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明細書 :LED素子とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-062204 (P2019-062204A)
公開日 平成31年4月18日(2019.4.18)
発明の名称または考案の名称 LED素子とその製造方法
国際特許分類 H01L  33/32        (2010.01)
H01L  21/338       (2006.01)
H01L  29/778       (2006.01)
H01L  29/812       (2006.01)
H01L  21/203       (2006.01)
H01L  29/78        (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  21/20        (2006.01)
FI H01L 33/32
H01L 29/80 H
H01L 21/203 S
H01L 29/78 652B
H01L 29/78 652K
H01L 29/78 653A
H01L 29/78 658E
H01L 29/78 652E
H01L 21/20
請求項の数または発明の数 30
出願形態 OL
全頁数 52
出願番号 特願2018-196890 (P2018-196890)
分割の表示 特願2018-530815 (P2018-530815)の分割、【原出願日】平成29年6月1日(2017.6.1)
出願日 平成30年10月18日(2018.10.18)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
優先権出願番号 2016169994
優先日 平成28年8月31日(2016.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】藤岡 洋
【氏名】上野 耕平
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
【識別番号】100117444、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 健一
審査請求 未請求
テーマコード 5F102
5F103
5F152
5F241
Fターム 5F102FA03
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR07
5F102HC11
5F103AA08
5F103BB22
5F103BB36
5F103DD01
5F103GG01
5F103HH03
5F103HH04
5F103JJ03
5F103KK01
5F103KK02
5F103LL02
5F103LL03
5F103LL07
5F103LL09
5F103LL20
5F103NN01
5F103NN06
5F103RR05
5F152LL10
5F152MM02
5F152MM04
5F152MM05
5F152MM09
5F152MM10
5F152NN03
5F152NN05
5F152NN09
5F152NN13
5F152NN14
5F152NP09
5F152NQ09
5F241AA21
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA40
5F241CA49
5F241CA54
5F241CA57
5F241CA67
要約 【課題】高ドナー濃度領域においても高い電子移動度を示すn型導電型を用いたGaN系LED素子の提供。
【解決手段】導電部と電極とが接続されたコンタクト構造が備えられ、前記導電部に薄膜の窒化物半導体が用いられたGaN系のLED素子であって、前記窒化物半導体は、窒素と、B、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素を含有する2元系、3元系または4元系の窒化物半導体であり、1×10cm-3以上の酸素を不純物として含有し、SiまたはGeをドナーとして含有し、5×1019cm-3以上の電子濃度を有し、前記電子濃度は実質的にSiドナー濃度またはGeドナー濃度に等しく、n型導電性であり、電子移動度が46cm2/(V・s)以上であるLED素子。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
窒素と13族元素であるB、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる一つの元素を含有する2元系、3元系または4元系の化合物半導体であって、
1×1017cm-3以上の酸素を不純物として含有し、
5×1019cm-3以上の電子濃度を有し、N型導電性であり、
電子移動度が46cm2/V・s以上である化合物半導体。
【請求項2】
GaとNを主成分とする請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項3】
405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下である請求項2に記載の化合物半導体。
【請求項4】
450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下である請求項2に記載の化合物半導体。
【請求項5】
AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物半導体。
【請求項6】
N型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物半導体。
【請求項7】
前記13族元素としてGaを含み、さらにAl及び/またはInを含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物半導体。
【請求項8】
Siをドナーとして含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物半導体。
【請求項9】
Geをドナーとして含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物半導体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物半導体が用いられた導電部と電極とが接続されてなるコンタクト構造。
【請求項11】
請求項10に記載のコンタクト構造が備えられた半導体素子。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物半導体が用いられた透明電極。
【請求項13】
パルススパッタリング法を用いて、酸素を含むプロセス雰囲気で請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物半導体を成膜する化合物半導体の製造方法。
【請求項14】
請求項13の化合物半導体の製造方法において、成膜時の基板温度を700℃以下で行う化合物半導体の製造方法。
【請求項15】
窒素と、B、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素を含有する、導電型がn型の窒化物半導体であって、
電子濃度が1×1020cm-3以上で、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm以下である、窒化物半導体。
【請求項16】
前記電子濃度が2×1020cm-3以上である、請求項15に記載の窒化物半導体。
【請求項17】
n型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下である、請求項15または16に記載の窒化物半導体。
【請求項18】
酸素不純物を1×1017cm-3以上含有する、請求項15~17の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項19】
405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下である、請求項18に記載の窒化物半導体。
【請求項20】
450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下である、請求項18に記載の窒化物半導体。
【請求項21】
AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下である、請求項15~20の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項22】
前記少なくとも1種の13族元素はGaである、請求項15~21の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項23】
前記窒化物半導体は、SiまたはGeの何れか若しくは双方をドナー不純物として含有している、請求項15~22の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項24】
比抵抗が0.2×10-3Ω・cm以上である、請求項15~23の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項25】
比抵抗が0.15×10-3Ω・cm以上である、請求項15~23の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項26】
比抵抗が0.1×10-3Ω・cm以上である、請求項15~23の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項27】
(a)電子濃度が1×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、
(b)電子濃度が3×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、
(c)電子濃度が4×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cm、
及び(d)電子濃度が9×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cmの4点で囲まれた数値範囲を満たす請求項15~24の何れか1項に記載の窒化物半導体。
【請求項28】
請求項18~27の何れか1項に記載の窒化物半導体を導電部として備えた、コンタクト構造。
【請求項29】
請求項18~27の何れか1項に記載の窒化物半導体を電極部として備えた、コンタクト構造。
【請求項30】
請求項28または29に記載のコンタクト構造を備えた、半導体素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は化合物半導体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNやInNといった13族窒化物半導体を利用したデバイスが広く実用化されてきている。従来、このような13族窒化物半導体の結晶成長には、MOCVD法やMBE法が用いられている。しかし、MOCVD法では1000℃を超えるプロセス温度が必要となる。MBE法は低温で化合物半導体の成膜することができるが、成膜面積に限度があることや生産コストが高く量産に向いてはいない。
【0003】
また、MBE法においては、高濃度にドナーを添加すると、結晶構造の伝導帯近傍の禁制帯中に生じた高濃度ドナー準位による吸収が発生する。そのため、成膜した化合物半導体の透明度が低下するという問題がある(非特許文献1)。このようなことから、化合物半導体の生産、主として窒化物半導体の実用的な生産には、MOCVD法が用いられている。
【0004】
現在、高耐圧で低オン抵抗の特性を合わせ持つ次世代の電子デバイスが求められている。そのためには、2元系、3元系または4元系の化合物半導体、より具体的には、13族窒化物半導体を用いた化合物半導体素子の実現が求められている。そのためには、化合物半導体の結晶のさらなる高品質化と、ドーピング技術の精緻化が求められる。特に、GaN基板上に形成される縦型パワーデバイスにおいては、n型ドリフト層の炭素濃度の低減と、電子移動度の向上が急務である。先行技術として以下の文献をあげることができる。
【0005】
特許文献1には、銅基板上に金属窒化物からなるバッファ層、半導体層が備えられた半導体素子が開示されている。
【0006】
特許文献2には、厚みが10~100μmで、焼結されたポリマーを含み、耐熱性を有する可撓性を有するグラファイト基板上に設けられたHfNをバッファ層とし、バッファ層上に設けられたGaNからなる半導体層とを備えた半導体基板の実施例が開示されている。また、特許文献3には、ZnO基板上にIII-V族の化合物半導体をエピタキシャル成長させる製造方法が開示されている。
【0007】
非特許文献1にはP型のGaN半導体層を形成に関する研究成果が開示されている。非特許文献2にはP型のGaN半導体層の接触抵抗に関する研究成果が開示されている。非特許文献3には、窒化物半導体への低濃度ドーピング技術に関する研究成果が開示されている。非特許文献4には、電子の高電界での輸送モデルについての研究成果が開示されている。非特許文献5には、GaNにおけるキャリア移動度のモデルについての研究成果が開示されている。非特許文献6には、PSD法で形成したP型のGaNに対する接触抵抗の評価に関する研究成果が開示されている。非特許文献7には、LEDをガラス上に作成した実験例が開示されている。非特許文献8には、PSD法を用いて成長させた窒化物単結晶に関する研究成果が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2008-243873号公報
【特許文献2】WO2011/021248A1国際公開パンフレット
【特許文献3】特開2010-56435号公報
【特許文献4】特開2016-115931号公報
【特許文献5】米国特許公開US2016/0172473号公報
【0009】

【非特許文献1】G.T. Zhao et. Al., Jpn. J.Appl. Phys. 38, L933 (1999).
【非特許文献2】荒川他、第63回応用物理学会春季学術講演会、20p-H121-8
【非特許文献3】E. Nakamura et al., Appl. Phys. Lett. 104, 051121 (2014).
【非特許文献4】D. M. Caughey etal., Proc. IEEE 55, 2192 (1967)
【非特許文献5】T. T. Mnatsakanov et al., Solid-StateElectron. 47, 111 (2003)
【非特許文献6】第62回応用物理学会春季学術講演会 予稿集
【非特許文献7】日経エレクトロニクス NEレポート 14-15頁、2014年7月7日号
【非特許文献8】藤岡「フレキシブルデバイス」プロジェクト研究概要集 89-94頁(平成20年3月4日発行)
【非特許文献9】A. Suzuki et al., "Extremely lowon-resistance Enhancement-mode GaN-based HFET using Ge-doped regrowth technique"(IEDM14, p.275-278(2014))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術において、13族窒化物半導体をMOCVD法で結晶成長しようとすると、原料ガス中に含まれる炭素や水素が膜中に取り込まれる。そのため、炭素や水素といった不純物濃度の低い高品質膜を得ることが難しいという問題が発生した。
【0011】
加えて、MOCVD法で13族窒化物半導体を結晶成長させようとすると、熱力学な制約により、5×1019cm-3以上のドナー濃度の膜では、概して、約46cm/V・s以上の電子移動度を有する膜を得ることが難しくなる。また、MOCVD法は化学的反応に基づくものであるため、低温での結晶成長が事実上不可能であることに加え、原料ガス中に含まれる炭素や水素が製造した成膜中に取り込まれ易い。
【0012】
また、MOCVD法に代わる窒化物半導体結晶の成長方法としてのパルススパッタ堆積(PSD)法が提唱されている。このPSD法により残留水素濃度の低い高正孔移動度のp型GaN薄膜が得られることが実証された(非特許文献2)。
【0013】
しかし、窒化物半導体基板上に形成される電子素子や発光素子の素子抵抗の低減に重要となる高ドナー濃度n型層の特性については、素子の実用生産に利用されているMOCVD法では作製困難であるため、報告例が極めて少ない。
【0014】
このように、高ドナー濃度領域においても、高い電子移動度を示すn型導電型の13族窒化物半導体膜の開発が求められている。このように電子デバイスや発光デバイスの高性能化、省エネルギー化、高効率化といった目的を達成するために出来るだけ高い電子移動度を持つ半導体材料の実現が課題となっている。
【0015】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高ドナー濃度領域においても高い電子移動度を示すn型導電型を示す2元系、3元系または4元系の化合物半導体、より具体的には、13族窒化物半導体膜を容易に製造し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、第1の発明の態様1は、窒素と13族元素であるB、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる一つの元素を含有する2元系、3元系または4元系の化合物半導体であって、
1×1017cm-3以上の酸素を不純物として含有し、
5×1019cm-3以上の電子濃度を有し、N型導電性であり、
電子移動度が46cm/V・s以上である化合物半導体を提供する。
【0017】
第1の発明の態様2は、GaとNを主成分とする態様1に記載の化合物半導体を提供する。
【0018】
態様3は、405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下である態様2に記載の化合物半導体を提供する。
【0019】
態様4は、450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下である態様2に記載の化合物半導体を提供する。
【0020】
態様5は、AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下である態様1~4のいずれかに記載の化合物半導体を提供する。
【0021】
態様6は、N型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下である態様1~5のいずれかに記載の化合物半導体を提供する。
【0022】
態様7は、前記13族元素としてGaを含み、さらにAl及び/またはInを含有する態様1~6のいずれかに記載の化合物半導体を提供する。
【0023】
態様8は、Siをドナーとして含有する態様1~7のいずれかに記載の化合物半導体を提供する。
【0024】
態様9は、Geをドナーとして含有する態様1~7のいずれかに記載の化合物半導体を提供する。
【0025】
態様10は、態様1~9のいずれかに記載の化合物半導体が用いられた導電部と電極とが接続されてなるコンタクト構造を提供する。
【0026】
態様11は、態様10に記載のコンタクト構造が備えられた半導体素子を提供する。
【0027】
態様12は、態様1~9のいずれかに記載の化合物半導体が用いられた透明電極を提供する。
【0028】
態様13は、パルススパッタリング法を用いて、酸素を含むプロセス雰囲気で態様1~9のいずれかの化合物半導体を成膜する化合物半導体の製造方法を提供する。
【0029】
態様14は、態様13の化合物半導体の製造方法において、成膜時の基板温度を700℃以下で行う化合物半導体の製造方法を提供する。
【0030】
上記第1の発明において、2元系窒化物とは、B、Al、GaまたはInのいずれか一つの元素と窒素との化合物を意味する。すなわち、BN(窒化ホウ素)、AlN(窒化アルミニウム)、GaN(窒化ガリウム)またはInN(窒化インジウム)の2元系混晶である。
【0031】
また、3元系窒化物とは上記の2元系の13族元素の一部が他の13族元素で置換された化合物である。たとえば、InGaN(窒化インジウムガリウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、AlInN(窒化アルミニウムインジウム)の3元混晶である。また、3元系化合物はその組成比を調整することでバンドギャップを2元系化合物の特性を限度として、その範囲内で調整できることが知られている。
【0032】
上記発明において、化合物半導体の主成分となる13族元素に対して、他の13族元素が微量含有されていても本発明の範囲に含め得るものとする。本発明の効果を損しない限り元素の組み合わせは任意である。
【0033】
また、第2の発明は、窒素と、B、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素を含有する、導電型がn型の窒化物半導体であって、電子濃度が1×1020cm-3以上で、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm以下である、窒化物半導体である。
【0034】
好ましくは、前記電子濃度が2×1020cm-3以上である。
【0035】
また、好ましくは、n型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下である。
【0036】
ある態様では、酸素不純物を1×1017cm-3以上含有する。
【0037】
好ましくは、405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下である。
【0038】
また、好ましくは、450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下である。
【0039】
さらに、好ましくは、AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下である。
【0040】
ある態様では、前記少なくとも1種の13族元素はGaである。
【0041】
また、ある態様では、前記窒化物半導体は、SiまたはGeの何れか若しくは双方をドナー不純物として含有している。
【0042】
上記比抵抗の下限値は、例えば0.2×10-3Ω・cm、或いは0.15×10-3Ω・cm、または0.1×10-3Ω・cmである。
【0043】
上記窒化物半導体の電子濃度と比抵抗の関係は、(a)電子濃度が1×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、(b)電子濃度が3×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、(c)電子濃度が4×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cm、及び(d)電子濃度が9×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cmの4点で囲まれた数値範囲を満たす。
【0044】
上記発明は、窒化物半導体を導電部として備えたコンタクト構造とすることができる。また、上記窒化物半導体を電極部として備えたコンタクト構造とすることもできる。このようなコンタクト構造は半導体素子への利用が可能である。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る窒化物化合物半導体は、5×1019cm-3以上という高い電子濃度領域においても、46cm/V・s以上の電子移動度を示す。電子移動度は好ましくは50cm/V・s以上である。より好ましくは、60cm/V・s以上である。
【0046】
但し、半導体素子の仕様や用途等によっては、必ずしも50cm/V・s以上を必須としない場合もありえる。その場合は、製造上の生産性を考慮し、電子濃度と酸素含有量を調整することによって、電子移動度が30cm/V・s以上の化合物半導体を製造し、素子に求められる構造部分に適用することもできる。
【0047】
本発明においては、パルススパッタリング堆積法(PSD法)を用いることにより、高温プロセスを経ることなく、単結晶のスパッタリング膜を形成することができる。より好ましくは、ほぼ室温条件でのプロセスによって化合物半導体の膜を成膜する。基板面積は制約がなく、小型サイズから大面積の膜を製造できる。
【0048】
例えば、少なくとも外形が矩形であって、矩形の一辺または円形の直径が2インチサイズ以上、または膜の形成面積が30cm以上であって、スパッタリング装置の内部空間の制限内で許容され得る面積の化合物半導体の膜を成膜することができる。
【0049】
その際、従来技術のように、バッファ層を必須とせずに良質の化合物半導体を容易に成膜することができる。
【0050】
次に、本発明の化合物半導体の物性に関して説明する。n型窒化物半導体膜の抵抗値ρは、電子移動度μとキャリア濃度nに反比例するから、高い電子濃度においても高い電子移動度を示す。このことは、即ち、電気的に低抵抗である良質な膜とすることができることを意味している。つまり、本発明によれば、半導体デバイスとして利用し易く良質な13族窒化物半導体膜を提供することができる。本発明に係わる化合物半導体の貫通転位密度は1×10/cm~5×1010/cm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】PSD法で作製したSiドープのn型GaN膜の電子濃度(N)と電子移動度(μ)の関係を示すグラフ。
【図2】Si濃度が2×1020cm-3のGaN膜の酸素濃度の深さ方向のプロファイルを示すSIMSデータのグラフ。
【図3】図2に示したSiドープのGaNスパッタリング膜の表面AFM像。
【図4】Si濃度(電子濃度)が2×1020cm-3のGaN膜の吸収係数と屈折率をエリプソメータで測定した結果を示すグラフ。
【図5】GaNの結晶構造を示す模式図(A)、平面方向の模式図(B)。
【図6】本発明で用いるスパッタ装置の構成を示す模式図。
【図7】本発明においてスパッタリング時にスパッタ装置の電極に印加するパルスシーケンスの一例を示すグラフ。
【図8】本発明で用いるスパッタリング装置の内部構造を示す縦断面の模式図。
【図9】本発明の実施形態1に係る半導体素子の断面模式図。
【図10】本発明の実施形態2に係わるコンタクト構造を示す断面模式図。
【図11】本発明の実施形態3に係わるコンタクト構造を示す断面模式図。
【図12】本発明を適用し得る薄膜トランジスタの模式的斜視図。
【図13】本発明を適用し得るAlGaN/GaN・HEMTの断面模式図。
【図14】本発明を適用し得るLED素子の断面模式図。
【図15】本発明を適用し得る面発光レーザ素子の断面模式図。
【図16】本発明に係るGaNの電子濃度と抵抗率の関係を説明するための図である。
【図17】本発明に係るGaNにおける、SIMS測定で得たドナー不純物の濃度と電子濃度との関係を纏めた図である。
【図18】GaNの表面状態の例としての、GeドープのGaNの試料表面のAFM像である。
【図19】縦形パワーMOSFETの断面概略図である。
【図20】GaN系LEDの断面概略図である。
【図21】ショットキダイオードの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態として、13族窒化物半導体をパルススパッタリングで製造して形成した半導体化合物について説明する。

【0053】
本発明の実施形態に係る13族窒化物半導体は、パルススパッタ堆積法(PSD法)により成膜する。

【0054】
(パルススパッタリング法)
本発明において、窒化物の化合物半導体を製造するために用いる「パルススパッタリング法(PSD法)」や化合物半導体を製造するための材料・製造方法は当業者において周知の基礎的事項である。

【0055】
例えば「窒化物基板および格子整合基板の成長とデバイス特性」(シーエムシー出版 2009年10月30日 第1刷発行)、「高周波半導体材料・デバイスの新展開」(シーエムシー出版 2006年11月13日 第1刷発行)、「次世代パワー半導体の高性能化とその産業展開」(シーエムシー出版 2015年6月10日 第1刷発行)、特開2009-138235号公報「パルススパッタ装置およびパルススパッタ方法」、及び特開2014-159368「窒化ガリウム焼結体または窒化ガリウム成形体ならびにそれらの製造方法」等に開示された標準的な技術を本発明の実施に際して問題なく利用することができる。また、上記の特許文献2、特許文献3、非特許文献3、非特許文献4などを参照されたい。

【0056】
本発明で採用するPSD法においては、結晶成長は物理的反応に基づき進行するために低温での結晶成長が可能である。これに加えて、成膜環境中の炭素や水素を顕著に除去することが可能である。低温での結晶成長が可能であることから、膜中の熱ストレスの発生が抑制されるとともに、例えばInGaNのように相分離し易い化合物も安定的に成長させることができる。

【0057】
本発明における化合物半導体の単結晶成長は、その状態を直接視認することができないが、結晶成長の作用原理の概要は以下の通りと考えられる。まず、図5に13族2元化合物の一つであるGaNの結晶構造を示す。本発明の化合物半導体を成膜しようとする際、GaNのGa原子が6角形状の配置構造を呈する有極性面(Ga原子面)が、下地となる基板の表面に揃うようにして単結晶状の構造が形成されていくものと考えられる。

【0058】
その際、本発明で用いる製造方法はMOCVD法のような1000℃超の高温ではなく、比較的低温の条件で成膜を行うことができる。室温25℃を含み得る700℃以下の温度範囲である(室温~700℃)。成膜速度との兼ね合いがあるが、好適には、例えば300~700℃の範囲があげられる。

【0059】
このため、成膜雰囲気に僅かに含有されている酸素原子が成膜中に膜の表面を覆うように存在している状態と推定される。その結果、酸素原子は13族元素と窒素の結合を妨害するかのように働き、所望の化合物を構成することになる主要元素が自由な状態を保持しつつ成膜プロセスが進行すると考えられる。

【0060】
さらに、下地の面方向全体において成膜条件が同一条件に置かれることにより、全体として均一で結晶性が優れた結晶構造が形成されていくと考えられる。

【0061】
このようにして、スパッタ膜として形成されたGaNの半導体化合物は6角形状の軸方向(膜の厚み方向)に徐々に成長し面内で均一であって、かつ一定以上の面積を持つ半導体化合物の膜が最終的に製造できると考えられる。

【0062】
また、用いる下地は化合物半導体が成長しやすい格子が整合する条件または擬似的に整合し得る条件の材料であることが好ましい。PSD法による成膜プロセスは1000℃を超えるような高温条件ではない。そのため、下地材料が高耐熱性であることは必須ではないが、結晶性を向上させるには結晶と下地材料との格子整合または疑似格子整合の条件が成立することが好ましい。

【0063】
従って、本発明において、下地材料としてはSiC、サファイア、GaN、単結晶シリコンの4種類から選択することが特に好ましい。サファイアは耐熱温度が1200℃、単結晶シリコンは耐熱温度が1100℃である。それぞれAlGaN/GaN HEMT、フルカラーLED、InGaN-TFT、センサーなどの半導体素子の製造に用いることができる。

【0064】
また、上記の材料よりは化合物半導体の成膜後の結晶品質が悪くなるが、金属フォイルや耐熱温度が600~700℃のFPD用無アルカリガラス等にも適用することができる。この際、結晶成長の下地となる材料の表面に予め疑似格子整合をとるため等の目的でバッファ層を形成しておくことが好ましい。

【0065】
また、本発明は、成膜サイズとして、矩形の一辺または円形の直径が2インチサイズから10インチサイズの素子を製造することができる。さた、矩形の対角サイズが10~30インチサイズの中型サイズ、または30インチサイズ以上となる大型の素子にも適合させることができる。下地となる素子構造や基板等の形状は円形、正方形、矩形、または非対称形状のいずれでもよい。

【0066】
図6及び図7に本発明に係わる化合物半導体を製造する際に用いるスパッタリング装置の模式図とパルスシーケンスを示す。スパッタリング装置1は、チャンバ11、基板電極12、ターゲット電極13、直流電源14、電源制御部15、窒素供給源16、加熱装置17等を主体として構成されている。

【0067】
チャンバ11は、外部に対して密閉可能に設けられている。チャンバ11内は図示しない真空ポンプなどによって減圧できるようになっている。基板電極12は、チャンバ11内に配置されており、放熱シート12aを保持可能になっている。

【0068】
ターゲット電極13は、チャンバ11内に基板電極12に対向して設けられており、ターゲット13aを保持可能になっている。ターゲット13aは、13族元素と窒素との化合物からなる。現在、一般的に入手できる不純物の少ない高品質のターゲット材料を用いる。例えば、ファイブナインあるいはシックスナインといった高品位の材料であることが必要となる。

【0069】
直流電源14は、基板電極12及びターゲット電極13にそれぞれ電気的に接続されており、基板電極12とターゲット電極13との間に直流電圧を印加する電圧源である。

【0070】
制御部15は、直流電源14に接続されており、直流電源14の動作のタイミングに関する制御を行う。制御部15により、基板電極12とターゲット電極13との間にパルス電圧を印加することが可能になっている。

【0071】
窒素供給源16は、例えば供給管などによってチャンバ11内に接続されており、チャンバ11内に窒素ガスを供給する。図示しないが、窒素供給源16の他、チャンバ内にアルゴンガスを供給するアルゴンガス供給源も設けられている。

【0072】
また、所定の分量の酸素を供給する酸素供給源も設けられている。成膜しながら内部圧力を常にモニターできるようになっている。また、化合物半導体の成膜時に、チャンバ内の酸素の含有量が、ほぼ定常的に約10ppmを保持するように制御することが必要である。

【0073】
そのためには、パルススパッタリング法に用いるチャンバの構造、プロセスガスの供給系、排気系(主排気、粗引き)は、ガス漏れが無く、外気の侵入がないことが不可欠であり、成膜時の圧力管理も極めて安定していることが重要である。なお、酸素は極微量の含有量を意図的にチャンバ内に供給することが基本と考えられる。その前提としてチャンバ内のクリーニングの確認と、用いる材料の純度は精選しなければならない。

【0074】
加熱装置17は、例えば基板電極12に固定されており、基板電極12上の放熱シート12aの周囲温度を調節できるようになっている。また、本発明で用いる成膜条件の代表例は以下の通りである。図7はパルスシーケンスの一例であり、駆動パルスの電圧Pを調整することができる。成膜速度は、概して、平均して0.1~4nm/秒であり、より好ましくは0.2~2nm/秒である。

【0075】
(a)駆動法:パルススパッタ法(PSD法)
(b)デューティー比:5%
(c)平均投入電力:100W
(d)パルス周波数:1kHz
(e)成長圧力:2×10-3Torr
(f)ドーパント:Si

【0076】
なお、スパッタリング成膜はアルゴンガスを主成分とする雰囲気ガス中で行い、成膜時の基板温度は300~700℃の範囲に設定した。この際、高濃度のn型13族窒化物化合物半導体を形成するため、ドーピング材料としてSiHやGeH等のドーピングガスやSiやGe原子を含むターゲットを使うことができる。

【0077】
そして、製造しようとしている目的の化合物半導体の膜に酸素を導入する目的で、スパッタリングの雰囲気ガス中に濃度10ppmの酸素を添加した場合と、酸素を添加しない場合の両方について実験を行った。そして酸素の有り無しの条件を替えて製造した化合物半導体の物理特性を比較検証した。

【0078】
次に図8はロールツーロール方式による連続成膜装置10の縦断面模式図を示す。内部に複数の成膜室5が設けられている。基板フィルム4が金属フォイルやフィルム状で巻き取ることができる極薄ガラス基板であれば本発明を適用することができる。巻きだしロール2から巻き取りロール3に向けて柔軟性のある基板フィルム4が水平方向に搬送される間に、基板フィルム4に対して成膜室内で複数のスパッタリングを実行できる。その結果、所望の化合物半導体等を含む半導体素子を高速処理することができる。チャンバ内のテーブルは、例えばφ320~φ600mmに対応できる。

【0079】
本発明において、少なくとも矩形の一辺または直径が2インチサイズ以上となる面積を持つ下地または基板に対して化合物半導体を結晶成長させることができる。低温かつ高速での製造が可能であり、一定面積の結晶を均一に製造できる。また、生産コストを抑えつつ新規な化合物半導体を量産製造することができる。

【0080】
図1は、本発明者らがPSD法で作製した、Siドープのn型GaN膜の電子濃度(N)と電子移動度(μ)の関係を、室温ホール効果測定により調べた結果をまとめた図である。電子濃度(Ne)は実質的にSiドナー濃度に等しいと考えられる。なお、スパッタリング成膜はアルゴンガスを主成分とする雰囲気ガス中で行い、成膜時の基板温度は300~700℃の範囲であった。

【0081】
この膜に酸素を導入する目的でスパッタリングの雰囲気ガス中に濃度10ppmの酸素を添加し、単結晶性を示す結晶膜を形成した。このGaN薄膜の表面に、n型オーミック電極金属積層構造(Ti(20nm)/Al(60nm)/Ti(20nm)/Au(50nm))を形成し、窒素中700℃でアニール処理を行った。このような試料についてTLM法により、コンタクト抵抗を評価したところ、8.5×10-5 Ωcm2であった。

【0082】
この図中に丸印で示したものは実測値であり、曲線で示したものは、低電界での移動度の記述に用いられるCaughey-Thomas型の経験式(下式1:非特許文献4参照)に基づくフィッティング結果である。なお、下式中のNはドナー濃度であるが、上述のとおり電子濃度(N)は実質的にSiドナー濃度に等しいと考えられるため、N=Nとしてフィッティングを行っている。

【0083】
μ=μmin+[μmax-μmin]/[1+(N/Nγ] ・・・(1)

【0084】
上記フィッティングの結果から、μmax=1034cm/V・s、μmin=125cm/V・sと求められた。これらの値は、従来報告されているMOCVD法で成膜したn型GaN薄膜の移動度の最高値(例えば、非特許文献5参照)と比較しても遜色ない値である。このように本発明で製造した化合物半導体の膜において、キャリア散乱が十分抑制されていることを確認することができた。

【0085】
従来技術のMOCVD法では、ドナー濃度が概ね5×1019cm-3以上になると、このような高い電子移動度を示すGaN薄膜を得ることが困難とされていた。本発明においては、図1に示したとおり、PSD法で作製したSiドープのn型GaN膜は、少なくとも2×1020cm-3のドナー濃度においてもCaughey-Thomas型の経験式に一致している。

【0086】
つまり、PSD法で作製した本実施例に係るn型GaN膜は、5×1019cm-3以上の電子濃度においても、46cm/V・s以上の電子移動度を示す極めて良質な膜であることが分かった。好ましくは50cm/V・s以上の電子移動度の膜を利用することができる。n型窒化物半導体膜の抵抗値ρは、電子移動度μとキャリア濃度nに反比例するから、高い電子濃度においても高い電子移動度を示す。このことは、即ち、低抵抗の良質な膜とすることができることを意味している。

【0087】
図1に結果を示した試料は何れもSiドープのものであるが、ドナーとして混入させる不純物はSiに限定されず、Ge等であってもよい。

【0088】
ところで、高い電子濃度を実現するために窒化物半導体膜中のドナー濃度が高くなると、当該膜の可視光に対する透明性が低下してくる。そのため、本発明に係る窒化物半導体膜を透明電極等に利用する場合には支障が生じる懸念がある。

【0089】
そこで、本発明では、化合物半導体の膜中での電子濃度が高くなることに起因して低下する透明性を以下のようにして補っている。つまり、窒素サイトを置換してドナーとして作用するドーパントである酸素を不純物として混入させて膜のバンドギャップを広げて補償している。

【0090】
酸素ドープした膜のバンドギャップはドーピング量に依存するが、例えばGaNの場合には、室温でのバンドギャップを、3.4eV~4.9eV(酸化Gaのバンドギャップの値)の範囲内で変化させることが可能である。例えば、GaNの場合、膜中に1×1017cm-3以上の酸素を不純物として含有させると、室温でのバンドギャップは概ね3.4~3.6eV程度となる。

【0091】
このような酸素の効果により、本実施例の窒化物半導体膜を、例えば、405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下の膜としたり、450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下の膜としたりすることができる。このことから、透明電極としての利用に支障がなくなる。

【0092】
図2はPSD法で製造した本発明に係わるGaN膜の酸素濃度を示したグラフである。図2(b)は、図1に示した試料のうち、Si濃度が2×1020cm-3のGaN膜の酸素濃度の深さ方向のプロファイルを示すSIMSデータである。1~3×1018cm-3程度の濃度で酸素が含有されていることが分かる。なお、この膜の電子移動度は110cm/V・sである。

【0093】
また、この膜の表面粗さを表すAFM像のRMS値は図3(b)からわかるように3.97nmであった。本発明者らが種々の電子濃度条件で成膜した電子濃度5×1019cm-3以上の酸素を含む試料をAFM測定した結果、何れの試料においても、RMS値は5.0nm以下であった。

【0094】
一方、雰囲気ガスへの10ppmの酸素添加なしでほぼ同条件で結晶成長を行った。その結果、酸素濃度は図2(a)のプロファイルに示すように1×1016cm-3程度であり、この時の移動度は45cm/V・sであった。また、図3(a)から分かるように、この時の薄膜の表面粗さのRMS値は14.1nmであった。

【0095】
ここで酸素有りと酸素無しの二通りの条件について考察を試みる。酸素有りの場合は、雰囲気中の酸素原子が成膜中の表面を覆い、応力の緩和と原子の表面でのマイグレーションを促進に役立っているためと考えられる。また、この表面荒れの抑制が点欠陥の導入を抑制し、移動度が向上しているものと考えている。尚、従来技術のMOCVD法などで使用される高温条件では、酸素が表面から蒸発してしまう。そのため、PSD法のような低温成長でみられる品質改善の効果を得ることが難しいと考えられる。

【0096】
これに対して酸素無しの場合は、上記の作用が起こりにくく、PSD法で成膜した結晶に欠陥を含みやすいためと考えられる。

【0097】
図4は、Si濃度(電子濃度)が2×1020cm-3のGaN膜の吸収係数(図4(A))と屈折率(図4(B))をエリプソメータで測定した結果を示すグラフである。なお、この膜の電子移動度は115cm/V・sである。青色LEDで標準的に使われる波長である450nmにおける吸収係数は844cm-1であり、青紫色レーザで標準的に使われる波長である405nmにおける吸収係数は1860cm-1であった。

【0098】
このように、酸素ドーピングにより、405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下の膜としたり、450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下の膜としたりすることが可能である。その結果、得られた化合物半導体を透明材料として用いることができる。

【0099】
以下、本発明の化合物半導体を適用し得る電子デバイスの各種の態様について説明する。

【0100】
(実施形態1)
まず、図9は本発明の13族窒化物半導体を基板上に形成した化合物半導体素子20の断面模式図を示す。21は基板(サファイア)、22はGaNである。

【0101】
(実施形態2)
図10は、本発明の化合物半導体を用いたコンタクト構造の断面模式図を示す。31はGaN基板、32はGaN(PSD法で成膜した化合物半導体の膜)、34は絶縁層、33は外部に接続され得る配線電極、35はコンタクトホール部である。

【0102】
(実施形態3)
図11は、本発明の13族窒化物化合物半導体を用いたコンタクト構造40の断面模式図を示す。図11中、41はn型GaNコンタクト層、42はTi層、43はAl層、44はNi層、45はAu層である。本例では複合型の金属電極が用いられている。成膜後に900℃程度で熱処理が行われる。

【0103】
(応用例)
図12は、本発明を適用し得る薄膜トランジスタの模式的な斜視図である。薄膜トランジスタの電極のコンタクト層に高濃度のn型GaN層を適用することができる。

【0104】
図中、51は無アルカリガラス基板等の基板、52は層間絶縁膜、53Sはソース側のコンタクト層(高濃度nGaN層)、54Sはソース領域、55は活性層、54Dはドレイン領域、53Dはドレイン側のコンタクト層(高濃度n+GaN層)、56はゲート酸化膜、57はソース電極、58はゲート電極、59はドレイン電極である。ソース領域54Sとドレイン領域54Dはコンタクト層と活性層との間で不純物の濃度が徐々に変化するように形成されている。

【0105】
図13は、本発明を適用し得るHEMT素子の模式的な斜視図である。AlGaN/GaN-HEMT素子のソース・ドレイン電極に接触する下部に配置されるコンタクト層に、本発明に係わる高濃度のn型GaN層を適用することができる。同図中、61はGaN、サファイア、SiCまたはSi等の基板、62はGaNまたはAlN等のバッファ層、63はGaNアンドープ層、64はAlGaNバリア層、65は高濃度n型GaN層を用いたコンタクト層である。さらに、ソース電極66、ゲート電極67、及びドレイン電極68が素子の上部に備えられている。

【0106】
上記の薄膜トランジスタ(図12)及びHMT素子(図13)において、高濃度のn型GaN層をコンタクト層に適用することができる。そして、動作電流が流れる回路要素(これらの素子においては、即ちソース、ドレインの部位)における電極との接触抵抗をかなり低減することができる。その結果、電子デバイスの性能向上に大きく寄与することができる。

【0107】
図14は本発明を適用し得るGaN系半導体デバイスの一例として、LED素子の断面模式図を示す。

【0108】
同図において、GaN、サファイア、SiCまたはSiの基板71側から複数の化合物半導体層を順次積層していく。バッファ層72、n型GaN層73、GaInN/GaNのMQW発光層74、p型GaN層75、p型GaN層76a、高濃度のn型GaN層からなるトンネル接合部76、n型GaN層77、高濃度のn型GaN層のコンタクト層78,及び電極79A、電極79Bが備えられている。

【0109】
図15に本発明を適用し得るInGaN/GaN VCSEL(面発光レーザ)構造の断面模式図を示す。垂直共振器面発光型レーザー(VCSEL : Vertical Cavity SurfaceEmitting Laser)は、共振器が半導体の基板面に対して垂直方向に形成されている。よって、レーザー光も基板面に垂直に射出される。

【0110】
同図中、81はGaN基板、82Dは内部の多層膜反射鏡、83はn型GaN層、84はGaInN/GaNからなるMQW活性層、85はp型alGaN層、86aはp型InGaN層、86bは高濃度のn型GaN層であり、86aと86Bでトンネル接合部86が形成されている。さらに、87はn型GaN層、88は高濃度のn型GaN層(コンタクト層)、89Aと89Bは電極、及び82Uは上部の多層膜反射鏡が備えられている。

【0111】
上述したように、本発明に係る化合物半導体は、発光素子や電子素子の大電流が流れる部位や、半導体素子のコンタクト部、透明電極等の電極構造等々に利用することができる。微小電圧で駆動する電子デバイスの配線などに好適に用いることができる。あるいは、従来技術では困難な大電流・大電力の仕様に適合させることができる。

【0112】
また、高電子移動度を有しているので抵抗が低く素子の高速化に寄与すると考えられる。

【0113】
これまで、本発明に係る化合物半導体、即ち、窒素と13族元素であるB、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる一つの元素を含有する2元系、3元系または4元系の化合物半導体であって、1×1017cm-3以上の酸素を不純物として含有し、5×1019cm-3以上の電子濃度を有し、N型導電性であり、電子移動度が46cm/V・s以上である化合物半導体について説明した。

【0114】
以降では、本発明者らによる第2の発明に係る窒化物半導体について説明する。

【0115】
この窒化物半導体は、高濃度にドナーをドープした結晶であるにも拘らず、従来のものに比較して比抵抗が低い(つまり、移動度が高い)という顕著な特徴を有している。

【0116】
具体的には、窒素と、B、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素を含有する、導電型がn型の窒化物半導体であって、電子濃度が1×1020cm-3以上で、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm以下である、窒化物半導体であり、好ましくは、少なくとも1種の13族元素はGaであり、SiまたはGeの何れか若しくは双方をドナー不純物として含有している。

【0117】
従来、MBE法により育成されたGeを高濃度でドープした窒化物半導体であって、比較的低い比抵抗を示すものは知られていたが、そのようなものに比較しても、本発明のものは更に低い比抵抗を、しかも、より高い電子濃度領域において実現している。

【0118】
このような、高濃度にドナーをドープした結晶であるにも拘らず比抵抗が低い(移動度が高い)窒化物半導体は、HEMTなどの電子素子における寄生抵抗の低減、ITOなどの透明導電膜に代わる材料の提供、LEDモジュールのカスケード接続といった種々の用途への利用が期待できる。

【0119】
図16は、本発明に係るGaNの電子濃度(cm-3)と比抵抗率(mΩ・cm)の関係を説明するための図である。図中に星印で示したものが本発明に係るGaNであり、白抜きのものはSiドープのもの、灰色のものはGeドープのものである。同図には、比較のため、これまでに報告されている、MOCVD法(丸印)およびMBE法(菱形印)で得られたGaNのデータも示すと同時に、理論計算から得られる電子濃度と抵抗率の関係も示した。なお、図中にθで示した値はイオン化不純物濃度の補償比(アクセプタ濃度Nとドナー濃度Nの比:N/N)である。

【0120】
従来の報告にあるGaN結晶は、MBE法で得られたものもMOCVD法で得られたものも、電子濃度が高くなるにつれて比抵抗が低くなる傾向は示すものの、ある電子濃度を超えると比抵抗が上昇している。

【0121】
例えば、MOCVD法で得られたGaNでは、SiドープのGaNでは電子濃度が5×1019cm-3を超えるあたりから比抵抗の上昇が認められ、GeドープのGaNでは電子濃度が1×1020cm-3を超えるあたりから比抵抗の上昇が認められる。また、MBE法で得られたGaNでは、SiドープのGaNでは電子濃度が1.5×1020cm-3を超えるあたりから比抵抗の上昇が認められ、GeドープのGaNでは電子濃度が5×1020cm-3を超えるあたりから比抵抗の上昇が認められる。

【0122】
これに対し、本発明に係るGaNの場合、Siドープのもの(白抜きのもの)もGeドープのもの(灰色のもの)も、少なくとも5×1020cm-3の電子濃度においても、斯かる比抵抗の上昇は認められない。

【0123】
しかも、従来のものは、高電子濃度領域において最も低い比抵抗を示すMBE法で得られたGeドープのGaNでさえ、概ね5×1020cm-3の電子濃度において比抵抗は精々0.4mΩ・cm(0.4×10-3Ω・cm)でしかないのに対し、本発明に係るGaNの場合、略同じ電子濃度における比抵抗は0.2mΩ・cm(0.2×10-3Ω・cm)を示している。

【0124】
この図に示した結果から明らかなように、本発明に係るGaNは、従来のものに比較して、特に電子濃度が1×1020cm-3以上の場合に、0.3×10-3Ω・cm以下という顕著に低い比抵抗を示すという特徴をもち、この特徴は電子濃度が2×1020cm-3以上であっても失われない。この傾向は、下表に整理したように、少なくとも0.196×10-3Ω・cmまでの比抵抗範囲で実験的に確認済みである。なお、イオン化不純物散乱による抵抗値の下限の理論値は0.04×10-3Ω・cmであるが、成膜条件等により、例えば0.2×10-3Ω・cm、或いは0.15×10-3Ω・cm、または0.1×10-3Ω・cmなどとなる。

【0125】
また、図17には、本発明に係るGaNにおける、SIMS測定で得たドナー不純物の濃度と電子濃度との関係を纏めた。この結果から、PSD法により得られた本発明に係るGaNにおいては、ドナーの活性率が略1となることが分かる。つまり、本発明に係るGaNにおいては、ドナー不純物のドーピング濃度を制御しさえすれば、電子濃度制御が可能であることが分かる。

【0126】
上述した本発明に係るGaNの諸特性(電子濃度、電子移動度、比抵抗、表面粗さ)を、表1(SiドープのGaN)および表2(GeドープのGaN)に纏めた。

【0127】
【表1】
JP2019062204A_000003t.gif

【0128】
【表2】
JP2019062204A_000004t.gif

【0129】
表1~2に整理したGaNは、何れも、既に説明したPSD法の結晶成長条件と概ね同様の条件下で得られたものであり、材料等は下記の純度のものを用いた。また、電子濃度は、カソード投入電力を20~150Wまで変化させて変化させた。

【0130】
成長時基板温度:600~700℃
スパッタリングターゲット(Si):純度99.999%の単結晶
スパッタリングターゲット(Ge):純度99.99%の単結晶
Ga:純度99.99999%
窒素ガス:純度99.9999%

【0131】
なお、本発明者は、高品質の結晶を成長させるに際し、成膜環境の真空度および真空の質が重要である点に留意しており、所望の膜質の結晶を得るために、パルススパッタの条件(パルス電圧、パルス幅、デューティ比など)を適宜調整している。このような細かな調整が迅速にできる点は、PSD法の利点のひとつである。

【0132】
また、上記諸物性の測定条件等は、下記のとおりである。

【0133】
電子濃度および電子移動度は、ホール測定装置(東陽テクニカ Resitest8400)を用い、試料の抵抗率により、印加電流は1mA~10mAの範囲、印加磁場は0.1~0.5T(テスラ)の範囲で測定した。測定温度は室温である。

【0134】
また、表面粗さは、AFM装置(JEOL社製JSPM4200)を用いて測定した。

【0135】
図18に、上記GaNの表面状態の例として、GeドープのGaNの試料表面のAFM像を示す。これらの試料のRMS値は何れも1nm未満である。一般に、AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下であれば十分に平坦な表面であると評価し得ることを考慮すると、本発明に係る窒化物半導体は、極めて平坦な表面を有していることが分かる。

【0136】
また、GaNのGaサイトを一部AlまたはInで置換した窒化物半導体(AlGaNおよびInGaN)についても結晶作製して、それらの諸特性を調べた。その結果を表3および表4に示す。なお、これらの試料において、Al濃度は1%、In濃度は1%であり、結晶成長に用いた材料の純度等は下記のとおりである。

【0137】
成長時基板温度:600~700℃
スパッタリングターゲット(Si):純度99.999%の単結晶
スパッタリングターゲット(Ge):純度99.99%の単結晶
Ga:純度99.99999%
Al:純度99.999%
In:純度99.999%
窒素ガス:純度99.9999%

【0138】
【表3】
JP2019062204A_000005t.gif

【0139】
【表4】
JP2019062204A_000006t.gif

【0140】
さらに、表1~4に示した各窒化物半導体のコンタクト抵抗を測定したところ、何れの試料においても、n型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下であることを確認した。この値は十分に低い値であり、上述した窒化物半導体を導電部として備えたコンタクト構造とすることで、HEMTなどの電子素子における寄生抵抗の低減、ITOなどの透明導電膜に代わる材料の提供、LEDモジュールのカスケード接続といった種々の用途への利用が期待できる。

【0141】
コンタクト抵抗の測定は、TLM(Transmission Line Model)測定装置(半導体パラメータアナライザ Agilent 4155C)を用い、Ti/Al/Ti/Auの電極構造(100μm×100μm)を電極間距離2μm~100μmで配置したTLMパターンのもので実施した。

【0142】
なお、既に説明したように、窒化物半導体の窒素サイトを置換してドナーとして作用するドーパントである酸素を不純物として混入させて膜のバンドギャップを広げて補償することにより、窒化物半導体の膜中での電子濃度が高くなることに起因した透明性の低下を補うことができる。

【0143】
この目的のためには、例えば、上述した窒化物半導体に、酸素不純物を1×1017cm-3以上含有させる。このような酸素不純物含有により、405nmの波長領域の光に対する吸光係数を2000cm-1以下としたり、450nmの波長領域の光に対する吸光係数を1000cm-1以下とすることができる。

【0144】
上述した本発明に係る窒化物半導体はPSD法で形成されたものであるが、上記特性が得られる理由につき、本発明者らは、他の結晶成長方法では結晶成長が熱平衡状態下で進行するのに対し、PSD法においては熱的に非平衡な状態下で結晶成長が進行することによるものと考えている。

【0145】
高濃度にドナーをドープしたGaN等の窒化物半導体は熱力学的に不安定であるため、結晶成長の進行中にも部分的に分解が生じる。つまり、結晶の成長と分解の両方が同時に生じているため、この分解の際に、結晶中に一旦取り込まれたドナー不純物が吐き出されてしまう。そして、ドナー不純物を高濃度でドープしようとすると、このドナー不純物の吐き出し現象が無視できないレベルに達し、結晶性そのものを低下させてしまう。つまり、ドナー不純物を高濃度でドープする場合には、熱的平衡状態に近い結晶成長条件では結晶性の低下が避けられないのである。

【0146】
しかし、PSD法においては、熱的に非平衡な状態下で結晶成長が進行するため、上述のドナー不純物の吐き出しが生じ難いため、結晶性の低下が生じ難いのである。

【0147】
なお、一般的な傾向として、ドナーとしてSiを用いたものの方が、Geを用いたものに比して、窒化物半導体結晶中に高濃度で取り込まれ易い。その理由のひとつとして、Geのイオン半径がGaのイオン半径に近いためにGaイオンサイトを容易に置換することが考えられる。その結果、窒化物半導体膜中の応力の蓄積も小さくなり、膜の表面も平坦になり易い傾向が認められる。

【0148】
このように、本発明のものは、従来のものに比較して、より低い比抵抗を、より高い電子濃度領域において実現する。

【0149】
なお、オン抵抗が小さい窒化物半導体装置に関する発明を開示する文献としては、例えば下記のものがある。

【0150】
特開2016-115931号公報(特許文献4)には、オン抵抗が小さい窒化物半導体装置の発明が開示されており、段落0049には「前述したように、ソース側窒化物半導体再成長層205aおよびドレイン側窒化物半導体再成長層206aは高濃度にn型不純物を含んでいてもよい。しかし、図4に示すように、不純物がシリコン(Si)である場合、窒化物半導体層の成長中に供給する不純物量を多くしても、形成される窒化物半導体層におけるキャリア濃度は高くならない。つまり限界がある。これに対し、ゲルマニウム(Ge)を不純物として用いた場合、シリコンよりも高いキャリア濃度を実現することが可能である。」なる記載がある。

【0151】
また、段落0095には「作製した窒化物半導体装置200の複合電極の特性を調べるため、窒化物半導体再成長層単体のシート抵抗と2DEGへのコンタクトをとった場合のコンタクト抵抗とを伝送路測定(Transmission Line Measurement:TLM)法によって測定した。図7は、Geの供給量に対する窒化物半導体再成長層単体のシート抵抗を示す。TEGeの供給量増加とともに、TMGに対してTEGeの流量比を0.09以上にすることにより、1.5×10-6Ωcm程度までシート抵抗が低下した窒化物半導体再成長層が得られることが分かった。この条件を用いて作製した窒化物半導体再成長層を用いた場合の窒化物半導体装置200のコンタクト抵抗は1~5×10-6Ωcmとなり、2DEGへの良好なコンタクトが得られていることが分かった。」なる記載がある。

【0152】
ここで特許文献4について、優先権主張がなされた基礎出願、及び対応米国出願の米国特許公開US2016/0172473号公報(特許文献5)の関連箇所の記載を見比べてみる。すると、図7の縦軸の名称・単位が様々に変化しており、何らかの誤記を内包していたものと推測される。

【0153】
さらに、特許文献4の発明者らによる技術文献(IEDM14:非特許文献9)の275-278頁("Extremely low on-resistance Enhancement-mode GaN-based HFET using Ge-doped regrowth technique")を参照する。そこには、低いオン抵抗を示すGeドープの窒化物半導体再成長層が開示されており、Fig.3には、特許文献4の図7と全く同じ図が示されている。

【0154】
その縦軸は「Specific contact resistance(Ωcm2)」とされ、当該Fig.3に関し、本文には「The measured specific contactresistance as a function of TEGe supply is shown infig. 3, where extremely low specific contact resistance of 1.5 x 10-6Ω・cm2 was achieved.」との記載がある。そうすると、特許文献4の図7の縦軸は、恐らくは「コンタクト抵抗」であり、単位は「Ωcm」であるべきものと考えられる。

【0155】
仮に、特許文献4の図7のように、比抵抗が1.5×10-6Ωcm程度であったとし、Ge濃度(電子濃度)を1×1020cm-3と仮定した場合、電子の移動度が概ね42,000cm/Vsといった数値になってしまう。これはGaN結晶中の電子移動度として知られる常識的な値(1,200cm/Vs程度)から大きくかけ離れた数値である。このことからも、上記の箇所に誤記があったことは明らかであろう。

【0156】
このように、特許文献4に開示のものは、「1.5×10-6Ωcm程度までコンタクト抵抗が低下した窒化物半導体再成長層」であったと考えられる。

【0157】
上述した本発明に係る窒化物半導体は、高濃度にドナーをドープした結晶であるにも拘らず比抵抗が低い(移動度が高い)という特徴を生かし、HEMTなどの電子素子における寄生抵抗の低減、ITOなどの透明導電膜に代わる材料の提供、LEDモジュールのカスケード接続といった種々の用途への利用が期待でき、例えは下記のような応用が可能である。

【0158】
[縦型パワーMOSFETへの応用]
図19は、縦形パワーMOSFETの断面概略図である。この縦形パワーMOSFET100は、n-GaN層102、n-GaN層103、p-GaN層104の積層構造の上に、本発明に係る窒化物半導体のn-GaN層105が形成されている。この本発明に係るn-GaN層105のパターニング加工には全面にn-GaN層を堆積した後に、リソグラフィー技術を用いるか、あるいは、試料表面の一部のみに窒化ガリウムの結晶面を露出させ、その露出部に選択的にn-GaN層をエピタキシャル成長する選択成長技術を用いてもよい。なお、符号106で示したものは絶縁膜、符号101で示したものはドレイン、符号107で示したものはソース、符号108で示したものはゲートである。

【0159】
[LEDへの応用]
図20は、GaN系LEDの断面概略図である。LED200は、窒化物半導体から成る基板201の上に、n型窒化物半導体層202、量子井戸層を含む活性層203、p型窒化物半導体層204、および本発明のn-GaN層205が順次積層されている。

【0160】
また、n-GaN層205とp型窒化物半導体層204と活性層203の一部が除去されて露出したn型窒化物半導体層202の領域にカソード電極206が形成され、p型窒化物半導体層204の上方には、n-GaN層205を介してアノード電極207が形成されている。ここで、本発明のn-GaN層205は、p型窒化物半導体層204と、トンネル接合で導通している。

【0161】
[ショットキダイオードへの応用]
図21は、ショットキダイオードの断面概略図である。このショットキダイオード300は、裏面に本発明のn-GaN層306を形成したn-GaN基板301の表面にn-GaN層302が形成され、n-GaN層306の側にはオーミック電極303が、n-GaN層302側にはショットキ電極304が形成されている。なお、図中に符号305で示したものは絶縁膜である。

【0162】
本発明に係る、高濃度にドナーをドープした結晶であるにも拘らず比抵抗が低い(移動度が高い)窒化物半導体は、上述しデバイス以外にも、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のn-GaN層にも利用可能である。

【0163】
以上説明したように、本発明者らによる第2の発明である化合物半導体は、下記のように整理することができる。

【0164】
窒素と、B、Al、GaまたはInからなる群より選ばれる少なくとも1種の13族元素を含有する、導電型がn型の窒化物半導体であって、電子濃度が1×1020cm-3以上で、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm以下である、窒化物半導体である。

【0165】
好ましくは、前記電子濃度が2×1020cm-3以上である。

【0166】
また、好ましくは、n型オーミック電極金属に対するコンタクト抵抗が1×10-4Ωcm-2以下である。

【0167】
ある態様では、酸素不純物を1×1017cm-3以上含有する。

【0168】
好ましくは、405nmの波長領域の光に対する吸光係数が2000cm-1以下である。

【0169】
また、好ましくは、450nmの波長領域の光に対する吸光係数が1000cm-1以下である。

【0170】
さらに、好ましくは、AFMによる表面粗さ測定で得られるRMS値が5.0nm以下である。

【0171】
ある態様では、前記少なくとも1種の13族元素はGaである。

【0172】
また、ある態様では、前記窒化物半導体は、SiまたはGeの何れか若しくは双方をドナー不純物として含有している。

【0173】
上記比抵抗の下限値は、例えば0.2×10-3Ω・cm、或いは0.15×10-3Ω・cm、または0.1×10-3Ω・cmである。

【0174】
上記窒化物半導体の電子濃度と比抵抗の関係は、(a)電子濃度が1×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、(b)電子濃度が3×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.3×10-3Ω・cm、(c)電子濃度が4×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cm、及び(d)電子濃度が9×1020cm-3、且つ、比抵抗が0.15×10-3Ω・cmの4点で囲まれた数値範囲を満たす。

【0175】
上記発明は、窒化物半導体を導電部として備えたコンタクト構造とすることができる。また、上記窒化物半導体を電極部として備えたコンタクト構造とすることもできる。このようなコンタクト構造は半導体素子への利用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明に係る2元系、3元系または4元系の窒化物半導体は、5×1019cm-3以上という高い電子濃度領域においても、46cm/V・s以上の電子移動度を示す。
【0177】
本発明によれば、電気抵抗が低くかつ大電流を必要とする電子デバイス、例えば、HMETなど横型や縦型のパワー半導体デバイス、高耐圧ダイオード、薄膜トランジスタ、ディスプレイデバイス等の配線構造のコンタクト部、活性層など、電子回路の性能を決定づける重要な回路要素に適用することができる。
【0178】
また、本発明の窒化物半導体は、パワー半導体デバイスやディスプレイデバイス、発光素子だけでなく、高速通信素子、演算素子、太陽電池、制御回路、自動車用電子装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0179】
1 スパッタリング装置
2 巻きだしロール
3 巻き取りロール
4 基板フィルム
5 成膜室
10 連続成膜装置
11 チャンバ
12 基板電極
13 ターゲット電極
14 直流電源
15 電源制御部
16 窒素供給源
17 加熱装置
12a 放熱シート
21 基板
22 GaN
31 基板
32 GaN
33 絶縁層
34 絶縁層
35 コンタクトホール部
41 n型GaNコンタクト層
42 Ti層
43 Al層
44 Ni層
45 Au層
100 縦形パワーMOSFET
101 ドレイン
102 n-GaN層
103 n-GaN層
104 p-GaN層
105 n-GaN層
106 絶縁膜
107 ソース
108 ゲート
200 LED
201 基板
202 n型窒化物半導体層
203 活性層
204 p型窒化物半導体層
205 n側電極
206 p側電極
300 ショットキダイオード
301 n-GaN基板
302 n-GaN層
303 オーミック電極
304 ショットキ電極
305 絶縁膜
306 n-GaN層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20