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明細書 :眼科検査装置及び眼科検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月30日(2020.4.30)
発明の名称または考案の名称 眼科検査装置及び眼科検査方法
国際特許分類 A61B   3/02        (2006.01)
FI A61B 3/02
国際予備審査の請求
全頁数 28
出願番号 特願2019-525467 (P2019-525467)
国際出願番号 PCT/JP2018/022492
国際公開番号 WO2018/230582
国際出願日 平成30年6月12日(2018.6.12)
国際公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
優先権出願番号 2017118382
優先日 平成29年6月16日(2017.6.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】柏木 賢治
【氏名】茅 暁陽
【氏名】豊浦 正広
【氏名】赤澤 和也
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
審査請求 未請求
テーマコード 4C316
Fターム 4C316AA09
4C316FA01
4C316FA04
4C316FB12
要約 被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領手段と、前記画像受領手段が受領した前記画像に基づき、前記被検者の変視の程度を評価する評価手段と、を有する眼科検査装置を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領手段と、
前記画像受領手段が受領した前記画像に基づき、前記被検者の変視の程度を評価する評価手段と、
を有することを特徴とする眼科検査装置。
【請求項2】
前記画像受領手段が、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する請求項1に記載の眼科検査装置。
【請求項3】
前記画像が、直線、曲線、円弧、円、楕円、正多角形、及び多角形から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の眼科検査装置。
【請求項4】
前記画像受領手段が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で始点と終点を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記始点と前記終点を手書きで結んだ直線又は曲線を描画した画像を受領する請求項1から3のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項5】
前記画像受領手段が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で一本の線を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記一本の線を動かして直線又は曲線を描画した画像を受領する請求項1から3のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項6】
前記画像が、格子画像又は同心円画像である請求項1から3のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項7】
前記被検者の変視の程度が、歪みの大きさ、歪みの変位、及び歪みの激しさから選択される少なくとも1種である請求項1から6のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項8】
前記評価手段で得られた結果を用いてシミュレーションすることにより、前記被検者が実際に見えている画像を再現する画像再現手段を更に有する請求項1から7のいずれかに記載の眼科検査装置。
【請求項9】
被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領工程と、
前記画像受領工程が受領した前記画像に基づき、前記被検者の変視の程度を評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする眼科検査方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科検査装置及び眼科検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの情報の80%は視覚から得られ、視覚障害は生活上大きな問題を生じる。このような視覚障害には様々な種類が存在するが、対象物が歪む変視及び歪視は生活上大きな支障となる。変視及び歪視の主原因として、網膜の中心部に位置する黄斑に異常が生じる網膜前膜、黄斑変性などの疾患がある。これらの疾患は加齢に伴い発症が多くなるため、高齢化社会では大きな課題となる。
【0003】
黄斑に疾患が生じた場合、視細胞又はその外節の規則正しい配列が乱れることにより、外界と視中枢との間で確立していた精密な空間対応に乱れが生じる。その結果、物体の形状が実際よりも変形して見える。このような視覚障害を変視症と呼ぶ。
【0004】
変視症による視野の歪みが激しくなると、両眼の視像のズレが大きくなり、視野に強い違和感が生じる。また、視野の歪みにより物体の形状を正確に認識することができなくなるため、日常生活に不便を感じることが多くなる。このように変視症は視機能の質を左右する重要な要因となる。したがって、視野に歪みの自覚がある場合や黄斑に疾患が生じた場合には、変視症があるか否かを検査により調べる必要がある。
【0005】
変視症の有無を検査する簡易的な方法として、例えば、図1に示すような、アムスラーチャート(Amsler Chart)と呼ばれる検査方法がある。このアムスラーチャートは縦横ともに20マスの格子状の検査表であり、各線の間隔は視角1度刻みで描画され、被検者の視野10度以内に生じる視野異常を定性評価する。被検者は検査距離30cmから黒点で描画された検査表の中心を固視し、線が歪み、格子の大きさ、違和感が生じる部分を確認することにより、変視症の有無を定性的に検査できる。このようなアムスラーチャートの変形例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、変視症の進行の程度を定量的に評価する方法として、図2に示すような、M-チャート(M-CHARTS(登録商標))と呼ばれる検査方法がある。M-チャートは、複数本の点線からなるチャートであり、個々の点線ごとに点の間隔が異なっている。このM-チャートを変視症の患者に点間隔が狭い点線から順に見せていくと、狭い点間隔の点線では歪んで見えるが、点間隔が広がるにつれて歪みを知覚しなくなる。変視症の症状が進行するほど、点間隔がより大きくならないと歪みの知覚が消えない。この性質によって、変視症の進行度合いを定量的に検査できる。このようなM-チャートの応用例及び変形例が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
変視症は、日常生活ではほとんど気にならないものから、片眼遮蔽が必要なものまで様々な程度がある(例えば、非特許文献1参照)。そのため、単に変視症の有無を検査するのみでは不十分であり、患者の変視の程度を定量的に評価する必要がある。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2003-265412号公報
【特許文献2】特開2001-149314号公報
【0009】

【非特許文献1】松本長太、視野検査とその評価、中山書店、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したアムスラーチャートは、変視の歪みの範囲のみを定性的に検査するものであり、変視の程度を定量することができない。変視症治療に患者の主訴を正確に反映させるためには、患者の変視の自覚を正確に検査し、詳細に定量化する必要がある。
また、前述したM-チャートは、視野がどのような形状で歪み、視野のどの位置で歪みが生じているのかという詳細な歪みの情報を定量することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、従来における前述の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、変視の程度を視野内の各位置で定量的に測定することができ、手術適応の決定や治療効果の正確な評価が可能となる眼科検査装置及び眼科検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するための手段としての本発明の眼科検査装置は、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領手段と、画像受領手段が受領した画像に基づき、被検者の変視の程度を評価する評価手段と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における前述の諸問題を解決し、前述の目的を達成することができ、変視の程度を視野内の各位置で定量的に測定することができ、手術適応の決定や治療効果の正確な評価が可能となる眼科検査装置及び眼科検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、アムスラーチャートの一例を示す図である。
【図2】図2は、M-チャートの一例を示す図である。
【図3A】図3Aは、手書き線による検査方法での検査画面の一例を示す図である。
【図3B】図3Bは、手書き線による検査方法において被検者が線を描画した検査結果の一例を示す図である。
【図4】図4は、手書き線による検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5A】図5Aは、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法での検査画面の一例を示す図である。
【図5B】図5Bは、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法において被検者により線を変形させた検査結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、放射基底関数による線変形を利用した検査方法での検査画面の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは、放射基底関数による線変形を利用した検査方法において被検者により線を変形させた検査結果の一例を示す図である。
【図8】図8は、放射基底関数による線変形を利用した検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9A】図9Aは、被検者が見えている画像のシミュレーション前の状態を示す写真である。
【図9B】図9Bは、被検者が見えている画像のシミュレーション後の状態を示す写真である。
【図10】図10は、本発明の眼科検査装置の一例を示す構成図である。
【図11】図11は、実施例で用いた眼科検査装置としてのタッチ式のペンタブレットの一例を示す図である。
【図12A】図12Aは、手書き線による検査方法での検査結果(水平方向視角0度)の一例を示す図である。
【図12B】図12Bは、手書き線による検査方法での検査結果(水平方向視角6度)の一例を示す図である。
【図13A】図13Aは、放射基底関数による線変形を利用した検査方法での水平方向及び垂直方向における視角0度、2度、4度の検査結果の一例を示す図である。
【図13B】図13Bは、放射基底関数による線変形を利用した検査方法での図13Aの各結果を合成した格子画像の検査結果の一例を示す図である。
【図14A】図14Aは、水平方向視角0度の歪みの大きさの一例を示す図である。
【図14B】図14Bは、中心視野での水平方向視角0度の歪みの大きさの一例を示す図である。
【図15】図15は、視野の位置毎の歪みの変位の結果の一例を示す図である。
【図16A】図16Aは、歪みの激しさの評価における、線の曲がり具合の一例を示す図である。
【図16B】図16Bは、線の歪みが激しい部分を示した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(眼科検査装置及び眼科検査方法)
本発明の眼科検査装置は、画像受領手段と、評価手段とを有し、画像再現手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の眼科検査方法は、画像受領工程と、評価工程とを含み、画像再現工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。

【0016】
本発明の眼科検査方法は、本発明の眼科検査装置により好適に実施することができる。画像受領工程は画像受領手段により行うことができ、評価工程は評価手段により行うことができ、画像再現工程は画像再現手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。

【0017】
本発明の眼科検査装置及び眼科検査方法によると、変視の程度を視野内の各位置で定量的に測定することができ、手術適応の決定や治療効果の正確な評価が可能となる。
したがって、本発明の眼科検査装置及び眼科検査方法は、被検者の変視の程度を定量的に検査するものであるため、「変視検査装置」及び「変視検査方法」と称することもある。

【0018】
<画像受領工程及び画像受領手段>
画像受領工程は、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する。画像受領工程は、画像受領手段により実施される。

【0019】
固視点とは、目を動かさないで固視(凝視)する一点をいう。ヒトの視覚の感度分布は、固視点近傍で最も高く、周辺に向かうにつれて低下する不均一な分布を有している。これは、網膜において視細胞や網膜神経節細胞の密度が、固視点近傍に高密度に分布するためである。
固視点からの光が当たる部位を黄斑の中心窩という。黄斑とは、網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の領域である。
視野とは、片眼で一点を見つめたときに見える範囲を意味する。視野は、通常、上方約60°、下方70°、耳側100°、鼻側60°である。
視野領域とは、固視点を中心とした視野を含む範囲であり、眼科検査装置における検査画面と同義である。

【0020】
視野領域(検査画面)と黄斑の位置を一意に定めるために、被検者は常に検査画面の中心(固視点)を固視する必要がある。このため、中心固視を考慮したタスクによる検査を実現する必要がある。
そこで、視野領域(検査画面)の中心に固視点を設定し、検査実施者の指示や視線追跡装置による判定により、検査時に固視点を固視していたことを保証する。
検査中に被検者が固視点を固視していない場合には、検査実施者が指摘したり、検査画面のパターン全体を消す、又は検査画面全体を黄色に表示する、などにより被検者に警告の通知を行う。

【0021】
被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像としては、本来の正しい画像と被検者が見えている歪んだ画像との差異を評価できる画像であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
線としては、直線又は曲線が含まれ、線の大きさ、線の角度、及び線の描画位置の少なくともいずれかが異なるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。線の大きさとしては、例えば、線の長さ、線の太さなどが挙げられる。線の角度としては、直線乃至曲線が含まれる種々の角度が挙げられる。線の描画位置としては、例えば、視野領域の水平方向、斜め方向、垂直方向、視野領域の各視角位置などが挙げられる。斜め方向とは、視野領域の水平方向に対して、0°<θ<90°傾けた方向である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、θが20°以上80°以下であることが好ましい。なお、垂直方向とは、視野領域の水平方向に対して、90°傾けた方向である。
図形としては、例えば、円弧、円、楕円、正多角形、多角形などが挙げられる。正多角形としては、例えば、正三角形、正方形、正五角形などが挙げられる。多角形としては、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などが挙げられる。三角形としては、例えば、二等辺三角形、直角三角形、直角二等辺三角形などが挙げられる。四角形としては、例えば、長方形、菱形、台形などが挙げられる。

【0022】
具体的には、固視点を中心とした視野領域に水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて線及び図形の少なくともいずれかを含む画像、水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて直線又は曲線を含む画像、水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて1本以上の直線又は曲線を含む画像、水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて2本以上の直線又は曲線を含む画像、複数本の直線又は曲線を格子状に配置した格子画像、複数の円からなる同心円画像などが挙げられる。
これらの中でも、従来定量評価が困難であった歪みなどの視機能(歪視、変視)の程度を高い精度で定量的に測定できる点から、格子画像、同心円画像が好ましい。
また、選択される線及び図形を含む画像は、本来の正しい見え方の座標と被検者が変視症であるため見えている点の座標がずれていることが正確かつ定量的に測定でき、その情報から被検者の見え方が再現できるものが好ましい。このとき、被検者が異常を感じやすい線及び図形としては、水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかのみではなく円形などの場合もあるため、場合に応じて適宜選択すればよい。
また、従来定量評価が困難であった歪みなどの視機能(歪視、変視)の程度を高い精度で定量的に測定できる点から、大きさ、角度、描画位置が一意に規定できる線又は図形(上記した直線、曲線、円弧、円、楕円、正多角形、多角形など)を含む画像を選択することが好ましい。

【0023】
画像受領手段により画像を受領する方法としては、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被検者が直接描画する方法、スキャナ等で被検者が描画した画像を取り込む方法、デジタルカメラで撮影した被検者が描画した画像を取り込む方法などが挙げられる。
直接描画する方法としては、例えば、手書き線による検査方法、線を動かす(変形する)検査方法などが挙げられる。

【0024】
<<手書き線による検査方法>>
手書き線による検査方法は、視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で始点と終点を表示し、被検者が固視点を固視した状態で、被検者が始点と終点を手書きで結んだ直線又は曲線を描画する方法である。
一定の視角としては、視角20度×20度の検査画面(視野領域)において、例えば、水平方向及び垂直方向に視角1度~5度などが挙げられる。

【0025】
手書き線による検査方法では、図3Aに示した検査画面に、図3Bに示すように被検者自身が直線に見える線を直接描画する。
検査は検査距離30cmから片眼遮蔽にて行う。被検者は黒点で描画された検査画面の中心(固視点)を固視し、白点で示された始点と終点を被検者自身が直線に見える線で結ぶ。始点と終点の描画位置を順に変えていき、視野の位置毎に検査を実施する。
正常な視野の検査では、各位置に始点から終点まで正確に直線が引かれるため、最終的な結果として歪みのない格子画像の描画が期待される。

【0026】
図4は、手書き線による検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図3A及び図3Bを参照して、手書き線による検査方法の処理の流れについて説明する。

【0027】
ステップS101では、被検者が、眼科検査装置100のディスプレイに対して決まった距離、及び高さで座ると、処理をS102に移行する。

【0028】
ステップS102では、あらかじめ定義した始点及び終点の組から、眼科検査装置100又は検査実施者が1組の始点及び終点を選択すると、処理をS103に移行する。

【0029】
ステップS103では、眼科検査装置100が、選択された始点及び終点を提示すると、処理をS104に移行する。

【0030】
ステップS104では、被検者は、当該被検者にとって直線に見える線を手書きで入力すると、処理をS105に移行する。

【0031】
ステップS105では、被検者は、入力した線が直線に見えるようになったか否かを判定する。被検者が、直線に見えるようになったと判定すると、処理をS106に移行する。被検者が、直線に見えないと判定すると、処理をS104に戻す。

【0032】
ステップS106では、眼科検査装置100は、1つの始点及び終点の組に対する線を確定すると、処理をS107に移行する。

【0033】
ステップS107では、眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られたと判定すると、本処理を終了する。一方、眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られていないと判定すると、処理をS102に戻す。
ここで、十分な数の確定した線とは、変視の程度の評価を行うのに足りる数の線を意味する。

【0034】
<<線を動かす検査方法>>
線を動かす検査方法としては、視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で一本の線を表示し、被検者が固視点を固視した状態で、被検者が一本の線を動かして直線又は曲線を描画する方法である。
一定の視角としては、視角20度×20度の検査画面(視野領域)において、例えば、水平方向及び垂直方向に視角1度~5度などが挙げられる。
線を動かす検査方法としては、例えば、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法、放射基底関数による線変形を利用した検査方法などが挙げられる。

【0035】
-ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法-
ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法は、視野領域中で水平方向又は垂直方向において一本の線を表示し、当該一本の線上に複数の制御点を設定し、被検者が固視点を固視した状態で、被検者が直線に見えるように一本の線上の制御点を動かしてベジェ曲線による線変形を行う方法である。

【0036】
ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法では、図5Aに示した検査画面に提示された直線を、図5Bに示すように被検者自身にとって直線に見える形状に変形する。
検査は検査距離30cmから片眼遮蔽にて行う。被検者は検査画面の中心(固視点)を固視し、提示線上に円で描画された操作点をドラッグすることで線を動かす(変形する)。提示線の位置を順に変えていき、視野の位置毎に検査を実施する。
線の描画にはベジェ曲線を利用した。2つの端点と2つの制御点からなる三次ベジェ曲線を利用することで、操作点の変化に伴う線の変形を行う。始点(端点)P1(x,y)、終点(端点)P4(x,y)、制御点P2(x,y)、P3(x,y)と定義した場合、三次ベジェ曲線上の点の座標(x,y)は、下記の数式1によって定義される。

【0037】
[数式1]
【数1】
JP2018230582A1_000003t.gif

【0038】
本検査では、この三次ベジェ曲線を4つ接続することにより、細かい線の変形を実現することができる。ベジェ曲線における制御点の数は、被検者の能力などに応じて適宜調整することができる。
本検査の初期提示線が直線であることから、正常な視野の検査では提示線を変形する必要がない。視野の各位置で提示線の大きな変形はないと考えられる。そのため、最終的な結果として歪みのない格子画像の描画が期待される。

【0039】
図6は、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図5A及び図5Bを参照して、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法の処理の流れについて説明する。

【0040】
ステップS201では、被検者は、眼科検査装置100のディスプレイに対して決まった距離、及び高さで座ると、処理をS202に移行する。

【0041】
ステップS202では、あらかじめ定義した始点及び終点の組から、眼科検査装置100又は検査実施者が1組の始点及び終点を選択すると、処理をS203に移行する。

【0042】
ステップS203では、眼科検査装置100は、選択された始点及び終点を結ぶ線を提示すると、処理をS204に移行する。

【0043】
ステップS204では、眼科検査装置100は、被検者にとって直線に見えるように、ベジェ曲線による線変形を行うと、処理をS205に移行する。

【0044】
ステップS205では、被検者は、変形した線を直線に見えるようになったか否かを判定する。被検者が、変形した線を直線に見えるようになったと判定すると、処理をS206に移行する。被検者が、変形した線を直線に見えないと判定すると、処理をS204に戻す。

【0045】
ステップS206では、眼科検査装置100は、1つの始点及び終点の組に対する線を確定すると、処理をS207に移行する。

【0046】
ステップS207では、眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られたか否かを判定する。眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られていないと判定すると、処理をS202に戻す。眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られたと判定すると、本処理を終了する。
ここで、十分な数の確定した線とは、変視の程度の評価を行うのに足りる数の線を意味する。

【0047】
-放射基底関数による線変形を利用した検査方法-
放射基底関数による線変形を利用した検査方法は、視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で一本の線を表示し、被検者が固視点を固視した状態で、被検者が直線に見えるように、一本の線に対して放射基底関数による線変形を行う方法である。

【0048】
放射基底関数による線変形を利用した検査方法では、図7Aに示した検査画面に提示された直線を、図7Bに示すように被検者自身にとって直線に見える形状に変形する。
検査画面は視角20度×20度、提示線は水平方向及び垂直方向に視角2度刻みで描画され、被検者の視野10度内の線の見え方を検査する。
検査は検査距離30cmから片眼遮蔽にて行う。被検者は円で描画された検査画面の中心を固視し、提示線が黒い点で示された端点を結ぶ直線に見えるように、提示線上の歪んで見える部分をドラッグし、線を変形する。提示線の位置を順に変えていき、視野の位置毎での線の見え方を検査する。
線の描画には放射基底関数を利用した。被検者がドラッグした線上の点を操作点としたとき、操作点からの距離に応じて線上の点に操作点の変位を伝播することで、線を滑らかに変形する。
操作点の変位aを操作点からx離れた線上の点に伝播する場合、その点の変位dは下記の数式2に示すガウス関数によって定義される。

【0049】
[数式2]
【数2】
JP2018230582A1_000004t.gif
ただし、前記数式2において、σは基底関数の広がりを表す。そのため、σの値を増加することにより操作点の変位が線の広範囲に伝播され、線は滑らかな形状になる。
変視症は、視野の一部の狭い範囲で急激に歪むものや広い範囲で歪むものなど様々な症状が考えられるため、被検者の主訴に適したσの値を設定することで、より正確に視野の歪みを検査できる。

【0050】
図8は、放射基底関数による線変形を利用した検査方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図7A及び図7Bを参照して、放射基底関数による線変形を利用した検査方法の処理の流れについて説明する。

【0051】
ステップS301では、被検者は、眼科検査装置100のディスプレイに対して決まった距離、及び高さで座ると、処理をS302に移行する。

【0052】
ステップS302では、あらかじめ定義した始点及び終点の組から、眼科検査装置100又は検査実施者が1組の始点及び終点を選択すると、処理をS303に移行する。

【0053】
ステップS303では、眼科検査装置100は、選択された始点及び終点を結ぶ線を提示すると、処理をS304に移行する。

【0054】
ステップS304では、眼科検査装置100は、被検者にとって直線に見えるように、放射基底関数による線変形を行うと、処理をS305に移行する。

【0055】
ステップS305では、被検者は、変形した線を直線に見えるようになったか否かを判定する。被検者が、変形した線を直線に見えるようになったと判定すると、処理をS306に移行する。被検者が、変形した線を直線に見えないと判定すると、処理をS304に戻す。

【0056】
ステップS306では、眼科検査装置100は、1つの始点及び終点の組に対する線を確定すると、処理をS307に移行する。

【0057】
ステップS307では、眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られたか否かを判定する。眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られていないと判定すると、処理をS302に戻す。眼科検査装置100は、十分な数の確定した線が得られたと判定すると、本処理を終了する。
ここで、十分な数の確定した線とは、変視の程度の評価を行うのに足りる数の線を意味する。

【0058】
<評価工程及び評価手段>
評価工程は、画像受領工程が受領した画像に基づき、被検者の変視の程度を評価する。評価工程は、評価手段により実施される。
被検者の変視の程度の評価方法としては、被検者の変視の程度を評価できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、手術適応の決定や治療効果の正確な評価の点から、定量的に評価することが好ましい。
被検者の変視の程度としては、「歪みの大きさ」、「歪みの変位」、及び「歪みの激しさ」から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
「歪みの大きさ」は、基準直線となす面積、即ち、被検者が描いた線又は変形させた線と、実際の直線(基準直線)の間の面積で表したものである。
「歪みの変位」は、基準となる格子点からのズレ、即ち、視野の位置毎に被検者が描いた各線又は変形した各線と、実際の直線(基準直線)による格子とのズレをベクトルで表したものである。
「歪みの激しさ」は、曲率が極大となる点、即ち、被検者が描いた線又は変形させた線の曲がり具合を、図16Aに示すように、点Pからa離れた線上の点Pi-aと点Pi+aを通る直線と点Pとの距離dで表したものである。
各評価項目の評価結果は、後述する実施例の評価基準に基づき、数値化及び画像化され、眼科検査装置のディスプレイに表示、又はプリンタで出力することができる。

【0059】
評価工程は、例えば、各種画像処理ソフトウェアやプログラムなどを内蔵したコンピュータにより実行される。コンピュータとしては、記憶、演算、制御などの装置を備えた機器であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータなどが挙げられる。

【0060】
<画像再現工程及び画像再現手段>
画像再現工程は、評価工程で得られた結果を用いてシミュレーションすることにより、被検者が実際に見えている画像を再現する。画像再現工程は、画像再現手段により実施される。
評価工程で得られた結果としては、例えば、「歪みの大きさ」、「歪みの変位」、「歪みの激しさ」、被検者が描画した線及び図形の少なくともいずれかを含む画像などが挙げられる。

【0061】
被検者が実際に見えている画像とは、被検者が変視症の患者である場合に、実際にはどのように歪んで見えているのかを確認できるように再現した画像である。
シミュレーションとしては、例えば、画像処理ライブラリOpenCVが提供する関数Thin Plate Spline Shape Transformerに対して、「歪みの大きさ」、「歪みの変位」、及び「歪みの激しさ」から選択される少なくとも1種の評価結果を与えることで、上記の画像を得ることができる。Thin Plate Splineは、下記の文献[1]で報告されている技術である。
文献[1]:Definition of the transformation ocupied in the paper “Principal Warps: Thin-Plate Splines and Decomposition of Deformations”,by F.L. Bookstein(PAMI 1989).
画像再現工程は、例えば、各種画像処理ソフトウェアやプログラムなどを内蔵したコンピュータにより実行される。コンピュータとしては、記憶、演算、制御などの装置を備えた機器であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータなどが挙げられる。

【0062】
ここで、図9Aは、被検者が見えている画像のシミュレーション前の状態を示す写真である。図9Bは、被検者が見えている画像のシミュレーション後の状態を示す写真である。図9Bでは、図9Aと比べて、人物及び背景に歪みが生じており、被検者が見えている画像が再現できている。
本発明の画像検査装置は、画像再現手段を有することにより、被検者が見えている画像の歪み状態を医師等が具体的に認識することが可能となる。また、医師が、被検者や被検者の家族に対して症状を説明する際にも有効であり、被検者の肉体的な疾患に加えて精神的な苦痛も共有することができるので、肉体的な疾患に起因する精神的な不安等についてもケアーすることが可能になると考えられる。

【0063】
<その他の工程及びその他の手段>
その他の工程としては、例えば、制御工程、記憶工程などを含む。
その他の手段としては、例えば、制御手段、記憶手段などを有する。
制御工程は、眼科検査装置全体の動作を制御する。制御工程は、制御手段により実施される。
記憶工程は、例えば、被検者の情報、受領した画像や評価結果などを記憶する。記憶工程は、記憶手段により実施される。

【0064】
ここで、図10は、本発明の眼科検査装置の一例を示す図である。この図10の眼科検査装置100は、画像受領手段110と、評価手段120と、画像再現手段130とを有する。
画像受領手段110は、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する。画像受領手段としては、例えば、ペンタブレットとタブレットペン、タッチパネルと指、スキャナ、デジタルカメラなどが挙げられる。
評価手段120は、画像受領手段110が受領した画像から、被検者の変視の程度を評価する。評価手段120としては、例えば、各種画像処理ソフトウェアやプログラムなどを備えたコンピュータなどが挙げられる。
画像再現手段130は、評価手段120で得られた結果を用いてシミュレーションすることにより、被検者が実際に見えている画像を再現する。画像再現手段130としては、例えば、各種画像処理ソフトウェアやプログラムなどを備えたコンピュータなどが挙げられる。
なお、眼科検査装置100は、評価結果を表示するディスプレイやプリンタなどの出力手段も備えていてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
<眼科検査装置>
網膜黄斑部は加齢によって変性していくため、変視症患者の多くが高齢者となる。眼科検査装置としては、高齢者でも扱いやすいものとする必要があるため、眼科検査装置として図11に示すようなタッチ式のペンタブレットを用いた。
【実施例】
【0067】
変視症は高齢者が行える簡単なタスクで検査する必要がある。この点を考慮して、手書き線による検査方法、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法、及び放射基底関数による線変形を利用した検査方法について検討した。
実際に変視症患者を検査した結果及び眼科医の専門的な意見を参考にして、各検査方法が変視症を適切に検査できるか否かを評価した。
【実施例】
【0068】
<手書き線による検査方法の結果>
図4に示すフローチャートに従って、80代の変視症患者を手書き線による検査方法で実際に検査した結果を図12A及び図12Bに示す。
図12Aでは、被検者は、比較的正確に、白点で示された始点と終点を線で結ぶことができている。これに対して、図12Bでは、線は始点から検査画面の中心方向に描かれている。これは検査を行う際に検査画面の黒点で示された中心点(固視点)を固視することによって、被検者が線を描く際に固視点を強く意識してしまったことが原因であると考えられる。
以上の結果から、手書き線による検査方法では、変視症の症状が軽度の患者の場合には、問題なく変視症の検査を行うことができた。また、変視症の症状が進行している患者の場合でも、水平方向又は垂直方向に一本の線であれば問題なく描画することができ、変視症の検査を行うことができた。
したがって、手書き線による検査方法は、変視症の症状を考慮しつつ行えば、変視症を検査する方法としてほぼ適切であるといえる。
【実施例】
【0069】
<ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法の結果>
図6に示すフローチャートに従って、変視症患者がベジェ曲線による線変形を利用した検査方法で検査を行った。その結果、患者の変視症の程度に関わらず、格子画像を描くことができ、問題なく検査を行うことができた。
ベジェ曲線による線変形を利用した検査では、制御点を操作することで線の形状を変化させるが、ベジェ曲線の性質上、基本的に線は制御点上を通ることがない。そのため、どの制御点をどの方向にどの程度動かせば、線のどの部分がどの程度変形するのかを把握することが困難となる場合がある。
また、本検査では、ベジェ曲線を4つ接続したものを用いたが、ベジェ曲線の接続数を4つにしただけでは変視症による視野の歪みを十分に表現しきれないことがある。このため、ベジェ曲線の接続数を更に増加させることが考えられる。ベジェ曲線の接続数を増加させることで表現できる線の形状も多様になるが、同時に制御点数も増加するため、高齢者にとっては直感的な操作がやや困難になるおそれがある。
以上の結果から、ベジェ曲線による線変形を利用した検査方法は、操作性については若干の改善の余地はあるものの、変視症を検査する方法として適切であるといえる。
【実施例】
【0070】
<放射基底関数による線変形を利用した検査方法の結果>
図8に示すフローチャートに従って、変視症患者を放射基底関数による線変形を利用した検査方法で実際に検査した結果を図13A及び図13Bに示す。
被検者は手術前の60代後半の女性であり、視野に黄斑円孔による変視症が生じている。検査は図11に示すタッチ式のペンタブレットを用いて実施した。
図13Aは、被検者の左眼について、水平方向及び垂直方向における視角0度、2度、4度で検査した結果であり、図13Bは、図13Aの各図の検査結果を合成した格子画像を示す。
図13A及び図13Bの検査結果から、高齢の被検者でも十分に検査を実施できることがわかった。また、本検査方法であれば、検査位置が検査画面の中心部から離れた場合でも、適切な線変形を行うことができる。
眼科医によれば、黄斑円孔では変視症が生じるが、視野の歪み自体はそこまで激しくないものが多い。図13Bから被検者の視野全体の歪みが激しくないことがわかるため、本検査で被検者の視野の歪みを適切に検査できていることがわかる。
これらのことから、放射基底関数による線変形を利用した検査は変視症を検査する方法として適切であるといえる。
【実施例】
【0071】
次に、以上の検査結果から被検者の変視症の程度を定量化した。眼科医が患者の主訴と相関が大きいと考える、「歪みの大きさ」、「歪みの変位」、及び「歪みの激しさ」を評価項目として設定した。
【実施例】
【0072】
[歪みの大きさ]
変視症による視野の「歪みの大きさ」を表す評価指標として、検査によって被検者が描いた線、又は変形した線と実際の直線の間の面積を設定した。
図14Aでは、塗りつぶされた部分にあたる面積から、被検者の視野毎に線がどの程度歪んでいるのかを定量化する。
図14Aは水平方向視角0度での歪みの大きさを表している。眼科医によれば変視症による歪みは視野の中心部でより強く知覚される。このことから、図14Bに示すように検査画面の視角4度内の面積Sを、被検者の中心視野での歪みの大きさとして定量化し、歪みを強く知覚する中心視野に対する変視症の定量評価指標とする。
「歪みの大きさ」は、Processing言語環境において、curveVertex関数によって定義した曲線と、始点及び終点を結んだ直線とで囲われる領域を塗りつぶすことができる。領域を塗りつぶすためにはfill関数で塗りつぶす色を指定する。
Processingには、曲線など複雑な図形を描くための関数が用意されている。そのひとつが、頂点を指定すると、その間を曲線としてつなぐcurveVertex関数である。
なお、「歪みの大きさ」については、https://processing.org/reference/curveVertex_.htmlに記載されている。
眼科検査装置が、塗りつぶされた画素の数を数えることにより、面積Sを計算し、下記基準で歪みの大きさを評価した。図14Bの面積Sは11,864画素であり、「歪みの大きさ」の評価はBであった。
-評価基準-
A:面積Sが5,000画素未満であり、歪みがない
B:面積Sが5,000画素以上15,000画素未満であり、歪みがややある
C:面積Sが15,000画素以上であり、歪みがかなりある
【実施例】
【0073】
なお、「歪みの大きさ」の評価としては、塗りつぶされた画素の数を数えることにより、面積Sを計算し、検査画面全体(外枠)に対する面積割合rを求め、下記基準で「歪みの大きさ」を評価することもできる。図14Bの面積割合rは4.75%であり、「歪みの大きさ」の評価はBであった。
-評価基準-
A:面積割合rが3%未満であり、歪みがない
B:面積割合rが3%以上6%未満であり、歪みがややある
C:面積割合rが6%以上であり、歪みがかなりある
【実施例】
【0074】
[歪みの変位]
変視症による視野の「歪みの変位」を表す評価指標として、検査によって視野の位置毎に被検者が描いた線又は変形した線と実際の直線による格子のズレを表すベクトルを設定する。
図15の格子画像における各矢印が視野の位置毎の変位を表している。左の矢印Lは、視野の水平方向視角4度、垂直方向視角0度の位置である。右の矢印Rは、視野の水平方向視角4度、垂直方向視角4度の位置で歪みがどの方向にどの程度生じているのかを表している。
本検査方法は、「歪みの変位」の評価指標を設定することにより、既存の検査方法では困難だった視野の位置毎の歪みがどのようなものかを評価することが可能になる。
また、本検査方法は、数値として導出される「歪みの変位」を、図15に示したように検査結果上に矢印で提示することにより、視野のどこでどのような歪みが生じているのかを視覚的に捉えることができる。
具体的には、図15に示すように、「歪みの変位」は、縦横の2本の基準直線が与える交点Pを求める。被検者がこの2本の基準直線となるように描いた、又は変形した2本の曲線の交点P’を求め、ベクトルPP’を算出する。ベクトルPP’が点Pにおける歪みの変位を示す。この歪みの変位を、格子点毎に求め、ベクトルPP’の平均値を算出する。
図15のベクトルPP’の平均値は37.0画素であり、下記基準で評価した「歪みの変位」の評価はCであった。
-評価基準-
A:ベクトルPP’の平均値が20画素未満であり、歪みの変位がない
B:ベクトルPP’の平均値が20画素以上30画素未満であり、歪みの変位がややある
C:ベクトルPP’の平均値が30画素以上であり、歪みの変位がかなりある
【実施例】
【0075】
なお、「歪みの変位」の評価としては、ベクトルPP’を格子点毎に求め、ベクトルPP’の平均値を算出し、ベクトルPP’の検査画面全体(外枠)の1辺に対する割合の平均値を求め、下記基準で「歪みの変位」を評価することもできる。図15のベクトルPP’の割合の平均値は7.4%であり、「歪みの変位」の評価はCであった。
-評価基準-
A:ベクトルPP’の割合の平均値が3%未満であり、歪みの変位がない
B:ベクトルPP’の割合の平均値が3%以上5%未満であり、歪みの変位がややある
C:ベクトルPP’の割合の平均値が5%以上であり、歪みの変位がかなりある
【実施例】
【0076】
[歪みの激しさ]
変視症による視野の歪みが激しい位置を表す評価指標として、検査によって被検者が描いた線又は変形した線の曲がり具合を設定する。
被検者が描いた線又は変形した線上の点Pでの線の曲がり具合は、図16Aに示すように、点Pからa離れた線上の点Pi-aと点Pi+aを通る直線と点Pとの距離dによって近似する。点Pでの線の曲がり具合が大きくなるに従って、距離dも大きくなる。
また、図16Bに示すように、検査結果上で線の曲がり具合が大きい位置を丸で囲んでハイライト表示することにより、視野のどこに強い歪みが生じているのかを視覚的に捉えることができる。
図16Aの距離dは106.2画素であり、下記基準による「歪みの激しさ」の評価はBであった。
-評価基準-
A:距離dが100画素未満であり、歪みがない
B:距離dが100画素以上150画素未満であり、歪みがやや激しい
C:距離dが150画素以上であり、歪みがかなり激しい
【実施例】
【0077】
なお、「歪みの激しさ」の評価については、図16Aの距離dの外枠の1辺に対する割合を求め、下記基準により評価することもできる。図16Aの距離dの検査画面全体(外枠)の1辺に対する割合は2.1%であり、「歪みの激しさ」の評価はBであった。
-評価基準-
A:距離dの割合が2%未満であり、歪みがない
B:距離dの割合が2%以上4%未満であり、歪みがやや激しい
C:距離dの割合が4%以上であり、歪みがかなり激しい
【実施例】
【0078】
以上説明したように、本発明においては、高齢者でも実施できる簡便な方法により、従来の検査方法では困難であった視野内の各位置での変視の程度を定量的に測定することができ、手術適応の決定や治療効果の正確な評価が可能となる。
【実施例】
【0079】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領手段と、
前記画像受領手段が受領した前記画像に基づき、前記被検者の変視の程度を評価する評価手段と、
を有することを特徴とする眼科検査装置である。
<2> 前記画像受領手段が、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する前記<1>に記載の眼科検査装置である。
<3> 前記画像が、直線、曲線、円弧、円、楕円、正多角形、及び多角形から選択される少なくとも1種を含む前記<1>又は<2>に記載の眼科検査装置である。
<4> 前記画像受領手段が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で始点と終点を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記始点と前記終点を手書きで結んだ直線又は曲線を描画した画像を受領する前記<1>から<3>のいずれかに記載の眼科検査装置である。
<5> 前記画像受領手段が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で一本の線を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記一本の線を動かして直線又は曲線を描画した画像を受領する前記<1>から<3>のいずれかに記載の眼科検査装置である。
<6> 前記画像が、格子画像又は同心円画像である前記<1>から<3>のいずれかに記載の眼科検査装置である。
<7> 前記被検者の変視の程度が、歪みの大きさ、歪みの変位、及び歪みの激しさから選択される少なくとも1種である前記<1>から<6>のいずれかに記載の眼科検査装置である。
<8> 前記評価手段で得られた結果を用いてシミュレーションすることにより、前記被検者が実際に見えている画像を再現する画像再現手段を更に有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の眼科検査装置である。
<9> 被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する画像受領工程と、
前記画像受領工程が受領した前記画像に基づき、前記被検者の変視の程度を評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする眼科検査方法である。
<10> 前記画像受領工程が、被検者が描画した、固視点を中心とした視野領域に水平方向、斜め方向及び垂直方向の少なくともいずれかにおいて線及び図形の少なくともいずれかを含む画像を受領する前記<9>に記載の眼科検査方法である。
<11> 前記画像が、直線、曲線、円弧、円、楕円、正多角形、及び多角形から選択される少なくとも1種を含む前記<9>又は<10>に記載の眼科検査方法である。
<12> 前記画像受領工程が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で始点と終点を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記始点と前記終点を手書きで結んだ直線又は曲線を描画した画像を受領する前記<9>から<11>のいずれかに記載の眼科検査方法である。
<13> 前記画像受領工程が、前記視野領域中で水平方向又は垂直方向において一定の視角で一本の線を表示し、前記被検者が前記固視点を固視した状態で、前記被検者が前記一本の線を動かして直線又は曲線を描画した画像を受領する前記<9>から<11>のいずれかに記載の眼科検査方法である。
<14> 前記画像が、格子画像又は同心円画像である前記<9>から<11>のいずれかに記載の眼科検査方法である。
<15> 前記被検者の変視の程度が、歪みの大きさ、歪みの変位、及び歪みの激しさから選択される少なくとも1種である前記<9>から<14>のいずれかに記載の眼科検査方法である。
<16> 前記評価工程で得られた結果を用いてシミュレーションすることにより、前記被検者が実際に見えている画像を再現する画像再現工程を更に含む前記<9>から<15>のいずれかに記載の眼科検査方法である。
【実施例】
【0080】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の眼科検査装置、及び前記<9>から<16>のいずれかに記載の眼科検査方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 眼科検査装置
110 画像受領手段
120 評価手段
130 画像再現手段

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4】
4
【図5A】
5
【図5B】
6
【図6】
7
【図7A】
8
【図7B】
9
【図8】
10
【図9A】
11
【図9B】
12
【図10】
13
【図11】
14
【図12A】
15
【図12B】
16
【図13A】
17
【図13B】
18
【図14A】
19
【図14B】
20
【図15】
21
【図16A】
22
【図16B】
23