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明細書 :炭酸基高含有炭酸アパタイト

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-111478 (P2020-111478A)
公開日 令和2年7月27日(2020.7.27)
発明の名称または考案の名称 炭酸基高含有炭酸アパタイト
国際特許分類 C01B  25/26        (2006.01)
A61L  27/02        (2006.01)
A61L  27/42        (2006.01)
B01J  20/04        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
C01B  25/45        (2006.01)
A61K  47/02        (2006.01)
A61L  27/12        (2006.01)
FI C01B 25/26
A61L 27/02
A61L 27/42
B01J 20/04 B
B01J 20/28 Z
C01B 25/45 D
C01B 25/45 A
C01B 25/45 Z
A61K 47/02
A61L 27/12
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2019-002040 (P2019-002040)
出願日 平成31年1月9日(2019.1.9)
発明者または考案者 【氏名】関根 由莉奈
【氏名】南川 卓也
【氏名】香西 直文
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110002860、【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C081
4G066
Fターム 4C076AA95
4C076DD26
4C076FF68
4C081AB03
4C081BA13
4C081BB09
4C081CD31
4C081CF011
4C081CF21
4C081CF23
4C081CF24
4G066AA13B
4G066AA15B
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066AA18A
4G066AA39B
4G066AA43B
4G066AA50B
4G066AA80A
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA31
4G066CA12
4G066CA20
4G066CA45
4G066CA46
4G066CA47
4G066CA49
4G066CA52
4G066CA54
4G066DA08
4G066DA15
4G066FA11
4G066FA20
4G066FA21
4G066FA37
要約 【課題】重金属吸着能に優れた炭酸基高含有炭酸アパタイトを提供すること。
【解決手段】15.6重量%以上の炭酸基を含み、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)のうち少なくとも一つを含み、好ましくはCa/Pのモル比が1.5以上である、炭酸アパタイト。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
15.6重量%以上の炭酸基を含む炭酸アパタイト。
【請求項2】
16.0重量%以上の炭酸基を含む、請求項1に記載の炭酸アパタイト。
【請求項3】
Ca/Pのモル比が1.5以上である、請求項1または2に記載の炭酸アパタイト。
【請求項4】
銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)のうち少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記
載の炭酸アパタイト。
【請求項5】
結晶子サイズが平均1~100 nmである結晶構造を含む、請求項1~4のいずれか一項に記
載の炭酸アパタイト。
【請求項6】
バルク体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の炭酸アパタイト。
【請求項7】
平均粒径10μm~500μmの粉末状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の炭酸アパ
タイト。
【請求項8】
動物骨由来である、請求項1~7のいずれか一項に記載の炭酸アパタイト。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトを含む、金属吸着材。
【請求項10】
金属がカドミウム、ストロンチウム、コバルト、銅、鉛、マンガン、ニッケル、マグネシウム、水銀、ヒ素、アルミニウム、スズ、ベリリウムおよびウランから選ばれる1種類以上である、請求項9に記載の金属吸着材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属吸着材などとして好適に使用することのできる炭酸基高含有炭酸アパタイトとその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アパタイト化合物は生体との親和性が良好であるため、人工骨やドラッグデリバリーキャリア等の素材としての利用を目指して、合成法や物性について多く研究されている。また、有害金属に対しても吸着性を有するため、吸着材料としても提案されてきた。しかし、その吸着性能やイオン選択性には課題が残されていた。
【0003】
特許文献1には炭酸基を1重量%~15重量%含有した炭酸含有リン酸カルシウムが開示されているが、リン酸カルシウム過飽和溶液に炭酸液を混合することで作製されたものであり、炭酸基導入率は不十分であった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005-126335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属吸着材などとして好適に使用することのできる炭酸基高含有炭酸アパタイトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するための鋭意検討を行った結果、家畜骨を利用して焼成工程及び塩基性炭酸化合物反応工程を行うことにより、炭酸基を高含有する金属イオン選択性および吸着能力に優れた炭酸アパタイト化合物が得られることを見出した。すなわち、炭酸基高含有炭酸アパタイトを製造することに成功した。以上のような知見に基づき、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は以下を提供する。
[1]15.6重量%以上の炭酸基を含む炭酸アパタイト。
[2]16.0重量%以上の炭酸基を含む、[1]に記載の炭酸アパタイト。
[3]Ca/Pのモル比が1.5以上である、[1]または[2]に記載の炭酸アパタイト。
[4]銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)
、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)のうち少なくとも一つを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の炭酸アパタイト。
[5]結晶子サイズが平均1~100 nmである結晶構造を含む、[1]~[4]のいずれかに記
載の炭酸アパタイト。
[6]バルク体である、[1]~[5]のいずれかに記載の炭酸アパタイト。
[7]平均粒径10μm~500μmの粉末状である、[1]~[5]のいずれかに記載の炭酸アパ
タイト。
[8]動物骨由来である、[1]~[7]のいずれかに記載の炭酸アパタイト。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の炭酸アパタイトを含む、金属吸着材。
[10]金属がカドミウム、ストロンチウム、コバルト、銅、鉛、マンガン、ニッケル、マグネシウム、水銀、ヒ素、アルミニウム、スズ、ベリリウムおよびウランから選ばれる1種類以上である、[9]に記載の金属吸着材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭酸塩を高含有する新規なアパタイト系化合物が提供される。本発明の炭酸アパタイトはカドミウム、ストロンチウム、コバルト、銅、鉛、マンガン、ニッケルおよびウランなどに対して高選択性および高吸着性能を示す。特に、実施例においては、ストロンチウムに対して約150,000 mL/gのKd値を示すことがわかった。汎用的に用いられているゼオライトや無調整の骨のKdは、約3,000 mL/gであり、従来の合成アパタイトのKdも10,000 mL/g程度であるので、極めて優れた吸着性能と言える。これは、アパタイト
を構成する結晶子が小さいことや、炭酸基に依る安定な吸着サイトが一因と考えられた。また、本発明の炭酸アパタイトは銅、亜鉛、ストロンチウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ナトリウムなどの金属を含んでもよいが、これにより、電荷状態が変化、または結晶格子の欠陥が発生して吸着に有利に働くことも考えられる。
【0009】
本発明の炭酸アパタイトの用途は特に制限されず、人工骨やドラッグデリバリーキャリア等の素材としても使用可能であるが、特に好適な用途としては、放射性金属の吸着、除去材や汚染土壌、汚染水、海水、廃鉱山の土壌などへの適用可能な有害金属の吸着、除去材が挙げられる。
また、本発明の炭酸アパタイトはアリザリンレッド、ホルムアルデヒド、タンパク質、ウイルスや大腸菌などの細菌類などの有機物の吸着材として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】塩基性炭酸化合物処理前後の骨試料の写真である。
【図2】塩基性炭酸化合物処理および乾燥処理した後、粉砕して得られた骨試料粉末の写真である。
【図3】骨試料粉末のX線回折(XRD)パターンを示す。
【図4】骨試料粉末の赤外吸収(IR)スペクトルを示す。
【図5】骨試料粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像および透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す写真である。
【図6】各試料におけるストロンチウム吸着の分配係数(Kd)値を示すグラフ。
【図7】塩基性炭酸化合物処理ありまたは塩基性炭酸化合物処理なしで得られた骨試料粉末のTEM像を示す写真である。
【図8】炭酸水素ナトリウムの添加量と炭酸基導入率の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の炭酸アパタイト材料の吸着能の金属イオン選択性を示すグラフ。
【図10】種々の炭酸塩を用いたときの炭酸基導入効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の炭酸アパタイト>
本発明の炭酸アパタイトは15.6重量%以上の炭酸基を含むことを特徴とする。
炭酸基の含有量は好ましくは16.0重量%以上である。上限値は特に制限はないが、例えば
、30.0重量%または25重量%である。なお、炭酸基含有量は、赤外吸収スペクトルの1400~1550cm-1に出現する炭酸基の吸収帯の吸収強度を、炭酸含有量既知の炭酸含有リン酸カルシウムと比較することで定量することができる。

【0012】
本発明の炭酸アパタイトはカルシウム、リン酸基、水酸基を主な組成とするアパタイト化合物において、リン酸基および/または水酸基の一部が炭酸基に置換された組成を有する。
本発明の炭酸アパタイトのCa/Pモル比は、例えば1.5以上であり、1.7以上であってもよい。上限値は特に制限はないが、例えば、1.74である。Ca/Pモル比は例えばICP発光分光
分析法により測定できる。

【0013】
また、本発明の炭酸アパタイトは、銅、亜鉛、ストロンチウム、マグネシウム、カリウム、鉄、ナトリウムなど、カルシウム以外の金属を含むことが好ましい。これらの含有量は、例えば、総重量を100%として計算した場合、それぞれの金属について0.01~1.0重量%であり、合計で0.5~5重量%である。これらの金属の含有量は蛍光X線分析などにより測定できる。

【0014】
本発明の炭酸アパタイトは、ゼータ電位が-15 mV以下であってもよい。これにより、
より優れた金属吸着能を発揮することができる。

【0015】
本発明の炭酸アパタイトは、結晶構造を含む化合物であってもよく、その場合、結晶を構成する最小単位の結晶子の大きさは、結晶子サイズが平均1~100 nm程度の従来よりも
結晶子の小さい結晶を得ることもできる。結晶子サイズは透過型電子顕微鏡観察法やX線
回折法により測定できる。

【0016】
本発明の方法で得られる炭酸アパタイトはバルク体であってもよいし、粉末であってもよい。粉末としては、例えば、平均粒径10μm~500μmの粉末が例示される。平均粒径は
顕微鏡観察法、ふるい分け法、または光散乱法により測定できる。

【0017】
<本発明の炭酸アパタイトの製法の一例>
本発明の炭酸アパタイトは、例えば、牛、豚、鳥などの家畜等の骨を原料とし、以下の方法により得ることができる。ただし、本発明の炭酸アパタイトは以下の材料や方法で得られた物には限定されない。

【0018】
家畜骨を高温、高圧下で焼成処理し、その後に骨髄を除去する工程(工程1)、塩基性炭酸化合物を反応させる工程(工程2)、さらに、必要に応じて、乾燥、粉末化させて粒径を制御する工程(工程3)、により炭酸アパタイトを作製することができる。

【0019】
より具体的には、工程1は、100~200℃の温度範囲、好ましくは120~150℃の温度範囲で、圧力は大気圧~3気圧の範囲、特に好ましくは約2気圧で焼成を行うことが好ましい
。焼成時間は特に制限されず、処理量などによって適宜調整できるが、例えば、0.5~5時間である。この処理によって骨から骨髄が剥離するため、手作業で簡易に骨髄を除去することが可能になる。
続いて、工程2を行う。この工程は、骨から有機物を除去するためと、炭酸基を修飾するための2つの目的で行う。水などの液体中で骨焼成物と塩基性炭酸化合物を反応させることができ、温度は30~90℃の範囲で、特に40~60℃であることが望ましい。また、加える塩は、炭酸塩であればよく、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2HCO3、CaCO3、MgCO3、Li2CO3
、(NH4)2CO3、などが挙げられる。中でもNaHCO3が望ましい。濃度は骨試料に対して1wt%
~50wt%の範囲で、特に10~50wt%であることが望ましい。また、反応時間は3~72時間で
、10~72時間であることが望ましい。塩濃度または反応時間を調整することで、炭酸基の導入率を制御することができる。
反応後、試料を乾燥する。乾燥方法は特に制限はなく、天日干しや乾燥機で乾燥してもよい。これにより通常5~10cm程度のバルク状態の材料が得られる。必要に応じて、粉末
化することにより、数10~数100μmの粉体を作製することが可能である。

【0020】
<金属吸着材>
本発明の炭酸アパタイトは金属の吸着性能に優れているため、金属吸着材として使用できる。金属としてはカドミウム、ストロンチウム、コバルト、銅、鉛、マンガン、ニッケル、マグネシウム、水銀、ヒ素、アルミニウム、スズ、ベリリウムおよびウランなどが挙げられる。例えば、これらのうち、1種類以上の金属を含む溶液に本発明の炭酸アパタイトを混合し、一定時間インキュベートすることにより、溶液から金属を吸着させて分離、
除去することができる。例えば、本発明の炭酸アパタイトを粉末状にしてカラムに充填し、当該カラムに金属溶液を通過させることで、金属を分離除去することもできる。使用量は金属の種類や濃度により適宜調整できる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明の態様は以下の実施例には限定されない。
【実施例】
【0022】
(材料の作製および物性評価)
豚骨を130℃、2気圧で3時間加熱した。剥離した骨髄を除去した(工程1)。その後、2.5gの試料と50 mLの純水に対して、5 g(試料1)、0.5 g(試料2)、0.05 g(試料3)、0.025g(試料4)のNaHCO3を加え、45℃、大気圧で48時間加熱した(工程2)。その後
、水で洗浄して、60℃で2時間乾燥した(図1)。この試料を粉末状になるまで粉砕した
(図2)。これを本発明材料とし、以下の評価を行った。比較として、工程1のみを行った後に乾燥、粉砕した試料(試料α)、市販の水酸アパタイトを用いた。
【実施例】
【0023】
粉末X線回折測定により、本発明材料は市販の水酸アパタイト化合物と同様の六方晶系
(P63/m)の結晶構造を取ることを確認した(図3)。ブロードなバックグラウンドはア
モルファス構造に因ることから、この材料は低結晶性である。赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測ったところ、本発明材料には炭酸基、リン酸基、水酸基が含まれていることを確認した(図4)。さらに蛍光X線分析により、主成分のカルシウム(Ca)の他に、
銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、を含むことが明らかとなった(表1)。これらの結果より、本
発明材料は金属イオンを含む炭酸アパタイトであることが示された。走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、本発明材料の観察を行った(図5)。結果、結晶子の大きさは幅が5~12 nm、縦が20~85 nmであった。
【実施例】
【0024】
【表1】
JP2020111478A_000002t.gif
【実施例】
【0025】
(ストロンチウムの吸着性能の評価)
本発明材料のストロンチウムに対する吸着性能を評価するため、粉末試料35mgを測りとり、0.01, 0.1, 1, 10 mMのストロンチウムを含む溶液7mLを加え、5時間攪拌した。フィ
ルターを用いて試料と溶液を分離して、溶液中におけるストロンチウム残存量をICP-OES
により測定することで吸着率を算出した。結果を図6に示す。本発明材料は高い吸着性能を示した。また、工程2におけるNaHCO3の添加量の増加に伴い、ストロンチウムの吸着量
が向上した。試料1では、1 mMのストロンチウム溶液に対して99.9%の除去率を示し、分
配係数(Kd)値は144,859 mL/gとなった。これは、既存の吸着材料よりも高い性能である。ストロンチウムのほかにも、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、鉛、マンガン、カドミウム、ストロンチウムに対しても99.9%程度の吸着率を示した。なかでも、ストロ
ンチウム、コバルト、カドミウムを選択的に吸着する傾向を示した。
【実施例】
【0026】
NaHCO3の添加に伴い吸着性が向上するメカニズムを明らかにするために、先ずNaHCO3を添加していない試料αについて透過型電子顕微鏡観察を行った(図7)。NaHCO3を添加した場合と比べて、結晶子が凝集して、かつ薄い皮膜で覆われている様子が観察された。これは、骨の成分である有機物であると考えられる。この結果より、NaHCO3の添加によりアパタイトを包む有機物が除去され、対象イオンに対するアパタイトの接触面積が向上したことが吸着性の向上に寄与したと考えられる。このことより、NaHCO3添加量の増加に伴い有機物の除去率が向上することが示された。
【実施例】
【0027】
吸収スペクトルから炭酸/リン酸の強度比を求め、ピーク比から炭酸導入量を算出した
。既知の特許(リン酸カルシウム微粒子, 特開2005-126335)に報告されている方法の通
り、既知の炭酸を含む人工アパタイトの質量分析を行い、その結果を基にピーク比と炭酸量の相関定数を求めて算出した。また、Ca/Pのモル比率はICP発光分光分析法により算出
した。結果を表2および図8に示す。NaHCO3の添加量の増加に伴い、炭酸基の導入率は増加した。既存の製造法では成し得なかった極めて高い炭酸導入率を示した。これは、アルカリ金属による有機物の除去と炭酸の導入を同時に行うことで、骨由来のアパタイトと炭酸の接触面積が大きくなったことが理由として挙げられる。炭酸の占有する箇所は、リン酸サイト、水酸基サイト、また、non-apatitic サイトや表面吸着サイトのいずれかであ
る。
【実施例】
【0028】
【表2】
JP2020111478A_000003t.gif
【実施例】
【0029】
各々の試料について電気泳動光散乱法を用いてゼータ電位測定を行なった結果を表3に示す。炭酸基の導入率の増加に伴い、ゼータ電位はマイナス値を示した。これは、炭酸基の導入に伴い、組成や結晶構造が若干変化することによる。このマイナス電荷もカチオン系の有害金属の吸着に対して有用な特性の一つである。
【実施例】
【0030】
以上の結果より、NaHCO3の添加量を増加させることにより、(1)骨から有機物が効率的に除去された、(2)炭酸基の導入により安定的な吸着サイトが形成した、の2点が寄与することで高い金属イオンの吸着性能を有する材料が合成できることを見出した。
【実施例】
【0031】
【表3】
JP2020111478A_000004t.gif
【実施例】
【0032】
さらに、イオン選択性を評価するために、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、鉛、マンガン、カドミウム、ストロンチウムを全て含む水溶液に試料3と市販の水酸アパタイトを添加して、アパタイト試料を除去した。残存した溶液中の金属イオン濃度をICP-OESで測定することにより、除去率とKdを求めた。表4に各元素に対する試料3の除去率を
示す。また、図9に水酸アパタイトとのKd値の比較を示す。例えば、通常の水酸アパタイトは他のイオン存在下ではストロンチウムの除去率は40%前後にまで落ち込んだのに比べ
て、本発明の材料は他のイオン存在下でも99.9%の除去率を示した。図9に見られるよう
に、本発明の試料は市販のアパタイトと比較して、特にカドミウム、コバルト、ストロンチウムに対して高いイオン選択性を示した
【実施例】
【0033】
【表4】
JP2020111478A_000005t.gif
【実施例】
【0034】
実施例2
(材料の作製および物性評価)
様々な炭酸塩を用いて炭酸の導入を評価した。豚骨を130℃、2気圧で3時間加熱した。
剥離した骨髄を除去した(工程1)。その後、2.5gの試料と50 mLの純水に対して炭酸ア
ンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)を各々5
g加え、45℃、大気圧で48時間加熱した(工程2)。その後、水で洗浄して、60℃で2時間乾燥した。この試料を粉末状になるまで粉砕した。
赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測ったところ、それぞれの炭酸塩で作成した試料において、炭酸基ピークの強度増加が観察され、炭酸が導入されていることを確認した(図10)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9