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明細書 :炭酸アパタイトの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-111479 (P2020-111479A)
公開日 令和2年7月27日(2020.7.27)
発明の名称または考案の名称 炭酸アパタイトの製造方法
国際特許分類 C01B  25/32        (2006.01)
A61L  27/12        (2006.01)
A61L  27/36        (2006.01)
A61K  47/02        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
B01J  20/04        (2006.01)
FI C01B 25/32 W
A61L 27/12
A61L 27/36 311
A61L 27/36 110
A61K 47/02
A61K 9/14
B01J 20/30
B01J 20/04 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2019-002111 (P2019-002111)
出願日 平成31年1月9日(2019.1.9)
発明者または考案者 【氏名】関根 由莉奈
【氏名】南川 卓也
【氏名】香西 直文
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110002860、【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C081
4G066
Fターム 4C076AA29
4C076BB32
4C076CC09
4C076DD25A
4C076DD26A
4C076FF02
4C076GG02
4C076GG05
4C076GG50
4C081AB03
4C081AB04
4C081BA12
4C081CD35
4C081CF031
4C081CF26
4C081DA11
4C081EA04
4G066AA43B
4G066AA43D
4G066AA50B
4G066CA12
4G066CA45
4G066FA03
4G066FA22
4G066FA34
4G066FA35
4G066FA37
4G066FA40
要約 【課題】炭酸アパタイトの効率的な製造方法の提供。
【解決手段】動物の骨を焼成する第1工程、および第1工程で得られた骨焼成物を塩基性炭酸化合物と反応させる第2工程、を含む、炭酸アパタイトの製造方法。第1工程の焼成が、大気圧~3気圧の圧力下、100~200℃の温度で行われる、炭酸アパタイトの製造方法。第2工程において、塩基性炭酸化合物は骨焼成物の重量に対して1~50wt%の重量となるように添加される、炭酸アパタイトの製造方法。第2工程の塩基性炭酸化合物との反応が、30~90℃の温度で行われる、炭酸アパタイトの製造方法。第2工程で得られた骨処理物を乾燥させる第3工程をさらに含む、炭酸アパタイトの製造方法。骨を粉末化する工程をさらに含む、炭酸アパタイトの製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
動物の骨を焼成する第1工程、および
第1工程で得られた骨焼成物を塩基性炭酸化合物と反応させる第2工程、
を含む、炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項2】
動物の骨が豚骨、鳥骨または牛骨である、請求項1に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項3】
第1工程の焼成が、大気圧~3気圧の圧力下、100~200℃の温度で行われる、請求項1または2に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項4】
第2工程において、塩基性炭酸化合物は骨焼成物の重量に対して1wt%~50wt%の重量となるように添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項5】
第2工程の塩基性炭酸化合物との反応が、30~90℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項6】
塩基性炭酸塩がNaHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2HCO3、CaCO3、MgCO3、Li2CO3、(NH4)2CO3から選択される1種類以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項7】
第2工程で得られた骨処理物を乾燥させる第3工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【請求項8】
骨を粉末化する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸アパタイトの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アパタイト化合物は生体との親和性が良好であるため、人工骨やドラッグデリバリーキャリア等の素材や金属吸着剤としての利用を目指して、合成法や物性について多く研究されている。通常、アパタイト化合物はCaHPO4・2H2OとCaCO3を原料として500℃以上で焼結することにより合成されることから、安価であることが求められる金属吸着剤等の応用に向けてはコスト面で課題があった。
【0003】
特許文献1には天然骨を焼成して得られたアパタイト粒子を用いてヒドロキシアパタイト粉体を製造する方法が開示されている。しかしながら、炭酸アパタイトを骨などの天然材料から効率よく得る方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第5486790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は炭酸アパタイトの効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、通常、廃材として処理される家畜骨を原料とし、高圧下での焼成の後、塩基性炭酸化合物と反応させる工程を行うことにより、安価かつ簡易に、炭酸導入効率のよい、炭酸アパタイトを製造することに成功した。以上に基づき、本発明は完成した。
【0007】
本発明は以下を提供する。
[1]動物の骨を焼成する第1工程、および
第1工程で得られた骨焼成物を塩基性炭酸化合物と反応させる第2工程、
を含む、炭酸アパタイトの製造方法。
[2]動物の骨が豚骨、鳥骨、または牛骨である、[1]に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[3]第1工程の焼成が、大気圧~3気圧の圧力下、100~200℃の温度で行われる、[1]または[2]に記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[4]第2工程において、塩基性炭酸化合物は骨焼成物の重量に対して1wt%~50wt%の重量となるように添加される、[1]~[3]のいずれかに記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[5]第2工程の塩基性炭酸化合物との反応が、30~90℃の温度で行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[6]塩基性炭酸塩がNaHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2HCO3、CaCO3、MgCO3、Li2CO3、(NH4)2CO3から選択される1種類以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[7] 第2工程で得られた骨処理物を乾燥させる第3工程をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載の炭酸アパタイトの製造方法。
[8]骨を粉末化する工程をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の炭酸アパタイトの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、家畜骨などを原料として、温和かつ簡便な工程により炭酸アパタイトを効率よく製造することができる。本発明による製造方法で得られる炭酸アパタイト化合物は、炭酸基の導入率が高く、これにより、放射性ストロンチウムなどの重金属の吸着、除去等や人工骨やドラッグデリバリーキャリア等の素材としての用途に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】塩基性炭酸化合物処理前後の骨試料の写真である。
【図2】塩基性炭酸化合物処理および乾燥処理した後、粉砕して得られた骨試料粉末の写真である。
【図3】骨試料粉末のX線回折(XRD)パターンを示す。
【図4】骨試料粉末の赤外吸収(IR)スペクトルを示す。
【図5】骨試料粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像および透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す写真である。
【図6】塩基性炭酸化合物処理ありまたは塩基性炭酸化合物処理なしで得られた骨試料粉末のTEM像を示す写真である。
【図7】炭酸水素ナトリウムの添加量と炭酸基導入率の関係を示すグラフである。
【図8】種々の炭酸塩を用いたときの炭酸基導入効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の炭酸アパタイトの製造方法は、
動物の骨を焼成する第1工程、および
第1工程で得られた骨焼成物を塩基性炭酸化合物と反応させる第2工程、
を含む。

【0011】
<第1工程>
動物の骨としては、哺乳動物の骨や魚類の骨などが挙げられるが、家畜動物の骨が好ましく、例えば、豚骨、鳥骨、牛骨などを使用することができる。

【0012】
焼成条件としては、骨から水分が除去できる条件が好ましく、例えば、温度条件は100~200℃の範囲であることが好ましく、120~150℃であることがより好ましい。圧力は、大気圧~3気圧の範囲が好ましく、1.5気圧~2.5気圧であることがより好ましく、特に約2気圧が好ましい。焼成時間は特に制限されず、処理量などによって適宜調整できるが、例えば、0.5~5時間である。この焼成工程によって骨から骨髄が剥離するため、手作業で簡易に骨髄を除去することが可能になる。したがって、第1工程の後、骨に付着する骨髄を除去した後、第2工程を行うことが好ましい。

【0013】
<工程2>
工程2では、工程1で得られた骨焼成物に対し、塩基性炭酸化合物を反応させ、骨焼成物に含まれるアパタイト化合物に炭酸基を導入する。すなわち、アパタイト化合物に含まれるリン酸基または水酸基の一部を炭酸基に置換する。また、塩基性炭酸化合物との反応により、骨に残存した有機物を効率的に除去できるという効果もある。

【0014】
ここで使用できる塩基性炭酸化合物としては、塩基性を示し、アパタイト化合物に炭酸基を導入できるものであれば特に制限されないが、例えば、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2HCO3、CaCO3、MgCO3、Li2CO3、(NH4)2CO3、などが挙げられ、中でもNaHCO3が好ましい。

【0015】
反応としては、水などの液体中に骨焼成物と塩基性炭酸化合物を加え、必要に応じて撹
拌して両者を反応させることができる。加える塩基性炭酸化合物は、骨焼成物の重量に対して1wt%~50wt%の範囲、好ましくは10~50wt%となるような量であることが望ましい。また、反応時間は3~72時間であることが好ましく、10~72時間であることがより好ましい。反応温度は30~90℃の範囲であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。

【0016】
加える塩基性炭酸化合物の濃度、または反応時間を調整することにより、アパタイト化合物への炭酸基導入率を制御できる。炭酸基導入率を高めることで、金属吸着材料としての機能を向上させることができる。

【0017】
<乾燥工程>
第2工程の後、得られた骨試料を乾燥させる工程を行うことが好ましい。乾燥方法は特に制限されず、天日干しや乾燥機で乾燥してもよい。乾燥時間も水分が除去されるのに十分な時間であれば特に制限されず、試料の量や乾燥条件によって適宜設定できる。

【0018】
<粉末化(微粒子化)工程>
本発明の方法で得られた炭酸アパタイト化合物は、バルク状態(例えば5~10cm程度)のままであってもよいが、用途に応じて、粉末化してもよい。粉末化は公知の手段を用いて行うことができる。粉末化により、粒径が数10~数100μmの粉体を作製することが可能である。

【0019】
<炭酸アパタイト化合物>
本発明の方法で得られる炭酸アパタイト化合物は、カルシウム、炭酸基、リン酸基、水酸基を主な組成とし、炭酸基の導入率が高いことを特徴とする。本発明の方法で得られる限り、特に制限はないが、炭酸基の導入率は15.0重量%以上であることが好ましく、15.4重量%以上であることがより好ましく、15.6重量%以上であることがさらに好ましく、16.0重量%以上であることが特に好ましい。Ca/Pモル比は例えば1.5以上である。炭酸基含有量は、赤外吸収スペクトルの1400~1550cm-1に出現する炭酸基の吸収帯の吸収強度を、炭酸含有量既知の炭酸含有リン酸カルシウムと比較することで定量することができる。
また、本発明の方法で得られた炭酸アパタイト化合物は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)など、Ca以外の金属を含んでもよい。
本発明の方法で得られる炭酸アパタイト化合物は、結晶構造を含む化合物であってもよく、その場合、結晶を構成する最小単位の結晶子の大きさは、結晶子サイズが平均1~100
nm程度の従来よりも結晶子の小さい結晶を得ることもできる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明の態様は以下の実施例には限定されない。
【実施例】
【0021】
実施例1
(材料の作製および物性評価)
豚骨を130℃、2気圧で3時間加熱した。剥離した骨髄を除去した(工程1)。その後、2.5gの試料と50 mLの純水に対して、5 g(試料1)、0.5 g(試料2)、0.05 g(試料3)、0.025g(試料4)のNaHCO3を加え、45℃、大気圧で48時間加熱した(工程2)。その後、水で洗浄して、60℃で2時間乾燥した(図1)。この試料を粉末状になるまで粉砕した(図2)。これを本発明材料とし、以下の評価を行った。比較として、工程1のみを行った後に乾燥、粉砕した試料(試料α)、市販の水酸アパタイトを用いた。
【実施例】
【0022】
粉末X線回折測定により、本発明材料は市販の水酸アパタイト化合物と同様の六方晶系
(P63/m)の結晶構造を取ることを確認した(図3)。ブロードなバックグラウンドはアモルファス構造に因ることから、この材料は低結晶性である。赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測ったところ、本発明材料には炭酸基、リン酸基、水酸基が含まれていることを確認した(図4)。さらに蛍光X線分析により、主成分のカルシウム(Ca)の他に、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、を含むことが明らかとなった(表1)。これらの結果より、本発明材料は、金属イオンを含む炭酸アパタイトであることが示された。走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、本発明材料の観察を行った(図5)。結果、結晶子の大きさは幅が5~12 nm、縦が20~85 nmであった。
【実施例】
【0023】
【表1】
JP2020111479A_000002t.gif
【実施例】
【0024】
先ずNaHCO3を添加していない試料αについて透過型電子顕微鏡観察を行った(図6)。NaHCO3を添加した場合と比べて、結晶子が凝集して、かつ薄い皮膜で覆われている様子が観察された。これは、骨の成分である有機物であると考えられる。このことより、NaHCO3添加量の増加に伴い有機物の除去率が向上することが示された。
【実施例】
【0025】
吸収スペクトルから炭酸/リン酸の強度比を求め、ピーク比から炭酸導入量を算出した。既知の特許(リン酸カルシウム微粒子, 特開2005-126335)に報告されている方法の通り、既知の炭酸を含む人工アパタイト(sigma)の質量分析を行い、その結果を基にピーク比と炭酸量の相関定数を求めて算出した。結果を表2および図7に示す。NaHCO3の添加量の増加に伴い、炭酸基の導入率は増加した。既存の製造法では成し得なかった極めて高い炭酸導入率を示した。これは、アルカリ金属による有機物の除去と炭酸の導入を同時に行うことで、骨由来のアパタイトと炭酸の接触面積が大きくなったことが理由として挙げられる。炭酸の占有する箇所は、リン酸サイト、水酸基サイト、また、non-apatitic サイトや表面吸着サイトのいずれかであると考えられる。
【実施例】
【0026】
【表2】
JP2020111479A_000003t.gif
【実施例】
【0027】
各々の試料についてゼータ電位測定を行なった結果を表3に示す。炭酸基の導入率の増
加に伴い、ゼータ電位はマイナス値を示した。これは、炭酸基の導入に伴い、組成や結晶構造が若干変化することによる。このマイナス電荷もカチオン系の有害金属の吸着に対して有用な特性の一つである。
【実施例】
【0028】
【表3】
JP2020111479A_000004t.gif
【実施例】
【0029】
以上の結果より、NaHCO3の添加量を増加させることにより、(1)骨から有機物が効率的に除去された、(2)炭酸基の導入により安定的な吸着サイトが形成した、の2点が寄与することで高い金属イオンの吸着性能を有する材料が合成出来ることを見出した。
【実施例】
【0030】
実施例2
(材料の作製および物性評価)
様々な炭酸塩を用いて炭酸の導入を評価した。豚骨を130℃、2気圧で3時間加熱した。剥離した骨髄を除去した(工程1)。その後、2.5gの試料と50 mLの純水に対して炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)を各々5
g加え、45℃、大気圧で48時間加熱した(工程2)。その後、水で洗浄して、60℃で2時間乾燥した。この試料を粉末状になるまで粉砕した。
赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測ったところ、それぞれの炭酸塩で作成した試料において、炭酸基ピークの強度増加が観察され、炭酸が導入されていることを確認した(図8)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7