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明細書 :可視光域で光架橋可能な光応答性ヌクレオチドアナログ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年6月25日(2020.6.25)
発明の名称または考案の名称 可視光域で光架橋可能な光応答性ヌクレオチドアナログ
国際特許分類 C07H  19/24        (2006.01)
C07H  21/04        (2006.01)
C07K   2/00        (2006.01)
FI C07H 19/24
C07H 21/04 Z
C07K 2/00
国際予備審査の請求
全頁数 37
出願番号 特願2019-532843 (P2019-532843)
国際出願番号 PCT/JP2018/027961
国際公開番号 WO2019/022158
国際出願日 平成30年7月25日(2018.7.25)
国際公開日 平成31年1月31日(2019.1.31)
優先権出願番号 2017144897
優先日 平成29年7月26日(2017.7.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】中村 重孝
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002332、【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
4H045
Fターム 4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL51
4C057MM04
4C057MM09
4H045AA10
4H045EA50
要約 核酸の光反応技術に使用可能な
式I:
JP2019022158A1_000044t.gif
で表される化合物、及び該化合物からなる光反応性架橋剤を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式Iで表される化合物:
JP2019022158A1_000037t.gif(ただし、式Iにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基であり、
Yは、水素原子、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)。
【請求項2】
Yが、次の式IIで表される基である、請求項1に記載の化合物:
JP2019022158A1_000038t.gif(ただし、式IIにおいて、
R11は、水素原子又は水酸基であり、
R12は、水酸基、又は-O-Q1基であり、
R13は、水酸基、又は-O-Q2基であり、
1は、
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基であり、
2は、
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基である。)。
【請求項3】
Yが、水素原子、次の式IIIで表される基、又は式IVで表される基である、請求項1に記載の化合物:
JP2019022158A1_000039t.gif
JP2019022158A1_000040t.gif
【請求項4】
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000041t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオシドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000042t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000043t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有する核酸又はペプチド核酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光域の光による光架橋(光クロスリンク)能を有する光応答性ヌクレオチドアナログ(光応答性ヌクレオチド類似化合物)に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、核酸の連結及び核酸の架橋がある。核酸の連結や架橋は、例えば、ハイブリダイゼーションと組みあわせて、遺伝子の導入や、塩基配列の検出のために使用され、あるいは、例えば、遺伝子発現の阻害に使用される。そのために、核酸の連結及び架橋の技術は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。
【0003】
核酸の光反応技術として、5-シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号、特許文献2:特許第3753942号)、3-ビニルカルバゾール構造を塩基部位に持つ修飾ヌクレオシドを使用した光架橋技術(特許文献3:特許第4814904号、特許文献4:特許第4940311号)がある。
【0004】
さらに、最近、核酸の二重鎖形成能を利用した様々なナノ構造体の構築が可能となってきており、ナノテクノロジーの分野においても核酸の連結及び架橋の技術が重要となってきている。例えば、非特許文献1は、核酸の光架橋によってオリゴDNAからなるナノシートに耐熱性を付与する技術を開示している。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3753938号公報
【特許文献2】特許第3753942号公報
【特許文献3】特許第4814904号公報
【特許文献4】特許第4940311号公報
【0006】

【非特許文献1】J.Photopdy.S.Tech.,2014,27,485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
核酸の光反応技術の重要性から、核酸の光反応技術に使用可能な新しい化合物が、さらに求められている。本発明の目的は、核酸の光反応技術に使用可能な新しい光反応性化合物、及び該光反応性化合物を使用した光反応性架橋剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となる光反応性化合物を鋭意探索してきたところ、核酸塩基の塩基部分に代えてピラノカルバゾール骨格構造を備えた化合物が、このような核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となることを見いだして、本発明に到達した。
【0009】
本発明に係る化合物は、特徴的なピラノカルバゾール構造を有しており、比較的に小さなこの構造によって光架橋性を発揮しているために、様々に修飾して多様な用途で使用することができる。さらに、本発明に係る化合物のこの特徴的な構造は、核酸の塩基に類似した構造を有しているために、人工塩基(人工核酸塩基)として使用することができる。すなわち、本発明に係る化合物の特徴的な構造を人工塩基として導入して、人工ヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)、及び人工ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログ)を製造することができ、このような人工ヌクレオチドを配列中に含んだ人工核酸(修飾核酸)を製造することができる。このような人工核酸が、光反応によって架橋を形成すると、それは、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された光架橋(光クロスリンク)となるので、光反応性の核酸類は、所望の配列に特異的に反応可能な二重らせんの光クロスリンク剤として使用することができる。
【0010】
本発明による光反応性架橋剤は、特徴的なピラノカルバゾール構造に由来して、従来よりも長波長の光照射によって、例えば可視光域の光照射によって、光架橋反応させることができるという特徴を備える。そのために、DNAや細胞の損傷をできるだけ回避したいという場合に、本発明による光反応性架橋剤は、長波長の光照射によって光架橋可能であるので、特に有利である。
【0011】
なお、本発明の光反応性化合物は、光照射によって光反応を開始するものであるが、それまで安定していた化合物が、光照射というシグナルに応答して反応を開始するという意味を強調して、光反応性を光応答性ということがある。
【0012】
したがって、本発明は次の(1)以下を含む。
(1)
次の式Iで表される化合物:
JP2019022158A1_000003t.gif(ただし、式Iにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基であり、
Yは、水素原子、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)。
(2)
Yが、次の式IIで表される基である、(1)に記載の化合物:
JP2019022158A1_000004t.gif(ただし、式IIにおいて、
R11は、水素原子又は水酸基であり、
R12は、水酸基、又は-O-Q1基であり、
R13は、水酸基、又は-O-Q2基であり、
1は、
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基であり、
2は、
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基である。)。
(3)
Yが、水素原子、次の式IIIで表される基、又は式IVで表される基である、(1)に記載の化合物:
JP2019022158A1_000005t.gifJP2019022158A1_000006t.gif(4)
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000007t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオシドである、(1)に記載の化合物。
(5)
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000008t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオチドである、(1)に記載の化合物。
(6)
塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000009t.gif(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有する核酸又はペプチド核酸である、(1)に記載の化合物。
(7)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
(8)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となる新規な化合物を提供する。これは、天然の塩基構造を備えていない、新規な化学構造によるものである。そして、本発明の化合物によれば、従来の光反応性架橋剤よりも長波長の光照射によって光架橋を形成できることから、光照射による核酸や細胞への悪影響を最小限とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】図1aは光架橋反応の流れを示す説明図である。
【図1b】図1bは光照射時間を0~15秒と変化させた場合のUPLC解析のチャートである。
【図1c】図1cは光照射時間を0~15秒と変化させた場合の各光照射時間における光架橋率を算出して作成したグラフである。
【図2a】図2aは光架橋反応の流れを示す説明図である。
【図2b】図2bは照射する光波長を450~550nmと変化させた場合のUPLC解析のチャートである。
【図3a】図3aは光開裂反応の流れを示す説明図である。
【図3b】図3bは照射する光波長を320~340nmと変化させた場合のUPLC解析のチャートである。
【図3c】図3cは各波長の光照射によって開裂した光架橋体の割合(転化率%)を示すグラフである。
【図4】図4は各波長での光照射時間(秒)と細胞生存率(%)を対比したグラフである。
【図5】図5はSPCXによる光架橋反応の流れを示す説明図である。
【図6】図6はSPCXによる光架橋試験のUPLCによる解析のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施の形態に限定されるものではない。

【0016】
[化合物の構造]
本発明の化合物は、次の式Iで表される化合物を含む:
(I)
JP2019022158A1_000010t.gif

【0017】
式Iにおいて、Xは、酸素原子又は硫黄原子である。

【0018】
式Iにおいて、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。ハロゲン原子としては、例えばBr、Cl、F、Iの原子をあげることができる。フッ化メチル基としては、例えば-CH2F、-CHF2、-CF3をあげることができる。フッ化エチル基としては、例えば-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CHF-CH3、-CHF-CH2F、-CHF-CHF2、-CHF-CF3、-CF2-CH3、-CF2-CH2F、-CF2-CHF2、-CF2-CF3をあげることができる。C1~C3のアルキルスルファニル基としては、例えば-CH2-SH基、-CH2-CH2-SH基、-CH(SH)-CH3基、-CH2-CH2-CH2-SH基、-CH2-CH(SH)-CH3基、-CH(SH)-CH2-CH3基をあげることができる。好適な実施の態様において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-NH2基、-OH基、-CH3基とすることができ、好ましくは、水素原子とすることができる。

【0019】
好適な実施の態様において、R1を上述の基とすると同時にR2を水素原子とすることができる。

【0020】
好適な実施の態様において、R1及びR2は、それぞれ独立に、式Iの左端の六員環において、窒素原子の結合する炭素原子をC1位と付番して、六員環の炭素原子を時計回りに順にC2位、C3位、C4位、C5位、C6位と付番した場合に、C2位、C3位、C4位、C5位のいずれかの位置の炭素原子の置換基とすることができる。好適な実施の態様において、R1及びR2は、それぞれC3位及びC4位の置換基とすることができる。好適な実施の態様において、R1をC3位の置換基とすると同時に、R2をC4位の水素原子とすることができる。

【0021】
式Iにおいて、Yは、水素原子、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子とすることができる。

【0022】
好適な実施の態様において、式Iの化合物は、次の式I’で表される化合物とすることができる:
(式I’)
JP2019022158A1_000011t.gif

【0023】
式I’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基であり、Yは、式Iにおいて記載した基である。

【0024】
好適な実施の態様において、式Iの化合物は、次の式I”で表される化合物とすることができる:
(式I”)
JP2019022158A1_000012t.gif

【0025】
式I”において、R1は、式Iにおいて記載した基であり、Yは、式Iにおいて記載した基である。

【0026】
好適な実施の態様において、式Iの化合物は、次の式I'''で表される化合物とすることができる:
(式I''')
JP2019022158A1_000013t.gif

【0027】
式I'''において、R1は、式Iにおいて記載した基であり、Yは、式Iにおいて記載した基である。

【0028】
好適な実施の態様において、Yは、水素原子とすることができ、この場合に式Iの化合物は、次の式VIで表される化合物である:
(VI)
JP2019022158A1_000014t.gif

【0029】
式VIにおいて、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1及びR2は、式Iにおいて記載した基であって、式Iにおいて記載した位置に位置する。

【0030】
好適な実施の態様において、Yは、水素原子とすることができ、この場合に式I’の化合物は、次の式VI’で表される化合物である:
(VI’)
JP2019022158A1_000015t.gif

【0031】
式VI’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基である。

【0032】
好適な実施の態様において、Yは、次の式IIで表される基とすることができ、この場合に式Iの化合物は、次の式Vで表される化合物となる:
(II)
JP2019022158A1_000016t.gif

【0033】
(V)
JP2019022158A1_000017t.gif

【0034】
式Vにおいて、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1及びR2は、式Iにおいて記載した基であって、式Iにおいて記載した位置に位置し、R11、R12、R13は、式IIについて記載した基である。

【0035】
好適な実施の態様において、Yは、上記の式IIで表される基とすることができ、この場合に式I’の化合物は、次の式V’で表される化合物となる:
(V’)
JP2019022158A1_000018t.gif

【0036】
式V’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基であり、R11、R12、R13は、式IIについて記載した基である。

【0037】
式IIにおいて、R11は、水素原子又は水酸基であり、R12は、水酸基、又は-O-Q1基であり、R13は、水酸基、又は-O-Q2基である。

【0038】
上記Q1は、
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基とすることができる。

【0039】
上記Q2は、
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基とすることができる。

【0040】
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基は、次の構造を有しており、
JP2019022158A1_000019t.gif上記ジアルキル基となるR基とR’基は、それぞれC1~C4のアルキル基とすることができる。このような2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基として、例えば、2-シアノエチル-N,N-ジメチルホスホロアミダイト基、2-シアノエチル-N,N-ジエチルホスホロアミダイト基、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト基をあげることができる。

【0041】
メチルホスホンアミダイト基は、次の構造を有しており、
JP2019022158A1_000020t.gif上記R基とR’基は、それぞれ水素原子又はC1~C4のアルキル基とすることができる。

【0042】
エチルホスホンアミダイト基は、次の構造を有しており、
JP2019022158A1_000021t.gif上記R基とR’基は、それぞれ水素原子又はC1~C4のアルキル基とすることができる。

【0043】
オキサザホスホリジン基は、次の構造を有しており、
JP2019022158A1_000022t.gif
上記の構造において、水素原子がC1~C4のアルキル基によって置換された置換体も含む。

【0044】
チオホスファイト基は、次の構造を有しており、
JP2019022158A1_000023t.gif
上記の構造において、水素原子がC1~C4のアルキル基によって置換された置換体も含む。

【0045】
-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのTEA塩は、それぞれのトリエチルアミン(TEA)の塩である。

【0046】
-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのDBU塩は、それぞれのジアザビシクロウンデセン(DBU)の塩である。

【0047】
好適な実施の態様において、Q1は、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とすることができる。

【0048】
好適な実施の態様において、Q1は、上述の保護基とすることができ、好ましくは、ジメトキシトリチル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基とすることができ、特に好ましくはジメトキシトリチル基とすることができる。

【0049】
好適な実施の態様において、Q2は、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とすることができる。

【0050】
好適な実施の態様において、Q2は、上述の保護基とすることができ、好ましくは、2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基とすることができ、特に好ましくは2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト基とすることができる。

【0051】
[ヌクレオシドアナログ]
好適な実施の態様において、Yは、デオキシリボースとすることができ、すなわち、次の式IIIで表される基とすることができ、この場合に式Iの化合物は、次の式VIIで表されるヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)アナログである:

【0052】
(III)
JP2019022158A1_000024t.gif

【0053】
(VII)
JP2019022158A1_000025t.gif

【0054】
式VIIにおいて、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1及びR2は、式Iにおいて記載した基であって、式Iにおいて記載した位置に位置する。

【0055】
好適な実施の態様において、Yは、デオキシリボースとすることができ、すなわち、上記の式IIIで表される基とすることができ、この場合に式I’の化合物は、次の式VII’で表されるヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)アナログである:

【0056】
(VII’)
JP2019022158A1_000026t.gif

【0057】
式VII’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基である。

【0058】
好適な実施の態様において、Yは、リボースとすることができ、すなわち、次の式IVで表される基とすることができ、この場合に式Iの化合物は、次の式VIIIで表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)アナログである:

【0059】
(IV)
JP2019022158A1_000027t.gif

【0060】
(VIII)
JP2019022158A1_000028t.gif

【0061】
式VIIIにおいて、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1及びR2は、式Iにおいて記載した基であって、式Iにおいて記載した位置に位置する。

【0062】
好適な実施の態様において、Yは、リボースとすることができ、すなわち、上記の式IVで表される基とすることができ、この場合に式I’の化合物は、次の式VIII’で表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)アナログである:

【0063】
(VIII’)
JP2019022158A1_000029t.gif

【0064】
式VIII’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基である。

【0065】
上記の式VII及び式VIIIで表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)アナログは、塩基部分として、次の式Ib:
JP2019022158A1_000030t.gif

【0066】
(ただし、式Ibにおいて、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1及びR2は、式Iにおいて記載した基であって、式Iにおいて記載した位置に位置する。)
で表される基を有するヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)ということができる。

【0067】
上記の式VII’及び式VIII’で表されるヌクレオシド(リボヌクレオシド)アナログは、塩基部分として、次の式Ib’:
JP2019022158A1_000031t.gif

【0068】
(ただし、式Ib’において、Xは、式Iにおいて記載した基であり、R1は、式Iにおいて記載した基である。)
で表される基を有するヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)ということができる。

【0069】
さらに、本発明は、塩基部分として、上記の式Ib又は式Ib’で表される基を有するヌクレオチド(ヌクレオチドアナログ)にもある。さらに、本発明は、塩基部分として、上記の式Ib又は式Ib’で表される基を有する核酸(修飾核酸)又はペプチド核酸(修飾ペプチド核酸)にもある。

【0070】
[ヌクレオチドアナログ]
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基とすることができ、Q2を、水素原子とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログ分子とすることができる。

【0071】
[修飾核酸]
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸として、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中に取り込まれた修飾核酸又は修飾オリゴヌクレオチドとすることができる。本発明において、このように調整された光応答性修飾核酸と光応答性修飾オリゴヌクレオチドをまとめて光応答性修飾核酸ということがある。本発明に係る修飾核酸において、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中の末端に位置していてもよく、この場合にはQ1又はQ2のいずれかの側のみがQ1又はQ2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される修飾ヌクレオチド又は修飾核酸となる。また、上記の核酸に代えてペプチド核酸を用いて、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中に取り込まれた光応答性修飾ペプチド核酸とすることができる。

【0072】
[化合物の構造]
本発明に係る化合物は、式I等において、天然のヌクレオシド及びヌクレオチドが備えているべきプリン塩基あるいはピリミジン塩基による塩基構造を備えていない。それにもかかわらず、本発明に係る化合物は、1本鎖の修飾核酸として形成されると、これと相補的な1本鎖の核酸と二重らせんを形成することができる。そして、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができる。

【0073】
[修飾核酸製造用試薬]
好適な実施の態様において、Q1を、上述の保護基とすることができ、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、あるいは上述の保護基、とすることができる。すなわち、上記式I、式I’、式I”、及び式I'''で表される化合物は、光反応性修飾核酸の製造用試薬(合成用試薬)とすることができる。

【0074】
好適な実施の態様において、Q1を、上述の保護基とすることができ、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、あるいは上述の保護基、とすることができる。よく知られているように、このような構造を備えた化合物は、核酸合成用のモノマーとして使用することができ、公知のDNA合成装置によって使用可能な試薬とすることができ、例えばホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法によって使用可能な修飾核酸合成用試薬(修飾核酸合成用モノマー)とすることができる。

【0075】
また、Q1を、上述の保護基として、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とした構造はいわゆるモノマーとは言えない構造となっており、修飾核酸と言える構造となっている。このような場合には、そこから合成して鎖長を伸長するための製造用試薬(合成用試薬)として使用することができる。

【0076】
光反応性修飾核酸製造用試薬(光反応性修飾核酸合成用試薬)として、例えば、後述するスキーム1の化合物5、化合物6として記載されたモノマー、及び後述するスキーム2に記載されたモノマーをあげることができる。

【0077】
[光反応性架橋剤]
本発明に係る化合物は、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができる。本発明に係る化合物を、1本鎖の修飾核酸として形成すると、これと相補的な1本鎖の核酸と二重らせんを形成することができ、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができ、結果として、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された鎖間の光架橋(光クロスリンク)を形成することができる。すなわち、本発明に係る化合物は、光反応性架橋剤として使用することができる。

【0078】
[光架橋の形成]
本発明に係る修飾核酸は、これを1本鎖核酸として使用すると、これと相補的な1本鎖核酸とハイブリダイズして二重らせんを形成することができる。二重らせんの形成にあたって、ピラノカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基については、特段の制約がなく、自由に選択できる。形成された二重らせんに光照射を行うと、二重らせんを形成する核酸鎖の間に、光反応によって架橋を形成することができる。この光架橋は、配列中でピラノカルバゾール構造部分が核酸塩基として位置する位置から配列中で1塩基分だけ5’末端側に位置する核酸塩基に対して、相補鎖中において塩基対を形成する位置にある核酸塩基と、ピラノカルバゾール構造との間に形成される。言い換えれば、この光架橋は、ピラノカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基から、配列中で1塩基分だけ3’末端側に位置する核酸塩基と、ピラノカルバゾール構造との間に形成される。

【0079】
[光架橋の塩基特異性]
本発明において、ピラノカルバゾール構造が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、ピラノカルバゾール構造は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、本発明に係る光架橋性の化合物は、天然の核酸塩基としては、シトシン、ウラシル、及びチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、特異性を有している。

【0080】
[光反応性架橋剤の配列選択性]
本発明に係る光反応性修飾核酸(光架橋性修飾核酸)は、修飾核酸と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた後に、光架橋させることができる。これによって、目的とする特定の配列に対してのみ光クロスリンク反応(光架橋反応)を行わせることができる。すなわち、本発明に係る光反応性架橋剤は、非常に高い塩基配列選択性を、所望に応じて配列設計して、付与することができる。

【0081】
[光照射の波長]
光架橋のために照射される光の波長は、例えば350~600nmの範囲、好ましくは400~600nmの範囲、さらに好ましくは400~550nmの範囲、さらに好ましくは400~500nmの範囲、さらに好ましくは400~450nmの範囲とすることができ、特に400nmの波長を含む光が好ましい。好適な実施の態様において、これらの範囲の波長にある単波長のレーザー光を使用することができる。このように本発明では、可視光域の波長の光照射によって、光架橋を形成することができる。従来の光反応性架橋剤では、これらの範囲よりも短波長の光照射を必要としていた。本発明によれば、従来の光反応性架橋剤よりも長波長の光照射によって光架橋を形成できることから、光照射による核酸や細胞への悪影響を最小限とすることができる点で、有利である。

【0082】
[光架橋の開裂]
本発明の化合物によれば、光架橋を形成した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る光反応性の化合物は、可逆的な光架橋を可能とするものであり、可逆的な光架橋剤として使用することができる。

【0083】
この光架橋の可逆性から想起されるように、本発明の化合物による可逆性光架橋剤を使用すれば、特定の塩基配列を有する核酸を、生理的条件下で、分離し、回収し、又は検出することができる。したがって本発明は可逆性光架橋剤を使用して、所望の塩基配列を有する核酸を、分離し、回収し、又は検出する方法にもある。

【0084】
光開裂のために照射される光の波長は、例えば300~350nmの範囲、好ましくは300~340nmの範囲とすることができ、特に312nmの波長を含む光が好ましい。好適な実施の態様において、これらの範囲の波長にある単波長のレーザー光を使用することができる。

【0085】
[光反応の温度]
好適な実施の態様において、光架橋反応を進行させるためには、一般に0~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは0~30℃、さらに好ましくは0~20℃、さらに好ましくは0~10℃、さらに好ましくは0~5℃の範囲の温度で光照射を行う。光開裂反応を進行させるためには、一般に55~100℃、好ましくは60~100℃、さらに好ましくは60~90℃、さらに好ましくは60~80℃の範囲の温度で光照射を行う。

【0086】
[光反応の条件]
本発明による光架橋及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。

【0087】
[光反応の時間]
本発明による光架橋及び光開裂は、極めて迅速に進行する。例えば、光反応性の化合物として知られるソラレンであれば数時間を要する(350nm光照射)ような場合に、それよりもはるかに長波長の光照射によって、例えばわずか10秒間~60秒間(400nm光照射)で光反応が進行して光架橋する。すなわち、本発明に係る光架橋剤を使用すれば、例えば1~120秒間、又は1~60秒間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成させることができる。さらに、本発明による光架橋は、上記の波長及び温度を採用して、例えば1~120秒間、又は1~60秒間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を開裂させることができる。

【0088】
[修飾核酸合成用モノマー及び修飾核酸の合成]
後述するスキーム1又はスキーム2に記載の手法、あるいは当業者に公知の手法を使用して、ピラノカルバゾール構造を有する化合物(例えば後述するスキーム1の化合物2)から、本発明に係る修飾核酸を得るための合成用モノマー(製造用試薬)(例えば後述するスキーム1の化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、あるいはスキーム2において対応する化合物)を得ることができる。本発明に係る修飾核酸の合成用モノマーの構造は上述した通りであり、これを、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法における核酸合成試薬として使用すれば、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(式VIIの化合物、式VIIIの化合物)が配列中に取り込まれた核酸又はオリゴヌクレオチド(本発明に係る修飾核酸)あるいはペプチド核酸を得ることができる。このように、本発明に係る修飾核酸合成モノマーは、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法において核酸合成試薬として使用できる点で、優れたものである。
【実施例】
【0089】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
[ヌクレオシドアナログ(光反応性素子)の合成]
次のスキーム1に示す合成経路に沿って、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(ヌクレオシドアナログ、あるいは光反応性素子又は光架橋素子ということがある)、さらに修飾核酸合成モノマーの合成を行った。
【実施例】
【0091】
スキーム1:
JP2019022158A1_000032t.gif
【実施例】
【0092】
[化合物2の合成]
二口ナスフラスコに2-hydroxycarbazole(2.0g、11mmol)、InCl3(260mg、1.18mmol)を入れ、還流管をつけ、窒素置換を行った。オイルバスを90℃にセットし、二口ナスフラスコにEthyl propiolate(4ml)を加え90℃,24h撹拌した。TLCで反応の進行を確認した後、水2mLを加え反応をクエンチした。酢酸エチルに溶かし、抽出を行った。硫酸ナトリウムを用い、脱水を行い、エバポレータにより溶媒を除去した。その後、カラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製を行い、化合物2を得た。(収量:503mg、2.75mmol、収率:25%)
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 11.67(s,1H),8,47(s,1H),8,17(dt,2H,J=11.4Hz),7.50-7.43(m,2H),7.25(dt,1H,J=8.54Hz),6.33(d,1H,J=4.75Hz)
【実施例】
【0093】
[化合物4の合成]
二口ナスフラスコに化合物2(324mg、1.38mmol)、KOH(224mg,4.00mmol)を入れ、窒素置換を行った。脱水アセトニトリルを36mLとTDA-1を24μL入れて30分撹拌した。その後、クロロシュガー(674mg、1.94mmol)を加え一晩撹拌した。反応液を濾過した後、エバポレータにより溶媒を除去した。除去後の混合液にメタノール40mLに溶解させた後、ナトリウムメトキシド54mgとクロロホルム5mLを加え、4時間撹拌した。その後、濾過、エバポレータによる溶媒の除去を行った。その後、カラム(クロロホルム)による精製を行い、化合物4を得た。(収量:80mg、0.23mmol、収率:17%)
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.50(s,1H),8.18(m,2H),7.50(dd,2H,J=8.28,8.0),7.31(dt,1H,J=7.17),6.71(dt,1H,J=6.2),6.38(d,1H,4.6Hz),5.40(d,1H,J=5.4Hz),5.10(dt,1H,J=5.07Hz),3.95-3.87(m,3H),2.74(dt,1H,J=14.0,8.2Hz),2.26(ddd,1H,J=14.0,6.9,3.3Hz)
【実施例】
【0094】
[化合物5、化合物6の合成]
以降の合成は常法に従い、ジメトキシトリチル化、アミダイト化を行った。
【実施例】
【0095】
[光応答性核酸含有DNAの合成]
DNA自動合成機(ABI3400)を用い、修飾DNAの合成を行った。その後、28%アンモニア水溶液による切り出しを行った後、65℃で4時間加熱し、脱保護を行った。SpeedVacによりアンモニアを除去、HPLCによる精製を行った。その後、MALDI-TOF-MSによる解析を行い目的物の同定を行った。
Calcd.for [M+H]+ 2798.40,Found 2798.72
【実施例】
【0096】
[光架橋反応]
10μM修飾ODN、10μM相補鎖ODN、50μM deoxyuridine、100mM NaClを含む50mMカコジル酸buffer(pH7.4)を90℃で1分間加熱し、4℃で静置した。その後、UV-LED(OmniCure,LX405-S)を用いて400nmの光照射を4℃で行った。図1aはこの光架橋反応の流れを示す説明図である。
【実施例】
【0097】
[UPLC解析]
DNAサンプル50μLをUPLC用バイアル瓶に移し、UPLC(超高速液体クロマトグラフ)解析を行った。解析には50mMギ酸アンモニウムとアセトニトリルを用い、分析開始時ギ酸アンモニウム100%、10分時点でギ酸アンモニウム90%、アセトニトリル10%になるように直線的に溶媒比率を変化させた。流速は0.2mL/min、検出波長は260nmで分析を行った。図1b及び図1cにこれらの結果をまとめて示す。
【実施例】
【0098】
[結果]
図1bは、光照射時間を0~15秒と変化させた場合のUPLC解析のチャートである。図1bの横軸は保持時間[分]である。相補鎖ODN、修飾ODN、光架橋されたODNのピークの位置をそれぞれ図1b中に示す。図1cは、光照射時間を0~15秒と変化させた場合の各光照射時間における光架橋率を算出して作成したグラフである。図1cの横軸は光照射時間[秒]、縦軸は架橋率[%]を示す。
【実施例】
【0099】
[光架橋可能な光波長の検討]
上記の光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(ピラノカルバゾール構造を有する光架橋素子)(PyranoCarbazole Photo-Cross-linker)(PCX)について、光架橋可能な波長を以下のように検討した。
【実施例】
【0100】
10μM ODN(X)、10μM cODN、100mM NaClを含む50mMカコジル酸ナトリウムbufferをアニーリング後4℃で光照射を行いUPLCにより解析した。図2aはこの光架橋反応の流れを示す説明図である。図2bにこの結果をまとめて示す。
【実施例】
【0101】
[結果]
図2bは、照射する光波長を450~550nmと変化させた場合のUPLC解析のチャートである。図2bの横軸は保持時間[分]である。相補鎖ODN(cODN)、修飾ODN(ODN(PCX))、光架橋されたODN(*)のピークの位置をそれぞれ図2b中に示す。このように、450nmから開始して少なくとも550nmまでの波長の光照射によって、光架橋可能であることがわかった。
【実施例】
【0102】
[光開裂可能な光波長の検討]
上記の光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(PCX)の光架橋体に対して、光開裂可能な波長を以下のように検討した。
【実施例】
【0103】
10μMの光架橋体に対して37℃で320nm、330nm、340nmに対して光照射を行った。その後、同様に解析を行った。図3aはこの光開裂反応の流れを示す説明図である。図3b及び図3cにこの結果をまとめて示す。
【実施例】
【0104】
図3bは、照射する光波長を320~340nmと変化させた場合のUPLC解析のチャートである。図3bの横軸は保持時間[分]である。相補鎖ODN(cODN)、修飾ODN(ODN(PCX))のピークの位置をそれぞれ図3b中に示す。光架橋されたODNのピークは、保持時間4.5~5分の間に位置するピークである。図3cは、各波長の光照射によって開裂した光架橋体の割合(光開裂率%又は転化率%)を示すグラフである。このように、少なくとも320~340nmまでの波長の光照射によって光開裂可能であること、この範囲内において330nmの光照射が最も光開裂率が高いことがわかった。
【実施例】
【0105】
[照射光波長の細胞への影響の検討]
長波長の光照射が、短波長の光照射と比較して、細胞へのダメージが少ないことを検討するために、以下の実験を行った。
【実施例】
【0106】
96穴プレートに5×105cell/mlの細胞(GFP-HeLa細胞、ヒト子宮頸癌由来株)を100μL分注し、CO2インキュベータで48時間培養した。その後、366nm、400nm、又は450nmの波長の光で光照射を行った後、Cell counting kitを10μLずつ入れ、CO2インキュベータで4時間呈色した後、マイクロプレートリーダを用い、450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。この結果を、図4にまとめて示す。
【実施例】
【0107】
[結果]
図4は、各波長での光照射時間(秒)と細胞生存率(%)を対比したグラフである。この結果から、366nmの光照射では数秒の光照射でも細胞生存率が大きく低下しているのに対して、400nm、450nmでは、数十秒光照射を行ってもほとんど細胞生存率が低下していない。すなわち、このことからもピラノカルバゾールが細胞毒性の少ない長波長の光で操作可能であることが明らかとなった。
【実施例】
【0108】
[ヌクレオシドアナログ(光反応性素子)(SPCX)の合成]
光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子として、次の構造を有するピラノカルバゾール誘導体(SPCX)の合成を、スキーム2に従って行った。
SPCX:
JP2019022158A1_000033t.gif
【実施例】
【0109】
[スキーム2]
JP2019022158A1_000034t.gif
【実施例】
【0110】
合成は、スキーム2に示すように、上述したスキーム1と同様に、2-ヒドロキシカルバゾールを出発物質として行った。スキーム2において、枠内に記載された箇所以外は、スキーム1と同様の手順によって合成を行った。枠内に記載された箇所については、以下にさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0111】
[ピラノカルバゾール誘導体(S-ピラノ)の合成]
スキーム2の枠内の合成について以下のように行った。
【実施例】
【0112】
次の反応を後述のように行った。
JP2019022158A1_000035t.gif
【実施例】
【0113】
50mLナスフラスコにピラノカルバゾールヌクレオシド(800mg,2.28mmol)と無水酢酸(20mL)、DMAP(50mg)を加え、室温で2時間撹拌した。その後TLC(CHCl3:MeOH=9:1)で反応の進行を確認後、エバポレータにより溶媒を除去した後、TLC(CHCl3:MeOH=9:1)によるカラム精製を行った。黄色粘性液体(7.99mg,1.77mmol,78%)を得た。1H-NMRにより目的物と同定した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) ∂ 8.50(s,1H),8.21(s,1H),8.19(d,1H),7.90(s,1H),7.93(d,1H),7.50(t,1H),7.31(t,1H),6.70(t,1H),6.34(d,1H),5.41(d,1H),5.16(t,1H),4.50(d,1H),3.78(q,2H),2.60-2.68(m,1H),2.14-2.18(m,1H),1.18(s,6H).
【実施例】
【0114】
次の反応を後述のように行った。
JP2019022158A1_000036t.gif
【実施例】
【0115】
50mLナスフラスコに3’,5’-アセチルピラノカルバゾールヌクレオシド(7.99mg,1.77mmol)にたいし、ローソン試薬(1,00g,2.48mmol)を加え、窒素置換、100℃で3時間撹拌した。TLC(CHCl3:MeOH=9:1)で新たなスポットの出現を確認し、反応を停止した。その後、AcOEtに溶解させた後、NaCl水溶液と分液を行い、有機相を回収し、エバポレータで溶媒を除去した。その後、アンモニア水溶液を加え、室温で60時間撹拌した後、アンモニアの除去、凍結乾燥による水の除去を行った後、カラム精製(CHCl3:MeOH=9:1)により目的物を回収した。1H-NMRにより目的物の同定を行った。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) ∂ 8.56(s,1H),8.23(s,1H),8.20(d,1H),7.90(s,1H),7.36(d,1H),7.51(t,1H),7.35(t,1H),6.72(t,1H),6.21(d,1H),5.41(d,1H),5.16(t,1H),4.51(d,1H),3.90(q,1H),3.90(q,2H),2.48-2.65(m,1H),2.12-2.16(m,1H).
【実施例】
【0116】
SPCXによる光架橋試験]
スキーム2によって得られた修飾核酸合成モノマーを用いて、光応答性核酸含有DNAの合成を行って、光架橋反応することを確認した。
【実施例】
【0117】
実験には下記ODN(SPCX)とcODNを使用して、後述のように行った。
ODN(SPCX) 5’-TGCASPCXCCGT-3’
cODN 5’-ACGGGTGCA-3’
【実施例】
【0118】
10μMのODN(SPCX)と10μMのcODNを100mMのNaClを含む50mMカコジル酸buffer(pH7.4)に溶解させた後、90℃で1分間加熱した後、4℃で冷却した。その後4℃条件下で450nm(LED)の光照射を行った。その後、UPLCによる解析を行った。UPLCでの解析条件は下記の通りである。測定波長260nm、流速0.2mL/min、ギ酸アンモニウムとアセトニトリル混合溶液を用い、初期条件はギ酸アンモニウム99%、アセトニトリル15%、分析終了(10分)時点でギ酸アンモニウム85%、アセトニトリル15%の条件で分析を行った。
この光架橋反応の流れを示す説明図を、図5に示す。
【実施例】
【0119】
[結果]
光架橋試験のUPLCによる解析結果を図6に示す。
UPLCで解析を行った結果、光照射前に確認できたcODNとODN(SPCX)のピークが光照射時間依存的に減少し、新たなピークが確認でき、光架橋反応の進行が確認された。450nmの光照射を10秒行うことにより光架橋していることから、ピラノカルバゾール(PCX)よりもS-ピラノカルバゾール(SPCX)はさらに高い光反応性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となる新規な化合物を提供する。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1a】
0
【図1b】
1
【図1c】
2
【図2a】
3
【図2b】
4
【図3a】
5
【図3b】
6
【図3c】
7
【図4】
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【図5】
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【図6】
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