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明細書 :飛行体を用いた空間線量算出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-134316 (P2020-134316A)
公開日 令和2年8月31日(2020.8.31)
発明の名称または考案の名称 飛行体を用いた空間線量算出方法
国際特許分類 G01T   1/16        (2006.01)
G01T   1/167       (2006.01)
FI G01T 1/16 A
G01T 1/167 C
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2019-028137 (P2019-028137)
出願日 平成31年2月20日(2019.2.20)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】佐々木 美雪
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001922、【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G188
Fターム 2G188AA08
2G188BB04
2G188BB15
2G188BB17
2G188CC08
2G188EE01
2G188EE12
2G188EE14
2G188EE36
2G188FF07
2G188GG02
2G188GG04
要約 【課題】地上の起伏とか樹木の有無のような測定場所の状況に影響されず、地上付近の空間線量を高精度に測定できる方法及びそのための装置を提供すること。
【解決手段】測定ポイントデータと、計算ポイントデータを取得し、上空からの放射線測定用に導き出した、空気による減衰、土壌散乱による減衰、森林による減衰のパラメータを考慮して、それぞれの測定ポイントと計算ポイント毎に検出確率を計算し、算出した検出確率値を用いてML-EM法の手法に則り、繰り返し計算を実施して放射線強度値を求め、算出した放射線強度値を用いて、空間線量換算係数により空間線量率に換算する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくともGPS及び放射線検出器を搭載している飛行体を用いて、地上から一定高度における空間線量を測定する方法であって、
緯度、経度、高さ、前記放射線検出器からの測定計数率から成る測定ポイントデータと、緯度、経度、換算値算出ポイントにおける放射線測定エリア周辺地形情報から成る計算ポイントデータを取得する第1ステップ、
取得した測定ポイントデータと計算ポイントデータの距離から空気減弱係数を求め、検出確率を算出する第2ステップ、
算出された検出確率をML-EM法を表す式に導入し、繰り返し計算によって放射線強度を求める第3ステップ、及び
求められた放射線強度を、空間線量換算係数を用いて空間線量率に換算する第4ステップ、
から成る飛行体による空間線量測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第2ステップにおいて、測定ポイントと計算ポイントの地面との角度から角度補正係数を求め、前記検出確率を前記空気減弱係数と前記角度補正係数の積算値から求めることを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記第2ステップにおいて、測定ポイントと樹高の関係から森林減弱係数を求め、前記検出確率を前記空気減弱係数と前記森林減弱係数の積算値から求めることを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記第2ステップにおいて、測定ポイントと樹高の関係から森林減弱係数を求め、前記検出確率を前記空気減弱係数と前記角度補正係数と前記森林減弱係数の積算値から求めることを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、前記飛行体は、少なくともGPS、放射線検出器、地上との間で各種データ通信を行う通信機と、前記各機器に接続され、内部メモリに記憶されたプログラムに従ってあらかじめ決められた処理を行うコンピュータを搭載している無人ヘリコプターであって、前記プログラムによって、前記第1から第4ステップが実行され、実行結果がリアルタイムで地上に設置されたコンピュータにデータ送信されることを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、地上に設置された前記コンピュータは、予め記憶されている地図データと、前記飛行体から地上に送られてきたデータとに基づいて、空間線量の大きさ別に色分けした空間線量地図データを作成し、表示装置にカラー表示することを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項7】
少なくともGPS及び放射線検出器を搭載している飛行体を用いて、地上から一定高度における空間線量を測定する方法であって、
緯度、経度、高さ、前記放射線検出器からの測定計数率から成る測定ポイントデータと、緯度、経度、換算値算出ポイントにおける放射線測定エリア周辺地形情報から成る計算ポイントデータを取得し、
取得した測定ポイントデータと計算ポイントデータの距離から空気減弱係数を、測定ポイントと計算ポイントの地面との角度から角度補正係数を、測定ポイントと樹高の関係から森林減弱係数をそれぞれ求め、それらの積算値から検出確率を算出し、
算出された検出確率をML-EM法を表す式に導入し、繰り返し計算によって放射線強度を求め、
求められた放射線強度を、空間線量換算係数を用いて空間線量率に換算することを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記飛行体によって得られた空間線量率等のデータを地上に設置されたコンピュータに送信し、該コンピュータのメモリに予め記憶されている地図データと前記飛行体から地上に送られてきたデータとに基づいて、空間線量の大きさ別に色分けした空間線量地図データを作成し、前記地上に設置されたコンピュータの表示装置にカラー表示することを特徴とする飛行体による空間線量測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無人ヘリコプターなどの飛行体を用いて、例えば地上1mの位置などの地上付近の空間放射線量を高精度に算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広大な領域にわたる地上付近の空間放射線量を、安全かつ効率的に測定する方法として、従来から無人ヘリコプターなどの飛行体を用いた空間線量算出方法が知られている(特許文献1及び2、並びに非特許文献1及び2を参照)。これらの方法では、飛行体に搭載された放射線検出器の検出値と飛行高度などを基に、地上1mの位置での空間線量を求め、その空間線量の大きさ別に色分けして実際の地図上に表示している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-145628号公報
【特許文献2】特開2014-145700号公報
【0004】

【非特許文献1】「原子力発電所事故後の無人ヘリコプターを用いた放射線測定」JAEA Research 2013-049
【非特許文献2】Sanada Yukihisa, Kondo Atsuya, Sugita Takeshi et al. “Radiation monitoring using an unmanned helicopter in the evacuation zone around the Fukushima Daiichi nuclear power plant” EXPLORATION GEOPHYSICS, 45(1),p3-7, MAR 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上空からの放射線測定では、地上での直接測定と異なり、測定した値を地上1mでの空間線量の値に換算する必要がある。前述の従来方法では換算する際、地表は平坦で線源は均一に分布していると仮定して換算を行っている。よって地形の起伏がある場所や、線源の勾配が大きい場所、樹木等の遮蔽物がある場合には、仮定としている系とは異なるため、上空から測定した放射線測定値を地上1mの値に換算したとき実際の地上1mの位置での空間線量値と大きく異なる場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、前述のような測定場所の状況に影響されず、地上付近の空間線量を高精度に測定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、上空から測定した放射線測定値を、地形情報を用いて地上1m空間線量値に換算を行うものである。放射線測定ポイント情報(測定計数率、測定座標及び高度)、換算値算出ポイントにおける放射線測定エリア周辺地形情報(DEM、DSM)を用いて計算を行う。計算は換算値算出ポイントで指定された座標においての空間線量率の算出が行われる。
【0008】
本発明の方法は、医療用画像再構成手法として開発されたML-EM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法を基本としたアルゴリズムで構成されている。本発明の特徴の一つは、ML-EM法における検出確率パラメータ(後述するCij)を、上空からの放射線測定用に最適化した点にある。
【0009】
本発明の方法は、基本的に、(1)測定ポイントデータと、計算ポイントデータを取得、(2)換算のための検出確率算出、(3)換算対象ポイントにおける放射線強度値算出、(4)放射線強度値から空間線量への換算の4つのステップからなる。さらに詳細に言えば、次のようになる。
(1)緯度、経度、高さ、測定計数率から成る測定ポイントデータと、緯度、経度、換算値算出ポイントにおける放射線測定エリア周辺地形情報(DEM、DSM)からなる計算ポイントデータを取得する。
(2)上空からの放射線測定用に導き出した、空気による減衰、土壌散乱による減衰、森林による減衰のパラメータを考慮して、それぞれの測定ポイントと計算ポイント毎に検出確率を計算する。
(3)上記(2)で算出した値を用いてML-EM法の手法に則り、繰り返し計算を実施する。
(4)上記(3)で算出した値を用いて、空間線量換算係数により空間線量率へと換算する。
【0010】
より具体的には、本発明は、少なくともGPS及び放射線検出器を搭載している飛行体を用いて、地上から一定高度における空間線量を測定する方法であって、緯度、経度、高さ、前記放射線検出器からの測定計数率から成る測定ポイントデータと、緯度、経度、換算値算出ポイントにおける放射線測定エリア周辺地形情報から成る計算ポイントデータを取得する第1ステップ、取得した測定ポイントデータと計算ポイントデータの距離から空気減弱係数を求め、検出確率を算出する第2ステップ、算出された検出確率をML-EM法を表す式に導入し、繰り返し計算によって放射線強度を求める第3ステップ、及び求められた放射線強度を、空間線量換算係数を用いて空間線量率に換算する第4ステップを含む。本発明の別な観点によれば、前記飛行体は、少なくともGPS、放射線検出器、地上との間で各種データ通信を行う通信機と、前記各機器に接続され、内部メモリに記憶されたプログラムに従ってあらかじめ決められた処理を行うコンピュータを搭載している無人ヘリコプターであって、前記プログラムによって、前記第1から第4ステップが実行され、実行結果がリアルタイムで地上に設置されたコンピュータにデータ送信されるよう構成されている。
【0011】
地上に設置された前記コンピュータは、そのメモリに予め記憶されている地図データと、前記飛行体から地上に送られてきたデータとに基づいて、空間線量の大きさ別に色分けした空間線量地図データを作成し、地図とその場所の空間線量を表示装置にカラーで表示する。
【発明の効果】
【0012】
本方法は、無人ヘリコプター等を用いて上空から測定した放射線測定値を、地形情報を用いて地上1m空間線量値に換算することを目的として開発されたもので、従来の換算方法に比べ、より地上で測定した値に近い値を導くことが出来る。放射線計数値と測定位置情報及び周辺地形情報から、換算対象ポイントにおける放射線強度を推定でき、また放射線強度と空間線量率との関係性から得られる空間線量換算計数を用いることで、空間線量値を求めることが出来る。また、上空からの放射線測定だけに限らず、3Dレーザー等で周辺地形情報を得ることができれば、地上測定、室内測定においても、本手法で放射線強度を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の空間線量算出方法を説明するための模式図。
【図2】空気(距離)による減弱係数(PHITS計算結果)を示すグラフ。
【図3】角度による減弱係数(PHITS計算結果)を示すグラフ。
【図4】森林による減弱係数を示すグラフ。
【図5】本発明の空間線量算出方法で使用する計算の流れの詳細説明図。
【図6】歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果(エリア1)を表す図。
【図7】歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果(エリア2)を表す図。
【図8a】図6のエリア1における、従来法による換算値と地上測定値の比較
【図8b】図6のエリア1における、ML-EM法による換算値と地上測定値の比較
【図9a】図6のエリア2における、従来法による換算値と地上測定値の比較
【図9b】図6のエリア2における、ML-EM法による換算値と地上測定値の比較
【発明を実施するための形態】
【0014】
初めに、本発明の基本的考え方について図1を参照して説明する。図1は本発明の空間線量算出方法を模式的に示した図であって、紙面に向かって左側の図は、本発明で採用する空間線量算出方法の主要な流れを示している。また、紙面に向かって右側の図は、上述の空間線量算出方法で使用するパラメータを理解し易いように図解したものである。
<ML-EM法の適用>
本発明の最大の特徴は、無人ヘリコプターなどの移動体に搭載された放射線検出器を用いることによって上空で測定した放射線測定データを、医療分野においてPET検査等の画像再構成構成法として用いられるML-EM(Maximum Likelihood-Expectation Maximization)法を用いたアルゴリズムに上空放射線測定用のパラメータを組み込むことにより地上1mの高さの放射線測定値へと換算することにある。ここで、ML-EM法の遂次式は式(1)のように表される。
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【0015】
ここで、kは繰り返し計算回数、jは計算ポイントの番号(メッシュ番号)、λjはjにおける計算推定値、Bはすべての計算ポイント数を表す。また、iは検出器の位置番号を示し、yiは位置iにおける放射線計数値、Nはすべての測定ポイント数である。Cijは検出効率を示す。Cijにはjからiまでの距離、jとiの角度、地形による遮蔽効果、森林による遮蔽効果を考慮したパラメータを用いた。Cijのパラメータ算出には、無人ヘリコプターによる放射線測定データの他、写真測量データ(DSM: Digital Surface Model 樹木や建物を含めた高さ)及び国土地理院の基板地図情報の地表面高度モデル(DEM: Digital Elevation Model 樹木や建物を含まない地表面の高さ)データを用いた。ML-EM法で使用する検出効率Cijは、次の式(2)によって求められる。
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【0016】
検出効率Cijは、測定ポイントと計算ポイントの距離から算出される、距離に応じた減弱係数f(x)、測定ポイントと計算ポイントの地面との角度から算出される、地面との角度に応じた減衰係数すなわち角度補正係数K(θ)、及び測定ポイントと樹高の関係から算出される、森林による減弱係数M(h)から求められる。距離に応じた減弱係数f(x)を式(3)及び(4)に示す。
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【0017】
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【0018】
距離による減弱係数にはCs-137の放出する662keV点線源の距離に応じての全エネルギーカウントの光子の減衰をPHITSにより計算した結果を使用した。その距離による減弱係数f(x)の計算結果を図2に示す。図2において、横軸は測定ポイントiと計算ポイントj間の距離を、縦軸は減弱係数f(x)である。減弱係数f(x)は距離が200mまでは累乗近似、それ以降は指数近似とした。なおf(x)はガンマ線のエネルギーにより減衰率は異なるが、高度80m以下の測定ではx>500の値を計算する頻度は低い。よって今回は全てCs-137(662keV)のエネルギーでの減衰で計算した。角度に応じた減弱係数K(θ)を式(5)に示す。
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【0019】
角度による減弱係数にはCs-137の放出する662keV点線源の距離に応じての全エネルギーカウントの光子の減衰をPHITSにより計算した結果を使用した。角度による減弱係数K(θ)の計算結果を図3に示す。図3において、横軸は測定ポイントiと計算ポイントjから成るベクトルと、土壌表面との間の角度を、縦軸は減弱係数K(θ)である。減弱係数K(θ)はガウス近似とした。

【0020】
森林による減衰係数は複数の森林エリアにおいて上空からの測定と、地上からの測定を実施し、従来法による上空放射線測定値の地上1m換算値と地上1m測定値の比と、DEMとDSMから算出した樹高との関係から係数を得た。その際、樹高はiの直下半径20mにおけるjからiの森林(DSM)通過距離平均値とした。上空測定地上1m換算値と地上1m測定値の比と樹高の関係を図4に示す。図4において、横軸は測定ポイントから半径20m内の平均樹高で、縦軸は減弱係数M(h)である。この結果から、減弱係数M(h)は式(6)のように定義される。

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【0021】
これら計算式について、C言語を用いてプログラム化し、上空からの放射線測定データの解析を行った。詳しい計算の流れを図5に示す。

【0022】
解析範囲は、周辺からの影響を考慮し、測定ポイントから半径150mを解析範囲とした。また、比較対象として、従来用いられている平面モデルを仮定した解析を実施した。ML-EM法により得られた推定値の空間線量への換算は、従来法で得られた換算値とML-EM法で得られた推定値から線量換算係数を求め、地上1mの空間線量値へと換算した。それぞれの得られた値は市販のGISソフトウエア(ArC GIS, ESRI社製)を用いてクリギング法を用いて内挿し、コンター図を作成した。
<上空からの放射線測定手法>
上空から測定にあたっては、ヤマハ発動機(株)自律飛行型無人ヘリFAZER RG2を使用し、地上からの直達ガンマ線及び空気による散乱線を合わせた全計数率とγ線エネルギースペクトルを1秒間に1回連続測定した。また、放射線検出器はLaBr3(Ce)(Lanthanum Bromide)シンチレーション検出器を用いた。無人ヘリおよび放射線検出器の仕様をTable1及びTable2に示す。
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【0023】
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【0024】
無人ヘリの飛行高度は、対地高度で50mを目安とした。上空で測定される放射線は、無人ヘリの直下を中心に直径約100m程度の円内のガンマ線量を平均化したものである。取得データは、放射線検出器で測定される1秒ごとのガンマ線のデータ(計数率)とエネルギースペクトル及びそれに対応するDGPS(差分全地球測位システム:Differential Global Positioning System)による位置情報である。

【0025】
本発明にかかる方法の効果を検証するため、ML-EM法を使用しない従来の方法でも同様の測定を行った。
<従来法によるデータ解析方法>
上空で測定されたガンマ線計数率を地上1m高さでの空間線量率の値に換算するための係数を取得するために、測定地域内において比較的空間線量率が一定で平坦な場所に直径200mの円形のテストサイトを設定した。テストサイト内では、あらかじめNaIサーベイメータを用いて、地上から1m高さの空間線量率データを取得した。その後、テストサイトの中心から上空の対地高度50mで無人ヘリをホバリングさせ、この高度(基準高度)で取得されたガンマ線計数率とテストサイトの地上における空間線量率とを比較し、空間線量率換算係数(CD: Conversion factor: cps (μSv/h)-1)を算出した。さらに、テストサイト上空を対地高度10mから100mまで10 mごとにホバリングし、各高度におけるガンマ線計数率を測定し、高度ごとのガンマ線計数率から対地高度とガンマ線計数率との関係式を求め、高度補正係数(AF: Attenuation factor:m-1)を算出した。

【0026】
実際のフライトで取得されたガンマ線計数率は、対地高度と基準高度のずれを高度補正係数AFにより補正し、空間線量率換算係数CDから地上1m高さでの空間線量率(μSv h-1)に換算した。なお、対地高度はGPSにより測位したGPSの高度から国土地理院が作成した10mメッシュの数値標高モデルDEM(Digital Elevation Model)データ及びジオイド高を差し引くことにより求めた。
<歩行サーベイによる地上線量率測定>
上空からのモニタリングデータの妥当性を評価するために地上において歩行サーベイを実施した。歩行サーベイには、原子力規制庁の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約」で行われている歩行サーベイに用いられるKURAMA-II(Kyoto University RAdiation MApping system)を採用した。KURAMA-IIは、13mm×13mm×20mmのCsI(Tl)結晶を用いたCsI(Tl)シンチレーション検出器(浜松ホトニクス製C12137)及びCompactRIOで構成されており、様々なパラメータで空間線量率の補正が可能となっている。実際のデータ取得方法は、KURAMA-IIシステムとバッテリーを測定者が背負い、歩きながら3秒毎に測定した空間線量率データとGPSによる位置情報を取得した。
<換算結果>
ML-EM法による無人ヘリによる測定結果を再構築した結果について図6、図7に示す。従来法により作成したコンター図に比べて、線量率の勾配がくっきりと見えていることが分かる。

【0027】
図6は、森林と平地で構成されているエリア1における、歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果を示す。無人ヘリコプターのフライト高度は50m、速度は2m/s、測定測線幅は10mである。図6から、従来法では森林部が樹木によって遮蔽され、低めの値となっているが、ML-EM法を用いた本発明の方法では、森林部の線量が従来法に比べてより地上値に近い値となっていることがわかる。

【0028】
また、図7は、森林、住宅地、平地等で構成されているエリア2における、歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果を示す。無人ヘリコプターのフライト高度は50m、速度は5m/s、測定測線幅は50mである。また、エリアは約1.7km×1.0km程の広さである。図7から、従来法では線量の低いエリアが周辺線量の影響を受けて高めの値となったが、ML-EM法を用いた本発明の方法では、より地上値に近く、線量が低い値として換算されていることがわかる。上述のマップの状態変化を定量的に評価するために、図8a、図8b及び図9a、図9bに地上測定値と比較した結果を示す。定量的な比較を実施するために、ここで相対偏差(RD)を以下の式(7)で定義する。
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【0029】
ここでiは測定ポイントを示し、Gは測定ポイントiにおける歩行サーベイの測定結果、Vは測定ポイントiにおける無人ヘリの測定結果を示している。歩行サーベイの測定結果と無人ヘリの測定結果をそれぞれの測定エリアごとに比較した結果及びRDの頻度分布について、図8a、図8b及び図9a、図9bに示す。RDの平均値をみると、従来法による換算結果に比べ、ML-EM法を用いた換算結果はより0に近づいている。この結果は、ML-EM法による換算が従来法よりも、地上値に近い数値に改善されていることを示している。

【0030】
図8a及び図8bは、共にエリア1の、歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果の比較を示している。図8aは従来法による換算値と地上測定値の比較を、図8bはML-EM法による換算値と地上測定値の比較を示す。

【0031】
また、図9a及び図9bは、共にエリア2の、歩行サーベイによる地上1m空間線量率測定結果と無人ヘリコプターによる上空からの放射線測定値地上1m換算結果の比較を示している。図9aは従来法による換算値と地上測定値の比較を、図9bはML-EM法による換算値と地上測定値の比較を示す。

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【0032】
正規化された平均二乗誤差NMSE(Normalized Mean Square Error)は、地上測定値と換算値を上の式(8)で計算し、値を算出する。この値が0に近いほど、地上測定値に近い値となる。エリア1とエリア2のいずれにおいても、ML-EM法を用いた本発明の方法による換算値の方が小さい値になっていることがわかる。
【符号の説明】
【0033】
yi…測定ポイントデータ
λj…計算ポイントデータ
f(x)…空気減弱係数
K(θ)…角度補正係数
M(h)…森林減弱係数
Cij…検出確率
λ…放射線強度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8a】
7
【図8b】
8
【図9a】
9
【図9b】
10