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明細書 :熱輸送デバイス及びこれを用いた炉

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年5月21日(2020.5.21)
発明の名称または考案の名称 熱輸送デバイス及びこれを用いた炉
国際特許分類 F28D  15/00        (2006.01)
F28D  20/00        (2006.01)
F25B   9/00        (2006.01)
F27B  17/00        (2006.01)
FI F28D 15/00
F28D 20/00 A
F25B 9/00 Z
F27B 17/00 E
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 37
出願番号 特願2019-519552 (P2019-519552)
国際出願番号 PCT/JP2018/018011
国際公開番号 WO2018/216472
国際出願日 平成30年5月9日(2018.5.9)
国際公開日 平成30年11月29日(2018.11.29)
優先権出願番号 2017103794
優先日 平成29年5月25日(2017.5.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】上田 祐樹
【氏名】吉岡 和行
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
【識別番号】518102425
【氏名又は名称】昭電工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求
要約 高温熱源と高温熱源よりも低温の低温熱浴との間に跨るように配設され、閉空間内に気体が封入され、内部に両端部が閉塞された管路が形成された容器と、管路内に配設され、両端部間を連通する細孔が形成されると共に容器の外部から断熱された蓄熱器と、管路内で蓄熱器の高温熱源側端部に隣接して設けられ、高温熱源の熱を蓄熱器に移動させる第1熱交換器と、管路内で蓄熱器の低温熱浴側端部に隣接して設けられ、蓄熱器の熱を低温熱浴に移動させる第2熱交換器と、を備え、蓄熱器は、管路上において、管路の高温熱源側端部から管路長の12.5%~25%の位置に蓄熱器の管路延在方向中心が位置する熱輸送デバイスが提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
高温熱源と前記高温熱源よりも低温の低温熱浴との間に跨るように配設され、閉空間内に気体が封入され、内部に両端部が閉塞された管路が形成された容器と、
前記管路内に配設され、両端部間を連通する細孔が形成されると共に前記容器の外部から断熱された蓄熱器と、
前記管路内で前記蓄熱器の高温熱源側端部に隣接して設けられ、前記高温熱源の熱を前記蓄熱器に移動させる第1熱交換器と、
前記管路内で前記蓄熱器の低温熱浴側端部に隣接して設けられ、前記蓄熱器の熱を前記低温熱浴に移動させる第2熱交換器と、
を備え、前記蓄熱器は、前記管路上において、前記管路の前記高温熱源側端部から管路長の12.5%~25%の位置に当該蓄熱器の管路延在方向中心が位置する熱輸送デバイス。
【請求項2】
前記管路は、その一部が前記容器内の高温熱源側と低温熱浴側とを連通させる内管と、前記内管の外側に形成され高温熱源側の端部が閉塞されていると共に低温熱浴側で前記内管に連通する外管とを含み、
前記外管には、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、前記蓄熱器が配設されている請求項1記載の熱輸送デバイス。
【請求項3】
前記容器の低温熱浴側端部に前記容器内部に進退自在に配設され、前記容器内部に進入することにより熱音響自励波によって前記管路内に生ずる定在波の波形を変形させる調整手段を有する請求項1又は2項記載の熱輸送デバイス。
【請求項4】
断熱材から構成された炉壁と、
前記炉壁で囲まれた炉内に配置され、前記炉内を加熱するヒータと、
少なくとも冷却時に前記蓄熱器が前記炉壁に配置され、前記第1熱交換器が前記炉内に配置され、前記第2熱交換器が炉外に配置された請求項1~3のいずれか1項に記載の熱輸送デバイスと、
を備える炉。
【請求項5】
前記炉内の輻射を反射して前記炉内に配置された前記熱輸送デバイスに入射させる反射鏡を備える請求項4記載の炉。
【請求項6】
前記炉内で前記反射鏡を支持し、前記炉内から前記炉外まで延在する軸体を備える請求項5記載の炉。
【請求項7】
前記軸体の軸方向を中心として、前記反射鏡が前記軸体と一体的に回転可能とされた請求項6記載の炉。
【請求項8】
前記軸体には軸方向に延在する孔部が形成されており、前記孔部内に前記熱輸送デバイスが配設され、少なくとも前記炉の冷却時に前記孔部内から前記反射鏡の反射面側に前記熱輸送デバイスの第1熱交換器配設位置よりも端部側が露出されている請求項6又は7記載の炉。
【請求項9】
前記熱輸送デバイスの前記第1熱交換器配設位置よりも端部側の一部は、少なくとも炉の冷却時に、前記反射鏡の反射面の焦点に位置する請求項8記載の炉。
【請求項10】
前記反射鏡は、前記軸体と一体的に前記軸方向に沿って前記炉壁に対して進退可能に構成されている請求項8又は9記載の炉。
【請求項11】
前記熱輸送デバイスは、その軸方向に沿って前記炉壁に対して進退可能に構成されている請求項4~10のいずれか1項記載の炉。
【請求項12】
前記容器は、前記炉内の輻射の入射位置から前記第1熱交換器の配設位置までの板厚が、当該容器の他の部分の板厚と比較して局所的に厚くしてある請求項4~11のいずれか1項記載の炉。
【請求項13】
前記容器は、前記第1熱交換器の外周側に位置する部分が輻射透過性の部材で形成されている請求項4~12のいずれか1項記載の炉。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、熱輸送デバイス及びこれを用いた炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な熱輸送デバイスが用いられている。熱輸送デバイスとして、(A)相変化を用いるものと、(B)熱媒を強制的に流すことによる対流熱伝達(強制冷却)を利用するものが存在する。
【0003】
(A)の熱輸送デバイスの代表例として、ヒートパイプが挙げられる。ヒートパイプは、内部に作動流体が入れられており、高温部で液相から気相へ変化(沸騰)することにより熱源から作動流体が熱を受け取り、低温部で気相から液相へ変化(凝縮)することにより熱浴に放熱する装置である(例えば、特開2014-47979号公報参照)。このヒートパイプは、電源不要(投入仕事無し)で駆動される点が優れている。
【0004】
(B)の熱輸送デバイスは、一般的には熱媒として液体が用いられ、特に水による冷却が沸点以下の冷却に有効である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、(A)の熱輸送デバイスの代表例であるヒートパイプは、熱源(高温部)と低温部との温度差が小さいとヒートパイプが駆動せず、温度差が大きいとドライアウトする問題がある。
【0006】
また、熱源が高温(例えば500℃)の場合には、その高温下で液体であることを維持できる作動流体の選定が困難となる。作動流体に金属(例えば、ナトリウム等)を選択すれば上記条件はクリアするが、その物性から爆発の危険性がある。
【0007】
さらに、熱輸送により熱源の温度が徐々に低下する場合には、ヒートパイプの利用が困難である。すなわち、作動流体の相変化を生ずる温度が決っているため、初期温度(例えば500℃)で効率的に熱輸送させるように設定されたヒートパイプは、温度低下に伴いヒートパイプの熱輸送効率が低下していくと考えられるためである。
【0008】
一方、(B)の熱輸送デバイスでは、熱媒として液体を選択した場合には、熱源が高温(例えば500℃)の場合、ヒートパイプと同様に熱媒が爆発するおそれがある。
【0009】
熱媒として気体を選択して場合には、熱源が高温でも適用は可能である。しかしながら、相変化による駆動力が存在しないため密閉された空間内で熱媒(不活性ガス)を循環させることが必要になる。また、熱媒が高温となるため、耐圧、耐熱(耐高温)の高価なポンプが必要になる。したがって、熱媒として気体を選択した場合には、導入コストが高価になると共に、ポンプ駆動によるランニングコスト、及びポンプ等のメンテナンスコスト等がかかるという問題がある。
【0010】
本開示は、安全性が高く、かつ低コストで導入及び使用できる熱輸送デバイス、並びに、これを用いた炉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様は、高温熱源と前記高温熱源よりも低温の低温熱浴との間に跨るように配設され、閉空間内に気体が封入され、内部に両端部が閉塞された管路が形成された容器と、前記管路内に配設され、両端部間を連通する細孔が形成されると共に前記容器の外部から断熱された蓄熱器と、前記管路内で前記蓄熱器の高温熱源側端部に隣接して設けられ、前記高温熱源の熱を前記蓄熱器に移動させる第1熱交換器と、前記管路内で前記蓄熱器の低温熱浴側端部に隣接して設けられ、前記蓄熱器の熱を前記低温熱浴に移動させる第2熱交換器と、を備え、前記蓄熱器は、前記管路上において、前記管路の前記高温熱源側端部から管路長の12.5%~25%の位置に当該蓄熱器の管路延在方向中心が位置する熱輸送デバイスである。
【0012】
上記第1の態様によれば、高温熱源側と低温熱浴間を跨ぐように配設された閉空間からなる容器内には、気体が封入されると共に、両端部が閉塞された管路が形成されている。この管路内には、容器外部から断熱され両端部間を連通する細孔が形成された蓄熱器と、蓄熱器の高温熱源側端部(以下、「第1端部」という)に隣接して高温熱源の熱を蓄熱器に移動させる第1熱交換器と、蓄熱器の低温熱浴側端部(以下、「第2端部」という)に隣接して蓄熱器の熱を低温熱浴に移動させる第2熱交換器とが配設されている。
【0013】
したがって、蓄熱器において第1端部から第2端部に向かって温度勾配を生じ、第1端部と第2端部の温度比が閾値を超えると、蓄熱器の細孔内の気体が熱音響自励振動を生ずる。この結果、管路内に定在波が発生する。
【0014】
ここで、蓄熱器は、管路上で高温熱源側端部から管路長の12.5%~25%の位置に蓄熱器の管路延在方向中心が位置しているため、この熱音響自励波の定在波(1/2波長モード)の圧力振幅が第1端部から第2端部に向かって単調減少するように配置されている。
【0015】
この結果、蓄熱器の細孔内の気体と細孔壁部との間の熱交換により、蓄熱器内の第1端部側から第2端部側に熱を輸送することが可能となる。特に、管路上の上記位置に蓄熱器が配置されることによって、定在波の圧力振幅と速度振幅との積が増大する。これにより、蓄熱器による熱輸送効率が一層高められる。
【0016】
すなわち、高温熱源の熱を第1熱交換器、蓄熱器、第2熱交換器を介して低温熱浴に効率高く取り出すことができる。
【0017】
なお、この熱輸送デバイスは、駆動源が不要であるため、ランニングコストやメンテナンスコストが不要であり低コストで導入及び使用が可能であると共に、気液の相変化等を用いないため、相変化を用いるものと比較して安全性が高い。
【0018】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記管路は、その一部が前記容器内の高温熱源側と低温熱浴側とを連通させる内管と、前記内管の外側に形成され高温熱源側の端部が閉塞されていると共に低温熱浴側で前記内管に連通する外管とを含み、前記外管には、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、前記蓄熱器が配設されている熱輸送デバイスである。
【0019】
上記第2の態様によれば、管路の一部が内管と内管の外側に形成された外管からなる二重管構造とされており、外管の高温熱源側端部が閉塞されている。また、外管に蓄熱器、第1熱交換器、第2熱交換器が配設されている。なお、外管及び内管は、低温熱浴側端部で連通されている。すなわち、容器内には、外管の高温熱源側端部(閉塞部分)から外管、容器の低温熱浴側端部、内管を介して容器の高温熱源側端部に到る管路が形成されている。
【0020】
したがって、外管に配設された蓄熱器において第1端部から第2端部に向かって温度勾配を生じ、第1端部と第2端部の温度比が閾値を超えると、蓄熱器の細孔内に気体が熱音響自励振動を生ずる。この結果、管路内に定在波が発生する。
【0021】
ここで、蓄熱器は、管路上で高温熱源側端部(外管の閉塞部分)から管路長の12.5%~25%の位置に蓄熱器の管路延在方向中心が位置しているため、この熱音響自励波の定在波(1/2波長モード)の圧力振幅が第1端部から第2端部に向かって単調減少するように配置されている。
【0022】
この結果、蓄熱器の細孔内の気体と細孔壁部との間の熱交換により、蓄熱器内の第1端部側から第2端部側に熱を輸送することが可能となる。特に、管路上の上記位置に蓄熱器を配置することによって、定在波の圧力振幅と速度振幅との積が増大する。これにより、熱輸送効率が最大化されている。
【0023】
すなわち、高温熱源の熱を第1熱交換器、蓄熱器、第2熱交換器を介して低温熱浴に効率高く取り出すことができる。
【0024】
なお、この熱輸送デバイスは、駆動源が不要であるため、ランニングコストやメンテナンスコストが不要であり低コストで製造及び使用が可能であると共に、気液の相変化等を用いないため、相変化を用いるものと比較して安全性が高い。
【0025】
この際、外管の高温熱側端部から容器の低温熱浴側端部、内管を介して容器の高温熱源側端部まで到る管路が構成されるため、低温熱浴側に突出する容器体積を減少させることができる。すなわち、この熱輸送デバイスを熱排出手段として利用する場合に、高温熱源、例えば炉の外部に突出する部分の体積を抑制する(小型化する)ことができる。
【0026】
本開示の第3の態様は、前記第1または第2の態様において、前記容器の低温熱浴側端部に前記容器内部に進退自在に配設され、前記容器内部に進入することにより熱音響自励波によって前記管路内に生ずる定在波の波形を変形させる調整手段を有する。
【0027】
上記第3の態様によれば、容器内に対して進退する調整手段によって熱音響波自励波により管路内で生ずる1/2波長モードの定在波の波形(波長や振幅)が変更される。例えば、調整手段の挿入により定在波の波形が変更され、蓄熱器位置における定在波の圧力振幅(圧力振幅と速度振幅の積)が変更されることにより、熱輸送量を調整することができる。あるいは、蓄熱器の第1端部から第2端部に向かって圧力振幅が単調減少しなくなることによって、蓄熱器における熱音響自励波の発生を阻止し、熱輸送デバイスの熱輸送を停止させることができる。
【0028】
本開示の第4の態様は、断熱材から構成された炉壁と、前記炉壁で囲まれた炉内に配置され、前記炉内を加熱するヒータと、少なくとも冷却時に前記蓄熱器が前記炉壁に配置され、前記第1熱交換器が前記炉内に配置され、前記第2熱交換器が炉外に配置された請求項1~3のいずれか1項に記載の熱輸送デバイスと、を備える炉である。
【0029】
上記第4の態様によれば、ヒータの駆動によって昇温された炉の内部温度と外部温度に差を生ずる。ここで、炉に適用された熱輸送デバイスは、少なくとも炉の冷却時に、炉壁に蓄熱器が配設され、第1熱交換器が高温の炉内に配設され、第2熱交換器が低温の炉外に配設されている。したがって、炉内と炉外の温度差により、蓄熱器18の両端部(第1端部(第1熱交換器側端部)と第2端部(第2熱交換器側端部))の温度比が閾値を超えると蓄熱器で熱音響自励振動を生ずる。この熱音響自励振動により熱輸送デバイスの管路上に定在波を生じる。また、管路上で高温熱源(炉内)側端部から管路長の12.5%~25%の位置に蓄熱器の中心が位置することで、第1熱交換器から第2熱交換器へ圧力振幅が単調減少する。この結果、第1熱交換器から第2熱交換器へ向かって熱が効率的に移動する。すなわち、熱輸送デバイスを介して炉内の熱が炉外へ効率的に排出される。
【0030】
また、炉の冷却手段として配設された熱輸送デバイスは、駆動源が不要であるため、ランニングコストやメンテナンスコストが不要であり、炉に低コストで導入及び使用が可能であると共に、気液の相変化等を用いないため、相変化を用いるものと比較して安全性が高い。
【0031】
本開示の第5の態様は、前記第4の態様において、前記炉内の輻射を反射して前記炉内に配置された前記熱輸送デバイスに入射させる反射鏡を備える炉である。
【0032】
上記第5の態様によれば、炉の冷却時に炉内の輻射を反射鏡で反射させて熱輸送デバイスに入射させることにより、熱輸送デバイスの第1熱交換器が効率的に加熱される。すなわち、熱輸送デバイスによって、炉内の熱が炉外に一層効率的に排出される。
【0033】
本開示の第6の態様は、前記第5の態様において、前記炉内で前記反射鏡を支持し、前記炉内から前記炉外まで延在する軸体を備える炉である。
【0034】
上記第6の態様によれば、炉壁を貫通する軸体が反射鏡を支持するため、炉内の任意の位置に反射鏡を設置することができる。
【0035】
本開示の第7の態様は、前記第6の態様において、前記軸体の軸方向を中心として、前記反射鏡が前記軸体と一体的に回転可能とされた炉である。
【0036】
上記第7の態様によれば、反射鏡が軸体によって回転可能とされている。したがって、例えば、炉の加熱時にはヒータからの輻射の反射が熱輸送デバイスに入射することが抑制される方向に反射鏡を向ける。これにより、炉の昇温時等にヒータからの輻射が反射鏡を介して熱輸送デバイスに入射し、炉内から炉外まで延在する熱輸送デバイスの熱伝導等によって炉内の熱が炉外に排出されることを抑制することができる。すなわち、炉内の加熱(昇温)を効率的に行うことができる。
【0037】
あるいは、炉の加熱時に例えば、ヒータからの輻射を反射して加熱対象である被加工材に入射するように反射鏡を向ける。これにより、ヒータからの輻射が効率的に被加工材に入射され、被加工材の加熱効率が向上する。
【0038】
一方、炉の冷却時には炉内からの輻射を反射して熱輸送デバイスに入射する方向に反射鏡を向けることで、炉内の輻射を集約して熱輸送デバイスに入射させることができる。すなわち、輻射を介して炉内の熱を熱輸送デバイスに効率的に移動させることができる。
【0039】
特に、炉の冷却時に反射鏡を軸体の軸回りに回転させることにより、炉内の広範囲から輻射によって熱輸送デバイスに熱を移動させることができる。すなわち、炉内を均一に冷却することができる。
【0040】
このように、炉の加熱時には熱輸送デバイスを介した炉外への熱の排出を抑制することによって加熱効率を向上させると共に、冷却時には熱輸送デバイスにおける熱音響自励振動の定在波を用いることによって効率的に炉を冷却することができる。
【0041】
本開示の第8の態様によれば、前記第6又は第7の態様において、前記軸体には軸方向に延在する孔部が形成されており、前記孔部内に前記熱輸送デバイスが配設され、少なくとも前記炉の冷却時に前記孔部内から前記反射鏡の反射面側に前記熱輸送デバイスの第1熱交換器配設位置よりも端部側が露出されている炉である。
【0042】
上記のように、軸体の孔部に配置された熱輸送デバイスの端部が反射鏡の反射面側に露出している場合、炉内の輻射が反射面で反射されて熱輸送デバイスの端部に入射されやすくなる。換言すれば、炉内の輻射を集約して熱輸送デバイスの端部に入射することが可能となる。この結果、熱輸送デバイスの第1熱交換器側が加熱され、炉内から第1熱交換器への熱の移動が効率的となる。この結果、炉を効率的に冷却することができる。
【0043】
本開示の第9の態様は、前記第8の態様において、前記熱輸送デバイスの前記第1熱交換器配設位置よりも端部側の一部は、少なくとも炉の冷却時に、前記反射鏡の反射面の焦点に位置する炉である。
【0044】
上記第9の態様によれば、反射鏡の反射面の焦点位置に熱輸送デバイスの一部が配置されている。したがって、冷却時に炉内の輻射が反射鏡で反射され、反射鏡の反射面の焦点位置に配置された熱輸送デバイスの部分に入射される。すなわち、炉内の輻射の反射が熱輸送デバイスの第1熱交換器側の端部に一層集約されて入射される。この結果、炉内の熱が一層効率的に熱輸送デバイスに移動し、炉外に排出される。
【0045】
本開示の第10の態様は、前記第8又は第9の態様において、前記反射鏡は、前記軸体と一体的に前記軸方向に沿って前記炉壁に対して進退可能に構成されている炉である。
【0046】
上記第10の態様によれば、炉の加熱時には、反射鏡を炉壁から離間させる方向、すなわち軸体を炉内に進入させることで、軸体の内部(孔部)に熱輸送デバイスの第1熱交換器を収容する。これにより、炉内に位置する熱輸送デバイスの第1熱交換器の温度上昇が抑制され、蓄熱器の両端部の温度比が閾値以下に抑制される。この結果、熱輸送デバイスの蓄熱器に熱音響自励振動を生ずることが防止され、熱輸送デバイスの熱音響自励振動による排熱が防止される。この結果、炉の加熱時の排熱が抑制され、炉の加熱効率が向上する。
【0047】
一方、炉の冷却時には、反射鏡を炉壁に接近させる方向、すなわち、軸体を炉外に退出(変位)させることで、軸体の端部から反射鏡の反射面側に熱輸送デバイスの容器の第1熱交換器側端部を露出させる。この結果、炉内の輻射が反射鏡(の反射面)で反射されて熱輸送デバイスの容器の第1熱交換器側端部に入射される。すなわち、炉内の熱が熱輸送デバイスに一層効率的に移動され、熱音響自励振動によって効率的に炉外に排出される。
【0048】
本開示の第11の態様によれば、前記第4~第10の態様において、前記熱輸送デバイスは、その軸方向に沿って前記炉壁に対して進退可能に構成されている。
【0049】
上記第11の態様によれば、炉の加熱時に熱輸送デバイスを炉外側に移動させ、少なくとも熱輸送デバイスの第1熱交換器まで炉壁に配置(収容)される。これにより、炉の加熱時に炉内の輻射によって熱輸送デバイスの第1熱交換器が直接加熱されることが抑制される。この結果、熱輸送デバイスの蓄熱器の両端部の温度比が閾値未満に抑制され、蓄熱器で熱音響自励振動を生ずることが防止される。この結果、熱輸送デバイスを介して炉内の熱が炉外に移動することが抑制される。すなわち、効率的に炉を加熱することができる。
【0050】
一方、炉の冷却時には、熱輸送デバイスを炉内側に移動させ、熱輸送デバイスの第1熱交換器から端部側を反射鏡の反射面側に露出させる。この結果、炉内の輻射が反射鏡で反射され反射面側に露出された熱輸送デバイスの端部側を効率的に加熱する。したがって、熱輸送デバイスの第1熱交換器が効率的に加熱され、蓄熱器の両端部の温度比が閾値を超えることで、炉内の熱が炉外に効率的に排出される。
【0051】
本開示の第12の態様は、前記第4~第11の態様において、前記容器は、前記炉内の輻射の入射位置から前記第1熱交換器の配設位置までの板厚が、当該容器の他の部分の板厚と比較して局所的に厚くしてある炉である。
【0052】
前記第12の態様によれば、炉の冷却時に、炉内の輻射が反射鏡で反射され、熱輸送デバイスの容器の第1熱交換器から端部側に入射される。この輻射の入射により熱輸送デバイスの容器が加熱される。熱輸送デバイスの容器において、輻射の入射位置から第1熱交換器の配設位置までの板厚が局部的に厚くされているため、熱輸送デバイスにおける熱伝導量が増加され、輻射により熱輸送デバイスに移動した熱を第1熱交換器に効率的に移動させることができる。すなわち、炉内の熱を効率的に炉外に排出できる。
【0053】
本開示の第13の態様によれば、前記第4~第12の態様において、前記容器は、前記第1熱交換器の外周側に位置する部分が輻射透過性の部材で形成されている炉である。
【0054】
上記第13の態様によれば、炉の冷却時に炉内の輻射が直接、又は炉内の輻射が反射鏡で反射されて熱輸送デバイスの容器に入射される。この際、容器の第1熱交換器配設位置に入射された輻射は、容器の輻射透過性部材で形成された部位を透過して、第1熱交換器に入射される。すなわち、炉内の輻射が直接、又は反射鏡で反射されて第1熱交換器に入射されることにより、熱輸送デバイス内の熱伝導を介さずに炉内の熱が第1熱交換器に移動する。この結果、炉内の熱を一層効率的に炉外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る熱輸送デバイスの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る熱輸送デバイス内に生ずる1/2波長モードの定在波の圧力振幅と蓄熱器との位置関係を示すグラフである。
【図3】第1実施形態に係る熱輸送デバイスにおいて、調整弁の内管閉塞時を示す概略構成図である。
【図4】内管閉塞時の熱輸送デバイス内に生ずる1/2波長モードの定在波の圧力振幅と蓄熱器との位置関係を示すグラフである。
【図5】第1実施形態に係る熱輸送デバイスにおいて、調整弁の管路長調整時を示す概略構成図である
【図6】管路長調整時の熱輸送デバイス内に生ずる1/2波長モードの定在波の圧力振幅と蓄熱器との位置関係を示すグラフである。
【図7】第1実施形態に係る熱輸送デバイスを炉に適用した例の概略説明図である。
【図8A】第1実施形態に係る熱輸送デバイスを炉に適用した例の昇温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図8B】第1実施形態に係る熱輸送デバイスを炉に適用した例の保温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図8C】第1実施形態に係る熱輸送デバイスを炉に適用した例の降温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図9A】比較例に係る炉の昇温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図9B】比較例に係る炉の保温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図9C】比較例に係る炉の降温時の熱輸送を説明する模式図である。
【図10】第2実施形態に係る熱輸送デバイスの概略構成図である。
【図11】第2実施形態に係る熱輸送デバイスを炉に適用した例の概略説明図である。
【図12】第2実施形態に係る熱輸送デバイス内における蓄熱器位置と熱効率及び熱輸送量との関係を示した数値計算結果並びに試験結果を示すグラフである。
【図13】第3実施形態に係る炉の加熱状態を示した概略斜視図である。
【図14】第3実施形態に係る反射鏡ユニットと熱輸送デバイスを示した分解斜視図である。
【図15】第3実施形態に係る炉の加熱状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイス、ヒータとの位置関係を示した拡大断面図である。
【図16】第3実施形態に係る炉の加熱状態を示した断面図である。
【図17】第3実施形態に係る炉の冷却状態を示した概略斜視図である。
【図18】第3実施形態に係る炉の冷却状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイス、ヒータとの位置関係を示した拡大断面図である。
【図19】第3実施形態に係る炉の冷却状態を示した断面図である。
【図20】第3実施形態の他の例に係る炉の加熱状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイス、ヒータとの位置関係を示した拡大断面図である。
【図21】第3実施形態の他の例に係る炉の加熱状態を示した断面図である。
【図22】第4実施形態に係る炉の加熱状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイス、ヒータとの位置関係を示した拡大断面図である。
【図23】第4実施形態に係る炉の冷却状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイス、ヒータとの位置関係を示した拡大断面図である。
【図24】第4実施形態の他の例に係る炉の冷却状態における反射鏡ユニット、熱輸送デバイスの位置関係を示した要部拡大断面図である。
【図25】第5実施形態に係る炉の加熱状態を示した概略斜視図である。
【図26】第5実施形態に係る炉の加熱状態を示した断面図である。
【図27】第5実施形態に係る炉の冷却状態を示した断面図である。
【図28】第5実施形態の他の例に係る炉の加熱状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を詳細に説明する。先ず、第1実施形態に係る熱輸送デバイスについて説明し、その熱輸送デバイスが炉に適用された例について説明する。次に、第2実施形態に係る熱輸送デバイスについて説明し、その熱輸送デバイスが炉に適用された例について説明する。さらに、第1実施形態の熱輸送デバイスが適用された炉について第3~第5実施形態として説明する。

【0057】
[第1実施形態]
(装置構成)
先ず、図1を参照して本開示に係る熱輸送デバイス10について説明する。熱輸送デバイス10は、円筒形の容器である筒状体12と、筒状体12の内部に配設された第1熱交換器14及び第2熱交換器16と、筒状体12の内部で第1熱交換器14と第2熱交換器16の間に配設された蓄熱器18と、筒状体12の内部に対して進退自在に取り付けられた調整弁20と、を備えている。

【0058】
(筒状体12)
筒状体12は、円筒形形状をしており、その内部が閉空間とされている。この筒状体12の内部には、気体、例えば窒素ガスが充填されている。

【0059】
筒状体12は、軸方向一端の第1端部12Aから他端の第2端部12Bまで延在しており、軸方向の一部に筒状体12と同軸で筒状体12よりも径の小さい内管22が形成されている。内管22は、両端部が開口されており、筒状体12の第1端部12A側と第2端部12B側とを連通している。

【0060】
また、内管22の径方向外側に位置する筒状体12の一部と内管22で囲まれた部分を便宜的に外管24という。

【0061】
この外管24は、第1端部12A側端部が閉塞面26で閉塞されている一方、第2端部12B側端部が筒状体12の第2端部12B側に開放されている。すなわち、内管22と外管24は、筒状体12の第2端部12B側で連通されている。したがって、筒状体12の内部には、外管24の閉塞面26から外管24、筒状体12の第2端部12B側、内管22を介して筒状体12の第1端部12Aに到る両端部が閉塞された管路Xが形成されていることになる。管路Xの閉塞面26から第1端部12Aに到る管路Xに沿った長さ(管路長)がL0とされている。

【0062】
また、外管24の内部には、第1端部12A側から第2端部12B側に向かって順に第1熱交換器14、蓄熱器18、第2熱交換器16が配設されている。

【0063】
筒状体12の第1端部12A側は、軸方向において第1熱交換器14の位置まで高温熱源28内に配置されている。一方、筒状体12の第2端部12B側は、軸方向において第2熱交換器16の位置が高温熱源28よりも低温な低温熱浴30内に配置されている。

【0064】
なお、本実施形態において、「高温熱源」とは、熱輸送デバイス10に熱を供給する外界のことであり、「低温熱浴」とは、熱輸送デバイス10から熱を排出する外界のことを意味する。

【0065】
さらに、筒状体12において蓄熱器18が配設された部分の周囲(外周)には、断熱部材32が配設されている。したがって、蓄熱器18は、筒状体12の外部と断熱されている。

【0066】
また、筒状体12の第2端部12B側には、後述する調整弁20が配設されている。

【0067】
(第1熱交換器14)
第1熱交換器14は、図1に示すように、外管24の断面を塞ぐようにリング形状をしており、外管24において蓄熱器18の第1端部12A側に隣接して配設されている。また、第1熱交換器14は高温熱源28の内部に配設されている。第1熱交換器14は、高温熱源28の熱を蓄熱器18に移動させるものであって、一例として内部に作動流体を流すことによって熱を移動させても良いし、他の例として流体を流さずに輻射又は熱伝導を利用して熱を移動させても良い。

【0068】
(第2熱交換器16)
第2熱交換器16は、図1に示すように、外管24の断面を塞ぐようにリング形状をしており、外管24において蓄熱器18の第2端部12B側に隣接して配設されている。また、第2熱交換器16は、低温熱浴30の内部に配設されている。すなわち、第2熱交換器16は内部に作動流体を流すこと、又は輻射若しくは熱伝導により蓄熱器18の熱を低温熱浴30に移動させるものである。

【0069】
(蓄熱器18)
蓄熱器18は、図1に示すように、外管24の断面を塞ぐようにリング形状をした構造体33であり、構造体33には、軸方向に沿って第1端部12A側から第2端部12B側に貫通する多数の細孔34が形成されている。

【0070】
細孔34の径は、無次元化流路径r=R/Dが2程度となるように設定されている。ここで、Rは細孔34の直径であり、Dは細孔34内に形成される熱境界層の厚さである。

【0071】
また、蓄熱器18は、図1及び図2に示すように、管路上において、閉塞面26から管路長L0の25%(0.25L0)の位置に管路延在方向(軸方向)中心が位置するように外管24に配置されている。

【0072】
なお、本実施形態では蓄熱器18の構造体33に第1端部12A側から第2端部12B側に軸方向に沿って貫通する多数の細孔34が形成されたものとしたが、第1端部12A側の端面から第2端部12B側の端面まで連通する多数の孔部が形成された多孔質体からなる板状のスタックを軸方向に沿って複数積層することによって、第1端部12A側から第2端部12B側まで連通する孔部を形成したものでも良い。この孔部も本開示の細孔に含まれる。

【0073】
(調整弁20)
調整弁20は、筒状体12の内部に配設され、第1端部12A側を向いて先細形状とされた円錐(コーン)形状の弁体36と、弁体36の第2端部12B側端部から軸方向に延在する軸体38とを有する。弁体36は、内管22の端部を閉塞可能な大きさ(径)を有する形状とされている。軸体38は、筒状体12の第2端部12Bに形成された孔部39から筒状体12の外部に延出されている。また、軸体38は、図示しない駆動手段によって軸方向に進退自在とされている。すなわち、軸体38の先端に取り付けられた弁体36が筒状体12の内部に進退自在とされている。

【0074】
(作用)
このように構成される熱輸送デバイス10の作用を説明する。

【0075】
図1のように配置された熱輸送デバイス10の蓄熱器18では、高温熱源28に配置された第1熱交換器14と低温熱浴30に配置された第2熱交換器16との間に配置された蓄熱器18に温度勾配を生じる。この蓄熱器18において高温側となる第1端部12A側端部の温度と低温側となる第2端部12B側端部の温度との比(温度比)が閾値を超えると、蓄熱器18の細孔34内の気体が熱音響自励振動を生ずる。

【0076】
この熱音響自励振動により筒状体12の内部、具体的には、外管24の閉塞面26から筒状体12の第2端部12B側に至り、第2端部12B側から内管22を介して第1端部12Aに至る管路Xに定在波が形成される。

【0077】
ここで、筒状体12の管路上に1/2波長モードで定在波が形成された場合を図2に示す。図2において、X軸は、管路上における閉塞面26からの距離を表している。ここで、L0は、閉塞面26から筒状体12の第1端部12Aに到る管路長を示す。

【0078】
なお、図2のX軸の下に配置された蓄熱器18は、管路上における位置、特に定在波との位置関係を示している。

【0079】
すなわち、図2に示すように、筒状体12の内部に定在波が形成された場合に、上記管路長L0に対して閉塞面26から蓄熱器18の管路延在方向(軸方向)中心までの距離を0.25L0としているため、圧力振幅と速度振幅との積が最も大きい部分に蓄熱器18が配置され、熱輸送量が最大化されている。

【0080】
このように、本実施形態に係る熱輸送デバイス10では、蓄熱器18の内部に温度勾配を生じさせ、蓄熱器18の両端部間の温度比が閾値を超えることで熱音響自励振動を生じさせると共に、筒状体12の内部に熱音響自励振動に基づく定在波を発生させる。さらに、管路上で閉塞面26から管路長L0の25%(0.25L0)の位置に蓄熱器18の管路延在方向中心を配置したため、蓄熱器18の高温側から低温側に向かって定在波の圧力振幅が単調減少し、蓄熱器18内で高温側から低温側に熱輸送させることができる。すなわち、高温熱源28の熱を第1熱交換器14、蓄熱器18、第2熱交換器16を介して低温熱浴30に輸送することができる。

【0081】
また、管路上で閉塞面26から0.25L0の位置に蓄熱器18の管路延在方向中心を配置したため、定在波の圧力振幅と速度振幅の積が最大となる位置に蓄熱器18の管路延在方向中心が配置され、蓄熱器18による熱輸送量が最大化される。したがって、熱輸送デバイス10は、高温熱源28から低温熱浴30に効率的に熱輸送できる。

【0082】
さらに、熱輸送デバイス10は、筒状体12の一部が内管22、外管24を有する二重管構造とされており、外管24の高温熱源側端部(閉塞面26)から筒状体12の高温熱源側端部(第1端部12A)に到る管路Xが形成されている。したがって、筒状体12のうち、低温熱浴30側に突出している部分の容積の全体の容積に占める割合が抑制される(小型化される)。換言すれば、筒状体12の高温熱源28側に突出している部分の容積が大きくなるため、高温熱源28から筒状体12への伝熱面積が増大して、熱輸送デバイス10の熱輸送効率がさらに向上する。

【0083】
なお、蓄熱器18の高温側端部と低温側端部との温度差が閾値よりも大きく上回った場合には、管路X内に音響自励波による1波長モードの定在波が発生する場合がある。この場合には、1波長モードの定在波によっても蓄熱器18内の熱輸送が行われ、熱輸送デバイス10の熱輸送効率がさらに向上する。

【0084】
また、熱輸送デバイス10では、熱音響自励振動を用いることによって、ポンプ等の駆動源(電源)無しで熱輸送を行うことかできる。したがって、熱輸送デバイス10の製造コストやランニングコストを低減することができる。また、熱輸送自体には駆動源がないためメンテナンスフリーである。

【0085】
さらに、熱輸送デバイス10は、筒状体12の内部に封入された窒素ガスを気体のまま使用するものであり、液体から気体への相変化を用いないので作動流体(本実施形態では窒素ガス)が爆発するおそれがなく、安全性が高い。

【0086】
さらに、熱輸送デバイス10では、調整弁20の図示しない駆動源で駆動することにより、弁体36を内管22の端部側に接近・離間させることができる。図3に示すように、内管22の端部(開口部)を弁体36が閉塞することにより、定在波が形成される管路Xが閉塞面26から弁体36までに短縮される。すなわち、管路長がL0からL1に短縮される。

【0087】
この結果、図4に示すように、1/2波長モードの定在波の波形(波長)が短縮され、定在波に対する蓄熱器18の相対的位置が変化し、蓄熱器18の高温側から低温側に圧力振幅が単調減少する関係ではなくなる。すなわち、蓄熱器18の両端部間に温度勾配を生じても熱音響自励振動を生ずることがなくなる。これにより、蓄熱器18の熱輸送が停止される。

【0088】
さらに、図5に示すように、調整弁20の筒状体12の内部への進入量(内管22の端部に対する接近量)を内管22の端部に当接しない程度に調整することにより、定在波の波形(振幅)を変化させることができる。具体的には、図6に示すように、定在波の圧力振幅を全体的に変更(例えば、低減)させることができる。この結果、蓄熱器18が配置される位置の圧力振幅と速度振幅の積を変化させ、蓄熱器18による熱輸送量(熱伝導率)を調整することができる。

【0089】
(適用例)
このような熱輸送デバイス10を工業用の炉40に適用してものについて図7~図9Cを参照して説明する。なお、熱輸送デバイス10の構成要素については、上述の実施形態と同様の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。

【0090】
炉40は、図7に示すように、断熱材42で閉空間である矩形体形状に形成されており、その上壁から内部にヒータ44と熱輸送デバイス10の一部が挿入されている。ヒータ44は、図示しない駆動源により駆動されることにより断熱材42の内部の気体を加熱し、炉40の内部を所定温度まで昇温させ、所定温度に維持(保温)するものである。

【0091】
一方、熱輸送デバイス10は、炉40の駆動終了後、炉40内の温度を低下させるため、炉内の熱を外部に排出するために用いられる。熱輸送デバイス10の第1端部12A側が炉40の内部に挿入され、第2端部12B側が炉40の外部に突出して配置されている。具体的には、熱輸送デバイス10(筒状体12)の軸方向において、筒状体12の第1端部12Aから第1熱交換器14の端部までが炉40の内部に挿入されており、第2熱交換器16の端部から第2端部12Bまでが炉40の外部に配置されている。また、炉40の断熱材42の位置には熱輸送デバイス10の蓄熱器18が配設されている。

【0092】
このように炉40に熱輸送デバイス10が配設されることによる作用について、熱輸送デバイス10が配設されていない比較例の炉46との比較で説明する。

【0093】
比較例に係る炉46では、熱を排出する熱輸送デバイスが存在しないため、図9Cに示すように、炉内と炉外との温度差に基づく断熱材42を介した自然放熱によって炉内の冷却が行われる。自然放熱による熱量Q23の増加を図るには、断熱材42の厚さを低減して断熱性を低下させることが考えられる。しかしながら、自然放熱による熱量Q23の増加は、図9Aに示すように、昇温時にヒータ44から炉内に投入される熱量Q21や図9Bに示すように、保温時にヒータ44から炉内に投入される熱量Q22の増加につながる。したがって、炉内の熱を効率的に排出することが困難である。

【0094】
一方、熱輸送デバイス10が配設された炉40では、炉40の内部温度を昇温させる場合には、図8Aに示すように、ヒータ44が駆動され、熱量Q11が炉内に投入される。炉40の内部と外部の温度差によって断熱材42を介して炉内から熱量Q13が排出される。なお、熱輸送デバイス10は、調整弁20の弁体36が内管22の端部を閉塞する(図3参照)ことにより、蓄熱器18で熱音響自励振動を生じず、熱輸送が停止された状態とされている。したがって、炉40の内部温度は、入力される熱量Q11と排出される熱量Q13の差に応じて上昇していく。

【0095】
次に、炉40の内部温度を維持する(保温)する場合には、図8Bに示すように、ヒータ44が駆動され、炉40から排出される熱量Q13と等しい熱量Q12が炉内に投入される。この場合も、熱輸送デバイス10は、熱輸送を停止された状態とされている。したがって、炉40の内部温度は、そのまま維持(保温)される。

【0096】
さらに、炉40の内部温度を降温させる場合には、熱輸送デバイス10の調整弁20の弁体36を筒状体12の第2端部12Bに移動させ、内管22の端部を開放する(図1参照)。これにより、図8Cに示すように、熱輸送デバイス10は、炉40の内部温度と外部温度との差に基づいて熱音響自励振動を生じ、炉内から炉外へ熱量Q14を輸送(排出)する。このように、熱輸送デバイス10によって排出される熱量Q14と断熱材42からの自然放熱によって排出される熱量Q13とが炉内から炉外へ排出されるため、炉内を効率的に降温することができる。また、比較例の炉46のように断熱材42からの自然放熱のみの場合と比較して排熱量が大きいため、放熱のために断熱材42を薄くする必要がなく、昇温時や保温時の熱効率を高く維持することができる。

【0097】
また、熱輸送デバイス10は、筒状体12の一部を内管22と外管24の二重管構造とし、外管24に蓄熱器18や第1熱交換器14や第2熱交換器16を配置したため、炉40の外部に配置される第2端部12B側の筒状体12の部分の容積及び全体に対する割合が抑制され、既存の炉40に対する熱輸送デバイス10の取付性に優れる。

【0098】
熱輸送デバイス10の筒状体12のうち、炉内に配置される容積が大きいため、炉40(内部の気体)から筒状体12に対する伝熱面積が増加する。これにより、熱輸送デバイス10の炉内から炉外への熱輸送効率が一層向上する。

【0099】
さらに、熱輸送デバイス10は、筒状体12の中に作動流体である気体(窒素ガス)を封入しているため、炉内の気体と熱輸送デバイス10の気体が混合することはなく、炉内環境が保護される。

【0100】
また、熱輸送デバイス10は、内部の窒素ガスが気体のままで利用されるので、すなわち液体から気体への相変化を用いないため、気体の爆発等の危険性が回避され、使用温度が高い工業用の炉40等(例えば、500℃)に用いられても、安全性が高い。

【0101】
[第2実施形態]
(装置構成)
本開示の第2実施形態に係る熱輸送デバイスについて図10を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、第1実施形態と異なる点のみを説明する。

【0102】
熱輸送デバイス50は、図10に示すように、熱輸送デバイス10の筒状体12の一部に形成されていた二重管構造を取り除いた単管構造としたものである。したがって、この熱輸送デバイス50では、筒状体12の第1端部12Aから第2端部12Bに向かって管路Xが形成されている。なお、熱輸送デバイス50では、管路(軸方向)に沿って第1端部12Aから第2端部12B側の調整弁20に到る距離が管路長L0とされている。

【0103】
第1熱交換器14、第2熱交換器16、蓄熱器18は、筒状体12の断面の全域に配置されている。蓄熱器18は、管路Xにおいて、第1端部12Aから管路長L0の25%(0.25L0)の位置に管路延在方向(軸方向)中心が位置するように配設されている。この結果、筒状体12は、高温熱源28内に配置された軸方向長さよりも低温熱浴30(断熱部材32よりも外側)に配置された軸方向長さが長くなっている

【0104】
また、熱輸送デバイス50において、調整弁20は筒状体12の第2端部12Bに配設されている。調整弁20の弁体52は、筒状体12の断面形状(例えば、円形)と同じ円板状とされている。また、調整弁20は、図示しない駆動源によって軸体38が軸方向に進退自在とされている。すなわち、調整弁20の弁体52が筒状体12の軸方向に進退することにより、管路長を調整するものである。

【0105】
(作用)
このように構成される熱輸送デバイス50の作用を説明する。なお、熱輸送デバイス10と同様の作用については、説明を簡略化又は省略する。

【0106】
熱輸送デバイス50では、蓄熱器18内で熱音響自励振動を生じさせると共に、筒状体12の内部に熱音響自励振動に基づく定在波を発生させる。また、熱輸送デバイス50では、高温側から低温側に向かって定在波の圧力振幅が単調減少するように蓄熱器18が配設されている(図2参照)ため、高温熱源28から低温熱浴30に熱輸送することができる。

【0107】
しかも、管路上で第1端部12Aから0.25L0の位置に蓄熱器18の管路延在方向中心を配置したため、定在波の圧力振幅と速度振幅の積が最大となる位置に蓄熱器18の管路延在方向中心が配置され、蓄熱器18による熱輸送量が最大化される。したがって、熱輸送デバイス10は、高温熱源28から低温熱浴30に効率的に熱輸送できる。

【0108】
また、熱輸送デバイス50では、調整弁20の図示しない駆動源を駆動することにより、弁体52を筒状体12の第1端部12A(第2熱交換器16)側に接近・離間させることができる。これにより、定在波が形成される管路Xの管路長が変更され、定在波と蓄熱器18との相対的位置関係を変化させる。この結果、蓄熱器18が配置される位置の圧力振幅と速度振幅の積を変化させ、熱輸送デバイス50(蓄熱器18)による熱輸送量を調整することができる。

【0109】
さらに、定在波と蓄熱器18との相対的位置関係の変化によっては、蓄熱器18の高温側から低温側に定在波の圧力振幅が単調減少する関係ではなくなる。すなわち、蓄熱器18に温度勾配が生じても熱音響自励振動を生ずることがなくなり、熱輸送デバイス50(蓄熱器18)の熱輸送が停止される。

【0110】
すなわち、熱輸送デバイス50では、調整弁20を軸方向に進退させることにより、熱輸送の停止(定在波の発生の停止)又は熱輸送量(熱伝導率)の調整を行うことができる。

【0111】
(適用例)
このような熱輸送デバイス50を工業用の炉40に適用してものについて図11を参照して説明する。なお、熱輸送デバイス50の構成要素については、上述の実施形態と同様の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、工業用の炉についても、熱輸送デバイス10が適用された炉と同様の構成なので、同様の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。

【0112】
炉40に取り付けられた熱輸送デバイス50は、第1端部12A側が炉40の内部に挿入され、第2端部12B側が炉40の外部に突出して配置されている。具体的には、熱輸送デバイス10の軸方向において、第1端部12Aから第1熱交換器14の端部までが炉40の内部に挿入されており、第2熱交換器16の端部から第2端部12Bまでが炉40の外部に配置されている。したがって、断熱材42の位置には蓄熱器18が配設されている。

【0113】
このように炉40に熱輸送デバイス10が配設されることにより、炉40内の温度と炉40の外部の温度との温度差に基づいて蓄熱器18で熱音響自励振動を生じ、筒状体12の内部に定在波を発生させると共に、定在波の圧力振幅の勾配に基づいて第1熱交換器14から蓄熱器18を介して第2熱交換器16に炉40内の熱が効率的に排出される。

【0114】
また、熱輸送デバイス50は、単管である筒状体12の内部に第1熱交換器14、第2熱交換器16、蓄熱器18等を配設しているだけなので、構造が単純で製造が容易である。

【0115】
さらに、熱輸送デバイス50は、筒状体12のうち、炉40の内部に挿入されている割合が小さくできるというメリットがある。

【0116】
[試験例・数値計算例]
第2実施形態のような単管(筒状体)の熱輸送デバイスを用いて、筒状体内における蓄熱器の管路延在方向中心位置を変更した各熱輸送デバイスに対して、それぞれ熱効率(%)と熱輸送量(kW)を熱音響理論に基づいて数値計算で求めた(図12及びKenta NAKAMURA、Yuki UEDA、「Design and Construction of aStanding-Wave Thermoacoustic Engine with Heat Sources Having a Given Temperature Ratio」、Journal of Thermal Science and Technology、2011、vol6、No3、p416-p423参照)。

【0117】
具体的には、熱輸送デバイスにおける筒状体の直径を0.1 m、全長を3.5 mとし、この中に挿入された蓄熱器の軸(管路延在)方向長さを0.09 mとした。また、高温熱源の温度を450℃,低温熱源の温度は60℃に設定した。

【0118】
筒状体の内部(管路)には、1/2波長モードの定在波が発生し、圧力振幅は閉端(図10、筒状体の第1端部12A参照)で20 kPaとし,閉端から蓄熱器軸方向中心までの距離をパラメーターとして熱輸送量と熱効率を数値計算で求めた。

【0119】
ここで、熱効率とは、出力仕事/入熱量である。また、出力仕事=入熱量-排熱量となる。すなわち、熱効率=(入熱量-排熱量)/入熱量となる。また、熱輸送量=入熱量を意味している。すなわち、高温熱源から第1熱交換器を介して蓄熱器に到った熱量を熱輸送量としている。

【0120】
図12に示すように、熱効率は蓄熱器の高温側端部(閉端)から1/32波長に蓄熱器中心が位置するように配置する場合が最大となり、それ以降漸減している。

【0121】
一方、熱輸送量は、蓄熱器の高温側端部から1/48波長に蓄熱器中心が位置するように配置した場合から、蓄熱器中心を高温側端部から離間させるに従って増大している。

【0122】
従来の熱音響エンジンは、熱効率を高めることが求められているため、図12のグラフにおいて、管路の高温側端部から1/32波長程度から3/64波長程度までの範囲Aに蓄熱器中心が配置されている。

【0123】
これに対して本実施形態の熱輸送デバイスは、熱輸送を行うものであるため、熱輸送量が大きいほど好ましい。蓄熱器中心を管路の高温側端部から離間させるほど、熱輸送量は大きくなるが、熱効率が1%未満になった場合に数値計算で考慮していない熱の散逸等によって熱音響自励波自体が発生しなくなるおそれがある。そこで、蓄熱器中心が管路の高温側端部から1/16波長~1/8波長の範囲(図12のBの範囲)に蓄熱器中心を設置することによって、熱輸送量が大きい(熱輸送に適した)熱輸送デバイスを求めることができることが確認された。

【0124】
なお、図中の白三角は、数値計算と同様のサイズの試験用の熱輸送デバイスで熱効率を計測したものであり、図中の白四角は、試験用の熱輸送デバイスで熱輸送量を計測したものである。これにより、数値計算結果が実際の試験結果と良好に近似していることが確認された。

【0125】
[第3実施形態]
(装置構成)
本開示の第3実施形態として、第1実施形態に係る熱輸送デバイスを適用した工業用の炉について図13~図19を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。

【0126】
炉100は、図13に示すように、断熱材からなる矩形状の炉壁102と、炉壁102で囲まれた内部(以下、「炉内」という)で加工されるワークW(図16参照)が載置されるワーク台104と、炉内を所定温度に調整(昇温)するヒータ106と、熱輸送デバイス10(図15、図16参照)と、反射鏡ユニット108と、を備えている。

【0127】
ヒータ106は、ワーク台104の上側で対向する側方の炉壁102間を貫通して平行に2本配置されると共に、同様にワーク台104の下側で対向する側方の炉壁102間を貫通して平行に2本配置されている。

【0128】
反射鏡ユニット108は、図14に示すように、軸方向に貫通する孔部110が形成された円筒状のパイプ部112と、パイプ部112の先端に取り付けられた放物面からなる反射面114A(図15参照)が形成された反射鏡114と、を備えている。このパイプ部112が「軸体」に相当する

【0129】
反射鏡114は、図15に示すように、パイプ部112の軸方向に対して所定角度傾斜した状態で取り付けられている。また、反射鏡114には、パイプ部112の孔部110の一端が開口している(図13参照)。

【0130】
このように構成された反射鏡ユニット108は、パイプ部112が上又は下の炉壁102を貫通し、パイプ部112の一端に設けられた反射鏡114が炉内に位置するように炉100に配置されている。一方、パイプ部112の他端が炉壁102の外側(以下、「炉外」という)に配置されている。

【0131】
反射鏡ユニット108は、パイプ部112の他端を回転させることにより、反射鏡114をパイプ部112の軸回りに回転させることが可能とされている。また、反射鏡ユニット108は、パイプ部112を炉壁102に対して進退させることにより、反射鏡114を炉壁102に向かって接近・離間させることが可能とされている。

【0132】
さらに、反射鏡ユニット108のパイプ部112の孔部110には、図15に示すように、熱輸送デバイス10が配設されている。熱輸送デバイス10の第1端部12A側が炉100(炉壁102)の内部に挿入され、第2端部12B側が炉100(炉壁102)の外部に突出して配置されている。具体的には、熱輸送デバイス10(筒状体12)の軸方向において、第1端部12Aから第1熱交換器14までが炉内に挿入されており、第2熱交換器16から第2端部12Bまでが炉外に配置されている。また、炉100の炉壁102には、熱輸送デバイス10の蓄熱器18が配設されている。なお、図15では、図の説明の都合上、炉壁102の厚さを薄く記載している。

【0133】
また、熱輸送デバイス10は、炉壁102に対して固定されている。したがって、図15、図16に示すように、反射鏡ユニット108(パイプ部112)を炉内に前進させることにより、熱輸送デバイス10を孔部110内に収容することが可能とされている。また、図18、図19に示すように、反射鏡ユニット108(パイプ部112)を炉外へ後退させることにより、熱輸送デバイス10の第1端部12A側を反射鏡ユニット108の孔部110から反射鏡114の反射面114A側に突出させ、炉内へ露出させることも可能とされている。

【0134】
また、熱輸送デバイス10の筒状体12は、図15に示すように、軸方向に沿った第1端部12Aから第1熱交換器14までの範囲の板厚が、他の部分よりも厚い厚板部12Cとされている。なお、他の部分を薄板部12Dという。

【0135】
このように構成された反射鏡ユニット108と熱輸送デバイス10は、図13に示すように、炉100の上側の炉壁102に一定の間隔をおいて2本(セット)ずつ二列に配置されると共に、炉100の下側の炉壁102に一定の間隔をおいて2本(セット)ずつ二列に配置されている。すなわち、炉100を平面視した場合に、反射鏡ユニット108及び熱輸送デバイス10がヒータ106の外側となるように配置されている。

【0136】
(作用)
炉100の作用について説明する。先ず、炉100を加熱する場合について説明する。

【0137】
この場合には、図13、図15、図16に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を炉内に前進させ、反射鏡114を炉壁102から離間する方向に移動させる。

【0138】
この結果、図15に示すように、パイプ部112の孔部110内に熱輸送デバイス10の全体が収容される。すなわち、熱輸送デバイス10の第1端部12A側が炉内(反射鏡114の反射面114A側)に露出していない状態とされる。また、調整弁20で熱輸送デバイス10の内管22の端部を閉塞する(図3参照)。

【0139】
さらに、図16に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を軸回りに回転させ、反射鏡114の反射面114Aを隣接するヒータ106とワーク台104(ワークW)に向ける。

【0140】
この状態で、炉内のワーク台104上に加工対象であるワークWが挿入され、ヒータ106が付勢されることにより、炉内が所定温度まで昇温される。

【0141】
この際、図16に示すように、ヒータ106が付勢されて炉内と炉外との温度差が大きくなっても、熱輸送デバイス10は調整弁20によって内管22の端部が閉塞されているため、蓄熱器18で熱音響自励振動を生ずることはない。すなわち、熱輸送デバイス10の管路に熱音響自励振動による定在波が発生し、炉内の熱が炉外に排出されることが防止される。

【0142】
また、パイプ部112の孔部110内に熱輸送デバイス10の全体が収容されているため、炉内の輻射が直接、又は反射鏡114の反射面114Aで反射され熱輸送デバイス10に入射されることが抑制される。

【0143】
すなわち、炉内の輻射が熱輸送デバイス10に入射されることを抑制することによって、炉内から炉外まで延在している熱輸送デバイス10の筒状体12を介して炉内の熱が炉外に熱伝導で排出されることを抑制することができる。

【0144】
このように、熱輸送デバイス10を介して炉内の熱が炉外に排出されることを抑制できるため、炉100の炉内温度を所定温度まで効率的に昇温することができる。

【0145】
さらに、図15及び図16に示すように、隣接するヒータ106とワーク台104に反射鏡114の反射面114Aを向けている。これにより、ヒータ106からの輻射が反射鏡114の反射面114Aで反射され、ワーク台104上に載置されたワークWへ入射されることになる。この結果、ワーク台104上に載置されたワークWが効率的に加熱されることになる。

【0146】
次に、炉100を冷却する場合について説明する。

【0147】
先ず、炉100では、炉内を所定温度に調整した後、ワークWの加熱処理が終了すると、ヒータ106を滅勢する。次に、熱輸送デバイス10の調整弁20を後退させ、内管22の端部を開放する。

【0148】
続いて、図17~図19に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を炉外に後退させ、反射鏡114を炉壁102に接近させる。この結果、図18に示すように、炉壁102に対して固定されている熱輸送デバイス10の第1端部12A側(炉内側)がパイプ部112の孔部110から炉内(反射鏡114の反射面114A側)に露出する。すなわち、反射鏡114(反射面114A)の焦点位置に熱輸送デバイス10の第1端部12A側が位置することになる。

【0149】
さらに、図19に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を回転させることにより、反射鏡114の反射面114A(図18参照)をワークWや炉壁102に向ける。この結果、図18に示すように、高温となった炉壁102やワークWからの輻射(赤外線)(図18、破線参照)が反射鏡114の反射面114Aで反射され、孔部110から反射鏡114内へ突出した熱輸送デバイス10の第1端部12A側に入射される(焦点を結ぶ)。この結果、熱輸送デバイス10の入射位置近傍の筒状体12が加熱される。金属製の筒状体12は、第1端部12A側から第1熱交換器14まで区間が他の部分(薄板部12D)と比較して局部的に板厚が厚い厚板部12Cとされているため、輻射の入射位置から第1熱交換器14の配設位置まで効率的に熱伝導することができる。

【0150】
このように、炉内の輻射が熱輸送デバイス10の第1端部12A側に入射されることによって第1熱交換器14が加熱されると、蓄熱器18の両端部(第1熱交換器14側と第2熱交換器16側)の温度比が閾値を超える。これにより、調整弁20によって内管22の端部が開放された熱輸送デバイス10では、蓄熱器18で熱音響自励振動を生じ、管路に定在波が発生する。ここで、蓄熱器18が管路において閉塞面26から管路長の25%の位置にあるため、炉内の第1熱交換器14から炉外の第2熱交換器16に熱が効率的に移動する。

【0151】
この際、各反射鏡ユニット108は、図19に示すように、反射鏡114をパイプ部112の軸回りに回転させる。これにより、ワークWや炉壁102等の広範囲からの輻射を反射して熱輸送デバイス10に入射させることができ、炉内を均一に冷却することができる。

【0152】
このように、炉100では、熱輸送デバイス10の熱音響自励振動による定在波を用いて炉内の熱を炉外に排出しているため、熱を排出するためにポンプやアクチュエータの駆動が不要となり、装置構成が簡便になると共に、効率的に熱を排出することができる。

【0153】
また、炉の冷却時に反射鏡114で炉内(炉壁102、ワークWから)の輻射を反射させ、反射鏡114の焦点位置に位置する熱輸送デバイス10の第1端部12A側に集約して入射させるため、熱輸送デバイス10を効率的に加熱することができる。すなわち、炉内の熱を熱輸送デバイス10に効率的に移動させることができる。

【0154】
さらに、熱輸送デバイス10では、筒状体12において、第1端部12A側の輻射入射位置から第1熱交換器14までを他の部分(薄板部12D)と比較して局所的に板厚が大きい厚板部12Cとしたため、筒状体12における輻射入射位置から第1熱交換器14まで効率的に熱伝導することができる。

【0155】
この結果、炉100では、炉内の熱を一層効率的に炉外に排出することができる。

【0156】
なお、本実施形態では、反射鏡114による焦点位置が熱輸送デバイス10の第1熱交換器14よりも第1端部12A側の位置であったが、反射鏡114の焦点位置が熱輸送デバイス10の第1熱交換器14の位置とすれば、筒状体12の軸方向に沿って熱伝導させる必要性がなくなり、厚板部12Cが不要となると共に、熱輸送デバイス10を介して一層効率的に熱を炉外に排出することができる。

【0157】
また、本実施形態では、炉100の加熱時に反射鏡114の反射面114Aをヒータ106とワーク台104に向けたが、図20及び図21に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を軸回りに回転させ、反射鏡114の背面114Bを隣接するヒータ106に向けることもできる。

【0158】
この場合には、図20及び図21に示すように、隣接するヒータ106に対して反射鏡114を背面114Bを向けているため、隣接するヒータ106からの輻射が熱輸送デバイス10に入射されることが抑制される。また、パイプ部112の孔部110内に熱輸送デバイス10の全体が収容されているため、炉内の輻射が反射鏡114の反射面114Aで反射されても、熱輸送デバイス10に入射することが抑制される。この結果、熱輸送デバイス10に入射される輻射が一層制限され、熱輸送デバイス10の筒状体12を介して熱伝導により炉内の熱が炉外に移動することが一層抑制される。

【0159】
このように反射鏡ユニット108を作動させることによっても、炉100が効率的に加熱することができる。

【0160】
[第4実施形態]
(装置構成)
本開示の第4実施形態として、第1実施形態に係る熱輸送デバイス10を適用した工業用の炉について図22及び図23を参照して説明する。第3実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、第3実施形態と異なるのは、反射鏡の形状のみなので、当該部分についてのみ説明する。

【0161】
炉200の反射鏡ユニット108に用いられる反射鏡202は、図22及び図23に示すように、径方向断面が左右非対称であり、非焦点タイプの反射鏡である。径方向断面において軸方向により立ち上がっている側を高曲率部204とし、反対側を低曲率部206とする。

【0162】
なお、反射鏡ユニット108の反射鏡202は、パイプ部112が回転することにより軸回りに回転される構成であるが、軸方向に進退するものではない。一方、熱輸送デバイス10がパイプ部112の孔部110内を軸方向に沿って進退可能に構成されている。

【0163】
また、本実施形態の熱輸送デバイス10には、調整弁がないものである。

【0164】
(作用)
このように構成された炉200では、図22に示すように、加熱時に熱輸送デバイス10を炉外側に後退させる。具体的には、熱輸送デバイス10の第1熱交換器14の位置まで炉外に配置され、第1端部12A側のみが反射鏡202の反射面202A側に露出される。

【0165】
したがって、炉200では、ヒータ106による加熱により炉内と炉外とに温度差が生じても、熱輸送デバイス10の第1熱交換器14、第2熱交換器16、蓄熱器18のいずれもが炉外に配置されているため、蓄熱器18の両端部の温度比が閾値以上とならず、蓄熱器18に熱音響自励振動を生ずることはない。すなわち、熱輸送デバイス10において、熱音響自励振動による定在波により、炉内の熱が炉外に排出されることが防止される。

【0166】
また、反射鏡202の高曲率部204がヒータ106側を向いているため、隣接するヒータ106からの輻射が高曲率部204で遮蔽され、熱輸送デバイス10に入射されることが抑制される。

【0167】
したがって、加熱時に熱輸送デバイス10がヒータ106からの輻射により筒状体12の第1端部12A側が加熱され、筒状体12を熱伝導することにより、炉内の熱が炉外に排出されることを抑制することができる。

【0168】
一方、炉200の冷却時には、先ず、ヒータ106が滅勢される。次に、熱輸送デバイス10を炉内に進入させる。具体的には、図23に示すように、熱輸送デバイス10の第1端部12Aから第1熱交換器14までが炉内に配置され、蓄熱器18が炉壁102に配設され、第2熱交換器16から第2端部12Bまでが炉外に配置される。

【0169】
続いて、反射鏡202をワークWや炉壁102に向けることで、ワークWや炉壁102から出射された輻射及び反射鏡202の反射面202Aで反射された輻射(図23、破線参照)が熱輸送デバイス10の第1端部12A側に入射する。熱輸送デバイス10の筒状体12の輻射入射位置が加熱され、厚板部12Cを介して第1熱交換器14に熱伝導される。これにより、第1熱交換器14が効率的に加熱される。この結果、蓄熱器18の両端部の温度比が閾値を超え、蓄熱器18で熱音響自励振動を生じ、熱輸送デバイス10の管路に定在波を生ずる。これにより、炉内の熱を炉外に効率的に排出することができる。すなわち、炉200を効率的に冷却することができる。

【0170】
このように、炉200では、加熱時に熱輸送デバイス10の第1熱交換器14まで炉外に配置することで、炉200の内外の温度差によって熱輸送デバイス10の蓄熱器18に熱音響自励振動が生ずることを防止して炉内の熱が炉外へ移動することを抑制することができる。すなわち、熱輸送デバイス10に調整弁20がない構造でも、炉200の加熱時に熱輸送デバイス10による排熱を抑制することができる。

【0171】
また、炉200では、加熱時に、反射鏡ユニット108の反射鏡202の高曲率部204の背面202Bを隣接するヒータ106に向けることで、ヒータ106からの輻射が熱輸送デバイス10に入射することを抑制し、熱輸送デバイス10の熱伝導による排熱(熱移動)を抑制することができる。

【0172】
一方、炉200の冷却時には、熱輸送デバイス10を炉内に前進させ、第1熱交換器14を炉内、第2熱交換器16を炉外に配置することで、炉200の内外の温度比に基づいて熱輸送デバイス10の蓄熱器18に熱音響自励振動を生じさせ、熱輸送デバイス10の管路に定在波を発生させることで、炉内の熱を炉外に効率的に排出することができる。

【0173】
また、炉200の反射鏡ユニット108では非焦点タイプの反射鏡202を用いたが、非焦点タイプでも反射した輻射を熱輸送デバイス10に入射させることによって炉内から熱輸送デバイス10に効率的に熱が移動させることができる。

【0174】
なお、本実施形態では、炉200の加熱時に、反射鏡202の高曲率部204の背面202Bを隣接するヒータ106に向けることで、ヒータ106からの輻射が熱輸送デバイス10に入射することを抑制したが、第3実施形態と同様に、反射鏡202の反射面202Aをヒータ106とワーク台104(ワークW)に向けることで、ヒータ106からの輻射を反射鏡202の反射面202Aで反射してワークWに入射させる構成でも良い。この場合には、炉200の加熱時におけるワークWの加熱効率が向上する。

【0175】
次に、炉200の他の例について説明する。熱輸送デバイス10のみが異なるので、当該部分のみを説明する。図24に示すように、熱輸送デバイス10において金属から形成された筒状体12のうち、第1熱交換器14の外周側に位置する部分のみ輻射透過性の材料、例えばガラスから形成された輻射透過部210が形成されたものが考えられる。

【0176】
第1熱交換器14は、熱輸送デバイス10の内管22と外管24の間に嵌合される金属から形成されたドーナツ形状のリング体212であり、その内部に軸方向に延在する多数の孔部214が形成されている。

【0177】
このように熱輸送デバイス10が形成されることにより、炉200の冷却時に炉内の輻射、あるいは反射鏡114で反射された輻射が輻射透過部210を透過して第1熱交換器14に直接入射される。このように、第1熱交換器14(リング体212)が輻射で直接加熱されるため、炉内の熱が第1熱交換器14に一層効率的に移動されることになる。

【0178】
[第5実施形態]
本開示の第5実施形態として、第1実施形態に係る熱輸送デバイス10を適用した工業用の炉について図25~図28を参照して説明する。第3実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、第3実施形態と異なるのは、反射鏡の形状とヒータの配置なので、当該部分についてのみ説明する。

【0179】
(装置構成)
炉300の反射鏡ユニット108を構成する反射鏡302は、図25に示すように、第3実施形態の放物面からなる反射鏡114と同様の放物面部304と、放物面部304の下端部から下方に連続して形成された断面半円形のトラフ部306と、トラフ部306の下端部から下方に連続して形成された断面半円形の円錐部308とが形成されている。

【0180】
この反射鏡ユニット108のパイプ部112の孔部110には、熱輸送デバイス10が収容されている。熱輸送デバイス10は、図26に示すように、第3実施形態と同様に炉壁102に対して固定されており、第1端部12Aから第1熱交換器14までが炉内に配置され、蓄熱器18が炉壁102に配置され、第2熱交換器16から第2端部12Bまでが炉外に配置されている。

【0181】
一方、反射鏡ユニット108は、パイプ部112が軸回りに回転可能とされており、パイプ部112と一体的に反射鏡302が回転可能とされている。ただし、反射鏡ユニット108は、炉壁102に対して進退するものではない。

【0182】
また、炉300では、ワーク台104の下方には、側方の炉壁102から水平方向に延在する片側2本のヒータ106が互いに対向するように配置される一方、上方の炉壁102から下方に延在する2本のヒータ106Aと2本の反射鏡ユニット108(熱輸送デバイス10)からなる片側計4本が平面視で平行に2列配置されている。

【0183】
(作用)
このように構成された炉300の作用について説明する。先ず、加熱時の作用について説明する。

【0184】
炉300の加熱時には、熱輸送デバイス10の調整弁20によって内管22の端部を閉塞する(図3参照)。次に、パイプ部112を軸回りに回転させることにより、反射鏡302のトラフ部306及び円錐部308の背面302Bを隣接するヒータ106Aに向ける。

【0185】
この状態でワーク台104上にワークWが載置されて炉内に収容され、ヒータ106、106Aが付勢される。

【0186】
この際、炉300においてヒータ106、106Aが付勢されて炉内と炉外との温度差が大きくなっても、熱輸送デバイス10は調整弁20によって内管22の端部が閉塞されているため、蓄熱器18で熱音響自励振動を生ずることはない。すなわち、熱輸送デバイス10の管路に熱音響自励振動による定在波を生じ、この定在波によって炉内の熱が炉外に排出されることが防止される。

【0187】
また、ヒータ106Aは隣接する熱輸送デバイス10と平行に配置されているが、炉300の加熱時に反射鏡302のトラフ部306、円錐部308の背面302Bで遮蔽されているため、ヒータ106Aからの輻射が熱輸送デバイス10に直接あるいは反射鏡302で反射されて入射することが抑制される。

【0188】
したがって、熱輸送デバイス10の筒状体12を介して熱伝導によって炉内の熱が炉外に排出されることを抑制することができる。すなわち、炉300の加熱効率を向上させることができる。

【0189】
次に、炉300の冷却時の作用について説明する。

【0190】
先ず、炉300のヒータ106、106Aが滅勢される。次に、図27に示すように、反射鏡ユニット108のパイプ部112を回転させ、ワークWや炉壁102に反射鏡302の反射面302Aを向ける。

【0191】
また、熱輸送デバイス10の調整弁20を移動させ、内管22の端部を開放する。

【0192】
この状態で、ワークWや炉壁102からの輻射が反射鏡302のトラフ部306、円錐部308等で反射されながら熱輸送デバイス10の第1熱交換器14から第1端部12A側に入射され、当該部分を加熱する。熱輸送デバイス10の筒状体12において、第1熱交換器14よりも第1端部12A側は厚板部12C(図15参照)とされ、薄板部12D(図15参照)よりも熱伝導しやすくされている。したがって、熱輸送デバイス10の第1熱交換器14よりも第1端部12A側の熱を第1熱交換器14に効率的に移動させることができる。

【0193】
また、反射鏡302の放物面部304では、ワークWや炉壁102から入射した輻射が直接入射されると共に、トラフ部306や円錐部308で反射された輻射が入射され、熱輸送デバイス10の第1熱交換器14の配設位置に反射される。すなわち、ワークWや炉壁102から輻射がより集約されて熱輸送デバイス10の第1熱交換器部分に入射され、第1熱交換器14が効率的に加熱される。

【0194】
すなわち、炉内の熱が輻射を介して第1熱交換器14に効率的に移動する。

【0195】
また、蓄熱器18の両端部(第1熱交換器14側端部と第2熱交換器16側端部)との温度比が閾値を超えると、熱輸送デバイス10の蓄熱器18で熱音響自励振動を生じ、熱輸送デバイス10の管路に定在波を生じ、この定在波によって炉内の熱が効率的に炉外に排出される。

【0196】
このように、炉300では、加熱時にヒータ106Aに対して反射鏡302の背面302Bを向けているため、熱輸送デバイス10に対するヒータ106、106Aからの輻射の入射が抑制され、熱輸送デバイス10の熱伝導による炉外への熱移動が抑制される。すなわち、加熱効率が向上する。

【0197】
また、炉300では、上下方向に延在するヒータ106Aを設けることによって、ワーク台104上に載置された上下方向高さのあるワークWに対して効率的に加熱することができる。

【0198】
さらに、炉300では、反射鏡302に放物面部304の下方に連続して断面半円形のトラフ部306と円錐部308を設けたため、炉壁102やワークWからの輻射を反射させて熱輸送デバイス10に集約して入射させることができる。この結果、炉内の熱を輻射を利用して一層効率的に熱輸送デバイス10に移動させることができる。

【0199】
この炉300の内部の熱が輻射を介して効率的に熱輸送デバイス10の第1熱交換器14に移動させられるため、熱輸送デバイス10で熱音響波自励振動を介して第1熱交換器14から第2熱交換器16に熱が移動する。すなわち、炉300の炉内の熱を効率的に炉外に排出することができる。

【0200】
なお、図28に示すように、熱輸送デバイス10を炉壁102に対して進退自在とし、炉300の加熱時に、熱輸送デバイス10の第1熱交換器14まで炉壁102に位置させることで、第1熱交換器14の加熱を抑制して蓄熱器18で熱音響自励振動を生ずることを一層抑制することができる。

【0201】
また、炉300の加熱時に、反射鏡302の反射面302Aを隣接するヒータ106AとワークWに向けることで、ヒータ106Aからの輻射を反射面302Aで反射してワークWに入射させ、ワークWの加熱効率を向上させても良い。

【0202】
[その他]
(熱輸送デバイス)
以上、第1、第2実施形態に係る熱輸送デバイスについて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。

【0203】
例えば、第2実施形態の熱輸送デバイス50では、調整弁20を筒状体12の第2端部12B側に設けたが、筒状体12の軸方向において、蓄熱器18の軸方向中心から筒状体12の第2端部12B側に、蓄熱器18の軸方向中心から筒状体12の第1端部12Aまでの軸方向距離と等距離の位置に、径方向外側から弁体を挿入する構成としても良い。この場合には、蓄熱器18の軸方向中心が定在波の節の位置となるため、弁体の挿入により熱輸送を停止することができる。

【0204】
また、蓄熱器18の軸方向中心を管路長L0に対して高温側の端部(熱輸送デバイス10の閉塞面26、熱輸送デバイス50の第1端部12A)から管路長L0の25%の位置になるように配置したが、12.5%~25%の範囲であれば、十分に熱輸送量が大きく、熱輸送デバイスとして実用可能である。

【0205】
なお、第1実施形態、第2実施形態の熱輸送デバイス10、50では、調整手段としての調整弁20を備えていたが、熱輸送デバイスが調整弁を備えていなくても良い。例えば、廃熱から常時を熱を取り出す場合等、熱輸送を停止させる必要のない場合には、熱輸送デバイスに調整弁を備えないことが考えられる。

【0206】
さらに、熱輸送デバイスに発電装置を取り付けることも考えられる。例えば、炉40に取り付けられた熱輸送デバイス50の第2端部12Bに、調整弁20に換えてスピーカー型の発電装置を取り付け、熱音響自励波に基づく定在波によってスピーカーを振動させ、発電させることが考えられる。この場合には、調整弁を上記のように、径方向外側から筒状体12の内部に挿入することによって熱輸送を停止させることが考えられる。

【0207】
(炉)
また、第3~第5実施形態に係る炉100、200、300について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。

【0208】
例えば、第3実施形態では、反射鏡114をニュートン式の放物面で構成し、その焦点位置に熱輸送デバイス10を配置したが、同様に反射鏡で熱輸送デバイス10に焦点を結ばせる方式としてカセグレン式、グレゴリー式、マーチン式等を採用することも可能である。

【0209】
さらに、第3実施形態では反射鏡ユニット108が炉100に対して進退する構成、第4では熱輸送デバイス10が炉200、炉300に対して進退する構成としたが、いずれが進退する構成でも良いし、双方が移動する構成でも良い。

【0210】
第3実施形態では、反射鏡114がパイプ部112の軸方向に対して傾斜した角度に固定されたものとして説明したが、傾斜角度を変更可能な構成としても良い。この場合には、反射鏡114の傾斜角度を変更しつつ回転させることにより、一層広い範囲で炉壁102やワークWからの輻射等を熱輸送デバイス10に入射させることができる。この結果、一層効率的に炉を冷却することができる。

【0211】
さらに、第3、第5実施形態では、炉の加熱時に蓄熱器18で熱音響自励振動を生じないように、調整弁20が内管22の端部を閉塞する構成としたが、第4実施形態のように、熱輸送デバイス10を炉外まで後退させることによって、蓄熱器18の両端部(第1熱交換器14側端部と第2熱交換器16側端部)との温度比が閾値を超えないようにすることで、熱音響自励振動を生じさせない構成とすることも可能である。この場合には、熱輸送デバイス10に、調整弁20がなくても良い。

【0212】
また、第3~第5実施形態では、炉が所定温度(所定温度範囲内)に維持されている場合について説明しなかったが、基本的に炉外に自然に排出される熱量に相当する熱量を供給するようにヒータで加熱する。ただし、炉によっては、ヒータで加熱しながら、調整弁20によって熱輸送量を調整された熱輸送デバイス10で、熱音響自励振動に基づく定在波で排熱することも考えられる。

【0213】
さらに、第3~第5実施形態では、反射鏡ユニットのパイプ部112の孔部110内に熱輸送デバイス10が配設されたが、炉においてパイプ部112と異なる位置に熱輸送デバイス10が配設されていても良い。この場合には、反射鏡の反射面で反射された輻射が異なる位置にある熱輸送デバイス10に入射することになる。

【0214】
第3、第5実施形態では、熱輸送デバイス10に入射される輻射の集約性を考慮して、放物面等の焦点を有する反射鏡の場合について説明したが、反射鏡の反射面に焦点がなくても良い。

【0215】
また、熱輸送デバイス10に厚板部12Cを形成する点、輻射透過部210を形成する点や熱輸送デバイス10を炉壁に対して進退させる構成は、反射鏡がない炉に対しても適用することが可能である。

【0216】
さらに、第3~第5実施形態では、第1実施形態に係る熱輸送デバイス10を適用したが、第2実施形態に係る熱輸送デバイス50を適用しても良い。

【0217】
日本国特許出願2017-103794の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。

【0218】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
15
【図13】
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【図14】
17
【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
28
【図26】
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【図27】
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【図28】
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