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明細書 :高速炉用ラッパ管およびそれの接合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5833904号 (P5833904)
公開番号 特開2013-117489 (P2013-117489A)
登録日 平成27年11月6日(2015.11.6)
発行日 平成27年12月16日(2015.12.16)
公開日 平成25年6月13日(2013.6.13)
発明の名称または考案の名称 高速炉用ラッパ管およびそれの接合方法
国際特許分類 G21C   3/324       (2006.01)
FI G21C 3/30 GDFH
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2011-266017 (P2011-266017)
出願日 平成23年12月5日(2011.12.5)
審査請求日 平成26年6月26日(2014.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000165697
【氏名又は名称】原子燃料工業株式会社
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】本田 真樹
【氏名】中村 亘
【氏名】矢野 康英
【氏名】皆藤 威二
個別代理人の代理人 【識別番号】110000442、【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
審査官 【審査官】青木 洋平
参考文献・文献 特開2003-149366(JP,A)
特開2011-189409(JP,A)
特開平10-085954(JP,A)
特開2006-095561(JP,A)
特開2000-158130(JP,A)
調査した分野 G21C 3/324
B23K 33/00
B23K 9/23
B23K 9/028
特許請求の範囲 【請求項1】
ラッパ管の開口端部に継ぎ手管体の開口端部を溶接して一体化する高速炉用ラッパ管において、
前記ラッパ管は、六角形の外形を成すと共にフェライト系ステンレス鋼から構成され、
前記継ぎ手管体は、前記ラッパ管と同じ六角形の外形を成し、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されると共に、その開口端部に前記ラッパ管の開口端面が当接する突き当て面、及び当該突き当て面から連続して前記ラッパ管の軸方向に延びる芯出し筒部を有し、
前記ラッパ管の開口端部を前記継ぎ手管体の芯出し筒部に沿って嵌合し、前記ラッパ管の開口端面を前記継ぎ手管体の突き当て面に当接した状態で、前記ラッパ管の開口端面と前記継ぎ手管体の突き当て面を溶接したことを特徴とする高速炉用ラッパ管。
【請求項2】
請求項1に記載の高速炉用ラッパ管において、
前記継ぎ手管体の芯出し筒部の管体径方向の肉厚t2が、前記ラッパ管の管体径方向の肉厚t1よりも厚い(t2>t1)ことを特徴とする高速炉用ラッパ管。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高速炉用ラッパ管において、
前記芯出し筒部が当該継ぎ手管体の径方向内側に形成され、前記ラッパ管の開口端部が前記芯出し筒部の径方向外側から嵌合することを特徴とする高速炉用ラッパ管。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高速炉用ラッパ管において、
前記芯出し筒部の前記ラッパ管側の先端部外周にラッパ管嵌合案内部が設けられていることを特徴とする高速炉用ラッパ管。
【請求項5】
請求項3に記載の高速炉用ラッパ管において、
前記芯出し筒部の内周の形状が当該継ぎ手管体の外形と相似する六角形をしており、前記芯出し筒部の管体径方向の肉厚t2が各辺でほぼ等しいことを特徴とする高速炉用ラッパ管。
【請求項6】
六角形の外形を成すと共にフェライト系ステンレス鋼から構成されるラッパ管と、前記ラッパ管と同じ六角形の外形を成し、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されると共に、一端である開口端部に前記ラッパ管の開口端面が当接する突き当て面、及び当該突き当て面から連続して前記ラッパ管の軸方向に延びる芯出し筒部を有する継ぎ手管体と、を溶接して一体化する高速炉用ラッパ管の接合方法であって、
前記ラッパ管の開口端部を前記継ぎ手管体の芯出し筒部に沿って嵌合して、前記ラッパ管の開口端面を前記継ぎ手管体の突き当て面に当接する第1工程と、
前記第1工程の後に行われ、前記ラッパ管の開口端面と前記継ぎ手管体の突き当て面を溶接する第2工程と、
前記第2工程の後に行われ、前記ラッパ管と前記継ぎ手管体の接合体を熱処理する第3工程と、を含むことを特徴とする高速炉用ラッパ管の接合方法。
【請求項7】
請求項6に記載の高速炉用ラッパ管の接合方法において、
前記第2工程以降に、前記芯出し筒部を除去する第4工程さらに含むことを特徴とする高速炉用ラッパ管の接合方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉用ラッパ管(以下、ラッパ管と略称することもある)に係り、特にラッパ管の開口端部における異種材料の溶接構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速炉用燃料集合体は、六角管形状をしたラッパ管内に、スペーサワイヤが巻き付けられた多数の燃料被覆管が装荷されている。このラッパ管の上部および下部には、ハンドリングヘッドとエントランスノズルが、それぞれ溶接により接合されている。
【0003】
従来の高速炉用燃料集合体は、ラッパ管、ハンドリングヘッドならびにエントランスノズルが全てオーステナイト系ステンレス鋼で構成されていた。しかしながら、近年、経済性等の観点から燃料の高燃焼度が求められており、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて耐スエリング性が高いフェライト系ステンレス鋼をラッパ管の材質として適用する必要が出てきた。
【0004】
フェライト系ステンレス鋼製のラッパ管を適用するためには、オーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッドあるいはエントランスノズルを溶接する必要があるが、溶接部にδフェライト組織が生成した場合、原子炉の稼働中に溶接部が脆化する可能性が高く、衝撃特性の低下により、機械強度が保てなくなるという問題が生じる。
【0005】
このため熱処理を行い、前記δフェライト組織を消滅させる必要がある。しかし、ハンドリングヘッド等を接合したラッパ管の全長は高速原子炉「もんじゅ」の場合で、約4200mmと長く、大型の熱処理炉が必要となる。
【0006】
前述のような技術的課題を解決するため、ラッパ管に予めオーステナイト系ステンレス鋼製の継ぎ手部を設ける方法(下記特許文献1,2参照)、あるいはオーステナイト系ステンレス鋼製の継ぎ手部材を機械的に接合する方法(下記特許文献3,4,非特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第3572285号公報
【特許文献2】特開平7-260973号公報
【特許文献3】特許第4229289号公報
【特許文献4】特許第3117285号公報<nplcit num="1"> <text>「PNC-FMS鋼ラッパ管とSUS316鋼の異材溶接技術開発」サイクル機構技報No.13,2001年12月</text></nplcit>
【0008】
図19ならびに図20は前記特許文献3で提案されたラッパ管とハンドリングヘッドとの接合構造を説明するための図であって、図19はラッパ管の上部と継ぎ手部材とハンドリングヘッドの分解斜視図、図20はラッパ管の上部と継ぎ手部材とハンドリングヘッドの接合構造を示す拡大断面図である。
【0009】
これらの図に示すように、フェライト系ステンレス鋼製のラッパ管51とオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッド52がオーステナイト系ステンレス鋼製の継ぎ手部材53を介して接合されている。
【0010】
図19に示すように、六角管形状をしたラッパ管51の上端開口部の内側に同じ六角管形状をした継ぎ手部材53の下端嵌合部54を嵌入し、ラッパ管51の平面部に形成されたネジ孔55から継ぎ手部材53の平面部に形成されたネジ孔56に向けてネジ57を差し込んで締め付け、ラッパ管51と継ぎ手部材53を機械的に連結する。
【0011】
さらに継ぎ手部材53の上端開口部の内側に同じ六角管形状をしたハンドリングヘッド52を挿入して、両者の接合部をTIG溶接58(図20参照)することにより、継ぎ手部材53を介して、異種材料のラッパ管51とハンドリングヘッド52を接合する構造になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記ラッパ管に予めオーステナイト系ステンレス鋼製の継手部を設ける方法ならびに機械的接合による方法は、次のような技術的問題点を有している。
(1)ラッパ管にオーステナイト系ステンレス鋼製の継手部を設ける方法
通常のラッパ管の製造工程において、丸管の状態で継ぎ手部を溶接、熱処理する工程が追加されるため、工程数が増えて、ラッパ管の価格上昇に繋がる。ラッパ管の価格上昇はできるだけ抑えることが必要である。
【0013】
(2)ラッパ管にオーステナイト系ステンレス鋼製の継手部材を機械的に接合する方法
ラッパ管とハンドリングヘッドなどとの接合強度は接合部材のせん断応力に依存するが、図19ならびに図20に示すネジ締め構造であれば、ネジ57の付近は所定の接合強度が得られても、ネジ57から離れた所は十分な接合強度が得られない。
【0014】
さらに放射線による劣化や冷却材であるナトリウムによる流力振動などによりネジ57が緩んだり脱離して、接合状態の健全性が保てなくなること、およびネジ孔55、56からのナトリウム漏れが懸念される。
【0015】
管と管との溶接は一般に用いられる技術であるが、高速炉用ラッパ管は六角形の特殊形状をしているため、ラッパ管と継ぎ手部材とを突き合わせ溶接するだけでは、次のような技術的問題が生じる。
【0016】
(1)ラッパ管は引き抜き加工によって製作されるため、その断面寸法は正六角形からずれることがある。一方、継ぎ手部材は引き抜き加工あるいは切削加工によって製作されるため、その断面寸法はラッパ管と合わないことがある。そのため、ラッパ管と継ぎ手部材の接合部表面は一定ではなく、段差などが生じることがある。
【0017】
さらに、溶接によって溶けた金属が内面側に移行して、内外表面の溶融ビード形状が不安定になり、アンダーカットや溶け込み不良などの溶接欠陥が生じることがある。特にラッパ管は高速炉用燃料集合体の強度部材であるため、溶接欠陥によりラッパ管の肉厚が減少することは好ましくない。
【0018】
(2)ラッパ管および継ぎ手部材は六角形管体などの多角形管体であるため、多角形管体の中心を中心軸として回転溶接する場合、電子ビーム溶接であれば電子銃との距離、タングステン-不活性ガス溶接(TIG溶接)であれば電極との距離が一定せず、回転角に応じて常に溶接条件を制御しなければ、安定した溶接部を得ることができず、溶け込み不良やアンダーカットが生じることがある。
【0019】
(3)溶接変形を防止するためにラッパ管や継ぎ手部材を拘束する場合、ラッパ管や継ぎ手部材の肉厚が比較的薄いため(高速実験炉用ラッパ管の場合、例えば外側対面距離約80mmに対して肉厚は約2mm)、強固に固定することが難しく、溶接後の曲がりを防止することが困難である。
【0020】
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解消し、溶接後の曲がりが少なく、信頼性の高い高速炉用ラッパ管およびそれの接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
ラッパ管の開口端部に継ぎ手管体の開口端部を溶接して一体化する高速炉用ラッパ管において、
前記ラッパ管は、六角形の外形を成すと共にフェライト系ステンレス鋼から構成され、
前記継ぎ手管体は、前記ラッパ管と同じ六角形の外形を成し、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されると共に、その開口端部に前記ラッパ管の開口端面が当接する突き当て面、及び当該突き当て面から連続して前記ラッパ管の軸方向に延びる芯出し筒部を有し、
前記ラッパ管の開口端部を前記継ぎ手管体の芯出し筒部に沿って嵌合し、前記ラッパ管の開口端面を前記継ぎ手管体の突き当て面に当接した状態で、前記ラッパ管の開口端面と前記継ぎ手管体の突き当て面を溶接したことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記継ぎ手管体の芯出し筒部の管体径方向の肉厚t2が、前記ラッパ管の管体径方向の肉厚t1よりも厚い(t2>t1)ことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記芯出し筒部が当該継ぎ手管体の径方向内側に形成され、前記ラッパ管の開口端部が前記芯出し筒部の径方向外側から嵌合することを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第4の手段は前記第1ないし第3のいずれかの手段において、
前記芯出し筒部の前記ラッパ管側の先端部外周にラッパ管嵌合案内部が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第5の手段は前記第3の手段において、
前記芯出し筒部の内周の形状が当該継ぎ手管体の外形と相似する六角形をしており、前記芯出し筒部の管体径方向の肉厚t2が各辺でほぼ等しいことを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第の手段は、
六角形の外形を成すと共にフェライト系ステンレス鋼から構成されるラッパ管と、前記ラッパ管と同じ六角形の外形を成し、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されると共に、一端である開口端部に前記ラッパ管の開口端面が当接する突き当て面、及び当該突き当て面から連続して前記ラッパ管の軸方向に延びる芯出し筒部を有する継ぎ手管体と、を溶接して一体化する高速炉用ラッパ管の接合方法であって、
前記ラッパ管の開口端部を前記継ぎ手管体の芯出し筒部に沿って嵌合して、前記ラッパ管の開口端面を前記継ぎ手管体の突き当て面に当接する第1工程と、
前記第1工程の後に行われ、前記ラッパ管の開口端面と前記継ぎ手管体の突き当て面を溶接する第2工程と、
前記第2工程の後に行われ、前記ラッパ管と前記継ぎ手管体の接合体を熱処理する第3工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第の手段は前記第の手段において、
前記第2工程以降に、前記芯出し筒部を除去する第4工程さらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は前述のような構成になっており、溶接後の曲がりが少なく、信頼性の高い高速炉用ラッパ管およびそれの接合方法を提供することができる。
【0031】
特に、溶接工程では、「ラッパ管の厚み」での溶接ではなく、「ラッパ管の厚み」+「溶接継ぎ手の厚み」としての溶接となることから、溶接条件設定が容易となり、溶接の信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、ラッパ管と継ぎ手部材ならびに継ぎ手部材とハンドリングヘッドとの接合を、ネジ等による機械的結合と異なり、余分な部品等を必要とせず、溶接のみによる接合となるため、安価に接合することができる。
【0033】
さらに、本発明では接合部が全て溶接であることから、ネジ等用の孔が不要であり、非常に簡素化された形状となることから、高速炉用等の燃料において必要な冷却材であるナトリウムの洗浄作業等や放射能汚染後の除染作業が容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例に係るラッパ管の一部を断面にした正面図である。
【図2】そのラッパ管の左側面図である。
【図3】継ぎ手管体の一部を断面にした正面図である。
【図4】その継ぎ手管体の左側面図である。
【図5】溶接して一体化したラッパ管と継ぎ手管体の接合体の一部を断面にした正面図である。
【図6】その接合体の左側面図である。
【図7】ラッパ管と継ぎ手管体の溶接部付近の拡大断面図である。
【図8】芯出し筒部を切削除去した後の接合体の一部を断面にした正面図である。
【図9】その接合体の左側面図である。
【図10】溶接後のラッパ管と継ぎ手管体の接合体の曲がりを測定した結果を示す図である。
【図11】その接合体の曲がりを測定する装置とその測定方法を説明するための正面図である。
【図12】その測定装置と測定方法を説明するための側面図である。
【図13】その接合体の曲がりの決め方を説明するための図である。
【図14】本発明の実施例に係る高速炉用燃料集合体の分解断面図である。
【図15】その高速炉用燃料集合体の接合手順を説明するためのフローチャートである。
【図16】本発明の第1変形例に係る継ぎ手管体の一部を断面にした正面図である。
【図17】その継ぎ手管体の左側面図である。
【図18】本発明の第2変形例に係るラッパ管と継ぎ手管体の接合体における溶接前後の状態を示す要部断面図である。
【図19】従来提案されたラッパ管の上部と継ぎ手部材とハンドリングヘッドの分解斜視図である。
【図20】そのラッパ管の上部と継ぎ手部材とハンドリングヘッドの接合構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は前述したような構成を有し、継ぎ手部材(継ぎ手管体)にラッパ管との嵌め合い構造(芯出し筒部)を持たせ、ラッパ管と継ぎ手部材との溶接後に嵌め合い構造部分を除去することで、継ぎ手部材がラッパ管と同一断面寸法となり、寸法精度の高い高速炉用ラッパ管を得ることができる。

【0036】
具体的には、継ぎ手部材に、ラッパ管と同一の寸法部分を有する後述の側筒部の部分と、ラッパ管を嵌め合わせるための後述の突き当て面と芯出し筒部で構成される段差部を有する部分とを設ける。この段差部の外側対面寸法は、ラッパ管の内側対面寸法に合わせている。

【0037】
ラッパ管と継ぎ手部材の接合は、継ぎ手部材の段差部にラッパ管を嵌め合わせて、ラッパ管と継ぎ手部材の中心を一致させた後に、電子ビーム溶接やTIG溶接などの適宜な方法で溶接する。
ラッパ管と継ぎ手部材の接合後、突き出した継ぎ手部材の段差部を、切削加工などの適宜な方法で削除する。
溶接によって生じるδフェライト組織は、切削加工の前後のいずれかで熱処理することにより消滅させる。

【0038】
これにより、ラッパ管とハンドリングヘッドあるいはラッパ管とエントランスノズルとの溶接はオーステナイト系ステンレス鋼同士の溶接となり、従来の溶接法で溶接できる。

【0039】
次に本発明の実施例に係る高速炉用ラッパ管を図面とともに説明する。
図1は一部を断面にしたラッパ管の正面図、図2はそのラッパ管の左側面図、図3は一部を断面にした継ぎ手管体の正面図、図4はその継ぎ手管体の左側面図、図5は溶接して一体化したラッパ管と継ぎ手管体の接合体の一部を断面にした正面図、図6はその接合体の左側面図、図7はラッパ管と継ぎ手管体の溶接部付近の拡大断面図、図8は溶接後に内側に突出している芯出し筒部を切削除去した後の接合体の一部を断面にした正面図、図9はその接合体の左側面図である。

【0040】
図1ならびに図2に示すようにラッパ管1は六角管形状の管体からなり、両端に開口端部2a,2bを有し、ラッパ管1は引き抜き加工によって製作される。本実施例では、ラッパ管1の外側対面距離は約80mm、径方向の肉厚t1は約2mmである。
ラッパ管1には、耐スエリング性を向上するためにフェライト系ステンレス鋼が用いられ、本実施例では下記の化学成分を有するフェライト/マルテンサイト鋼を使用している。

【0041】
C:0.09~0.15(重量%)、
Cr:10.0~12.0(重量%)、
Si:≦0.10(重量%)、
Mo:0.30~0.70(重量%)、
Mn:0.40~0.80(重量%)、
W:1.70~2.30(重量%)、
P:≦0.030(重量%)、
V:0.15~0.25(重量%)、
S:≦0.030(重量%)、
Nb:0.020~0.080(重量%)、
Ni:0.20~0.60(重量%)、
N:0.030~0.070(重量%)、
残部:Feおよび不可避不純物。

【0042】
このラッパ管1の両側の開口端部2aあるいは2bに、継ぎ手管体3が溶接される。この継ぎ手管体3もラッパ管1と同じように外形が六角形をした側筒部4を有し、その側筒部4の一方の開口端部には、ラッパ管1の開口端面5(図1参照)が当接する突き当て面6と芯出し筒部7が、継ぎ手管体3の径方向に沿った厚さ方向に隣接して設けられている。

【0043】
本実施例の場合は図3に示すように、芯出し筒部7は突き当て面6の径方向内側に設けられており、突き当て面6と芯出し筒部7外周面との間にラッパ管1の肉厚t1と略同寸の段差部8が形成されている。

【0044】
図5に示すように芯出し筒部7はラッパ管1の軸方向に延びており、芯出し筒部7の径方向の肉厚t2はラッパ管1の径方向の肉厚t1よりも厚く設定されて(本実施例の場合、4~5mm)、芯出し筒部7にラッパ管1を嵌合した際にラッパ管1を確実に保持できる機械的強度を有している。

【0045】
また、芯出し筒部7の外周の形状ならびに外寸は、ラッパ管1の内周の形状ならびに内寸と略同じに設定されている。さらに、前記突き当て面6と芯出し筒部7の外周面との直角度は、精度よく確保されている。
継ぎ手管体3は後述するハンドリングヘッド14やエントランスノズル15(ともに図14参照)と同じオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS316)から構成されている。

【0046】
図5に示すように、ラッパ管1の一方の開口端部2aを芯出し筒部7に外嵌する。この嵌合をスムーズに行なうため、芯出し筒部7のラッパ管側の先端部外周に丸味あるいはテーパ状のラッパ管嵌合案内部9が設けられている。

【0047】
このようにしてラッパ管1を芯出し筒部7に嵌合することにより、ラッパ管1の開口端面5が継ぎ手管体3の突き当て面6に当接して、継ぎ手管体3に対してラッパ管1が傾くことなく、ラッパ管1が芯出し筒部7により確実に同一方向に保持されて、ラッパ管1と継ぎ手管体3の中心軸が合致する。

【0048】
この状態でラッパ管1の開口端面5と継ぎ手管体3の突き当て面6との接合部が溶接10される。この溶接10には、例えば電子ビーム溶接あるいはタングステン-不活性ガス溶接(TIG溶接)などが適用される。この溶接10は、ラッパ管1と継ぎ手管体3の接合体を回転しながら、ラッパ管1と継ぎ手管体3の接合部全周にわたって施される。

【0049】
図7は、ラッパ管1と継ぎ手管体3の溶接部付近の拡大断面図である。この図は溶接部の拡大写真を線図化したものであり、この図から明らかなように、溶接10による溶け込みはラッパ管1、継ぎ手管体3の外表面から芯出し筒部7の所まで達しており、アンダーカットや溶け込み不良というような問題は生じていない。

【0050】
ラッパ管1と継ぎ手管体3を溶接した状態では図5に示すように、継ぎ手管体3内において芯出し筒部7が内側に突き出た状態になっているから、図7において一点鎖線で示す切削線11の所まで、切削加工により芯出し筒部7を除去する。この切削加工後の状態が図8ならびに図9に示されており、ラッパ管1と継ぎ手管体3の内面が面一になっている。
本実施例では芯出し筒部7を除去したが、芯出し筒部7が邪魔にならないのであれば、そのまま芯出し筒部7を残しておいても構わない。

【0051】
前述の異材溶接10によって生じるδフェライト組織は、切削加工の前後の何れかで熱処理することにより消滅することができる。熱処理としては、溶接部を1050℃で10分間以上焼ならしを行なえば、溶接部近傍に生じたδフェライト組織がほぼ完全に消失することが、実験で確認されている。

【0052】
図10は、溶接後のラッパ管1と継ぎ手管体3の接合体の曲がりを測定した結果を示す図であり、図中の一般的な技術による方法とは、芯出し筒部7の無い単なる六角管形状をした継ぎ手管体とラッパ管を突き合わせ溶接した従来の方法である。

【0053】
図11ならびに図12は、前記接合体の曲がりを測定する装置とその測定方法を説明するための正面図ならびに側面図である。
図11に示している点(1)~(8)は、接合体上の測定点を示しており、点(6)と点(7)はラッパ管1と継ぎ手管体3の溶接部の両サイドの位置で、溶接ビートの中央から5mm離れた位置である。

【0054】
次に曲がりの測定方法について説明する。
1.ラッパ管1と継ぎ手管体3の接合体を基台12上に水平に載せる。
2.図12に示すようにリニアゲージ13を測定アーム14に取り付け、リニアゲージ13を接合体の上側の面(図では六角面1)の略中央の位置に接触させる。測定点(1)を「0」(基準点)とする。
3.リニアゲージ13を接合体の軸方向に沿って移動して、点(2)~(8)の位置を測定する。

【0055】
4.各(1)~(8)の測定点を図13のようにプロットして、点(1)と点(8)を直線で結ぶ。

【0056】
5.その直線から各(2)~(7)の測定点までの幅のうち最大幅をその面の曲がりとする。図13の例では、点(4)が前記直線から最も離れているから、点(4)の値がその面の曲がり寸法となる。

【0057】
6.前記1~5の測定方法で接合体の6面を順次測定して、各面からの曲がり寸法の最大値を当該接合体の曲がり寸法とする。図10の本発明による方法では、六角面3の値0.09mmが最大値であるから、その値が接合体の曲がり寸法となる。

【0058】
図10の測定結果から明らかなように、一般的な技術による従来の方法であれば接合体の曲がり寸法は0.17mm(六角面2)であるのに対して、本発明による方法であれば接合体の曲がり寸法は0.09mm(六角面3)であり、接合体の曲がり寸法を従来よりも約47%低減することができた。また平均値で見ると、一般的な技術による方法であれば接合体の平均曲がり寸法は0.11mmであるのに対して、本発明による方法であれば接合体の平均曲がり寸法は0.06mmであり、接合体の平均曲がり寸法を従来よりも約45%低減することができた。

【0059】
このように接合体の曲がりが少ないということは、接合体の真直度が高いということであり、燃料被覆管の装荷などに支障をきたすことがなく、さらに、接合体の溶接不良あるいは破壊の起点が殆ど無いことを意味しており、信頼性の高い高速炉用ラッパ管である。

【0060】
図14に示すように、ラッパ管1の両端部にオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS316)製の継ぎ手管体3aと継ぎ手管体3bが溶接される。そして継ぎ手管体3aには同じオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS316)からなるハンドリングヘッド14が溶接され、継ぎ手管体3bには同じオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS316)からなるエントランスノズル15が溶接されて、高速炉用燃料集合体を構成する。

【0061】
継ぎ手管体3aとハンドリングヘッド14ならびに継ぎ手管体3bとエントランスノズル15はともに同材質で構成されているから、溶接部付近にδフェライト組織が生成することはなく、電子ビーム溶接やTIG溶接などの適宜な方法で溶接することができる。

【0062】
図15は、本発明の実施例に係る高速炉用燃料集合体の接合手順をまとめたフローチャートである。

【0063】
S1:継ぎ手管体3の開口端部に、突き当て面6と芯出し筒部7を形成する。
S2:ラッパ管1の両側開口端部を、それぞれ継ぎ手管体3の芯出し筒部7に嵌合して、ラッパ管1の開口端面5を継ぎ手管体3の突き当て面6に当接する。
S3:ラッパ管1の開口端面5と継ぎ手管体3の突き当て面6を溶接する。
S4:継ぎ手管体3の芯出し筒部7を切削除去する。
S5:ラッパ管1と継ぎ手管体3の接合体を熱処理する。
S6:一方の継ぎ手管体3aにハンドリングヘッド14を溶接し、他方の継ぎ手管体3bにエントランスノズル15を溶接する。

【0064】
なお、芯出し筒部7が邪魔にならないのであれば、芯出し筒部7の切削除去工程(S4)は不要である。また、S5の接合体の熱処理工程を、S3の溶接工程とS4の芯出し筒部7の切削工程との間に入れることも可能である。

【0065】
図16ならびに図17は本発明の第1変形例に係る継ぎ手管体3を示す図で、図16はその継ぎ手管体3の一部を断面にした正面図、図17はその継ぎ手管体3の左側面図である。この変形例において図3ならびに図4に示す継ぎ手管体3と相違する点は、芯出し筒部7の内周の形状が円形になっている点である。

【0066】
ただ、芯出し筒部7の内周を円形にすると、芯出し筒部7の肉厚t2が薄い部分と厚い部分が交互にでき、芯出し筒部7を切削する場合には肉厚の変化により切削がしずらいという難点がある。その点図3ならびに図4に示す継ぎ手管体3のように、芯出し筒部7の内周の形状が継ぎ手管体3の外形と同じ多角形をしており、芯出し筒部7の肉厚t2が各辺でほぼ等しいと、芯出し筒部7の切削工程が容易である。

【0067】
図18は本発明の第2変形例に係るラッパ管1と継ぎ手管体3の接合体における溶接前後の状態を示す図で、同図(a)は溶接前後の状態を示す要部断面図、同図(b)は溶接後の状態を示す要部断面図である。

【0068】
この変形例において図5ならびに図8に示す前記実施例と相違する点は、図18(a)に示すように芯出し筒部7が突き付き当て面6の径方向外側に設けられている点である。従ってこの変形例の場合、芯出し筒部7の内周の形状ならびに寸法が、ラッパ管1の外周の形状ならびに寸法と略同じになっている。

【0069】
図18(a)に示すように、ラッパ管1の開口端部2aを芯出し筒部7の内側に嵌入して、ラッパ管1の開口端面5を継ぎ手管体3の突き当て面6に当接し、ラッパ管1の位置決めを行ない、開口端面5と突き当て面6の接合部を全周にわたって溶接10をする。

【0070】
その後図18(b)に示すように、継ぎ手管体3の芯出し筒部7を研削除去して、ラッパ管1の外周面と継ぎ手管体3の外周面を面一とする。この変形例の場合、継ぎ手管体3の芯出し筒部7が外側に露呈しているから研削作業が簡単である。その際、ラッパ管部分で芯出しをした状態で研磨できるため、接合体の曲がり量をより低減する効果がある。
【符号の説明】
【0071】
1:ラッパ管、
2a,2b:開口端部、
3,3a,3b:継ぎ手管体、
4:側筒部、
5:開口端面、
6:突き当て面、
7:芯出し筒部、
8:段差部、
9:ラッパ管嵌合案内部、
10:溶接、
11:切削線、
14:ハンドリングヘッド、
15:エントランスノズル、
t1:ラッパ管の肉厚、
t2:芯出し筒部の肉厚。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
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【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図7】
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