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明細書 :がん遺伝子の転写調節領域

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月16日(2020.4.16)
発明の名称または考案の名称 がん遺伝子の転写調節領域
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  38/02        (2006.01)
A61K  31/7115      (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61K  31/787       (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12N  15/11        (2006.01)
C12N   9/16        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 38/02
A61K 31/7115
A61K 31/7105
A61K 31/713
A61K 31/787
C12Q 1/68
C12N 15/11 ZNAZ
C12N 9/16 Z
C12N 15/63 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 34
出願番号 特願2019-525586 (P2019-525586)
国際出願番号 PCT/JP2018/023028
国際公開番号 WO2018/230731
国際出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
優先権出願番号 2017119159
優先日 平成29年6月16日(2017.6.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】伊藤 公成
出願人 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
【識別番号】100203253、【弁理士】、【氏名又は名称】村岡 皓一朗
審査請求 未請求
テーマコード 4B050
4B063
4C084
4C086
Fターム 4B050CC07
4B050KK14
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4C086MA65
4C086MA66
4C086MA67
4C086ZB26
要約 本発明は、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤。
【請求項2】
前記Runx結合配列が、ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点から-309~-304番目のヌクレオチド配列、又は他の哺乳動物オルソログにおける該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
p53が不活性化されている対象に適用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
前記物質が、前記標的領域内のDNA配列に対するアンチジーンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
前記アンチジーンがピロール・イミダゾールポリアミドである、請求項4に記載の剤。
【請求項6】
前記物質が、前記標的領域に特異的に結合する核酸配列認識モジュールである、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項7】
前記核酸配列認識モジュールが、CRISPR-Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター又はPPRモチーフである、請求項6に記載の剤。
【請求項8】
前記核酸配列認識モジュールがCRISPR-dCasである、請求項6に記載の剤。
【請求項9】
前記物質が、前記核酸配列認識モジュールと複合体形成するヌクレアーゼとからなる、請求項6又は7に記載の剤。
【請求項10】
前記物質が、前記ヌクレアーゼで切断される部位で相同組換えを生じさせ得るドナーDNAをさらに含む、請求項9に記載の剤。
【請求項11】
前記核酸配列認識モジュールが、転写抑制因子と複合体を形成する、請求項6~8のいずれか1項に記載の剤。
【請求項12】
前記物質が、それをコードする1以上の発現ベクターの形態で提供される、請求項1~3及び6~11のいずれか1項に記載の剤。
【請求項13】
p53の不活性化を検定するための試薬と組み合わせてなる、請求項1~12のいずれか1項に記載の剤。
【請求項14】
(1)被検物質の存在下又は非存在下で、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
を含む、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、c-Myc遺伝子の転写調節領域を特異的に認識し、該配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞が蓄積する遺伝子異常は多種多様で、時間経過とともに、その複雑性が増している。それに対抗しようと、多種多様な分子標的薬(抗がん剤)が開発されているが、その複雑性を克服できていない。
【0003】
抗がん剤としては、細胞分裂をターゲットとする従来の抗がん剤に加えて、がん特有の変異をターゲットとする分子標的剤や抗PD-1抗体などの、体の免疫を調整して免疫機構にがんを攻撃させる免疫療法剤等が挙げられる。しかし、従来の抗がん剤は正常細胞も影響を受けやすく、分子標的剤は標的によって非常に有効なこともある一方、あまり有効でない場合もあり、免疫療法剤は、治療を受ける患者のうち、効果がある人が限定されるといった問題がある。
【0004】
細胞において変異が蓄積しても、大抵の場合は、該変異が修復されるか、アポトーシスや免疫攻撃により該細胞が死滅するが、3~10回の変異が蓄積すると、がんになるといわれている。その変異のうちには、共通の因子に生じる変異があり、複雑な悪性腫瘍にも共通の分子基盤が存在する。例えば、ヒトのがんでは、p53の不活性化とc-Mycの発現上昇が最も広範に確認される。p53は最も有名で影響があると考えられている「がん抑制遺伝子」である。p53の主な役割は、細胞内における遺伝子異常をチェックし、異常があればアポトーシスを誘導することである。p53は、全腫瘍の50%~80%程度において何らかの変異(機能不全、発現量低下)があることが知られている。また、悪性度、抗がん耐性と相関があると考えられている。
【0005】
p53及びその周辺分子について非常に多くの方法で抗がん剤開発が行われているが、現在まで成功していない。正常なp53を増加させることは技術的に困難であって、一定量以上増えた場合はアポトーシスを誘導するので、過剰に発現させると正常細胞にもアポトーシスを誘導することになる(即ち、「正常量」に調整することが難しい)。このため、p53の上流・下流をターゲットにした抗がん剤も多く開発中であるが、いずれも成功していない。
【0006】
c-Mycは、細胞増殖のためのタンパク質を調整する役割を有する。c-Mycをノックダウンすると、増殖準備が起こらず、細胞周期が停止する。アポトーシスは、増殖する瞬間が最も誘導しやすいが、細胞周期が停止するとアポトーシスには抵抗性となる。従って、c-Mycも、創薬の直接的なターゲットとするのは困難である。
【0007】
Runxファミリーは進化的に保存されたRuntドメインを有し、該ドメインを介して標的遺伝子の転写調節領域に結合する。Runxファミリーはまた、C末端側に様々な転写因子(コファクター)と相互作用してヘテロダイマーを形成し、下流の標的遺伝子群の転写を制御する領域を有する(非特許文献1)。哺乳類のRunxファミリーはRunx1、Runx2及びRunx3から構成されるが、これらの異常は種々の疾患と密接に関連する。例えば、Runx1は急性骨髄性白血病における染色体転座の標的であり、染色体不安定性によるRunx2の片方の対立遺伝子の欠落(LOH)は、鎖骨頭蓋骨異形成の原因とされている。一方で、Runx3は胃がんのがん抑制遺伝子であることが指摘されている(非特許文献2)。さらに、Runx3は核内でp53と結合し、p53の標的遺伝子群の転写を正に制御することが示唆されている(非特許文献2)。また、Runx3をノックダウンしたマウスは致死であり、発現量を半減させたマウスも寿命が短いことから、Runx3は生存に必須の機能を有すると考えられ、抗がん剤のターゲットとしては不向きなようである。
【0008】
c-Myc遺伝子の転写開始点より上流には、多数のRunx結合配列(ACCACA,TGCGGT)が存在し、内在性のRunx1がそれらのRunx結合配列に結合すること、コファクターとの相互作用を介してc-Myc遺伝子の発現を抑制していることが報告されている(非特許文献1)。
【0009】
上述のように、多くのがんで、p53の不活性化とc-Mycの発現上昇が共通して認められる。また、Runxファミリーは、p53とc-Mycの双方と相互作用し得る因子であることが示唆されている。しかしながら、これらの因子を、抗がん剤創薬の直接的なターゲットとすることは難しいと考えられている。
【0010】
ここで、ヒト非小細胞肺がん細胞株であるA549細胞を注入したNOGマウスに対し、Runx1~3共通の認識配列であるTGTGGTを標的とするPIポリアミド(Chb-M)を投与したところ、A549細胞の増殖を抑制し、生存率を向上させたことが報告されている(非特許文献3)。また、同文献には、実験には用いられていないものの、TGCGGTを標的とするPIピリアミド(Chb-50)も開示されている。しかしながら、c-Myc遺伝子の転写調節領域には、多数のRunx結合配列が存在しており、どの部位のRunxの認識配列が重要であるかについて知られていない。また、Runx1、Runx2又はRunx3をノックアウトしたマウスはいずれも胎生致死であるため、多数のRunx結合配列を標的とする上記PIピリアミドは、非常に強い副作用を引き起こすことが予想される。
【先行技術文献】
【0011】

【非特許文献1】PLOS ONE, 8, 1-16 e69083 (2013)
【非特許文献2】生化学 第83巻 第8号, 751-754 (2011)
【非特許文献3】J. Clin Invest, 22, 2815-2828 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、がんに共通する分子基盤の中からがん抑制の現実的なターゲットとなり得る因子を同定し、当該因子を標的とする、効果的で安全ながんの治療又は予防手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明者はまず、骨肉種におけるp53とRunx3の関係に着目し、p53を骨芽細胞特異的にノックアウトしたマウスはほぼ確実に骨肉腫になるが、更にRunx3をヘテロ接合性にノックアウトすると、腫瘍の発症が顕著に抑えられることを見出した。一方、NIHのデータベース解析から、ヒト骨肉腫において、Runx3とc-Mycの発現量に正の相関があることが明らかとなったので、p53コンディショナルノックアウトマウスの骨肉種細胞における分子メカニズムを解析したところ、Runx3はp53が欠失した状況下で、c-Mycの発現を過剰に誘導することを見出した。p53欠失骨肉腫細胞の造腫瘍性は、c-Mycの発現を低減することで顕著に抑制されたことから、p53の不活性化による骨肉腫の発症は、RUNX3によるc-Mycの異常な発現誘導によるものであることが判明した。しかしながら、c-Myc遺伝子の転写調節領域には、多数のRunx結合配列が存在し、どこをターゲットにすればよいかは全く不明であった。また、Runx結合配列はわずか6ヌクレオチドのコンセンサス配列であり、c-Myc以外にも多くの標的遺伝子群が存在することから、オフターゲット効果が十分に低減された、c-Myc特異的な発現抑制を可能にする必要がある。
【0014】
本発明者はさらに検討を重ねた結果、p53コンディショナルノックアウトマウスにおいて、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流の、該転写開始点の最も近傍に位置するRunx結合配列5’-TGCGGT-3’(本明細書において、特に断らない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’方向に、左から右に記載される。)に変異を導入して該Runx結合配列を破壊するだけで、Runx3やc-Mycのタンパク質自体の発現を抑制するよりも高い造腫瘍抑制効果を示すことを見出した。しかも、当該変異を有するマウスは、野生型マウスと遜色なく成育することが確認された。
本発明者は、これらの知見に基づいて、c-Myc遺伝子の転写調節領域の、転写開始点の最も近傍に位置するRunx結合配列へのRunx3の結合を、何らかの手段により特異的に阻害することにより、オフターゲット効果による副作用を回避しつつ、多種多様ながんに対して顕著な抗腫瘍効果が得られるものと結論し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1] c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤。
[2] 前記Runx結合配列が、ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点から-309~-304番目のヌクレオチド配列、又は他の哺乳動物オルソログにおける該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である、[1]に記載の剤。
[3] p53が不活性化されている対象に適用することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の剤。
[4] 前記物質が、前記標的領域内のDNA配列に対するアンチジーンである、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 前記アンチジーンがピロール・イミダゾールポリアミドである、[4]に記載の剤。
[6] 前記物質が、前記標的領域に特異的に結合する核酸配列認識モジュールである、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[7] 前記核酸配列認識モジュールが、CRISPR-Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター又はPPRモチーフである、[6]に記載の剤。
[8] 前記核酸配列認識モジュールがCRISPR-dCasである、[6]に記載の剤。
[9] 前記物質が、前記核酸配列認識モジュールと複合体形成するヌクレアーゼとからなる、[6]又は[7]に記載の剤。
[10] 前記物質が、前記ヌクレアーゼで切断される部位で相同組換えを生じさせ得るドナーDNAをさらに含む、[9]に記載の剤。
[11] 前記核酸配列認識モジュールが、転写抑制因子と複合体を形成する、[6]~[8]のいずれかに記載の剤。
[12] 前記物質が、それをコードする1以上の発現ベクターの形態で提供される、[1]~[3]及び[6]~[11]のいずれかに記載の剤。
[13] p53の不活性化を検定するための試薬と組み合わせてなる、[1]~[12]のいずれかに記載の剤。
[14] (1)被検物質の存在下又は非存在下で、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
を含む、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法。
[15] c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質の有効量を哺乳動物に対し投与することを特徴とする、該哺乳動物における腫瘍の形成の抑制及び/又は既に形成された腫瘍の増殖の抑制方法。
[16] 腫瘍の形成の抑制及び/又は既に形成された腫瘍の増殖の抑制における使用のための、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゲノム上の特定位置の特定配列(c-MycプロモーターのRunx3の結合配列;6bp)を阻害するだけで、極めて多くの種類の腫瘍細胞の造腫瘍能を抑制できる。その特定配列特異的に変異を導入する物質及びその特定配列に特異的に結合し、該配列とRunx3との結合を阻害することのできる物質は、画期的な抗がん効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、マウスc-Myc遺伝子及びヒトのc-Myc遺伝子の転写開始点の上流域に存在するRunx結合配列ACCACA及びTGCGGTの位置を示す図である。
【図2】図2は、c-Mycの転写開始点に最も近い位置に存在するRunx結合配列TGCGGT(mR1)に変異を導入した結果、c-Mycの発現量が低下し、造腫瘍能が抑制されたことを示す図である。
【図3】図3は、mR1への変異の導入が、Runx3のノックダウンやc-Mycのノックダウンよりも造腫瘍能抑制効果が大きかったことを示す図である。
【図4-1】図4-1は、mR1に変異を導入した遺伝子改変マウスの作製における、ES細胞を用いた相同組み換えによる遺伝子改変の概要を示す図である。
【図4-2】図4-2は、mR1に変異を導入した遺伝子改変マウスの作製における、ゲノム編集の概要を示す図である。
【図5】図5は、mR1に変異を導入した結果、大幅に造腫瘍能が抑制されたことを示すが、一方で、mR1の6塩基以外の部分に欠損があっても造腫瘍能はそれほど変わらないことを示す図である。
【図6】図6は、mR1に変異(塩基の欠失又は挿入)を導入した結果、造腫瘍能が抑制されたことを示す図である。
【図7】図7は、全身性のp53ノックアウトと、mR1m/mとを組み合わせることで、p53ノックアウトによるリンパ腫の形成がレスキューされることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列(TGCGGT;以下、「本発明のシスエレメント」ともいう。)の少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3結合を阻害する物質(以下、「本発明の結合阻害物質」ともいう。)を含有する、抗腫瘍剤(以下、「本発明の抗腫瘍剤」ともいう。)を提供する。ここで「抗腫瘍剤」とは、腫瘍の形成及び/又は既に形成された腫瘍の増殖を抑制し得る薬剤を意味し、望ましくは腫瘍の形成阻止及び/又は腫瘍の退縮作用を有する薬剤である。

【0019】
c-Myc遺伝子の好ましい例としては、例えば、ヒトc-Myc(NCBI Gene ID:4609)、マウスc-Myc(NCBI Gene ID:17869)、ラットc-Myc(NCBI Gene ID:24577)又はそれら以外の哺乳動物(例、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル)におけるそのオルソログ、あるいは、それらの天然のアレル変異体又は遺伝子多型などが挙げられる。

【0020】
本明細書において、c-Myc遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトの場合、NCBIデータベースに登録される第8番染色体のヌクレオチド配列(NCBI Reference Sequence: NC_000008.11)、マウスの場合、第15番染色体のヌクレオチド配列(NCBI Reference Sequence: NC_000081.6)を基準にして表現される。ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点は、NC_000008.11のヌクレオチド配列中127736069位のヌクレオチドGであり、マウスc-Myc遺伝子の転写開始点は、NC_000081.6のヌクレオチド配列中61985341位のヌクレオチドCである。ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点の上流3kb(NC_000008.11の127733069~127736068位)のヌクレオチド配列を配列番号1に、マウスc-Myc遺伝子の転写開始点の上流3kb(NC_000081.6の61982341~61985340位)のヌクレオチド配列を配列番号2に、それぞれ示す。c-Myc遺伝子の転写開始点より上流の転写調節領域のヌクレオチドの位置は、転写開始点の直前のヌクレオチドを-1として、該ヌクレオチドからの距離で表される。従って、本明細書において、ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTは、-309~-304番目の位置(配列番号1で表されるヌクレオチド配列中ヌクレオチド番号2692~2697)に存在する。また、マウスc-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTは、-315~-310番目の位置(配列番号2で表されるヌクレオチド配列中ヌクレオチド番号2686~2691)に存在する。しかしながら、本発明のc-Myc遺伝子には、NCBIデータベースに登録されている以外のヌクレオチド配列を有するもの、例えば、登録されているヌクレオチド配列を野生型とした場合の、天然のアレル変異体(アレル頻度1%以上)もしくは遺伝子多型(アレル頻度1%未満)も当然包含される。それらのヌクレオチド配列においては、1以上のヌクレオチドの挿入もしくは欠失により、転写開始点との位置関係が上記の定義と異なる場合があり得るが、基準配列とのアラインメントによりその位置を容易に特定することができる。ヒト及びマウス以外の哺乳動物のc-Myc遺伝子における本発明のシスエレメントの位置も同様にして特定することができる。従って、本発明のシスエレメントは、ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点から-309~-304番目のヌクレオチド配列、あるいは他の哺乳動物オルソログ又はそれらの天然のアレル変異体又は遺伝子多型における、該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である。

【0021】
本明細書において「シスエレメント」とは、遺伝子の調節領域上に存在し、該遺伝子の転写レベルの制御に関与し、該遺伝子にコードされる遺伝子産物の発現量を決定する重要な要素となっている、二本鎖DNAの領域である。本発明のシスエレメントは、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合領域、即ち、正鎖:TGCGGT及び逆鎖:ACCGCAからなる二本鎖DNAの領域である。

【0022】
「本発明のシスエレメントTGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の領域」(以下、「本発明の標的領域」ともいう。)とは、該シスエレメントの全部(TGCGGT)、該シスエレメントの3’側から1ヌクレオチドずつが除かれたTGCGG、TGCG、TGC、TG又はT、あるいは該シスエレメントの5’側から1ヌクレオチドずつが除かれたGCGGT、CGGT、GGT、GT又はTを含み、かつc-Myc遺伝子の転写開始点の上流配列中の連続する12ヌクレオチド以上を含む部分ヌクレオチド配列からなる領域を意味する。例えば、該領域の長さを20ヌクレオチドとした場合、ヒトc-Myc遺伝子を例にとれば、表1のボックスで囲まれた領域が本発明の標的領域に包含される。

【0023】
【表1】
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【0024】
後述の実施例に示されるとおり、本発明のシスエレメント中の末端1ヌクレオチドが欠失するだけでも、p53ノックアウトマウスにおける造腫瘍性を半減させ得ることから、本発明の標的領域としては、本発明のシスエレメントの末端1ヌクレオチドのみを含む領域であっても十分であるが、好ましくは、本発明のシスエレメントの末端から2ヌクレオチド、より好ましくは3ヌクレオチド、さらに好ましくは4ヌクレオチド、特に好ましくは5ヌクレオチド、最も好ましくは本発明のシスエレメント全体を含む領域である。例えば、表1を例にとると、本発明の標的領域として、領域(2)~(24)が好ましく、領域(3)~(23)がより好ましく、領域(4)~(22)がさらに好ましく、領域(5)~(21)が特に好ましく、領域(6)~(20)が最も好ましい。

【0025】
本発明の標的領域の長さは、本発明の結合阻害物質が該領域を特異的に認識して結合し得る限り、特に制限されないが、好ましくは12ヌクレオチド以上、より好ましくは15ヌクレオチド以上、さらに好ましくは17ヌクレオチド以上である。長さの上限も特に制限されないが、例えば30ヌクレオチド以下、好ましくは25ヌクレオチド以下、より好ましくは22ヌクレオチド以下である。従って、該標的領域の長さの範囲としては、例えば12~30ヌクレオチド、好ましくは15~25ヌクレオチド、より好ましくは17~22ヌクレオチドが挙げられる。

【0026】
本発明の結合阻害物質は、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列である本発明のシスエレメントの全部もしくは一部を含む、本発明の標的領域を特異的に認識して結合することにより、Runx3の本発明のシスエレメントへの結合を遮断し、該結合により引き起こされるc-Myc遺伝子の転写活性化を抑制することができる。Runx3は、p53と結合した状態では、c-Myc遺伝子の調節領域上のRunx結合配列に結合できず、c-Mycの発現を誘導できない。従って、本発明の結合阻害物質は、p53が不活性化(少なくともRunx3と結合して、Runx3によるc-Myc遺伝子の転写活性化を抑制する活性が欠損)した対象に適用されることが望ましい。

【0027】
本発明の結合阻害物質は、本発明の標的領域を特異的に認識して結合することにより、Runx3の本発明のシスエレメントへの結合を遮断し得る限り、いかなるものであってもよいが、例えば、本発明の標的領域と特異的に結合し得るタンパク質、本発明の標的領域と特異的にハイブリダイズし、三重鎖(トリプレックス)を形成(Hoogsteen型認識)し得る核酸又はその類縁体、本発明の標的領域の二重らせん構造のマイナーグルーブに特異的に結合し得る物質(例、PIポリアミド)等の広義のアンチジーンが挙げられる。あるいは、本発明のシスエレメントに特異的に変異を導入して該シスエレメントを破壊し得るゲノム編集に用いられる構成要素も、本発明の結合阻害物質に包含され得る。但し、ヒト臨床への適用を考慮すれば、ゲノム配列の改変(特に二本鎖DNA切断;DSBを伴う改変)を伴うゲノム編集技術の使用は極めて制限されるので、ゲノム編集に用いられるZFN、TALEN、CRISPR/Casの核酸配列認識モジュールのみを使用するか、不活性化されたヌクレアーゼ又はさらに本発明のシスエレメントに結合するがc-Myc遺伝子の転写を活性化しない物質を組み合わせることで、DSB及び/又はゲノム配列の改変を伴わずに、Runx3の本発明のシスエレメントへの結合を阻害することが望ましい。

【0028】
1.アンチジーン
(a)三重鎖DNA形成型オリゴヌクレオチド(TFO)
典型的なアンチジーンは、DNA二重鎖に対して3本目の核酸が結合することを基盤としており、3本目核酸の塩基がプリン-ピリミジン塩基対のプリン塩基と水素結合することで、平面内に3つの塩基が連続して並ぶ構造をとることによって三重鎖形成が可能となる。下記構造式に示すように、3本目の核酸(TFO)の塩基の1’位の炭素の位置が外向きのもの(Hoogsteen結合型)(配列番号13)とその反対のもの(逆Hoogsteeen結合型)(配列番号14)の2種類があり、前者がパラレル配向性(DNA二重鎖の塩基対形成する側の鎖と同じ配向性)、後者がアンチパラレル配向性(DNA二重鎖の塩基対形成する側の鎖と逆の配向性)である。DNA二本鎖の各鎖の配列を、配列番号15又は16で表す。

【0029】
【化1】
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【0030】
【化2】
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【0031】
パラレル配向性TFOは、DNA二重鎖中のA-T塩基対及びG-C塩基対のAとGに対して、それぞれT(T:A-T塩基対)とプロトン化されたC(C:G-C塩基対)が結合する。一方、アンチパラレル配向性TFOは、DNA二重鎖中のA-T塩基対及びG-C塩基対のAとGに対して、それぞれT(T:A-T塩基対)とG(G:G-C塩基対)が結合する。Cがプロトン化されるためには酸性条件である必要があるため、生理的条件下での利用が制限されるが、中性でもプロトン化されるメチルシチジンや、プロトン化の必要のない誘導体(例、5-メチル-6-オキソシチジン)を用いることで、この問題は回避できる。

【0032】
上述のように、典型的な三重鎖は、一方がホモプリン(G又はA)鎖で他方がホモピリミジン(C又はT)鎖のDNA二重鎖に対して、TFOがホモプリン鎖とメジャーグルーブにおいて結合することにより形成される。従って、TFOの利用は、プリンリッチ(逆鎖においてピリミジンリッチ)なDNA二重鎖を標的とするものに制限される。例えば、ヒトc-Myc遺伝子を例にとると、本発明の標的領域中でプリンリッチな配列として、本発明のシスエレメントの直前の10ヌクレオチドAGGAAAGGA(配列番号4)が挙げられる。即ち、10ヌクレオチド中9ヌクレオチドがプリン残基であり、下線で示したCのみがミスマッチとなる。本発明の標的領域への特異性を高めるために、本発明のシスエレメントTGCGGTの5’側のG、又はGGまでTFOの標的となるDNA二重鎖を伸ばせば、ミスマッチの数はそれぞれ2/12及び3/15となり、三重鎖の不安定さが増す。ミスマッチ部分での不安定化を抑制するために、例えば、TFOの対応するヌクレオチドから塩基を除くか、下記のように、BIG(B2,B3)と呼ばれるT-A塩基対又はC-G塩基対のみを選択的に認識する非天然分子で置換することができる。

【0033】
【化3】
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【0034】
あるいは、例えば、本発明のシスエレメントの直前の10ヌクレオチドAGGACAAGGA(配列番号4)に対してアンチジーンを設計し、後述する本発明のシスエレメントを特異的に認識し得るPIポリアミドを、適当なリンカー(例、プロリン、リシン、グリシン等のアミノ酸リンカーやペプチドリンカー等)を介して連結することにより、本発明の標的領域に対する特異性を高めることもできる。

【0035】
TFOを構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNA若しくはRNAでもよいし、安定性(化学的及び/又は対酵素)や比活性(DNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾が施されたヌクレオチド分子であってもよく、また、核酸類縁物質であってもよい。上記化学修飾の例として、オリゴヌクレオチドを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート、ボラノホスフェートなどの化学修飾リン酸残基に置換する修飾が挙げられる。
また、上記化学修飾の別の例として、各ヌクレオチドの糖の2'位水酸基を別の官能基に置換する修飾が挙げられる。ここで、別の官能基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子);C1-6アルキル基(例、メチル基);C1-6アルキル基(例、メチル基)で置換されていてもよいアミノ基;-OR(Rは、例えばCH3(2'-O-Me)、CH2CH2OCH3(2'-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CNを示す)に置換する修飾が挙げられる。
また、前記核酸類縁物質の例としては、UNA(unlocked nucleic acid)、HNA、モルフォリーノオリゴ(morpholino oligo)等が挙げられる。上記HNAは、そのヘキソピラノース部分の水酸基がデオキシ化されていてもよい。また、上記HNAは、そのヘキソピラノース部分の水酸基がフッ素原子に置換されていてもよい。

【0036】
TFOは、例えば、国際公開第2005/021570号、国際公開第03/068695号、国際公開第2001/007455号に記載の自体公知の手法或いはそれに準じる方法により、化学的に合成することができる。また、所望の修飾オリゴヌクレオチドが委託合成により入手可能である。

【0037】
(b)ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド
第2のアンチジーンとして、ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド及びその修飾物が挙げられる。PIポリアミドは、N-メチルピロール単位(Py)とN-メチルイミダゾール単位(Im)とγ-アミノ酪酸部分とを含むポリアミドであり、PyとImとγ-アミノ酪酸部分とは互いにアミド結合(-C(=O)-NH-)で連結される(Trauger et al, Nature, 382, 559-61 (1996); White et al, Chem. Biol., 4, 569-78 (1997);及びDervan, Bioorg. Med. Chem., 9, 2215-35 (2001))。PIポリアミドは、ピロール(Py)/イミダゾール(Im)ペアがCG塩基対を、Py/PyペアがAT又はTA塩基対を、Im/PyペアがGC塩基対を、それぞれ認識する。また、3-ヒドロキシピロール(Hp)を用いると、Hp/PyペアがTA塩基対を、Py/HpペアがAT塩基対を、それぞれ認識する。γ-アミノ酪酸部分はリンカーとなって全体が折りたたまれてU字型のコンフォメーション(ヘアピン型)をとる。U字型のコンフォメーションにおいては、リンカーを挟んでPyとImとを含む2本の鎖が並列に並ぶ。これによりPIポリアミドはDNA二重鎖のマイナーグルーブに入り込み、任意のDNA二重鎖と塩基配列特異的に結合し、それによって転写因子の該DNA二重鎖への結合を阻害することができる。

【0038】
本発明のPIポリアミドは、本発明の標的領域(即ち、本発明のシスエレメントの全部(TGCGGT)、該シスエレメントの3’側から1ヌクレオチドずつが除かれたTGCGG、TGCG、TGC、TG又はT、あるいは該シスエレメントの5’側から1ヌクレオチドずつが除かれたGCGGT、CGGT、GGT、GT又はTを含み、かつc-Myc遺伝子の転写開始点の上流配列中の連続する12ヌクレオチド以上(例えば、12~30ヌクレオチド、好ましくは15~25ヌクレオチド、より好ましくは17~22ヌクレオチド)を含むc-Myc遺伝子調節領域の部分ヌクレオチド配列からなる領域)に特異的に結合することにより、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害し、c-Myc遺伝子の転写活性化を抑制する。

【0039】
PIポリアミドは、既存のアンチセンス核酸やsiRNAと異なり核酸構造を有しないため、生体内で核酸分解酵素により分解されにくく、ベクターやカオチン脂質などのドラッグデリバリーシステム、エレクトロポーション法などを必要としない。

【0040】
PIポリアミドは、例えば、Fmoc保護アミノ基を有するPy及びIm誘導体(下式)を合成原料として、Fmocペプチド固相合成技術を用いて合成することができるが、それに限定されない。

【0041】
【化4】
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【0042】
(式中、Xは炭素又は窒素原子を表わす。)
PIポリアミドが所望のヘアピン構造を形成できるように、対形成するピロール-イミダゾール両鎖の間に、例えばγ-アミノ酪酸などの適当なリンカーが分子内に導入される。また、β-アラニンなどの標的DNA配列との結合に寄与しない適当なスペーサー分子を、対形成するピロール-イミダゾール両鎖の相補的な位置に挿入することもできる。

【0043】
PIポリアミドの全配列のカップリングが完了すれば、末端アミノ基をアシル基などでキャッピングした後、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いてカルボン酸として、或いはN,N-ジメチルアミノプロピルアミン(Dp)を用いてアミンとして、PIポリアミドを固相から切り出すことができる。

【0044】
更に、種々の官能基を分子末端に導入してピロールイミダゾールポリアミドの誘導体を作成することもできる。例えば、seco-CBI、クロラムブシル、ブレオマイシン、ナイトロジェンマスタード、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、エンジイン化合物、これらの誘導体等、DNAに対してアルキル化能を有する化合物(アルキル化剤)を必要に応じて導入することができる。アルキル化剤は、DNAのグアニンN-7位やアデニンN-3位にアルキル基を導入し、付加体形成やグアニン同士、アデニン同士等の架橋反応を引き起こす。架橋反応を生じた二本鎖DNAや付加体形成した二本鎖DNAは修復機構によって修復することが困難であり、結果としてDNAの転写及び複製が出来なくなり、細胞増殖の停止やアポトーシスによる細胞死が誘導される。

【0045】
得られたPIポリアミドは、公知の精製法により単離・精製することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。精製PIポリアミドは自体公知の方法で凍結乾燥して室温で保存することができ、用時、DMSO等の有機溶媒に溶解後、水若しくは水/有機溶媒混合液で適当な濃度に希釈することができる。PIポリアミドの設計方法及び製造方法は、例えば、特許第3045706号、特開2001-136974号及びWO03/000683に記載されている。

【0046】
20残基を超える長いPIポリアミドを合成するのは、技術面やコスト面で不利であるので、PIポリアミドを使用する際は、本発明の標的領域内のより短い領域をターゲットとし、例えば、上述のTFOと組み合わせることで、標的領域全体をカバーしてもよい。

【0047】
(c)ペプチド核酸(PNA)
第3のアンチジーンとして、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。PNAは主鎖にペプチド構造を保持した、DNAやRNAに類似の構造を有する分子である。PNAでは、糖の代わりにN-(2-アミノエチル)グリシンがアミド結合で結合したものが主鎖となっている。そして核酸塩基に相当するプリン環やピリミジン環が、メチレン基とカルボニル基を介して主鎖に結合している。

【0048】
【化5】
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【0049】
PNAにはDNAやRNAに存在するようなリン酸部位の電荷が存在しないため、静電反発の減少によりPNA/DNAの2重鎖はDNA/DNAの2重鎖よりも強い結合を形成する。従って、PNAは、DNA二重鎖内に侵入してD-ループを形成させ、相補的なDNA鎖とワトソン-クリック塩基対を形成することで、転写因子の該DNA二重鎖への結合を阻害することができる。PNA鎖が相補的DNAに結合する際にも正確な分子認識が行われており、ミスマッチ塩基対を含むPNA/DNAの2重鎖は、同様のミスマッチを持つDNA/DNAの2重鎖より不安定になることが知られている。従って、PNAの利用により、オフターゲット効果をより低減できることが期待される。また、PNAは生体内のヌクレアーゼやプロテアーゼに認識されにくく、対酵素分解耐性を有しており、さらに広いpH範囲で安定に存在し得る。

【0050】
本発明のPNAは、本発明の標的領域(即ち、本発明のシスエレメントの全部(TGCGGT)、該シスエレメントの3’側から1ヌクレオチドずつが除かれたTGCGG、TGCG、TGC、TG又はT、あるいは該シスエレメントの5’側から1ヌクレオチドずつが除かれたGCGGT、CGGT、GGT、GT又はTを含み、かつc-Myc遺伝子の転写開始点の上流配列中の連続する12ヌクレオチド以上(例えば、12~30ヌクレオチド、好ましくは15~25ヌクレオチド、より好ましくは17~22ヌクレオチド)を含むc-Myc遺伝子調節領域の部分ヌクレオチド配列からなる領域)に特異的に結合することにより、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害し、c-Myc遺伝子の転写活性化を抑制する。

【0051】
PNAは、PIポリアミドの場合と同様に、自体公知のペプチド固相合成技術を用いて製造することができる。

【0052】
2.ゲノム編集技術を利用した本発明の結合阻害物質
(a)ゲノム配列の改変を伴わない結合阻害物質
本発明はまた、ゲノム編集技術を利用して、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害することにより、c-Myc遺伝子の転写活性化を抑制することを特徴とする、抗腫瘍剤を提供する。
従来のゲノム編集の手法としては、配列非依存的なDNA切断能を有する分子と配列認識能を有する分子とを組み合わせた人工ヌクレアーゼを利用する方法がよく知られている。例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと非特異的なDNA切断ドメインとを連結した、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、植物病原菌キサントモナス属が有するDNA結合モジュールである転写活性化因子様(TAL)エフェクターと、DNAエンドヌクレアーゼとを連結したTALEN、あるいは、真正細菌や古細菌が持つ獲得免疫システムで機能する核酸配列CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)と、CRISPRとともに重要な働きを持つヌクレアーゼCas(CRISPR-associated)タンパク質ファミリーとを組み合わせたCRISPR-Cas9システムを利用する方法などが報告されている。さらには、35個のアミノ酸からなり1個の核酸塩基を認識するPPRモチーフの連続によって、特定のヌクレオチド配列を認識するように構成されたPPRタンパク質と、ヌクレアーゼとを連結した人工ヌクレアーゼも報告されている。

【0053】
これらのゲノム編集技術においては、いずれもタンパク質(ZF、TALエフェクター、PPR)又はRNAとタンパク質との複合体(CRISPR-Cas9)により特定の標的ヌクレオチド配列を認識している。従って、人工ヌクレアーゼに配列特異性を付与するこれらの物質(核酸配列認識モジュール)を用いて、本発明の標的領域に結合させることで、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害することができる。

【0054】
本発明において「核酸配列認識モジュール」とは、DNA鎖上の特定のヌクレオチド配列(即ち、標的ヌクレオチド配列)を特異的に認識して結合する能力を有する分子又は分子複合体を意味する。核酸配列認識モジュールが標的ヌクレオチド配列に結合することにより、該モジュールに連結されたエフェクターがDNAの標的化された部位に特異的に作用することを可能にする。

【0055】
本発明の1つの態様において、核酸配列認識モジュールとしては、CRISPR-Casシステムが挙げられる。CRISPR-Casシステムは、標的ヌクレオチド配列を有する短鎖CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化型crRNA(tracrRNA)との複合体、又はcrRNAとtracrRNAとを組合せた単一の合成RNA(ガイドRNA、gRNA)により目的のDNAの配列を認識するので、標的ヌクレオチド配列の相補配列と特異的にハイブリッド形成し得るオリゴDNAを合成するだけで、任意の配列を標的化することができる。

【0056】
CRISPR-Casを用いた核酸配列認識モジュールは、標的ヌクレオチド配列、及びCasタンパク質のリクルートに必要なtracrRNAからなるRNA分子(ガイドRNA)とCasタンパク質との複合体として提供される。また、他の態様として、CRISPR-Casを用いた核酸配列認識モジュールは、標的ヌクレオチド配列と同一配列のRNAを含むcrRNA、及びtracrRNA、Casの複合体として提供される。

【0057】
本発明で使用されるCasタンパク質は、CRISPRシステムに属するものであれば特に制限はないが、好ましくはCas9である。Cas9としては、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9(StCas9)等が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくはSpCas9である。ヒト臨床に利用することを考慮すれば、DSBを生じるのは好ましくないので、Casとしては、DNA切断活性を失活したもの(dCas)が好ましい。例えば、SpCas9の場合、10番目のAsp残基がAla残基に変換した、ガイドRNAと相補鎖を形成する鎖の反対鎖の切断能を欠くD10A変異体、840番目のHis残基がAla残基で変換した、ガイドRNAと相補鎖の切断能を欠くH840A変異体の二重変異体を用いることができるが、他の変異Casも同様に用いることができる。

【0058】
CRISPR-Casを核酸配列認識モジュールとして用いる場合、標的ヌクレオチド配列は、該配列にガイドRNAとCasの複合体が結合したときに、本発明のシスエレメントが該複合体によって遮断され、Runx3が結合できない状態にあれば、特に制限されないが、例えば、マウスc-Myc遺伝子の場合、後述の実施例(図4-2を参照)で使用された標的ヌクレオチド配列(即ち、CTGCGTATATCAGTCACCGC;配列番号12)が挙げられる。一方、ヒトc-Myc遺伝子の場合、例えば、本発明のシスエレメント中のCGGをPAMとして、その直前から上流側20ヌクレオチド(即ち、ATACTCACAGGACAAGGATG;配列番号6)の逆鎖配列を標的ヌクレオチド配列として、crRNAを設計することができる。

【0059】
本発明の他の態様においては、核酸配列認識モジュールとしては、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフ等の他、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のDNAと特異的に結合し得るタンパク質のDNA結合ドメインを含み、DNA二重鎖切断能を有しないフラグメント等が用いられ得る。

【0060】
ジンクフィンガーモチーフは、Cys2His2型の異なるジンクフィンガーユニット(1フィンガーが約3塩基を認識する)を3~6個連結させたものであり、9~18塩基の標的ヌクレオチド配列を認識することができる。ジンクフィンガーモチーフは、Modular assembly法(Nat Biotechnol (2002) 20: 135-141)、OPEN法(Mol Cell (2008) 31: 294-301)、CoDA法(Nat Methods (2011) 8: 67-69)、大腸菌one-hybrid法(Nat Biotechnol (2008) 26:695-701)等の公知の手法により作製することができる。ジンクフィンガーモチーフの作製の詳細については、特許第4968498号公報を参照することができる。

【0061】
TALエフェクターは、約34アミノ酸を単位としたモジュールの繰り返し構造を有しており、1つのモジュールの12及び13番目のアミノ酸残基(RVDと呼ばれる)によって、結合安定性と塩基特異性が決定される。各モジュールは独立性が高いので、モジュールを繋ぎ合わせるだけで、標的ヌクレオチド配列に特異的なTALエフェクターを作製することが可能である。TALエフェクターは、オープンリソースを利用した作製方法(REAL法(Curr Protoc Mol Biol (2012) Chapter 12: Unit 12.15)、FLASH法(Nat Biotechnol (2012) 30: 460-465)、Golden Gate法(Nucleic Acids Res (2011) 39: e82)等)が確立されており、比較的簡便に標的ヌクレオチド配列に対するTALエフェクターを設計することができる。TALエフェクターの作製の詳細については、特表2013-513389号公報を参照することができる。

【0062】
PPRモチーフは、35アミノ酸からなり1つの核酸塩基を認識するPPRモチーフの連続によって、特定のヌクレオチド配列を認識するように構成されており、各モチーフの1、4及びii(-2)番目のアミノ酸のみで標的塩基を認識する。モチーフ構成に依存性はなく、両脇のモチーフからの干渉はないので、TALエフェクター同様、PPRモチーフを繋ぎ合わせるだけで、標的ヌクレオチド配列に特異的なPPRタンパク質を作製することが可能である。PPRモチーフの作製の詳細については、特開2013-128413号公報を参照することができる。

【0063】
また、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のフラグメントを用いる場合、これらのタンパク質のDNA結合ドメインは周知であるので、該ドメインを含み、且つDNA二重鎖切断能を有しない断片を容易に設計し、構築することができる。

【0064】
いずれの核酸配列認識モジュールを用いる場合でも、上述の「本発明の標的領域」、即ち、本発明のシスエレメントの全部(TGCGGT)、該シスエレメントの3’側から1ヌクレオチドずつが除かれたTGCGG、TGCG、TGC、TG又はT、あるいは該シスエレメントの5’側から1ヌクレオチドずつが除かれたGCGGT、CGGT、GGT、GT又はTを含み、かつc-Myc遺伝子の転写開始点の上流配列中の連続する12ヌクレオチド以上を含む部分ヌクレオチド配列からなる領域を、ターゲットとすることができる。

【0065】
あるいは、前記CRISPR-CasのdCasの場合と同様に、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフ等の核酸配列認識モジュールに、失活したヌクレアーゼ(例、FokI)を組み合わせることにより、該ヌクレーアーゼが立体的に本発明のシスエレメントを遮断し、それによってRunx3の結合を阻害することもできる。この場合、例えば、本発明のシスエレメントより上流の正鎖ヌクレオチド配列と、該シスエレメントより下流の逆鎖ヌクレオチド配列とを特異的に認識する2つの核酸配列認識モジュールを設計し、該モジュールの末端(例、C末端)で失活したヌクレアーゼと複合体形成するようにすることで、本発明のシスエレメントを遮断することができる。

【0066】
ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフ等の核酸配列認識モジュールは、上記ヌクレアーゼとの融合タンパク質として提供することもできるし、SH3ドメイン、PDZドメイン、GKドメイン、GBドメイン等のタンパク質結合ドメインとそれらの結合パートナーとを、核酸配列認識モジュールと、ヌクレアーゼとにそれぞれ融合させ、該タンパク質結合ドメインとその結合パートナーとの相互作用を介してタンパク質複合体として提供してもよい。或いは、核酸配列認識モジュールと、ヌクレアーゼとにそれぞれインテイン(intein)を融合させ、各タンパク質合成後のライゲーションにより、両者を連結することもできる。

【0067】
本発明の核酸配列認識モジュールは、ヌクレアーゼの代わりに、転写抑制因子と複合体を形成させることにより、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を遮断しつつ、c-Myc遺伝子の転写をさらに抑制することもできる。本発明において、「転写抑制因子」とは、標的とする遺伝子の転写抑制活性を有するタンパク質またはタンパク質ドメインを意味する。

【0068】
本発明で用いる転写抑制因子としては、c-Myc遺伝子の転写活性化を抑制することができるものであれば特に制限はないが、例えば、KRAB、MBD2B、v-ErbA、SID(SIDのコンカテマー(SID4X)を含む)、MBD2、MBD3、DNMTファミリー(例:DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、Rb、MeCP2、ROM2及びAtHD2Aなどが挙げられ、好ましくは、KRABである。本発明の転写抑制因子としてKRABを用いる場合に、その由来とするタンパク質は特に制限されないが、例えば、KOX-1(ZNF10)、KOX8(ZNF708)、ZNF43、ZNF184、ZNF91、HPF4、HTF10、HTF34などが挙げられる。

【0069】
上記核酸配列認識モジュールと、本発明の標的領域が存在するc-Myc遺伝子との接触は、対象である哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウシ、イヌ、ネコ、サル等、好ましくはヒト又はマウス、より好ましくはヒト)の細胞に、該モジュール(ヌクレアーゼや転写抑制因子等のエフェクターと組み合わせて用いる場合は、さらに該エフェクタータンパク質)をコードする核酸を導入することにより実施される。
従って、核酸配列認識モジュール、又は核酸配列認識モジュール及びエフェクターは、それらの融合タンパク質をコードする核酸として、或いは、タンパク質に翻訳後、宿主細胞内で複合体形成し得るような形態で、各構成因子をコードする核酸として調製することが好ましい。ここで核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合は、好ましくは二本鎖DNAであり、哺乳動物細胞内で機能的なプロモーターの制御下に各構成因子を発現し得る発現ベクターの形態で提供される。RNAの場合は、好ましくは一本鎖RNAである。

【0070】
CRISPR-Casを核酸配列認識モジュールとして用いる場合、ガイドRNA及びCasタンパク質をコードする発現ベクターを細胞に導入し、該ガイドRNA及びCasタンパク質を発現させることにより、細胞内でガイドRNAとCasタンパク質との複合体を形成する。ガイドRNA及びCasタンパク質は、同一の発現ベクター上にコードされていてもよいし、異なる発現ベクター上に、それぞれコードされていてもよい。

【0071】
CasをコードするDNAは、当該技術分野で周知の方法により、Casを産生する細胞からクローニングすることができる。得られたCasをコードするDNAは、哺乳動物細胞用の発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することができる。

【0072】
一方、ガイドRNAをコードするDNAは、標的ヌクレオチド配列と既知のtracrRNA配列(例えば、gttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtggtgctttt; 配列番号5)とを連結したオリゴDNA配列を設計し、DNA/RNA合成機を用いて、化学的に合成することができる。なお、本明細書においてヌクレオチド配列は、別段にことわりのない限りDNAの配列として記載するが、ポリヌクレオチドがRNAである場合は、チミン(T)をウラシル(U)に適宜読み替えるものとする。

【0073】
ガイドRNAをコードするDNAも、哺乳動物細胞用の発現ベクターに挿入することができる。ガイドRNA及びCasは、同一の発現ベクター上にコードされていてもよいし、異なる発現ベクター上に、それぞれコードされていてもよい。好適には、CasをコードするDNAとガイドRNAをコードするDNAを、同一の発現ベクター中、別個のプロモーターの下流に挿入する。

【0074】
CasをコードするRNAは、例えば、上記したCasをコードするDNAを鋳型として、自体公知のインビトロ転写系にてmRNAに転写することにより調製することもできる。
ガイドRNAは、標的ヌクレオチド配列と既知のtracrRNA配列とを連結したオリゴRNA配列を設計し、DNA/RNA合成機を用いて、化学的に合成することもできる。この場合、ガイドRNAを構成するリボヌクレオチドに、安定性や膜透過性を向上させるための種々の修飾を付与することができる。また、crRNAとtracrRNAとを別個に合成し、アニーリングして用いることもできる。

【0075】
ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター、PPRモチーフ等の核酸配列認識モジュールをコードするDNAは、各モジュールについて上記したいずれかの方法により取得することができる。制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等の配列認識モジュールをコードするDNAは、例えば、それらのcDNA配列情報に基づいて、当該タンパク質の所望の部分(DNA結合ドメインを含む部分)をコードする領域をカバーするようにオリゴDNAプライマーを合成し、当該タンパク質を産生する細胞より調製した全RNA若しくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。

【0076】
ヌクレアーゼや転写抑制因子等のエフェクターをコードするDNAも、同様に、使用するエフェクターのcDNA配列情報をもとにオリゴDNAプライマーを合成し、当該エフェクターを産生する細胞より調製した全RNA若しくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。例えば、FokIをコードするDNAはそのcDNA配列をもとに、CDSの上流及び下流に対して適当なプライマーを設計し、Flavobacterium okeanokoites (IFO 12536)由来mRNAからRT-PCR法によりクローニングできる。

【0077】
クローン化された核酸配列認識モジュールをコードするDNAは、そのまま、又は所望により制限酵素で消化するか、適当なリンカー及び/又は核移行シグナルを付加することができる。ヌクレアーゼや転写抑制因子等のエフェクターと組み合わせて用いる場合、クローン化された核酸配列認識モジュールをコードするDNAを、前記クローン化された核酸配列認識モジュールをコードするDNAとライゲーションして、融合タンパク質をコードするDNAを調製することができる。或いは、核酸配列認識モジュールをコードするDNAと、エフェクターをコードするDNAに、それぞれ結合ドメイン若しくはその結合パートナーをコードするDNAを融合させるか、両DNAに分離インテインをコードするDNAを融合させることにより、核酸配列認識モジュールとエフェクターとが宿主細胞内で翻訳された後に複合体を形成できるようにしてもよい。これらの場合も、所望により一方若しくは両方のDNAの適当な位置に、リンカー及び/又は核移行シグナルを連結することができる。

【0078】
核酸配列認識モジュールをコードするDNA、エフェクターをコードするDNAは、化学的にDNA鎖を合成するか、若しくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長をコードするDNAを構築することも可能である。化学合成又はPCR法若しくはGibson Assembly法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該DNAを導入する宿主に合わせて使用コドンをCDS全長にわたり設計できる点にある。異種DNAの発現に際し、そのDNA配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに変換することで、タンパク質発現量の増大が期待できる。使用する宿主におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(公財)かずさDNA研究所のホームページに公開されている遺伝暗号使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)を用いることができ、又は各宿主におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよい。入手したデータと導入しようとするDNA配列を参照し、該DNA配列に用いられているコドンの中で宿主において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに変換すればよい。

【0079】
核酸配列認識モジュール及び/又はエフェクターをコードするDNAが挿入される発現ベクターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
プロモーターとしては、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなど哺乳動物細胞で機能し得るプロモーターが用いられるが、これらに限定されない。

【0080】
発現ベクターは、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ターミネーター、ポリA付加シグナル、薬剤耐性遺伝子等の選択マーカー、複製起点などを含有していてもよい。

【0081】
核酸配列認識モジュール(及び所望により、さらにエフェクター)をコードする発現ベクターを対象となる哺乳動物の標的細胞(例、がん細胞、p53が不活性化した前がん細胞)に導入することによって、該細胞内において核酸配列認識モジュール又は該モジュールとエフェクターとの複合体が発現・形成され、c-Myc遺伝子上の標的ヌクレオチド配列と接触させることができる。

【0082】
(b)ゲノム配列の改変を伴う結合阻害物質
上記(a)において、ヌクレアーゼとして、DSB活性を有する野生型酵素を用いることにより、本発明のシスエレメント内でDSBを生じせしめ、本発明のシスエレメントの1以上のヌクレオチドの欠失又は他のヌクレオチドへの置換、或いは該シスエレメント内への1以上のヌクレオチドの挿入をもたらすことにより、該シスエレメントを破壊することができる。

【0083】
c-Myc遺伝子は、本発明のシスエレメント内で切断された後、非相同末端連結(NHEJ)により修復されるが、その際の修復エラーにより、該シスエレメントの1以上のヌクレオチドの欠失又は他のヌクレオチドへの置換、或いは該シスエレメント内への1以上のヌクレオチドの挿入を生じる。その結果、Runx3の該変異シスエレメントに対する親和性が顕著に低下し、該変異シスエレメントへのRunx3の結合が阻害され、c-Myc遺伝子の転写活性化が抑制される。

【0084】
本発明のシスエレメント内に変異を導入する別の態様として、本発明のシスエレメントに隣接する上流及び下流の配列それぞれに相同な配列を含み、かつ該シスエレメント部分に変異が導入されたDNA(ドナーDNA)を、核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとの複合体をコードするDNAとともに、対象となる哺乳動物細胞に導入することで、本発明の標的領域を含む領域と該ドナーDNAとの間で相同組換えを引き起こすことにより、本発明のシスエレメント内に所望の変異を導入することができる。ドナーDNAに含まれる、該シスエレメントに隣接する上流及び下流の配列それぞれに相同な配列は、相同組換えを生じるに十分な長さであれば、特に制限されず、それぞれ50~100mer程度の比較的短い配列であってもよいし(図4-2参照)、あるいは、数kbに及ぶ長いホモロジーアームであってもよい(図4-1参照)。後者の場合、ドナーDNAはそれが挿入されたターゲティングベクターの形態で提供され得る。「ドナーDNAが挿入されたターゲティングベクター」とは、単に上記ドナーDNAと同一の配列が挿入されたターゲティングベクターにとどまらず、ドナーDNAの間又は外側に、選択マーカー及び/又はリコンビナーゼ標的配列を有するものも含む。該ターゲティングベクターの基本骨格となるベクターは特に限定されず、形質転換を行う細胞(例えば、大腸菌)中で自己複製可能なものであればよい。例えば、市販のpBluscript(Stratagene社製)、pZErO1.1(Invitrogen社)、pGEM-1(Promega社)等が使用可能である。

【0085】
ドナーDNAは、二本鎖DNA(環状二本鎖DNA、直鎖状二本鎖DNA)、一本鎖DNAのいずれの形態でも、細胞に導入され得る。

【0086】
DSBは想定外のゲノム改変を伴うため、強い細胞毒性や染色体の転位などの副作用があり、遺伝子治療における信頼性を損なうおそれがある。そのため、ヌクレアーゼに代えて、エフェクターとしてDSBを伴わずにゲノム改変が可能な酵素を、核酸配列認識モジュールと組み合わせて用いることができる。そのような酵素としては、例えば、核酸塩基の置換基を他の置換基に変換することで、異なる塩基に置換する酵素(例、デアミナーゼ等)、脱塩基反応を触媒し、内在の修復機構のエラーを利用して脱塩基部位に変異を導入する酵素(例、DNAグリコシラーゼ等)が挙げられるが、それらに限定されない。尚、この場合、核酸配列認識モジュールがCRISPR-Casであれば、Casとして、少なくとも一方のDNA切断能が失活した変異体(nCas)、好ましくは両方のDNA切断能が失活した変異体(dCas)が用いられる。エフェクターとしてデアミナーゼを用いる場合の詳細は、例えば国際公開第2015/133554号に、DNAグリコシラーゼを用いる場合の詳細は、例えば国際公開第2016/072399号に、それぞれ記載されている。

【0087】
上述のように、c-Myc遺伝子の転写調節領域には、本発明のシスエレメント以外にも多数のRunx結合配列が存在する(上記非特許文献1、図1参照)。従って、本発明のシスエレメントに加えて、これらのRunx結合配列の1以上へのRunx3の結合を阻害することで、さらにc-Myc遺伝子の転写を抑制し得る。c-Myc遺伝子の転写調節領域上の他のRunx結合配列を特異的に遮断するには、本発明の標的領域に代えて、目的のRunx結合配列TGCGGT又はACCGCAの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列からなる領域を標的領域として、上記と同様の手法を実施すればよい。この場合、核酸配列認識モジュールとしてCRISPR-Casを用いれば、ガイドRNAを各標的ヌクレオチド配列に対して設計しさえすればよいので、ZFモチーフやTALエフェクターを用いる場合より簡便である。

【0088】
3.本発明の結合阻害物質の用途
(a)抗腫瘍剤
本発明の結合阻害物質は、本発明の標的領域を特異的に認識して結合することにより、本発明のシスエレメントへのRunx3の結合を阻害し、Runx3やc-Mycの発現を直接阻害するよりも、効率よくc-Myc遺伝子の転写活性化を抑制することができ、しかも他の遺伝子上のRunx結合領域へのオフターゲット作用が十分に低減されているので、がん、特にp53の不活性化を伴うがんに対して、安全かつ有効な抗腫瘍薬となり得る。

【0089】
本発明は、少なくとも部分的には、多くのがんにおいて共通に認められるp53の不活性化とc-Mycの発現上昇という現象が、p53による抑制を脱したRunx3がc-Myc遺伝子の特定のRunx結合配列に結合することにより、該遺伝子の転写を活性化していることの発見に基づいている。
従って、本発明の結合阻害物質が抗腫瘍効果を発揮し得るがんとしては、p53が不活性化している限り特に制限はなく、例えば、慢性リンパ球性白血病、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、骨肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、急性リンパ球性がん、慢性骨髄性がん、皮膚がん、甲状腺がん、咽頭がん、喉頭がん、肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、結腸がん、精巣がん、卵巣がん、子宮頸がん、尿管がん、膀胱がんが挙げられる。特に、p53の変異率が高く、且つ悪性度が高い膵臓がんや、骨肉腫、とりわけ、化学療法による治療期間が1年に及び、かつそれでも治癒困難である場合が多い小児性骨肉腫の治療に有用である。

【0090】
本発明の結合阻害物質がアンチジーン(例、TFO、PIポリアミド、PNA等)の場合には、有効量の該結合阻害物質を単独で、あるいは、医薬上許容される担体とともに医薬組成物として、製剤化することができる。一方、本発明の結合阻害物がゲノム編集技術において利用される核酸配列認識モジュール(及び該モジュールと複合体を形成するエフェクター)である場合、好ましくは、該結合阻害物質は、それをコードするDNAを含む発現ベクター(以下、「本発明のベクター」ともいう。)の形態で、製剤化される。本発明の発現ベクターとしては、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のウイルスベクターを用いることができる。好ましくはアデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。

【0091】
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。

【0092】
アンチジーン分子や本発明のベクターの標的細胞内への導入を促進するために、本発明の抗腫瘍剤は、更に核酸導入用試薬を含むことができる。該核酸導入用試薬としては、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることが出来る。

【0093】
好ましい一実施態様において、本発明の抗腫瘍剤は、アンチジーン分子や本発明のベクターがリポソームに封入されてなる医薬組成物であり得る。リポソームは、1以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、通常は水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層内に保持することができる。本明細書において「封入」という場合には、アンチジーン分子や本発明のベクターはリポソーム内相に保持されてもよいし、脂質二重層内に保持されてもよい。本発明に用いられるリポソームは単層膜であっても多層膜であってもよく、また、粒子径は、例えば10~1000nm、好ましくは50~300nmの範囲で適宜選択できる。標的組織への送達性を考慮すると、粒子径は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下であり得る。

【0094】
アンチジーンや本発明のベクターのリポソームへの封入法としては、リピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法、リモートローディング法等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の公知の方法を適宜選択することができる。

【0095】
本発明の抗腫瘍剤は、経口的にまたは非経口的に、哺乳動物(例、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、サル)に対して投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。

【0096】
また、徐放性の製剤(ミニペレット製剤等)を調製し患部近くに埋め込むことも可能であり、或いはオスモチックポンプ等を用いて患部に連続的に徐々に投与することも可能である。

【0097】
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。

【0098】
医薬組成物中のアンチジーン分子や本発明のベクターの含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。

【0099】
本発明の抗腫瘍剤の投与量は、投与方法、対象とするがんの種類、重篤度、投与対象の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、例えば、成人に全身投与する場合、通常、アンチジーン分子の一回投与量として2 nmol/kg以上50 nmol/kg以下、局所投与する場合、1 pmol/kg以上10 nmol/kg以下が望ましい。かかる投与量を1~10回、より好ましくは5~10回投与することが望ましい。あるいは、本発明のベクターがウイルスベクター粒子として投与される場合、1回につき、例えばウイルスの力価として約1×103 pfu~1×1015 pfuの範囲で投与され得る。

【0100】
本発明の結合阻害物質が、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で提供される場合、本発明の抗腫瘍剤は、投与対象から採取された細胞や組織(例、がん細胞)に添加して、該細胞内に該発現ベクターを導入し、それを投与対象の体内、好ましくはがん病変部に戻す、ex vivo製剤であってもよい。この場合、細胞への遺伝子導入法としては、リポフェクション法、リン酸-カルシウム共沈法;微小ガラス管を用いた直接注入法等が挙げられる。また、組織への遺伝子導入法としては、内包型リポソームによる遺伝子導入法、静電気型リポソームによる遺伝子導入法、HVJ-リポソーム法、改良型HVJ-リポソーム法(HVJ-AVEリポソーム法)、受容体介在性遺伝子導入法、パーティクル銃で担体(金属粒子)とともに有効成分を細胞に移入する方法、naked-DNAの直接導入法、正電荷ポリマーによる導入法等が挙げられる。

【0101】
本発明の抗腫瘍剤は、他の薬剤、例えば、がん種に応じた既存の抗がん剤と併用することができる。本発明の抗腫瘍剤と他の薬剤とを併用する場合には、本発明の結合阻害物質と他の薬剤を自体公知の方法に従って混合し、合剤とすることもできるが、それぞれを別々に製剤化し、同一対象に対して同時に又は時間差をおいて投与してもよい。
他の薬剤の投与量としては、例えば、当該薬剤を単独投与する場合に通常使用される投与量をそのまま適用することができる。

【0102】
上述のように、p53が正常に機能していれば、p53はRunx3と結合してc-Myc遺伝子へのRunx3の結合を阻害するので、c-Myc遺伝子の発現上昇は抑制されている。従って、本発明の抗腫瘍剤は、p53が不活性化されているがんで特に有効である。そのため、本発明の抗腫瘍剤による治療奏功性を予測するために、投与対象であるがん患者がp53変異を有しているかを検定することが望ましい。従って、本発明はまた、本発明の抗腫瘍剤と、p53の不活性化を検定する試薬とを組み合わせてなる医薬を提供する。p53遺伝子の変異検出方法として、p53遺伝子のエキソンをPCR法で増幅し、シークエンシングやSSCP解析を行う方法が広く普及している。例えば、p53遺伝子の各エキソンを含む領域を増幅するようにデザインしたプライマーのセットは市販されている。p53不活性化の検定において、p53が不活性化されていない(野生型であるか、Runx3との結合能に影響しない変異を有する)と判定された場合、本発明の抗腫瘍剤は無効であるか、効果は限定的であると予測することができるので、他の治療法を選択することを考慮すべきである。

【0103】
(b)遺伝子改変動物
本発明の結合阻害物質が、ゲノム配列の改変を伴うゲノム編集の構成要素(例、核酸配列認識モジュール、ヌクレアーゼ、核酸塩基改変酵素、ドナーDNA)である場合、これらを用いて、本発明のシスエレメント内に変異を有し、該シスエレメントの機能が欠損した非ヒト動物を作製することができる。

【0104】
非ヒト動物としては、非ヒト温血動物(非ヒト哺乳動物及び鳥類)が好ましい。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類が挙げられる。鳥類としては、例えばニワトリが挙げられる。

【0105】
本発明の遺伝子改変動物は、例えば、p53コンディショナルノックアウト非ヒト動物由来の多能性幹細胞(例、ES細胞、iPS細胞)に、本発明の結合阻害物質を導入して、NHEJもしくは相同組換えにより本発明のシスエレメントが機能欠損した多能性幹細胞を作製した後、自体公知の方法によりキメラ胚、キメラ動物を作製し、ジャームライントランスミッションしたキメラ動物から子孫を得ることによって製造できる。ゲノム編集技術の利用により、一度に両方のアレルの機能を欠損させることができ、ホモ接合性の遺伝子改変動物を容易に得ることができる。

【0106】
このようにして得られた本発明の遺伝子改変動物は、c-Myc遺伝子の転写調節の分子機構や、p53、c-Myc及びRunx3によるがんの発症・進展に関する分子機構の解析などに有用である。

【0107】
4.スクリーニング方法
本発明はまた、本発明のシスエレメントを含む、c-Myc遺伝子の調節領域内の特定領域に対する特異的な結合能力を指標とする、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法を提供する。当該方法は、以下の(1)~(3)の工程を含む。
(1)被検物質の存在下又は非存在下で、本発明のシスエレメントを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
前記工程(1)に用いられる二本鎖DNAとしては、上述の本発明の標的領域を構成する二本鎖DNAが好ましい。

【0108】
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、或いは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。

【0109】
好ましい実施形態においては、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(1’)~(3’)さらに含む。
(1’)被検物質の存在下又は非存在下で、Runx結合配列TGCGGTを含み、かつc-Myc遺伝子の調節領域に存在しない、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2’)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3’)該DNAとRunx3との結合を阻害しないか、その阻害活性が、前記工程(1)の二本鎖DNAとRunx3と結合に対する阻害活性よりも低い被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
前記工程(1’)に用いられる二本鎖DNAとしては、c-Myc遺伝子以外の遺伝子、好ましくは生存に関連する遺伝子内に存在する、Runx結合配列を含む部分ヌクレオチド配列からなるものが挙げられる。多数のそのような配列を有する二本鎖DNAを収集し、例えばアレイ化することによって、被検物質のRunx3結合阻害の特異性(オフターゲット作用の程度)を網羅的に検出することができる。

【0110】
Runx3タンパク質は自体公知の方法により調製できる。例えば、Runx3遺伝子の発現組織からRunx3タンパク質を単離・精製できる。しかしながら、迅速、容易且つ大量にRunx3タンパク質を調製し、また、ヒト等のRunx3タンパク質を調製するためには、遺伝子組換え技術により組換えタンパク質を調製するのが好ましい。組換えタンパク質は、細胞系、無細胞系のいずれで調製したものでもよい。

【0111】
工程(2)(2’)では、被検物質による、二本鎖DNAとRunx3との結合の程度を測定することにより、被検物質の該結合に対する阻害の程度を検定する。二本鎖DNAとRunx3との結合は、自体公知の方法、例えば、ゲルシフトアッセイ、アフィニティークロマトグラフィー等の結果を、イメージアナライザー、分光光度計等で測定することにより行われ得る。

【0112】
工程(3)により、本発明のシスエレメントとRunx3との結合を阻害する被検物質が選択される。さらに、工程(3’)により、本発明のシスエレメント以外のRunx結合配列、例えば、c-Myc遺伝子以外で、調節領域内にRunx結合配列を含む遺伝子、好ましくは生存に関連する遺伝子の、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害しないか、阻害活性の弱い被検物質が選択される。

【0113】
上記のスクリーニング方法により選択された被検物質を、例えば、p53コンディショナルノックアウト動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の哺乳動物)へ投与することにより、該被検物質のc-Myc遺伝子の発現抑制効果及び/又は抗腫瘍効果や、副作用の程度を確認することができる。

【0114】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
[実施例1]
マウス・ヒトのc-Mycプロモーター領域として、転写開始点から上流3kbを図1に示す。下に塩基配列を拡大して明示したように、c-Myc遺伝子の転写開始点からもっとも近位に存在するRunxサイト(TGCGGT)をmR1として着目した。mR1はほ乳類において相同性が高く良く保存された領域に存在しており、マウスのmR1は-360bp付近に、ヒトのmR1は-310bp付近に位置し、近接する。
【実施例】
【0116】
[実施例2]
マウスmR1配列にCRISPR/Cas9システムを用いて変異を導入したマウス骨肉腫細胞を準備した。骨芽細胞特異的p53ノックアウトマウスに発症した骨肉腫から樹立した細胞株(83-1細胞)のmR1配列に、-365~-363の位置に存在するTGG(アンチセンス側の配列)PAM配列を使用し、CRISPR/Cas9システムでインデルを誘起して2種類のホモ欠損変異(T7およびT13欠損変異)を導入した細胞(83-1-T7細胞および83-1-T13細胞)を作出した。図2左図のEMSA(Electrophoresis-Mobility-Shift-Assay)が示すように、83-1細胞の核抽出液中の内在性Runx3およびRunx2タンパク質のDNA結合力は、正常配列を有する2本鎖20塩基プローブDNA(WT:TTCCACCTGCGGTGACTGAT(配列番号7);5’末端ビオチンラベル)に比べ、T7およびT13欠損変異をもつプローブDNA(T7:GTTCCACCGCGGTGACTGAT(配列番号8)、T13:CTGTTCCACCGGTGACTGAT(配列番号9);ともに5’末端ビオチンラベル)に対しては明らかに減少した(室温で20分反応させた後、4%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて検出)。特にT13欠損変異でRunx3およびRunx2タンパク質の結合が完全に阻害された。図2中図のWesternブロットの結果が示すように、83-1-T7細胞および83-1-T13細胞では、コントロールの83-1-C細胞と比較しRunx3のタンパク量は変わらないものの、明らかにc-Mycのタンパク量が減少していた。83-1-T7細胞および83-1-T13細胞の造腫瘍性を83-1-C細胞とともにヌードマウスを用いた担癌実験で検討した。ヌードマウス(BALB/c nu/nu ♀ 6週齢)の背側の皮下に、それぞれ2.5x10個注入し、30日後に形成された腫瘍の重量を測定し比較した(図2右図)。83-1-T7細胞を注入したマウスおよび83-1-T13細胞を注入したマウスでは、コントロールの83-1-C細胞を注入したマウスと比較して、明らかに造腫瘍能が抑制されていた。
【実施例】
【0117】
[実施例3]
Runx3およびc-Mycそれぞれを特異的shRNAを用いてノックダウンさせた83-1細胞を作出し、それらの造腫瘍性を検討した担癌実験の結果を、[実施例2]で得られた担癌実験の結果と比較した(図3)。担癌実験は、[実施例2]とまったく同様に実施した。Clontech社のpSIRENレトロウイルス用shRNA発現ベクターに、Runx3およびc-MycそれぞれのsiRNA特異的配列(Runx3:TGGTCGGTGGAAATAGAAA(配列番号10)、c-Myc:GAACATCATCATCCAGGAC(配列番号11))を組み込み、HEK293T細胞にトランスフェクションすることでレトロウイルスを産生させた。そのレトロウイルスを83-1細胞に感染させることでshRNA発現系を83-1細胞のゲノムに挿入し、U6プロモーターによりshRNAが恒常的に発現されるようにした。感染細胞は、pSIRENベクターにコードされたピューロマイシン耐性遺伝子の活性を利用して、5μg/mlのピューロマイシン添加培養液で培養することによって選別し、生き残った細胞を2.5x10個ヌードマウスに注入した。mR1への変異の導入により、Runx3のノックダウンやc-Mycのノックダウンよりも高い造腫瘍能抑制効果が示された。
【実施例】
【0118】
[実施例4-1]
c-Myc遺伝子の転写開始点より上流のmR1:TGCGGTをBglII配列(AGATCT)に置換する(図4-1)。c-Myc遺伝子のExon2の上流に「FRT-Neoカセット-FRT」を挿入したターゲティングベクターを構築した。定法に従い、C57BL/6由来のES細胞(TT2)にターゲティングベクターをエレクトロポレーション法で導入し、Neoカセット由来のネオマイシン耐性遺伝子活性を利用して、ネオマイシン(G418)で選別した。生き残ったES細胞のうち、期待通りに相同組み換えを起こしたES細胞からキメラマウスを作成し、F1マウスを得た。その後、F1マウスはCAG-FLPマウス(全身性に酵母由来のFLPリコンビナーゼを発現するマウス)と交配して、その産仔から、Neoカセットが除かれたマウスを選別した。FRT配列特異的にDNAを切り出すFLPリコンビナーゼの活性を利用した。
【実施例】
【0119】
[実施例4-2]
ゲノム編集を受精卵に応用し、mR1を特異的に変異させたマウスを作製した(図4-2)。(1) CTGCGTATATCAGTCACCGC(配列番号12)を標的とするcrRNAとtracrRNAの複合体がガイドRNAを構成し、Cas9ヌクレアーゼを誘導する。誘導されたCas9ヌクレアーゼは、PAM配列(AGG)から数塩基5’側の位置でゲノムDNAを二本鎖切断する。(2)二本鎖切断されたゲノムDNAは、mR1を制限酵素BglIIサイト(AGATCT)で置換した一本鎖DNAをドナーとして、HDR(Homology-directed repair; 相同組み換え修復)によって修復される。一本鎖DNAには、切断箇所から5’と3’の両方向に70塩基余りの相同配列を持たせている。(3)HDRによって修復されたゲノムDNAは、mR1が特異的に制限酵素BglIIサイト(AGATCT)で置換される。
【実施例】
【0120】
[実施例5-1]
マウスmR1配列近傍にCRISPR/Cas9システムを用いて変異を導入したマウス骨肉腫細胞を準備した。骨芽細胞特異的p53ノックアウトマウスで発症した骨肉腫から樹立した細胞株(83-1細胞)のmR1配列近傍の、-341~-339の位置に存在するAGG(センス側の配列)PAM配列を使用し、CRISPR/Cas9システムでインデルを誘起して2種類のホモ欠損変異(NA8およびNA11欠損変異)を導入した細胞(83-1-NA8および83-1-NA11細胞)を作出した。これらの細胞、及び[実施例2]と同様の方法により作出した細胞(83-1-T13細胞及び83-1-T18細胞)の造腫瘍性を検討する担癌実験を、[実施例2]とまったく同様に実施した(図5)。83-1-NA11細胞、83-1-T7細胞又は83-1-T13細胞を注入したマウスはいずれも、コントロールの83-1-C細胞(WT)を注入したマウスと比較して、大幅に造腫瘍能が抑制されていた。一方で、83-1-NA11細胞を注入したマウスは、造腫瘍能があまり抑制されていなかった。従って、mR1への変異の導入により腫瘍形成能が大幅に低下するが、mR1以外の部分に欠損(NA8)があっても、腫瘍形成能はそれほど変わらないことが示された。
【実施例】
【0121】
[実施例5-2]
変異を導入する細胞として、83-1細胞(mOS4 cl.1)だけでなく、OSマウスに発症した骨肉腫由来の細胞株(mOS3 cl.2及び97-3細胞)を用いること以外は、[実施例2]と同様の方法により、CRISPR/Cas9システムを用いて、マウスmR1配列に欠失又は挿入を有するホモ変異を導入したマウス骨肉腫細胞(親細胞(Parental)、T7細胞、T14細胞、T13細胞、T18細胞、T16細胞、T3細胞、A5細胞、A3細胞;ただし、T7細胞、T14細胞は同じホモ変異をもつが別クローン由来)を準備し、担癌実験を行った(図6)。いずれの細胞も、コントロールの親細胞と比較して、造腫瘍能が抑制されていた。
【実施例】
【0122】
以上より、mR1配列のいずれかの位置に、少なくとも1塩基の置換、挿入又は欠失の変異の導入が導入されることにより、特異的に腫瘍形成能が低下することが推測された。
【実施例】
【0123】
[実施例6]
The Jackson Laboratory(米国)から、C57B6系統の全身性p53遺伝子ノックアウトマウス(#002101; Current Biology Vol.4 p1-7, 1994; p53-/-マウス)を購入した。p53-/-マウスは、3~4か月程度で大半がT細胞リンパ腫を発症して死亡するため(Current Biology Vol.4 p1-7, 1994)、T細胞リンパ腫発症モデルとして使用できる。
C57B6系統の全身性Runx3遺伝子ノックアウトマウス(Runx3遺伝子のExon3をLacZに置き換えたマウス;Cell Vol.109 p113-124, 2002)を交配に使用して、p53-/-Runx3+/-マウスを作出した。なお、C57B6系統Runx3-/-マウスは生後すぐに死亡するため、p53-/-Runx3-/-マウスは検討できなかった。
全長Runx3はプロモーターの違いから2種類の全長タンパク質が生じるが、そのひとつであるP1プロモーター由来の全長Runx3を、Exon0を欠失させることにより全身性にノックアウトしたマウス(Runx3(P1)-/-マウス)を作製した。C57B6系統のRunx3(P1)-/-マウスは、P2プロモーター由来の全長Runx3は発現しているため、野生型と同程度の寿命で健康であり、交配も可能である。交配を繰り返すことによって、p53-/- Runx3(P1)-/-マウスを作出した。
実施例4-2で得たC57B6系統のmR1ホモ変異体マウス(mR1m/mマウス)は、野生型と同程度の寿命で健康であり、交配も可能であった。交配を繰り返すことによって、p53-/-mR1m/mマウスを作出した。
【実施例】
【0124】
これらの作出したマウスについて、生存率を評価した。結果を図7に示す。mR1を全身性に欠損させたマウスは、野生型と遜色なく健康で交配も可能であったことから、mR1を阻害しても副作用の心配がないことが示された。p53-/-マウスは胸腺にリンパ腫を発症して早期に死亡したが、p53-/-mR1m/mマウスは、長期間にわたって生存している。従って、p53-/-による造腫瘍性は、mR1変異によりレスキューされることが示された。しかも驚くべきことに、このレスキュー効果は、Runx3+/-や、Runx3(P1)-/-による効果よりも顕著に高かった。
【実施例】
【0125】
本出願は、日本で出願された特願2017-119159(出願日:2017年6月16日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、c-Myc遺伝子上の特定の領域(本発明の標的領域)へのRunx3の結合を阻害するだけで、極めて多くの種類の腫瘍細胞の造腫瘍能を抑制できる。しかも、当該結合を特異的に阻害し得る物質は、c-Myc遺伝子以外の遺伝子発現に及ぼすRunx3の作用には影響しないので、副作用が低減された安全な抗腫瘍剤として大いに有用である。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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【図4-1】
3
【図4-2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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