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スイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路
> 明細書
明細書 :スイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路
発行国
日本国特許庁(JP)
公報種別
公開特許公報(A)
公開番号
特開2020-155527 (P2020-155527A)
公開日
令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称
スイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路
国際特許分類
H01L 21/822 (2006.01)
H01L 27/04 (2006.01)
H03H 7/38 (2006.01)
FI
H01L 27/04 V
H03H 7/38 B
H01L 27/04 C
請求項の数または発明の数
5
出願形態
OL
全頁数
10
出願番号
特願2019-051148 (P2019-051148)
出願日
平成31年3月19日(2019.3.19)
発明者または考案者
【氏名】石崎 俊雄
出願人
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人
【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求
未請求
テーマコード
5F038
Fターム
5F038AC20
5F038AV09
5F038AV13
5F038AV17
5F038AZ04
5F038AZ05
5F038BG02
5F038DF17
5F038EZ20
要約
【課題】スイッチ素子がオフ容量を有していても、回路が複雑にならずに高周波領域でも所望の可変の容量値を実現可能なスイッチ切り替え型可変容量を提供する。
【解決手段】このスイッチ切り替え型可変容量1は、第1端子6と第2端子7の間に設けられた基準用固定容量2と、第1端子6と第2端子7の間に基準用固定容量2と並列に設けられ、オフ状態及びオン状態となり得てオフ時にオフ容量(容量値CF
K
)を有するスイッチ素子3
K
とそれに直列接続された切り替え用固定容量4
K
とを有するN個の直列体5
K
(ここで、Nは2以上の自然数、Kは1~Nの自然数)と、を備え、離散的な容量値を示すN桁の2進数の値に応じてN個の直列体5
K
のスイッチ素子3
K
のオフ状態及びオン状態が切り替わることで、2
N
通りに容量値が切り替わり得る。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
第1端子と第2端子の間に設けられた基準用固定容量と、
前記第1端子と前記第2端子の間に前記基準用固定容量と並列に設けられ、オフ状態及びオン状態となり得てオフ時にオフ容量を有するスイッチ素子とそれに直列接続された切り替え用固定容量とを有するN個の直列体(ここで、Nは2以上の自然数)と、を備え、
離散的な容量値を示すN桁の2進数の値に応じて前記N個の直列体の前記スイッチ素子のオフ状態及びオン状態が切り替わることで、2
N
通りに容量値が切り替わり得ることを特徴とするスイッチ切り替え型可変容量。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ切り替え型可変容量を設計する設計方法であって、
前記2進数のK桁目のビットに1が立つときの前記スイッチ切り替え型可変容量の容量値の該2進数の値が1少ないときに比べての差分ΔC
K
を全てのKの値について定め(ここで、Kは1~Nの自然数)、
前記2進数の全ての桁のビットが0のときの前記スイッチ切り替え型可変容量の容量値C
R
を定め、
前記N個の直列体の前記切り替え用固定容量の容量値C
K
及び前記基準用固定容量の容量値C
0
は、前記差分ΔC
K
と前記容量値C
R
と前記スイッチ素子の前記オフ容量の容量値CF
K
により導出されることを特徴とするスイッチ切り替え型可変容量の設計方法。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法において、
前記C
K
は、下記(式2)(ここで、A
K
は下記(式1)で与えられるもの)のように導出されることを特徴とするスイッチ切り替え型可変容量の設計方法。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法において、
前記C
0
は、下記(式3)のように導出されることを特徴とするスイッチ切り替え型可変容量の設計方法。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチ切り替え型可変容量又は請求項2~4のいずれか1項に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法を用いて設計されたスイッチ切り替え型可変容量を有することを特徴とするインピーダンス整合回路。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波領域などの高周波領域で好適なスイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波領域などの高周波領域の回路では、電力を効率良く伝送するためにインピーダンス整合を行うことが必要であり、一般に、接続する素子間若しくは回路間にインピーダンス整合回路を設けて整合を行う。しかしながら、素子又は回路によっては動作条件によりインピーダンスが変化してしまうものが多々あり、インピーダンス整合回路を特定の容量値に固定できない場合も少なくない。その場合、多くは、バラクタダイオードなどの可変容量を用いたインピーダンス整合回路が用いられているが、バラクタダイオードを用いる回路は損失が大きい。
【0003】
一方、一般に、可変容量には、バラクタダイオードの他に、例えば特許文献1に開示されているように、FET(電界効果トランジスタ)をスイッチ素子として用い、FETにより複数個の固定の容量を切り替えるものが知られている。このようなスイッチ切り替え型可変容量では、ゲート幅を大きくしてFETのオン抵抗を減らすことにより、損失を低減することも可能である。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-62209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スイッチ切り替え型可変容量では、FETがオフ時でも固定の容量が完全に切り離されるわけではなく、実際にはFETのオフ容量と固定の容量との合成容量が付加された状態となる。特に、ゲート幅を大きくしてFETのオン抵抗を減らすと、逆比例してオフ容量が増加し、スイッチ切り替え型可変容量を高周波領域で用いると、所望の容量値を実現することが容易ではない。このオフ容量を無視できるくらいに小さくするためには、ドレイン-ソース間に並列にインダクタを接続するなどの補償手段を追加する方法が可能であるが、回路が複雑になり、更には、周波数特性が狭くなったり、かえってインダクタなどによる損失の増加があったりもする。また、周波数が比較的低ければ、FETの製造のプロセスの改良によりオフ容量を減少させることも考えられるが、FETが非常に高価なものとなる。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイッチ素子がオフ容量を有していても、回路が複雑にならずに高周波領域でも所望の可変の容量値を実現可能なスイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のスイッチ切り替え型可変容量は、第1端子と第2端子の間に設けられた基準用固定容量と、前記第1端子と前記第2端子の間に前記基準用固定容量と並列に設けられ、オフ状態及びオン状態となり得てオフ時にオフ容量を有するスイッチ素子とそれに直列接続された切り替え用固定容量とを有するN個の直列体(ここで、Nは2以上の自然数)と、を備え、離散的な容量値を示すN桁の2進数の値に応じて前記N個の直列体の前記スイッチ素子のオフ状態及びオン状態が切り替わることで、2
N
通りに容量値が切り替わり得ることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法は、請求項1に記載のスイッチ切り替え型可変容量を設計する設計方法であって、前記2進数のK桁目のビットに1が立つときの前記スイッチ切り替え型可変容量の容量値の該2進数の値が1少ないときに比べての差分ΔC
K
を全てのKの値について定め(ここで、Kは1~Nの自然数)、前記2進数の全ての桁のビットが0のときの前記スイッチ切り替え型可変容量の容量値C
R
を定め、前記N個の直列体の前記切り替え用固定容量の容量値C
K
及び前記基準用固定容量の容量値C
0
は、前記差分ΔC
K
と前記容量値C
R
と前記スイッチ素子の前記オフ容量の容量値CF
K
により導出されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法は、請求項2に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法において、前記C
K
は、下記(式2)(ここで、A
K
は下記(式1)で与えられるもの)のように導出されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法は、請求項3に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法において、前記C
0
は、下記(式3)のように導出されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のインピーダンス整合回路は、請求項1に記載のスイッチ切り替え型可変容量又は請求項2~4のいずれか1項に記載のスイッチ切り替え型可変容量の設計方法を用いて設計されたスイッチ切り替え型可変容量を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路によれば、スイッチ素子がオフ容量を有していても、回路が複雑にならずに高周波領域でも所望の可変の容量値を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチ切り替え型可変容量を示す回路図であって、(a)は一般式(Kは1~Nの自然数)の図、(b)はNが2の場合の図、(c)はNが3の場合の図である。
【図2】同上のスイッチ切り替え型可変容量を有するインピーダンス整合回路を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るスイッチ切り替え型可変容量1は、図1(a)に示すように、基準用固定容量2を備え、また、スイッチ素子3
K
とそれに直列接続された切り替え用固定容量4
K
を有する直列体5
K
をN個備える(ここで、Nは2以上の自然数、Kは1~Nの自然数)ものである。基準用固定容量2とN個の直列体5
K
は、第1端子6と第2端子7の間に設けられている。N個の直列体5
K
は、基準用固定容量2と並列に設けられている。
【0015】
基準用固定容量2は、容量値C
0
の固定容量である。スイッチ切り替え型可変容量1は、容量値C
0
よりも大きな値になる。
【0016】
切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
は、Kの値が大きくなるに従って大きくなるようにしている。
【0017】
スイッチ素子3
K
は、オフ状態及びオン状態となり得るものである。スイッチ素子3
K
は、典型的にはFET(電界効果トランジスタ)であるが、それに限定されるものではない。また、スイッチ素子3
K
のオン状態及びオフ状態は、制御端子8
K
の状態によって制御される。制御端子8
K
は、外部入力により、離散的な容量値を示すN桁の2進数の値に応じた状態にされる(スイッチ素子3
K
がFETの場合は、2値の電位(多くは、電源電位(VDD)及び接地電位)が入力される)。スイッチ素子3
K
は、オフ状態が2進数のビットの値の0、オン状態が1に対応する。
【0018】
N個の直列体5
K
の各々は、それが含む切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
の大きさの順に従って、離散的な容量値を示すN桁の2進数の各桁に対応している。つまり、切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
が最小の直列体5
K
(つまり5
1
)は2進数の最下位の桁(つまり1桁目)に対応し、切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
が大きくなるに従ってその直列体5
K
は大きい位の桁に対応し、切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
が最大の直列体5
K
(つまり5
N
)は2進数の最上位の桁(つまりN桁目)に対応する。
【0019】
こうして、スイッチ切り替え型可変容量1は、離散的な容量値を示すN桁の2進数の値に応じてN個の直列体5
K
のスイッチ素子3
K
のオフ状態及びオン状態が切り替わることで2
N
通りの容量値が切り替え可能であり、インピーダンス整合回路などの回路に用いることができる(図2参照)。
【0020】
スイッチ素子3
K
は、オフ時にオフ容量(容量値CF
K
)を有する。直列体5
K
の容量値は、スイッチ素子3
K
がオフ時には、オフ容量と切り替え用固定容量4
K
との合成容量の容量値となり、一方、スイッチ素子3
K
がオン時には、切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
となる。
【0021】
スイッチ切り替え型可変容量1における2
N
通りの容量値は、以下に詳述するように、2進数のK桁目のビットに1が立つときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値の該2進数の値が1少ないときに比べての差分ΔC
K
を全てのKの値について定める(ここで、KはN以下の自然数)ことと、2進数の値が0(つまり、2進数の全ての桁のビットが0)のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値(つまり、スイッチ切り替え型可変容量1の容量値の最低値)C
R
を定めることによって、定めることができる。
【0022】
2進数のK桁目のビットに1が立つときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値の該2進数の値が1少ないときに比べての差分ΔC
K
とは、換言すると、K桁目のビットが1でK-1桁目以下のビットが全て0のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値とK桁目のビットが0でK-1桁目以下のビットが全て1のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値との差分のことである。このとき、K+1桁目以上のビットの状態(以下、「・」で示す)は影響しない。例えば、Kの値が1の場合は、ΔC
K
はΔC
1
であり、ΔC
1
は、1桁目のビットが1のとき(・・・1のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値と1桁目のビットが0のとき(・・・0のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値との差分である。Kの値が2の場合は、ΔC
K
はΔC
2
であり、ΔC
2
は、2桁目のビットが1で1桁目のビットが0のとき(・・10のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値と2桁目のビットが0で1桁目のビットが1のとき(・・01のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値との差分である。Kの値が3の場合は、ΔC
K
はΔC
3
であり、ΔC
3
は、3桁目のビットが1で2桁目以下のビットが全て0のとき(・100のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値と3桁目のビットが0で2桁目以下のビットが全て1のとき(・011のとき)のスイッチ切り替え型可変容量1の容量値との差分である。Kの値が4以上の場合でも同様である。
【0023】
なお、差分ΔC
K
は、Kの値に係わらず一定値ΔCにすることも可能である。そうすると、N桁の2進数の値を1だけ変えると、常にスイッチ切り替え型可変容量1の容量値が一定値ΔCだけ変化して切り替わるようになる。
【0024】
差分ΔC
K
を全てのKの値について定め、2進数の値が0のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値C
R
を定めることによって、例えば、2進数の値が1のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
とし、2進数の値が10のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
+ΔC
2
とし、2進数の値が11のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
+ΔC
2
+ΔC
1
とし、2進数の値が100のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
+ΔC
2
+ΔC
1
+ΔC
3
とし、2進数の値が101のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
+ΔC
2
+ΔC
1
+ΔC
3
+ΔC
1
とし、2進数の値が110のときにはスイッチ切り替え型可変容量1の容量値をC
R
+ΔC
1
+ΔC
2
+ΔC
1
+ΔC
3
+ΔC
1
+ΔC
2
というように(2進数の値が111以上の場合も同様である)、スイッチ切り替え型可変容量1における2
N
通りの容量値を定めることができる。
【0025】
次に、これらの差分ΔC
K
と容量値C
R
を実現するために、これらの差分ΔC
K
と容量値C
R
とスイッチ素子3
K
のオフ容量の容量値CF
K
による切り替え用固定容量4
K
の容量値C
K
及び基準用固定容量2の容量値C
0
の導出について説明する。
【0026】
容量値C
K
は以下のようにして導出することができる。すなわち、2進数のK桁目のビットに1が立ったときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値は、下記の方程式(式A)の左辺と右辺であらわすことができる。
【0027】
(式A)の左辺は、2進数の全ての桁のビットが0のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値(つまり、スイッチ切り替え型可変容量1の容量値の最低値)C
R
を基に、2進数のi桁目(及びK桁目)のビットに1が立つ毎にその差分ΔC
i
(及びΔC
K
)を足し合わせたものである(ここで、iはK-1以下の自然数)。つまり、ΔC
1
が2
K-2
回分、・・・、ΔC
K-1
が1回分、ΔC
K
が1回分、足し合わせたものとなっている。なお、(式A)の左辺は、Kの値が1の場合は、Σによる数列の和は0になり、C
R
+ΔC
1
となる。
【0028】
(式A)の右辺は、1個の直列体5
K
に着目し、2進数の全ての桁のビットが0のときのスイッチ切り替え型可変容量1の容量値(つまり、スイッチ切り替え型可変容量1の容量値の最低値)C
R
に、2進数のK桁目のビットが1のときと0のときの直列体5
K
の容量値の差を足し合わせたものである
【0029】
下記(式1)のようにA
K
を定義する。
A
K
を用いると、(式A)は下記の方程式(式B)のようになる。
【0030】
(式B)を解くと、容量値C
K
が下記(式2)に示すように導出される。
【0031】
そして、基準用固定容量2の容量値C
0
は、以下の(式3)に示すように、導出することができる。Σによる数列の和は、スイッチ素子3
K
が全てオフになったときの全ての直列体5
K
の容量値の和である。
【0032】
なお、スイッチ素子3
K
のオフ容量の容量値CF
K
は、通常は同じ特性のスイッチ素子3
K
が用いられるということから、Kの値に係わらず一定値CFにして算出することも可能である。
【0033】
以上のようにして、どのようなNの値でも容量値C
K
及び容量値C
0
が導出できる。一般的に、Nの値が小さいものの方が用いられ易いと考えられるので、以下、図1(b)に示すようなNが2の場合と図1(c)に示すようなNが3の場合を具体的な数字を当てて説明する。
【0034】
Nが2の場合は、(式1)は、A
1
=ΔC
1
、A
2
=ΔC
1
+ΔC
2
となり、(式2)は、
となる。また、(式3)は、
となる。
【0035】
ここで、もし、差分ΔC
K
をKの値に係わらず一定値ΔCとし、スイッチ素子3
1
、3
2
の全てのオフ容量の容量値CF
K
を一定値CFとしたならば、(式2a)は、
となり、(式3a)は、
となる。
【0036】
Nが3の場合は、(式1)は、A
1
=ΔC
1
、A
2
=ΔC
1
+ΔC
2
、A
3
=2ΔC
1
+ΔC
2
+ΔC
3
となり、(式2)は、
となる。また、(式3)は、
となる。
【0037】
ここで、差分ΔC
K
をKの値に係わらず一定値ΔCとし、スイッチ素子3
1
、3
2
、3
3
の全てのオフ容量の容量値CF
K
を一定値CFとしたならば、(式2b)は、
となり、(式3b)は、
となる。
【0038】
以上説明したように、スイッチ切り替え型可変容量1は、切り替えの(可変の)容量値がスイッチ素子3
K
のオフ容量の容量値CF
K
を組み入れたものにすることができるので、スイッチ素子3
K
がオフ容量を有していても、また、たとえオン抵抗を減らすようにスイッチ素子3
K
のサイズ(スイッチ素子3
K
がFETの場合は、そのゲート幅)を大きくしても、回路が複雑にならずにマイクロ波領域などの高周波領域でも所望の切り替えの(可変の)容量値を実現可能となる。また、2
N
通りの容量値を実現するのに直列体5
K
がN個で済むので、専有面積が大きくならなくて済み、また、高価な(高周波領域では特に高価な)スイッチ素子3
K
の数も多くならなくて済む。例えば、4通りの容量値を実現するのに直列体5
K
が僅か2個(つまり、スイッチ素子3
K
と切り替え用固定容量4
K
がそれぞれ僅か2個)で済み、8通りの容量値を実現するのに直列体5
K
が僅か3個(つまり、スイッチ素子3
K
と切り替え用固定容量4
K
がそれぞれ僅か3個)で済む。
【0039】
なお、式3(及び式3a、3a’、3b、3b’)の右辺がもし負の値になった場合には、基準用固定容量2の容量値C
0
を下記の(式C)に示すインダクタンスL
0
により等価的に実現することが可能である。ここで、ω
0
は信号の角周波数である。本願では、この場合でも、インダクタンスL
0
のインダクタをそれと等価な容量値C
0
の基準用固定容量(明細書中では基準用固定容量2)と表記するものとする。
【0040】
スイッチ切り替え型可変容量1は、上記のように、インピーダンス整合回路に用いることができる。この場合、例えば、図2に示す高周波用の出力回路9Aの出力インピーダンスを整合するインピーダンス整合回路9Bのように、スイッチ切り替え型可変容量1の第1端子6と第2端子7のうち一方を出力回路9Aの出力から負荷9Cまでの間の信号線に接続し、第1端子6と第2端子7のうち他方を接地電位に接続するようにできる。なお、図2では、インピーダンス整合回路9Bとして、インダクタ9Baを挟んで2個のスイッチ切り替え型可変容量1を設けたπ型のものを例示しており、また、図中の9Bb
K
、9Bc
K
はそれぞれ、スイッチ切り替え型可変容量1の制御端子8
K
の入力電位を制御する外部スイッチであってマニュアルスイッチや電子スイッチなどが可能である。
【0041】
インピーダンス整合回路9Bのようなインピーダンス整合回路は、例えば、マイクロ波加熱やマイクロ波通信などで用いることができ、また、ワイヤレス電力伝送(WPT)などでも用いることができる。また、スイッチ切り替え型可変容量1は、インピーダンス整合回路以外でも、フィルタ回路や発振回路などの回路で用いることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態に係るスイッチ切り替え型可変容量、スイッチ切り替え型可変容量の設計方法、及びインピーダンス整合回路について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載する事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 スイッチ切り替え型可変容量
2 基準用固定容量
3
K
スイッチ素子
4
K
切り替え用固定容量
5
K
スイッチ素子と切り替え用固定容量の直列体
6 第1端子
7 第2端子
8
K
制御端子
9A 高周波用の出力回路
9B インピーダンス整合回路
9Ba インピーダンス整合回路内のインダクタ
9Bb
K
、9Bc
K
外部スイッチ
9C 負荷
図面
【図1】
【図2】