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明細書 :撮像システム、及び撮像方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月12日(2020.3.12)
発明の名称または考案の名称 撮像システム、及び撮像方法
国際特許分類 H04N   5/232       (2006.01)
H04N   5/225       (2006.01)
G01J   3/18        (2006.01)
G01J   3/40        (2006.01)
G03B  15/00        (2006.01)
G02B   5/32        (2006.01)
FI H04N 5/232 290
H04N 5/225 400
G01J 3/18
G01J 3/40
G03B 15/00 S
G03B 15/00 W
G02B 5/32
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 17
出願番号 特願2019-517552 (P2019-517552)
国際出願番号 PCT/JP2018/016594
国際公開番号 WO2018/207613
国際出願日 平成30年4月24日(2018.4.24)
国際公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
優先権出願番号 2017093613
優先日 平成29年5月10日(2017.5.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】中村 友哉
【氏名】山口 雅浩
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100192212、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 貴明
【識別番号】100204032、【弁理士】、【氏名又は名称】村上 浩之
【識別番号】100200001、【弁理士】、【氏名又は名称】北原 明彦
審査請求 未請求
テーマコード 2G020
2H249
5C122
Fターム 2G020CB06
2G020CC06
2G020CC63
2G020CD06
2G020CD24
2G020CD36
2H249CA01
2H249CA03
2H249CA15
5C122EA37
5C122FB02
5C122FB17
5C122FH08
5C122HB01
要約 単一素子を介した簡素な構成で装置を小型化した上で映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現する。複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像システム100であって、撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する体積ホログラム光学素子104と、体積ホログラム光学素子で符号化された各符号化像を多重化して多重化像を取得するイメージセンサ106と、イメージセンサで取得された多重化像を圧縮センシングにより画像復元処理して撮像対象の撮像データを分離再構成する画像処理部108と、を備えることを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像システムであって、
前記撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する体積ホログラム光学素子と、
前記体積ホログラム光学素子で符号化された各符号化像を多重化して多重化像を取得するイメージセンサと、
前記イメージセンサで取得された前記多重化像を圧縮センシングにより画像復元処理して前記撮像対象の撮像データを分離再構成する画像処理部と、を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記体積ホログラム光学素子は、前記撮像対象に含まれる前記複数の光学情報を前記体積ホログラム素子との角度ごと又は前記光学情報の波長幅ごとに分割してから符号化することを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記体積ホログラム光学素子は、干渉縞のパターンがそれぞれ異なる複数のホログラム素子が積層されて構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記体積ホログラム光学素子を構成する前記複数のホログラム素子は、それぞれ傾き角度又は配置を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記画像処理部は、復元処理対象となる画像のスパース性を利用して前記多重化像の画像を復元処理することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記体積ホログラム光学素子と前記イメージセンサとの間にレンズが設けられることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記体積ホログラム光学素子と前記イメージセンサとの間にレンズが設けられないレンズレス方式であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項8】
複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像方法であって、
前記撮像対象の前記複数の光学情報を小さな視野・波長幅ごとに分割する分割工程と、
前記工程で分割された前記複数の光学情報ごとに体積ホログラム光学素子で符号化して符号化像を得る符号化工程と、
前記複数の光学情報ごとに得られた前記符号化像のそれぞれをイメージセンサで多重化して多重化像を取得する多重化工程と、
前記多重化像を復元対象となる画像のスパース性を利用して圧縮センシングにより復元処理する復元処理工程と、を有することを特徴とする撮像方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学情報を含む撮像対象を高解像度化に撮像する撮像システム、及び撮像方法に関する。本出願は、日本国において2017年5月10日に出願された日本特許出願番号特願2017-093613を基礎として優先権を主張するものであり、この出願を参照することにより、本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
近年では、パノラマ写真、デジタルアーカイブ、環境保全、衛星写真、病理診断、セキュリティ、防犯等といったアプリケーションにおいて、映像記録は、大情報量化の方向に推移している。特に、生体認証や微小物体の認識、質感計測等のように、従来に無い新たな映像記録の利用態様に対応するために、撮像した映像記録の高解像度化の要請が高まっている。
【0003】
撮像する映像記録の広角化・高解像度化、又は多波長化・高解像度化を実現する従来技術として、特許文献1には、センサアレイ方式により高解像度の画像情報を取得可能とした撮像装置について開示され、特許文献2には、機械走査方式により高解像度な画像を取得できる撮像装置について開示されている。また、多波長化・高解像度化を実現する従来技術として、特許文献3には、符号化光学素子と画像復元処理(圧縮センシング)を融合するシステム設計によって多波長撮像を単一素子で一括符号化する撮像技術について開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】米国特許第8259212号明細書
【特許文献2】米国特許第6101265号明細書
【特許文献3】米国特許第7336353号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサアレイ方式では、映像記録の高解像度化は、実現されるものの、光学系が大型化・高コスト化してしまうことが課題となる。一方、機械走査方式では、映像記録を高解像度化した上での装置の小型化が実現されるものの、光学系が複雑になり、また、多数回の撮影が必要となることから撮影時間が長大化することが課題となる。
【0006】
このように、映像記録の高解像度化に対応した上で光学系を簡素にして装置を小型化するには、単一素子を介した簡素な構成で映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現されることが好ましい。すなわち、複数の視野・波長の像情報を独立に一括符号化する単一光学素子を介して、小型化した装置で大情報量化した映像記録の高解像度化を実現することが要請されている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、単一素子を介した簡素な構成で装置を小型化した上で映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現することの可能な、新規かつ改良された撮像システム、及び撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像システムであって、前記撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する体積ホログラム光学素子と、前記体積ホログラム光学素子で符号化された各符号化像を多重化して多重化像を取得するイメージセンサと、前記イメージセンサで取得された前記多重化像を圧縮センシングにより画像復元処理して前記撮像対象の撮像データを分離再構成する画像処理部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様によれば、イメージセンサの前段側に体積ホログラム光学素子を設けることによって、撮像対象に含まれる各光学情報を光学情報ごとに分割して独立に符号化できる。このため、イメージセンサで各光学情報の多重化像を取得してから画像処理部で当該多重化像を分離再構築して、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。
【0010】
このとき、本発明の一態様では、前記体積ホログラム光学素子は、前記撮像対象に含まれる前記複数の光学情報を前記体積ホログラム素子との角度ごと又は前記光学情報の波長幅ごとに分割してから符号化することとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子によって、撮像対象に含まれる各光学情報の角度ごと、又は波長幅ごとに分割して独立に符号化できるので、イメージセンサで各光学情報の多重化像を生成してから画像処理部で当該多重化像を分離再構築して、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記体積ホログラム光学素子は、干渉縞のパターンがそれぞれ異なる複数のホログラム素子が積層されて構成されることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子を構成する過程でホログラムの多重露光回数を減らせるので、体積ホログラム光学素子の回折効率の減少やクロストーク発生のリスクを低減できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記体積ホログラム光学素子を構成する前記複数のホログラム素子は、それぞれ傾き角度又は配置を調整可能に構成されていることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子を露光して干渉縞を設けた後でも、各ホログラム素子の傾き角度又は配置を調整することによって、柔軟にPSF(Point Spread Function)を設計・制御できるようになる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記画像処理部は、復元処理対象となる画像のスパース性を利用して前記多重化像の画像を復元処理することとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子とイメージセンサによって、撮像対象の各光学情報ごとに分割して独立に符号化された符号化像から生成された多重化像を復元処理することが数学的に可能となるので、映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記体積ホログラム光学素子と前記イメージセンサとの間にレンズが設けられることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子とイメージセンサとレンズのみで構成される簡素な光学系で高情報量の撮像を実現できる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記体積ホログラム光学素子と前記イメージセンサとの間にレンズが設けられないレンズレス方式であることとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、体積ホログラム光学素子とイメージセンサのみで構成される簡素な光学系で高情報量の撮像を実現できる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像方法であって、前記撮像対象の前記複数の光学情報を小さな視野・波長幅ごとに分割する分割工程と、前記工程で分割された前記複数の光学情報ごとに体積ホログラム光学素子で符号化して符号化像を得る符号化工程と、前記複数の光学情報ごとに得られた前記符号化像のそれぞれをイメージセンサで多重化して多重化像を取得する多重化工程と、前記多重化像を復元対象となる画像のスパース性を利用して圧縮センシングにより復元処理する復元処理工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の他の態様によれば、イメージセンサの前段側に体積ホログラム光学素子を設けることによって、撮像対象に含まれる各光学情報を光学情報ごとに分割して独立に符号化できる。このため、イメージセンサで各光学情報の多重化像を取得してから画像処理部で当該多重化像を分離再構築して、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、イメージセンサの前段側に体積ホログラム光学素子を設ける簡素な光学系の構成によって、効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態に係る撮像システムに備わる撮像部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る撮像システムの動作説明図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る撮像システムを適用した撮像方法の概略を示すフロー図である。
【図5】図5A乃至図5Dは、本発明の一実施形態に係る撮像システムによる撮像結果を示す説明図である。
【図6】図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態に係る撮像システムに備わる体積ホログラム光学素子の一態様の概略構成を示す説明図である。
【図7】図7は、図6A及び図6Bに示す体積ホログラム光学素子を備える本発明の一実施形態に係る撮像システムによる撮像結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。

【0027】
まず、本発明の一実施形態に係る撮像システムの概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撮像システムの概略構成を示すブロック図であり、図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態に係る撮像システムに備わる撮像部の概略構成を示すブロック図である。

【0028】
本発明の一実施形態に係る撮像システム100は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する際に適用される。すなわち、本実施形態の撮像システム100は、撮像対象が広視野・多波長・高画素数の全て、又は何れかが該当するような高情報量の場合に、当該撮像対象を高解像度化して撮像する際に適用される。

【0029】
本実施形態の撮像システム100は、図1に示すように、被写体となる撮像対象を撮像して得られた画素信号を画像データに変換する撮像部102と、撮像部102で変換された画像データに、所定の画像処理を行う画像処理部108とを備える。

【0030】
本実施形態では、撮像部102は、発光された光を利用して撮像対象を撮像する機能を有し、体積ホログラム光学素子(Volume Holographic Optical Element:以下、vHOEとも称する。)104とイメージセンサ106によって構成される。体積ホログラム光学素子104は、撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化、変調する機能を有する。イメージセンサ106は、体積ホログラム光学素子104で符号化された各符号化像を多重化して多重化像を取得する機能を有する。

【0031】
本実施形態では、撮像部102は、図2Aに示すように、変調機能を有する体積ホログラム光学素子104とイメージセンサ106との間にレンズ105を設けて、フィルタ付加型方式の撮像部102aとしてもよい。また。撮像部102は、体積ホログラム光学素子104が変調機能とレンズ機能を併せ持つ場合には、図2Bに示すように、体積ホログラム光学素子104とイメージセンサ106のみで構成されるレンズレス方式の撮像部102bとしてもよい。さらに、レンズ機能をレンズアレイと画像再構成にして、光学系を更に短焦点距離化、薄型化を実現させてもよい。なお、本実施形態の撮像部102の動作・機能の詳細については、後述する。

【0032】
画像処理部108は、撮像部102が取得した画像データに対して画像処理を施す機能を有する。本実施形態では、画像処理部108は、イメージセンサ106で取得された多重化像を圧縮センシングにより画像復元処理して撮像対象の撮像データを分離再構成するように画像処理を施す。

【0033】
具体的には、画像処理部108は、再構成対象を画像ベクトルとして表現した際に0値となる要素が多い性質、すなわち、疎(スパース)性を利用して、少ないデータから大規模なデータを線形システムに適用可能な数理的技術で復元する。その際に、マクロな撮像は、線形システムで表現でき、自然画像は、基底変換行列等による何らかの基底変換をすることによって、ほぼ例外なく疎に表現できるため、スパース性を利用した画像処理部108による画像処理は、符号化撮像(大規模画像再構成)にも有用となる。このため、その応用として、独立変調された撮像情報の多重像の分離再構成が実現できるようになる。

【0034】
このように、本実施形態では、撮像部102をイメージセンサ106の前段側に体積ホログラム光学素子104を設ける構成とすることによって、撮像対象に含まれる各光学情報を光学情報ごとに分割して独立に符号化できるようになる。このため、イメージセンサ106で各光学情報の多重化像を取得してから、画像処理部108で当該多重化像を分離再構築することで、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。

【0035】
次に、本発明の一実施形態に係る撮像システムの動作の詳細について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る撮像システムの動作説明図である。

【0036】
本発明の一実施形態に係る撮像システム100は、撮像部102を構成する光学素子として体積ホログラム光学素子(vHOE)104を用いることによって、複数の波長、視野の画像情報を撮像する小型な撮像システムを実現することを特徴とする。すなわち、本実施形態の撮像システム100は、体積ホログラム光学素子104を用いて、カメラにおける装置のコンパクトさと高撮像情報量の同時実現を可能とすることを特徴とする。

【0037】
体積ホログラム光学素子104は、光が入射した際におけるホログラム露光時に記録した光の波面を再生する波面再現性と、光の入射角ごとに独立な波面の記録・再生を可能とする角度選択性と、光の波長ごとに独立な波面の記録・再生を可能とする波長選択性を有する。

【0038】
特に、体積ホログラム光学素子104は、物理的には、ブラッグ回折を利用しているので、光の入射角に本質的な制限がなくなる。このため、体積ホログラム光学素子104の角度選択性として、例えば、90度の入射角でカメラに入った光をセンサに伝達することも可能となる。

【0039】
また、体積ホログラム光学素子104の波長選択性によって、波長の大きさに本質的な制限がなくなるので、可視光に限らず,音波,赤外線,X線などでも独立に波面記録・再生が可能となる。このため、体積ホログラム光学素子104は、様々な視野から入射する光を全てイメージセンサ106に誘導するようにプリズム機能を有して、かつ、視野・波長ごとに異なるインパルス応答(PSF:Point Spread Function)を実装できるので、視野・波長独立な光学的符号化及びその多重像撮影を1枚の素子で実現できるようになる。

【0040】
このように、体積ホログラム光学素子104には、波面再現性、角度選択性、及び波長選択性があるので、体積ホログラム光学素子104のこれらの性質を利用して、視野・波長独立な光学的符号化、多重化が可能なプリズム機能を有する高機能な光学素子を実現できる。特に、撮像部102がレンズを有する方式である場合には、体積ホログラム光学素子104には、プリズム(光伝搬方向変調)機能と、視野波長独立符号化機能と、符号化された像のセンサ面への多重伝送機能が備わり、撮像部102がレンズレス方式である場合には、体積ホログラム光学素子104には、これらの機能に加えて、更に結像機能(凸レンズ機能、又は集光型位相変調機能)が備わる。

【0041】
このため、本実施形態では、まず、撮像部102の前段側に設けられる体積ホログラム光学素子104が当該体積ホログラム光学素子104を介して撮像した撮像対象となる複数の光学情報を小さな視野・波長幅ごとに分割する。具体的には、図3に示すように、撮像対象となる光学情報として花D1とリンゴD2が含まれる場合には、花D1を撮像する視野となる光角度A1と、花D1とリンゴD2との間のブランク部分の視野となる光角度A2、A3と、リンゴD2を撮像する視野となる光角度A4ごとに分割する。なお、本実施形態では、体積ホログラム光学素子104によって、撮像対象となる複数の光学情報を小さな視野ごとに分割しているが、波長幅ごとに分割してもよい。

【0042】
そして、体積ホログラム光学素子104は、これら光角度A1乃至A4ごとに分割された光学情報のそれぞれを独立に変調、符号化する。体積ホログラム光学素子104で符号化された符号化像のそれぞれが多重化されたものは、図3に示すように、イメージセンサ106により多重化像D3の画像として取得される。

【0043】
イメージセンサ106で得られた多重化像D3は、撮像部102の後段側に設けられる画像処理部108によって、画像復元処理して撮像対象の撮像データとして分離再構成される。本実施形態では、当該多重画像D3を画像のスパース性を積極的に利用した圧縮センシングによる画像復元処理で分離再構成する。

【0044】
なお、本実施形態では、画像処理部108で多重化像D3を圧縮センシングする際に、再構成画像の情報量(画角とサンプリング解像度と波長数の積)の上限は、再構成画像の圧縮率、すなわち、何らかの基底空間上で対象をどれだけスパースに表現して良いとするかによって決まる。例えば、画像工学分野で実験用標準画像として用いられるLena画像を画質指標(Peak Signal-to-Noise Ratio)30dB以上で再構成することを目的とする場合、設定可能な圧縮率は、凡そ10であるから、同じ画角の広角カメラに比べてサンプリング解像度の向上の上限が10倍となる。また、再構成画像の画質の低下を更に許容すれば、より一層の解像度の向上が期待できる。その際に、どれだけの画質が許容できるかに関しては、適用先の映像システムにより適宜規定される。

【0045】
このように、本実施形態では、体積ホログラム光学素子(vHOE)104の波面再現性、角度選択性、及び波長選択性を利用して、一般的な屈折・反射型の光学素子では、実現できないような高機能な光学素子を実現している。特に、近年では、体積ホログラム光学素子104に使用される商用フォトポリマーが高感度化・高安定化したことに伴い、体積ホログラム光学素子104が高精度に生成できるようになったので、単一の光学素子による高情報量(広視野・多波長・高画素数の全て、又は何れか)の撮像の実現性が高まっている。

【0046】
また、近年では、信号処理技術の発展により、多重像分離に必要な画像再構成処理である「圧縮センシング」技術が成熟して実用的な処理速度・精度での画像処理技術の実装が実現可能となり、複数画像の多重化撮像とその分離が精度良く実現できるようになっている。このため、本実施形態では、高設計自由度を有する体積ホログラム光学素子(vHOE)104と、高精度信号処理を実行可能な画像処理部106を融合設計することによって、既存の撮像法の高解像度化の物理的限界を打破するような新しい光-計算機融合型の撮像システム100としている。

【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る撮像システムを適用した撮像方法について、図面を使用しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る撮像システムを適用した撮像方法の概略を示すフロー図であり、図5A乃至図5Dは、本発明の一実施形態に係る撮像システムによる撮像結果を示す説明図である。

【0048】
本発明の一実施形態に係る撮像システムを適用した撮像方法は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する撮像方法であって、簡素な光学系の構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できることを特徴とする。本実施形態では、撮像方法は、図4に示すように、分割工程S11と、符号化工程S12と、多重化工程S13と、及び復元処理工程S14とを有し、これらの工程S11乃至S14が図4に示すフローで行われることによって、効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現する。

【0049】
分割工程S11では、撮像対象の複数の光学情報を小さな視野・波長幅ごとに分割する。本実施形態では、撮像部の前段側に体積ホログラム光学素子が設けられているので、当該体積ホログラム光学素子を介して撮像した撮像対象となる複数の光学情報を小さな視野・波長幅ごとに分割する。

【0050】
符号化工程S12では、当該分割工程S11で分割された複数の光学情報ごとに体積ホログラム光学素子で符号化して符号化像を得る。本実施形態では、体積ホログラム光学素子によって、視野や波長幅ごとに分割された光学情報のそれぞれを独立に変調、符号化している。

【0051】
多重化工程S13では、複数の光学情報ごとに得られた符号化像のそれぞれをイメージセンサで多重化して多重化像を取得する。本実施形態では、体積ホログラム光学素子で符号化された符号化像のそれぞれが多重化されたものがイメージセンサにより多重化像の画像として取得される。

【0052】
復元処理工程S14では、多重化像を復元対象となる画像のスパース性を利用して圧縮センシングにより復元処理して、分離再構成する。本実施形態では、イメージセンサで得られた多重化像が画像処理部によって、画像のスパース性を積極的に利用した圧縮センシングによる画像復元処理で分離再構成される。

【0053】
このように、本実施形態では、イメージセンサの前段側に体積ホログラム光学素子を設けることによって、当該体積ホログラム光学素子の性質を利用して、撮像対象に含まれる各光学情報ごとに分割して独立に符号化できるようになる。このため、イメージセンサで各光学情報の多重化像を生成して画像処理部で当該多重化像を分離再構築して、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。すなわち、vHOEとイメージセンサのみ、場合によっては、vHOEとイメージセンサとレンズ等の幾つかの補助光学素子のみで構成された小型かつシンプルな光学系によって、広視野・多波長・高画素数の全て、又は何れかを満たす高情報量の撮像を実現できる。

【0054】
本実施形態の撮像システム、撮像方法を適用することによって、図5Aに示す撮影画像が得られる。一方、図5Aに記録されている画像の画像分裂に基づく符号化を、分裂幅を強調して分かりやすく表示した例を図5Bに示す。また、本実施形態の撮像システム、撮像方法を適用して、画像のスパース性を積極的に利用した圧縮センシングによる画像復元処理で分離再構成することによって、図5Cに示す一の視野の画像と図5Dに示す他の視野の画像が得られる。このことからも、本実施形態の撮像システム、撮像補法によって、簡素な構成で効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現可能であることがわかる。

【0055】
なお、前述したように、体積ホログラム光学素子104は、光が入射した際におけるホログラム露光時に記録した光の波面を再生する波面再現性、光の入射角ごとに独立な波面の記録・再生を可能とする角度選択性、及び光の波長ごとに独立な波面の記録・再生を可能とする波長選択性を有する。特に、体積ホログラム光学素子104が角度選択性と波長選択性を有するためには、それぞれの角度や波長に対応する異なる干渉縞のパターンを体積ホログラム光学素子104に設ける必要がある。このため、従来では、体積ホログラム光学素子に異なる干渉縞パターンを設けるためには、異なる干渉縞パターンを設けるのに必要な回数の多数露光を行っていた。

【0056】
しかしながら、1つの体積ホログラム光学素子に複数の異なる干渉縞パターンを設けるために、多数露光を行うと、体積ホログラム光学素子の回折効率の減少やクロストークの発生といった問題が発生する。特に、体積ホログラム光学素子が高度な角度選択性と波長選択性を有するためには、より多数の干渉縞パターンが設けられる必要があり、多数露光に伴う上記問題が顕著になる。

【0057】
このため、本発明の一実施形態に係る撮像システム100に備わる体積ホログラム光学素子104では、例えば、図6Aに示すような回折効率や屈折角等の光学特性が異なる複数のホログラム素子104a、104b、104c、104dのそれぞれに異なる干渉縞のパターンを設けてから、図6Bに示すように、各ホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層する構成とすることも可能である。すなわち、本実施形態では、体積ホログラム光学素子104は、干渉縞のパターンがそれぞれ異なる複数のホログラム素子104a、104b、104c、104dが積層されて構成されることとしてもよい。

【0058】
このように、干渉縞のパターンが異なる複数のホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層させる構成とすることによって、体積ホログラム光学素子104は、図6Bに示すように、様々な角度の入射光に対して角度選択性や波長選択性を有するので、撮像対象に含まれる各光学情報が光学情報ごとに分割、符号化されて、カメラ103のイメージセンサに入るようになる。このため、撮像対象に含まれる各光学情報が光学情報ごとに分割されて独立に符号化されるので、当該イメージセンサで各光学情報の多重化像を取得してから、後続の画像処理部108(図1参照)で当該多重化像を分離再構築することによって、効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現できる。

【0059】
また、本実施形態では、体積ホログラム光学素子104を多重露光によって作成しないで、異なるホログラム素子104a、104b、104c、104dのそれぞれに所望の干渉縞のパターンを露光して形成してから、これらのホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層させて構成させる。このため、ホログラムの多重露光回数を減らせるので、体積ホログラム光学素子104の回折効率の減少やクロストーク発生のリスクを低減できる。

【0060】
ホログラム素子は、通常、当該ホログラム素子を構成するフォトポリマーに露光することによって、当該フォトポリマーを構成するモノマーが移動して所望の干渉縞が形成される。しかしながら、1つのホログラム素子を構成するフォトポリマーに異なる干渉縞のパターンを形成しようとすると、干渉縞同士がクロストークを起こすことが問題となる。

【0061】
このため、本実施形態では、異なる干渉縞のパターンを別個のホログラム素子104a、104b、104c、104dにそれぞれ露光して形成して、当該干渉縞を構成するモノマーの移動が停止した状態になってから、これらのホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層して体積ホログラム光学素子104を構成している。このようにすることによって、各ホログラム素子104a、104b、104c、104dに形成された干渉縞が安定した状態となるので、体積ホログラム光学素子104の光学性能が向上するようになる。

【0062】
また、本実施形態では、体積ホログラム光学素子104は、干渉縞のパターンが異なる複数のホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層させる構成となっているので、これらのホログラム素子104a、104b、104c、104dがそれぞれ傾き角度又は配置を調整可能に構成されるようになる。このため、体積ホログラム光学素子104を露光して干渉縞を設けた後でも、各ホログラム素子104a、104b、104c、104dの傾き角度又は配置を調整することによって、柔軟にPSFを設計・制御できるようになる。

【0063】
本発明の一実施形態に係る撮像システム100に備わる体積ホログラム光学素子104をこのような構成とすることによって、図7に示すように、レーザー証明された拡散物体となる「A」を表示する印刷紙D6と、「B」を表示する印刷紙D7をレンズとイメージセンサを備えるカメラ103で撮像すると、これら印刷紙D6、D7で表示される「A」と「B」の多重像D8が取得される。また、本実施形態の撮像システム、撮像方法を適用して、画像のスパース性を積極的に利用した圧縮センシングによる画像復元処理で分離再構成することによって、再構成視野による一の視野の画像D9と他の視野の画像D10が得られる。

【0064】
このことから、体積ホログラム光学素子104は、干渉縞のパターンが異なる複数のホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層させる構成としても、効率的に映像記録の広角化、多波長化、高解像度化を実現可能であることがわかる。なお、本実施形態では、4つの異なるホログラム素子104a、104b、104c、104dを積層させて体積ホログラム光学素子104を構成しているが、当該体積ホログラム光学素子104を構成する積層させるホログラム素子の個数は、4つに限定されず、他の個数から構成するようにしてもよい。

【0065】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る撮像システム、撮像方法を適用することによって、カメラアレイ・センサアレイで実現されるようなシングルショット広角・多波長・高解像度イメージングを体積ホログラム光学素子とイメージセンサ(場合によっては、レンズ等の補助光学素子)を付加したのみの小型で簡素な光学系で実現できるようになる。

【0066】
すなわち、撮像システムの撮像手段として、複数の視野・波長の像情報を独立に一括符号化する光学素子となる体積ホログラム光学素子を利用することによって、小型化したカメラ等のコンパクトな装置によって、映像記録の広角化、多波長化、高解像度化した高撮像情報量を容易に実現できるようになる。

【0067】
このため、ユーザが気軽に使えるサイズ、コスト、撮像時間で超高画素マルチスペクトルカメラを実現できるようになる。すなわち、本発明の一実施形態に係る撮像システム、及び撮像方法は、撮像及び画像解析対象の高情報化が進行する情報時代における画像入力のための新しい基盤技術として応用され得るので、極めて大きな工業的価値を有する。

【0068】
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。

【0069】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、撮像システムの構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 撮像システム、102 撮像部、103 カメラ、104 体積ホログラム光学素子、104a、104b、104c、104d ホログラム素子、106 イメージセンサ、108 画像処理部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6