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明細書 :インターフェロンβ産生細胞の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月13日(2020.2.13)
発明の名称または考案の名称 インターフェロンβ産生細胞の作製方法
国際特許分類 C12N   5/10        (2006.01)
A61K  35/15        (2015.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  38/21        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12N   5/078       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/22        (2006.01)
FI C12N 5/10 ZNA
A61K 35/15 Z
A61K 48/00
A61K 38/21
A61P 35/00
A61P 37/04
A61P 43/00 117
C12N 5/078
C12N 15/09 110
C12N 15/22
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 46
出願番号 特願2019-510249 (P2019-510249)
国際出願番号 PCT/JP2018/013617
国際公開番号 WO2018/181903
国際出願日 平成30年3月30日(2018.3.30)
国際公開日 平成30年10月4日(2018.10.4)
優先権出願番号 2017071596
優先日 平成29年3月31日(2017.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】千住 覚
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102015、【弁理士】、【氏名又は名称】大澤 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C084
4C087
Fターム 4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC16
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB25
4B065BC11
4B065CA44
4C084AA13
4C084CA26
4C084CA53
4C084DA21
4C084DA50
4C084DA51
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB03
4C084ZB09
4C084ZB22
4C084ZB26
4C084ZC02
4C084ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB63
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087DA18
4C087DA19
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB03
4C087ZB09
4C087ZB22
4C087ZB26
4C087ZC41
要約 発明の目的は、インターフェロンβ生産性の高いiPS-MLの作製方法を提供することである。本発明により、IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程及び該細胞においてインターフェロンβ遺伝子を導入する工程を含む、インターフェロンβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法が提供される。また本発明により、外来性のインターフェロン(IFN)βを発現しかつインターフェロンα/β受容体の発現が抑制されたミエロイド系血液細胞を含む、癌の予防又は治療剤が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
ミエロイド系血液細胞から、インターフェロン(IFN)β生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)及び(C)を含む方法:
(B)ミエロイド系血液細胞において、インターフェロンα/β受容体(IFNAR)遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)プロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子を、ミエロイド系血液細胞に導入する工程。
【請求項2】
ミエロイド系血液細胞が、多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多能性幹細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)、(B)及び(C)を含む方法:
(A)多能性幹細胞からミエロイド系血液細胞を作製する工程、
(B)IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程、及び
(C)プロモーターと機能的に連結されたインターフェロンβ遺伝子を導入する工程を含む、方法。
【請求項4】
工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNARの遺伝子破壊である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNAR1遺伝子のエクソン1~3のいずれか及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン2~4のいずれかへのdouble strand break(DSB)の導入による、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊による、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNAR1遺伝子のエクソン2及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン3へのdouble strand break(DSB)の導入による、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊による、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(B)におけるIFNAR遺伝子の遺伝子破壊が、配列番号1及び/又は7を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いたものである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工程(C)におけるプロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子が、外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ミエロイド系血液細胞が、下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子を発現する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
【請求項10】
下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子を導入する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により得られるミエロイド系血液細胞のIFNβ産生量を測定し、IFNβ産生量の高いミエロイド系血液細胞を選択する工程を含む、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法。
【請求項12】
内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されており、かつ、外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子を有する、ミエロイド系血液細胞。
【請求項13】
下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子をさらに含む、請求項12に記載の細胞:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
【請求項14】
CD11b陽性かつCD45陽性である、請求項12又は13に記載の細胞。
【請求項15】
IFNβ生産量が50 ng/106細胞/24時間以上である、請求項12~14のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項16】
予防又は治療上有効量の請求項12~15のいずれか一項に記載の細胞又は請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を用いて作製された細胞を含む、がんの予防又は治療剤。
【請求項17】
予防又は治療上有効量の請求項12~15のいずれか一項に記載の細胞又は請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を用いて作製された細胞を投与することを含む、がんの予防又は治療方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンβ生産性の高い細胞、及びインターフェロンβ生産性の高い細胞の作製方法に関し、さらに該細胞を含む癌の予防又は治療剤、並びに該細胞を用いた癌の予防又は治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
iPS-MC(iPS cell-derived myeloid cell:単球あるいはマクロファージ類似細胞)は、ヒトのiPS細胞をin vitroの培養系において分化誘導することにより作成されるミエロイド系血液細胞である。iPS-ML(長期増殖能を有するiPS-MC)は、iPS-MCに細胞増殖因子(例、cMYC+BMI1+MDM2)の遺伝子を導入し増殖能力を付与したものである。iPS-MLは、一度樹立すると、少なくとも3~4ヶ月にわたり増殖させることが可能である。そして、増殖後も、ミエロイド系細胞のマーカー分子の発現、異物貪食能力、および樹状細胞への分化能力等の特性を保持している(特許文献1)。iPS-MLは、単純な浮遊細胞培養系を用いて増殖させることが可能であり、自動大量培養装置を用いた培養も可能である。以上より、iPS-ML作製技術は、生理的な機能を有するヒトミエロイド細胞の大量生産を可能とする唯一のものであると言える。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2012/043651号
【特許文献2】特表2013-516170号公報
【0004】

【非特許文献1】Koba C, Haruta M, Matsunaga Y, Matsumura K, Haga E, Sasaki Y, Ikeda T, Takamatsu K, Nishimura Y, Senju S., "Therapeutic effect of human iPS-cell-derived myeloid cells expressing IFN-β against peritoneally disseminated cancer in xenograft models."PLoS One. 2013;8(6):e67567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インターフェロンβ生産性の高いiPS-MLを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非特許文献1に記載されたIFNβを発現するiPS-MLを用いると、特定の癌を治療することはできるが、一方で、治療効果の低い癌があることを見出した。そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、非特許文献1に記載されたIFNβを発現するiPS-MLが産生できるIFNβの量には限界があり、最大でも20 ng/106細胞/24時間程度であることを見出した。本明細書中、非特許文献に記載されたIFNβを発現するiPS-MLを、iPS-ML/IFNβLOW細胞とも称する。さらに本発明者らは、このiPS-ML/IFNβLOW細胞は、IFNβへの感受性が高く、高濃度のIFNβ存在下では培養することができないことを見出した。
【0007】
本発明者らが、IFNAR遺伝子を破壊したiPS-MLにIFNβの発現ベクターを導入したところ、iPS-ML/IFNβLOW細胞と比較して、IFNβへの感受性が低く、IFNβ産生量の高いiPS-ML/IFNβHIGH細胞が得られることを見出した。
さらに、本発明者らは、このiPS-ML/IFNβHIGH細胞を用いることにより、iPS-ML/IFNβLOW細胞では治療することのできなかった癌を治療することができることを見出した。
【0008】
発明者らはさらに本発見に基づいて鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の態様を含むものである:
[1] ミエロイド系血液細胞から、インターフェロン(IFN)β生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)及び(C)を含む方法:
(B)ミエロイド系血液細胞において、インターフェロンα/β受容体(IFNAR)遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)プロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子を、ミエロイド系血液細胞に導入する工程。
[2] ミエロイド系血液細胞が、多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞である、[1]に記載の方法。
[3] 多能性幹細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)、(B)及び(C)を含む方法:
(A)多能性幹細胞からミエロイド系血液細胞を作製する工程、
(B)IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程、及び
(C)プロモーターと機能的に連結されたインターフェロンβ遺伝子を導入する工程を含む、方法。
[4] 工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNAR遺伝子の遺伝子破壊である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNAR1遺伝子のエクソン1~3のいずれか及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン2~4のいずれかへのdouble strand break(DSB)の導入による、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊による、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 工程(B)におけるIFNAR遺伝子の発現の抑制が、IFNAR1遺伝子のエクソン2及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン3へのdouble strand break(DSB)の導入による、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊による、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[7] 工程(B)におけるIFNAR遺伝子の遺伝子破壊が、配列番号1及び/又は7を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いたものである、[5]又は[6]に記載の方法。
[8] 工程(C)におけるプロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子が、外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] ミエロイド系血液細胞が、下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子を発現する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
[10] 下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子を導入する工程をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の方法により得られるミエロイド系血液細胞のIFNβ産生量を測定し、IFNβ産生量の高いミエロイド系血液細胞を選択する工程を含む、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法。
[12] 内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されており、かつ、外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子を有する、ミエロイド系血液細胞。
[13] 下記の(a)及び(b)の外来性遺伝子をさらに含む、[12]に記載の細胞:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子及びHIF1A遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
[14] CD11b陽性かつCD45陽性である、[12]又は[13]に記載の細胞。
[15] IFNβ生産量が50 ng/106細胞/24時間以上である、[12]~[14]のいずれかに記載の細胞。
[16] 予防又は治療上有効量の[12]~[15]のいずれかに記載の細胞又は[1]~[11]のいずれかに記載の方法を用いて作製された細胞を含む、がんの予防又は治療剤。
[17] がんの予防又は治療が必要な対象に、予防又は治療上有効量の[12]~[15]のいずれかに記載の細胞又は[1]~[11]のいずれかに記載の方法を用いて作製された細胞を投与することを含む、がんの予防又は治療方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の方法、すなわち、IFNβ発現ベクターをiPS-MLに導入したiPS-ML/IFNβLOW細胞と比較して10倍以上の量のIFNβを産生するiPS-MLを作製することが可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、CAS9発現ベクターの構造を示す図である。
【図2】図2は、ヒトIFNAR2エクソン2~4領域に設定したgRNA標的配列(gRNA target 1-4)を示す図である。エクソンの塩基配列を大文字、前後のイントロン配列を小文字で示した。gRNAの標的として選択した塩基配列を下線で示した。
【図3】図3は、gRNA発現ベクターの構造を示す図である。
【図4】図4は、インターフェロンβ発現ベクターの構造を示す図である。
【図5】図5は、IFNレセプター欠損(IFNAR2遺伝子欠損)iPS-MLによるIFNβ大量産生を示す図である。
【図6】図6は、胃癌腹膜播種に対するiPS-ML/IFNβLOWの治療効果を示す図である。ルシフェラーゼを発現するMKN-45胃癌細胞(5×106 細胞/500 μL/マウス)を、腹腔内に注射した。4日目に、マウスのin vivo発光解析を行い、腫瘍細胞の生着を調べた。明らかな腫瘍をもつマウスを、治療(n =4)及び対照(n = 5)群に分けた。治療群のものに、1×107 iPS-ML/IFNβLOW細胞を、1週間に2回2週間注射し、一方、対照群のマウスは治療を行わなかった。A、1週間に1回、in vivo 発光解析により腫瘍進行を監視した;数値化したイメージングのデータをBに示す。各マウスにおける腫瘍成長の程度を、4日目からの全発光カウントの倍率変化として算出した。治療群及び対照群における倍率変化の平均値をグラフに示した。治療と対照群との間に、統計的に有意な差を認めなかった。
【図7】図7は、胃癌腹膜播種に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。ルシフェラーゼを発現するMKN-45胃癌細胞(5×106 細胞/500 μL/マウス)を、腹腔内に注射した。4日目に、マウスのin vivo発光解析を行い、腫瘍細胞の生着を調べた。明らかな腫瘍をもつマウスを、治療(n =4)及び対照(n = 4)群に分けた。治療群のものに、1×107 iPS-ML/IFNβHIGH細胞を、1週間に2回2週間注射し、一方、対照群のマウスは治療を行わなかった。A、1週間に1回、in vivo 発光解析により腫瘍進行を監視した;数値化したイメージングのデータをBに示す。各マウスにおける腫瘍成長の程度を、4日目からの全発光カウントの倍率変化として算出した。治療群及び対照群における倍率変化の平均値をグラフに示した。17及び24日目の治療と対照群との値の差は、統計的に有意であった(p≦0.05、Mann-Whitney検定)
【図8】図8は、インターフェロン(IFN)βに対する、胃癌細胞株及び膵臓癌細胞株の感受性を示す図である。ホタルルシフェラーゼ発現ベクターを形質導入した、MKN-45(ヒト胃癌)、NUGC-4(ヒト胃癌)及びMIAPaCa-2(ヒト膵臓癌)細胞(それぞれ、5×104 細胞/200 μL 培養液/ウェル)を、表示の投与量のIFNβの存在下、96ウェル培養プレートで培養した。3日後、ルシフェラーゼ基質を、該ウェルに加え、マイクロプレートリーダーを用いて発光活性を定量した。データを、平均±SDとして示す。
【図9】図9は、ルシフェラーゼを発現するヒト癌細胞を用いた、転移性の肝臓癌の異種移植モデルの定着を示す図である。A、SCIDマウスの脾臓への、癌細胞の注射。B、ルシフェラーゼを発現するヒト胃癌細胞株(MKN-45及びNUGC-4)及び膵臓癌細胞株(MIAPaCa-2)(それぞれ、2×106 細胞/100 μL)を、SCIDマウスの脾臓の被膜下領域に注射した。7日目に、in vivo 発光解析を行い、該マウスにおける腫瘍の発達を調べた。MKN-45肝臓転移の巨視的な像(C)及び組織学的画像(D)を示す;転移性病巣を矢印で示す。
【図10】図10は、肝臓転移性胃癌に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。肝臓転移性胃癌に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を異種移植モデルにおいて検証した。ルシフェラーゼを発現するMKN-45胃癌細胞(2×106 細胞/100 μL/マウス)を、開腹手術下でマウス脾臓の被膜下領域に注射した。7日目に、マウスのin vivo発光解析を行い、肝臓病巣の発達を調べた。明らかな腫瘍をもつマウスを、治療(n = 5)及び対照(n = 10)群に分けた。治療群のものに、2×107 iPS-ML/IFNβHIGH細胞を、1週間に3回3週間注射し、一方、対照群のマウスは治療を行わなかった。A:1週間に1回、in vivo 発光解析により腫瘍進行を監視したイメージングのデータを示す。B:各マウスにおける腫瘍成長の程度を、7日目からの全発光カウントの倍率変化として算出した。治療群及び対照群における倍率変化を、ログ値として表現した。37日目の、治療と対照群との値の差は、統計的に有意であった(p≦0.05、Mann-Whitney検定)
【図11】図11は、肝臓転移性胃癌に対する、iPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。肝臓転移性胃癌に対する、iPS-ML/IFNβHIGHの治療効果をマウスにおける異種移植モデルにおいて検討した。開腹手術下で、これらのマウスの脾臓の被膜下領域に、ルシフェラーゼを発現するMKN-45胃癌細胞(2×106 細胞/100 μL/マウス)を注射した。10日目に、マウスのin vivo 発光解析を行って、肝臓病巣の発達を調べた。明らかな腫瘍をもつマウスから脾摘し、治療(n = 5)群と対照(n = 5)群とに分けた。治療群のものに、1週間に3回、3週間、2×107 iPS-ML/IFNβHIGHを注射した;対照群におけるマウスは、治療を行わなかった。A、1週間に1回、in vivo 発光解析を行い、腫瘍進行を監視した。B、癌の成長の程度を、各マウスにおける、全発光カウントの倍率変化として算出した。治療群及び対照群の倍率変化の平均 ± SDを示す。28日目の値における治療群と対照群との差は、統計的に有意(p ≦ 0.01、Mann-Whitney検定; p<0.01、スチューデントの T検定)であった。4細胞/200μL 培養液/ウェル)を、表示の投与量の、IFNβ及び/又はIFNγの存在下で、96ウェル培養プレートで培養した。3日後、ルシフェラーゼ基質を該ウェルに加え、マイクロプレートリーダーを用いて発光活性を定量した。
【図13】図13は、ルシフェラーゼを発現するヒトHCC細胞を用いた、肝細胞癌の異種移植モデルの定着を示す図である。A、SCIDマウスの肝臓(左葉)への、癌細胞の注射。B、ルシフェラーゼを発現するSK-HEP-1細胞(2×106 細胞/100μL/マウス)を、肝臓の左葉に注射した。10日目に、in vivo発光解析により腫瘍発達を解析した。C、結果として得られる腫瘍の巨視的な像を示す。
【図14】図14は、肝細胞癌(HCC)におけるiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。肝細胞癌(HCC)におけるiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を、マウスの同所性異種移植モデルを用いて検証した。ルシフェラーゼを発現するSK-HEP-1ヒトHCC細胞(2×106 細胞/100 μL/マウス)を、開腹手術下で、SCIDマウスの肝臓の左葉に注射した。9日目に、マウスのin vivo発光解析を行い、肝臓病巣の発達を調べた。A及びB、明らかな腫瘍をもつマウスを、治療群(n = 9)及び対照群(n = 9)に分けた。治療群のものには、2×107 iPS-ML/IFNβHIGHを1週間に3回、3週間(9、12、14、16、19、21、23、26及び28日目)注射した;対照群のマウスは治療を行わなかった。腫瘍進行を、1週間1回行うin vivo発光解析により監視した。各マウスの全発光カウントにおける、9日目からの倍率変化を、図14Aに示す。A、癌の成長の程度を、各マウスにおいて、9日目からの全発光カウントの倍率変化として算出した。治療群及び対照群における、倍率変化の平均±SDを示す。治療群及び対照群の差は、統計的に有意(p < 0.01、スチューデントのT検定)であった。B、治療群及び対照群のKaplan-Meier 生存曲線。治療群及び対照群の差は、統計的に有意(p < 0.0001、log-rank検定)であった。C、D、iPS-ML/IFNβを1週間に2回(9、13、16、20、23及び27日目)注射することを除いては、上記と同様の試験を行った。各マウスの全発光カウントにおける、9日目からの倍率変化(倍率変化の平均±SD)を図14Cに示す。治療群と対照群との差は、統計的に有意(p < 0.05、スチューデントのT検定)であった。治療群(n = 10)及び対照群(n = 9)のKaplan-Meier生存曲線を図14Dに示す。治療群と対照群との差は統計的に有意(p = 0.0001、log-rank検定)であった。
【図15】図15は、肝細胞癌に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。肝細胞癌に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を、同所性の異種移植モデルを用いて検証した。ルシフェラーゼを発現するSK-HEP-1ヒト肝細胞癌細胞(2×106 細胞/100μL/マウス)を、開腹手術下で、SCIDマウスの肝臓の左葉に注射した。9日目に、in vivo発光解析を用いて、腫瘍の発達を解析した。A、明らかな癌病巣をもつマウスを、治療群及び対照群に分けた。治療群のマウスに、iPS-ML/IFNβHIGH(2×107 細胞/注射/マウス)を1週間に3回、3週間(9、12、14、16、19、21、23、26及び28日目に)注射した;対照群のマウスには治療を行わなかった。1週間に1回行ったin vivo 発光解析により腫瘍進行を監視した。生物イメージング解析の結果を図15Aに示す。B、iPS-ML/IFNβHIGHを1週間に2回(9、13、16、20、23及び27日目)注射することを除いては上記と同様に試験を行った。生物イメージング解析の結果を、図15Bに示す。
【図16】図16は、肝細胞癌のマウス異種移植モデルにおける、iPS-ML/IFNβHIGH及びiPS-ML/IFNγの腹腔内注射を組み合わせの治療効果を示す図である。ルシフェラーゼを発現するSK-HEP-1ヒト肝細胞癌細胞(1×106 細胞/100μL/マウス)をSCIDマウスの肝臓の左葉に注射した。10日目に、in vivo発光解析により腫瘍発達を解析した。明らかな癌病巣をもつマウスを、iPS-ML/IFNβHIGH(n = 10)治療群とiPS-ML/IFNβHIGH+ iPS-ML/IFNγ(n = 10)治療群に分けた。対照群(n = 10)では腫瘍が定着した。iPS-ML/IFNβHIGH治療群のマウスに、2×107 iPS-ML/IFNβHIGH細胞を注射し、iPS-ML/IFNβHIGH+iPS-ML/IFNγ治療群のマウスに、iPS-ML/IFNβHIGH(2×107 細胞)及びiPS-ML/IFNγ(5×106 細胞)の混合物を注射した。治療注射を、1週間に2回、4週間行った;対照群のマウスは治療しなかった。A、1週間に1回行ったin vivo発光解析により、腫瘍進行を監視した。B、各マウスの全発光カウントにおける、倍率変化として、腫瘍成長の程度を算出した。治療群及び対照群の、平均倍率変化 ± SDを示す。iPS-ML/IFNβHIGH治療群と対照群との差は、統計的に有意であった(p < 0.01、スチューデントのT検定)。iPS-ML/IFNβHIGH+ iPS-ML/IFNγ治療群と対照群との差は、統計的に有意であった(p < 0.01、スチューデントのT検定)。さらに、iPS-ML/IFNβHIGH+iPS-ML/IFNγ治療群とiPS-ML/IFNβHIGH治療群との差は、統計的に有意であった(p < 0.01、スチューデントのT検定)。C、治療群及び対照群のKaplan-Meier生存曲線。iPS-ML/IFNβHIGH治療群と対照群との差は、統計的に有意であった(p = 0.0015、log-rank検定)。iPS-ML/IFNβHIGH+iPS-ML/IFNγ治療群と対照群との差は、統計的に有意であった(p < 0.0001、log-rank検定)。iPS-ML/IFNβHIGH+iPS-ML/IFNγ治療群とiPS-ML/IFNβHIGH治療群との差は、統計的に有意ではなかった(p = 0.3291、log-rank検定)。
【図17】図17は、腹腔内注射されたiPS-MLの衰退を示す図である。2×107、1×107又は0.5×107個のルシフェラーゼ発現iPS-ML(1群あたりマウス2匹)を、SCIDマウスに腹腔内注射し、その直後並びに5、24及び48時間後に、蛍光イメージング解析を行った。イメージングデータ(A)及び発光カウントの経時変化(平均±SD)を示す。
【図18】図18は、腹腔内注射されたiPS-MLの分布を示す図である。A、ルシフェラーゼを発現する2×107個のiPS-ML細胞を、SCIDマウスに腹腔内注射した。該マウスの腹腔内器官を24時間後に採取し、ホモジナイズして、発光解析を行った。各組織とiPS-ML(2×106 細胞/組織)とを共にホモジナイズすることにより、陽性対照を調製した。B及びC、2×107個のルシフェラーゼ発現iPS-MLを、脾臓及び肝臓にMKN-45腫瘍を担持するSCIDマウスに腹腔内注射した。注射から5時間後に、これらのマウスの腹膜、脾臓、腸間膜及び肝臓を単離し、発光活性を測定した。該器官を単離する前に、体循環のかん流を行った(C)。iPS-ML非注射マウスから単離した組織と、ルシフェラーゼ発現iPS-ML(2×106 細胞/組織)と共にホモジナイズすることにより、アッセイ標準を調製した。各組織サンプルにおける、iPS-MLの数は、実施例に記載のとおり算出した。データは、注射したiPS-MLの全細胞数に対する、各器官におけるiPS-MLのパーセンテージとして、表した。
【図19】図19は、癌病巣に対するiPS-MLの移動を示す図である。GFPを発現するMKN-45細胞(2×106 細胞/マウス)を、SCIDマウスの脾臓に接種させた。14日後、蛍光色素PKH26で標識したiPS-ML/IFNβHIGH(2×107細胞/マウス)を、該マウスに腹腔内注射し、24、48又は72時間後に安楽死させた。開腹手術後、マウスの蛍光イメージング解析を行って、MKN-45-GFP腫瘍及びPKH-iPS-MLHIGHの位置(B-D)を決定した。全ての画像は、肝門領域を明らかにするため肝臓を裏返して示されている(A-D)。iPS-ML/IFNβHIGHの投与48時間後における、肝臓の組織学的解析を示した(E-G)。GFPを発現するMKN45細胞を緑に、PKH26で染色されたiPS-ML/IFNβを赤で示す。
【図20】図20は、iPS-ML/IFNβHIGHの腹腔内注射後の、肝臓におけるIFNβレベルを示す図である。SK-HEP-1の肝臓腫瘍をもつ或いは持たないSCIDマウスに、iPS-ML/IFNβHIGH(2×107細胞/ml/マウス)を腹腔内注射し、24、48又は72時間後に安楽死させた。該マウスの肝臓を単離し、ホモジナイズして、得られた溶解物をELISAにより解析してIFNβを定量した。
【図21】図21は、ヒトIFNAR1エクソン1~3領域に設定したgRNA標的配列(gRNA target 1-3)を示す図である。エクソンの塩基配列を大文字、前後のイントロン配列を小文字で示した。gRNAの標的として選択した塩基配列を下線で示した。
【図22】図22は、IFNAR1遺伝子欠損iPS-MLによるIFNβ大量産生を示す図である。
【図23】図23は、同系腫瘍移植モデルである大腸癌腹膜播種モデルにおけるES-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。23Aは腫瘍増殖率、23Bはマウス生存率の結果を示している。腫瘍増殖率は、移植後2日目、9日目、16日目、22日目および30日目における、in vivo 発光解析により腫瘍進行を監視し、それを数値化したデータである。
【図24】図24は、同系腫瘍移植モデルである悪性黒色種腹膜播種モデルにおけるES-ML/IFNβHIGHの治療効果を示す図である。24Aは腫瘍増殖率、24Bはマウス生存率の結果を示している。腫瘍増殖率は、移植後3日目、10日目、17日目、24日目および31日目における、in vivo 発光解析により腫瘍進行を監視し、それを数値化したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施態様に限定されるものではない。
なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本明細書において「及び/又は」は、いずれか一方、あるいは、両方を包含する意味で使用される。

【0012】
本発明は、IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程及びIFNβ遺伝子を導入する工程を含む、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法(本明細書中、本発明の作製方法とも称する)を提供する。さらに本発明は、IFNβを発現しかつIFNAR遺伝子の発現が抑制されている、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞(本明細書中、本発明の細胞とも称する)を提供する。より詳細には、本発明は、インターフェロンα/β受容体のサブユニット1をコードするIFNAR1遺伝子、及び/又はサブユニット2をコードするIFNAR2遺伝子(本明細書中、IFNAR1遺伝子及びIFNAR2遺伝子を総称してIFNAR遺伝子とも記載する)の発現を抑制する工程及びインターフェロンβ遺伝子を導入する工程を含む、インターフェロンβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法を提供する。さらに本発明は、外来性のIFNβを発現しかつIFNAR遺伝子の発現を抑制されたミエロイド系血液細胞を提供する。本発明の細胞は、腫瘍部位への指向性の移動を行うことが可能であり得る。また本発明の細胞は、腫瘍(癌)部位へIFNβを送達することを可能とし得る。従って、本発明の細胞は、投与部位以外の腫瘍に対しても抗腫瘍(抗癌)効果を発揮することが可能となり得る。本発明の細胞は、腫瘍(癌)細胞の増殖を阻害し、腫瘍(癌)の縮小化を行い、腫瘍(癌)転移を抑制するなどの効果を示し得る。すなわち、本発明の細胞は、腫瘍の悪性化の予防や悪性腫瘍すなわち癌の治療に有用であり、原発性又は転移性の癌の、予防又は治療に有用であり得る。従って、本発明により、癌(悪性腫瘍)に対する免疫細胞治療医薬品を提供することが可能となり、さらに、癌(悪性腫瘍)に対する予防又は治療方法を提供することが可能となり得る。本発明は、本発明の細胞を含む、癌の予防又は治療剤、細胞を用いた腫瘍の治療方法などを提供する。さらに本発明は、本発明の細胞を、哺乳動物に予防又は治療上有効量投与することを含む、哺乳動物における癌の予防又は治療方法(本明細書中、本発明の予防又は治療方法とも称する)を提供する。

【0013】
1.インターフェロンβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法
本発明は、IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程及びIFNβ遺伝子を導入する工程を含む、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法を提供する。

【0014】
(1)ミエロイド系血液細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法
本発明の一態様として、本発明は、
ミエロイド系血液細胞から、インターフェロン(IFN)β生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)及び(C)を含む方法(本明細書中、本発明の作製方法1とも称する):
(B)ミエロイド系血液細胞において、インターフェロンα/β受容体(IFNAR)遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)プロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子を、ミエロイド系血液細胞に導入する工程
を提供する。

【0015】
工程(B)及び工程(C)は、同一の細胞に対して行われ、その順番は特に限定されるものではない。すなわち、出発材料となるミエロイド系血液細胞に対し、工程(B)を行った後、工程(C)を行ってもよく、工程(C)を行った後、工程(B)を行ってもよく、工程(B)及び工程(C)を同時に行ってもよい。
本発明の好ましい一態様においては、工程(B)により、ミエロイド系血液細胞においてIFNAR遺伝子の発現を抑制し、IFNAR遺伝子の発現が抑制されたミエロイド系血液細胞を得た後に、工程(C)によりプロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子を、工程(B)により得た細胞に導入し、IFNβ遺伝子を発現しIFNAR遺伝子の発現が抑制されたミエロイド系血液細胞を得ることにより、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を得ることができる。

【0016】
本発明の作製方法1の好ましい一態様としては、
in vitroにおいて、ミエロイド系血液細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)~(D)を含む方法:
(B)該細胞において、内在性IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)外来性プロモーターと機能的に連結された外来性インターフェロンβ遺伝子を、該細胞に導入する工程、
(D)工程(B)及び(C)により、IFNARの遺伝子の発現が抑制されており、かつ外来性プロモーターと機能的に連結された外来性インターフェロンβ遺伝子を有する、ミエロイド系血液細胞を得る工程
が挙げられる。

【0017】
本発明の作製方法1のさらに好ましい一態様としては、
in vitroにおいて、ミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であり、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞であり、また別の態様として好ましくは多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)及び/又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)存在下で一定期間培養することにより得られるCD11b陽性細胞であって、該細胞は、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現し、より好ましくは外来性のc-MYC、BMI1及びMDM2遺伝子を発現する)からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(B)~(D)を含む方法:
(B)該細胞において、内在性IFNAR遺伝子の発現を抑制する(好ましくは遺伝子破壊により抑制し、より好ましくはIFNAR1遺伝子のエクソン1~3のいずれか、あるいは、IFNAR2遺伝子のエクソン2~4のいずれかへのDouble strand break(DSB)の導入によるフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊によって抑制し、さらに好ましくは、IFNAR1遺伝子のエクソン2及び/又はIFNAR1遺伝子のエクソン3へのDouble strand break(DSB)の導入によるフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊により抑制し、さらにより好ましくは、配列番号1及び/又は配列番号7を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いて抑制する)工程、
(C)外来性プロモーター(好ましくは構成的プロモーター又は条件付発現プロモーターであり、より好ましくは構成的プロモーターであり、さらに好ましくはEF-1αプロモーター)と機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子(好ましくは配列番号2をコードする核酸)を、該細胞に導入する工程、
(D)工程(B)及び(C)により、IFNARの遺伝子の発現が抑制されており、かつ外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子を有する(外来性構成的プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子が発現している、又は外来性条件付発現プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子が条件付で発現し得る)、ミエロイド系血液細胞を得る工程、
が包含されるものであり、
さらに、上記方法は、任意で
(E)上記工程(D)により得られた細胞のミエロイド系血液細胞のIFNβ産生量を測定し、IFNβ産生量の高い(好ましくは50 ng/106細胞/24時間以上、より好ましくは100 ng/106細胞/24時間以上、さらに好ましくは200 ng/106細胞/24時間以上)ミエロイド系血液細胞を選択する工程
を含み、また
ミエロイド系血液細胞が外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していない場合には、上記遺伝子を導入する工程を含んでも良い。
本発明の作製方法は、in vitroにおいて行われる。

【0018】
本発明において「ミエロイド系血液細胞」とは、CD11b(インテグリンαMとしても知られる)分子及び/又はCD33(sialic acid binding Ig-like lectin 3、SIGLEC3、SIGLEC-3、gp67又はp67としても知られる)分子が細胞表面に存在する細胞として定義される。本発明に用いるミエロイド系血液細胞は、好ましくはCD11bを発現する(CD11b陽性)細胞であり、より好ましくはCD45(Protein tyrosine phosphatase, receptor type, C、PTPRCとしても知られる)及びCD11b陽性細胞であり、さらに好ましくはCD11b及びCD45陽性である浮遊細胞である。

【0019】
本明細書中、「浮遊細胞」とは、培養器などの支持体に付着しておらず、適当な液体培地中を自由に移動可能な細胞を意味する。

【0020】
本発明に用いるミエロイド系血液細胞の由来は特に限定されるものではないが、例えば、多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞、生体(例えば、ヒト血液)から採取されたミエロイド系血液細胞(例えば、末梢血単球)などが例として挙げられる。本発明において用いられるミエロイド系血液細胞は、好ましくは、多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞であり、より好ましくは多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM-CSF存在下で(さらにより好ましくはM-CSF及びGM-CSF存在下で)一定期間培養することにより得られるCD11b陽性細胞(より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性である浮遊細胞)である。

【0021】
本明細書中、「多能性幹細胞(PSC)」とは、未分化状態を保持しながら増殖することを可能とする「自己複製」、及び胚の3つ全ての一次胚葉に分化することを可能とする「多能性」を保有する、いかなる未分化細胞でもあってもよい。本発明において用いる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)が好ましく、iPS細胞がより好ましい。

【0022】
ES細胞は、ヒト、マウス等の哺乳動物の初期胚(例えば、胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、例えば、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取り出し、線維芽細胞フィーダー細胞上で、内部細胞塊を培養することにより樹立することができる。マウス、ヒト、サルES細胞の樹立及び維持方法は公知であり、例えば、M.J. Evans及びM.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156、USP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585; Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485等に記載されている。

【0023】
誘導多能性幹(iPS)細胞は、体細胞に由来する人工的な幹細胞であって、特異的な再プログラム化因子をDNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することにより製造することができ、ES細胞とほぼ同等の特性(例、分化多能性及び自己複製に基づく増殖能)を示す(K. Takahashi及びS. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M. et al., Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008); WO2007/069666)。再プログラム化因子は、ES細胞で特異的に発現される遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、ES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物若しくはその非コードRNA、又は低分子量化合物で構成されてもよい。再プログラム化因子に含まれる遺伝子の例としては、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3、Glis1等が挙げられる。これらの再プログラム化因子は、単独で、あるいは組合わせて使用してもよい。再プログラム化因子の組合わせの例としては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720及びMaekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9に記載されている組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。

【0024】
ES細胞又はiPS細胞の作製方法、培養方法、未分化状態の維持方法などは自体公知であり、例えば上記に例示した文献に記載の方法に準じて、作製及び培養することができる。
多能性幹細胞は自体公知の方法により、培養することができる。

【0025】
本発明において、「多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞」とは、多能性幹細胞を生体外(in vitro)で培養し分化誘導することにより作製された細胞であって、細胞表面上にミエロイド系血液細胞のマーカー分子であるCD11b或いはCD33分子を発現する細胞を言う。

【0026】
ヒト多能性幹細胞をミエロイド系血液細胞へ分化誘導する方法は、例えば、Su, Z, et al., (2008) Clin Cancer Res 14:6207-6217、Tseng, SY et al., (2009) Regen Med 4:513-526、Senju S et al.,(2007) Stem cells 25:2720-2729、Choi, KD et al., (2009) J Clin Invest 119:2818-2829、特許文献1、国際公開2008/056734号などに記載されている。
以下において、ミエロイド系血液細胞入手方法の例について具体的に説明するが、所望の効果を有する限り、ミエロイド系血液細胞入手方法は限定されるものではない。

【0027】
(多能性幹細胞からミエロイド系血液細胞を作製する方法)
本発明において、多能性幹細胞からミエロイド系血液細胞を作製する方法の例としては、下記の工程(A1)又は(A1')を行い、その後工程(A2)を行うことを含む方法が挙げられる:
(A1)多能性幹細胞と、血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞とを共培養し、該多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1を得る工程、
(A1')多能性幹細胞を未分化性非維持条件下で培養し、該多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1'を得る工程、
(A2)前記工程(A1)で得られた細胞集団A1又は前記工程(A1')で得られた細胞集団A1'を、M-CSF及び/又はGM-CSF存在下で培養して、該細胞集団A1又は該細胞集団A1'の培養の結果物として、細胞集団A2を得る工程。

【0028】
本明細書中、上記細胞集団A1及び細胞集団A1'を総称して、中胚葉系細胞と称する。

【0029】
- 工程A1
血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞をフィーダー細胞として、多能性幹細胞と、該フィーダー細胞とを共培養することにより、多能性幹細胞を、中胚葉系細胞を含む細胞集団に分化させることができる。

【0030】
「血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞」としては、例えば、OP9細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1124)、ST2細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB0224)、PA6細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1127)等が挙げられ、なかでも、血球細胞への分化誘導効率を向上させる観点から、OP9細胞(理研バイオリソースセンター寄託番号:RCB1124)を用いることが好ましい。
該フィーダー細胞の培養に適した培地及びその培養条件については、国際公開2008/056734号などに記載されており、それらに記載の方法に準じて培養を行うことができる。
フィーダー細胞は、適切な培地の入った培養器において、該フィーダー細胞に応じた培養条件下に培養し、該培養器の底面をほぼ覆う程度まで増殖させ、マイトマイシンC溶液による処理又は放射線照射により細胞増殖を失わせた後に、再度、別途用意した細胞培養器に移植してフィーダー細胞層を形成させて用いることができる。このようにして作製したフィーダー細胞上に、上記多能性幹細胞を播種し、共培養を行うことができる。

【0031】
フィーダー細胞と多能性幹細胞との共培養に用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、αMEM(イーグル最小必須培地 α改変型)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、IMDM(イスコブ改変ダルベッコ培地)など、及びこれらの混合物が挙げられる。培地には、血清が含有されていてもよく、あるいは無血清でもよく、必要に応じて、培地は、血清代替物を含んでもよく、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の培地添加物も含有し得る。所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、マイトマイシンC処理又は放射線照射により増殖能力を失わせたOP9細胞をフィーダー細胞として用いる場合、多能性幹細胞との共培養に用いる好ましい培養液の例としては、20%の血清(FCS)を含有したαMEM培地が挙げられる。

【0032】
本発明において用いる培養器としては、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルを包含し得るが、特に限定されない。

【0033】
培養器は細胞接着性であり得る。細胞接着性の培養器は、器表面の細胞接着性を改善させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)などの任意の細胞接着用基質でコートされたものであり得る。細胞接着用基質は、多能性幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の材料であり得る。細胞接着用基質としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ポリ-L-オルチニン、ラミニン及びフィブロネクチン、並びに例えばマトリゲル等のそれらの混合物、並びに溶解細胞膜調製物(lysed cell membrane preparation)が挙げられる(Klimanskaya I et al 2005. Lancet 365:p1636-1641)。
所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、マイトマイシンC処理又は放射線照射により増殖能力を失わせたOP9細胞をフィーダー細胞として用いる場合、0.1重量%ゼラチン溶液等でコーティングされた培養器を用いることができる。

【0034】
上記共培養の気相条件は、用いられる多能性幹細胞の種類、培養液の組成等に応じて、適宜設定されうるが、通常、1~10%CO2/99~90%大気の雰囲気下、インキュベーター中で約30~40℃、好ましくは約37℃で、培養することができる。培養期間は、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、通常10日以上、好ましくは約15日以上、培養する。
上記共培養により得られる細胞集団は、中胚葉系細胞の性質を示すものであり、球状に近い形態を示す細胞の塊を含有する細胞集団として得られうる。

【0035】
多能性幹細胞とフィーダー細胞との共培養物から、特に、多能性幹細胞に由来し、中胚葉系細胞に分化した細胞を多く含む浮遊細胞集団を分離して、後の工程に用いることが好ましい。分化した中胚葉系細胞を多く含む浮遊細胞集団を分離する方法としては、共培養後に回収した細胞を培養器中に静置して付着性の強い細胞を除去することにより、付着性の弱い細胞である中胚葉系細胞を回収する方法を挙げることができる。例えば、上記共培養物をトリプシン、コラゲナーゼ等の酵素で処理し、全細胞を回収し、DMEM等の適切な培地適当量で希釈した後、該細胞溶液を新たに用意したゼラチンなどによりコートのされていないノンコートの培養器に播種する。播種から2~5時間経過した後、培養器に付着しなかった細胞を、中胚葉系細胞を多く含む浮遊細胞集団として回収することができる。また、回収した細胞浮遊液に含まれる100μm以上の大きさの細胞塊は、ナイロン製のメッシュ(例えば、BD.Falcon社、セルストレイナー、100μmナイロン)等を用いて除去することが好ましい。

【0036】
工程A1’
中胚葉系細胞集団は、未分化性非維持条件下でヒト多能性幹細胞を培養することによっても得ることができる。

【0037】
本明細書中、多能性幹細胞の「未分化性非維持条件」とは、多能性幹細胞に胚様体を形成させることにより、或いは何か他の方法によって、分化経路に向けて分化を開始させるような条件をいう。

【0038】
分化経路に向けて分化が開始される限り特に限定されるものではないが、「未分化性非維持条件」の具体的な例としては、多能性幹細胞に胚様体又は凝集体を形成させるような条件が挙げられる。用語「胚様体」は「凝集体」と同義の専門用語であり、多能性幹細胞が単層培養において過剰増殖した場合又は懸濁培養液中で維持される場合に現れる、様々なサイズの分化細胞および未分化細胞の凝集塊を意味する。胚様体は、形態学的基準および免疫細胞化学的手法により検出可能な細胞マーカーによって識別可能ないくつかの胚葉に典型的に由来する、様々な細胞種の混合物である。中胚葉系細胞集団が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、胚様体は、多能性幹細胞を過剰増殖させることによるか、或いは低付着性の特性をもつ基質を有する培養器中の懸濁液において多能性幹細胞を培養することによって、作製することができる。また、「未分化性非維持条件」は、未分化維持因子の非存在下で多能性幹細胞を培養することによっても達成され得る。本工程において、「未分化維持因子」とは、多能性幹細胞が多能性を維持したまま増殖するために必須の因子を意味する。例えば、未分化維持因子は、多能性幹細胞培養用として通常用いられるフィーダー細胞であり、あるいは、マウスにおいては白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor(LIF))、ヒトにおいては塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor(bFGF))である。「未分化維持因子の非存在下」とは、多能性幹細胞が多能性を維持したまま増殖するために十分な量の未分化維持因子が存在しない条件下を意味し、該条件下においては、多能性幹細胞は分化を開始する。
工程(A1')で得られる細胞集団A1'は、胚様体を形成していてもよい。

【0039】
フィーダー細胞を用いない場合においても、多能性幹細胞の培養に用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、所望の中胚葉系細胞が得られる限り限定されるものではないが、αMEM、DMEM、IMDMなど、及びこれらの混合物が挙げられる。所望の中胚葉系細胞が得られる限りにおいて限定されるものではないが、フィーダー細胞及び血清を用いずに培養を行う場合の培地としては、Knockout Serum Replacement(KSR)(ライフテクノロジー社製)、Peprogrow III (ぺプロテック社製)などの血清代替物に加え、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の培地添加物も含む培地が挙げられる。市販の無血清培養液(AIM-V、OpTmizer: ライフテクノロジー社 Stemline: シグマ社)を用いることもできる。また、培地には、多能性幹細胞の分化を促進する目的で、ヒトBMP-4 (Bone Morphogenic Protein 4)を添加してもよい。好ましい培地としては、OpTimizerTM T-Cell Expansion SFM (Life Technologies社)とStemline II Hematopoietic Stem Cell Expansion Medium(SIGMA社)とを1:1で混合し、Peprogrow III(Peprotech社)及び5 ng/mL BMP-4を加えた培地である。

【0040】
フィーダー細胞を用いずに分化誘導を行う場合、細胞の培養器への付着を助けるために、フィブロネクチンなどによるコーティングを施した培養器を用いてもよい。培養器のコーティングに用いるフィブロネクチンは、ヒト血漿から精製したもの、あるいは、遺伝子組換えタンパク質として作製されたヒトフィブロネクチン断片等を用いることが可能である。

【0041】
上記ヒトのフィブロネクチンをコートした培養器中で、多能性幹細胞を動物由来の血清を含有しない培養液(好ましくはBMP-4を含有する培地)を用いて、15日以上、好ましくは20日以上、より好ましくは25日以上培養する。

【0042】
分化誘導培養を行うと様々な細胞系譜の分化細胞が出現するが、この中から中胚葉系細胞に分化した細胞を分離して、分離した細胞を、中胚葉系細胞を含む細胞集団として後の工程に用いることが好ましい。分化した中胚葉系細胞を分離する方法としては、フィーダー細胞を用いた分化誘導法の場合と同様に、培養後に回収した細胞を培養器中に静置して付着細胞を除去することにより、浮遊細胞である中胚葉系細胞を多く含む細胞集団を回収する方法を挙げることができる。

【0043】
-工程A2
続いて、上記の通り得られた中胚葉系細胞を含む細胞集団を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び/又はマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下(好ましくはM-CSF存在下、より好ましくはGM-CSF及びM-CSF存在下)で、通常、1日~20日、好ましくは2日~15日、培養することにより、該中胚葉系細胞をミエロイド系血液細胞に分化させることができる。

【0044】
該培地中のGM-CSFタンパク質の含有量は、中胚葉系細胞のミエロイド系血液細胞への分化を促進させる観点から、50~200 ng/mL、好ましくは70~150 ng/mLの範囲とすることができる。
培地中のGM-CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性GM-CSF遺伝子を導入された中胚葉系細胞)から分泌されたものであってもよく、単離したGM-CSFタンパク質を培地に添加したものであってもよい。
また、培地中のM-CSFタンパク質の含有量は、中胚葉系細胞のミエロイド系血液細胞への分化を促進させる観点から、10~100 ng/mL、好ましくは30~70 ng/mLの範囲とすることができる。
培地中のM-CSFタンパク質は、培地と接触する細胞(例えば、外来性M-CSF遺伝子を導入された中胚葉系細胞)から分泌されたものであってもよく、単離したM-CSFタンパク質を培地に添加したものであってもよい。

【0045】
中胚葉系細胞のミエロイド系血液細胞への分化に要する培養期間としては、培養条件等により異なるが、通常、1日~20日であり、好ましくは2日~15日程度である。

【0046】
その他の培養条件等は、中胚葉系細胞を含む細胞集団をミエロイド系血液細胞に分化させることができる限り特に限定されるものではなく、例えば、上述のフィーダー細胞の培養及び共培養と同様の培地、培養条件等を採用することができる。

【0047】
上記の工程により得られる、GM-CSF及び/又はM-CSFの存在下で増殖可能な浮遊細胞は、通常、CD45+ CD11+ミエロイド系血液細胞である。従って、中胚葉系細胞をGM-CSF及び/又はM-CSF存在下で培養することにより得られた細胞集団から、浮遊性細胞を回収することで、ミエロイド系血液細胞を得ることができるため、得られた細胞集団からミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞をさらに選別しなくてもよい。しかしながら、より純度の高いミエロイド系血液細胞を得ることなどを目的として、工程A3:ヒトミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞を選別する工程を行ってもよい。

【0048】
所望の細胞が得られる限り特に限定されるものではないが、特定のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45)に対して陽性である細胞(或いは細胞集団)は、例えば、フローサイトメトリー、すなわちFACS(fluorescence activated cell sorting)を使用することにより分離することができる。例えば、CD11b陽性細胞は、抗CD11b抗体などの特異的な試薬への結合強度に基づき、並びに細胞の大きさ及び光散乱などの他のパラメーターに基づいて、セルソーターにより、CD11b陽性であるヒトミエロイド系血液細胞集団を分離することもできる。
マーカーについて陽性である細胞(或いは細胞集団)の分離は、例えば、該マーカーに対して特異的な抗体とアイソタイプ適合対照抗体とを用いたFACSにより行うことができる。細胞の、マーカーに対し特異的な抗体による染色の強度が、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度を上回る場合に、該細胞は該マーカー陽性であると決定することができる。また、細胞の、マーカーに対して特異的な抗体による染色の強度と、アイソタイプ適合対照抗体による細胞(或いは細胞集団)の染色の強度とに差が存在しない場合に、該細胞は該マーカー陰性であると決定することができる。

【0049】
また、特定のマーカーに対して陽性である細胞は、従来の親和性又は抗体技術を用い、細胞を濃縮、枯渇、分離、選別、及び/又は精製することもできる。例えば、リガンド及び/又は抗体に、標識、例えば、磁気ビーズ;アビジン又はストレプトアビジンに対して高親和性で結合するビオチン;蛍光標示式細胞分取器で使用することのできる蛍光色素;ハプテン;及び同様物などを結合させることで、特定の細胞種の分離を容易にすることもできる。

【0050】
好ましい態様において、多能性幹細胞からミエロイド系血液細胞の作製方法は、下記の工程(A1)又は(A1')を行い、その後工程(A2)を行い、任意で工程(A3)を行うことを含む:
(A1)多能性幹細胞と、血液細胞の分化と増殖とを誘導する性質を有する細胞(好ましくはST2細胞、PA6細胞及びOP9細胞からなる群より選択される細胞であり、より好ましくはOP9細胞)とを(好ましくは10日以上、より好ましくは約15日以上)共培養し、(さらに任意選択で、浮遊細胞の回収を行い)、該多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1を得る工程、
(A1')多能性幹細胞を未分化性非維持条件下で(好ましくはBMP-4タンパク質の存在下)(好ましくは15日以上、より好ましくは約20日以上)培養し、(さらに任意選択で、浮遊細胞の回収を行い)、該多能性幹細胞の培養の結果物として、細胞集団A1'を得る工程、
(A2)前記工程(A1)で得られた細胞集団A1又は前記工程(A1')で得られた細胞集団A1'を、M-CSF(通常10~100 ng/mL、好ましくは30~70 ng/mL)存在下(さらに好ましくは、M-CSF:通常10~100 ng/mL、好ましくは30~70 ng/mL、及びGM-CSF:通常50~200 ng/mL、好ましくは70~150 ng/mL存在下)で(好ましくは1日以上、より好ましくは1日~20日、さらに好ましくは2日~15日)培養して、該細胞集団A1又は該細胞集団A1'の培養の結果物として、細胞集団A2を得る工程、
(A3)ミエロイド系血液細胞のマーカー(例、CD11b、CD33又はCD45、好ましくはCD11b、より好ましくはCD11b及びCD45)に対して陽性である細胞を選別する工程。

【0051】
(ヒト末梢血からヒトミエロイド系血液細胞を単離する方法)
本発明においては、生体内(例えば、ヒトの体内)に存在するミエロイド系血液細胞を用いることも可能である。生体内に存在するミエロイド系血液細胞として、例えば、末梢血中の単球(モノサイト)を用いることも可能であり、ミエロイド系血液細胞としてヒトの末梢血単球を用いることが好ましい。以下に、生体内に存在するミエロイド系血液細胞を得る方法の一例としてヒトの末梢血中からの単球の分離方法を説明するが、本発明において用いられるミエロイド系血液細胞を得る方法は、この方法に限定されるものではない。

【0052】
ミエロイド系血液細胞は、ヒトの末梢血を採血し、単球を分離することにより得ることができる。ヒト末梢血からの単球の分離は、遠心分離、磁気ビーズ法、FACSなどの公知の方法を用いて行うことができる。
遠心分離により単球を末梢血から分離する方法の例としては、抗凝固剤として、ヘパリンあるいはクエン酸などを用い、採血した血液を等量の生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、あるいは、ハンクス緩衝溶液などを用いて希釈し、次に、希釈した血液を、あらかじめ遠心チューブ(BD-Falcon 352070等)中に分注しておいたフィコール液(GE ヘルスケア社)の上に重層する。そして、遠心分離装置を用いて、遠心力500gで20分間遠心した後、界面付近に存在する単核細胞分画(リンパ球と単球を含む)を回収することにより、単球を得ることができる。

【0053】
単球は、単核細胞中からCD14分子の発現を指標として、磁気ビーズ法などにより分離することができる。例えば、CD14マイクロビーズ(ミルテニー社 130-050-201)等を用いることにより分離することが可能である。あるいは、単核細胞分画を、細胞培養用の表面処理がなされた細胞培養器を用いて6-16時間ほど培養し、容器に付着した細胞を除去することにより、単球あるいはそれに由来するマクロファージを得ることも可能である。通常、健康な成人の末梢血10mLから、200,000~500,000個の単球を回収することができる。

【0054】
ミエロイド系血液細胞は、M-CSFを含む細胞培養液を用いて培養することができる。培養液中のM-CSFの含有量は、ミエロイド系血液細胞が増殖させ得る限り限定されるものではないが、好ましくは10~100 ng/mL、より好ましくは30~70 ng/mLの範囲とすることができる。あるいは、レンチウイルスベクター等を用いてM-CSF遺伝子をミエロイド系血液細胞自身に導入することによりミエロイド系血液細胞自身にM-CSFを産生させることも可能である。この場合は、M-CSFを添加していない細胞培養液を用いて培養し、増殖させることが可能である。

【0055】
本発明に用いるミエロイド系血液細胞は、増殖能力を増強するという観点から、下記(a)及び(b)の外来性遺伝子の1以上を発現していてもよく、していなくてもよい:
(a)c-MYC遺伝子、
(b)B cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)遺伝子、Enhancer of zeste homolog 2 (EZH2)遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子、及びHypoxia Inducible Factor 1 Alpha Subunit(HIF1A)遺伝子からなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子。
操作の効率性が上がる場合があるなどの観点から、本発明においては、上記(a)及び(b)の外来性遺伝子を発現するミエロイド系血液細胞を用いることが好ましく、外来性のc-MYC、BMI1及びMDM2遺伝子を発現するミエロイド系血液細胞を用いることがより好ましい。
また、本発明の作製方法における出発材料としてのミエロイド系血液細胞がc-MYC、BMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していない場合には、本発明の方法は、上記遺伝子を導入する工程を含み得る。

【0056】
cMYC遺伝子の具体例としては、ヒトcMYC遺伝子(NM_002467)を挙げることができる(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)。BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子、HIF1A遺伝子の具体例としては、それぞれ、ヒトBMI1遺伝子(NM_005180)、ヒトEZH2遺伝子(NM_004456)、ヒトMDM2遺伝子(NM_002392)、ヒトMDM4遺伝子(NM_002393)、ヒトHIF1A遺伝子(NM_001530)を挙げることができる。

【0057】
cMYC遺伝子、BMI1遺伝子、EZH2遺伝子、MDM2遺伝子、MDM4遺伝子、及びHIF1A遺伝子は、ヒトを含む哺乳類動物において共通して存在する遺伝子であり、本発明において任意の哺乳類動物由来(例えばヒト、マウス、ラット、サルなどの哺乳類動物由来)の遺伝子を用いることができる。また、野生型の遺伝子に対して、数個(例えば1~30個、好ましくは1~20、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1から3個)の塩基が置換、挿入、付加及び/又は欠失した変異遺伝子であって、野生型の遺伝子と同様の機能を有する遺伝子を使用することもできる。また、野生型の遺伝子と同等あるいはそれ以上の機能を有する限りにおいて、該遺伝子の産物が他のタンパク質あるいはペプチドとの融合タンパク質として発現されるように人為的に修飾を加えた遺伝子でも良い。

【0058】
cMYC、BMI1、EZH2、MDM2、MDM4、あるいはHIF1A遺伝子を上記ミエロイド系血液細胞に導入する方法は、導入されたこれら遺伝子が発現してミエロイド系血液細胞に長期増殖能を付与できる限り、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、導入遺伝子を含む発現ベクターを用いて該遺伝子をミエロイド系血液細胞に導入することができる。また、一つの発現ベクターに複数の遺伝子を組み込んで、該発現ベクターをミエロイド系血液細胞に導入してもよいし、各遺伝子を別々に組み込んだ発現ベクターを用意して、それらをミエロイド系血液細胞に導入してもよい。

【0059】
本発明の作製方法は、(B)IFNAR遺伝子の発現を抑制させる工程を含む。
本発明において、「IFNAR遺伝子の発現抑制」とは、通常、内在性のIFNAR遺伝子の発現を阻害することを意味する。

【0060】
本明細書中、インターフェロンα/β受容体の構成タンパク質をコードする遺伝子である、インターフェロンα/β受容体1遺伝子(IFNAR1遺伝子)及びインターフェロンα/β受容体2(IFNAR2遺伝子)を総称して、IFNAR遺伝子とも称する。
IFNAR1遺伝子は、IFNARのサブユニット1をコードする遺伝子である。
IFNAR2遺伝子は、IFNARのサブユニット2をコードする遺伝子である。

【0061】
IFNAR遺伝子の発現抑制は、例えば、IFNAR遺伝子からの転写産物の生成量の減少、IFNARタンパク質の生成量の減少等によって確認できる。IFNAR遺伝子からの転写産物の生成量、又はIFNARタンパク質の生成量の測定は、定量的PCR、マイクロアレイなどを用いた核酸量の測定方法、ELISA、ウエスタンブロッティングなどの免疫学的手法などを用いたタンパク質量の測定方法などの、公知の方法を用いて行うことができる。
IFNAR遺伝子の発現が抑制された細胞とは、該細胞における内在性のIFNAR遺伝子の発現が、IFNAR遺伝子の発現抑制させていないことを除いては該細胞と同様に作製した細胞(例えば、工程(B)に付す前のミエロイド系血液細胞)における、内在性のIFNAR遺伝子の発現と比較して有意に低い、または発現が無い細胞をいう。

【0062】
遺伝子発現抑制の方法としては、IFNAR遺伝子の発現が抑制される限り特に限定されず、例えば、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat / CRISPR associated proteins)(CRISPR/CAS9)(Cong L et al., Science. 2013 Feb 15;339(6121):819-23、Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380-9、Guilinger JP, Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):577-82)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(Carroll D., Gene Ther. 2008 Nov;15(22):1463-8.)又は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ(Nucleic Acids Res. 2011 Jul;39(12):e82)などを用いるゲノム編集(ゲノムターゲティング)による遺伝子破壊、siRNA、RNAiなどを用いた、ダウンレギュレーションまたはサイレンシングなどが挙げられる。

【0063】
IFNAR遺伝子の発現が抑制された細胞のIFNβ産生量を増加させるなどの所望の効果を有する限り特に限定されるものではないが、IFNAR遺伝子の発現抑制は、IFNAR1を標的とした発現抑制であってもよく、IFNAR2を標的とした発現抑制であってもよく、或いは、IFNAR1及びIFNAR2の両方の発現抑制であり得る。IFNAR遺伝子の発現抑制の標的配列としては、用いる遺伝子抑制の方法によっても異なり、また所望の効果をもたらす限り特に限定されるものではないが、例えば、後述するDouble Strand BreakによるヒトIFNAR2の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、ヒトIFNAR2のエクソン2~4、より好ましくはエクソン3、さらに好ましくはヒトIFNAR2のエクソン3の1番目と19番目の塩基の間を標的とすることにより、遺伝子破壊を行うことができる。ヒトIFNAR1の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、ヒトIFNAR1のエクソン1~3、より好ましくはエクソン2、さらに好ましくはヒトIFNAR1のエクソン2の73番目と92番目の塩基の間を標的とすることにより、遺伝子破壊を行うことができる。
ヒトIFNAR1は、21q22.11に位置している。IFNAR1遺伝子の具体例としては、ヒトIFNAR1遺伝子(NM_000629)などを挙げることができる(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)。ヒトIFNAR2も、21q22.11に位置している。IFNAR2遺伝子の具体例としては、ヒトIFNAR2遺伝子(NM_207585)などを挙げることができる(括弧内は、NCBI accession番号を示す。)。

【0064】
本発明の作製方法の工程(B)における遺伝子発現抑制の方法としては、例えば、CRISPR/CAS9、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ又は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼにより、標的DNAの二本鎖の損傷(Double Strand Break:DSB)を起こすことにより行うことができる。

【0065】
細胞内で、DNAの二本鎖の損傷(Double strand Break)が起こると、その修復のため、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)が起こる。また、DNAの二本鎖の損傷時に、鋳型配列を導入することにより、標的部位へ鋳型配列が挿入することが可能となり、その結果、遺伝子への特定配列のノックイン、また、ノックアウトを行うこともできる。
本発明の作製方法においては、DSBを導入し、DSBを導入した細胞の中から、NHEJの修復エラーにより、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入が起こった細胞を選別することにより、遺伝子発現が抑制された細胞を得てもよい。或いは、DSBを導入する際に、標的配列のフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入を誘導するための鋳型配列を細胞に導入してHDRを誘導し、DSBを導入した細胞の中から、成功裏に遺伝子発現が抑制された細胞を選別することにより、遺伝子発現が抑制された細胞を得てもよい。
HDRを誘導する場合、NHEJの抑制剤としてSCR7(Chu VT et al., Nat Biotechnol. 2015 May;33(5):543-8)、或いはHDRの促進剤としてL755,507(Yu C et al., Cell Stem Cell. 2015 Feb 5;16(2):142-7)を用いてもよく、またNHEJのエラーを利用して遺伝子発現を行う場合、NHEJの促進剤としてAzidothymidine(Yu C et al., Cell Stem Cell. 2015 Feb 5;16(2):142-7)を用いてもよい。

【0066】
DSBを誘導した細胞において、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入が成功裏に行われたか否かは、自体公知の方法により検出することができる。例えば、DSBを誘導した細胞から公知の方法によりゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAを鋳型として、標的配列の近傍に設計したプライマーを用いて、PCRを行い、増幅させたDNAのシーケンスを行うことにより、確認することができる。

【0067】
CRISPR/Cas9系を用いるゲノム編集は、ガイドRNA(gRNA)とCas9という2つの分子を用いて、標的DNAの二本鎖の損傷(Double Strand Break)を起こすことにより行うことができる。ガイドRNAは標的部位と相補的な配列を含み、このため、標的配列を含む核酸と特異的に結合できる。
ガイドRNAの配列は、標的遺伝子及び標的配列に応じて適宜設定することができる。また、ライフサイエンス統合データベースセンター (DBCLS) のCRISPRdirectなどの公知のガイドRNAの設計ツールを用いて設計することもでき、また、市販のガイドRNAを利用することができる。
所望の効果がもたらされる限り、特に限定されるものではないが、ヒトIFNAR2の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、配列番号1を標的とするガイドRNAを用いることができる。
或いは、所望の効果がもたらされる限り、特に限定されるものではないが、ヒトIFNAR1の遺伝子破壊を行うことにより遺伝子発現を抑制する場合は、配列番号7を標的とするガイドRNAを用いることができる。

【0068】
CRISPR/Cas9系を用いてゲノム編集を行う場合、off-target作用を低減させるという観点から、Cas9の2つのヌクレアーゼドメインのうち1か所に変異を入れたCas9ニッカーゼ(D10A変異型Cas9)或いはCas9の2つのヌクレアーゼドメインの両方に変異を入れたdCas(dead Cas9)などの変異型Cas9を用いることもできる(Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380-9、Guilinger JP, Nat Biotechnol. 2014 Jun;32(6):577-82)。D10A変異型Cas9を用いる場合、近接する2箇所にgRNAを設計し、それぞれのDNA鎖をCas9ニッカーゼによりDNAニックを入れることにより、その領域においてDouble Strand Breakが導入される形となる。D10A変異型Cas9を用いた場合、gRNAが類似配列に結合した場合、DNAニックが入るが、欠失や挿入変異は導入されない。dCas9を用いる場合、dCas9のC末端側にTALEヌクレアーゼで利用されている制限酵素FokIのヌクレアーゼドメインを連結させ(FokI-dCas9)、近接する2箇所に結合するgRNAとFokI-dCas9により、標的配列にDSBを導入できる。

【0069】
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、DNA結合ドメイン(亜鉛フィンガー)及びDNA切断ドメイン(FokIヌクレアーゼ)の二つの機能ドメインで構成される人工キメラタンパク質である。二種類のZFNの二量体を形成させることにより、配列特異的にDNAを切断(Double Strand Break)することが出来る。

【0070】
TALEヌクレアーゼ(TALEN)は、DNA切断ドメイン(FokI)と、DNA結合ドメイン(植物病原細菌キサントモナス属 (Xanthomonas)から分泌されるTALENタンパク質のDNA結合ドメイン)を融合させた人口キメラタンパク質である。二種類のTALENタンパク質が標的DNAの反対鎖にそれぞれ結合し、両者が適切な距離を維持して二量体を形成させることにより、配列特異的にDNAを切断(Double Strand Break)することが出来る。TALENのDNA結合ドメインは、公知の方法を用いてデザインすることができる。また、Platinum TALENを用いることで設計が容易になる。

【0071】
本発明の作製方法の工程(B)における、遺伝子破壊の方法としては、設計の容易さなどの観点からCRISPR/CAS9系又はTALENを用いる方法が好ましく、中でもCRISPR/CAS9系を用いることがより好ましく、IFNAR2を標的とする場合は配列番号1を標的とするガイドRNA、及び/又はIFNAR1を標的とする場合は配列番号7を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いる方法がさらに好ましい。

【0072】
本明細書中、「遺伝子」とは、タンパク質を発現するポリヌクレオチド配列を指し、コード領域のみを指してもよく、またはコード領域上流および/または下流の制御配列を含んでもよい(例えばコード領域の転写開始部位上流の5’非翻訳領域)。
本明細書中、「内在性」又は「天然」の遺伝子とは、それ自身の制御配列と共に天然に見られる遺伝子を指し、この遺伝子は、生物のゲノム内のその自然な位置に位置する。特定のタンパク質をコードする内在性ポリヌクレオチドは、内在性遺伝子の一例である。
本明細書中、「外来性」の遺伝子とは、遺伝子移入によって宿主細胞に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然遺伝子、天然宿主細胞中の新たな位置に導入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を包含する。

【0073】
本明細書中、遺伝子の「内在性」プロモーターとは、ゲノム中における該遺伝子と自然な状態で連結されているプロモーターを意味し、遺伝子の「外来性」のプロモーターとは、遺伝操作(すなわち分子生物学的技法)によって、該遺伝子の近位に、該遺伝子の転写が、機能的に連結されているプロモーターによって指示されるように配置されているものを意味する。
本明細書中、遺伝子をプロモーターと機能的に連結させるとは、当該プロモーターの制御を受けるように、当該プロモーターの下流に当該遺伝子配列を連結することを意味する。

【0074】
本発明において用いる好ましいプロモーターは、構成的プロモーター又は条件付発現プロモーターであり、より好ましくは構成的プロモーターである。
本明細書中、条件付発現プロモーターとは誘導可能又は抑制解除可能なプロモーターを意味し、リプレッサー又はインデューサーのいずれか一方と結合することのできる、プロモーターと共に働くDNA配列を有するプロモーターを指す。プロモーターが誘導又は抑制解除されると「オンの状態」になり、プロモーターが誘導又は抑制解除されていない状態では、プロモーターは「オフの状態」となる。

【0075】
構成的プロモーターの例としては、ポリペプチド鎖伸長因子遺伝子プロモーター(EF-1α)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウィルス(SV40)プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター、βアクチン(CAG)プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明において用いられる構成的プロモーターは、EF-1αプロモーターである。
条件付プロモーターの例としては、テトラサイクリン反応性プロモーター、ステロイド反応性プロモーター、メタロチオネインプロモーターなどが挙げられる。

【0076】
本発明において、遺伝子の導入は自体公知の方法を用いて、行うことができ、所望の効果がもたらされる限り、その方法は特に制限されない。
DNAの形で遺伝子を導入する場合、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体等のベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション等を用いる方法により細胞に導入してもよい。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター(Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター(日本の血球凝集性ウイルスベクター)(WO 2010/008054)等が挙げられる。人工染色体ベクターの例としては、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)等が挙げられる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用のプラスミドを使用することができる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターは、遺伝子が発現できるように、プロモーターの制御配列、エンハンサー、リボソーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイト等を含有することができ、さらに必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等)の選択マーカー配列、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素遺伝子等、緑色蛍光タンパク質(GFP)、bグルクロニダーゼ(GUS)、FLAG等のレポーター遺伝子配列等を含むことができる。また、前記ベクターは、細胞への導入後、その一部を切除するためにLoxP配列を有してもよい。さらに、トランスポゾンを用いて染色体に導入遺伝子を組み込んだ後に、細胞にトランスポゼースを作用させ、導入遺伝子を完全に染色体から除去する方法などが、必要に応じて、用いられ得る。トランスポゾンを用いる場合、除去後に染色体上にトランスポゾン配列を残さないという観点から、例えば、鱗翅目昆虫由来のトランスポゾンであるpiggyBac等を用いることもできる(Kaji, K. et al., (2009), Nature, 458: 771-775、Woltjen et al., (2009), Nature, 458: 766-770、WO 2010/012077)。また、ベクターは、染色体への組み込みがなくとも複製されて、エピソーマルに存在するように、哺乳動物細胞で機能的な複製開始点と、該複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質をコードする遺伝子を有していてもよい。哺乳動物細胞で機能的な複製開始点と、該複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質の例としては、EBVにあっては複製開始点oriPとEBNA-1遺伝子、SV40にあっては複製開始点oriとSV40 large T antigen遺伝子などが挙げられる(WO 2009/115295、WO 2009/157201およびWO2009/149233)。また、複数の所望の遺伝子を同時に導入するために、ポリシストロニックに発現させる発現ベクターを用いてもよい。ポリシストロニックに発現させるためには、遺伝子をコードする配列の間は、Internal Ribosome Entry Site(IRES)または口蹄病ウイルス(FMDV)2Aコード領域により結合されていてもよい(Science, 322:949-953, 2008およびWO 2009/0920422009/152529)。

【0077】
ベクターの種類は特に限定されず、ウイルスベクターでもプラスミドベクターでもよいが、例えばIFNβ遺伝子の導入の際に用いるベクターとしては、遺伝子導入の効率化の観点から、好ましくはウイルスベクターであり、特に好ましくは導入した遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれるようなウイルスベクターである。本発明において使用できるウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどを挙げることができる。公知の方法を用いてパッケージングなどを行うことにより、ウイルスウイルスベクターから、所望の遺伝子を細胞に導入するためのウイルスを作製することができ、その一例としては、実施例に記載の方法が挙げられる。

【0078】
RNAの形態の場合、例えば、リポフェクション、マイクロインジェクション等の手段により細胞に導入してもよく、かつ分解を抑制するため5-メチルシチジン及びプソイドウリジンを組入れたRNA(TriLink Biotechnologies)を使用してもよい(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。

【0079】
本明細書中、「インターフェロンβ」遺伝子とは、IFNβタンパク質をコードする遺伝子を指す。
本明細書中、IFNβタンパク質とは、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果を有する限り特に限定されないが、好ましくは、以下の(a)~(c)のいずれかであり、より好ましくは以下の(a)又は(b)であり、さらに好ましくは(a)である。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ腫瘍の増殖抑制などの所望の効果タンパク質
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の、他の哺乳動物におけるオルソログであって、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果を有するタンパク質

【0080】
上記(b)に関し、より具体的には、(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の1~50個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号2に示されるアミノ酸配列に1~50個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号2に示されるアミノ酸配列に1~50個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号2に示されるアミノ酸配列中の1~50個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、又は(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。

【0081】
上記(b)に関し、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ腫瘍の増殖抑制などの所望の効果タンパク質であることがより好ましい。

【0082】
さらに、性質の似たアミノ酸(例えば、グリシンとアラニン、セリンとトレオニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、アスパラギンとグルタミン、ロイシンとイソロイシン、リシンとアルギニン、システインとメチオニン、フェニルアラニンとチロシン等)同士の置換等であれば、より多くの個数の置換等があり得る。上述のようにアミノ酸が欠失、置換又は挿入されている場合、その欠失、置換、挿入の位置は、腫瘍の増殖抑制などの所望の効果が保持される限り、特に限定されない。

【0083】
また、本発明において用いられるIFNβ遺伝子としては、所望の効果を有する限り、IFNβの生物活性断片又はIFNβの変異体などであってもよく、例えば、米国特許第7,238,344号中に記載されたIFNβ変異体;米国特許第6,962,978号中に記載されたIFNβ-1a及びIFNβ-1bなどであり得る。

【0084】
本発明において、IFNβ生産性が高い細胞を、哺乳動物における腫瘍の抑制などのため、該哺乳動物に用いる場合、IFNβタンパク質は、当該動物のIFNβであることが好ましい。

【0085】
一態様において、本発明は
(E)上記工程(D)により得られた細胞のミエロイド系血液細胞のIFNβ産生量を測定し、IFNβ産生量の高いミエロイド系血液細胞を選択する工程
を含む。

【0086】
「IFNβ産生量の測定」は、通常、ウイルスなどの細胞のIFNβタンパク質の産生を刺激する物質と、測定対象となるミエロイド系血液細胞とが、実質的に接触しない条件下で行われる。
実質的に接触しない条件下とは、IFNβタンパク質の産生を刺激する物質がミエロイド系血液細胞と全く接触しない、或いは、IFNβタンパク質の産生を刺激する物質が外来性のIFNβ遺伝子をもたないミエロイド系血液細胞と接触した場合における、該細胞のIFNβタンパク質の産生量が、1 ng/106細胞/24時間以下、より好ましくは100 pg/106細胞/24時間以下、さらに好ましくは1 pg/106細胞/24時間以下であるような状態を意味する。
本発明の工程(E)において、上記のような条件下において、IFNβ産生量が高い細胞、好ましくはIFNβ産生量が50 ng/106細胞/24時間以上、より好ましくは100 ng/106細胞/24時間以上、さらに好ましくは200 ng/106細胞/24時間以上である細胞を選択する。

【0087】
IFNβ産生量は、測定対象となる一定数のミエロイド系血液細胞を、IFNβタンパク質を含まない一定量の新鮮な培地中で、一定期間培養し、培養期間中に培地中に放出されたIFNβタンパク質量を定量することにより、算出することができる。IFNβ産生量は、該培地中のIFNβ量/単位細胞数/単位時間、として表現することができる。IFNβタンパク質量の定量方法は、IFNβタンパク質量を測定できる限り特に限定されるものではないが、ELISAやウエスタンブロッティングなどの免疫学的手法を用いた方法や、タンパク質(アミノ酸)が本来持つ吸収ピークを利用して分光光度計で測定される吸光度を元にタンパク質量を算出する方法などが挙げられる。

【0088】
(2)多能性幹細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法
本発明の一態様として、本発明は、
多能性幹細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)、(B)及び(C)を含む方法(本明細書中、本発明の作製方法2とも称する):
(A)多能性幹細胞から、ミエロイド系血液細胞を得る工程、
(B)インターフェロンα/β受容体(IFNAR)遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)プロモーターと機能的に連結されたIFNβ遺伝子を導入する工程
を提供する。

【0089】
工程(A)、工程(B)及び工程(C)は、同一の細胞に対して行われ、その順番は限定されるものではない。例えば、出発材料となる多能性幹細胞に対し、工程(A)、工程(B)及び工程(C)を下記のいずれかの順番で行うことができる。
- 工程(B)を行った後、工程(B)により得られた細胞に工程(A)を行い、その後、工程(A)により得られた細胞に工程(C)を行う
- 工程(B)を行った後、工程(B)により得られた細胞に工程(C)を行い、その後、工程(C)により得られた細胞に工程(A)を行う
- 工程(C)を行った後、工程(C)により得られた細胞に工程(A)を行い、その後、工程(A)により得られた細胞に工程(B)を行う
- 工程(C)を行った後、工程(C)により得られた細胞に工程(B)を行い、その後、工程(B)により得られた細胞に工程(A)を行う
- 工程(B)と工程(C)とを同時に行い、工程(B)及び工程(C)により得られた細胞に工程(A)を行う
- 工程(A)と工程(C)とを同時に行い、工程(A)及び工程(C)により得られた細胞に工程(B)を行う
- 工程(A)と工程(B)とを同時に行い、工程(A)及び工程(B)により得られた細胞に工程(C)を行う
- 工程(A)、工程(B)及び工程(C)を同時に行う

【0090】
本発明の作製方法2の好ましい一態様としては、
in vitroにおいて、ミエロイド系血液細胞からIFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞を作製する方法であって、下記の工程(A)~(D)を含む方法:
(A)多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM-CSF存在下で(さらにより好ましくはM-CSF及びGM-CSF存在下で)で一定期間培養することにより、ミエロイド系血液細胞を得る工程、
(B)該細胞において、内在性IFNAR遺伝子の発現を抑制する工程、
(C)外来性プロモーターと機能的に連結された外来性インターフェロンβ遺伝子を、該細胞に導入する工程、
(D)工程(A)、(B)及び(C)により、IFNARの遺伝子の発現が抑制されており、かつ外来性プロモーターと機能的に連結された外来性インターフェロンβ遺伝子を有する、ミエロイド系血液細胞を得る工程
が包含されるものである。

【0091】
本発明の作製方法2の別の好ましい一態様としては、上記方法において、工程(A)が以下である方法:
(A)多能性幹細胞由来の中胚葉系細胞をM-CSF(通常10~100 ng/mL、好ましくは30~70 ng/mL)存在下(より好ましくはM-CSF:通常10~100 ng/mL、好ましくは30~70 ng/mL、GM-CSF:通常50~200 ng/mL、好ましくは70~150 ng/mL存在下)で一定期間(通常、1~20日、好ましくは2日~15日)培養することにより、ミエロイド系血液細胞(好ましくはCD11b陽性細胞であり、より好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞であり、さらに好ましくはCD45及びCD11b陽性細胞である浮遊細胞であり、該細胞は、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現し、より好ましくは外来性のc-MYC、BMI1及びMDM2遺伝子を発現する)を得る工程。、

【0092】
本発明の作製方法2のまた別の好ましい一態様としては、上記方法において、工程(B)が以下である方法:
(B)該細胞において、IFNAR遺伝子の発現を抑制する(好ましくは遺伝子破壊により抑制し、より好ましくはIFNAR1遺伝子のエクソン1~3及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン2~4のいずれかへのDouble strand break(DSB)の導入による、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊によって抑制し、さらに好ましくは、IFNAR1遺伝子のエクソン2及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン3へのDouble strand break(DSB)の導入によるフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入による遺伝子破壊により抑制し、さらにより好ましくは、ガイドRNAとして配列番号1(IFNAR2)及び/又は配列番号7(IFNAR1)を標的とするガイドRNAを用いたCRISPR/CAS9系を用いて抑制する)工程。
本発明の作製方法2の他の好ましい一態様としては、上記方法において、工程(C)が以下である方法:
(C)外来性プロモーター(好ましくは構成的プロモーター又は条件付発現プロモーターであり、より好ましくは構成的プロモーターであり、さらに好ましくはEF-1αプロモーター)と機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子(好ましくは配列番号2をコードする核酸)を、該細胞に導入する工程。
本発明の作製方法2のまた他の好ましい一態様としては、上記方法において、工程(D)が以下である方法:
(D)工程(A)、(B)及び(C)により、IFNARの遺伝子の発現が人工的に抑制されており、かつ外来性プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子を有する(外来性構成的プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子が発現している、又は外来性条件付発現プロモーターと機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子が条件付で発現し得る)、ミエロイド系血液細胞を得る工程、
が包含されるものであり、
さらに、上記方法は、任意で
以下の工程(E)が以下である方法:
(E)上記工程(D)により得られた細胞のミエロイド系血液細胞のIFNβ産生量を測定し、IFNβ産生量の高い(好ましくは50 ng/106細胞/24時間以上、より好ましくは100 ng/106細胞/24時間以上、さらに好ましくは200 ng/106細胞/24時間以上)ミエロイド系血液細胞を選択する工程を含んでもよく、また、任意で
外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を導入する工程を含んでも良い。

【0093】
本発明の一態様において、本発明の作製方法により作製されるミエロイド系血液細胞は、多能性幹細胞に由来するミエロイド系血液細胞であって、M-CSFなどの細胞増殖因子及びc-myc遺伝子などの細胞不死化因子の発現(好ましくは強制発現)により4ヶ月以上の期間にわたって増殖する能力を付与された人工ミエロイド系血液細胞である。

【0094】
本発明の作製方法により得られるミエロイド系血液細胞は、腫瘍転移の抑制、腫瘍の縮小に有用であり、従って癌の予防又は治療用として好適に用いられる。従って、本発明の作製方法において、IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞の作製方法は、癌の予防又は治療効果を有する細胞の作製方法と読み替えることができる。

【0095】
2.IFNβ生産性の高いミエロイド系血液細胞
さらに本発明は、外来性のIFNβを発現しかつ内在性IFNAR遺伝子の発現が抑制された細胞(本明細書中、本発明の細胞とも称する)を提供する。

【0096】
本発明の細胞は、
- 内在性のIFNAR遺伝子の発現が抑制されており(好ましくはIFNAR遺伝子へのフレームシフト及び/又はストップコドンの挿入により抑制されており、より好ましくはIFNAR1遺伝子のエクソン1~3のいずれか、及び/又はIFNAR遺伝子のエクソン2~4のいずれかへの、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入により抑制されており、さらに好ましくは、IFNAR1遺伝子のエクソン2及び/又はIFNAR2遺伝子のエクソン3への、フレームシフト及び/又はストップコドンの挿入によって抑制されており)、かつ、
- 外来性プロモーター(好ましくは構成的プロモーター又は条件付発現プロモーターであり、より好ましくは構成的プロモーターであり、さらに好ましくはEF-1αプロモーター)と機能的に連結された外来性IFNβ遺伝子(好ましくは配列番号2をコードする核酸)を有する
細胞を提供する。
該細胞はさらに、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現していてもよく、していなくてもよいが、好ましくは、外来性のc-MYC遺伝子並びにBMI1、EZH2、MDM2、MDM4及びHIF1Aからなる群より選択される少なくとも1つの外来性遺伝子を発現し、より好ましくは外来性のc-MYC、BMI1及びMDM2遺伝子を発現する。

【0097】
各用語の定義は、本発明の作製方法について記載した部分に順ずる。
一態様において、本発明の細胞は、本発明の作製方法により得られる、インターフェロンβを高発現する細胞(本明細書中、本発明の細胞(I)とも称する)が挙げられる。
一態様において、本発明の細胞は癌の治療用である。

【0098】
3.IFNβ生産性の高い細胞を含む、癌の予防又は治療剤
本明細書実施例に示されるように、本発明において提供されるミエロイド系血液細胞を、転移性の癌細胞を移植したマウスに注射したところ、腫瘍転移の抑制、腫瘍細胞の増殖抑制、腫瘍の縮小などが認められた。したがって、本発明で提供されるミエロイド系血液細胞は、癌の予防又は治療に有用である。すなわち、本発明は、本発明の作製方法により得られる細胞又は本発明の細胞を含む、癌の予防又は治療剤(本明細書中、本発明の予防又は治療剤とも称する。)を提供する。

【0099】
癌の例としては、肝臓癌(例、肝細胞癌、原発性肝癌、肝外胆管癌)、胃癌(例、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌)、膵癌(例、膵管癌、膵内分泌腫瘍)、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌(例、結腸癌、直腸癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、乳癌(例、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、精巣腫瘍、前立腺癌(例、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、甲状腺癌(例、甲状腺髄様癌)、腎臓癌(例、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌)、子宮癌(例、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫)、肺癌(例、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、脳腫瘍(例、髄芽細胞腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、下垂体腺腫)、網膜芽細胞腫、皮膚癌(例、基底細胞腫、悪性黒色腫)、肉腫(例、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟部肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)、原発不明癌等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の予防又は治療剤は、肝臓癌(原発性又は転移性の肝臓癌)膵臓癌、胃癌、胆管癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、悪性黒色腫、脳腫瘍の予防又は治療用として好適に用いられる。
また、本発明の予防又は治療剤は、インターフェロンβ感受性の高い癌の予防又は治療用として用いることができる。

【0100】
一実施態様において、本発明の予防又は治療剤に含まれるミエロイド系血液細胞としては、患者本人の体細胞由来のiPS細胞から分化させたミエロイド系血液細胞が好ましく使用される。
また別の実施態様において、本発明の予防又は治療剤に含まれるミエロイド系血液細胞としては、患者とHLAの型が同一もしくは実質的に同一である他人から誘導された多能性幹細胞から分化誘導したミエロイド系血液細胞が好ましく使用される。

【0101】
本発明の予防又は治療剤に含まれるミエロイド系血液細胞は、常套手段にしたがって医薬上許容される担体と混合するなどして注射剤、懸濁剤、点滴剤等の非経口製剤として製造される。当該非経口製剤に含まれ得る医薬上許容される担体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などの注射用の水性液を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸リドカイン、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムなど)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウムなど)などと配合しても良い。

【0102】
本発明の剤を水性懸濁液剤として製剤化する場合、例えば、上記水性液に約1.0×106~約1.0×1012細胞/mLとなるように、ミエロイド系血液細胞を懸濁させればよい。投与方法は特に限定されないが、好ましくは注射であり、腹腔内投与、腫瘍患部への局所投与などが挙げられる。本発明の剤の投与量は、投与対象、治療標的部位、症状、投与方法などにより適宜選択されるが、通常、患者(体重60kgとして)においては、例えば、腹腔内注射の場合、1回につきミエロイド系血液細胞の量として約106~約1×1011細胞を、1週間に約2~3回、約2~3週間以上投与することができる。

【0103】
本発明の予防又は治療剤の投与対象となり得る動物としては、例えば、哺乳動物(例:ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット等)、鳥類(例:ニワトリ等)などが挙げられ、好ましくは、哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。

【0104】
4.予防又は治療上有効量の、インターフェロンβを高発現する細胞を、投与することを含む、哺乳動物における癌の予防又は治療方法
本発明の一態様として、本発明の細胞(好ましくは本発明の予防又は治療剤)を哺乳動物に予防又は治療上有効量投与することを含む、哺乳動物における、癌の予防(再発又転移の防止を含む)又は治療方法(本明細書中、本発明の予防又は治療方法とも称する)を提供する。
本発明の予防又は治療方法に用いられる本発明の細胞、その投与対象、投与方法などについては、本発明の予防又は治療剤について記載した部分に準ずる。
本発明の予防又は治療方法において、有効量とは、対象に投与されると、予防上又は治療上の有用性をもたらすのに十分な、活性成分(すなわち本発明の細胞)の量を指す。

【0105】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0106】
材料と方法
iPS及びiPS-ML/IFNβの作製
インターロイキン2及び抗CD3モノクローナル抗体で前刺激したヒト末梢血単核球に、センダイウイルスベクター(CytoTune-iPS、Dnavec、Tsukuba、Japan)を用いて初期化4因子の遺伝子導入を行った。遺伝子導入した細胞を、マウス胚性線維芽細胞のフィーダー細胞層上で培養した。20日後に予想された形態を呈するiPS細胞コロニーを選択した。
分化の誘導のため、iPS細胞を、OP9細胞のフィーダー層上で20日間培養し、その後、フィーダー細胞のない培養ディッシュに移して、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下で培養した。~10日後、CD11bを発現する丸い浮遊細胞を採取した(iPS-MC)。増殖能力を有するミエロイド細胞(iPS-ML)を作製するため、上記iPS-MC細胞にMYC、BMI1及びMDM2を発現するレンチウイルスベクターを形質導入した。遺伝子導入したiPS-MLは、20% FBS、GM-CSF(50 ng/mL)及びM-CSF(50 ng/mL)を含有するα-MEM中で維持した。M-CSF発現ベクターをもつiPS-MLは外因性M-CSFの非存在下で培養した。
【実施例】
【0107】
癌細胞
ヒト癌細胞株MKN-45(胃癌)、NUGC-4(胃癌)、MIAPaCa-2(膵臓癌)及びHep G2(肝細胞癌)は、Japanese Collection of Research生物resources(JCRB、大阪、日本)より入手した。ヒト肝細胞癌細胞株SK-HEP-1は American Type Culture Collection (ATCC)より入手した。レンチウイルスベクターは、ホタルルシフェラーゼを発現させ、癌細胞を修飾するために用いた。
【実施例】
【0108】
IFNβに対する、癌細胞の感受性の解析
96ウェル培養プレート(5×104 細胞/200 μL 培養液/ウェル)中、IFNβ(5、10、30又は100 ng/mL)の存在下又は非存在下で、ヒト癌細胞を培養した。3日後、ウェルにルシフェラーゼ基質(SteadyLite plus、Perkin Elmer、Waltham、MA)を加え、マイクロプレートリーダー(TriStar、Berthold Technologies、Bad Wildbad、Germany)を用いて発光活性を定量した。
【実施例】
【0109】
肝臓癌の異種移植モデルとその治療試験
試験はSCIDマウスを用いて行い、熊本大学動物実験委員会の承認を得て行った。手術工程の前に、6.25×103 μg 2,2,2-トリブロモエタノール/500μL水(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)の腹腔内(i.p.)注射を行って各マウスを麻酔した。転移性の肝臓癌モデルを開発するため、29-ゲージ針付インスリン用シリンジを用いて、開腹手術下で、ルシフェラーゼを発現する癌細胞(2×106 細胞/100 μL/マウス)を、脾臓の被膜下領域に投与した。7-10日後、MKN-45、NUGC-4又はMIAPaCa-2の異種移植片を有するマウスを用いてin vivo 発光解析を行い、肝臓病巣の発達及び転移について調べた。これら3つの細胞型のうち、MKN-45細胞が、最も高い効率で肝臓転移を形成したため、治療試験に用いた。いくつかの試験においては、肝臓転移を確認した後、脾臓摘出を行った。
肝細胞癌モデルとしては、1×106のHep G2細胞又はSK-HEP-1細胞を、SCIDマウスの肝臓の左葉に投与し、治療試験にはSK-HEP-1細胞を用いた。
【実施例】
【0110】
成功裏に腫瘍を発達させたマウスをランダムに対照群及び治療群に分けた。治療群のものには、1~2×107 iPS-ML/IFNβ(LOWあるいはHIGH)を週に2~3回注射し、対照マウスは治療しなかった。いくつかの実験においては、iPS-ML/IFNγを有するマウスには、同時に5×106 iPS-ML/IFNγを接種させた。腫瘍の進行は、1週間に1回実施したin vivo 発光解析により監視した。癌の成長は、各マウスの全発光カウントの倍率変化(fold change)により決定した。
【実施例】
【0111】
In vivoルシフェラーゼイメージング
in vivo 発光イメージングにより検出した、ルシフェラーゼの活性により生じる発光シグナルに基づいて、癌細胞の生着及び腫瘍の進行を定量的に評価した。イソフルランの吸入により麻酔したマウスに、10μg/mLルシフェリン250μL/マウスを腹腔内注射し、in vivoイメージングシステム(NightOWL II; Berthold Technologies)を用いてイメージング解析を行った。Indigo解析ソフトウェアを用いて、データを解析した。
【実施例】
【0112】
SCIDマウスの腫瘍へのiPS-MLの浸潤の解析
緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するMKN-45細胞(MKN-45/GFP細胞)(2 × 106細胞/マウス)を、SCIDマウスの脾臓に注射した。14日後、iPS-MLを、赤色蛍光リンカーPKH26(Sigma)で標識し、該マウスに腹腔内注射した(2 ×107細胞/マウス)。24、48、72時間後にマウスを安楽死させ、MKN-45/GFP細胞、及びPKH26で標識したiPS-MLの巨視的な位置を検出した。475及び500 nmの励起波長並びに520及び600 nmのエミッションフィルターをそれぞれ用い、NightOWL IIにより蛍光検出を行った。顕微鏡解析には、48時間後に癌組織を取り出し、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で固定して、Tissue-TEK OCT(Sakura Finetechnical、Tokyo、Japan)中に包埋した。5~10μmの厚さの組織切片をクライオスタットを用いて作製し、蛍光顕微鏡(Axio Observer Z1、Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)により解析した。肝門領域及び肝実質を同定するために、切片のいくつかを、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色した。
【実施例】
【0113】
腹腔内注射後のiPS-MLの衰退の解析
SCIDマウスに、ルシフェラーゼを発現するiPS-ML(2×107、1×107又は5×106 細胞/マウス)を腹腔内注射し、その後すぐ並びに5、24及び48時間後に発光イメージング解析を行い、各時点でのこれらの細胞の運命及び生存率を決定した。
【実施例】
【0114】
腹腔内注射後のiPS-MLの組織分布の解析
腹腔内注射されたiPS-MLの組織分布を調べるために、ルシフェラーゼを発現するiPS-ML 2×107個をSCIDマウスに腹腔内注射した。肝臓、脾臓、網、腸間膜及び腹膜を、5及び24時間後に単離し、Multi-beads Shocker(Yasui Kikai、Osaka、Japan)を用いて、ホモジナイズした。ホモジナイズしたものに、ルシフェラーゼ基質(SteadyLite Plus)を加え、マイクロプレートリーダー(TriStar、Berthold Technologies)を用いて発光活性を測定した。組織溶解物に含まれた基質は、ルシフェラーゼ活性に顕著に影響を与えるため、iPS-MLを注射していないマウスから単離した組織に対し、ホモジナイズの前に、ルシフェラーゼを発現するiPS-ML(2×106 細胞/組織)を加えて、対照を調整した。陰性対照は、iPS-MLを注射していないマウスから単離した組織をホモジナイズし、iPS-MLを加えずに調製した。各組織サンプルのiPS-MLの数は、サンプルの発光カウントに基づいて、下記式により計算した:
組織中の細胞数 =(サンプル発光カウント/標準発光カウント)×2×106
マウスに最初に注射した細胞数(2×107)に対するパーセンテージとして、データを表した。いくつかの試験においては、組織を単離する前に全身かん流を行った。マウスを安楽死させた後、5mLシリンジ及び30ゲージ針を用いて左心室にPBS 5 mLを注射した。同時に手術用メスを用いて右心耳を切開した。肝臓、脾臓、網、腸間膜及び腹膜を含む腹腔内器官を、上述のように単離し、解析した。
【実施例】
【0115】
マウス肝臓中のIFNβの定量化
肝臓癌を有する又はもたないSCIDマウスに、iPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射し、24、48又は72時間後に安楽死させた。その直後に肝臓全体を単離し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete、11697498001、Roche Diagnostics、IN)の存在下でホモジナイズした。得られた肝臓溶解物を凍結させて、IFNβを検出するためのELISAに用いるまで保存した。マウス肝臓溶解物は、アビジンコートしたアガロースビーズを用いても取り除くことのできない非常に高いビオチン結合活性を持つ基質を含んでいたため、ビオチン-アビジンシステムを用いない、下記の新しいELISA工程を開発した。ELISAプレート(96ウェル、NUNC 442404、Thermo Fisher Scientific)を、1.0μg/mLのキャプチャー抗体(ウサギ抗ヒトポリクローナルIFNβ抗体、Peprotech、Rocky Hill、NJ)でコートし、室温で一晩静置した。キャプチャー抗体を洗浄バッファー(Tris-buffered saline、pH 7.4)で洗浄し、ブロッキング溶液(Block Ace、DS Pharma生物medical、Osaka、Japan)(300 μL/well)をウェルに加えた。室温で1時間のインキュベーション後、肝臓溶解物を10% Block Aceで10倍に希釈し、50 μLを各ウェルに対して加えた。プレートを室温で3時間インキュベーションした後、検出抗体として、マウス抗ヒトIFNβモノクローナル抗体(clone 76703R、R & D Systems、Minneapolis、MN)(0.5μg/ml、50μL/well)を加えた。プレートを1時間インキュベートした後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートウサギ 抗マウス IgG抗体(A206PS、American Qualex、San Clemente、CA)(0.5μg/ml、50μL/well)を1時間添加した。HRP基質(N301、Thermo Fisher Scientific、MA)を用いて、比色検出を行った。0.1M硫酸の添加により反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(Multi-Spectrophotometer Viento XS、Dainippon Sumitomo Pharma、Tokyo、Japan)を用いて、450 nmでのサンプル吸光度を測定した。
【実施例】
【0116】
実施例1:iPS-MLの作成
ヒトiPS細胞株の樹立と培養、および、iPS-MLの作成は、WO2012/043651パンフレットに記載の方法により実施した。
【実施例】
【0117】
実施例2:CRISPR技術によるiPS-MLにおけるIFNAR2遺伝子の標的破壊
IFNβはIFNαと共通のレセプターであるIFNARに結合する。IFNARは、IFNAR1とIFNAR2の2つのタンパク質から構成されるヘテロ2量体である。IFNAR2の遺伝子を CRISPR技術を用いて標的破壊を行った。CRISPR法による遺伝子標的破壊には、CAS9(DNA切断酵素)の発現ベクターとgRNA(CAS9を標的部位へ誘導するguide RNA)の発現ベクターが必要である。そこで、後述するように各々を発現させるためのベクターを作成した。
【実施例】
【0118】
CAS9発現ベクターの作成
CAS9(A群連鎖球菌CAS9)のcDNAをCMV(サイトメガロウイルス)プロモーター下に発現するレンチウイルスベクター作成用のプラスミドを作成した。このベクターの構造を図1に示す。
【実施例】
【0119】
ヒトIFNAR2ゲノム中のCRISPR標的部位の選択
図2に、ヒトIFNAR2遺伝子のエクソン2からエクソン4、およびそれらのエクソンの近傍のイントロンの塩基配列を示す。標的配列としての条件を満たすgRNAの候補標的配列(20塩基長)として、図2に下線で示すように4カ所(gRNA target 1-4)を選び4種類のgRNA発現ベクターを作成した。gRNA発現ベクターの構造は、図3の通りである。
ガイドRNA1~4の標的配列を下記に示す。
ガイドRNA1:ATCACTTAATTTGGTTCTCA(配列番号3)
ガイドRNA2:GTGTATATCAGCCTCGTGTT(配列番号1)
ガイドRNA3:AGATATCATTGCGAAATTTC(配列番号4)
ガイドRNA4:CATTGCTGTATACAATCATG(配列番号5)
【実施例】
【0120】
インターフェロンβ発現ベクターの作成
ヒトIFNβのcDNAをレンチウイルスベクターCSIIEFへ挿入し、発現プラスミドを作成した。IFNβの発現ベクターの構造は、図4の通りである。図に示されるようにEF-1αプロモーターの下流にIFNβcDNA-IRES(internal ribosomal entry site)-ピューロマイシン耐性タンパク(Puromycin N-acetyl-transferase)cDNAが、配置されている。
【実施例】
【0121】
レンチウイルスベクター(組換えレンチウイルス)の作成
リポフェクション法(Lipofectamine 2000, Invitrogen社)を用いて、上記で作製したプラスミドコンストラクトの各々とパッケージングコンストラクト、およびエンベロープおよびRevのコンストラクト(理化学研究所 三好浩之博士より分与)をパッケージング細胞(ウイルス産生細胞)である293T細胞へ導入した。
遺伝子導入3日後に、細胞培養液を回収し、0.45μmのフィルターを通した後、遠心分離法(50,000G、2時間)によりウイルス粒子を沈澱させ回収した。回収した組換えウイルス粒子は、DMEM溶液に懸濁した後、凍結チューブに分注し、使用時まで冷凍庫(-80℃)にて保存した。
【実施例】
【0122】
レンチウイルスベクターによるiPS-MLへのCRISPRシステムの導入
iPS-MLの培養には、20%ウシ胎仔血清含有アルファMEM(αMEM)にマクロファージコロニー刺激因子M-CSF(50 ng/mL)と顆粒球マクロファージコロニー刺激因子GM-CSF(50 ng/mL)を添加した培養液を使用した。細胞密度を5 x 105個/0.5 mL培養液/well/24ウェル細胞培養プレートとして、iPS-MLを播種した。凍結保存しておいたCAS9発現ベクター搭載レンチウイルス、および、gRNA発現ベクター搭載レンチウイルスを解凍し、感染させた。4種類のgRNA発現ベクター搭載レンチウイルスを、各々、別のwellのiPS-MLに添加した。CAS9発現ベクター搭載レンチウイルスは、全てのwellのiPS-MLに添加した。
導入した4種類のgRNAコンストラクトの中で、gRNA2のベクターにより最も効果的にIFNAR2遺伝子が破壊されていた。
【実施例】
【0123】
IFNAR破壊細胞の、高濃度のヒトIFNβに対する耐性の検証
CRISPRシステムのレンチウイルスを導入してから3日後より、遺伝子組換えヒトIFNβ(Prospec社製:最終濃度100 ng/mL)を培養液へ添加した。その後、培養を継続したところ、gRNA2のベクターを導入したiPS-MLが最も生存率が高いことを観察した。この結果から、導入した4種類のgRNAコンストラクトの中でgRNA2により最も効果的に、高濃度のIFNβに対して耐性を獲得できることを見出した。そこで、gRNA2を導入したiPS-MLにIFNβの発現ベクターを導入することに決定した。
【実施例】
【0124】
薬剤選択によるIFNβを産生するiPS-ML/IFNβの選別
使用したIFNβの発現ベクターでは、図4に示されるようにIFNβ発現ベクターの下流にIRES(internal ribosome entry site)配列を介してピューロマイシン耐性因子(ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ)遺伝子が配置されている。このベクターが導入された細胞では、IFNβタンパクとピューロマイシン耐性因子が同時に発現する。そして、IFNβタンパクとピューロマイシン耐性因子は、同一のmRNAから転写されるため、この2種類のタンパク質の発現量は比例する。したがって、発現ベクター導入後にピューロマイシンを用いて薬剤選択を行う際、より高濃度のピューロマイシンに耐性を有する細胞程、IFNβを高発現するということになる。
iPS-MLへIFNβ発現ベクターを導入した7日後に培養液にピューロマイシンを添加することにより、IFNβを産生するiPS-MLの選択を開始した。その後、顕微鏡下での細胞の状態を観察しつつ培養を継続した。細胞の生存と増殖を確認しつつ、培養液中のピューロマイシンの濃度を徐々に上昇させることにより、導入遺伝子の発現レベルがより高いiPS-MLのみが生存し続けるようにした。この実験では、少なくともピューロマイシンの濃度10μg/mL程度まで、細胞の生存率を維持することが可能であった。
【実施例】
【0125】
実施例3:iPS-ML/IFNβによるインターフェロン産生量の測定
実施例1及び2に記載したように作成したiPS-ML/IFNβ(以下の実施例3~10において、単にiPS-ML/IFNβHIGHとも称する)を96穴培養プレートに播種した(5x104細胞/200μL培養液)。24時間後に培養上清を回収し、ELISA法によりIFNβの濃度を測定した。IFNAR2遺伝子の破壊を行っていないことを除いては実施例1及び2と同様に作製したiPS-ML/IFNβLOWについても、96穴培養プレートに播種し、24時間後に培養上清を回収して、IFNβの濃度を測定した。
図5にELISA法により測定したIFNβ産生量の値を示す。1x106個のiPS-ML/IFNβあたり24時間でのIFNβ産生量として示している。図5で示されるように、IFNAR2遺伝子の破壊を行っているiPS-ML/IFNβ(iPS-ML/IFNβHIGH)からは、IFNAR2遺伝子の破壊を行っていないiPS-ML/IFNβ(iPS-ML/IFNβLOW)と比較して10倍位以上大量のIFNβが産生された。
【実施例】
【0126】
実施例4:胃癌腹膜播種の異種移植モデルにおけるiPS-ML/IFNβLOWの治療効果
ルシフェラーゼを発現するMKN-45細胞を腹腔内に注射した4日後に、マウス発光シグナルを解析し腫瘍細胞の生着の有無を検討した。腫瘍細胞の生着が確認されたマウスを治療群及び対照群に分けた。治療群のものには、iPS-ML/IFNβLOW(1×107 細胞/マウス)を1週間に2回、2週間腹腔内注射した。対照群には治療を行わなかった。癌細胞接種後18日まで1週間に1回、マウスの生物発光解析を行い、腫瘍の進行を監視した。
図6に示すとおり、対照群とiPS-ML/IFNβLOW治療群との間に、腫瘍の進行に有意な差はなかった。
【実施例】
【0127】
実施例5:胃癌腹膜播種の異種移植モデルにおけるiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果
ルシフェラーゼを発現するMKN-45細胞を腹腔内に注射した4日後に、マウス発光シグナルを解析し腫瘍細胞の生着の有無を検討した。腫瘍細胞の生着が確認されたマウスを治療群及び対照群に分けた。治療群のものには、iPS-ML/IFNβHIGH(1×107 細胞/マウス)を1週間に2回、3週間腹腔内注射した。対照群には治療を行わなかった。癌細胞接種後24日まで1週間に1回、マウスの生物発光解析を行い、腫瘍の進行を監視した。
図7に示すとおり、対照群と比較して、iPS-ML/IFNβ治療群は、腫瘍の進行を有意に阻害した(p ≦ 0.05、Mann-Whitney検定)。
【実施例】
【0128】
実施例6:転移性の肝臓癌の異種移植モデルにおけるiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果
SCIDマウスにホタルルシフェラーゼを発現する癌細胞を埋め込むことによって、肝臓転移の異種移植モデルにおける、転移性の肝臓癌に対するiPS-ML/IFNβの治療効果を調査した。2種のヒト胃癌細胞株(NUGC-4及びMKN-45)及び膵臓癌細胞株(MIAPaCa-2)を用いて試験を行い、適した癌細胞株を選択した。これらの全ての細胞は、IFNβに対して感受性があった(図8)。
【実施例】
【0129】
腫瘍の肝臓への転移能力を決定するために、開腹手術下で、マウスの脾臓の被膜下領域に、悪性細胞を接種させた(図9A)。7日後、生物発光イメージングアッセイによりマウスを解析した。試験した3種の細胞株のうち、転移性の肝臓病巣に由来するMKN-45は、最も効率よく肝臓に転移した(図9B)。転移性の肝臓病巣を、巨視的又は組織学的に調べた(図9C、D)。続いて行うiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を評価するための試験において、MKN-45細胞を用いた肝臓転移の異種移植モデルを採用した。
【実施例】
【0130】
ルシフェラーゼを発現するMKN-45細胞を脾臓に接種させた7日後に、マウスの~80%で、上腹部領域に発光シグナルを検出した。これらの陽性マウスを治療群及び対照群に分けた。治療群のものには、iPS-ML/IFNβHIGH(2×107 細胞/マウス)を1週間に3回、3週間腹腔内注射した。対照群には治療を行わなかった。癌細胞接種後37日まで1週間に1回、マウスの生物発光解析を行い、腫瘍の進行を監視した。
図10に示すとおり、対照群と比較して、iPS-ML/IFNβHIGH治療群は、腫瘍の進行を有意に阻害した(p ≦ 0.05、Mann-Whitney検定)。
【実施例】
【0131】
この試験手順のもと、癌細胞は、肝臓転移の発達に加え、脾臓及び注射された部位の付近で成長した。すなわち、肝臓及び脾臓の病巣において、発光活性を検出した(図10A)。しかしながら、肝臓の発光シグナルは、脾臓のものと正確には区別することができないため、肝臓病巣の進行を特異的に定量することはできなかった。腫瘍細胞接種の10日後に、該マウスの脾臓摘出を行い、肝臓における腫瘍進行を評価した。上記と同様のプロトコルに従い、iPS-ML/IFNβHIGHの腹腔内注射により、該マウスを治療した。治療効果は、肝臓腫瘍進行の阻害として表し、in vivo発光解析により確認した(図11、p ≦ 0.01、Mann-Whitney検定、p<0.01、スチューデントのT検定)。さらに、iPS-ML治療したマウスの中には、腫瘍が完全に消失したものもいた。
【実施例】
【0132】
実施例7:肝細胞癌の異種移植モデルにおける、iPS-ML/IFNβHIGH及びiPS-ML/IFNγの治療効果
原発性の肝臓癌に対するiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を、異種移植モデルを用いて検証した。いずれもIFNβに対して感受性がある肝細胞癌細胞株SK-HEP-1及びHep G2(図12)(2×106 細胞/マウス)を、マウス肝臓の左葉に接種させた。8~9日後、肝臓中の生着した癌細胞を、ルシフェラーゼアッセイにより調べた。その結果、SK-HEP-1細胞を用いて、肝細胞癌の異種移植モデルを確立させることができ(図13)、Hep G2細胞では確立させることができなかった。
【実施例】
【0133】
iPS-ML/IFNβHIGHの治療効果を評価するため、SK-HEP-1が生着したマウス9匹に対して、腫瘍負荷9日後から、1週間に3回、iPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射した。対照として、SK-HEP-1が生着したマウス9匹に対し、治療を行わなかった。全てのマウスに対して、16、23及び30日に生物発光解析を行った。その結果、治療群において腫瘍の成長が阻害されたことが示され(図14A、p<0.01、スチューデントのT検定、図15A)、対照群と比較して生存が延長した(図14B、p<0.0001、log-rank検定)。
【実施例】
【0134】
iPS-ML注射の頻度を、1週間に2回に減少させた試験においても、有意な治療効果が得られた(図14C、D、図15B)。
【実施例】
【0135】
in vitroでSK-HEP-1の成長を相乗的に妨げる作用を有するIFNγ及びIFNβのいずれに対しても、SK-HEP-1細胞は感受性がある(図12)。IFNγを発現するiPS-ML(iPS-ML/IFNγ)を作製し、iPS-ML/IFNβHIGHとの相乗的な効果を検討した。iPS-ML/IFNγとiPS-ML/IFNβHIGHとの混合物は、iPS-ML/IFNβHIGH単独よりも、腫瘍進行の阻害効果が有意に優れていた(図16B、p<0.01、スチューデントのT検定)。しかしながら、2種の治療群間において、マウスの生存についての有意な差はなかった。
【実施例】
【0136】
実施例8:腹腔内注射されたiPS-MLの組織分布
腹腔内注射されたiPS-MLの寿命を検討するため、2×107、1×107又は0.5×107個のルシフェラーゼ発現細胞を、腫瘍非担持SCIDマウスに注射し、注射直後並びに5、24及び48時間後の発光活性を検討した(図17)。発光活性は、5時間後に~40%まで減少し、24時間後には~1%に減少した。注射後48時間では、ほとんど検出されなかった。異なる数の細胞を接種させたマウス間で、iPS-MLの衰退の割合についての有意差はなかった。
【実施例】
【0137】
マウスの主要な器官の深くに移動したiPS-MLのルシフェラーゼ活性を正確に測定するため、これらの器官を単離し、それぞれの組織溶解物のルシフェラーゼ活性を定量した。ルシフェラーゼ発現iPS-ML 2×107 個を、腫瘍非担持SCIDマウスへ腹腔内注射し、24時間後に、マウスを安楽死させ、肝臓、脾臓、網、腸間膜、臓側腹膜及び壁側腹膜を単離した。各器官に分布するiPS-MLの数を決定するため、ホモジナイズした組織から調製した溶解物の発光活性を解析した。その結果、iPS-ML注射24時間後のマウスの腹膜、脾臓、腸間膜及び肝臓において生存している細胞の全数は、注射した細胞の~12%であった(図18A)。重要なことには、注射24時間後に、この方法を用いて決定した値は、in vivoイメージングアッセイから算出したもの(~1%; 図17)よりも高かった。
【実施例】
【0138】
ルシフェラーゼ非発現MKN-45細胞から発生し定着した肝臓病巣を有するマウスにも、同様に、ルシフェラーゼを発現するiPS-ML/IFNβを注射した。全身かん流は、iPS-MLの分布に有意には影響しなかった(図18B及びC)。この結果は、末梢血中のiPS-MLの数は、ルシフェラーゼ活性に基づいて測定されたように、接種させた細胞数の< 0.01%であるという観察と合致している。すなわち、腹腔内注射されたiPS-MLはほとんど血流に入らない。さらに、接種させたマウスの肺から調製した溶解物の発光活性は、ほとんど検出することができなかった(0.08%;図18B)。これらの観察によると、iPS-ML/IFNβは、腹腔外への血流を介した移動はほとんど行わず、注射24時間後には腹腔内注射された元の細胞数の~10%に減少した。
【実施例】
【0139】
実施例9:腫瘍へ方向付けられた、腹腔内注射されたiPS-MLの移動
腹腔内注射されたiPS-MLの位置を、蛍光イメージングにより解析した。GFP発現MKN-45細胞の脾臓内注射により、肝臓において転移性病巣が定着した。これらの腫瘍担持マウスに、PKH26で標識したiPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射し、その24、48又は72時間後に、安楽死させた。解剖により腹部の器官を露出させ、MKN-45腫瘍及びiPS-ML/IFNβHIGHの分布を検出するため、巨視的な蛍光イメージングを行った。肝門領域を露出させるために、肝臓を反転させた腫瘍担持マウスの巨視的なイメージを、図19A-Dに示す。原発性の脾臓病巣に示されたGFPシグナルにより、腫瘍細胞の脾臓への直接の侵入が明らかになった(緑矢印、図19B-D、GFP)。肝臓において転移性病巣が検出された(白矢印、図19C、GFP)。これらのマウスにおいて、PKH26蛍光により、脾臓付近(黄色三角、図19C及びD、PKH26)及び肝門領域(赤色三角、図19B-D、PKH26)においてiPS-ML/IFNβHIGHの集積が明らかになった。この観察により、iPS-MLが肝臓内の転移性病巣へ移動したことが示唆された。加えて、組織学的解析により、被膜直下に位置するいくつかの肝臓内転移性病巣へのiPS-ML/IFNβHIGHの浸潤が明らかになった(図19E-G)。反対に、腫瘍をもたない対照群において、iPS-MLは肝臓表面に小さなクラスターのみが形成され、肝臓に浸潤しなかった。
【実施例】
【0140】
実施例10:iPS-ML/IFNβHIGH接種させたマウスの肝臓におけるIFNβの定量化
肝臓中のIFNβレベルが抗癌効果を発揮するのに十分であるかを評価するため、iPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射した肝細胞癌異種移植マウスの肝臓全体でのIFNβの濃度を決定した。SK-HEP-1肝臓腫瘍を有するSCIDマウス又は該腫瘍をもたないSCIDマウスに、iPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射し、24、48又は72時間後に安楽死させた。該マウスの肝臓を単離し、ホモジナイズして、ELISAを行いIFNβレベルを定量した。腫瘍担持マウス及び腫瘍非担持マウスのいずれにおいても、iPS-ML/IFNβHIGHの腹腔内注射24及び48時間後の肝臓IFNβ濃度は、>200 ng/mlであり、少なくとも72時間、およそこのレベルで維持された(図20)。この肝臓中のIFNβの濃度は、腫瘍細胞の増殖を阻害する、あるいは腫瘍細胞死の誘導に十分であった(図8及び図12)。IFNβは、1)iPS-ML/IFNβHIGHの腫瘍部位への浸潤とIFNβの産生、2)腹膜に局在するiPS-ML/IFNβHIGHによるIFNβの産生と、それに続く門脈を介したあるいは拡散による肝臓へのIFNβの輸送、の2つの経路により肝臓腫瘍に到達した可能性がある。
【実施例】
【0141】
実施例11:CRISPR技術によるiPS-MLにおけるIFNAR1遺伝子の標的破壊
ヒトIFNAR1ゲノム中のCRISPR標的部位の選択
図21に、ヒトIFNAR1遺伝子のエクソン1からエクソン3、およびそれらのエクソンの近傍のイントロンの塩基配列を示す。標的配列としての条件を満たすgRNAの候補標的配列(20塩基長)として、図21に下線で示すように3カ所(gRNA target 1-3)を選び3種類のgRNA発現ベクターを作成した。
IFNAR1を破壊するためのガイドRNA1~3の標的配列を下記に示す。
ガイドRNA1:TGCTCGTCGCCGTGGCGCCA(配列番号6)
ガイドRNA2:ACAGGAGCGATGAGTCTGTC(配列番号7)
ガイドRNA3:TCATTTACACCATTTCGCAA(配列番号8)
【実施例】
【0142】
T7RNAポリメラーゼを用いたgRNA合成
PCR法によりgRNA合成のための鋳型となるDNA断片を作成した。T7RNAポリメラーゼを使用したRNA合成法(Cuga7 in vitro Transcriptionキット、ニッポンジーン社)により、鋳型DNA断片からgRNAを合成し、RNeasy miniキット(キアゲン社)を用いてgRNAの精製を行った。
【実施例】
【0143】
電気穿孔法によるCAS9タンパクとgRNAのiPS-MLへの導入
電気穿孔による細胞への核酸とタンパク質導入システム(Neonシステム、Thermo Fisher Scientific社)を用いて遺伝子組換えCAS9タンパク(ニッポンジーン社)とgRNAをiPS-MLへ導入した。
電気穿孔法によるCAS9タンパクとgRNAの導入の後、4日間培養を行った後、遺伝子組換えIFNβ(100 ng/mL Peprotech社)を添加してさらに培養を継続した。その後7日間観察を続けたところ、使用した3種類のガイドRNAのうち、ガイドRNA2を導入したiPS-MLが最も高い生存率を示した。この結果から、ガイドRNA2により最も効果的にIFNAR1遺伝子が破壊され、IFNβに対する抵抗性を獲得したものと判断した。そこでガイドRNA2を導入したiPS-MLにIFNβの発現ベクターを導入することに決定した。
【実施例】
【0144】
実施例2の場合と同様にガイドRNA2を導入したiPS-MLへ、IFNβ発現ベクターを導入し、5日後に培養液にピューロマイシンを添加することにより、IFNβを産生するiPS-MLの選択を開始した。その後、顕微鏡下での細胞の状態を観察しつつ培養を継続した。細胞の生存と増殖を確認しつつ、培養液中のピューロマイシンの濃度を徐々に上昇させることにより、導入遺伝子の発現レベルがより高いiPS-MLのみが生存し続けるようにした。少なくともピューロマイシンの濃度10μg/mL程度まで、細胞の生存率を維持することが可能であった。
【実施例】
【0145】
実施例12:iPS-ML/IFNβによるインターフェロン産生量の測定
実施例11に記載したように作成したiPS-ML/IFNβを96穴培養プレートに播種した(1.6×104細胞/200μL培養液)。24時間後に培養上清を回収し、ELISA法によりIFNβの濃度を測定した。IFNβ発現ベクターを導入していないiPS-MLについても、96穴培養プレートに播種し、24時間後に培養上清を回収して、IFNβの濃度を測定した。
図22にELISA法により測定したIFNβ産生量の値を示す。1×106個のiPS-ML/IFNβあたり24時間でのIFNβ産生量として示している。図22で示されるように、IFNAR1遺伝子の破壊を行っているiPS-ML/IFNβ(iPS-ML/IFNβHIGH)からは、図5に示すIFNAR2遺伝子の破壊を行ったiPS-ML/IFNβHIGHと同様に、200 ng/1×106細胞/24時間以上のIFNβが産生された。すなわち、IFNAR1遺伝子の破壊を行っているiPS-ML/IFNβHIGHから、図5に示すIFNAR1とIFNAR2のいずれの遺伝子も破壊していないiPS-ML/IFNβLOWと比較して10倍以上大量のIFNβが産生された。
【実施例】
【0146】
実施例13:腹膜播種モデルおよび肝転移モデルにおけるiPS-MLの腫瘍組織への集積と浸潤
GFP発現NUGC-4細胞をSCIDマウスの腹腔内に注射し、腫瘍細胞を腹腔内に定着させた。腫瘍担持マウスに、PKH26で標識したiPS-MLを腹腔内注射し、24時間後に、安楽死させ、解剖により腹部を露出させ、NUGC-4腫瘍及びiPS-MLの分布を検出するため、巨視的な蛍光イメージングを行った。その結果、iPS-MLがNUGC-4腫瘍組織に集積し浸潤しているのが確認できた。
また、GFP発現MKN45細胞をSCIDマウスの脾臓内に注射し、肝臓において転移性病巣を定着させた。腫瘍担持マウスに、PKH26で標識したiPS-ML/IFNβHIGHを腹腔内注射し、24、48、72時間後に安楽死させ、解剖により腹部の器官を露出させ、MKN45腫瘍及びiPS-ML/IFNβHIGHの分布を検出するため、巨視的な蛍光イメージングを行った。その結果、肝臓において転移性病巣が検出され、かつ、iPS-MLがNUGC-4腫瘍組織に集積し浸潤しているのが確認できた。
【実施例】
【0147】
実施例14:同系腫瘍移植モデルを用いたiPS-ML/IFNβHIGHの治療効果
(1)マウスES-ML/IFNβHIGHの作成
マウスES-ML/IFNβHIGHを以下のようにして作成した。マウスES細胞に由来するミエロイド細胞に、遺伝子導入により、cMYC、GM-CSF、およびM-CSFを発現させ、増殖性ミエロイド細胞ES-MLを作成した。さらに、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)によりIFNβレセプターの構成分子遺伝子であるifnar2の標的標的破壊を行った上で、IFNβの発現ベクターを導入し、マウスES-ML/IFNβHIGHを作成した。マウスES-ML/IFNβHIGHにおいて、主要組織適合抗原遺伝子(MHC)のうち、H-2K、H-2D、および、I-Abの遺伝子を破壊した後、磁気ビーズ法によりこれらの分子を欠損した細胞群を純化した。MHC遺伝子の標的破壊は、ES-MLの作成に用いたES細胞の源となったマウスとは異なる系統のマウスにおいて治療細胞として移入できるようにすることを目的としたものである。
(2)大腸癌腹膜播種モデルにおけるES-ML/IFNβHIGHの治療効果
ルシフェラーゼを発現するColon26細胞(マウス大腸癌細胞)(5×106 細胞/マウス)を、同系マウスであるBLAB/cマウスの腹腔内に移植し、腹膜播種モデルを作成した。移植後、2日後にバイオイメージングにより病巣の形成を確認した。その後、ES-ML/IFNβHIGH(2×107 細胞/マウス)を1週間に2回、4週間腹腔内注射し、マウスの生物発光解析を行い腫瘍の進展をモニタリングするとともに、マウスの生存を確認した。図23Aに腫瘍増殖率を、図23Bにマウス生存率を示す。対照群と比較して、ES-ML/IFNβ治療群は、顕著な腫瘍の増殖抑制および生存率の改善を示した。
【実施例】
【0148】
(3)悪性黒色腫腹膜播種モデルにおけるES-ML/IFNβHIGHの治療効果
ルシフェラーゼを発現するB16細胞(マウスメラノーマ細胞)(5×106 細胞/マウス)を、同系マウスであるC57BL/6マウスの腹腔内に移植し、腹膜播種モデルを作成した。移植後、2日後にバイオイメージングにより病巣の形成を確認した。その後、ES-ML/IFNβHIGHを1週間に2回、4週間腹腔内注射し、マウスの生物発光解析を行い腫瘍の進展をモニタリングするとともに、マウスの生存を確認した。図24Aに腫瘍増殖率を、図24Bにマウス生存率を示す。対照群と比較して、治療群は、顕著な腫瘍の増殖抑制および生存率の改善を示した。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明によれば、従来の方法、すなわち、IFNβ発現ベクターをiPS-MLに導入したiPS-ML/IFNβLOW細胞と比較して10倍以上の量のIFNβを産生するiPS-MLを作製することが可能となり得る。本発明により提供されるミエロイド系血液細胞は、腫瘍部位への指向性の移動を行うことが可能であり、また、腫瘍部位へIFNβを送達することを可能とし得る。本発明により提供されるミエロイド系血液細胞は、腫瘍の増殖を阻害し、腫瘍の縮小化を行い、転移を抑制するなどの効果を示し得る。従って、本発明により、悪性腫瘍に対する免疫細胞治療医薬品としてより高い効果を有するものを提供することが可能となり得る。従って、本発明の方法は、悪性腫瘍に対する予防又は治療に特に有用であり得る。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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