TOP > 国内特許検索 > 流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法 > 明細書

明細書 :流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法
国際特許分類 B01J  13/04        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI B01J 13/04
B01J 19/00 321
G01N 37/00 101
国際予備審査の請求
全頁数 31
出願番号 特願2019-512582 (P2019-512582)
国際出願番号 PCT/JP2018/015550
国際公開番号 WO2018/190423
国際出願日 平成30年4月13日(2018.4.13)
国際公開日 平成30年10月18日(2018.10.18)
優先権出願番号 2017080118
優先日 平成29年4月13日(2017.4.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】渡慶次 学
【氏名】真栄城 正寿
【氏名】佐藤 悠介
【氏名】原島 秀吉
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 4G005
4G075
Fターム 4G005AA07
4G005BA20
4G005BB08
4G005CA01
4G005DC56Z
4G005EA03
4G075AA27
4G075AA39
4G075BB01
4G075BB05
4G075BB10
4G075BD07
4G075BD15
4G075BD24
4G075DA18
4G075EB50
要約 例えば、ドラッグデリバリーシステムにおけるナノサイズのキャリアとして有用である脂質粒子ないしミセルを粒径制御性高く製造する流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法が提供される。当該流路構造体は、原料溶液を流すマイクロサイズの流路に所定幅の構造子(バッフル)を両側面より互い違いに複数配置したような二次元的構造の流路構造体である。
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノサイズの脂質粒子ないしミセルを形成するための流路構造体であって、当該流路構造体は、その上流側において、互いに独立した、第1の流動体を導入する第1導入路と、第2の流動体を導入する第2導入路とが、それぞれ一定長を有して合流し、その下流側に向かって1つの希釈流路を形成しており、
前記希釈流路は、少なくともその一部において二次元的に屈曲した流路部位を有し、
当該屈曲した流路部位は、これより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されていることを特徴とする流路構造体。
【請求項2】
前記流路幅y0が、20~1000μm、各構造子の幅x1,x2...が、20~1000μmで、各構造子間の間隔がd1,d2...20~1000μmである請求項1に記載の流路構造体。
【請求項3】
前記構造子が10~100個設けられているものである請求項1または2に記載の流路構造体。
【請求項4】
前記第1導入路と前記第2導入路との合流点より最初の構造子の上流側端部までの距離が、この間を流れる設定速度の希釈流体が0.1秒以下で通過するように、希釈流体の設定速度に応じて規定されているものである請求項1~3のいずれか1つに記載の流路構造体。
【請求項5】
前記第1導入路および/または前記第2導入路として、それぞれ複数の流路が設けられているものである請求項1~4のいずれか1つに記載の流路構造体。
【請求項6】
前記略Y方向が、流路方向(X方向)に対して40~140°の角度で交差する方向である請求項1~5のいずれか1つに記載の流路構造体。
【請求項7】
第1の流動体を導入する第1導入路と、第2の流動体を導入する第2導入路とのいずれか一方が、その上流側に位置する前処理用流路に接続されており、この前処理用流路が、請求項1~6において規定される流路構造体と同様の構造を有しているものであることを特徴とする請求項1~6に記載の流路構造体。
【請求項8】
脂質溶液または両親媒性物質溶液を希釈媒体で流路構造体中にて希釈することによってナノサイズの脂質粒子ないしミセルを形成する脂質粒子ないしミセル形成方法であって、前記流路構造体として請求項1~7のいずれか一つに記載のものを用い、この流路構造体の第1導入路および第2導入路の一方より脂質溶液または両親媒性物質溶液を、他方より希釈溶媒を、総流量1μl/分~100ml/分となるように導入することを特徴とする脂質粒子ないしミセル形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法に関するものである。詳しく述べると、本発明は、例えば、ドラッグデリバリーシステムにおけるナノサイズのキャリアとしての脂質粒子ないしは両親媒性高分子等のミセルを粒径制御性高く製造する流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセル形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のためのナノキャリアとして最も実用化が進んでおり、すでに臨床応用されている。最近、ナノキャリアの粒径によって癌組織への薬剤の送達効率が異なることが明らかとなった。また、キャリアの粒径によって臓器への送達効率が異なるため、このような脂質ナノ粒子における粒径制御の重要性はますます増加している。しかし、脂質ナノ粒子の調製法として従来知られる押出法や超音波処理では、例えば、癌組織等といった組織への送達効率が高いとされている粒径約10~100nmの脂質ナノ粒子をこの粒径範囲内の任意のサイズでばらつき少なく精密に作製することは困難である。
【0003】
一方で、マイクロデバイスは精密に粒径制御された脂質ナノ粒子を作製できることが報告されている(非特許文献1~4)。しかし、これまでに報告されているマイクロデバイスは、三次元ミキサー構造を用いているため、マイクロデバイス自体の作製ないし加工が困難である。また、作製できる粒径範囲が狭いため、より粒径制御性が高い脂質ナノ粒子形成システムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】“A Strategy for Synthesis of Lipid Nanoparticles Using Microfluidic Devices with a Mixer Structure”, M. Maeki, T. Saito, Y. Sato, T. Yasui, N. Kaji, A. Ishida, H. Tani, Y. Baba, H. Harashima, and M. Tokeshi, RSC Advances, 5, 46181, (2015).
【非特許文献2】“Elucidation of the Pysicochemical Properties and Potency of siRNA-Loaded Small-Sized Lipid Nanoparticles for siRNA Delivery”, Y. Sato, Y. Note, M. Maeki, N. Kaji, Y. Baba, M. Tokeshi, and H. Harashima, Journal of Controlled Release, 229, 48, (2016).
【非特許文献3】“Bottom-Up Design and Synthesis of Limit Size Lipid Nanoparticle Systems with Aqueous and Triglyceride Cores Using Millisecond MicrofluidicMixing”, I. V. Zhigaltsev, N. Belliveau, I. Hafez, A. K. K. Leung, C. Hansen, and P. R. Cullis, Langmuir, 38, 3633, (2012).
【非特許文献4】“Rapid Discovery of Protein siRNA-Containing Lipid Nanoparticles Enabled by Controlled Microfluidic Formation”, D. Chen, K. T. Love, Y. Chen, A. A. Eltoukhy, C. Kastrup, G. Sahay, A. Jeon, Y. Dong, K. A. Whitehead, andD. G. Anderson, Journal of the American Chemical Society, 134, 6948, (2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上記したような技術的課題を解決する流路構造体およびこれを用いた脂質粒子形成方法を提供することを課題とするものである。本発明はまた、例えば、ドラッグデリバリーシステムにおけるナノサイズのキャリアとしての脂質粒子ないしは両親媒性高分子等のミセルを粒径制御性高く製造する流路構造体およびこれを用いた脂質粒子ないしミセルの形成方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記したように、従来のマイクロデバイスでは、三次元ミキサー構造によって、カオス的移流を生じさせて原料溶液を混合することでナノサイズの脂質粒子を形成しているが、そのため、原料溶液の流体挙動の制御が困難であり、作成できる粒径の範囲も狭い。このような技術背景のもとに本発明者らは鋭意検討および研究を重ねた結果、目的のナノサイズの脂質粒子を精密に作製するために、原料溶液を流すマイクロサイズの流路にバッフル(邪魔板)を両側面より互い違いに配置したような単純な二次元的構造の流路構造体によるナノサイズの脂質粒子形成システムを着想した。マイクロサイズの流路の流路幅に対して一定幅のバッフルを設置するものである。従来の三次元ミキサー構造とは異なり、このような、二次元的なマイクロ流路での混合及び希釈は、分子拡散に依存するものとなる。従って、バッフルの幅や長さ、配置を調整することによって、原料溶液の希釈速度を制御することができ、従来よりも粒径制御性が高いナノサイズの脂質粒子形成システムを形成できることを見出した。さらに脂質粒子に限られず、例えば両親媒性ブロック共重合体などの高分子を用いても同様に粒径制御性高くナノサイズのミセルを形成できることも確認し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、ナノサイズの脂質粒子ないしミセルを形成するための流路構造体であって、当該流路構造体は、その上流側において、互いに独立した、第1の流動体を導入する第1導入路と、第2の流動体を導入する第2導入路とが、それぞれ一定長を有して合流し、その下流側に向かって1つの希釈流路を形成しており、
前記希釈流路は、少なくともその一部において二次元的に屈曲した流路部位を有し、
当該屈曲した流路部位は、これより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る流路構造体においては、前記流路幅y0が、20~1000μm、各構造子の幅x1,x2...が、20~1000μmで、各構造子間の間隔d1,d2...が20~1000μmである態様が含まれる。
【0009】
また本発明に係る流路構造体においては、構造子が10~100設けられているものであるである態様が含まれる。
【0010】
さらに本発明に係る流路構造体においては、第1導入路と第2導入路との合流点より最初の構造子の上流側端部までの距離が、この間を流れる設定速度の希釈流体が0.1秒以下で通過するように、希釈流体の設定速度に応じて規定されている態様が含まれる。
【0011】
さらに本発明に係る流路構造体においては、前記第1導入路および/または前記第2導入路として、それぞれ複数の流路が設けられている態様が含まれる。
【0012】
さらに本発明に係る流路構造体においては、前記略Y方向が、流路方向(X方向)に対して40~140°の角度で交差する方向である態様が含まれる。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、ナノサイズの脂質粒子ないしミセルを形成するための流路構造体であって、当該流路構造体は、その上流側において、互いに独立した、第1の流動体を導入する第1導入路と、第2の流動体を導入する第2導入路とが、それぞれ一定長を有して合流し、その下流側に向かって1つの希釈流路を形成しており、
前記希釈流路は、少なくともその一部において二次元的に屈曲した流路部位を有し、
当該屈曲した流路部位は、これより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記課題を解決する本発明は、また、脂質溶液または両親媒性物質溶液を希釈媒体で流路構造体中にて希釈することによってナノサイズの脂質粒子ないしミセルを形成する脂質粒子ないしミセル形成方法であって、前記流路構造体として、上流側において互いに独立した第1導入路と第2導入路とがそれぞれ一定長を有して合流し、その下流側に向かって1つの希釈流路を形成しており、前記希釈流路は、少なくともその一部において二次元的に屈曲した流路部位を有し、当該屈曲した流路部位は、これより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されているものであることを特徴するものを用い、この流路構造体の第1導入路および第2導入路の一方より脂質溶液または両親媒性物質溶液を、他方より希釈溶媒を、総流量1μl/分~100ml/分となるように導入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る流路構造体を用いて、脂質粒子ないしミセルを形成することによって、粒径が例えば約10~100nmの粒径範囲内の任意のサイズでばらつき少なく精密に作製することが可能となり、効率的なドラッグデリバリーシステム(DDS)のためのナノキャリアとして有用な脂質粒子ないしミセルを提供することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、脂質粒子の生成原理を説明する概要図である。
【図2】は、本発明に係る流路構造体の一実施形態における構造を模式的に示す図面である。
【図3】は、本発明に係る流路構造体の別の一実施形態における構成例を模式的に示す図面である。
【図4】は、実施例において得られた、流路構造体の構造子の数と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図5】は、実施例において得られた、流路構造体の構造子間の間隔と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図6】は、実施例において得られた、流路構造体の構造子の高さと形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図7】は、実施例において得られた、流路構造体の構造子の幅と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図8】は、実施例において用いられた流路構造体における、構造子の配置を模式的に示す図面である。
【図9】は、実施例において用いられた流路構造体における、構造子の配置と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図10】は、実施例において用いられた流路構造体における、構造子の効果を示すシミュレーション結果を示すものである。
【図11】は、実施例において用いられた流路構造体における、溶液合流地点から最初の構造子の上流側端部までの距離を説明する図面である。
【図12】は、実施例において用いられた流路構造体における、溶液合流地点から最初の構造子の上流側端部までの距離と得られる脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図13】は、本発明に係る脂質粒子形成方法によって得られたナノサイズの脂質粒子のin vivo実験評価の概要を説明する図面である。
【図14】は、本発明に係る脂質粒子形成方法によって得られたナノサイズの脂質粒子を用いたin vivo実験での脂質粒子肝実質細胞における遺伝子ノックダウン活性を示すグラフである。
【図15】は、本発明に係る脂質粒子形成方法によって得られたナノサイズの脂質粒子を用いたin vivo実験での肝臓内在観察の結果を示す顕微鏡写真図である。
【図16】(a)は実施例において用いられた流路構造体の構造を模式的に示す図であり、(b)はこれにより得られた構造と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフ、(c)はこれにより得られた構造と形成された脂質粒子の粒径分布との関係を示すグラフである。
【図17】(a)は実施例において用いられた流路構造体の構造を模式的に示す図であり、(b)、(c)はこれにより得られた構造と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図18】(a)は実施例において用いられた流路構造体の構造を模式的に示す図であり、(b)、(c)はこれにより得られた構造と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図19】実施例において得られた、流路構造体の流体導入路の数と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図20】実施例において得られた、流路構造体の流体導入路の数ならびに構造子の形状および配置と形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図21】は、実施例において用いられた流路構造体における、流量の違いによる構造子の効果を示すシミュレーション結果を示すものである。
【図22】は、実施例において用いられた流路構造体における、導入路の数の違いによる効果を示すシミュレーション結果を示すものである。
【図23】実施例において得られた、流路構造体の深さと形成された脂質粒子の粒径との関係を示すグラフである。
【図24】実施例において得られた、流量の違いと形成された高分子ミセルの粒径との関係を示すグラフである。
【図25】(a)は実施例において用いられた流路構造体の構造を模式的に示す図であり、(b)はこれにより得られた核酸ポリカチオン複合体を封入した脂質粒子の粒径と流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下においては本発明を脂質粒子(リポソーム)を形成する場合を中心として本発明を説明するが、特に断りのない限り、以下に詳述する内容は、例えば両親媒性ブロック共重合体のような、同一分子内に溶媒可溶部と不溶部をもつ両親媒性分子を構成単位とし、不溶部のファンデルワールス力がドライビングフォースとなって、各種両親媒性分子のミセルを形成する場合に関しても、同様に適用可能であることが理解されるべきである。

【0017】
流路構造体
はじめに本発明の流路構造体について説明する。
本発明の流路構造体は、概略的に述べれば、原料溶液を流すマイクロサイズの流路に一定幅の略矩形状の構造子(バッフル)を両側面より互い違いに配置したような二次元的構造の流路構造体である。従来の三次元ミキサー構造とは異なり、このような、二次元的なマイクロ流路での希釈は、分子拡散に依存するものとなる。すなわち、図1に示すように、原料となる脂質溶液の希釈速度が速いほど生成する脂質粒子のサイズが小さいものとなる。従って、構造子(バッフル)の幅や長さ、配置を調整することによって、原料溶液の希釈速度を制御することができ、従来よりも粒径制御性が高いナノサイズの脂質粒子を形成することが可能である。

【0018】
すなわち、本発明に係る流路構造体は、ナノサイズの脂質粒子ないしは両親媒性高分子等の両親媒性物質のミセル(以下、「脂質粒子ないしは両親媒性物質のミセル」を簡略化のために単に「脂質粒子」とのみ表記する場合がある。)を形成するための流路構造体であって、例えば、図2に模式的に示すように、その上流側(図面左側)おいて、互いに独立した、第1の流動体を導入する第1導入路10と、第2の流動体を導入する第2導入路20とが、それぞれ一定長を有して合流し、その下流側に向かって1つの希釈流路30を形成しており、前記希釈流路30は、少なくともその一部において二次元的に屈曲した流路部位50を有し、当該屈曲した流路部位50は、これより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子40が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されているものである。すなわち、前記構造子40が存在する部位においては、X方向において一定長さx1,x2...の間、希釈流路の流路幅y1,y2...が1/2y0以下、特に1/2y0以下1/40y0以上に規制されることとなる。

【0019】
なお、本発明に係る流路構造体は、概念的には、図2に例示し上記に説明したように、マイクロサイズの流路に略矩形形のバッフルを両側面より互い違いに配置したような形状であるが、実際上では、このように流路上に別体的なバッフルを配置することによって構成されるものに限られるものではない。すなわち、このようなバッフルを配置することで形成される流路に相応するように同様な形状の流路が形成される限り、構造子40の構成としては特に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、前記したような構造子40を構成するように、流路構造体の壁面を(ほぼ一定肉厚を保ちながら)所定形状に屈曲させつつ、一体的に形成して、前記に規定したような屈折し縮拡する二次元構造の流路形状を構成するものであっても良く、本発明に係る流路構造体には、当然にこのような態様が含まれるものである。図3に示すような構成は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、金属ないしガラス質材料等を用いた射出成型、注型成形、三次元プリンターを用いた成型等によって比較的容易に形成し得るものである。

【0020】
本発明に係る流路構造体において、上記したように構造子40を、希釈流路の両側壁面より交互に互い違いに配置した形状として屈曲した流路部位50を形成することが、脂質溶液ないし両親媒性物質溶液(以下、「脂質溶液ないしは両親媒性物質溶液」を簡略化のために単に「脂質溶液」とのみ表記する場合がある。)の希釈溶媒での希釈効率を高め所望の粒径制御されたナノサイズの脂質粒子ないしミセルを得る上で重要である。例えば、本発明に係るこのような構造子40の配置に似たような形状として、例えば、図8に示すように、(1)同様の高さを有するが幅の大きい単一の構造子40を片側壁面側に設けたような形状、(2)同様の高さを有する構造子40を片側壁面側のみに複数設けたような形状、(3)構造子40を両壁面側に複数設けるがそれぞれが対称に配置され、各構造子の高さが約半分であるような形状などが考えられるが、これらの形態においては、本発明に係る流路構造体における屈曲した流路部位50と比較すると流路構造がより単純となるためか短時間で十分な分子拡散が進まず所望の粒径制御されたナノサイズの脂質粒子を得ることができないものである。

【0021】
第1導入路10と第2導入路20が合流した後の希釈流路30の流路幅y0は、形成しようとするナノサイズの脂質粒子の粒径の大きさによっても、ある程度左右されるが、代表的には20~1000μm程度、より好ましくは100~200μm程度とされることが好ましい。所望するナノサイズ、具体的には例えば約10~100nmの粒径範囲内のサイズの粒径の脂質粒子を得る上では、上記したような範囲内の流路幅y0で脂質溶液を希釈媒体で希釈することがある程度必要な条件である。

【0022】
次に本発明に係る流路構造体において、実質的な分子拡散の場を提供する屈曲した流路部位50を形成するために複数配置される当該構造子40の数としては、得ようとする脂質粒子の大きさや、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)、幅(X方向長さ)x1,x2...、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...等のその他の条件によっても左右されるが、少なくとも2つ以上、好ましくは10個以上、より好ましくは10~100個程度であることが所期のサイズの脂質粒子を生成可能となることから、望ましい。なお、構造子40の数としては、所定の粒子サイズの脂質粒子を形成するという観点からすると、その上限値に特に限定はなく、原理的には例えば、1000個以上とかさらには10000個以上であるといった数でも、同様な所定の粒子サイズの脂質粒子を形成することが可能である。しかし、その数が極端に多いと、原料を流す際の流体抵抗が大きくなることや流路構造体の作製コスト等がかさむことなどの観点からはあまり現実的ではない。

【0023】
また、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)としては、それより上流側における希釈流路30の流路幅y0に対して1/2y0以上1y0未満、好ましくは1/2y0以上39/40y0以下、さらに好ましくは1/2y0以上3/4y0以下のものとされ、当該各構造子40が存在することにより、それより上流側における希釈流路30の流路幅y0から、流路幅y1,y2...を1/2y0未満で0よりも大きい幅に縮小させるものとされる。なお、屈曲した流路部位50において複数設けられる当該構造子40のそれぞれの高さh1、h2...は、必ずしも同一なものである必要はなく、上記した所定の条件を満たす限り、それぞれ異なるものであっても良い。これによって形成される流路幅y1,y2...もそれぞれ異なるものであっても良い。例えば、下流方向に行くに従って、各構造子40のそれぞれの幅h1、h2...が漸次長くなり、流路幅y1,y2...が狭められるような態様であっても良い。各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)が所定のものであって、これらの存在する部位の流路幅y1,y2...が1/2y0未満の幅に絞られることで、分子拡散の効率が向上する。

【0024】
得ようとする脂質粒子の大きさや、構造子40の数、各ミキサー構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...等のその他の条件によっても左右され、特に限定されるものでもないが、具体的には例えば、上流の希釈流路の流路幅y0が200μmであった場合に、当該構造子40のそれぞれの高さh1、h2...は100μm~200μm未満とされることが望ましい。従って、各構造子40が存在する位置での流路幅y1,y2...、は、1/2y0未満で0よりも大きい幅である、100μm未満程度とされる。

【0025】
また、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、としては、得ようとする脂質粒子の大きさや、構造子40の数、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...等のその他の条件によっても左右されるが、上流の希釈流路の流路幅y0に対し、1/10y0以上5y0以下程度の長さとされることが好ましい。具体的には例えば、上流の希釈流路の流路幅y0が、20~1000μm、代表的には200μmであった場合に、当該構造子40のそれぞれの幅x1,x2...は20μm~1000μm程度とされることが望ましい。各構造子40のそれぞれの幅x1,x2...は、必ずしも同一なものである必要はなく、上記した所定の条件を満たす限り、それぞれ異なるものであっても良い。例えば、下流方向に行くに従って漸次幅x1,x2...が長くなるような態様であっても良い。

【0026】
また、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...としては、得ようとする脂質粒子の大きさや、構造子40の数、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、等のその他の条件によっても左右されるが、上流の希釈流路の流路幅y0に対し、1/10y0以上5y0以下程度の長さとされることが好ましい。具体的には例えば、上流の希釈流路の流路幅y0が、20~1000μm、代表的には200μmであった場合に、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...は20μm~1000μm程度とされることが望ましい。隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...は、必ずしも同一なものである必要はなく、上記した所定の条件を満たす限り、それぞれ異なるものであっても良い。例えば、下流方向に行くに従って漸次間隔d1,d2...が狭くなるような態様であっても良い。

【0027】
なお、本発明に係る流路構造体において、上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とした場合、前記したように各構造子40は、両側壁面より交互に、流路中心側に向かって略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に延長されており、流路方向(X方向)に略直角に抗する壁面を有するものであるが、この角度としては必ずしも厳密に90°である必要はなく、ある程度傾斜したものであっても有効な構成となり得るものであり、特に限定されるものではないが、具体的には例えば、30~150°程度、より望ましくは40~140°、特に望ましくは80~100°の範囲であれば許容されるものである。さらに、各構造子40の流路中心側の角部の形状としてもある程度の丸みは許容されるものであり、特に限定されるものではないが、例えばR50μm以下、より望ましくはR20μm以下であれば許容される場合もあり得る。しかしながら、より制御性高く均一なナノサイズの脂質粒子を得る上では、これらの許容差はできるだけ少ない方が望ましい。また、図2及び図3に示す実施形態においては、流路構造体における上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向であるX方向は便宜上で直線状に表わされているが、このX方向はあくまで希釈流路の軸線方向を示すものであって、実際上では、このような直線状なものに限られるものではなく、例えばある曲率をもって湾曲したものであっても良い。なお、このような場合には、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向であるY方向は、その単位長さの部位でのX方向と垂直な方向を指すこととなる。

【0028】
また、本発明に係る流路構造体は、上記したように二次元的構造の流路構造体であるから、その流路の深さ方向(図2、図3における紙厚方向)のサイズとしては、特に限定されるものではないが、例えば10~1000μm程度、より好ましくは50~200μm程度とすることが望ましい。

【0029】
さらに、本発明に係る流路構造体において、第1導入路10と、第2導入路20との合流する角度としては、特に限定されるものではなく、比較的に鈍角で合流するものであっても構わない。すなわち、ナノサイズの脂質粒子の形成においては、合せられる流体の流体速度がかなり速いものであるため、本発明の流路構造体において、第1導入路10と第2導入路20とのその合流角度は、ナノサイズの均一な脂質粒子を形成する上で特段に大きな影響を及ぼすものではない。特に限定されるものではいが、具体的には、例えば、合流角度は10~180°程度の範囲内とされる。

【0030】
ナノサイズの脂質粒子を形成する本発明に係る流路構造体において、第1導入路10に導入される第1の流動体と、第2導入路2に導入される第2の流動体とのいずれが、脂質溶液であり、他方が希釈媒体であるかについても特に限定されるものではない。しかしながら、ナノサイズの脂質粒子を形成する上で用いられる脂質溶液と希釈媒体との流量を比較すると、一般的には希釈媒体の流量が多い。従って、本発明に係る流路構造体において、第1導入路10と第2導入路20との合流直後の希釈流路30上流側においては、マクロ的に見ると脂質溶液の流れは薄い層として希釈媒体の流れは厚い層として形成された状態として下流に向かい流れていく。このため、屈曲した流路部位50の最初の構造子40の形成された側壁面(図2、図3中の下側)側に位置する導入路(第2導入路20)側より導入される第2の流動体が脂質溶液であった場合、脂質溶液の流れは最初の構造子40に大きく衝突し、希釈溶媒の厚い流れの層に阻まれて下流側へと流れていきにくくなる虞れがある。従って、屈曲した流路部位50の最初の構造子40の形成された側壁面(図2、図3中の下側)側とは反対側の側壁面に位置する導入路(第1導入路10)側より導入される第1の流動体が脂質溶液である態様とする方がより望ましい。

【0031】
また、第1導入路10、第2導入路20の幅としても特に限定されるものではないが、前記したようにこれらが合流した後の希釈流路30の流路幅y0が代表的には100~200μm程度とされるので、これに応じてそれぞれ50~400μm程度、より好ましくは50~200μm程度に設定されることが望ましい。

【0032】
さらに本発明に係る流路構造体において、第1導入路10と第2導入路20との合流点31より最初の構造子40の上流側端部41までの距離xは、その距離が極端に長い、すなわち、希釈された流体が、構造子40を配した屈曲した流路部位50に到達するのにあまり時間を要すると、形成される脂質粒子の粒径が大きくなってしまう傾向がある。このためこの間(距離x)を、設定流量の希釈流体が0.1秒以下で通過するようにすることが望ましい。具体的には、例えば、希釈流体の設定流量(総流量)が1ml/分であるとした場合、距離xは約80mm程度以下に設定することが望ましい。

【0033】
さらに、本発明に係る流路構造体において、前記第1導入路10と、前記第2導入路20のそれぞれの数としては、特に限定されるものではなく、それぞれ複数設けることも可能である。特に、脂質溶液に比べて一般的に流量の多い希釈媒体を流す側の導入路に関しては複数設けることが好ましい態様となり得る場合がある。すなわち、このように希釈媒体を流す側の導入路を複数設けることで、比較的低流量で希釈溶液を流しても、生成される脂質粒子の粒径及びその標準偏差を制御性良くより小さな値とし得る場合があるためである。

【0034】
特に限定されるものではないが、図18には、本発明に係る流路構造体のこのような第2導入路(および/または第1導入路)として複数のものを有する実施態様の一例として、第1流体としての脂質溶液を導入する第1導入路10として1つの導入路、また第2流体としての希釈溶媒を導入する第2流体導入路20として2つの導入路20a、20bを有する構造を例示する。図18に示す実施例においては、中央の第1導入路10に対して、両側から2つの第2流体導入路20a、20bがそれぞれ比較的に鋭角に合流するものとされているが、このように第2導入路(および/または第1導入路)として複数のものを有する形態においても前記したように、第1導入路と第2導入路との合流する角度としては、特に限定されるものではなく、比較的に鈍角で合流するものであっても構わない。

【0035】
また、このように第2導入路(および/または第1導入路)として複数のものを有する形態において、その第2導入路(および/または第1導入路)の複数のもののそれぞれ導入路を流れる流体の流量比、すなわち、例えば図18に示す実施例の場合、2つの第2流体導入路20a、20bのそれぞれを流れる希釈溶媒の流量比に関しては、特に限定されるものではない。すなわち、第1および第2の各流体導入路がそれぞれ1つのみであるものから各流体を流しても本発明に係る流路構造体としては有効に機能するので、各流体導入路として複数のものを有する場合にその複数の同種の導入路相互の流量比としては任意のものとすることができ、流量比が1:1、すなわち複数の導入路から等量ずつを流す態様に限られず、得ようとする脂質粒子の粒径等を考慮して、必要に応じて適宜変更することが可能である。なお、本発明に係る流路構造体の有する屈曲した流路部位50の構成が好ましい態様のものであると、後述する実施例において示すように、希釈溶媒を導入する第2流体導入路が複数(2つ)ある場合に、希釈媒体の流量比が1:1~1:10程度の範囲内であると、形成される脂質粒子の粒径には大きな影響はなく、この範囲内において、生成される脂質粒子の粒径及びその標準偏差を制御性良くより小さな値とし得る。

【0036】
さらに本発明に係る流路構造体は、前記したように、ナノサイズの脂質粒子ないしは両親媒性高分子等の両親媒性物質のミセルを形成するための流路構造体であるが、このようなナノサイズの脂質粒子ないしは両親媒性高分子等の両親媒性物質のミセルの内部に、包含させる後述するような生理活性物質等として、例えば屈曲した流路部位同様のカプセル構造を呈するコア粒子を封入しようとする場合には、このようなコア粒子を形成する前処理工程用の流路として、上述したような本発明に係る屈曲した流路部位を有する流路構造体と同様の構造を有する流路を設け、この前処理工程用の流路の下流側に、前記第2導入路(または第1導入路)を接続してなる構成とすることができる。なお、接続される導入路は、本来、希釈媒体を導入する側として用いられる導入路である。図25(a)はこのような構成を模式的に示すものであり、図示するように全体の流路としては、屈曲した流路部位が、多段に組み合わされたような形態を有するものとされる。このような多段の屈曲した流路部位を有する構造の態様を用いることによって、ナノサイズの脂質粒子ないしは両親媒性高分子等の両親媒性物質のミセルの内部に、生理活性物質等がカプセル構造を呈するコア粒子として包含されたものが、一連の操作によって調製することができるものとなる。なお、前処理工程用の屈曲した流路部位と、本工程である脂質粒子ないしミセル形成のための屈曲した流路部位とは、上述した規定条件、すなわち、それより上流の希釈流路の軸線方向ないしその延長方向をX方向と、このX方向と垂直に交差する希釈流路の幅方向をY方向とし、これより上流の希釈流路の流路幅をy0とした場合に、Y方向において対向する希釈流路の両側壁面より交互に、流路中心側に向かって、略Y方向(略+Y方向、略-Y方向)に、1/2y0以上1y0未満の一定高さh1,h2...を有し、かつX方向に一定幅x1,x2...を有して突出し、希釈流路の流路幅を規制する構造子40が、一定間隔d1,d2...をもって少なくとも2つ以上設けられていることで形成されているという条件を、いずれも満たしているという意味で同様であるということに過ぎず、この両者が全く同一の構造である態様に限定されるものではない。それぞれの流路部位において形成しようとする所定の粒子径、使用される材料等に応じてこれらの構造子の配置、数、大きさ等や、流体の流速条件はそれぞれの部位に応じた条件に設定され得るものである。なお、前処理工程用の流路としての流路構造体における構造子の配置、数、大きさ等や、希釈流路の幅や導入路の数等の条件は、上述した本来的な脂質粒子ないしミセル形成のための流路構造体に関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。

【0037】
次に、本発明に係る脂質粒子ないしミセル形成方法について説明する。本発明に係る脂質粒子形成方法は、上記したような構成を有する本発明に係る流路構造体を用い、この流路構造体の第1導入路10および第2導入路20の一方より脂質溶液または両親媒性物質溶液を、他方より希釈溶媒を、総流量1μl/分~100ml/分となるように導入することを特徴とするものである。

【0038】
このような方法によって、所望のナノサイズ、具体的には、例えば、約10~100nmの粒径範囲内の任意のサイズの脂質粒子ないし両親媒性物質のミセルを精密に作製することが可能となり、製造された脂質粒子ないしミセルは、例えば、効率的なドラッグデリバリーシステム(DDS)のためのナノキャリアとして好ましく用いることができる。

【0039】
本発明の脂質粒子形成方法において用いられる流路構造体の特徴としては、上述したとおりであるが、上記流路構造体における、構造子40の数、各構造子40の高さ(Y方向長さ)h1、h2...、幅(X方向長さ)x1,x2...、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...を所定範囲のものとすることで、生成する脂質粒子の粒径範囲を所定範囲内において変化させることでき、さらに原料溶液の流量、希釈比率を調整することで、制御性良く所望のナノサイズの脂質粒子を形成することができる。

【0040】
なお、従来のマイクロデバイスを用いた場合にあってはかなり高流量、例えば5ml/分程度で送液しなければ、理論的に形成可能な最小サイズである粒径20nm程度の脂質粒子を形成することはできなかったが、本発明においては、上記したような本発明に係る流路構造体を用いることで、より低流量、例えば、500μl/分で送液しても、粒径20nm程度の脂質粒子をしかも制御性よく作成することができる。

【0041】
本発明の脂質粒子形成方法において、前記流路構造体へと送液される脂質溶液および、希釈溶媒の総流量としては、形成しようとする脂質粒子のサイズや前記流路構造体の構成の違いに応じて、前記1μl/分~100ml/分の範囲内において適宜調整されるが、粒径制御性の観点から、より好ましくは50~500μl/分の流量範囲である。

【0042】
本発明の脂質粒子形成方法において用いられる脂質溶液および希釈媒体の組成、およびこれらによる希釈比率については、特に限定されるものではない。本発明の脂質粒子ないしミセル形成方法は、原理的には、脂質ないし両親媒性物質を水混和性有機溶媒に溶解した溶液を、必要に応じて加温条件下で、水溶液(希釈媒体)に添加希釈することで、リポソームをはじめとする脂質粒子ないしは両親媒性物質のミセルを形成するものであって、このような手法において従来公知の組成等を用いることができるものである。

【0043】
脂質溶液に含まれる脂質成分としては、特に限定されるわけではないが、例えば、大豆レシチン、水添大豆レシチン、卵黄レシチン、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジルイノシトール類、ホスファスフィンゴミエリン類、ホスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類、ステロール類等の1または2以上の脂質を用いることができる。ドラッグデリバリーシステム(DDS)のためのナノキャリアとして用いる態様においては、脂質粒子(リポソームなど)を構成する脂質として、リン脂質とコレステロールとの組み合わせ、特に、リン脂質の一種であるホスファチジルコリン類とコレステロールとの組み合わせを用いることが、好ましい一例として挙げられる。

【0044】
また両親媒性物質としては、特に限定されるわけではないが、両親媒性高分子化合物、例えばポリスチレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体、ポリ乳酸?ポリエチレングリコール共重合体、ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール共重合体等のような両親媒性ブロック共重合体などが例示できる。

【0045】
上記したような脂質を溶解して脂質溶液を調製するのに用いられる水混和性有機溶媒としては、特に限定されるわけではないが、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アセタール類などの水に混合可能な有機溶媒、特にエタノール、t-ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、及び2-ブトキシエタノール等のアルコール類を用いることが好ましい。また、両親媒性物質溶液を調製するのに用いられる水混和性有機溶媒としても同様のものが用いられ得るが、好ましい例としてはテトラヒドロフランなどのエーテル類、クロロホルム等が挙げられる。

【0046】
一方希釈媒体としては、水、または基本的に水を主成分とする、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、クエン酸緩衝液等水溶液が、形成しようとする脂質粒子の用途等に応じて適宜使用される。

【0047】
また、得られる脂質粒子ないしミセルの用途等に応じては、公知のように、脂質粒子ないしミセル中に、生理活性物質等を配合することが可能である。特に限定されるものではないが、例えば、抗癌剤、抗酸化剤、抗菌剤、抗炎症剤、ビタミン剤、ヘモグロビン、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、ワクチン、発毛剤、保湿剤、色素類、美白剤、顔料などといった薬剤、生理活性物質、化粧料等を例示できる。これらの添加物は、水溶性のものであれば、上記希釈媒体中に配合しておくことで、形成される脂質粒子ないしミセルの水相中に包含させることができる。また、油溶性のものであれば脂質粒子の脂質膜中に取り込ませることができる。さらに、例えば、本発明により形成される脂質粒子ないしミセル内に、薬剤、生理活性物質、化粧料等を水相中に分散した粒子(コア粒子)の形態で、取り込ませることができる。

【0048】
また当分野において公知のように脂質粒子の表面を官能基等で修飾させることも可能である。かかる官能基による修飾は、リン脂質等に予め官能基を結合させ、あるいは脂質粒子形成後に官能基を結合させることにより実現できる。なお、上記脂質溶液における水混和性有機溶媒の濃度、また、当該脂質溶液を希釈する希釈媒体の配合比としては、当分野において公知のように、脂質粒子(リポソーム)が形成されるように、脂質組成と脂質濃度に依存した適切な範囲とされるものであれば、特に限定されるものではない。

【0049】
なお、本発明に係る脂質粒子ないしミセル形成方法においては、上記したような流路構造体を用いて脂質溶液ないし両親媒性物質を希釈媒体で希釈するものであるため、特に限定されるわけではなく、また使用する脂質ないし両親媒性物質および水混和性有機溶媒の種類によってもある程度左右されるが、具体的には、例えば、脂質溶液ないし両親媒性物質溶液の流量と希釈媒体との流量との比率が、1:1~1:50程度、より好ましくは1:3~1:10程度のものとされることが、良好な分散効率を得る上で望ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1
図2に示すような基本構造を有する流路構造体において、所望のナノサイズの脂質粒子を作製するために必要とされる、構造子40の個数の影響性を調べた。
流路幅y0=200μm、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmを一定として、構造子40の個数をそれぞれ6、10、20、100個とした流路構造体を作製した。これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3、または1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。結果を図4に示す。図4に示すように、いずれの条件によってもナノサイズの脂質粒子を形成することができたが、特に構造子40の個数が10個以上あれば、20~100nm範囲の目的サイズの粒子を制御性よく形成することが可能であった。
【実施例】
【0052】
実施例2
図2に示すような基本構造を有する流路構造体において、所望のナノサイズの脂質粒子を作製するために必要とされる、隣接する構造子40間の間隔d1,d2...を影響性を調べた。
流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の幅h1,h2...(Y方向長さ)=150μm、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、=100μmを一定として、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...をそれぞれ100μm、200μm、500μm、1mmとした流路構造体を作製した。これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3、または1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。なお、参考のために、同一流路幅の流路構造体において構造子40を有していないもの、および従来知られるカオティックミキサーを用いて同様の試験を行った。なお、カオティックミキサーは前記非特許文献1に記載された内容に従い同じもの(直径200μmの流路中に幅50μm、深さ31μmのカオティックミキサーを69サイクル配置したもの)を作成して使用した(非特許文献1における関連部分の記載はその関連により本明細書中に包含される。)。結果を図5に示す。図5に示すように、いずれの条件によってもナノサイズの脂質粒子を形成することができたが、特に隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...が500μm以下であれば、10~100nm範囲の目的サイズの粒子を制御性よく形成することが可能であった。
【実施例】
【0053】
実施例3
図2に示すような基本構造を有する流路構造体において、所望のナノサイズの脂質粒子を作製するために必要とされる、各構造子40の高さ(Y方向長さ)h1、h2...の影響性を調べた。
流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmを一定として、各構造子40の高さ(Y方向長さ)h1、h2...を70、100、150μmとした流路構造体を作製した。これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3、または1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。なお、参考のために、同一流路幅の流路構造体において構造子40を有していないもの、および従来知られるカオティックミキサー(実施例2で用いたものと同様)を用いて同様の試験を行った。結果を図6に示す。図6に示すように、各構造子40の高さ(Y方向長さ)h1、h2...が100μmであれば、10~100nm範囲の目的サイズの粒子を制御性よく形成することが可能であった。
【実施例】
【0054】
実施例4
図2に示すような基本構造を有する流路構造体において、所望のナノサイズの脂質粒子を作製するために必要とされる、構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、の影響性を調べた。
流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmを一定として、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...を50、70、100μmとした流路構造体を作製した。これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3、または1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。なお、参考のために、同一流路幅の流路構造体において構造子40を有していないもの、および従来知られるカオティックミキサー(実施例2で用いたものと同様)を用いて同様の試験を行った。結果を図7に示す。図7に示すように、いずれの条件によってもナノサイズの脂質粒子を形成することができたが、特に構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...が100μmあれば、10~100nm範囲の目的サイズの粒子を制御性よく形成することが可能であった。
【実施例】
【0055】
実施例5
図8に示すようように本発明に係る基本構造を有する流路構造体(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)と共に、(1)同様の高さを有するが幅の大きい単一の構造子40を片側壁面側に設けたような形状、(2)同様の高さを有する構造子40を片側壁面側のみに複数設けたような形状、(3)構造子40を両壁面側に複数設けるがそれぞれが対称に配置され、各構造子の高さが半分である形状の流路構造体をそれぞれ準備し、所望のナノサイズの脂質粒子を作製する上での構造子の配置の影響性を調べた。結果を図9に示す。図9に示すように、本発明に係る基本構造を有するもののみが、目的サイズの脂質粒子を制御性よく形成することが可能であった。
【実施例】
【0056】
実施例6
本発明に係る基本構造を有する流路構造体における脂質溶液の希釈状態をシミュレーションするため、脂質溶液の水混和性有機溶媒であるエタノールと、希釈溶媒としての水とを、流量比1:3で総流量50μl/分にて、流路構造体に流して、汎用性物理シミュレーションソフト COMSOL Multiphysicsによりその流れをシミュレーションした。その結果を図10に示す。図10に示すように、構造子の存在によって、脂質溶液の希釈分散化が図られていること、特に、その個数が10個目においてはかなり均質に分散が進んでいることが裏付けられた。
【実施例】
【0057】
実施例7
本発明に係る基本構造を有する流路構造体における、第1導入路10と第2導入路20との合流点31より最初の構造子40の上流側端部41までの距離xの長短による脂質粒子の粒径への影響性を調べるために、本発明に係る基本構造を有する流路構造体において、その距離xを30、50、65、80、100mmにそれぞれ変更した流路構造体を作製した。なお、これらの流路構造体の流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmは、共通するものとした。
各流路構造体に、脂質溶液として10mg/mlのリン脂質/エタノール溶液を0.1ml/分、希釈溶媒として生理食塩水を0.9ml/分の流量(総流量1.0ml/分にて流し、形成される脂質粒子の粒径を比較した。なお、図11は、この総流量にて脂質溶液および希釈溶媒を流した場合の合流点31よりの距離と到達に要する時間との関係を模式的に示すものである。得られた結果を図12に示す。図12に示すように、距離xが80mm以上(通過時間約0.1秒以上)であると得られる脂質粒子の粒径が大きくなってしまった。一方、距離xが65mm以下(通過時間約0.08秒以下)であれば良好な粒径のものが得られた。
【実施例】
【0058】
実施例8
本発明に係る基本構造を有する流路構造体(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)に対して、脂質組成が、pH応答性カチオン性脂質(YSK05)、コレステロール、ポリエチレングリコール脂質(YSK05/コレステロール/mPEG2k-DMG が、70/30/1-3 (mol%)の割合)の脂質溶液(エタノール中8mM脂質濃度)と、希釈媒体としてのsiRNA溶液(25mM酢酸緩衝液、pH4.0)とを流量比1:3、総流速500μl/分にて流して、pH応答性カチオン性脂質(YSK05)、コレステロール、ポリエチレングリコール脂質、siRNAで構成される脂質粒子の作成を試みた。その結果、図13に示すように、粒径が100nm以下でサイズ均一性の高い脂質ナノ粒子が形成されることが確認できた。
【実施例】
【0059】
作成した各脂質ナノ粒子を、0.1または0.4mg (siRNA)/kg (体重)の割合で、4週齢の雌ICRマウスに、静脈内投与して、肝実質細胞における遺伝子ノックダウン活性および投与薬剤の肝臓内局在観察を行った。肝実質細胞における遺伝子ノックダウン活性は静脈内投与24時間後に採血し、血漿中の第VII因子(F7)活性を調べることにより行った。肝臓内局在観察は静脈内投与30分後の肝臓の各部位を共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察することにより行った。なお、肝臓内局在観察用の脂質ナノ粒子としてはDil(0.5mol%)で脂質を蛍光標識したものを用いた。得られた結果を、図14、図15に示す。図14に示すように、本発明に係る流路構造体を用いて作成された脂質粒子は、in vivoにおいて、投与量依存的な遺伝子ノックダウン活性を良好に発揮し、特に、粒子径の大きい1% PEGの方が高い活性を示した(約3倍)。また、図15に示すように、本発明に係る流路構造体を用いて作成された脂質粒子は、in vivoにおいて良好なドラッグデリバリー作用を発揮し、特に粒子径の小さい3% PEGの方が血液への非特異的な集積は少なく、肝実質細胞(組織深部)へ選択的に到達していた。
【実施例】
【0060】
実施例9
本発明に係る流路構造体において、所望のナノサイズの脂質粒子を作製するために必要とされる、流路幅y0の影響性を調べた。
図16(a)に示すように本発明に係る基本構造を有する流路構造体(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)と共に、(1)流路幅y0=400μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=300μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmと、上述の基本構造の流路構造体よりも流路幅は広いが、流路幅y0と各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)との比率は4:3と同様である流路構造体、(2)流路幅y0=400μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=350μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmと、上述の基本構造の流路構造体よりも流路幅が広く、また、流路幅y0と各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)との比率は8:7とされた流路構造体をそれぞれ準備した。
これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。なお、参考のために、同一流路幅の流路構造体において構造子40を有していないもの、結果を図16に示す。図6(b)、(c)に示すように、流路幅y0を400μmにしても粒径制御性に大きな影響はなかった。また流路幅y0と各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)との比率は4:3のものの方が、比率8:7のものよりやや粒径制御性について良好な結果が得られた。
【実施例】
【0061】
実施例10
本発明に係る流路構造体において、各構造子の傾斜の影響性を調べた。
流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmという基本構成を有する流路構造体において、図17(a)に模式的に示すように、各構造子の壁面と流路方向(X方向)との間のなす角度θが、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、または140°(90°±50°)として構成した流路構造体を作製した。
これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3または1:9の流量比で、総流量が50、100、または500μl/分となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。結果を図17(b)、(c)に示す。図17(b)、(c)に示すように、各構造子の壁面が流路方向(X方向)に90°±50°の程度の範囲内で傾斜したものであっても、同様に所定の粒径を有する脂質粒子を形成可能であり、また流量条件によって脂質粒子の粒径を制御可能であることが確認できた。
【実施例】
【0062】
実施例11
本発明に係る流路構造体において、流体の導入路の数の影響性を調べた。本発明に係る基本構造を有する流路構造体(それぞれ1つずつの第1導入路10および第2導入路20を有する。流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)とは、図18(a)に模式的に示すように中央の第1導入路10に対して、両側から2つの第2流体導入路20a、20bが合流する形状を有する以外は、前記基本構造を有する流路構造体と同じ構造を有する流路構造体を別途用意した。
この2つの第2流体導入路20a、20bを有する流路構造体において、第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路20a、20bより生理食塩水を、全体として脂質:生理食塩水の流量比が1:3となるように、かつ第2導入路20aと第2導入路20bからのそれぞれ導入される生理食塩水の流量比を1:1、3:1、1:3、9:1、1:9となるように調整しながら導入し、脂質粒子の脂質粒子の粒径を調べた。
また、参考のために、それぞれ1つずつの第1導入路10および第2導入路20本発明に係る基本構造を有する流路構造体において、上記と同様にして、第1導入路10より脂質溶液を、第2導入路20より生理食塩水を、全体として脂質:生理食塩水の流量比が1:3、1:5、1:7、1:9、1:20となるように調整しながら導入し、脂質粒子の脂質粒子の粒径を調べた。結果を図18(b)、(c)に示す。
図18(b)は、2つの第2流体導入路20a、20bを有する流路構造体において第2導入路20aと第2導入路20bからのそれぞれ導入される生理食塩水の流量比の変化における脂質粒子の粒径の影響を示したグラフである。図18(b)に示す結果からは、この2つの第2流体導入路20a、20bを有する流路構造体において、第2導入路20aと第2導入路20bからのそれぞれ導入される生理食塩水の流量比の変化は、得られる脂質粒子の粒径にそれほど大きな影響を与えないという結果が得られた。
図18(c)は、2つの第2流体導入路20a、20bを有する流路構造体と、1つの第2導入路20を有する流路構造体を用いた場合における脂質粒子の粒径の影響を示したグラフである。図18(c)に示す結果からは、第2流体導入路2を複数(2つ)としたことで、第1および第2流体導入路をそれぞれ1つしか有しない流路構造体と比べて、低流量において生成する脂質粒子の粒径の標準偏差が減少し、粒径のばらつきが少なくことが示された。併せて同じ脂質:生理食塩水の流量比(1:3)であると得られる脂質粒子の粒径も小さくなる傾向があることが示された。
【実施例】
【0063】
実施例12
本発明に係る流路構造体において、流体の導入路の数の影響性を、流路構造体の屈曲した流路部位の形状(各構造子の形状、配置)の異なる態様において調べた。
すなわち、流路構造体として実施例11に用いたものと同様の(1)1つの第1導入路10とその両側から2つの第2流体導入路20a、20bが合流する形状を有し、屈曲した流路部位に関しては本発明に係る前記基本構造(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)である流路構造体、(2)1つの第1導入路10とその両側から2つの第2流体導入路20a、20bが合流する形状を有し、屈曲した流路部位に関しては、流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=100μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmである流路構造体、(3)1つの第1導入路10とその両側から2つの第2流体導入路20a、20bが合流する形状を有し、屈曲した流路部位に関しては、流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=500μmである流路構造体、(4)本発明に係る基本構造を有する流路構造体(それぞれ1つずつの第1導入路10および第2導入路20を有する。流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)、さらに(5)参考のために、前記(4)の流路構造体と同一流路幅の流路構造体において構造子40を有していないもの、を用意した。
これら5つの流路構造体において、第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路20a、20bより生理食塩水を、全体として脂質:生理食塩水の流量比が1:3となるように、かつ前記(1)~(3)の流路構造体においては、第2導入路20aと第2導入路20bからのそれぞれ導入される生理食塩水の流量比を1:1、3:1、1:3、9:1、1:9となるように調整しながら、総流量を50μl/分として導入して、脂質粒子を生成し、得られた脂質粒子の粒径を調べた。得られた結果を図19、図20に示す。
図19に示すように、第2流体導入路2を複数(2つ)有する前記(1)~(3)の流体構造体を用いた場合、第1および第2流体導入路をそれぞれ1つしか有しない前記(4)の流路構造体と比べて、いずれも得られる脂質粒子の粒径、標準偏差ともに小さくなった。また、図19および図20に示すように、第2導入路20aと第2導入路20bからのそれぞれ導入される生理食塩水の流量比によって、前記(2)および(3)の流路構造体を用いた場合は粒径が比較的変化すること示された。他方、前記(1)の流路構造体を用いた場合には流量比よって粒径が大きな影響を受けないことが示された。
【実施例】
【0064】
実施例13
前記実施例6と同様に、本発明に係る基本構造を有する流路構造体における脂質溶液の希釈状態をシミュレーションするため、脂質溶液の水混和性有機溶媒であるエタノールと、希釈溶媒としての水とを、流量比1:3で、流路構造体に流して、汎用性物理シミュレーションソフト COMSOL Multiphysicsによりその流れをシミュレーションした。なお、総流量の違いによる希釈過程を調べるため、総流量を100μl/分と500μl/分に設定した。得られた結果を図21に示す。図21に示すように、総流量が大きい方が構造子によってより迅速な希釈がなされることが示された。
【実施例】
【0065】
実施例14
(1)本発明に係る基本構造を有する流路構造体における脂質溶液の希釈状態、および、(2)前記実施例10で用いたものと同様に中央の第1導入路10に対して、両側から2つの第2流体導入路20a、20bが合流する形状を有する以外は、前記基本構造を有する流路構造体と同じ構造を有する流路構造体における脂質溶液の希釈状態をシミュレーションするため、脂質溶液の水混和性有機溶媒であるエタノールと、希釈溶媒としての水とを、流量比1:3で、総流量が50μl/分で流路構造体に流して、前記実施例6と同様に汎用性物理シミュレーションソフト COMSOL Multiphysicsによりその流れをシミュレーションした。なお、2つの第2流体導入路20a、20bを有する前記(2)の流路構造体において、第2流体導入路20aと第2流体導入路20bより導入するエタノールの流量は均等で1:1とした。得られたの結果を図22に示す。図22に示すように、第2流体導入路2を複数(2つ)とした流路構造体の方が、第1および第2流体導入路をそれぞれ1つしか有しない流路構造体と比べて、より迅速な希釈がなされることが示された。
【実施例】
【0066】
実施例15
本発明に係る流路構造体において、流路構造体の流路深さ(三次元的な広がり)の影響性を調べた。
本発明に係る基本構造(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の幅h1,h2...(Y方向長さ)=150μm、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)をいずれも有し、流路の深さ(図2,3における紙厚方向)が100μm(流路深さ/流路幅=0.5)の流路構造体と、流路の深さが200μm(流路深さ/流路幅=1)の流路構造体を作製した。これらの流路構造体の第1導入路10より脂質溶液(エタノール中の10mg/ml ホスファチジルコリン溶液)を、第2導入路より生理食塩水を、1:3、または1:9の流量比で、所定の総流量となるように調整しながら導入し、脂質粒子の形成を行い、得られた脂質粒子の粒径を調べた。得られた結果を図23に示す。図23に示されるように、流路の深さが2倍になっても粒径制御性に変化はみられなかった。
【実施例】
【0067】
実施例16
本発明に係る流路構造体による高分子ミセルの形成が、脂質粒子の形成の形成と同様に可能であるかを調べた。
本発明に係る基本構造を有する流路構造体(流路幅y0=200μm、構造子40の個数=100、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、幅(X方向長さ)x1,x2=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μm)に対して、両親媒性ブロック共重合体であるポリスチレン(PS)-ポリエチレンオキシド(PO)ブロック共重合体(PS47-PEO46-PS47 、数平均分子量(Mn)=約12000)のテトラヒドロフラン溶液(テトラヒドロフラン1ml中1mgのポリマー濃度)と、希釈媒体としての超純水とを流量比(ポリマー溶液:水)=1:10、総流速10,50、100、300、500μl/分にて流して、高分子ミセルの作成を試みた。その結果、図24に示すように、脂質粒子と同じように、粒径が100nm以下でサイズ均一性の高い高分子ミセルを形成できること、また流量条件によってミセルの粒径を制御可能であることが確認できた。
【実施例】
【0068】
実施例17
図25(a)に示すような構造を有する流路構造体において、核酸・ポリカチオン複合体を封入してなる所望のナノサイズの脂質粒子の形成を試みた。
使用した流路構造体は、図25(a)に示すように、上流側に核酸・ポリカチオン複合体からなるコア粒子を形成するための前処理工程用の屈曲した流路部位と有する流路構造体部(以下、「前処理用流路構造体部」と称する。)、その下流側に、本工程である脂質粒子を形成するための屈曲した流路部位を有する流路構造体部(以下、「本工程用流路構造体部」と称する。)を接続した構造を有し、前処理用流路構造体部の下流導出口が、本工程用流路構造体部の第2導入路(希釈媒体導入路)に連結された形態を有するものとされた。
なお、本工程用流路構造体部の流路条件は、流路幅y0=200μm、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmを一定として、構造子40の個数を20個とし、他方、前処理工程用流路構造体部の流路条件も、流路幅y0=200μm、各構造子40の高さh1、h2...(Y方向長さ)=150μm、各構造子40の幅(X方向長さ)x1,x2...、=100μm、隣接する各構造子40間の間隔d1,d2...=100μmを一定として、構造子40の個数を20個として、流路構造体を作製した。
まず前処理工程用流路構造体部の第1導入路よりポリ-L-リジン/緩衝液(10mM HEPESバッファ中の0.1mg/ml ポリリジン、pH7.4)を、第2導入路より核酸/緩衝液(10mM HEPESバッファ中の0.1mg/ml DNA、pH7.4)を5:1の流量比で、最終的な本工程の所定の総流量となるように調整しながら導入して、核酸・ポリカチオン複合体からなるコア粒子を形成することを試みた。さらに、本工程用流路構造体部の第1導入路より脂質溶液(エタノール中の2mg/ml DOPE/DSPE-PEG/DCP(5.2:2.4:0.4)溶液)を流し、また本工程用流路構造体部の第2導入路よりは、ここに連結された前処理工程用流路構造体部より導出される被処理溶液をそのまま流して、1:5の流量比で、本工程の所定の総流量となるように調整しながら導入して、脂質粒子を形成し、得られた脂質粒子の粒径を調べた。結果を図25(b)に示す。この実施例においては、前処理工程用流路構造体部において核酸・ポリカチオン複合体であるコア粒子(粒径10~20nm)が形成されており、最終的には、図25(b)に示すように、いずれの条件によっても当該コア粒子を封入してなるナノサイズの脂質粒子を形成することができたが、総流量が大きい方が粒径が減少することが示された。
なお、上記略号はそれぞれ以下の通りの意味を示すものである。
HEPES=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)
DOPE=ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(Dioleoylphosphatidylethanolamine)
DSPE-PEG=ジステアリルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール(distearylphsphatidylethanolamine-polyethylenglycol)
DCP=ジセチルホスフェート(dicetylphosphate)

【符号の説明】
【0069】
10 第1導入路
20 第2導入路
30 希釈流路
31 合流点
40 構造子
50 屈曲した流路部位
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24