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明細書 :浮体式垂直軸型風車システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年5月14日(2020.5.14)
発明の名称または考案の名称 浮体式垂直軸型風車システム
国際特許分類 F03D  13/25        (2016.01)
F03D   3/06        (2006.01)
B63B  35/00        (2020.01)
B63B  21/00        (2006.01)
FI F03D 13/25
F03D 3/06 G
F03D 3/06 A
B63B 35/00 T
B63B 21/00 B
国際予備審査の請求
全頁数 27
出願番号 特願2019-507639 (P2019-507639)
国際出願番号 PCT/JP2018/010563
国際公開番号 WO2018/173967
国際出願日 平成30年3月16日(2018.3.16)
国際公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
優先権出願番号 2017055677
優先日 平成29年3月22日(2017.3.22)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】二瓶 泰範
【氏名】北村 眞一
出願人 【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
個別代理人の代理人 【識別番号】100130199、【弁理士】、【氏名又は名称】松永 充弘
審査請求 未請求
テーマコード 3H178
Fターム 3H178AA14
3H178AA15
3H178AA16
3H178AA26
3H178AA43
3H178AA53
3H178BB31
3H178BB71
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD04Z
3H178DD08Z
3H178DD12Z
3H178DD61X
3H178DD67X
要約 風向の大きな変化に対応して複数基の垂直軸型風車の列を風向に対して直交させ、複数の垂直軸型風車同士の干渉を抑制することができる浮体式垂直軸型風車システムを提供する。
上下方向に延びる回転軸を有する複数の垂直軸型風車20と、複数の垂直軸型風車20を浮力によって水面上に支持する浮体30と、を有し、水平方向に延びる仮想の直線Lに対して、複数の垂直軸型風車20が実質的に直線L上に配列された、風車列10と、風車列10の一方の端部である第1端部101と他方の端部である第2端部102の間であって、かつ、仮想の直線L上またはその近傍に設定された回転中心位置CPにおいて、風車列10を水面に対して回転可能に係留する係留装置50と、を備え、回転中心位置CPは、風車列10に作用する風に対して直交する状態で、回転中心位置CPまわりの回転モーメントが相殺されるように設定される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
上下方向に延びる回転軸を有する複数の垂直軸型風車と、前記複数の垂直軸型風車を浮力によって水面上に支持する浮体と、を有し、水平方向に延びる仮想の直線に対して、前記複数の垂直軸型風車が実質的に前記直線上に配列された、風車列と、
前記風車列の一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部の間であって、かつ、前記仮想の直線上またはその近傍に設定された回転中心位置において、前記風車列を水面に対して回転可能に係留する係留装置と、
を備え、
前記回転中心位置は、前記風車列に作用する風に対して直交する状態で、前記回転中心位置まわりの回転モーメントが相殺されるように設定されている、
浮体式垂直軸型風車システム。
【請求項2】
前記回転中心位置に対して前記風車列の前記第1端部側を第1風車列とし、前記回転中心位置に対して前記風車列の前記第2端部側を第2風車列として、
前記第1風車列の側面積と、前記第2風車列の側面積とを同等とした、
請求項1に記載の浮体式垂直軸型風車システム。
【請求項3】
前記第1風車列および前記第2風車列を構成する前記垂直軸型風車は、同形状かつ同数であるとともに、前記回転中心位置に対して対称に配置されており、
前記第1風車列を構成する前記垂直軸型風車の翼の回転方向と、前記第2風車列を構成する前記垂直軸型風車の翼の回転方向が互いに反対方向であり、
前記回転中心位置は、前記風車列の重心位置に設定される、
請求項2に記載の浮体式垂直軸型風車システム。
【請求項4】
前記浮体は、前記垂直軸型風車ごとに設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浮体式垂直軸型風車システム。
【請求項5】
前記風車列は、複数の垂直軸型風車を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は前記浮体に支持されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浮体式垂直軸型風車システム。
【請求項6】
前記係留装置は、
係留索と、
前記係留索に連結される係留浮体と、
を備え、
前記風車列は、前記回転中心位置において、前記係留浮体に対して回転可能に係留される、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の浮体式垂直軸型風車システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の垂直軸型風車を備えた浮体式垂直軸型風車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋などの水面に浮体を係留し、この浮体に風車を搭載した浮体式風車システムが知られている。浮体式風車システムはおもに風力発電を目的として設置されている。風力発電を目的とした浮体式風車システムでは、発電コストを抑制するため、浮体式風車システムの設置やメンテナンスに掛かるコストを抑制しつつ、発電効率を向上させることが求められている。
【0003】
浮体式風車システムは、おもに風車、浮体、および係留装置から構成されている。浮体式風車システムに用いられる風車は、回転軸が水平方向に設置される水平軸型風車と、回転軸が上下方向に設置される垂直軸型風車がある。浮体は浮力によって風車を水面上に支持する。一基の浮体には、通常一基の風車が搭載される。浮体によって支持された風車は、係留装置によって水底に繋ぎ止められて水面に係留される。
【0004】
しかしながら、この構成では、一基の風車ごとに浮体と係留装置が必要になり、浮体と係留装置のコストが嵩む。その結果、発電量に対して浮体式風車システムの設置コストが嵩むことになり、発電コストを抑制することが難しくなる。
【0005】
浮体式風車システムの設置コストを抑制するため、一基の浮体に複数基の風車を搭載した浮体式風車システムも提案されている。
【0006】
しかしながら、一基の浮体に複数基の風車を搭載すると、風向によっては風車同士の干渉が発生し、発電効率が低下する場合がある。例えば、複数基の風車の列が風向に対して直交するように配置され、複数基の風車が均等に風を受けている状態では、風車同士の干渉は発生しにくい。ところが、風向が変化して、複数基の風車のうち、ある風車の風下側に別の風車が位置する状態になると、風下側の風車は風上側の風車によって乱された風を受けることとなり、風下側の風車の発電効率が低下する。
【0007】
このような風向変化による発電効率の低下に対応するため、風向の変化に応じて浮体を回転させ、複数基の垂直軸型風車の列を風向に対して直交させる浮体式風車システムが提案されている(たとえば、特表2013-508609号公報参照)。
【0008】
特表2013-508609号公報に開示された浮体式風車システムでは、一基の浮体に複数基の風車が搭載されているとともに、浮体の2個所以上に係留装置の係留索が連結される多点係留システムを採用している。また、浮体の回転を許容するよう、係留装置の係留索を長くしたり、係留索の長さを調節可能としている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特表2013-508609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特表2013-508609号公報に開示された浮体式風車システムでは、係留索を長くすることで浮体の回転を許容しているが、係留索を長くした状態で浮体が回転すると係留索が絡むおそれがあり、係留索の長さには限度がある。このため、風向の大きな変化、例えば、海風と陸風が入れ替わる場合のように風向が大きく変化する状況には対応できず、複数の風車同士の干渉が発生する場合がある。
【0011】
また、係留索の長さを制御することで風向の変化に応じて浮体の向きを制御することも可能であるが、係留装置の構成が複雑になって浮体式風車システムの設置コストやメンテナンスコストが嵩む問題がある。
【0012】
また、係留索を長くした状態では、風力等によって浮体が水面上を移動しやすくなり、浮体式風車システムの設置に必要な水域面積が広大になる。このため、この浮体式風車システムを設置する場合には、他の浮体式風車システムや他の構造物等から離して設置しなければならず、浮体式風車システムの設置場所が制限される場合がある。
【0013】
本発明は、複数の垂直軸型風車を備える浮体式垂直軸型風車システムであって、風向の大きな変化に対応して複数基の垂直軸型風車の列を風向に対して直交させ、複数の垂直軸型風車同士の干渉を抑制することができるとともに、設置に必要な水域面積を抑制することができ、かつ、簡易な構成の係留装置を用いて設置コストを抑制することができる、浮体式垂直軸型風車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の浮体式垂直軸型風車システムは、上下方向に延びる回転軸を有する複数の垂直軸型風車と、前記複数の垂直軸型風車を浮力によって水面上に支持する浮体と、を有し、水平方向に延びる仮想の直線に対して、前記複数の垂直軸型風車が実質的に前記直線上に配列された、風車列と、
前記風車列の一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部の間であって、かつ、前記仮想の直線上またはその近傍に設定された回転中心位置において、前記風車列を水面に対して回転可能に係留する係留装置と、
を備え、
前記回転中心位置は、前記風車列に作用する風に対して直交する状態で、前記回転中心位置まわりの回転モーメントが相殺されるように設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の浮体式垂直軸型風車システムによれば、風向の大きな変化に対応して複数基の垂直軸型風車の列を風向に対して直交させ、複数の垂直軸型風車同士の干渉を抑制することができるとともに、設置に必要な水域面積を抑制することができ、かつ、簡易な構成の係留装置を用いて設置コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る浮体式垂直軸型風車システムの斜視図である。
【図2】図2は、浮体式垂直軸型風車システムの平面図である。
【図3】図3は、浮体式垂直軸型風車システムの動作を示す平面図である。
【図4】図4は、浮体式垂直軸型風車システムの動作を示す平面図である。
【図5】図5は、浮体式垂直軸型風車システムの動作を示す平面図である。
【図6】図6は、浮体式垂直軸型風車システムの動作を示す平面図である。
【図7】図7は、浮体式垂直軸型風車システムの動作を示す平面図である。
【図8】図8は、比較例に係る浮体式風車システムの斜視図である。
【図9】図9は、比較例に係る浮体式風車システムの動作を示す平面図である。
【図10】図10は、比較例に係る浮体式風車システムの動作を示す平面図である。
【図11】図11は、比較例に係る浮体式風車システムの動作を示す平面図である。
【図12】図12は、比較例に係る浮体式風車システムの動作を示す平面図である。
【図13】図13は、比較例に係る浮体式風車システムの動作を示す平面図である。
【図14A】図14Aは、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システムの移動範囲を示す平面図である。
【図14B】図14Bは、比較例に係る浮体式風車システムの移動範囲を示す平面図である。
【図15】図15は、浮体式垂直軸型風車システムの変形例を示す正面図である。
【図16】図16は、浮体式垂直軸型風車システムの変形例を示す正面図である。
【図17】図17は、浮体式垂直軸型風車システムの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態にかかる浮体式垂直軸型風車システムは、
上下方向に延びる回転軸を有する複数の垂直軸型風車と、前記複数の垂直軸型風車を浮力によって水面上に支持する浮体と、を有し、水平方向に延びる仮想の直線に対して、前記複数の垂直軸型風車が実質的に前記直線上に配列された、風車列と、
前記風車列の一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部の間であって、かつ、前記仮想の直線上またはその近傍に設定された回転中心位置において、前記風車列を水面に対して回転可能に係留する係留装置と、
を備え、
前記回転中心位置は、前記風車列に作用する風に対して直交する状態で、前記回転中心位置まわりの回転モーメントが相殺されるように設定されている(第1の構成)。

【0018】
上記構成によれば、複数の垂直軸型風車が浮体によって水面上に支持された風車列は、回転中心位置で回転可能に一点係留されている。回転中心位置は、風車列が風向に対して直交する状態、すなわち風車列が風に正対する状態で、回転中心位置まわりの回転モーメントが相殺されるように設定されている。風車列が風向に正対している状態から風向のみが変化した場合には、風車列の第1端部側に生じる回転中心位置まわりの回転モーメントと、風車列の第2端部側に生じる回転中心位置まわりの回転モーメントに差異が生じ、回転中心位置まわりの回転モーメントが不釣り合いの状態となる。これにより、風車列は、回転中心位置まわりの第1端部側と第2端部側の回転モーメントが釣り合って相殺される状態、すなわち、風向に対して正対する状態まで回転する。
また、風車列は、回転中心位置において回転可能に一点係留されているため、風向の変化が大きい場合であっても、風車列は、風向の変化に対応して風向に正対するように回転する。
このため、駆動力や制御機構を用いることなく、風車列を風向に正対する状態を保つことができ、複数基の垂直軸型風車同士の干渉を抑制することができる。

【0019】
また、風車列は、回転中心位置において回転可能に一点係留されているため、風車列の回転範囲は回転中心位置を中心とする円内となり、浮体式垂直軸型風車システムの設置に必要な水域面積を抑制することができる。

【0020】
また、係留装置と風車列は回転可能に連結されているため、係留装置は風車列の回転に影響を与えにくい。このため、係留装置を簡易な構成とすることができ、浮体式垂直軸型風車システムの設置コストを抑制することができる。

【0021】
上記第1の構成において、
前記回転中心位置に対して前記風車列の前記第1端部側を第1風車列とし、前記回転中心位置に対して前記風車列の前記第2端部側を第2風車列として、
前記第1風車列の側面積と、前記第2風車列の側面積とを同等としてもよい(第2の構成)。

【0022】
上記構成によれば、回転中心位置に対して第1風車列と第2風車列の側面積が同等であるため、風車列に風が作用した場合に、第1風車列と第2風車列に作用する風圧が同等となり、風車列を風向に対して正対させやすくなる。

【0023】
上記第2の構成において、
前記第1風車列および前記第2風車列を構成する前記垂直軸型風車は、同形状かつ同数であるとともに、前記回転中心位置に対して対称に配置されており、
前記第1風車列を構成する前記垂直軸型風車の翼の回転方向と、前記第2風車列を構成する前記垂直軸型風車の翼の回転方向が互いに反対方向であり、
前記回転中心位置は、前記風車列の重心位置に設定されてもよい(第3の構成)。

【0024】
上記構成によれば、風車列を構成する第1風車列と第2風車列は、回転中心位置(重心位置)に対して対称であるため、風車列に風が作用した場合に、第1風車列と第2風車列に作用する風圧が同等となって、風車列を風向に対して正対させやすくなる。また、第1風車列および第2風車列を構成する垂直軸型風車の翼の回転方向を互いに反対方向にすることにより、翼の回転によって発生する回転モーメントを利用して、風車列を風向に対して正対させやすくなる。

【0025】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記浮体は、前記垂直軸型風車ごとに設けられていてもよい(第4の構成)。

【0026】
上記構成によれば、複数の垂直軸型風車は、垂直軸型風車ごとに設けられた浮体によって水面上に支持される。このため、風車列を容易に構成することができる。また、多数の垂直軸型風車を用いる場合や、垂直軸型風車の設置数を増加させる場合でも、容易に対応することができる。

【0027】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記風車列は、複数の垂直軸型風車を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は前記浮体に支持されていてもよい(第5の構成)。

【0028】
上記構成によれば、複数の垂直軸型風車が共通の支持部材に設置され、支持部材が浮体に支持されるため、垂直軸型風車の数に対して浮体の設置数を減らすことができ、浮体式垂直軸型風車システムの構成を簡易にすることができる。

【0029】
上記第1から第5のいずれかの構成において、
前記係留装置は、
係留索と、
前記係留索に連結される係留浮体と、
を備え、
前記風車列は、前記回転中心位置において、前記係留浮体に対して回転可能に係留されてもよい(第6の構成)。

【0030】
上記構成によれば、係留装置に設けられた係留浮体に対して風車列が係留されるため、係留装置を設置した後に風車列を係留することが容易となり、係留装置を設置した状態のまま、風車列を分離することも可能となる。このため、浮体式垂直軸型風車システムの設置およびメンテナンスが容易となる。

【0031】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る浮体式垂直軸型風車システム100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。

【0032】
[全体構成]
まず、浮体式垂直軸型風車システム100の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る浮体式垂直軸型風車システム100の斜視図である。以下の図では、矢印Fは浮体式垂直軸型風車システム100の前方向を示し、矢印Bは後方向を示す。矢印Rは右方向、矢印Lは左方向を示す。矢印Uは上方向、矢印Dは下方向を示す。

【0033】
浮体式垂直軸型風車システム100は、風車列10および係留装置50を有している。風車列10は、複数の垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)と、複数の垂直軸型風車20を支持する浮体30(第1支持浮体31および第2支持浮体32)とを備えている。第1風車21は第1支持浮体31に搭載され、第2風車22は第2支持浮体32に搭載されている。風車列10は、係留装置50に回転可能に接続されている。

【0034】
浮体式垂直軸型風車システム100が海洋等に設置された状態では、第1風車21および第2風車22は、それぞれ第1支持浮体31および第2支持浮体32によって水面上に支持される。風車列10は、係留装置50によって水面に対して回転可能に係留される。第1支持浮体31、第2支持浮体32、および係留装置50の係留浮体51に付した二点鎖線は、浮体式垂直軸型風車システム100を海洋等に設置した状態におけるおおよその喫水線WLである。以下、浮体式垂直軸型風車システム100の各構成について詳細に説明する。

【0035】
風車列10は、垂直軸型風車20(第1風車21、第2風車22)、連結部材24、および浮体30(第1支持浮体31、第2支持浮体32)を有している。

【0036】
第1風車21および第2風車22は、いわゆる直線翼型の垂直軸型風車である。第1風車21および第2風車22は、略同等の構成を有しており、側方から風を受けた場合における第1風車21の翼212の回転方向と、第2風車22の翼222の回転方向のみが異なっている。第1風車21の翼212は、平面視で時計回りであるのに対し、第2風車22の翼222の回転方向は平面視で反時計回りである。

【0037】
第1風車21は、回転軸211および翼212を有している。回転軸211は上下方向に延びている。回転軸211の周囲には、3枚の翼212が等間隔に配置されている。各翼212は、上下方向に延びており、回転軸211に対して平行に配置されている。回転軸211と各翼212は、回転軸211から半径方向に延びるブラケット213で接続されている。各翼212は、回転軸211を中心として平面視で時計回りに回転可能である。回転軸211の下端部は、ケーシング217の内部で軸受けに支持されており、増速機構を介して発電機(図示省略)に接続されている。

【0038】
第2風車22は、第1風車21と略同等の構成を有しており、回転軸221および翼222を有している。回転軸221は上下方向に延びている。回転軸221の周囲には、3枚の翼222が等間隔に配置されている。各翼222は、上下方向に延びており、回転軸221に対して平行に配置されている。回転軸221と各翼222は、回転軸221から半径方向に延びるブラケット213で接続されている。各翼222は、第1風車21とは逆に、回転軸221を中心として平面視で反時計回りに回転可能である。回転軸221の下端部は、ケーシング217の内部で軸受けに支持されており、増速機構を介して発電機(図示省略)に接続されている。

【0039】
第1風車21および第2風車22の回転軸211,221の高さ、および、翼221,222の形状、枚数および回転半径はそれぞれ等しく設定されている。つまり、第1風車21および第2風車22は、側面積が同等で、翼212と翼222の回転方向のみが異なっている。

【0040】
第1風車21および第2風車22は、側方から風を受けると、各翼212,222に揚力が生じ、回転軸211,221を中心として回転する。回転軸211,221の回転力は、増速機構を介して発電機に伝達されて電力に変換される。発電された電力は、ケーブル(図示省略)を介して外部に送電されたり、ケーシング217の内部に備えられたバッテリ(図示省略)に蓄電される。

【0041】
なお、本実施形態では、第1風車21および第2風車22として、いわゆる直線翼型の垂直軸型風車を用いたが、垂直軸型風車であれば、その形式は問わない。例えば、ダリウス型、サボニウス型、クロスフロー型などであってもよい。

【0042】
連結部材24は、第1風車21および第2風車22を連結する部材である。連結部材24に水平方向に延びる仮想の直線Lが設定されているとすると、第1風車21および第2風車22は、仮想の直線L上に配列されている。具体的には、第1風車21および第2風車22の回転軸211,221が、仮想の直線L上に配列されている。なお、回転軸211,221は、厳密に仮想の直線L上でなくてもよく、実質的に仮想の直線L上に配置されていればよい。

【0043】
また、本実施形態では、第1風車21および第2風車22と連結部材24は、ケーシング217において連結されているが、ケーシング217以外で連結されていてもよい。例えば、第1風車21および第2風車22を支持する浮体30(第1支持浮体31、第2支持浮体32)が連結部材24に連結されるようにしてもよい。

【0044】
浮体30は、浮力によって風車列10を水面上に支持する部材である。本実施形態では、浮体30は、第1風車21および第2風車22に対して個別に設けられており、第1支持浮体31および第2支持浮体32を有する。第1支持浮体31は第1風車21を支持し、第2支持浮体32は第2風車22を支持する。

【0045】
第1支持浮体31および第2支持浮体32は、略同等の形状を有しており、それぞれ、下部浮体311、上部浮体312、および中間浮体313を有している。下部浮体311および上部浮体312は、直径が同等の円柱体で構成されている。中間浮体313は、下部浮体311および上部浮体312よりも直径が大きい円柱体で構成されている。第1支持浮体31および第2支持浮体32は、浮体式垂直軸型風車システム100を海洋等に設置した状態において、喫水線WLが中間浮体313に位置するように浮力が設定されている。なお、第1支持浮体31および第2支持浮体32の形状は、本実施形態の形状に限定されない。

【0046】
風車列10の第1風車21側の端部を第1端部101とし、風車列10の第2風車22側の端部を第2端部102として、第1端部101と第2端部102の間であって、かつ仮想の直線L上に回転中心位置CPを設定する。回転中心位置CPは、係留装置50に対して回転可能に接続される位置である。

【0047】
回転中心位置CPは、風車列10に風が作用した場合において、風に対して直交する状態で、回転中心位置CPまわりの回転モーメントが相殺されるような位置に設定される。回転中心位置CPまわりの回転モーメントは、回転中心位置CPに対して右側部分と左側部分にそれぞれ作用する風圧力による回転モーメントと、第1風車21および第2風車22の翼212,222が回転することにより生じる反トルクによる回転モーメントに分けられる。このため、風車列10が風に対して直交(正対)する状態において、風圧力による回転モーメントと反トルクによる回転モーメントがそれぞれ相殺されるような位置に回転中心位置CPが設定される。

【0048】
風圧力による回転モーメントが相殺されるようにするには、風車列10の第1端部101側を第1風車列11とし、風車列10の第2端部102側を第2風車列12とすると、第1風車列11の喫水線WL上の側面積と、第2風車列12の喫水線WL上の側面積とが、回転中心位置CPに対して対称となるように回転中心位置CPを設定すればよい。

【0049】
本実施形態では、第1風車列11を構成する第1風車21、および第2風車列12を構成する第2風車22は、同形状かつ同数(各1基)である。また、第1風車21および第2風車22を支持する第1支持浮体31および第2支持浮体32も略同等の形状を有している。このため、第1風車21および第2風車22から等距離の位置であって、かつ、連結部材24に設定された仮想の直線L上に回転中心位置CPが設定されることで、回転中心位置CPまわりの風圧力による回転モーメントが相殺されることとなる。

【0050】
つぎに反トルクによる回転モーメントがそれぞれ相殺されるようにするには、風車列10が風に対して直交(正対)する状態において、第1風車21および第2風車22の反トルクがそれぞれ同等の大きさ、かつ反対方向となるようにすればよい。

【0051】
本実施形態では、第1風車21および第2風車22は同等であり、翼212,222の回転方向のみが互いに異なっている。このため、風車列10が風に対して直交(正対)する状態では、第1風車21および第2風車22の反トルクがそれぞれ同等の大きさ、かつ反対方向となって相殺されることとなる。

【0052】
以上より、本実施形態では、回転中心位置CPは、側面視で風車列10の中央であって、かつ仮想の直線L上に設定される。言い換えると、本実施形態では、回転中心位置CPは、風車列10の重心位置に設定されている。

【0053】
係留装置50は、回転中心位置CPにおいて、風車列10を水面に対して回転可能に係留する。係留装置50は、係留浮体51、接続部53、および係留索55を有する。

【0054】
係留浮体51は、円柱体で構成されており、浮体式垂直軸型風車システム100を海洋等に設置した状態において、喫水線WLが側面に位置するように浮力が設定されている。係留浮体51の下部には、下方にむけて係留軸511が設けられており、係留軸511の下部には係留索支持体512が設けられている。なお、係留浮体51の形状は、本実施形態の形状に限定されない。

【0055】
接続部53は、係留浮体51に対して風車列10を回転可能に接続する部分である。接続部53は、風車列10が回転中心位置CPを中心として回転可能となるように連結部材24に接続されている。接続部53の回転機構は限定されず、従来公知の回転機構を用いることができるが、水分や塩分に対する耐性を有することが好ましい。また、第1風車21および第2風車22で発電した電力を外部に送電する場合は、接続部53にスリットリングが備えられていることが好ましい。

【0056】
係留索55は、係留浮体51を水底に対して繋ぎ止める部材である。係留索55の一方の端部は係留索支持体512に連結されている。係留索55の他方の端部には、アンカー等(図示せず)が連結されている。アンカー等が水底に投下され、水底に対して係止されることで、係留索55は、係留浮体51を水面上の一定範囲に繋ぎ止めることができる。なお、本実施形態では、係留索55は3本としたが、本数は限定されない。

【0057】
図2は、浮体式垂直軸型風車システム100の平面図である。図2に示すように、連結部材24上には、水平方向に延びる仮想の直線Lが設定されている。第1風車21および第2風車22は、連結部材24の両端付近において、仮想の直線L上に配列されている。風車列10の第1端部101と第2端部102の間であって、かつ仮想の直線L上に回転中心位置CPが設定されている。本実施形態では、回転中心位置CPは、風車列10の重心位置に設定されている。係留装置50の接続部53は、回転中心位置CPにおいて連結部材24に接続されている。第1風車21の翼212の回転方向は、平面視で時計回りであるのに対し、第2風車22の翼222の回転方向は平面視で反時計回りである。

【0058】
[動作]
続いて、浮体式垂直軸型風車システム100が海洋等に設置され、風向が変化した場合における浮体式垂直軸型風車システム100の動作について説明する。図3から図7は、浮体式垂直軸型風車システム100の動作を示す平面図である。

【0059】
図3は、浮体式垂直軸型風車システム100が、前方から後方に向かう風W1を受けている状態を示している。風車列10は、風W1に対して直交する状態、すなわち風車列10が風W1に正対する状態となっている。

【0060】
この状態では、風W1を受けることによって第1風車列11に生じる風圧力F11と、第2風車列12に生じる風圧力F12は大きさが等しい。このため、風圧力F11によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM11と、風圧力F12によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM12は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0061】
また、第1風車21および第2風車22は互いに干渉を受けずに風W1を受けており、第1風車21および第2風車22の各翼212,222は同等の速度で反対方向に回転している。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクT11と、第2風車22の回転によって生じる反トルクT12は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0062】
よって、風車列10は、図3の状態では、回転中心位置CPまわりに回転することなく、風W1に正対する状態が維持される。

【0063】
図4は、図3の風W1から風向が変化し、浮体式垂直軸型風車システム100が、左斜め前方から右斜め後方に向かう風W2を受けた状態を示している。

【0064】
この状態では、風W2を受けることによって第1風車列11に生じる風圧力F21と、第2風車列12に生じる風圧力F22は大きさが等しい。このため、風圧力F21によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM21と、風圧力F22によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM22は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0065】
一方、風W2に対して、第2風車22は第1風車21の風下側になっており、風下側の第2風車22は風上側の第1風車21によって乱された風を受けることになる。その結果、第2風車22は第1風車21の干渉を受け、第2風車22の各翼222の回転速度は、第1風車21の各翼212の回転速度よりも低くなる。このため、第2風車22の回転によって生じる反トルクT22は、第1風車21の回転によって生じる反トルクT21よりも小さくなり、差異が生じる。

【0066】
よって、図4の状態では、第1風車21による反トルクT21と第2風車22による反トルクT22の差異によって、回転中心位置CPまわりに、平面視で時計回りの回転モーメントが生じ、風車列10は、風W2に正対する状態になるように回転を開始する。

【0067】
図5は、図4の状態から風車列10が回転し、風車列10が風W2に対して直交する状態、すなわち風車列10が風W2に正対した状態を示している。

【0068】
この状態では、図3に示した状態と同様に、風W2を受けることによって第1風車列11に生じる風圧力F21´と第2風車列12に生じる風圧力F22´は大きさが等しい。このため、風圧力F21´によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM21´と、風圧力F22´によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM22´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0069】
また、第1風車21および第2風車22は互いに干渉を受けずに風W2を受ける状態になっており、第1風車21および第2風車22の各翼212,222は同等の速度で回転している。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクT21´と、第2風車22の回転によって生じる反トルクT22´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0070】
よって、風車列10は、図5の状態では、回転中心位置CPまわりに回転することなく、風W2に正対する状態で安定する。

【0071】
図6は、図3の風W1から風向が大きく変化し、浮体式垂直軸型風車システム100が、左斜め後方から右斜め前方に向かう風W3を受けた状態を示している。このような風向の大きな変化は、例えば、海風と陸風が入れ替わる場合などに起こり得る。この場合、図4および図5と同様の作用により、風車列10は、風W3に正対する状態で安定する(図7参照)。

【0072】
まず図6に示すように、この状態では、風W3を受けることによって第1風車列11に生じる風圧力F31と、第2風車列12に生じる風圧力F32は大きさが等しい。このため、風圧力F31によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM31と、風圧力F32によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM32は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0073】
一方、風W3に対して、第2風車22は第1風車21の風下側になっており、風下側の第2風車22は風上側の第1風車21によって乱された風を受けることになる。その結果、第2風車22は第1風車21の干渉を受け、第2風車22の各翼222の回転速度は、第1風車21の各翼212の回転速度よりも低くなる。このため、第2風車22の回転によって生じる反トルクT32は、第1風車21の回転によって生じる反トルクT31よりも小さくなり、差異が生じる。

【0074】
よって、図6の状態では、第1風車21による反トルクT31と第2風車22による反トルクT32との差異によって、回転中心位置CPまわりに、平面視で反時計回りの回転モーメントが生じ、風車列10は、風W3に正対する状態になるように回転を開始する。

【0075】
図7は、図6の状態から風車列10が回転し、風車列10が風W3に対して直交する状態、すなわち風車列10が風W3に正対した状態を示している。

【0076】
この状態では、図3および図5に示した状態と同様に、風W3を受けることによって第1風車列11に生じる風圧力F31´と第2風車列12に生じる風圧力F32´は大きさが等しい。このため、風圧力F31´によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM31´と、風圧力F32´によって生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントM32´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0077】
また、第1風車21および第2風車22は互いに干渉を受けずに風W3を受ける状態になっており、第1風車21および第2風車22の各翼212,222は同等の速度で回転している。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクT31´と、第2風車22の回転によって生じる反トルクT32´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0078】
よって、風車列10は、図7の状態では、回転中心位置CPまわりに回転することなく、風W3に正対する状態で安定する。

【0079】
このように浮体式垂直軸型風車システム100は、風W1から風W3のように風向が大きく変化した場合であっても、風車列10が風向に正対する状態となって安定する。このため、第1風車21および第2風車22が互いに干渉せずに高効率で回転し、高い発電効率を得ることができる。

【0080】
[比較例]
つぎに、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100の効果を明らかにするため、本発明とは異なる構成を有する浮体式風車システム100Xを比較例として説明する。なお、以下で説明する浮体式風車システム100Xは、本実施形態の浮体式垂直軸型風車システム100の構成を一部変更したものである。以下の説明は、浮体式風車システム100Xを従来公知の技術として説明するものではない。

【0081】
図8は、比較例に係る浮体式風車システム100Xの斜視図である。説明を簡単にするため、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100と同等の構成については、浮体式垂直軸型風車システム100と同じ符号を付して説明を省略する。

【0082】
図8に示すように、浮体式風車システム100Xの構成上の相違点は、風車列10Xの回転の中心となる回転中心CPXが、第1風車21と第2風車22を結ぶ仮想の直線LXから離れた位置にある点である。第1風車21および第2風車22を連結する連結部材24Xには、側方に突出する突出部材25Xが形成されている。突出部材25Xの自由端部に回転中心CPXが設定され、回転中心CPXに係留装置50の接続部53が接続されている。

【0083】
[比較例の動作]
続いて、浮体式風車システム100Xが海洋等に設置され、風向が変化した場合における浮体式風車システム100Xの動作について説明する。図9から図13は、浮体式風車システム100Xの動作を示す平面図である。図9から図11に示すように、浮体式風車システム100Xが、前方からの風(風W1,W2)を受けている状態では、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100と同様に、風向に対して正対するように動作する(図3から図5参照)。一方、図12および図13に示すように、浮体式風車システム100Xが、後方からの風(風W3)を受けている状態では、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100とは異なり、風向に対して安定した姿勢を維持しにくく、不安定になりやすい。この不安定性は、風車列10Xの回転の中心となる回転中心CPXが、第1風車21と第2風車22を結ぶ仮想の直線LX上に対して風上側に位置している状態で顕著になる。

【0084】
図9は、浮体式風車システム100Xが、前方から後方に向かう風W1を受けている状態を示している。風車列10Xは、風W1に対して直交する状態、すなわち風車列10Xが風W1に正対する状態となっている。

【0085】
この状態では、風W1を受けることによって第1風車列11Xに生じる風圧力f11と、第2風車列12Xに生じる風圧力f12は大きさが等しい。このため、風圧力f11によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm11と、風圧力f12によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm12は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0086】
また、第1風車21および第2風車22は互いに干渉を受けずに風W1を受けており、第1風車21および第2風車22の各翼212,222は同等の速度で反対方向に回転している。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクt11と、第2風車22の回転によって生じる反トルクt12は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0087】
図9の状態では、回転中心CPXが風車列10Xの仮想の直線LXに対して風上側に位置しているため、風向に対する風車列10Xの姿勢は、安定しやすい。よって、風車列10Xは、図9の状態では、回転中心CPXまわりに回転することなく、風W1に正対する状態が維持される。

【0088】
図10は、図9の風W1から風向が変化し、浮体式風車システム100Xが、左斜め前方から右斜め後方に向かう風W2を受けた状態を示している。

【0089】
この状態では、風W2を受けることによって第1風車列11Xに生じる風圧力f21と、第2風車列12Xに生じる風圧力f22は大きさが等しい。このため、風圧力f21によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm21と、風圧力f22によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm22は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0090】
一方、風W2に対して、第2風車22は第1風車21の風下側になっており、風下側の第2風車22は風上側の第1風車21によって乱された風を受けることになる。その結果、第2風車22は第1風車21の干渉を受け、第2風車22の各翼222の回転速度は、第1風車21の各翼212の回転速度よりも低くなる。このため、第2風車22の回転によって生じる反トルクt22は、第1風車21の回転によって生じる反トルクt21よりも小さくなり、差異が生じる。

【0091】
よって、図10の状態では、第1風車21による反トルクt21と第2風車22による反トルクt22の差異によって、回転中心CPXまわりに、平面視で時計回りの回転モーメントが生じ、風車列10Xは、風W2に正対する状態になるように回転を開始する。

【0092】
図11は、図10の状態から風車列10Xが回転し、風車列10Xが風W2に対して直交する状態、すなわち風車列10Xが風W2に正対した状態を示している。

【0093】
この状態では、図9に示した状態と同様に、風W2を受けることによって第1風車列11Xに生じる風圧力f21´と第2風車列12Xに生じる風圧力f22´は大きさが等しい。このため、風圧力f21´によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm21´と、風圧力f22´によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm22´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0094】
また、第1風車21および第2風車22は互いに干渉を受けずに風W2を受ける状態になっており、第1風車21および第2風車22の各翼212,222は同等の速度で回転している。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクt21´と、第2風車22の回転によって生じる反トルクt22´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0095】
図11の状態では、回転中心CPXが風車列10Xの仮想の直線LXに対して風上側に位置しているため、風向に対する風車列10Xの姿勢は、安定しやすい。よって、風車列10Xは、図11の状態では、回転中心CPXまわりに回転することなく、風W2に正対する状態で安定する。

【0096】
図12は、図9の風W1から風向が大きく変化し、浮体式風車システム100Xが、左斜め後方から右斜め前方に向かう風W3を受けた状態を示している。このような風向の大きな変化は、例えば、海風と陸風が入れ替わる場合などに起こり得る。図12の状態では、図9から図11の状態と異なり、回転中心CPXが風車列10Xの仮想の直線LXに対して風下側に位置しており、風車列10Xの風向に対する姿勢が不安定化しやすい。このため、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100とは異なり、浮体式風車システム100Xは風向に対して安定した姿勢を維持しにくく、不安定になりやすい。

【0097】
まず図12に示す状態では、風W3を受けることによって第1風車列11Xに生じる風圧力f31と、第2風車列12Xに生じる風圧力f32は大きさが等しい。このため、風圧力f31によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm31と、風圧力f32によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm32は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0098】
一方、風W3に対して、第2風車22は第1風車21の風下側になっており、風下側の第2風車22は風上側の第1風車21によって乱された風を受けることになる。その結果、第2風車22は第1風車21の干渉を受け、第2風車22の各翼222の回転速度は、第1風車21の各翼212の回転速度よりも低くなる。このため、第2風車22の回転によって生じる反トルクt32は、第1風車21の回転によって生じる反トルクt31よりも小さくなり、差異が生じる。

【0099】
よって、図12の状態では、第1風車21による反トルクt31と第2風車22による反トルクt32の差異によって、回転中心CPXまわりに、平面視で反時計回りの回転モーメントが生じ、風車列10Xは、風W3に正対する状態になるように回転を開始する。

【0100】
しかしながら、風車列10Xの不安定性があるため、風車列10Xは、風W3に対して正対する位置まで回転しても安定せず、正対する位置を越えるまで回転する。図13は、図12の状態から風車列10Xが回転し、風車列10Xが風W3に対して正対する位置を超えている状態を示している。

【0101】
この状態では、図12に示した状態と逆の状態になっている。風W3を受けることによって第1風車列11Xに生じる風圧力f31´と第2風車列12Xに生じる風圧力f32´は大きさが等しい。このため、風圧力f31´によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm31´と、風圧力f32´によって生じる回転中心CPXまわりの回転モーメントm32´は、大きさが等しく反対向きであるため、相殺される。

【0102】
一方、風W3に対して、第1風車21は第2風車22の風下側になっており、風下側の第1風車21は風上側の第2風車22によって乱された風を受けることになる。その結果、第1風車21は第2風車22の干渉を受け、第1風車21の各翼212の回転速度は、第2風車22の各翼222の回転速度よりも低くなる。このため、第1風車21の回転によって生じる反トルクt31´は、第1風車21の回転によって生じる反トルクt32´よりも小さくなり、差異が生じる。

【0103】
よって、図13の状態では、第1風車21による反トルクt31´と第2風車22による反トルクt32´の差異によって、回転中心CPXまわりに、平面視で時計回りの回転モーメントが生じ、風車列10Xは、風W3に正対する状態になるように回転を開始する。しかしながら、風車列10Xの不安定性により、風車列10Xは、風W3に対して正対する位置を超えるまで回転してしまい、図12に示す状態に戻る。そして、図12の状態と図13の状態を繰り返す不安定な状態になりやすい。

【0104】
このように浮体式風車システム100Xでは、風W1から風W3のように風向が大きく変化し、回転中心CPXが仮想の直線LX上に対して風上側に位置する状態になった場合には、風車列10Xが風向に対して安定した姿勢を維持できず、不安定な動作を繰り返しやすくなる。この状態では、第1風車21および第2風車22が互いに干渉し、高効率で回転させることができないため、発電効率が低下することとなる。

【0105】
[設置に要する水域面積]
図14Aは、本実施形態に係る浮体式垂直軸型風車システム100の移動範囲を示す平面図である。図14Aは、浮体式垂直軸型風車システム100の風車列10が回転中心位置CPを中心として回転した場合の移動範囲100ARを示している。図14Bは、比較のため、上述した浮体式風車システム100Xの風車列10Xが回転中心CPXを中心として回転した場合の移動範囲100XARを示している。

【0106】
図14Aに示すように、浮体式垂直軸型風車システム100は、第1風車21、第2風車22、および回転中心位置CPが仮想の直線L上に配置されているため、移動範囲100ARは小さくなっている。一方、浮体式風車システム100Xは、第1風車21、第2風車22、および回転中心CPXが仮想の直線Lから離れた位置にあるため、移動範囲100XARは、移動範囲100ARより大きくなっている。

【0107】
浮体式垂直軸型風車システム100が受ける風向が変化した場合には、風車列10は移動範囲100ARの範囲で移動する可能性がある。このため、浮体式垂直軸型風車システム100を複数設置する場合や、他の構造物(例えば、風力発電による電力を必要とする洋上施設)に隣接して設置する場合には、移動範囲100ARに他の浮体式垂直軸型風車システム100や構造物が干渉しないようにする必要がある。

【0108】
浮体式垂直軸型風車システム100は、移動範囲100ARが小さいため、浮体式垂直軸型風車システム100を複数設置する場合には、浮体式垂直軸型風車システム100を設置する密度を高くして、浮体式垂直軸型風車システム100を設置するのに必要な水域面積を小さくすることができる。また、他の構造物等に隣接して浮体式垂直軸型風車システム100を設置する場合には、浮体式垂直軸型風車システム100を他の構造物等に近接させることができ、浮体式垂直軸型風車システム100を設置するのに必要な水域面積を小さくすることができる。

【0109】
[実施形態1の効果]
複数の垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)が浮体30(第1支持浮体31および第2支持浮体32)によって水面上に支持された風車列10は、回転中心位置CPで回転可能に一点係留されている。回転中心位置CPは、風車列10が風向に対して直交する状態、すなわち風車列10が風に正対する状態で、回転中心位置CPまわりの回転モーメントが相殺されるように設定されている。風車列10が風向に正対している状態から風向のみが変化した場合には、風車列10の第1端部101側に生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントと、風車列10の第2端部102側に生じる回転中心位置CPまわりの回転モーメントに差異が生じ、回転中心位置CPまわりの回転モーメントが不釣り合いの状態となる。これにより、風車列10は、回転中心位置CPまわりの第1端部101側と第2端部102側の回転モーメントが釣り合って相殺される状態、すなわち、風向に対して正対する状態まで回転する。
また、風車列10は、回転中心位置CPにおいて回転可能に一点係留されているため、風向の変化が大きい場合であっても、風車列10は、風向の変化に対応して風向に正対するように回転する。
このため、駆動力や制御機構を用いることなく、風車列10を風向に正対する状態を保つことができ、複数基の垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)同士の干渉を抑制することができる。

【0110】
また、風車列10は、回転中心位置CPにおいて回転可能に一点係留されているため、風車列10の回転範囲は回転中心位置CPを中心とする円内となり、浮体式垂直軸型風車システム100の設置に必要な水域面積を抑制することができる。

【0111】
また、係留装置50と風車列10は回転可能に連結されているため、係留装置50は風車列10の回転に影響を与えにくい。このため、係留装置50を簡易な構成とすることができ、浮体式垂直軸型風車システム100の設置コストを抑制することができる。

【0112】
回転中心位置CPに対して第1風車列11と第2風車列12の側面積が同等であるため、風車列10に風が作用した場合に、第1風車列11と第2風車列12に作用する風圧が同等となり、風車列10を風向に対して正対させやすくなる。

【0113】
風車列10を構成する第1風車列11と第2風車列12は、回転中心位置CP(重心位置)に対して対称であるため、風車列10に風が作用した場合に、第1風車列11と第2風車列12に作用する風圧が同等となって、風車列10を風向に対して正対させやすくなる。また、第1風車列11および第2風車列12を構成する垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)の翼212,222の回転方向を互いに反対方向にすることにより、翼212,222の回転によって発生する回転モーメントを利用して、風車列10を風向に対して正対させやすくなる。

【0114】
複数の垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)は、垂直軸型風車20(第1風車21および第2風車22)ごとに設けられた浮体30(第1支持浮体31および第2支持浮体32)によって水面上に支持される。このため、風車列10を容易に構成することができる。また、多数の垂直軸型風車20を用いる場合や、垂直軸型風車20の設置数を増加させる場合でも、容易に対応することができる。

【0115】
係留装置50に設けられた係留浮体51に対して風車列10が係留されるため、係留装置50を設置した後に風車列10を係留することが容易となり、係留装置50を設置した状態のまま、風車列10を分離することも可能となる。このため、浮体式垂直軸型風車システム100の設置およびメンテナンスが容易となる。

【0116】
[変形例]
本発明に係る浮体式垂直軸型風車システムは、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、浮体式垂直軸型風車システムを構成する垂直軸型風車、浮体、および係留装置等の形状、基数、配置等は、本実施形態に限定されない。

【0117】
図15に示す浮体式垂直軸型風車システム100Aは、風車列10Aに4基の垂直軸型風車20を備えている。4基の垂直軸型風車20は、支持部材26に支持されている。支持部材26は、2基の浮体30Aに支持されている。

【0118】
この場合、複数の垂直軸型風車20が共通の支持部材26に設置され、支持部材26が浮体30Aに支持されるため、垂直軸型風車20の数(4基)に対して浮体30Aの設置数(2基)を減らすことができ、浮体式垂直軸型風車システム200の構成を簡易にすることができる。

【0119】
また、図16に示す浮体式垂直軸型風車システム100Bは、垂直軸型風車20を搭載した浮体30が4基設けられており、これらが連結部材24で連結されている。この構成によれば、多数の垂直軸型風車20を用いる場合や、垂直軸型風車20の設置数を増加させる場合でも、容易に対応することができる。

【0120】
上記実施形態の説明では、複数の垂直軸型風車21,22の配列として、各回転軸211,221が仮想の直線L上に配列される場合を説明したが、これに限定されない。本発明における複数の垂直軸型風車は、実質的に仮想の直線上に配列されればよく、例えば、図17に示すように、各風車(21C,22C,23C,24C)の翼の回転半径内に仮想の直線Lが通るように各風車(21C,22C,23C,24C)が配列されていればよい。翼の回転半径内に仮想の直線が通るように各風車が配列されていれば、複数の垂直軸型風車は、実質的に仮想の直線上に配列されているといえる。

【0121】
また、上記実施形態の説明では、回転中心位置CPが仮想の直線L上であって風車列の重心位置に設定される場合を説明したが、これに限定されない。本発明における回転中心位置は、仮想の直線上またはその近傍であって、風車列に作用する風に対して直交する状態で、回転中心位置まわりの回転モーメントが相殺されるように設定される。このため、回転中心位置CPが風車列の流体力中心に設定されるようにしてもよい。風車列の流体力中心は、例えば、図17に示すように、浮体(31C,32C,33C,34C)の接線のうち、仮想の直線Lから最も離れた2本の接線(直線CPL1および直線CPL2)で挟まれる範囲内に存在しうる。

【0122】
各風車と浮体の組み合わせについての流体力中心(風車が空気から受ける力と、浮体が受ける流体力(空気および水から受ける力)との合力の中心)は、平面視で少なくとも浮体上に存在する。このため、風車列の流体力中心は、直線CPL1および直線CPL2で挟まれる範囲内に存在する。

【0123】
すなわち、平面視における各風車の空力中心(空気から受ける力の中心)は、風車の機械的および構造的なバラつきによって必ずしも回転軸上ではないが、少なくとも各風車の翼の回転半径内に存在する。また、平面視における浮体の流体力中心(喫水線より上の部分が空気から受ける力と、喫水線以下の部分が水から受ける力の合力の中心)も浮体の構造的なバラつきによって必ずしも浮体の中心ではないが、少なくとも浮体上に存在する。このため、各風車と浮体の組み合わせについての流体力中心(風車が空気から受ける力と、浮体が空気および水から受ける流体力との合力の中心)も、少なくとも浮体上に存在し、風車列の流体力中心も直線CPL1および直線CPL2で挟まれる範囲内に存在する。このため、風車列に作用する風に対して直交する状態で、回転モーメントが相殺されるように設定される回転中心位置CPは、仮想の直線Lから最も離れた浮体の接線で挟まれた領域内に存在する、流体力中心に設定することができる。

【0124】
なお、回転中心位置CPが風車列の仮想の直線L上でなくとも、仮想の直線Lの近傍に設定されれば、浮体式垂直軸型風車システムの設置に必要な水域面積の増大は抑制される。例えば、仮想の直線Lから回転中心位置CPまでの距離が風車列の全長の5%である場合、水域面積の増大率は、仮想の直線L上に回転中心位置CPが設定された場合と比較して、1%の増大であり、設置に必要な水域面積の増大は抑制されている。

【0125】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、複数の垂直軸型風車を備えた浮体式垂直軸型風車システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0127】
100 浮体式垂直軸型風車システム
10 風車列
20 垂直軸型風車
21 第1風車
22 第2風車
24 連結部材
30 浮体
31 第1支持浮体
32 第2支持浮体
50 係留装置
51 係留浮体
53 接続部
55 係留索
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
16
【図17】
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