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明細書 :電子スピン測定用ホルダおよび電子スピン測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-124628 (P2019-124628A)
公開日 令和元年7月25日(2019.7.25)
発明の名称または考案の名称 電子スピン測定用ホルダおよび電子スピン測定装置
国際特許分類 G01N  24/10        (2006.01)
FI G01N 24/10 510A
G01N 24/10 510L
G01N 24/10 510R
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2018-006469 (P2018-006469)
出願日 平成30年1月18日(2018.1.18)
発明者または考案者 【氏名】丸本 一弘
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100137752、【弁理士】、【氏名又は名称】亀井 岳行
審査請求 未請求
要約 【課題】電子スピン測定を行う際に試料の試料管への挿入作業の作業性を向上させること。
【解決手段】電子スピン測定装置(1)の試料管(100)の長手方向に延びる基板部(131)と、測定用素子(120)の第1の電極部(54)に電気的に接続される第1の素子接続部(134)と、測定用素子(120)の第2の電極部(58)に電気的に接続される第2の素子接続部(135)と、基板部(131)上に配置され第1の素子接続部(134)から延びる第1の配線部(132)と、基板部(131)上に配置され第2の素子接続部(135)から延びる第2の配線部(133)と、第1の配線部(132)の他端側に設けられた第1の外部接続部(136)と、第2の配線部(133)の他端側に設けられた第2の外部接続部(137)と、を備えた電子スピン測定用ホルダ(130)。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
電子スピン測定装置の試料管に収容される測定用素子を支持可能な電子スピン測定用ホルダであって、
前記試料管の長手方向に延びる基板部と、
前記基板部の一端部に配置され且つ前記測定用素子の第1の電極部に電気的に接続される第1の素子接続部と、
前記基板部の一端部に配置され且つ前記測定用素子の第2の電極部に電気的に接続される第2の素子接続部と、
前記基板部上に配置され、前記第1の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第1の配線部と、
前記基板部上に配置され、前記第2の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第2の配線部と、
前記第1の配線部の他端側に設けられ、電気特性測定装置に電気的に接続可能な第1の外部接続部と、
前記第2の配線部の他端側に設けられ、電気特性測定装置に電気的に接続可能な第2の外部接続部と、
を備えたことを特徴とする電子スピン測定用ホルダ。
【請求項2】
前記試料管の長手方向に対して周期的に交差する波状に形成された前記各配線部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子スピン測定用ホルダ。
【請求項3】
前記第1の素子接続部と前記第1の配線部と前記第1の外部接続部とが配置された第1の基板部と、前記第2の素子接続部と前記第2の配線部と前記第2の外部接続部とが配置された第2の基板部と、を有する前記基板部、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子スピン測定用ホルダ。
【請求項4】
前記試料管の長手方向に対して、前記第2の素子接続部よりも前記基板部の一端側に配置された前記第1の素子接続部と、
前記試料管の長手方向に対して、前記第2の素子接続部よりも一端側の配線部分が、前記第2の素子接続部よりも他端側の配線部分に比べて細線状に形成されると共に、前記試料管の長手方向に対して交差する前記基板部の幅方向に対して、中央部に配置された前記第1の配線部と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子スピン測定用ホルダ。
【請求項5】
電子スピンを測定する対象の試料を支持し、前記試料に接触する第1の電極部および第2の電極部とを有する測定用素子と、
前記測定用素子が底部に収容される細長い試料管と、
前記試料管が挿入される空洞共振器と、
前記試料管の長手方向に延びる基板部と、前記基板部の一端部に配置され且つ前記第1の電極部に電気的に接続される第1の素子接続部と、前記基板部の一端部に配置され且つ前記第2の電極部に電気的に接続される第2の素子接続部と、前記第1の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第1の配線部と、前記第2の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第2の配線部と、前記第1の配線部の他端側に設けられた第1の外部接続部と、前記第2の配線部の他端側に設けられた第2の外部接続部と、を有し、前記測定用素子を支持可能なホルダと、
前記各外部接続部に電気的に接続され、前記試料の電気的な特性を測定する電気特性測定装置と、
前記試料からの電子スピン共鳴信号を測定するスピン測定部と、
を備えたことを特徴とする電子スピン測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子スピンを測定する対象の試料を保持する電子スピン測定用ホルダおよび電子スピン測定用ホルダを使用する電子スピン測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜素子のエレクトロニクスへの応用を目指した研究が盛んに行われており、有機薄膜素子として電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL;Electro Luminesence 以下有機EL素子ともいう。)、太陽電池などの有機デバイスの開発研究が進められている。有機FETはアモルファスシリコンFETを凌ぐ特性を示して注目されている。有機EL素子は、自発光で高輝度なディスプレイとして本質的に液晶を凌駕する特性を有することから注目され、すでに一部実用化に移されている。
【0003】
従来行われていた一般的な有機薄膜素子の評価手法は、電気伝導特性評価や、X線を用いて結晶構造を評価する手法である。X線を用いた評価手法としては、X線が結晶格子により回折される現象を利用したX線回折が代表的な例である。X線は、波長の短い電磁波であり、回折の結果を解析して、結晶内部で原子がどのように配列しているかを決定する手法である。しかしながら、マクロな大きさの試料に対してX線を当てる場合、X線はその表面の数百μmまでしか侵入しない。そのためX線回折法は物質表面に限定して結晶構造を調べる目的に限られた評価手法である。このように、従来から用いられているマクロな評価手法では有機界面層の電荷キャリアの状態や電気的な伝導機構を解明することはできなかった。
【0004】
これに対して、ミクロな現象の評価手法として、物質中に存在する不対電子に注目してそのスピン状態を観測して電気的な伝導機構を直接評価する方法がある。電子にはスピンと呼ばれる性質があり、それ自身が角運動量と磁気モーメントをもっているため、磁場を加えると、その中の不対電子のスピンのエネルギー状態は2つの準位に分裂する。この現象を利用して物質中にある不対電子を含む試料を数千ガウスの磁場中において不対電子のスピンの遷移に伴うマイクロ波の吸収による共鳴現象を観測するものがある。
【0005】
このため、物質中の電荷キャリアをなるべく多量に蓄積することにより不対電子の電子スピン状態が観測可能となる。このような理由から、電荷キャリアが蓄積可能な絶縁層が用いられている有機電界効果デバイスでの測定結果については報告されている。例えば、MIS(Metal Insulator Semiconductor)界面、TFT(Thin Film Transistor)やFET界面における電子スピン状態の観測によるミクロ評価により、デバイス中の分子集合体構造や、その中に電界注入された電荷キャリアの電子状態が明らかにされてきている。
【0006】
電子スピンを直接評価する方法として、下記の特許文献1に記載の技術が従来公知である。
特許文献1(特許第5578436号公報)に記載の電子スピン測定装置(1)では、試料を測定用素子(120)に設置して、測定用素子(120)を細長い試料管(100)に挿入する。そして、試料管(100)を空洞共振器(200)に挿入して、強い磁場を当てると共に、マイクロ波を照射して、磁気波の吸収を位相検出器(250)で検出し、信号解析器(260)で解析する。このとき、測定用素子(120)には、配線(130)を通じて電気特性測定装置(310)に接続されており、電気特性測定装置(310)で測定用素子(120)を駆動しながら電気特性の測定も行っている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第5578436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
特許文献1に記載された従来の構成において、電子スピンを測定するには、測定用素子(120)の2つの電極に2本の配線(130)を接続する必要がある。ここで、測定用素子(120)を細長い試料管(100)に挿入する際に、試料管(100)の一番奥(底)まで挿入する際に、途中で引っ掛かったり、配線(130)が座屈したりして奥まで挿入できなくなることを低減するために、2本の配線(130)が撚られた状態となっている。また、2本の配線を撚ることで、いわゆる「撚り対線」となりノイズ対策にもなる。
しかしながら、2本の配線を撚る作業は面倒で時間がかかると共に、試料を交換する度に撚る作業を行うと手間と時間がかかる問題がある。また、撚ったとしても、試料管(100)に挿入する途中で座屈したり湾曲することがあり、測定用素子(120)を奥まで挿入できなかったり、挿入される位置が毎回少しずつ異なり、測定の精度が安定しない恐れもある。さらに、撚りの状態も毎回異なるため、試料管(100)への挿入作業のしやすさやノイズ耐性が毎回異なり、測定の精度が安定しない問題もある。
【0009】
本発明は、電子スピン測定を行う際に試料の試料管への挿入作業の作業性を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の電子スピン測定用ホルダは、
電子スピン測定装置の試料管に収容される測定用素子を支持可能な電子スピン測定用ホルダであって、
前記試料管の長手方向に延びる基板部と、
前記基板部の一端部に配置され且つ前記測定用素子の第1の電極部に電気的に接続される第1の素子接続部と、
前記基板部の一端部に配置され且つ前記測定用素子の第2の電極部に電気的に接続される第2の素子接続部と、
前記基板部上に配置され、前記第1の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第1の配線部と、
前記基板部上に配置され、前記第2の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第2の配線部と、
前記第1の配線部の他端側に設けられ、電気特性測定装置に電気的に接続可能な第1の外部接続部と、
前記第2の配線部の他端側に設けられ、電気特性測定装置に電気的に接続可能な第2の外部接続部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子スピン測定用ホルダにおいて、
前記試料管の長手方向に対して周期的に交差する波状に形成された前記各配線部、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子スピン測定用ホルダにおいて、
前記第1の素子接続部と前記第1の配線部と前記第1の外部接続部とが配置された第1の基板部と、前記第2の素子接続部と前記第2の配線部と前記第2の外部接続部とが配置された第2の基板部と、を有する前記基板部、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子スピン測定用ホルダにおいて、
前記試料管の長手方向に対して、前記第2の素子接続部よりも前記基板部の一端側に配置された前記第1の素子接続部と、
前記試料管の長手方向に対して、前記第2の素子接続部よりも一端側の配線部分が、前記第2の素子接続部よりも他端側の配線部分に比べて細線状に形成されると共に、前記試料管の長手方向に対して交差する前記基板部の幅方向に対して、中央部に配置された前記第1の配線部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記技術的課題を解決するために、請求項5に記載の発明の電子スピン測定装置は、
電子スピンを測定する対象の試料を支持し、前記試料に接触する第1の電極部および第2の電極部とを有する測定用素子と、
前記測定用素子が底部に収容される細長い試料管と、
前記試料管が挿入される空洞共振器と、
前記試料管の長手方向に延びる基板部と、前記基板部の一端部に配置され且つ前記第1の電極部に電気的に接続される第1の素子接続部と、前記基板部の一端部に配置され且つ前記第2の電極部に電気的に接続される第2の素子接続部と、前記第1の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第1の配線部と、前記第2の素子接続部から前記基板部の他端部に向けて延びる第2の配線部と、前記第1の配線部の他端側に設けられた第1の外部接続部と、前記第2の配線部の他端側に設けられた第2の外部接続部と、を有し、前記測定用素子を支持可能なホルダと、
前記各外部接続部に電気的に接続され、前記試料の電気的な特性を測定する電気特性測定装置と、
前記試料からの電子スピン共鳴信号を測定するスピン測定部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1,5に記載の発明によれば、配線部等が配置された基板部を有するホルダを使用することで、撚られた配線の先端に試料が保持される従来の構成に比べて、電子スピン測定を行う際に試料の試料管への挿入作業の作業性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、各配線部が波状に形成されていない場合に比べて、撚り対線の効果でノイズを低減することができる。
請求項3に記載の発明によれば、1枚の基板部に複数の配線部や接続部を配置する場合に比べて、第1の基板部と第2の基板部の2枚で構成することで、配線部等の作製を容易にすることができる。
請求項4に記載の発明によれば、一端側の配線部分が太かったり、幅方向の中央に配置されない場合に比べて、電子スピン測定時の誘導損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は実施例1の電子スピン測定装置の説明図である。
【図2】図2は試料管と測定用素子と配線との関係の説明図である。
【図3】図3は実施例1の測定用素子の説明図であり、図3Aは平面図、図3Bは要部断面図である。
【図4】図4は実施例1の電子スピン測定用ホルダの説明図である。
【図5】図5は図4の要部拡大図であり、図5Aは図4のVA領域の拡大図、図5Bは図4のVB領域の拡大図である。
【図6】図6は実施例2のホルダの説明図であり、図6Aは第1の基板部と第2の基板部と各基板部が接合された状態の説明図、図6Bは図6Aの側面図である。
【図7】図7はホルダの外部接続部の説明図であり、図7Aは実施例2の説明図、図7Bは変更例1の説明図、図7Cは変更例2の説明図である。
【図8】図8は変更例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1の電子スピン測定装置の説明図である。
図1において、実施例1の電子スピン測定装置1は、試料への光照射、および/または、前記試料からの発光検出可能とするため可視光から近赤外光の波長域で、屈折率の波長分散の影響が実質上ない光透過窓205のついた空洞共振器200、電磁石210、励磁電源220、マイクロ波ブリッジ230、サーキュレーター240、位相検波器(電子スピン測定部)250と信号解析器(電子スピン測定部)260を有する。
【実施例1】
【0019】
図2は試料管と測定用素子と配線との関係の説明図である。
図2において、空洞共振器200には、試料管100の細管110の先端部(底部)が挿入される。試料管100の先端部には、試料が支持された測定用素子120が収容される。なお、試料管100には、試料挿入室115を密封するコック160と、測定環境を真空としたり、各種の気体を入れたりする挿入口150が設けられている。
図1において、空洞共振器200の先端側(底部側)には、試料の一例としての有機薄膜素子への光照射、および/または、有機薄膜素子からの発光検出を行う受発光器300が配置されている。受発光器300は、素子の電気的評価のための電気特性測定装置310に電気的に接続されている。試料が、有機太陽電池の場合は、受発光器300から、擬似太陽光を照射しながら測定する。また、連続光を照射しての寿命特性も電気特性測定装置310にコントロールされ測定することができる。
【実施例1】
【0020】
電子スピン測定装置1では、空洞共振器200に挿入された試料管100の測定用素子120に、励磁電源220により励磁された電磁石210で強い磁場を当て、マイクロ波をマイクロ波ブリッジ230から照射して、電磁波の吸収(電子スピン共鳴信号)を位相検波器250で検出して信号解析器260で観測し信号解析する。
なお、後述する測定用素子120およびホルダ130を除き、電子スピン測定装置1および電子スピン測定装置1を使用したスピン測定方法については、特許文献1(特許第5578436号公報)に記載されており、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0021】
(測定用素子)
図3は実施例1の測定用素子の説明図であり、図3Aは平面図、図3Bは要部断面図である。
図3において、実施例1の測定用素子120は、基板50を有する。基板50上には、試料の一例としての有機膜層52が保持されている。有機膜層52の上下は、第1の電極部の一例としての陰電極54と、第2の電極部の一例としての陽電極58で挟まれている。実施例1では、電荷キャリアの発生部分の電極56は面積を広くしている。
【実施例1】
【0022】
電極54,56,58は、不対電子の存在が有機薄膜素子の測定に影響しないように、非磁性か弱磁性の材料を使用することが必要である。実施例1では、陽電極58としては、一例として、ITO(Indium Tin Oxide)透明電極を使用しているが、これに限定されず、酸化亜鉛など他の非磁性物質の電極を使用可能である。
また、実施例1の陰電極54や電極56としては、一例として、アルミニウムを使用したが、これに限定されない。例えば、特許文献1に記載されているようなPEDOT(Poly(3,4-Ethylene Dioxy Thiophene))系などの導電性有機材料やドナー分子とアクセプター分子からなる分子化合物系材料である電荷移動錯体などの、導電性を示す他の非磁性材料を使用することができる。
なお、電荷キャリアの発生を多くして測定可能な検出感度を上げるために、測定用素子120の活性面積を大きくし不対電子数を増加させることが必要である。このため、測定用素子120は、試料管100に入る大きさでなるべく大きくする方が有効である。
【実施例1】
【0023】
(電子スピン測定用ホルダ)
図4は実施例1の電子スピン測定用ホルダの説明図である。
図5は図4の要部拡大図であり、図5Aは図4のVA領域の拡大図、図5Bは図4のVB領域の拡大図である。
図2、図4において、測定用素子120は、ホルダ(電子スピン測定用ホルダ)130の先端部に保持される。ホルダ130は、試料管100の長手方向に延びる基板部131を有する。実施例1の基板部131は、液体ヘリウム温度以下の2Kから室温以上の500Kまで、紫外光照射してもラジカル等が発生しない(電子スピン測定の際に信号ノイズを発生させない)非磁性の材料が好ましい。したがって、例えば、PEN(Poly(Ethylene Naphthalate))やPET(Poly(Ethylene Terephthalate))や、PTFE(polytetrafluoroethylene)を好適に使用可能である。なお、PETは、表面にCu(後述する配線部132,133等として使用)をパターンニングしにくく、PTFEは表面に金属(配線部132,133等)を形成しにくいため、PENが最も好適である。
【実施例1】
【0024】
図4において、基板部131は、試料管100の細管110に収容可能な細長い板状に形成されている。基板部131の長手方向の長さは、細管110よりも長く、試料管100の上部の試料挿入室115まで至る長さに設定されている。基板部131の表面には、第1の配線部132と第2の配線部133とが形成されている。第1の配線部132と第2の配線部133とは並行する直線状に形成されている。
図5Aにおいて、第1の配線部132の先端部(一端部)132aは、第2の配線部133の先端部133aよりも、基板部131の先端側まで延びている。また、実施例1の第1の配線部132の先端部132aは、基板部131の幅方向の中央部分に配置されるとともに、中央部132bに比べて、細線状に形成されている。
【実施例1】
【0025】
第1の配線部132の先端部132aの端には、第1の素子接続部134が形成されている。また、第2の配線部133の先端部133aの端には、第2の素子接続部135が形成されている。実施例1では、第1の素子接続部134と陰電極54との間が、図示しない配線で接続され、第2の素子接続部135と陽電極58との間が、図示しない配線で接続される。なお、各素子接続部134,135や電極54,58と配線との接続は、銀(Ag)のペーストやハンダ付け等の従来公知の接続法で接続可能である。
【実施例1】
【0026】
図5Bにおいて、第1の配線部132の基端部(他端部、上端部)132cには、第1の外部接続部136が形成されている。また、第2の配線部133の基端部(他端部、上端部)133cには、第2の外部接続部137が形成されている。
図2、図5Bにおいて、各外部接続部136,137は、電気特性測定装置310に挿入されるプラグ140から延びる一対の配線138に、試料挿入室115で接続される。
なお、実施例1の各外部接続部136,137は、基板部131の長手方向に対して、ずれた位置に配置されている。2つの外部接続部136,137を隣接して配置することも可能であるが、隣接して配置すると配線138に接続するための銀のペーストやハンダ等が、誤って外部接続部136,137に跨るように付着し(ブリッジしてしまい)、短絡する恐れがある。これに対して、実施例1では、長手方向にずれた位置に配置しており、接続材料(銀ペースト等)がブリッジすることが低減されている。
【実施例1】
【0027】
また、配線部132,133や各接続部134~137は、電気的に接続可能な任意の材料を使用可能であるが、低抵抗の金属を使用することが望ましい。実施例1では、配線部132,133等を銅(Cu)で構成したが、これに限定されず、金(Au)や銀(Ag)、アルミニウム(Al)等で構成することが可能である。なお、実施例1のホルダ130では、配線部132,133の表面に、配線部132,133を構成する金属の酸化を抑制するためのプリフラックス(図示せず)がコーティングされている。なお、表面にプリフラックスをコーティングすることが望ましいが、コーティング層を設けない構成とすることも可能である。なお、測定用素子120は、第1の配線部132の先端部132aの表面側に、図示しない接着剤や粘着剤、両面テープや固定用のペースト等で支持される。したがって、測定用素子120はプリフラックスの表面に支持される形となっている。
【実施例1】
【0028】
前記構成を備えた実施例1のホルダ130を有する電子スピン測定装置1では、ホルダ130に測定用素子120を固定した状態で、試料管100に挿入する。したがって、板状のホルダ130が測定用素子120を安定して試料管100の底部まで挿入することが可能である。したがって、電子スピン測定を行う際に試料管100への挿入作業の作業性を向上させることができる。また、従来技術に比べて、2本の配線を撚る作業が無くなり、ホルダ130に測定用素子120を支持し、ホルダ130と配線138とを接続するだけで済むので手間と時間を大幅に削減することが可能である。また、実施例1のホルダ130は、プリント基板を製造する技術で大量生産することができる。したがって、コストを低減することが可能であると共に、基板部131の形状や配線部132,133等の形状が安定する。したがって、2本の配線を撚る構成に比べて、測定用素子120の位置が安定しやすく、測定の精度も安定しやすい。
【実施例1】
【0029】
ここで、電子スピン測定装置1では、先端部132aの表面に測定用素子120が支持されるため、測定用素子120に対して照射されるマイクロ波が、先端部132aにも照射されることとなる。マイクロ波が照射される範囲に導電性のもの(電極や配線)が配置されると、誘導損失が発生することがある。特に、マイクロ波が照射され、電子スピンの測定が行われる空洞共振器200に入る部分(測定用素子120の近傍)では、誘導損失で測定に悪影響が発生する恐れがある。
これに対して、実施例1のホルダ130では、第1の配線部132の先端部132aが、幅方向の中央部分に配置されている。空洞共振器200では、中心部が最も誘導損失が小さいため、導電性の先端部132aが中央部に配置されることで、誘導損失の悪影響を低減することができる。
【実施例1】
【0030】
また、実施例1のホルダ130では、第1の配線部132の先端部132aが細線状に形成されている。したがって、先端部132aが太い場合に比べて、誘導損失の発生が低減されている。
なお、第1の配線部132の中央部132bは、先端部132aに比べて太く形成されており、導電性を余裕を持って確保可能である。
さらに、実施例1のホルダ130では、測定終了後に、ホルダ130から配線138や測定用素子120を外せば、再使用することができ、経済的である。
【実施例2】
【0031】
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
図6は実施例2のホルダの説明図であり、図6Aは第1の基板部と第2の基板部と各基板部が接合された状態の説明図、図6Bは図6Aの側面図である。
図7はホルダの外部接続部の説明図であり、図7Aは実施例2の説明図、図7Bは変更例1の説明図、図7Cは変更例2の説明図である。
【実施例2】
【0032】
図6、図7Aにおいて、実施例2のホルダ130では、基板部131′が、実施例1の基板部131と異なり、2枚の基板部131a,131bからなる。第1の基板部131aには、第1の配線部132と、第1の素子接続部134と、第1の外部接続部136とが配置されている。また、第2の基板部131bには、第2の配線部133と、第2の素子接続部135と、第2の外部接続部137とが配置されている。なお、図6、図7において、配線部132,133等の外表面にコーティングされるプリフラックスについては図示を省略している。
図6Aにおいて、実施例2の第1の配線部132は、試料管100の長手方向(基板部131a,131bの長手方向)に対して周期的に交差する波状に形成されている。また、実施例2の第2の配線部133は、第1の配線部132の波とは半周期ずれた波状に形成されている。
【実施例2】
【0033】
そして、実施例2のホルダ130では、第1の基板部131aと第2の基板部131bとを接合することで、実施例2の基板部131′が形成される。なお、接合方法は、測定に影響が少ない任意の方法で可能であり、接着剤で接着したり、溶接したり、ネジやボルト等で締結する等、任意の方法を採用可能である。
したがって、基板部131a,131bが接合された状態では、図6Aに示すように、2つの配線部132,133が撚り対線状に配置される。
【実施例2】
【0034】
図6B、図7Aにおいて、実施例2では、各基板部131a,131bを接合する際に、第2の基板部131bに対して、第2の配線部133等が配置された面とは反対側の面(いわゆる「背面」)に第1の配線部132等が配置されるように接合される。図7Aにおいて、実施例2では、第1の外部接続部136が、第2の基板部131bよりも、長手方向の外側に配置されるように、第1の基板部131aの長さや、第1の配線部132の長さ、第1の外部接続部136の位置が設定されている。そして、各外部接続部136,137は、銀ペースト138aで配線138に接続されている。なお、図示しないが、第1の配線部132の先端部132a側も、同様に、第2の基板部131bの先端(一端)よりも外方に配置されるように形成されている。
【実施例2】
【0035】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2のホルダ130では、図6Aに示すように、2つの配線部132,133が撚り対線状に配置される。したがって、撚り対線によるノイズの低減効果を得ることができる。なお、プリント基板の技術を使用することで、配線部132,133の形状が安定するため、従来技術のように配線を手で撚る場合に比べて、撚り線の形状、撚り具合が安定する。よって、ノイズ耐性等の性能も安定し、測定結果も安定する。
また、2枚の基板部131a,131bで構成することで、1枚の基板に撚り対線状の配線を実現する場合に比べて、製造が容易である。
【実施例2】
【0036】
(変更例1)
図7Bにおいて、図7Aに示す実施例2と異なり、各基板部131a,131bの背面どうしで接合する構成とすることも可能である。この場合、第1の基板部131aの長さを長くしなくても、第1の外部接続部136が基板部131′の外面に露出することとなり、配線138との接続も容易になる。
【実施例2】
【0037】
(変更例2)
図7Cにおいて、図7Aに示す実施例2と異なり、各基板部131a,131bの配線部132,133どうしが向かい合うように接合することも可能である。なお、配線部132,133等の表面には図示しないプリフラックスがコーティングされているため、接合した場合に配線部132,133が短絡する等の問題は発生しない。
図7Cに示す構成では、外部接続部136,137がほとんど外部に露出しなくなり、基板部131a,131bに開口を形成したり、基板部131a,131bの一部を切り欠く等をして、配線部138と接続する必要がある。しかし、変更例2では、配線部132,133どうしの距離は、実施例2や変更例1よりも近くなるため、撚り対線の効果は最も高くなることが期待される。
【実施例2】
【0038】
(変更例3)
図8は変更例3の説明図である。
実施例1,2では、ホルダ130において、各外部接続部136,137と配線138とを、銀ペースト等で接続する構成を例示したが、これに限定されず、図8に示すように、各外部接続部136,137に対して、接続クリップ139を介して配線138を接続する構成とすることも可能である。図8において、接続クリップ139は、回転軸139cを中心として互いに開閉可能なアーム部139a,139bが設けられている。第1のアーム部139aの先端には、配線138の先端に接続される接触部139dが支持されている。したがって、アーム部139a,139bで基板部131を挟み込んで、接触部139dを外部接続部136,137と接触させることで、配線138とホルダ130との接続、取り外しを容易に行うことができる。よって、測定用素子120を試料管100にセットする作業の作業性を向上させることができる。
【実施例2】
【0039】
以上、本発明の実施例および変更例を詳述したが、本発明は、前記実施例等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、例示した材料は、使用可能な任意の材料に変更可能である。
また、図6、図7において、配線部132,133は、正弦波状に形成する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、三角波状や矩形波状、ノコギリ波状等、任意の波形形状とすることが可能である。
さらに、基板部131,131′に配線部132,133等を配置する場合に、プリント基板技術で作製することが望ましいが、基板部131,131′の表面にテープ等で配線を固定する構成とすることも不可能ではない。
【符号の説明】
【0040】
1…電子スピン測定装置、
52…試料、
54…第1の電極部、
58…第2の電極部、
100…試料管、
120…測定用素子、
130…電子スピン測定用ホルダ、
131,131′…基板部、
131a…第1の基板部、
131b…第2の基板部、
132…第1の配線部、
132a…第2の素子接続部よりも一端側の配線部分、
132b…第2の素子接続部よりも他端側の配線部分、
133…第2の配線部、
134…第1の素子接続部、
135…第2の素子接続部、
136…第1の外部接続部、
137…第2の外部接続部、
200…空洞共振器、
250,260…スピン測定部、
310…電気特性測定装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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