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明細書 :α-酸化アルミニウム粒子の製造方法及びα-酸化アルミニウム粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年8月6日(2020.8.6)
発明の名称または考案の名称 α-酸化アルミニウム粒子の製造方法及びα-酸化アルミニウム粒子
国際特許分類 C01F   7/44        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01F 7/44 A
B82Y 30/00
B82Y 40/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2019-538077 (P2019-538077)
国際出願番号 PCT/JP2018/030058
国際公開番号 WO2019/039321
国際出願日 平成30年8月10日(2018.8.10)
国際公開日 平成31年2月28日(2019.2.28)
優先権出願番号 2017161397
優先日 平成29年8月24日(2017.8.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】吉田 道之
【氏名】櫻田 修
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100140671、【弁理士】、【氏名又は名称】大矢 正代
【識別番号】100098224、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 勘次
審査請求 未請求
テーマコード 4G076
Fターム 4G076AA02
4G076AB06
4G076AB10
4G076AB12
4G076BA14
4G076BA39
4G076BC01
4G076BD02
4G076BD03
4G076BH01
4G076CA04
4G076CA26
4G076CA29
4G076FA02
要約 粒子径がより小さく分散性が高い粒子を、高純度で製造することが可能なα-酸化アルミニウム粒子の製造方法、及び、該製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子を、提供する。非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌することにより、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを調製し、乾燥させていない前記前駆体ゾルまたは前記前駆体ゾルの乾燥物を、常温から1000℃~1200℃の温度域まで所要時間0.1秒~60秒で急速加熱し、急速加熱後の処理物を、1000℃~1200℃の温度域から常温~100℃の温度域まで所要時間1秒~10分で急速冷却する製造方法により、フェレ径が2nm以上20nm未満で、円形度が0.82~0.86のα-酸化アルミニウム粒子を製造する。
特許請求の範囲 【請求項1】
非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌することにより、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを調製し、
乾燥させていない前記前駆体ゾルまたは前記前駆体ゾルの乾燥物を、常温から1000℃~1200℃の温度域まで所要時間0.1秒~60秒で急速加熱し、
急速加熱後の処理物を、1000℃~1200℃の温度域から常温~100℃の温度域まで所要時間1秒~10分で急速冷却することにより、
フェレ径が2nm以上20nm未満であるα-酸化アルミニウム粒子を製造する
ことを特徴とするα-酸化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記急速加熱は、乾燥させていない前記前駆体ゾルをミスト状にして温度1000℃~1200℃の雰囲気に噴霧することにより行い、
前記急速冷却は、前記急速加熱により生成したα-酸化アルミニウム粒子を、温度1000℃~1200℃の雰囲気外に落下させて冷却することにより行う
ことを特徴とする請求項1に記載のα-酸化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項3】
前記急速加熱は、乾燥させていない前記前駆体ゾルをミスト状にして温度1000℃~1200℃のバーナーによる加熱域に吹き付けることにより行い、
前記急速冷却は、前記急速加熱により生成したα-酸化アルミニウム粒子を、前記バーナーによる加熱域外に落下させて冷却することにより行う
ことを特徴とする請求項1に記載のα-酸化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項4】
非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌することにより、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを調製し、
乾燥させていない前記前駆体ゾルまたは前記前駆体ゾルの乾燥物を収容させた容器を、常温から1000℃~1200℃の温度域まで、所要時間0.1秒~60秒で移動させることにより急速加熱し、
急速加熱後の処理物を収容している前記容器を、1000℃~1200℃の温度域から常温~100℃の温度域まで、所要時間1秒~10分で移動させて急速冷却することにより、
フェレ径が2nm以上20nm未満であるα-酸化アルミニウム粒子を製造する
ことを特徴とするα-酸化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項5】
フェレ径が2nm以上20nm未満であり、
円形度が0.82~0.86である
ことを特徴とするα-酸化アルミニウム粒子。
【請求項6】
個数割合で少なくとも90%の粒子のフェレ径が10nm未満である
ことを特徴とする請求項3に記載のα-酸化アルミニウム粒子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、α-酸化アルミニウム粒子の製造方法、及び、該製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α-酸化アルミニウム(α-アルミナ、コランダム)は、硬度が高く、電気絶縁性、化学的な安定性、機械的強度など諸特性のバランスが良いこと、クラーク数の高い元素により構成されている材料であるため、セラミックス材料としては比較的安価で入手しやすいことから、産業界で非常に多用されているセラミックス材料の一つである。
【0003】
α-酸化アルミニウムの一般的な製造方法は、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランダイト等の水酸化アルミニウムや、ベーマイト(AlO(OH))を加熱することにより、γ-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナ、ρ-アルミナ、χ-アルミナ等の中間アルミナを経て、α-酸化アルミニウムを生成させるというものである。このように中間アルミナを経由するα-酸化アルミニウムの生成には、出発原料や焼成条件の相違によって、種々の生成ルートがあることが知られている。しかしながら、どの生成ルートを経るにしても、α-酸化アルミニウムを生成させるために、従来では約1300℃以上という高温で焼成していた。このような高温で長時間の焼成を行う場合、生成したα-酸化アルミニウムの結晶は、合体と成長を経て1μmを超える粒子径となることが知られている。
【0004】
一方、セラミックスの粒子はナノオーダーサイズとなると、粒子径がそれより大きい粒子にはない特性が出現すること、透光性材料や分離膜の中間層など新たな用途が創出されることから、従前より、より微細な粒子を得る試みがなされている。上記のように産業界で多用されているα-酸化アルミニウムについても、より微細な粒子を得ることが要請されており、種々の製造方法が試みられている。
【0005】
例えば、アルミニウムアルコキシドを60℃以下で加水分解させた加水分解物に種結晶を分散させ、950℃以下で加熱することによって、粒子同士のネッキングが少ない酸化アルミニウムを生成させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の方法により得られるα-酸化アルミニウムは、一次粒子が50nm以上に成長している上に、強く凝集して200nm以上の凝集体となっている。凝集が強い(分散性が低い)と、たとえ一次粒子が小さいとしても、微細な粒子ならではの特性は発揮されない。
【0006】
また、アルミニウムアルコキシドを原料としたゾルゲル法によりα-酸化アルミニウムを製造する場合に、界面活性剤を添加することにより、20nm~30nmの粒子を得たとの報告がなされている(非特許文献1)。しかしながら、非特許文献1の技術では、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)やビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(Na(AOT))を使用しており、焼成後に酸化アルミニウムの構成元素以外の元素が不純物として残存する。特に、ナトリウムのようなアルカリ金属は、セラミックスの高温下での特性に大きな影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-199567号公報
【0008】

【非特許文献1】F. Mirjalili et. al., “Size-controlled synthesis of nano α-alumina particles through the sol-gel method”, Ceramics International, 2010, 36, p.1253‐1257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、粒子径がより小さく分散性が高い粒子を、高純度で製造することが可能なα-酸化アルミニウム粒子の製造方法、及び、該製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法(以下、単に、「製造方法」と称することがある)は、
「非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌することにより、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを調製し、
乾燥させていない前記前駆体ゾルまたは前記前駆体ゾルの乾燥物を、常温から1000℃~1200℃の温度域まで所要時間0.1秒~60秒で急速加熱し、
急速加熱後の処理物を、1000℃~1200℃の温度域から常温~100℃の温度域まで所要時間1秒~10分で急速冷却する」ものである。
【0011】
本構成の製造方法により、詳細は後述するように、粒子径(フェレ径)が2nm以上20nm未満という非常に微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。これは、常温から1000℃~1200℃の温度域まで所要時間0.1秒~60秒という非常に短い時間で昇温させる急速加熱を行うため、加熱により生成したα-酸化アルミニウム粒子の成長が進行しないためと考えられる。また、このように非常に短い時間の加熱でα-酸化アルミニウム粒子が生成するのは、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾル(以下、単に「前駆体ゾル」と称することがある)及びその乾燥物が、高い反応性を有しているためと考えられた。
【0012】
ここで、急速加熱の所要時間0.1秒~60秒は、前駆体ゾルからα-酸化アルミニウムが生成し、且つ、α-酸化アルミニウム粒子の粒子成長が抑制される条件である。粒子成長をより抑制するためには、所要時間は短いほど望ましく、1秒以下とすると好適である。また、前駆体ゾルをミスト状にして加熱することにより、或いは、加熱の手段をバーナーによる直接加熱とすることにより、常温から1000℃~1200℃の温度域まで、瞬間的(所要時間0.1秒~1秒)に昇温させる急速加熱を行うことができる。なお、常温から1000℃~1200℃の温度域までの所要時間が300秒を超えると、α-酸化アルミニウムが生成しないという知見を得ている。
【0013】
急速加熱後の処理物は、常温~100℃の温度域まで所要時間1秒~10分で降温させる急速冷却を行うため、余熱による粒子生成が抑制されると考えられる。粒子成長をより抑制するためには、所要時間は短いほど望ましく、能動的に冷却する手段を使用することによって所要時間を1分以下とすることがより望ましく、10秒以下とすると好適である。また、ミスト状の前駆体ゾルから、個々の粒子が空間に分離して浮遊する状態で生成させたα-酸化アルミニウムを冷却することにより、或いは、直接加熱していたバーナーの停止によって冷却することにより、極めて短時間(所要時間1秒~2秒)で冷却する急速冷却を行うことができる。
【0014】
なお、「フェレ径」(定方向接線径)は、粒子を撮影した二次元画像の画像処理において、定めた一つの方向に平行な線を粒子に外接させたとき、粒子を挟むように接している二本の平行線間の距離を、粒子径としたものである。
【0015】
また、本構成の製造方法により、詳細は後述するように、分散性が非常に高く、単分散に近い分散を示すα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0016】
更に、本構成の製造方法では、焼成によって除かれるC,H,Oの他は、酸化アルミニウムの構成元素以外の元素を含む他の成分を添加しておらず、ボールミリングなど不純物の混入の原因となる処理も行わない。従って、非晶質の水酸化アルミニウム及びカルボン酸として高純度のものを使用するだけで、高純度のα-酸化アルミニウム粒子を得ることが可能である。
【0017】
従って、本構成の製造方法は、簡易に調製した前駆体ゾルを急速加熱・急速冷却するという非常に簡易かつ所要時間の短い方法でありながら、2nm以上20nm未満という非常に微細な大きさで、分散性が高く、高純度のα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。なお、本構成の製造方法では、水酸化アルミニウムとして非晶質のものを使用するが、結晶構造を有する水酸化アルミニウムを原料とした場合は、カルボン酸と混合し撹拌してもα-酸化アルミニウムの前駆体ゾルは得られない。その理由は明らかではないが、結晶が極めて微小で秩序ある構造ではない不安定な状態が、前駆体ゾルの生成に有利に作用しているものと考察している。
【0018】
本発明にかかるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法は、上記構成において、
「前記急速加熱は、乾燥させていない前記前駆体ゾルをミスト状にして温度1000℃~1200℃の雰囲気に噴霧することにより行い、前記急速冷却は、前記急速加熱により生成したα-酸化アルミニウム粒子を、温度1000℃~1200℃の雰囲気外に落下させて冷却することにより行う」ものとすることができる。或いは、「前記急速加熱は、乾燥させていない前記前駆体ゾルをミスト状にして温度1000℃~1200℃のバーナーによる加熱域に吹き付けることにより行い、前記急速冷却は、前記急速加熱により生成したα-酸化アルミニウム粒子を、前記バーナーによる加熱域外に落下させて冷却することにより行う」ものとすることができる。
【0019】
本発明にかかるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法は、
「非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌することにより、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを調製し、
乾燥させていない前記前駆体ゾルまたは前記前駆体ゾルの乾燥物を収容させた容器を、常温から1000℃~1200℃の温度域まで、所要時間0.1秒~60秒で移動させることにより急速加熱し、
急速加熱後の処理物を収容している前記容器を、1000℃~1200℃の温度域から常温~100℃の温度域まで、所要時間1秒~10分で移動させて急速冷却する」ものであってもよい。
【0020】
本構成では、前駆体ゾルまたは前駆体ゾルの乾燥物を容器に収容しておき、常温の空間から1000℃~1200℃に維持された空間まで移動させるため、短時間での急速加熱を行い易い。また、急速加熱後の処理物を収容している容器を、1000℃~1200℃の空間から常温~100℃の空間まで移動させるため、短時間での急速冷却を行い易い。そして、このように容易に行われる急速加熱・急速冷却によって、上述したように、2nm以上20nm未満という非常に微細な大きさで、分散性が高く、高純度のα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0021】
次に、本発明にかかるα-酸化アルミニウム粒子は、
「フェレ径が2nm以上20nm未満であり、円形度が0.82~0.86である」ものである。
【0022】
これは、上記構成の製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子の構成である。ところで、粒子径の大きいα-酸化アルミニウム粒子を、粉砕し分級するという作業を、膨大な労力と時間をかけて行えば、非常に微細な粒子を得ることができるかもしれない。しかしながら、粉砕を経て得た粒子は、必然的に尖った角部を有している。これに対し、上記の製造方法では、粉砕の工程を有していないため、得られるα-酸化アルミニウム粒子は尖った角部を有しておらず、球形に近い形状である。粒子の形状を評価するために円形度を測定したところ、詳細は後述するように、0.82~0.86の範囲であった。このように、非常に微細で、且つ、球形に近い形状のα-酸化アルミニウム粒子は、上記の製造方法によって初めて得られたものである。
【0023】
ここで、「円形度」は、二次元形状の面積をS(m)、周囲の長さをL(m)としたときに、(4×円周率×S)をLで除算した数値であり、真円の円形度は1.0である。粒子を撮影した二次元画像の多数(多方向から撮影された二次元画像)について、粒子の円形度を計測することにより、立体形状である粒子がどの程度球に近い形状であるかを評価することができる。
【0024】
本発明にかかるα-酸化アルミニウム粒子は、上記構成に加えて、
「個数割合で少なくとも90%の粒子のフェレ径が10nm未満である」ものとすることができる。
【0025】
上記構成の製造方法によれば、ほとんどの粒子の粒子径が10nm未満という、従来技術では得られなかった極めて微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、粒子径がより小さく分散性が高い粒子を、高純度で製造することが可能なα-酸化アルミニウム粒子の製造方法、及び、該製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)本発明の第一実施形態であるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法の工程図であり、(b)本発明の第二実施形態であるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法の工程図である。
【図2】非晶質の水酸化アルミニウムをアルミニウム塩から製造する方法の工程図である。
【図3】急速加熱及び急速冷却の工程に使用する急速加熱冷却装置の構成図である。
【図4】α-酸化アルミニウム粒子の前駆体ゾルの乾燥物のX線回折パターンである。
【図5】加熱時間の異なる試料について、急速加熱及び急速冷却後のX線回折パターンを対比して示す図である。
【図6】実施例1の試料S1-125(加熱温度1200℃、加熱時間50秒)の(a)透過型電子顕微鏡による観察像と電子線解析像、及び、(b)透過型電子顕微鏡による観察像(図6(a)とは異なる倍率)である。
【図7】実施例1の試料S1-125(加熱温度1200℃、加熱時間50秒)の(a)粒子径分布図、及び、(b)フェレ径に対する円形度のグラフである。
【図8】(a)実施例2の試料S2-105(加熱温度1000℃、加熱時間50秒)の透過型電子顕微鏡による観察像、及び、(b)実施例2の試料S2-125(加熱温度1200℃、加熱時間50秒)の透過型電子顕微鏡による観察像である。
【図9】実施例2の試料S2-105(加熱温度1000℃、加熱時間50秒)の(a)粒子径分布図、及び、(b)フェレ径に対する円形度のグラフである。
【図10】実施例2の試料S2-125(加熱温度1200℃、加熱時間50秒)の(a)粒子径分布図、及び、(b)フェレ径に対する円形度のグラフである。
【図11】アルミニウム水酸化物の水における溶解平衡を濃度及びpHとの関係で示した図である。
【図12】非晶質の水酸化アルミニウムのX線回折パターンである。
【図13】粉砕により得た酸化アルミニウム粒子の透過型電子顕微鏡による観察像である(対比のために、他者の文献から引用)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態であるα-酸化アルミニウム粒子の製造方法、及び、その製造方法により製造されるα-酸化アルミニウム粒子について、図1乃至図10を用いて説明する。

【0029】
第一実施形態のα-酸化アルミニウムの製造方法は、図1(a)に示すように、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを得る工程P11と、前駆体ゾルを乾燥させる工程P12と、前駆体ゾルの乾燥物を急速加熱する工程P13と、急速加熱による処理物を急速冷却する工程P14と、を具備している。

【0030】
より詳細に説明すると、工程P11では、非晶質の水酸化アルミニウム、水、及び、カルボン酸を混合・撹拌する。このような簡易な方法で、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを得ることができる。ここで、「カルボン酸」としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸を例示することができる。

【0031】
「非晶質の水酸化アルミニウム」とは、結晶が極めて微小で秩序ある構造を取っておらず、図12に例示するように、X線回折パターンにピークが表れない水酸化アルミニウムを指している。ここで、図12のX線回折パターンは、下記の条件で測定したものである。
粉末X線回折装置:リガク製、RINT-Ultima III/PC
管球:CuKα線
出力:電圧40kV,電流40mA
ステップ幅:0.02°(回折角度10°~70°)
計測速度:2°/min

【0032】
水酸化アルミニウムは、非晶質であれば粉末として市販されているものも使用可能であるが、アルミニウム塩から生成させた水酸化アルミニウムの沈殿物を、乾燥させることなく使用することもできる。後者の場合、非晶質の水酸化アルミニウムは、図2に示すように、アルミニウム塩を水と混合・撹拌しアルミニウム塩の水溶液を調製する工程P21と、アルミニウム塩の水溶液のpHを4~11とし、水酸化アルミニウムの沈殿物を生成させる工程P22と、生成した水酸化アルミニウムを溶媒と分離し洗浄する工程P23と、を経て得ることができる。「アルミニウム塩」としては、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩を使用することができる。

【0033】
図11に、アルミニウム水酸化物の水における溶解平衡を、水溶液の濃度及びpHとの関係で示す。この図から分かるように、工程P22においてアルミニウム塩の水溶液のpHを4~11とすることにより、水酸化アルミニウムが沈殿する。ここで、図11は、下記の文献に掲載された溶解度積のデータに基づいて作成した図である。
G.Charlot著、曽根興三・田中元治訳、「定性分析化学II 溶液中の化学反応 改訂版」共立出版、1974年、p.291

【0034】
このように、アルミニウム塩の水溶液の液性を調整して沈殿させた水酸化アルミニウムであって、乾燥させていないゲル状の水酸化アルミニウムでは、結晶が極めて微小で秩序ある構造ではない非常に不安定な状態にあると考えられる。そのため、カルボン酸との混合・撹拌によりα-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを生成させる原料とする非晶質の水酸化アルミニウムとして、好適である。

【0035】
工程P12では、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを温度100℃~150℃で乾燥させる。これにより、嵩高いふんわりとした乾燥物となる。

【0036】
工程P13及び工程P14には、図3に示す急速加熱冷却装置1を使用することができる。急速加熱冷却装置1は、加熱炉10と、冷却装置20と、小型の容器30とを備えている。加熱炉10は、上下方向に貫通した縦型管状炉である。冷却装置20は、パイプ21aを介して流入しパイプ21bを介して流出する水を循環させる水冷装置21mと、水冷装置21mの上に載置された冷却板22とからなり、冷却板22は熱伝導率の高い金属製、例えば銅製である。冷却装置20は、加熱炉10において上下に貫通している空間の真下に設置されている。

【0037】
容器30は、耐熱性に優れる材料製である。耐熱性のみを考えればセラミックス製も想到し得るが、セラミックスに比べて熱伝導率が高い点で、加熱炉10における加熱温度より融点の高い金属製、例えば白金製が望ましい。容器30は、耐熱性に優れる材料製のワイヤ35で吊り下げられており、その昇降と停止を制御し、下降速度を調整する装置(図示を省略)に接続されている。容器30は、ワイヤ35を介して下降させたときに、加熱炉10の内部空間を通過し、水冷装置21mの上に載置された冷却板22の上に至る位置関係で吊り下げられている。

【0038】
工程P13では、加熱炉10内の温度を、予め1000℃~1200℃の範囲内で、一定の温度となるように保持しておく。前駆体ゾルの乾燥物を収容させた容器30を、加熱炉10の上方の常温の雰囲気から、加熱炉10内の1000℃~1200℃の温度域まで一気に移動させる。容器30を1000℃~1200℃の温度域に位置させた状態で、短時間だけ保持してもよい。保持時間は30秒~2000秒とすることができるが、粒子成長を抑制するために1000秒以下とすることが望ましく、100秒以下とすることがより望ましい。

【0039】
なお、1000℃~1200℃の範囲の温度域は、上記のように加熱炉10内の空間の温度域とする他、バーナーによる加熱により形成される温度域とすることができる。

【0040】
工程P14では、ワイヤ35を介して容器30を一気に下降させることにより、水冷装置21mにより冷却されている空間に移動させ、冷却板22上に載置して急速冷却する。この工程P14では少なくとも100℃まで冷却すればよいが、冷却装置20を使用した能動的な冷却により常温まで速やかに冷却される。

【0041】
反応性が高い前駆体ゾルの乾燥物を急速加熱し急速冷却する上記の工程により、加熱により生じたα-酸化アルミニウム粒子の成長が抑制され、非常に微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。

【0042】
次に、第二実施形態のα-酸化アルミニウム粒子の製造方法について、図1(b)を用いて説明する。第二実施形態の製造方法は、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを得る工程P11と、前駆体ゾルを急速加熱する工程P13と、急速加熱により処理物を急速冷却する工程P14と、を具備している。第一実施形態の製造方法との相違は、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを乾燥させることなく、工程P13及び工程P14に供することである。工程P13及び工程P14では、第一実施形態と同一の急速加熱冷却装置1を使用する方法、すなわち、乾燥させていない前駆体ゾルを容器に収容して急速加熱及び急速冷却する方法が可能である。

【0043】
或いは、乾燥させていない前駆体ゾルに対して行う工程P13及び工程P14を、次のような工程とすることができる。
(1)前駆体ゾルをミスト状にして縦型管状炉内の加熱温度域に噴霧し、生成したα-酸化アルミニウム粒子を加熱温度域外に落下させて冷却する工程
(2)ミスト状にした前駆体ゾルをバーナーによる加熱域に吹き付けて加熱し、生成したα-酸化アルミニウム粒子をバーナーによる加熱域外に落下させて冷却する工程
(3)前駆体ゾルをバーナーで加熱しながら基体にミスト状に吹き付けて、基体上にα-酸化アルミニウム粒子を生成させ、バーナー加熱の停止により冷却する工程
(4)前駆体ゾルを基体に塗布しておき、バーナーで加熱することにより基体上でα-酸化アルミニウム粒子を生成させ、バーナー加熱の停止により冷却する工程

【0044】
前駆体ゾルをミスト状にして加熱することにより(方法(1),(2),(3))、或いは、前駆体ゾルをバーナーで直接加熱することにより(方法(2),(3),(4))、常温から1000℃~1200℃の温度域まで、瞬間的(所要時間0.1秒~1秒)に加熱する急速加熱を行うことができる。また、ミスト状の前駆体ゾルから個々の粒子が空間に分離して浮遊する状態で生成させたα-酸化アルミニウム粒子を冷却することにより(方法(1),(2))、或いは、バーナーによる直接加熱の停止によって冷却することにより(方法(3),(4))、1秒~2秒という極めて短い所要時間(冷却速度、500℃/秒~1200℃/秒)で、100℃以下の温度まで急速冷却することができる。

【0045】
このように、乾燥させていない前駆体ゾルの状態のまま急速加熱し急速冷却する製造方法によっても、第一実施形態と同様に、加熱により生じたα-酸化アルミニウム粒子の成長が抑制され、非常に微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
硝酸アルミニウム9水和物(試薬特級、純度99.976%以上)を純水に溶解させて調製した0.5mol/Lの水溶液500mLに、1.5mol/Lのアンモニア水を滴下し、pHを6とした。生じた水酸化アルミニウムの白色沈殿を遠心分離により分取した。沈殿物に純水を加えて撹拌し遠心分離する洗浄操作を、3回繰り返した。洗浄後の水酸化アルミニウムの沈殿物を乾燥させることなく、ギ酸(ナカライテスク製、試薬特級、純度98%~100%)を加えて撹拌し、無色のα-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを得た。水酸化アルミニウムに対するギ酸の割合は、アルミニウム1モルに対しギ酸3モルとした。
【実施例】
【0047】
α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを、150℃に保持された乾燥器内で乾燥し、乾燥物を得た。この乾燥物(粉末)について、X線回折パターンを測定したところ、図4に示すように、水酸化ギ酸アルミニウム(Al(HCOO)(OH))のピークが観察された。なお、X線回折パターンの測定条件は、以下のようである。
粉末X線回折装置:リガク製、MiniFlex600
管球:CuKα線
出力:電圧40kV,電流10mA
ステップ幅:0.02°(2θ=10°~70°)
計測速度:2°/min
【実施例】
【0048】
前駆体ゾルの乾燥物を、白金製の容器(直径1cm、高さ2cm)内に、高さ80%まで充填した。上記構成の急速加熱冷却装置を使用し、縦型管状の加熱炉を、予め温度1000℃または1200℃で1時間以上保持することにより、内部空間を均熱帯としておいた。前駆体ゾルの乾燥物を収容した容器を白金線で吊り下げ、加熱炉の内部空間に所要時間1秒で移動させた。容器を加熱炉内に位置させた状態で、10秒~1000秒の所定時間だけ保持した。その後、容器を降下させることにより水冷装置で冷却されている空間に移動させ、冷却板上に載置して急速冷却した。8秒~10秒で常温に達したため、冷却速度は100℃/sec~150℃/secであった。
【実施例】
【0049】
上記の処理後の粉末について、X線回折パターンを測定した。X線回折パターンの測定条件は、前駆体ゾルを測定した際の上記条件と同一である。例として、加熱温度(加熱炉内の温度)が1200℃で、加熱時間がそれぞれ10秒、30秒、50秒、70秒、100秒である試料についてのX線回折パターンを、図5に示す。
【実施例】
【0050】
図5から明らかなように、加熱時間が10秒の試料では、α-酸化アルミニウムの前駆体ゾルと同様に、水酸化ギ酸アルミニウムのピークが観察された。加熱時間30秒では、水酸化ギ酸アルミニウムのピークは消失し、中間アルミナであるγ-アルミナのピークが僅かに認められた。加熱時間50秒では、α-酸化アルミニウムのシャープなピークがγ-アルミナのピークと共に観察され、加熱時間が70秒となるとα-酸化アルミニウムのピークのみとなった。α-酸化アルミニウムのピークの強度は、加熱時間が50秒から100秒まで増加するのに伴い、大きくなった。図示を省略するが、加熱温度が1000℃の場合、加熱温度が1200℃の場合に比べて、それぞれの加熱時間の試料で認められたα-酸化アルミニウムのピークの強度は小さかったが、加熱時間の増加に伴いピーク強度が増す同一の傾向を示した。何れの加熱温度においても、加熱時間が100秒を超えると、粒子成長が認められた。
【実施例】
【0051】
急速加熱・急速冷却後の粉末のうち、α-酸化アルミニウムのピークが観察された粉末(焼成物)について、透過型電子顕微鏡で観察を行った。その結果、一次粒子の形状が明瞭に観察された。ほとんどの粒子が10nm以下の微細な粒子であり、形状は球に近く、かつ凝集することなく良好に分散していた。例として、加熱温度1200℃、加熱時間50秒の試料S1-125の観察像を、図6(a),(b)に示す。また、図6(a)では、同一視野における電子線回折像を共に示している。この電子線回折像から、観察された粒子はα-酸化アルミニウムの粒子であることが確認された。
【実施例】
【0052】
透過型電子顕微鏡による観察像の画像処理により、粒子のフェレ径を計測した。フェレ径の頻度分布(個数基準)と累積分布(個数基準)を図7(a)に示す。フェレ径の最小値は2.0nm、最大値は15.4nmであり、平均値は5.7nmであった。そして、個数割合で99%の粒子はフェレ径が2nm~12.2nmの範囲であり、98%の粒子はフェレ径が2nm~10.6nmの範囲であり、95%の粒子はフェレ径が2nm~9.4nmの範囲であり、90%の粒子はフェレ径が2nm~8.6nmの範囲であった。
【実施例】
【0053】
また、図6(b)から分かるように、粒子は尖った角部を有しておらず、球に近い形状であった。透過型電子顕微鏡による観察像の画像処理により円形度を求めたところ、平均の円形度は0.82であった。フェレ径に対する円形度を図7(b)に示す。フェレ径が10nm未満の範囲では、円形度もほぼ0.8以上の範囲であり、個数は多くないもののフェレ径が10nm以上の粒子では、円形度が低下していることが分かる。
【実施例】
【0054】
更に、図6(a),(b)から分かるように、粒子はほとんど凝集しておらず、高い分散性を示している。透過型電子顕微鏡による観察像において、隣接する一次粒子と接したり重なっていたりする一次粒子の個数割合は、7%であった。なお、画像処理によりフェレ径、円形度、及び、粒子の凝集の程度の評価のために計測した粒子の個数は、702個であった。
【実施例】
【0055】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で得たα-酸化アルミニウムの前駆体ゾルを、乾燥させることなく、実施例1で使用したものと同一の容器に、高さ80%まで充填した。実施例1と同様に、急速加熱冷却装置を使用し、内部空間が温度1000℃または1200℃の均熱帯となった縦型管状の加熱炉内に、所要時間1秒で容器を移動させた。容器を加熱炉内に位置させた状態で、10秒~1000秒の所定時間だけ保持した。その後、容器を降下させることにより、水冷装置で冷却されている空間まで移動させ、冷却板上に載置して急速冷却した。実施例1と同様に8秒~10秒で常温に達したため、冷却速度は100℃/sec~150℃/secであった。
【実施例】
【0056】
処理後の粉末について、実施例1と同一の条件でX線回折パターンを測定した。前駆体ゾルをそのまま熱処理した実施例2では、前駆体ゾルの乾燥物を熱処理した実施例1において、同一の加熱温度及び加熱時間で処理した試料のX線回折パターンと比べて、α-酸化アルミニウムのピーク強度は大きいものであった。例えば、加熱温度が1000℃で加熱時間が50秒の場合、前駆体ゾルの乾燥物を熱処理した実施例1のX線回折パターンではα-酸化アルミニウムのピークが小さかったのに対し、前駆体ゾルをそのまま熱処理した実施例2のX線回折パターンでは、α-酸化アルミニウムのピークが大きく明瞭に観察された。
【実施例】
【0057】
α-酸化アルミニウムのピークが観察された粉末(焼成物)について、透過型電子顕微鏡で観察を行った。その結果、実施例1と同様に、一次粒子の形状が明瞭に観察された。ほとんどの粒子が10nm以下の微細な粒子であり、形状は球に近く、かつ凝集することなく良好に分散していた。例として、加熱温度1000℃、加熱時間50秒の試料S2-105、及び、加熱温度1200℃、加熱時間50秒の試料S2-125について、透過型電子顕微鏡による観察像をそれぞれ図8(a),(b)に示す。図示を省略するが、それぞれの試料の電子線回折像から、粒子がα-酸化アルミニウムであることが確認された。
【実施例】
【0058】
更に、透過型電子顕微鏡による観察像の画像処理によって、フェレ径を計測した。加熱温度1000℃、加熱時間50秒の試料S2-105について、フェレ径の頻度分布(個数基準)と累積分布(個数基準)を図9(a)に示す。フェレ径の最小値は2.0nm、最大値は9.5nmであり、平均値は4.6nmであった。そして、個数割合で99%の粒子はフェレ径が2nm~8.3nmの範囲であり、98%の粒子はフェレ径が2nm~7.1nmの範囲であり、95%の粒子はフェレ径が2nm~6.7nmの範囲であり、90%の粒子はフェレ径が2nm~6.3nmの範囲であった。
【実施例】
【0059】
図8(a)から分かるように、粒子は尖った角部を有しておらず、球に近い形状であった。透過型電子顕微鏡による観察像の画像処理により円形度を求めたところ、平均の円形度は0.85であった。フェレ径に対する円形度を図9(b)に示す。全ての粒子のフェレ径が10nm未満であるためか、フェレ径によらず円形度はほぼ0.8以上の範囲であった。
【実施例】
【0060】
更に、図8(a)から分かるように、粒子はほとんど凝集しておらず、高い分散性を示している。透過型電子顕微鏡による観察像において、隣接する一次粒子と接したり重なっていたりする一次粒子の個数割合は、5%であった。なお、画像処理によりフェレ径、円形度、及び、粒子の凝集の程度の評価のために計測した粒子の個数は、234個であった。
【実施例】
【0061】
また、加熱温度1200℃、加熱時間50秒の試料S2-125について、フェレ径の頻度分布(個数基準)と累積分布(個数基準)を図10(a)に示す。フェレ径の最小値は2.4nm、最大値は16.4nmであり、平均値は6.5nmであった。そして、個数割合で99%の粒子はフェレ径が2nm~14.0nmの範囲であり、98%の粒子はフェレ径が2nm~12.3nmの範囲であり、95%の粒子はフェレ径が2nm~10.6nmの範囲であり、90%の粒子はフェレ径が2nm~9.3nmの範囲であった。
【実施例】
【0062】
図8(b)から分かるように、粒子は尖った角部を有しておらず、球に近い形状であった。透過型電子顕微鏡による観察像の画像処理により円形度を求めたところ、平均の円形度は0.86であった。フェレ径に対する円形度を図10(b)に示す。加熱温度及び加熱時間が同一である実施例1の試料S1-125に比べて、円形度のばらつきが小さく、フェレ径によらず円形度はほぼ0.8以上の範囲であった。
【実施例】
【0063】
更に、図8(b)から分かるように、粒子はほとんど凝集しておらず、高い分散性を示している。透過型電子顕微鏡による観察像において、隣接する一次粒子と接したり重なっていたりする一次粒子の個数割合は、20%であった。なお、画像処理によりフェレ径、円形度、及び、粒子の凝集の程度の評価のために計測した粒子の個数は、421個であった。
【実施例】
【0064】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、反応性の高い前駆体ゾルまたはその乾燥物を、常温から温度1000℃~1200℃まで急速加熱し急速冷却することにより、フェレ径が2nm以上20nm未満という非常に微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができる。特に、前駆体ゾルのまま乾燥させることなく温度1000℃で加熱した場合は、全数の粒子のフェレ径が10nm未満という、非常に微細なα-酸化アルミニウム粒子を得ることができた。また、前駆体ゾルの乾燥物、または前駆体ゾルのまま温度1200℃で加熱した場合を含め、α-酸化アルミニウム粒子を撮影した二次元画像において230個以上の粒子を計測したとき、個数割合で99%の粒子のフェレ径が2nm以上14nm未満の範囲内にあり、個数割合で90%というほとんどの粒子のフェレ径が2nm以上10nm未満の範囲であった。
【実施例】
【0065】
また、得られたα-酸化アルミニウム粒子は、尖った角部を有していない球形に近い形状であり、円形度は0.82~0.86の範囲であった。対比のために、粉砕により数十nm~100nmの酸化アルミニウム粒子を得たと報告している他者の文献(S. Mende et. al., “Mechanical production and stabilization of submicron particles in stirred media mills”, Powder Technology, 2003, 132, p.64-73)に掲載されている透過型電子顕微鏡による観察像を図13に示す。この写真から明らかなように、粉砕を経た粒子は角張った形状をしている。この写真を使用して、上記の実施例と同様の方法で円形度を求めたところ、円形度は0.70であった。この値と比べると、本発明の実施例における円形度の範囲0.82~0.86は、かなり高い値である。従って、粉砕し分級するという作業を膨大な労力と時間をかけて行うことによって微細な粒子が得られたとしても、本発明の実施例が示しているような高い円形度の粒子を得ることはできないと考えられた。
【実施例】
【0066】
加えて、得られたα-酸化アルミニウム粒子は、分散性が非常に高く単分散に近いものであった。具体的には、何れの実施例においても、α-酸化アルミニウム粒子を撮影した二次元画像において、230個以上の一次粒子を計測したとき、隣接している一次粒子と接したり重なったりしている粒子の個数割合は5%~20%であった。
【実施例】
【0067】
また、前駆体ゾルの乾燥物を急速加熱・急速冷却する場合に比べて、前駆体ゾルを液体のままの状態で急速加熱・急速冷却する場合の方が、より低温でα-酸化アルミニウム粒子が生成し、より粒子径の小さい粒子を得ることができ、円形度も高いという知見が得られた。加えて、加熱温度が同一であった実施例の対比により、前駆体ゾルの乾燥物を急速加熱・急速冷却する場合に比べて、前駆体ゾルを液体のままの状態で急速加熱・急速冷却する場合の方が、分散性の高い粒子を得ることができた。なお、前駆体ゾルを乾燥物とすることにより、前駆体ゾルから直接にα-酸化アルミニウムを得る場合に比べて、最終的なα-酸化アルミニウムの収率を高いものとすることができる。
【実施例】
【0068】
更に、本実施形態の製造方法では、酸化アルミニウムの構成元素以外の元素を含む成分を添加しておらず、ボールミリングなど不純物の混入の原因となる処理を行わない。また、非晶質の水酸化アルミニウムをアルミニウム塩から製造する場合であっても、原料のアルミニウム塩に由来する陰イオンやpH調整のための成分は、水酸化アルミニウムの沈殿を十分に洗浄することで、焼成前に除くことができる。更に、カルボン酸に由来する元素も、焼成により除かれる。従って、原料のアルミニウム塩として、アルミニウム以外の金属(陽イオン)の含有率が少ない高純度のものを使用し、カルボン酸として高純度のものを使用するだけで、高純度のα-酸化アルミニウム粒子を得ることができるため、市販の試薬のうち高純度のものを選択するのみで、少なくとも99.9%以上の高純度のα-酸化アルミニウム粒子を得ることが可能である。
【実施例】
【0069】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【実施例】
【0070】
例えば、上記の実施形態では、急速加熱冷却装置1における冷却装置20として、水冷装置21mと、これにより冷却される冷却板22とを具備するものを例示した。これに限定されず、冷媒を循環させる冷却装置を使用し、そのケーシングに容器を直接当接させて冷却することもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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