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明細書 :ダイヤモンド被膜体、ダイヤモンド被膜部品及びそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6149272号 (P6149272)
公開番号 特開2014-152394 (P2014-152394A)
登録日 平成29年6月2日(2017.6.2)
発行日 平成29年6月21日(2017.6.21)
公開日 平成26年8月25日(2014.8.25)
発明の名称または考案の名称 ダイヤモンド被膜体、ダイヤモンド被膜部品及びそれらの製造方法
国際特許分類 C23C  28/00        (2006.01)
C23C  16/01        (2006.01)
B23K   1/00        (2006.01)
B23K 101/06        (2006.01)
FI C23C 28/00 D
C23C 16/01
B23K 1/00 330G
B23K 101:06
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2013-026266 (P2013-026266)
出願日 平成25年2月14日(2013.2.14)
審査請求日 平成27年10月19日(2015.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
発明者または考案者 【氏名】本多 正英
【氏名】山本 晃
【氏名】大橋 俊彦
【氏名】筒本 隆博
個別代理人の代理人 【識別番号】100146020、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 善光
【識別番号】100062328、【弁理士】、【氏名又は名称】古田 剛啓
審査官 【審査官】菅原 愛
参考文献・文献 特開平02-106210(JP,A)
実開平03-126600(JP,U)
特開平05-237708(JP,A)
特開平06-008146(JP,A)
特開平08-267644(JP,A)
特開2003-334760(JP,A)
調査した分野 C23C24/00-30/00
特許請求の範囲 【請求項1】
部品の内面に固定可能なダイヤモンド被膜体であって、前記固定先の部品の内面に適応させた形状に形成された気相合成ダイヤモンド膜と、前記気相合成ダイヤモンド膜の表面に形成された膜厚0.01~10mmのめっき層と、を備えたことを特徴とするダイヤモンド被膜体。
【請求項2】
前記めっき層が、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Agのめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被膜体。
【請求項3】
部品の内面に固定可能な請求項1に記載のダイヤモンド被膜体の製造方法であって、
Ta、W、Mo、Si又はSiOのCVDダイヤモンド合成が可能な材料からなり、板状や棒状の、前記固定先の部品の内面形状に適応させた形状からなる基板の表面の全周に亘る気相合成によってダイヤモンド膜を形成するダイヤモンド膜成形工程と、
前記ダイヤモンド膜の表面に、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Agのめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成される膜厚0.01~10mmのめっき層を形成するめっき層形成工程と、
前記めっき層形成工程後に前記基板を、フッ化水素酸及びその混合物、又は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液の強アルカリ性溶液及びその混合物によって化学的に溶解させて除去する、あるいは、引張力を加える物理的な剥離によって除去する基板除去工程と、
を備えることを特徴とするダイヤモンド被膜体製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のダイヤモンド被膜体と、前記部品とを、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面とをろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体のめっき層の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させた、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面とを接着剤の接着手段で固定させた、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面とをボルトナットの締結手段で固定させた、
あるいは、前記部品内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体を挿着し密着させて接着手段を介すことなく固定させた、ことを特徴とするダイヤモンド被膜部品。
【請求項5】
請求項に記載のダイヤモンド被膜体製造工程後に、
前記ダイヤモンド被膜体と前記部品とを、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面との間に介在させたろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体のめっき層の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させる、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面とを接着剤の接着手段で固定させる、
前記ダイヤモンド被膜体のめっき層と前記部品の表面とをボルトナットの締結手段で固定させる、
あるいは、前記部品内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体のめっき層を密着させて接着手段を介すことなく固定させる、
固定化工程を備えることを特徴とするダイヤモンド被膜部品製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細管や金型などの各種の物品においてその外面や内面などの表面をコーティングするダイヤモンド被膜体、ダイヤモンド被膜体を固定したダイヤモンド被膜部品及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種物品(例えば、細管、ノズルあるいは金型等)の内部などの摩耗が激しい部分は頻繁に補修や交換が必要なため、それに要するコストと作業が大きな負担となっている。そのため、従来からこれら部品の耐摩耗性を高めるあらゆる試みがなされてきた。
【0003】
特許文献1には、還元剤を含有する無電解ニッケルめっき浴中に金属材料又は非金属材料を浸漬して、ニッケル層を形成し、前記無電解めっき済み材料の上にダイヤモンド膜を蒸着させる連続工程からなるダイヤモンド膜の蒸着法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、細管内壁へのめっき被膜形成であって、該細管の内側と外側とに存在するそれぞれのめっき液の濃度を強制的に同等に保つことによって前記細管内壁にめっき皮膜を形成する細管内壁へのめっき方法が開示されている。
【0005】
また、一般的に耐摩耗性を高める方法の一つとして、ダイヤモンドコーティングする方法が使用されている。このダイヤモンドコーティングとは、ダイヤモンド構造であるSP結合している炭素原子を主成分とする膜で被覆することであり、ダイヤモンド膜は、例えば熱フィラメントCVD法などにより、メタンなどの炭化水素ガスと水素を原料として合成することができる。このダイタモンド膜をX線回折法やラマン分光法で分析すると、ダイヤモンドを示す大きくてシャープなピークと、非晶質状の炭素を示す小さくブロードなピークが見られることから、大部分のダイヤモンド中に若干の非晶質炭素が混在する構造になっている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表平10—505879号公報
【特許文献2】特開2007-169771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術は、ニッケルめっき層とダイヤモンド膜を形成しているが、物品の外側の表面に直接にダイヤモンド膜を蒸着させてコーティングする加工方法であるために、金型の内部、細管の内部、ノズルの内部等の内壁をコーティングすることができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、細管内壁にめっき層を形成できるが、めっき層のみでダイヤモンド膜を形成する技術ではないため、耐摩耗性、耐蝕性又は表面硬さが充分ではないという問題があった。
【0009】
また、一般的に使用されているダイヤモンドコーティングする方法では、例えば熱フィラメントCVD法において、熱フィラメントによって活性な状態に変化した炭化水素ガスと水素は、細管内部に入り難いという性質を持っている。従って、この方法によってダイヤモンドコーティングを施すことは極めて困難であるという問題があった。
【0010】
また、細管などの部品を構成する鉄やニッケル、コバルトなどの材料は、その表面でダイヤモンドをすすに変化させる触媒作用を持っているために、ダイヤモンドコーティングを施すことができないという問題があった。
【0011】
さらに、アルミニウムやプラスチックなどの低融点材料も、ダイヤモンドコーティングする際の基板温度(900℃~1000℃程度)に耐えることができないので、ダイヤモンドコーティングを施すことができないという問題があった。
【0012】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、細管、ノズル又は金型などの各種材料からなる部品の外側の表面や内壁にも形成させることのできる、ダイヤモンドコーティングされたダイヤモンド被膜体、及び前記ダイヤモンド被膜体を固定したダイヤモンド被膜部品、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のダイヤモンド被膜体1は、部品の内面に固定可能なダイヤモンド被膜体1であって、前記固定先の部品の内面に適応させた形状に形成された気相合成ダイヤモンド膜3と、前記気相合成ダイヤモンド膜3の表面に形成された膜厚0.01~10mmのめっき層4と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載のダイヤモンド被膜体1は、請求項1において、前記めっき層4が、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Agのめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載のダイヤモンド被膜体製造方法は、部品の内面に固定可能な請求項1に記載のダイヤモンド被膜体1の製造方法であって、Ta、W、Mo、Si又はSiOのCVDダイヤモンド合成が可能な材料からなり、板状や棒状の、前記固定先の部品の内面形状に適応させた形状からなる基板2の表面の全周に亘る気相合成によってダイヤモンド膜3を形成するダイヤモンド膜成形工程Aと、前記ダイヤモンド膜3の表面に、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Agのめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成される膜厚0.01~10mmのめっき層4形成するめっき層形成工程Bと、前記めっき層形成工程B後に前記基板2を、フッ化水素酸及びその混合物、又は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液の強アルカリ性溶液及びその混合物によって化学的に溶解させて除去する、あるいは、引張力を加える物理的な剥離によって除去する基板除去工程Cとを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載のダイヤモンド被膜部品10は、請求項1に記載のダイヤモンド被膜体1と、前記部品11とを、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させた、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とを接着剤の接着手段で固定させた、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをボルトナットの締結手段で固定させた、あるいは、前記部品11内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体1を挿着し密着させて接着手段を介すことなく固定させたことを特徴とする。
【0017】
請求項に記載のダイヤモンド被膜部品製造方法は、請求項に記載のダイヤモンド被膜体製造工程後に、前記ダイヤモンド被膜体1と前記部品11とを、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面との間に介在させたろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させる、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とを接着剤の接着手段で固定させる、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをボルトナットの締結手段で固定させる、あるいは、前記部品11内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4を密着させて接着手段を介すことなく固定させる、固定化工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1~3のいずれかに記載のダイヤモンド被膜体1は、後に除去される基板2の外面に気相合成によって形成されたダイヤモンド膜3と、ダイヤモンド膜3の外面に形成されためっき層4とを備え、めっき層4の外面を、接着手段5を介して部品11に固定される固定面4aとしたので、あらゆる材料で構成される各種部品に容易に被覆することができる。
【0019】
前記ダイヤモンド被膜体1は、従来のように部品11に例えば熱フィラメントCVD法によって直接コーティングすることによって製作するのではなく、本発明においてはあらかじめ部品とは別途に製作する。そして前記ダイヤモンド被膜体1をダイヤモンドコーティングしたい箇所に接着手段5を介して固定するため、従来ダイヤモンドコーティングができなかった材料や複雑形状の箇所にも容易に設けることができる。
【0020】
例えば、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム合金あるいはプラスチックなどで構成される細管、ノズルあるいは金型の内部などに当該ダイヤモンド被覆体1を設けることができる。
【0021】
また、ダイヤモンド膜3の外面にめっき層4を備えるので、このめっき層4によってダイヤモンド被膜体1を補強することができる。なお、めっき層4を肉厚に形成することで補強効果を高めることができる。
【0022】
請求項に記載のダイヤモンド被膜体1は、請求項1の発明と同じ効果を奏するとともに、めっき層4が、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、AuまたはAgを含んで構成される。これらの材料は補強材として好適であるので、めっき層4を、ダイヤモンド被膜体1を補強する層として活用することができる。
【0023】
請求項に記載のダイヤモンド被膜体製造方法は、請求項1又は2の発明と同じ効果を奏するダイヤモンド被膜体1を容易に製造することができる。
【0024】
請求項に記載のダイヤモンド被膜部品10は、部品11と、部品11の表面に、ろう材を介して、あるいはろう材を介すことなく固定されたダイヤモンド被膜体1とを備えるものであり、前記ダイヤモンド被膜体1が、ダイヤモンド膜3と、ダイヤモンド膜3の表面及び部品11の表面との間に形成されためっき層4とを備える。従って、あらゆる材料で構成された各種の部品11の細部などの所定箇所に、確実にダイヤモンド被膜体1を設けることができる。
【0025】
請求項に記載のダイヤモンド被膜部品製造方法は、請求項の発明と同じ効果を奏するダイヤモンド被膜部品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1における本発明に係るダイヤモンド被膜体を示す部分斜視図である。
【図2】本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法を示す説明図である。
【図4】本発明に係るダイヤモンド被膜部品の実施形態を示す部分断面側面図である。
【図5】図4のA-A線断面図である。
【図6】実施例2における本発明に係るダイヤモンド被膜体を示す断面図である。
【図7】実施例2における本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法を示す説明図である。
【図8】本発明に係るダイヤモンド被膜部品の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】実施例6における本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法で使用する基板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明であるダイヤモンド被膜体1は、部品11の表面に固定可能であって、めっき層4形成後に除去される基板2の表面に気相合成によって形成されたダイヤモンド膜3と、前記ダイヤモンド膜3の表面に形成されためっき層4との2層からなる。

【0028】
前記ダイヤモンド膜3は、ダイヤモンド構造であるSP結合している炭素原子を主成分とする膜であり、前記ダイヤモンド膜3が設けられた後に除去される基板2の表面に気相合成によって形成される。

【0029】
前記めっき層4は、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Ag等のめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成されており、ダイヤモンド膜3の基板2側とは反対側の表面に形成される。めっき層4の材質を例えばCrのような硬質材で形成したり、厚みを厚くすることによって、ダイヤモンド被膜体1に十分な強度を持たせることができる。また、前記めっき層4のダイヤモンド膜3側でない側の表面を、接着手段5を介して部品11に固定される固定面4aとしている。

【0030】
本発明であるダイヤモンド被膜体製造方法は、部品11の表面にダイヤモンド被膜体1を固定させる製造方法であって、ダイヤモンド膜3を形成するダイヤモンド膜形成工程と、前記ダイヤモンド膜3の表面にめっき層4を形成するめっき層形成工程と、前記めっき層形成工程後に前記基板2を除去する基板除去工程とを備えている。以下、ダイヤモンド被膜体製造工程について説明する。

【0031】
まず、ダイヤモンド膜成形工程である。基板2を準備する。前記基板2は、Ta、W、Mo、Si又はSiO等のCVDダイヤモンド合成が可能な材料からなり、さらにCVDダイヤモンド合成が可能であって、前記フッ化水素酸及びその混合物、又は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等の強アルカリ性溶液及びその混合物によって化学的に溶解させて除去される、あるいは、引張力を加える等の物理的な剥離によって除去される材料からなる。

【0032】
また、前記基板2は、板状、棒状、複雑形状等の前記固定先の部品の表面形状に適応させた形状からなる。これにより、細管の内壁面、ノズル内部などの内壁面であって細くて複雑な形状の箇所にも固定可能なダイヤモンド被膜体1を製造することができる。例えば、形成したいダイヤモンド被膜体1の最終形状が例えば円筒形の雌型形状である場合には円柱形の雄型形状とし、その逆に、形成したいダイヤモンド被膜体1の最終形状が雄型形状であれば雌型形状とすることができる。

【0033】
そして、基板2の表面に気相合成によってダイヤモンド膜3を形成する。気相合成は、熱フィラメントCVD法、マイクロ波CVD法、高周波CVD法、直流アーク放電CVD法、直流グロー放電CVD法、燃焼炎CVD法等があり、いずれのCVD法でもよい。また、ダイヤモンド膜3にホウ素を含有させることによって導電性を持たせて、次の工程であるめっき層形成工程Bを電気めっき法によって行うことができる。

【0034】
CVD法における反応装置内で供給する原料ガスに含まれる原料としては、ダイヤモンド膜3の成分を含む原料であればよく、CH、C、C、C1016、CO等の気体、又はCHOH、COH、(CHCO等の液体がある。

【0035】
次に、めっき層形成工程である。前記ダイヤモンド膜3の表面に、Ni、Cu、Cr、Zn、Pd、Rh、Sn、Au、Ag等のめっき可能な金属のうちの少なくとも1つ以上の金属を含んで構成されるめっき層4を形成する工程であり、図3(c)に示すようにダイヤモンド膜3の外周面にめっき層4を形成する。めっき層4形成は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を主成分とする最も実用的なめっき浴であるワット浴を用いて、電気めっき法によって行うことができる。このめっき層4の膜厚は、0.01mm~10mm程度、好ましくは0.1mm~1mm程度とするのが良い。

【0036】
なお、ダイヤモンド膜3に導電性を持たせない場合や、基板2に電極を取付けるのが難しい場合には、無電解めっき浴を用いて、例えばニッケル-リンめっき層やニッケル-ホウ素めっき層等のめっき層4を形成することもできる。

【0037】
めっき層4の厚みを厚くすることによって十分な強度が得られることから、ダイヤモンド膜3とめっき層4の2層からなるダイヤモンド被膜体1のみで、他の部品11に固定することなく、部品11として使用することができる。

【0038】
また、めっき層4にCrを含有させると、前記めっき層4を有するダイヤモンド被膜体1を真空又は不活性ガス環境下で加熱することにより、ダイヤモンド膜3とめっき層4との密着性をさらに高めることができる。

【0039】
次に、基板除去工程である。前記基板2を、フッ化水素酸及びその混合物、又は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等の強アルカリ性溶液及びその混合物によって化学的に溶解させて除去する、あるいは、引張力を加える又は引き剥がす等の物理的な剥離によって除去する。前記剥離によって、ダイヤモンド膜3とめっき層4の2層からなるダイヤモンド被膜体1が完成する。

【0040】
次に、ダイヤモンド被膜部品10を説明する。ダイヤモンド被膜部品10は、前記ダイヤモンド被膜体1と、前記部品11とを、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをテープ状やワイヤ状等の単体としてのろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させた、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とを接着剤等の接着手段で固定させた、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをボルトナット等の締結手段で固定させた、あるいは、前記部品11内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体1を挿着し密着させて接着手段を介すことなく固定させている。

【0041】
前記接着手段としては、ろう材、接着剤、石膏、両面テープなどの接着機能を備えるあらゆるものを使用することができる。ダイヤモンド膜3の表面に形成しためっき層4の上の2層目としてのめっき層の材料にろう材を含有させれば、別途に接着剤を使用しなくても部品11に固定させることができる。

【0042】
次に、ダイヤモンド被膜部品製造方法を説明する。ダイヤモンド被膜部品製造方法は、前記ダイヤモンド被膜体製造工程後に、請求項1に記載のダイヤモンド被膜体1と前記部品11とを、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面との間に介在させたテープ状等の単体としてのろう材を加温させて、又は、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4の上に形成させた2層目である、ろう材の材質を含有させためっき層を加温させて固定させる、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とを接着剤等の接着手段で固定させる、前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4と前記部品11の表面とをボルトナット等の締結手段で固定させる、あるいは、前記部品11内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4を密着させて接着手段を介すことなく固定させる、固定化工程を備える。

【0043】
前記締結手段としては、ボルトナットや留め具等がある。前記部品11内の内壁に前記ダイヤモンド被膜体1のめっき層4を密着させて接着手段を介すことなく固定させる形態としては、管路の狭窄部に対して左右方向からダイヤモンド被膜体1を挿入して管路の内壁に密着させて流水による押圧で固定化する形態がある。

【0044】
次に、実施例について記載するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
本実施形態に係るダイヤモンド被膜体1は、図2及び図3に示すように、ダイヤモンド膜形成工程A、めっき層形成工程B、および基板除去工程Cを経ることによって形成することができる。
【実施例1】
【0046】
ダイヤモンド膜形成工程Aでは、基板2の外面に気相合成によってダイヤモンド膜3を形成する。すなわち、図3(a)に示すように基板2としてタンタル線(直径0.05mm~50mm程度、好ましくは0.1mm~1mm程度のものを使用。)を使用し、この基板2を、ダイヤモンドパウダーを含有したアルコール溶液によって傷つけ処理を行った後、その外周面に熱フィラメントCVD法による気相合成によって、図3(b)に示すように膜厚0.1μm~500μm程度、好ましくは1μm~100μm程度の肉薄のダイヤモンド膜3を形成する。
【実施例1】
【0047】
なお、傷つけ処理とは、アルコール溶液中に基板2を浸漬して超音波を印加する処理を言い、この処理によってダイヤモンド膜3を形成し易くすることができる。
【実施例1】
【0048】
めっき層形成工程Bでは、前記タンタル線のダイヤモンド膜3と接触していない面にめっき層4が形成されないように絶縁テープを貼り付けて覆った後、硫酸ニッケル、塩化ニッケル又はホウ酸を主成分とする最も実用的なめっき浴であるワット浴を用いて、電気めっき法によって行うことができる。このめっき層4の膜厚は、0.01mm~10mm程度、好ましくは0.1mm~1mm程度とするのが良い。
【実施例1】
【0049】
そして、基板除去工程Cでは、図3(d)に示すように、外面にダイヤモンド膜3が形成された基板2を除去する。基板除去は化学的に溶解させて除去する方法で行い、基板2とダイヤモンド膜3の一体物をフッ化水素酸溶液に浸漬し、基板2のみを溶解して除去する。この際、フッ化水素酸の濃度を高くし、その温度を50℃~90℃程度に設定することによって溶解速度を速めることができる。
【実施例1】
【0050】
この基板除去工程Cにおいて、基板2が完全に溶解した後、残りのダイヤモンド膜3とめっき層4の一体物をフッ化水素酸溶液から取り出して水洗いし、乾燥させる。これによって、ダイヤモンド被膜体1が形成される。なお、図3(e)に示すように、めっき層4の外周面は、円筒形の部品11に接着手段5を介して固定される固定面4aを形成する。
【実施例1】
【0051】
なお、基板2が完全に溶解したか否かは、水素等の細かい気泡が発生しなくなった時点をもって判断することができる。また、基板2であるタンタル線の外周面を円滑にすることによって、ダイヤモンド膜3の表面も円滑にすることができる。
【実施例1】
【0052】
このようにして形成したダイヤモンド被膜体1を、細管である部品11の内周面に固定したダイヤモンド被膜部品10を、図4および図5に示す。このダイヤモンド被膜部品10は、次のようにして製造することができる。
【実施例1】
【0053】
まず、ダイヤモンド被膜体1を、部品11の中空部に挿入する。この際、ダイヤモンド被膜体1の外周面と部品11の中空部内周面との間に接着手段5である銀ろう等のろう材を介在させる。
【実施例1】
【0054】
次に、ダイヤモンド被膜体1と部品11とろう材の一体物を、黒鉛るつぼ等のるつぼ内に入れ、真空加熱炉によって600℃~1000℃程度、好ましくは750℃~850℃程度の温度で数十分間加熱し、ろう材を溶融する。その後、冷却してろう材を固化し、ダイヤモンド被膜体1と部品11とを接着状態として強固に固定する。これにより、ダイヤモンド被膜部品10が製造される。
【実施例1】
【0055】
このようにして形成したダイヤモンド被膜部品10には、図4又は図5に示すように、ダイヤモンド被膜体1が良好に固定されている。なお、このダイヤモンド被膜部品10における、ダイヤモンド膜3及びめっき層4からなるダイヤモンド被膜体1の存在は、EDS分析(エネルギ一分散型X線分析) して作成した元素マッピングによって確認することができた。
【実施例2】
【0056】
本発明に係るダイヤモンド被膜体1を図6に示す。これは、金型である部品11の表面に固定されるダイヤモンド被膜体1であり、ダイヤモンド膜3とめっき層4とを備える。
【実施例2】
【0057】
本実施形態に係るダイヤモンド被膜体1は、実施例1と同様に、図2又は図7に示すように、ダイヤモンド膜形成工程A、めっき層形成工程B、および基板除去工程Cを経ることによって形成することができる。
【実施例2】
【0058】
ダイヤモンド膜3は、当該ダイヤモンド膜3を設けた後に除去される基板2の外面に気相合成によって形成されており、めっき層4は、ダイヤモンド膜3の外面に形成される。また、めっき層4の外面を、接着手段5を介して部品11に固定される固定面4aとしている。なお、めっき層4は、Cr、Ni、Cu、Zn、Pd、Rh、Sn、AuあるいはAgを含む材料で構成することができる。
【実施例2】
【0059】
また、基板2は、金型の形状に対応した板状とし、その形成材料をTaとしている。さらに、めっき層4は、Crを含む材料で形成している。なお、この基板2は、Taの他に、W、Mo、SiまたはSiO等で形成することができる。
【実施例2】
【0060】
ダイヤモンド膜形成工程Aでは、図7(a)に示すように基板2としてシリコンウエハを使用し、その表面にダイヤモンドパウダーを含有したアルコール溶液によって傷つけ処理を行った後、熱フィラメントCVD法により膜厚10μm程度のダイヤモンド膜3を気相合成によって形成する。この際、ダイヤモンド膜3にホウ素を含有させて導電性を持たせることができる。
【実施例2】
【0061】
次のめっき層形成工程Bでは、図7(b)に示すように、基板2のダイヤモンド膜3が形成されていない部分に銅線を取付け、その上から絶縁テープを貼り付け、全面を覆う。その状態で脱脂および酸洗した後、銅線に外部電源からの電流を流し、ワット浴を使用して膜厚0.5mm程度のニッケルめっき層4を形成する。
【実施例2】
【0062】
続く基板除去工程Cでは、図7(c)に示すように、絶縁テープを取り除いて銅線を外した後、基板2とダイヤモンド膜3とめっき層4の一体物を、約70℃の水酸化カリウム水溶液(約50wt%)に浸漬してシリコンウエハからなる基板2のみを溶解して除去する。これにより、ダイヤモンド膜3と、補強層として作用するめっき層4とで構成されたダイヤモンド被膜体1を形成することができる。なお、めっき層4の外面は、図7(d)に示すように、接着手段5を介して部品11に固定される固定面4aを形成する。
【実施例2】
【0063】
このダイヤモンド被膜体1を、金型なる部品11の表面に、接着手段5を介して固定することによって製造したダイヤモンド被膜部品10を、図8に示す。
【実施例3】
【0064】
本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法として、まず、ダイヤモンド膜形成工程Aでは、基板2としてシリコンウエハを使用し、その片面を、ダイヤモンドパウダーを含有したアルコール溶液で傷つけ処理を行った後に、熱フィラメントCVD法により膜厚10μm程度のダイヤモンド膜3を気相合成によって形成する。
【実施例3】
【0065】
次のめっき層形成工程Bでは、基板2のダイヤモンド膜3が形成されていない面を絶縁テープにより覆い、その状態で脱脂および酸洗した後に、センシタイジング処理およびアクチベイティング処理を施す。その後、無電解めっき浴を用いて膜厚0.5mm程度のニッケル-リンめっき層4を形成する。
【実施例3】
【0066】
センシタイジング処理とは、被めっき材である基板2を塩化スズ溶液中に浸漬することによって基板2の表面にスズを吸着させる手法を言う。また、アクチベイティング処理とは、センシタイジング処理を施した基板2を塩化パラジウム溶液に一定時間浸漬して基板2の表面にパラジウム核を析出させる手法を言う。両処理を施すことによって、基板2の表面に吸着しているパラジウムが触媒となって無電解ニッケルめっきの反応が開始する。
【実施例3】
【0067】
続く基板除去工程Cでは、絶縁テープを除去した後、基板2とダイヤモンド膜3とめっき層4の一体物を、約70℃の水酸化カリウム水溶液(50wt%)に浸漬してシリコンウエハからなる基板2のみを溶解して除去する。これにより、補強層として機能するニッケルめっき層4を有するダイヤモンド被膜体1を形成することができる。
【実施例4】
【0068】
次に、実施例4として本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法を説明する。最初のダイヤモンド膜形成工程Aにおいて、基板2としてシリコンウエハを使用し、その片面にダイヤモンドパウダーを含有したアルコール溶液で傷つけ処理を行った後に、熱フィラメントCVD法による気相合成によって膜厚10μm程度のダイヤモンド膜3を形成する。
【実施例4】
【0069】
次のめっき層形成工程Bでは、前処理として酸素プラズマエッチング装置により、ダイヤモンド膜3の表面に適度なエッチングを施す。その後、基板2のダイヤモンド膜3が形成されていない面を絶縁テープによって覆い、その状態で、センシタイジング処理およびアクチベイティング処理を行い、無電解めっき浴を使用して膜厚0.5mm程度のニッケルめっき層4を形成する。
【実施例4】
【0070】
続く基板除去工程Cでは、絶縁テープを取り除いた後、基板2とダイヤモンド膜3とめっき層4の一体物を、約70℃の水酸化カリウム水溶液(50wt%)に浸漬してシリコンウエハからなる基板2のみを溶解して除去することにより、補強層として機能するニッケルめっき層4を備えたダイヤモンド被膜体1を形成することができる。
【実施例5】
【0071】
次に、実施例5として本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法を説明する。ダイヤモンド膜形成工程Aでは、基板2としてシリコンウエハを使用し、その片面にダイヤモンドパウダーを含有したアルコール溶液で傷つけ処理を行った後、熱フィラメントCVD法による気相合成によって、膜厚10μm程度のダイヤモンド膜3を形成する。
【実施例5】
【0072】
次のめっき層形成工程Bでは、基板2とダイヤモンド膜3の一体物を過塩素酸または硫酸と硝酸の混合物の中で加熱することにより、ダイヤモンド膜3の表面を洗浄するとともに化学修飾させてダイヤモンド膜3とめっき層4との密着性を高める。化学修飾とは、無機粒子表面を、化学物質を用いて化学反応処理を施すことを言う。
【実施例5】
【0073】
その後、ダイヤモンド膜3が形成されていない面を絶縁テープにより被覆した後、センシタイジング処理およびアクチベイティング処理を施し、無電解めっき浴を使用して膜厚0.5mm程度のニッケルめっき層4を形成する。
【実施例5】
【0074】
そして、基板除去工程Cでは、絶縁テープを除去した後、基板2とダイヤモンド膜3とめっき層4の一体物を、約70℃の水酸化カリウム水溶液(50wt%)に浸漬してシリコンウエハからなる基板2のみを溶解して除去し、ニッケルめっき層4で補強したダイヤモンド被膜体1を形成する。
【実施例6】
【0075】
次に実施例6として本発明に係るダイヤモンド被膜体形成方法を説明する。この実施例6では、筒状のダイヤモンド被膜体1を対象としている。
【実施例6】
【0076】
まず、ダイヤモンド膜形成工程Aでは、図9に示すように、基板2であるタンタル線の中心付近にあらかじめ切欠き形状等の脆弱部2aを形成する。脆弱部2aを形成した基板2を、熱フィラメントCVD法による気相合成によって、その外周面に膜厚10μm程度のダイヤモンド膜3を形成する。
【実施例6】
【0077】
続いて、めっき層形成工程Bでは、基板2とダイヤモンド膜3の一体物を脱脂および酸洗した後、センシタイジング処理およびアクチベイティング処理を施して、無電解めっき浴を使用して膜厚0.5mm程度ニッケルめっき層4を形成する。
【実施例6】
【0078】
そして、基板除去工程Cでは、図9に示すように、基板2であるタンタル線の両端を機械的に引っ張ることによって当該基板2を脆弱部2aで切断し、両方向へ引き抜く。これにより、筒状のダイヤモンド被覆体1を形成することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ダイヤモンド被膜体
2 基板
2a 脆弱部
3 ダイヤモンド膜
4 めっき層
4a 固定面
5 接着手段
10 ダイヤモンド被膜部品
11 部品
A ダイヤモンド膜形成工程
B めっき層形成工程
C 基板除去工程
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8