。例えば、入射角度θを0.01度間隔で測定できる実験装置がある場合、ΔR/Rはn=1のとき、0.02度、すなわち、3点の入射角度θの変化に対して-1から1まで変化する。すなわち、ΔR/Rの変化を最低でも3点で測定することができる入射角度θの分解能がない限り、屈折率を測定することができない。十分な入射角度θの分解能、ここでは0.001度を得る方法を以下で説明する。

【0062】
図12Aをシミュレーションによって生成する際、角度分解能0.001度でデータを生成する。一方、左記データを0.01度で生成しておく。角度の取り方は10通りあるので、10個の低角度分解能のデータが生成されることになる。角度分解能が細かいシミュレーション結果と粗いシミュレーション結果の間で対応関係を得て、粗い角度分解能で得られた反射率R、および、ΔR/Rの測定結果に基づいて、角度分解能の細かい測定結果を推定する。推定された測定結果をもとに、ΔR/Rの変化をより正確に読み取り、屈折率を測定する。このように、本例のセンサ100は、10倍の高精細画像を再構成することにより、高い角度分解能を取得する。したがって、センサ100は、画像解析(即ち、超解像)により、入射角度の分解能を超える超分解能を得て、性能指数の角度依存性を精度よく測定することができる。

【0063】
図13は、実施例4に係るセンサ100の指標(ΔR/R)'の具体的な入射角度θ依存性を示す。縦軸は指標(ΔR/R)'を示し、横軸は入射角度θを示す。

【0064】
実線は、屈折率がn=1の場合を示す。また、一点鎖線は、屈折率がn=1.0001の場合を示す。破線は、n=1およびn=1.0001の場合の指標の差を示す。屈折率が変化した場合に、指標の差分が大きい方が感度がよい。本例のセンサ100の場合、屈折率がn=1とn=1.0001の間で変化すると、δ(ΔR/R)'の変化の大きさが1.7程度である。そのため、実施例4に係るセンサ100は、さらに優れた感度を有する。

【0065】
図14は、センサ装置200の応用例の一例を示す。センサ装置200は、センサ100と、光源120と、受光部130とを備える。

【0066】
センサ100は、測定対象物質30として植物ホルモンの誘導体物質を検出する。植物ホルモンの誘導体物質は揮発性有機化合物であり、サリチル酸メチル、ジャスモン酸メチルなどがある。センサ100には、植物ホルモンの誘導体物質を含む測定対象物質30が流入する。一例において、測定対象物質30は、植物ホルモンの誘導体物質を含む気体である。低屈折率層20の屈折率は、測定対象物質30である植物ホルモンの誘導体物質に応じた屈折率となる。これにより、センサ100は、植物ホルモンの誘導体物質の種類や濃度を検出する。

【0067】
光源120は、入射光110をセンサ100に入射する。受光部130は、光源120が入射した入射光110の反射光を受光する。受光部130は、測定対象物質30の特性に応じた強度の反射光を受光する。

【0068】
表示部300は、センサ装置200の測定結果を表示する。表示部300は、無線通信によりセンサ装置200の測定結果を受信してよい。また、センサ装置200が表示装置を備え、センサ装置200自体が測定結果を表示してもよい。

【0069】
処理部400は、センサ100の測定結果をデータ処理する。例えば、処理部400は、植物ホルモンの誘導体物質と屈折率との関係を示すデータテーブルを有し、センサ100の測定結果に応じて植物ホルモンの誘導体物質の種類や濃度を取得する。

【0070】
本例のセンサ装置200は、超高感度の磁気プラズモンセンサであるセンサ100を用いることにより、植物ホルモンの誘導体物質を超高感度で検出できる。このように、センサ装置200は、高感度のセンシングが必要な農業等の分野に適用できる。

【0071】
図15は、センサ装置200の構成の一例を示す。本例のセンサ装置200は、複数の屈折率が含まれる低屈折率層20の各物質を同時に測定する場合の実施例である。なお、本例のセンサ装置200は、他の実施例1~3に係るセンサ100と組み合わせて用いられてよい。

【0072】
低屈折率層20は、様々な濃度の測定対象物質30を含む。例えば、低屈折率層20は、測定対象物質30に対応する抗体などの分子認識素子32を設けることにより、測定対象物質30を保持する。これにより、低屈折率層20の、屈折率は濃度に応じて異なる屈折率を有する。本例の低屈折率層20は、例えば、濃度c、c、cに応じて屈折率はn、n、nとなる。本例では、屈折率の違いによって反射率が最小となる入射角度が異なるため、図15の受光部130には最小反射率に応じて輝度の小さい線が異なる場所に表示される。輝度の小さい線が直線状に配列されているが、低屈折率層20の形状に応じて2次元的に配列されていてもよい。

【0073】
光源120は、低屈折率層20に入射光110を照射する。例えば、光源120は、レンズ部125を用いて入射光110を集光することにより、測定対象物質30が保持された領域に入射光110を照射する。

【0074】
受光部130は、複数の屈折率の情報を含む反射光を受光する。受光部130は、レンズ部135を用いて、反射光を平行ビーム化して受光してよい。例えば、受光部130は、フォトダイオードが配列された光センサアレイを有する。これにより、受光部130は、測定対象物質30の濃度が変化した場合、それぞれに対応する測定結果を光センサアレイの出力信号から取得することができる。

【0075】
なお、測定用の測定対象物質30は、供給源140から供給量制御部145を介して、チャンバ160に供給される。また、チャンバ160は、測定対象物質30を吸引するためのポンプ150に接続されてよい。

【0076】
本例のセンサ100は、高屈折率層22を基板10に貼り合わせることにより設けられる。例えば、低屈折率層20の空間は、基板10の上面に凹凸を設け、高屈折率層22として機能する貼り合わせ部材を基板10の上面に貼り合わせることにより設けられる。センサ100は、低屈折率層20の下方において、他の実施例と同様に、AuやFeで構成される金属層12と、強磁性体層14と、金属層16とを備える。

【0077】
図16は、強磁性体層14への印加磁場と磁気光学効果との関係を示す。本例の強磁性体層14は、一例として鉄薄膜である。縦軸は磁気光学効果[a.u.]を示し、横軸は印加磁場[Oe]を示す。磁気光学効果は、磁化に比例する物理量である。印加磁場は、強磁性体層14に印加される磁場である。

【0078】
磁場印加部40が強磁性体層14に印加する磁場は、磁気光学効果が最大または最小となる大きさに限られない。例えば、強磁性体層14の印加磁場は、磁気光学効果が最大(絶対値)の3分の1や3分の2になる磁場であってよい。また、磁場印加部40が強磁性体層14に印加する2種類の磁場は、反転された磁場である必要はなく、同一の極性を有する磁場であってもよい。センサ100は、低屈折率層20の層厚t等との関係に応じて、磁場印加部40の印加磁場を適切な大きさに適宜設定すればよい。

【0079】
本例のセンサ100は、優れた感度を有するので、高分解能、ラベルフリー、実時間かつその場観察を実現し、質量の変化や時間推移も計測可能である。また、センサ100は、医療診断や環境モニタリングなど、広い分野で応用可能である。例えば、センサ100は、ライフサイエンス、環境ガスの計測および医療診断等に用いられる。また、センサ100は、麻薬探知や地雷センサ等にも応用され得る。

【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。

【0081】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0082】
10・・・基板、12・・・金属層、14・・・強磁性体層、16・・・金属層、18・・・伝搬定数調整層、20・・・低屈折率層、21・・・支持層、22・・・高屈折率層、24・・・プリズム、26・・・流入部、28・・・流出部、30・・・測定対象物質、32・・・分子認識素子、40・・・磁場印加部、100・・・センサ、110・・・入射光、120・・・光源、125・・・レンズ部、130・・・受光部、135・・・レンズ部、140・・・供給源、145・・・供給量制御部、150・・・ポンプ、160・・・チャンバ、200・・・センサ装置、300・・・表示部、400・・・処理部、500・・・センサ、510・・・入射光、520・・・測定対象物質を含む誘電体層、522・・・貴金属層、524・・・プリズム、532・・・分子認識素子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12A】
11
【図12B】
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【図13】
13
【図14】
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【図15】
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【図16】
16