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明細書 :新規ジオポリマー及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-152611 (P2020-152611A)
公開日 令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称 新規ジオポリマー及びその製造方法
国際特許分類 C04B  28/26        (2006.01)
C04B  14/10        (2006.01)
C04B  14/30        (2006.01)
C04B  22/06        (2006.01)
C04B  18/30        (2006.01)
C04B  18/10        (2006.01)
C04B  18/04        (2006.01)
C04B  22/16        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
FI C04B 28/26
C04B 14/10 A
C04B 14/30
C04B 22/06 Z
C04B 18/30
C04B 18/10 Z
C04B 18/04
C04B 22/16 Z
B09B 3/00 303L
B09B 3/00 ZAB
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2019-053372 (P2019-053372)
出願日 平成31年3月20日(2019.3.20)
発明者または考案者 【氏名】香西 直文
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110002860、【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4D004
4G112
Fターム 4D004AA36
4D004BA02
4D004CA15
4D004CA35
4D004CC11
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA11
4D004DA20
4G112MA00
4G112PA03
4G112PA11
4G112PA26
4G112PA35
4G112PB03
4G112PB13
4G112PC10
要約 【課題】pHが弱酸性から中性の範囲に制御され、強度を保持し、建築材料等の用途で好適に使用しうるジオポリマーを提供すること。
【解決手段】メタカオリナイト、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、廃棄物焼却灰及び下水汚泥焼却灰などのジオポリマー原料粉末と、高濃度リン酸水溶液、及びアルカリ金属もしくはアンモニウムのリン酸塩又はアルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物などのpH調整剤とを含む活性化剤とを混合し、その混合物を反応させて、ジオポリマーを製造する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物であって、前記活性化剤が高濃度リン酸水溶液及びpH調整剤を含むことを特徴とする、ジオポリマー生成用組成物。
【請求項2】
前記ジオポリマー原料粉末は、メタカオリナイト、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、ゴミ焼却灰、草木灰及び下水汚泥焼却灰の1種類以上を含む、請求項1に記載のジオポリマー生成用組成物。
【請求項3】
前記高濃度リン酸水溶液は、リン酸濃度が45~85重量%である、請求項1又は2に記載のジオポリマー生成用組成物。
【請求項4】
前記活性化剤とジオポリマー原料粉末の重量比が、1.8:1~1:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のジオポリマー生成用組成物。
【請求項5】
前記pH調整剤は、アルカリ金属もしくはアンモニウムのリン酸塩、又はアルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のジオポリマー生成用組成物。
【請求項6】
前記pH調整剤の量は活性化剤全体に対して、モル比で0.001~0.35である、請求項1~5のいずれか1項に記載のジオポリマー生成用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られるジオポリマーであって、ジオポリマー原料粉末が前記活性化剤によって架橋されることにより生成された、ジオポリマー。
【請求項8】
pHが3.3以上7.1以下であることを特徴とする、請求項7に記載のジオポリマー。
【請求項9】
ジオポリマー原料粉末と、高濃度リン酸水溶液とpH調整剤とを含む活性化剤とを混合し、その混合物を反応させて、請求項7又は8に記載のジオポリマーを製造することを特徴とする、ジオポリマーの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジオポリマー及びその製造方法に関する。詳しくは、土木・建築用、構造体形成用などの用途に適したpHが制御されたジオポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーはセメントやアスファルトの代替材料として土木や建築などの分野で注目されている。これまで開発されているジオポリマーは、使われる活性化剤(架橋剤)によって2種類に大別される。一つは、ケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウム水溶液の混合水溶液に代表されるアルカリ水溶液を活性化剤として重合されたジオポリマーであり、例えば、特許文献1~3にそのようなジオポリマーの例が開示されている。もう一つは濃リン酸水溶液を活性化剤として重合されたジオポリマーであり、例えば、非特許文献1~6にそのようなジオポリマーの例が開示されている。
【0003】
しかしながら、アルカリ水溶液活性化剤を用いて架橋されたジオポリマーは通常pH12以上であり、また、濃リン酸水溶液活性化剤を用いて架橋されたジオポリマーは通常pH3.3
以下であるように、これまでのジオポリマーは強アルカリ性又は強酸性のいずれかであり、建築材料や土木材料として使用するには不十分であった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2017-518256号公報
【特許文献2】特表2013-545714号公報
【特許文献3】特開2018-122585号公報
【0005】

【非特許文献1】Materials Chemistry and Physics 130 (2011) 1-4
【非特許文献2】Journal of the European Ceramic Society 35 (2015) 3167-317
【非特許文献3】Applied Clay Science 50 (2010) 600-603
【非特許文献4】Applied ClayScience 101 (2014) 60-67
【非特許文献5】J Mater Sci (2008) 43:6562-6566
【非特許文献6】Materials Letters 190 (2017) 209-212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、従来のジオポリマーは、硬化(架橋)後のpHを調整することはできなかった。
そこで、本発明は、pHを弱酸性から中性の範囲に制御でき、かつ、強度も維持した建築材料や土木材料等の用途に好適に使用しうるジオポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、活性化剤として高濃度リン酸水溶液と可溶性リン酸塩などのpH調整剤の混合水溶液を用いることにより、pHを弱酸性から中性の範囲に調整でき、かつ、強度も維持したジオポリマーが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
したがって、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ジオポリマー原料粉末と活性化剤とを含むジオポリマー生成用組成物であって、前記活性化剤が高濃度リン酸水溶液及びpH調整剤を含むことを特徴とする、ジオポリマー生成用組成物。
[2]前記ジオポリマー原料粉末は、メタカオリナイト、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、ゴミ焼却灰、草木灰及び下水汚泥焼却灰の1種類以上を含む、[1]に記載のジオポリマー生成用組成物。
[3]前記高濃度リン酸水溶液は、リン酸濃度が45~85重量%である、[1]又は[2]に記載のジオポリマー生成用組成物。
[4]前記活性化剤とジオポリマー原料粉末の重量比が、1.8:1~1:1である、[1]~[3]のいずれかに記載のジオポリマー生成用組成物。
[5]前記pH調整剤は、アルカリ金属もしくはアンモニウムのリン酸塩、又はアルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物である、[1]~[4]のいずれかに記載のジオポリマー生成用組成物。
[6]前記pH調整剤の量は活性化剤全体に対して、モル比で0.001~0.35である、[1]~[5]のいずれかに記載のジオポリマー生成用組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の組成物を用いて得られるジオポリマーであって、ジオポリマー原料粉末が前記活性化剤によって架橋されることにより生成された、ジオポリマー。
[8]pHが3.3以上7.1以下であることを特徴とする、[7]に記載のジオポリマー。
[9]ジオポリマー原料粉末と、高濃度リン酸水溶液とpH調整剤とを含む活性化剤とを混合し、その混合物を反応させて、[7]又は[8]に記載のジオポリマーを製造することを特徴とする、ジオポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な材料を用いて、ジオポリマーの強度を維持しつつ、pHを弱酸性から中性の幅広い範囲に任意に調整することができる。これにより、弱酸性~中性のジオポリマーを建築材料や建設材料として用いる場合は、セメント(コンクリート)に比べて劣化が少ないというジオポリマー本来の特長に加えて、セメントあるいは従来のジオポリマーのように雨水等の水が接触することによって高酸性水あるいは高アルカリ性水が土壌等に移行するという問題の起こらない、環境親和性に優れた材料を提供することができる。
また、放射性廃棄物などの廃棄物固化材料として利用することもでき、従来の高アルカリ性材料では困難であった廃棄物の固化も可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のジオポリマー生成用組成物は、ジオポリマー原料粉末と、高濃度リン酸水溶液及びpH調整剤を含む活性化剤と、を含む。

【0011】
ジオポリマーとは、アルミニウムやケイ素などを主成分とする材料の重合体(ポリマー)をいう。

【0012】
<ジオポリマー原料>
本発明に使用できるジオポリマー原料は、アルミニウム及び/又はケイ素を含み、高濃度リン酸水溶液によって活性化されて重合固化する性質を持つ材料を含む粉末であればよい。

【0013】
本発明において使用可能な材料の粉末としては、メタカオリナイト、活性アルミナ、水酸化アルミニウムなどの材料の粉末が挙げられる。なお、メタカオリナイトは非晶質カオリナイトとも呼ばれ、例えば、カオリナイトをか焼することで得ることができる。
また、Al及び/又はSiを含むものであれば、都市ゴミ焼却灰(飛灰)、草木灰等の
焼却灰や下水汚泥焼却灰も使用することができる。

【0014】
<活性化剤>
本発明においては、活性化剤として、高濃度リン酸水溶液とpH調整剤とを用いる。
高濃度リン酸水溶液とpH調整剤は、予め混合したものをジオポリマーに対して添加してもよいし、それぞれ別々にジオポリマーに対して添加してもよい。
高濃度リン酸水溶液とpH調整剤とを合わせた活性化剤とジオポリマー原料粉末の重量比が1.8:1~1:1となるような量で活性化剤を添加することが好ましい。
なお、ジオポリマー原料粉末がメタカオリナイトの場合、メタカオリナイト1gに対し、リン酸イオンが0.1mol以上となるような量で活性化剤を加えることが好ましい。ここで、リン酸イオンとしては、pH調整剤としてアルカリ金属もしくはアンモニウムのリン酸塩を用いる場合、高濃度リン酸水溶液とpH調整剤に含まれるリン酸イオンの合計を意味する。

【0015】
活性化剤として使用される高濃度リン酸水溶液としては、効率的に架橋及び混錬を行うために、リン酸濃度が45~85重量%の範囲が好ましく、ジオポリマー原料粉末と混合する際に、上記濃度範囲になっていればよい。したがって、予め上記濃度範囲に調整したリン酸水溶液をジオポリマー原料粉末と混合してもよいし、リン酸又はリン酸水溶液をジオポリマー原料粉末と混合したのち、混合系に水を加え、リン酸濃度が上記範囲になるように調整してもよい。例えば、濃リン酸をそのまま使用してもよいし、濃リン酸に水を加えて使用してもよい。

【0016】
pH調整剤としては、アルカリ金属もしくはアンモニウムのリン酸塩又はアルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物を用いることができる。
アルカリ金属あるいはアンモニウムのリン酸塩としては以下のものが例示される。
1分子当たりアルカリ金属又はアンモニウムを3つ含むリン酸塩(リン酸三ナトリウム、リン酸三アンモニウムなど)
1分子当たりアルカリ金属又はアンモニウムを2つ含むリン酸塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二アンモニウムなど)
1分子当たりアルカリ金属又はアンモニウムを1つ含むリン酸塩(リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウムなど)
また、アルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物としては以下のものが例示される。
水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなど

【0017】
pH調整剤の量は最終生成物(ジオポリマー架橋体)のpH(目的pH)に合わせて適宜調整できるが、例えば、リン酸とpH調整剤(リン酸塩の場合)を合わせた活性化剤全体に対し、モル比で0.001~0.35、0.01~0.35、又は0.1~0.35である。

【0018】
なお、本発明のジオポリマー生成用組成物にはジオポリマー原料粉末及び活性化剤に加えて、骨材、吸着材など、硬化反応に関わらない他の成分が含まれてよい。

【0019】
本発明のジオポリマー生成用組成物を用いて、ジオポリマーを得ることができる。
すなわち、ジオポリマー原料粉末を、高濃度リン酸水溶液及びpH調整剤と混合することで、ジオポリマーを得ることができる。混合の条件はジオポリマーが得られる限り特に制限はない。混練後は常温においてあるいは加熱しながら養生を行う。養生時間は温度により変化し、温度が低いほど長期の養生時間が必要になる。例えば、室温では7日以上、60℃では3~4日である。モルタルミキサーあるいはコンクリートミキサーなどを用いて混錬してもよい。

【0020】
本発明のジオポリマー(硬化体)のpHは、弱酸性から中性である。具体的にはpH3.3以
上7.1以下であることが好ましい。活性化剤中のリン酸とpH調整剤の比を変化させること
によりpHを上記範囲内で目的の値に制御することができる。pHが高くなりすぎると崩壊しやすくなるので、上記範囲とすることで、形状及び強度を維持したジオポリマーが得られる。
なお、ジオポリマーのpHは、純水中にジオポリマー(硬化体)を浸漬した後の液相のpHとすることができる。すなわち、ジオポリマー硬化体を十分長い時間水中に浸漬させ、pHが一定になったときのpHとすることができる。

【0021】
本発明のジオポリマーは圧縮強度が21 N/mm2 (=MPa)以上であることが好ましい。圧縮
強度は例えばJIS1108に定められた方法または後述の実施例記載の方法により評価するこ
とができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例の態様には限定されない。
【実施例】
【0023】
実施例1
ジオポリマー原料粉末としてメタカオリナイト、活性化剤として濃リン酸(85%)とリン酸三ナトリウム12水和物の混合水溶液を用いることにより、ジオポリマーを作製した。
【実施例】
【0024】
メタカオリナイトは、カオリナイト(製品名RC-1)を700℃で10時間加熱して非晶質化
したものを用いた。
濃リン酸とリン酸三ナトリウム12水和物の量は、表1のとおりとし、予め混合した上でメタカオリナイトと混合した。
重合反応は60℃で4日間行った。
【実施例】
【0025】
得られたジオポリマーの圧縮強度は、ジオポリマーの底面直径:高さ=1:2となるように成型した試験片に対して一軸圧縮強度試験機を用いて測定した。
また、得られたジオポリマーのpHは、ジオポリマーの表面積と純水の体積を1cm2:10cm3となるようにしてジオポリマーを密封容器中の純水に浸漬させ、これを60℃で48時間維持し、室温に低下した後に測定した値とした。
【実施例】
【0026】
得られたジオポリマー硬化体のpHと、活性化剤中のリン酸三ナトリウムの割合(モル比)(Na/(Na+H))、及び硬化体の一軸圧縮強度試験強度の関係を表1に示す。
その結果、3.3≦ pH ≦ 7.1のときに、一軸圧縮強度が高く、水中で健全なジオポリマ
ー硬化体が得られた。Na/(Na+H)値が高くなりpHが7.1を超えると、硬化反応が進まないために、試料の一軸圧縮強度が低下し、水中で崩壊した。
【実施例】
【0027】
【表1】
JP2020152611A_000002t.gif
【実施例】
【0028】
以上のように、濃リン酸と可溶性リン酸塩の混合物を活性化剤として用いることにより、圧縮強度を保持した、弱酸性から中性のジオポリマーを得ることができた。そして、濃リン酸と可溶性リン酸塩の混合比を変化させることにより、ジオポリマー硬化体のpHを調整することができた。
【実施例】
【0029】
実施例2
メタカオリナイト、濃リン酸、NaH2PO4を重量比1:0.875:0.135で混合し、60℃で4日
間養生することによって、pH 5.7の硬化体を得た。
【実施例】
【0030】
実施例3
メタカオリナイト、濃リン酸、(NH4)2HPO4を重量比1:0.875:0.148で混合し、60℃で4日間養生することによって、pH 5.2の硬化体を得た。
【実施例】
【0031】
実施例4
水酸化アルミニウム、濃リン酸、Na3PO412H2Oを重量比1:0.79:0.70で混合し、60℃で4日間養生することによって、pH 4.7の硬化体を得た。