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明細書 :植物において外来遺伝子の発現を安定化させるDNA断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3507858号 (P3507858)
公開番号 特開2001-145491 (P2001-145491A)
登録日 平成16年1月9日(2004.1.9)
発行日 平成16年3月15日(2004.3.15)
公開日 平成13年5月29日(2001.5.29)
発明の名称または考案の名称 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるDNA断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物
国際特許分類 C12N 15/09      
A01H  5/00      
FI A01H 5/00 A
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願平11-329400 (P1999-329400)
出願日 平成11年11月19日(1999.11.19)
審査請求日 平成12年11月7日(2000.11.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598169457
【氏名又は名称】奈良先端科学技術大学院大学長
発明者または考案者 【氏名】新名 惇彦
【氏名】吉田 和哉
【氏名】加藤 晃
【氏名】長屋 進吾
【氏名】柴田 道夫
【氏名】間 竜太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 GALLI, Current Opinion in Plant Technology, vol.1, pp.166-172 (1998)
調査した分野 C12N 15/09
A01H 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
配列表の配列番号1に示す塩基番号1-214で示される塩基配列、又は当該塩基配列と91%以上の相同性を有し且つ外来遺伝子の発現を安定化させる塩基配列からなることを特徴とする、DNA断片。

【請求項2】
請求項1記載のDNA断片、導入するべき外来遺伝子、及び請求項1記載のDNA断片と当該外来遺伝子の間に挟まれる位置に存在し、当該外来遺伝子の発現を調節する外来プロモーター、を含む融合遺伝子を連結した、ベクター。

【請求項3】
外来遺伝子を植物において安定に発現させるために、請求項2記載のベクターを植物に導入する事を特徴とする、遺伝子導入方法。

【請求項4】
請求項3記載の導入方法により、外来遺伝子を安定に発現させた、形質転換植物。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物細胞において外来遺伝子の発現を安定化させるDNA断片、及び外来遺伝子を植物細胞において安定に発現させるための遺伝子導入方法、更には外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物に関するものである。

【0002】
【従来の技術】植物に種々の性質を付与する目的で、外来の遺伝子を導入した形質転換植物が作製されているが、その場合に個体間による導入遺伝子発現のばらつきが大きいことが問題となる。このばらつきは、導入された染色体上の位置によると考えられている。外来遺伝子が活性化クロマチン領域に挿入された場合には高い発現が得られ、反対に不活性化クロマチン(ヘテロクロマチン)領域に挿入された場合には十分な発現が得られないとされ(Galli,1:166-172,Current opinion in plant technology (1998) 1:166-172, Matzke et al.,Current opinion in plant technology (1998) 1: 142-148 )、このような現象は「ポジション効果」と呼ばれている。このようなポジション効果のために植物に導入した外来遺伝子は、しばしば全く発現しないか、発現しても弱いか、あるいは発現しても植物の成長や外環境により発現しなくなることがある。この現象は遺伝子組み換え植物の商業化に際し障害となっており、導入遺伝子の発現を安定化する手法の確立が必要とされる。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、多様な遺伝子を導入した形質転換体の解析から、例外的に染色体上の導入位置に依存せずに発現する現象が見出され、その後の解析から、そのような現象は3つのケースに大別されている。すなわち、インスレーター、LCR(locus control region)およびMAR(matrix attachment region)の関与が示唆され、これら三者は作用機構は異なるが染色体上の境界として機能し、周辺のクロマチンの影響を遮断すると考えられている。

【0004】
ポジション効果を抑制して、植物において導入遺伝子の安定した発現を得る目的で、上述したMARが利用されている。MARは、アデニン、チミン(AT)リッチな配列、トポイソメラーゼIIの認識配列を含むなどの特徴を持ち、インビトロで核膜結合活性を有する機能領域である。染色体上では、10~100kbに一つは存在しているとされ、これらの領域を介して染色体は核膜と結合して高次構造を形成している。MARは、染色体を限られたスペースである核内にコンパクトに収めるために必須の存在であるが、近年の研究により遺伝子発現制御にも関与している事実が知られてきている。

【0005】
また、MAR間にクロマチンループが形成され、このループ内の遺伝子発現の独立性が保証されると考えられている。発現安定化に、MARを使用した効果については統一性が見られず、結果として安定発現が得られない場合が多い。その現象の理由として、多くのMARが発現を上昇させること、また複数コピー導入時にはポジション効果以外の特異的なDNAのメチル化などによる発現の不活性化が生じることなどが挙げられる。このため、全てのMARが染色体上の境界としての機能を有していない可能性が示唆され(Galli,1:166-172,Current opinion in plant technology (1998) 1:166-172, Matzke et al.,Current opinion inplant technology (1998) 1: 142-148) 、有用技術として手法として確立されるには至っていない。

【0006】
一方、ポジション効果を抑制する目的で、上述したインスレーターもまた、使用されている。エンハンサーやサイレンサーは数kb離れていてもその効果が及ぶ事が知られており、その様な隣接する遺伝子の干渉効果を遮断する働きを有する機能領域(DNA断片)がインスレーターである、と定義されている。高等真核植物では、エンハンサーやサイレンサーが、特定の一つのプロモーターだけではなく、複数のプロモーターの転写活性にも影響を与える場合があるため、染色体上では、複数のエレメントがランダムに影響を与える可能性がある。これは遺伝子発現に多様性を持たせる反面、無秩序ではない厳密な秩序ある制御のためには、エンハンサーやサイレンサーの影響を限定する機構が必要と想像される。現在では、インスレーターがこれらの影響力を限定していると考えられている。

【0007】
これまでにショウジョウバエを始めとして多様な生物からインスレーターが同定されており、その例として、ショウジョウバエ由来のgypsyインスレーター、hsp70scs-scs’インスレーターおよびFab-7インスレーター、ニワトリ由来のベータグロビンインスレーター、およびヒト由来のapoBインスレーターなどがある。関与しているタンパク質も同定され始め、特にgypsyインスレーター、hsp70scs-scs’インスレーターについて解析が進んでいる(赤坂、細胞工学(1997) 16: 1476-1484)。この中で、ニワトリ由来のベータグロビンインスレーターが種を超えて遺伝子発現の安定化に効果を示す事が報告されている。また、本発明者らは、ウニのアリルスルファターゼ遺伝子から単離したインスレーターを連結することによって、植物細胞の染色体に組み込まれた外来遺伝子の発現を安定化できる事を示した(特願平11-253174)。これらの知見を基にして、導入遺伝子の発現安定化機能を有する、新規の遺伝子を得る事を目的として、本発明の研究開発は進められた。

【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、タバコ培養細胞(Nicotiana tabacum,BY2)から数種の高発現プロモーターを単離した。その様にして得た各プロモーターDNA断片にGUSレポーター遺伝子を連結し、タバコ培養細胞に導入し、それぞれ独立した形質転換クローンにおけるGUS活性を調べた。その結果、タバコ由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(NtADH)遺伝子のプロモーターの発現が、複数クローン間において非常に安定している事がわかった。

【0009】
その様な知見から、NtADHプロモーター内に遺伝子発現安定化機能配列を探索し、本発明の発現安定化領域であるADH200を得た。ADH200の詳細については後に述べる。ADH200は、植物における導入遺伝子の発現を安定化させる技術として、大いに利用価値が高いと考えられ、植物バイオ産業に対する貢献が期待される。

【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、植物において導入した外来の発現を安定化させる目的に使用できる、新規のDNA断片を提供する。本発明のDNA断片は、タバコ由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(NtADH)遺伝子プロモーターの、TATA boxから214bp上流までの領域の遺伝子配列であり、本発明者らは当該配列が遺伝子発現を安定化させる作用を有する事を見出し、当該配列をADH200と名づけた。ここで遺伝子発現の安定化とは、導入した外来遺伝子の活性が認められない個体、又は導入した外来遺伝子の活性が非常に低い個体の割合が顕著に減少する事を示す。本発明のADH200の塩基配列は、配列表の配列番号1により特定される。ADH200の一部が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA断片も、外来遺伝子の発現を安定化させる作用を有する限り、本発明の範囲内である。

【0011】
ADH200のDNA断片、導入するべき外来遺伝子、及びADH200のDNA断片と当該外来遺伝子の間に挟まれる位置に存在し、当該外来遺伝子の発現を調節する外来プロモーター、を含む融合遺伝子を含む、ベクターもまた、本発明の範囲内である。即ち、導入した外来遺伝子の5’上流に外来プロモーター、更に5’上流にADH200のDNA断片を連結した構造より成る融合遺伝子を含むベクターも本発明の範囲内である。また、導入した外来遺伝子の3’下流に外来プロモーター、更に3’下流にADH200のDNA断片を連結した構造より成る融合遺伝子を含むベクターも本発明の範囲内である。ここで、外来プロモーターとは、遺伝子を導入する植物と異なる種より得られたプロモーターを意味する。下記の実施例で示される様に、ADH200のDNA断片は、異種のプロモーターの発現を安定化する事により導入した遺伝子の発現を安定化するため、ADH200のDNA断片がプロモーターの「外側」に位置している場合にも、導入遺伝子の発現を安定化する事が可能であり、本発明の顕著な効果となっている。

【0012】
実施例において示される様に、ADH200のDNA断片、外来遺伝子及び外来プロモーターを含む、上記のベクターを植物に導入する事により、外来遺伝子の発現を安定化する事が可能であり、その様な過程より成る遺伝子の導入方法もまた、本発明の範囲内である。更に、その様な方法により外来遺伝子を導入し、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物もまた、本発明の範囲内である。後に実施例において示す様に、本発明のADH200を用いる事により、導入した外来遺伝子が発現しない個体、又発現の程度が非常に低い個体が見られなくなり、外来遺伝子の発現が安定化する。

【0013】
本発明の方法を用いて、種々の外来遺伝子を安定に発現させる事が可能であり、理論的にはあらゆる遺伝子を導入する事が可能である。宿主植物に導入するのに好ましい遺伝子の例としては、ペルオキシダーゼ遺伝子又はキチナーゼ遺伝子の様な病虫害耐性遺伝子、エクトイン生合成系酵素又はベタイン合成酵素の様なストレス耐性遺伝子、及び脂肪酸合成酵素遺伝子等が挙げられる。更に、本発明の方法を用いて、種々の宿主に外来遺伝子を導入する事が可能であり、理論的にはあらゆる宿主中に遺伝子を導入する事が可能である。宿主植物として用いるのに好ましい植物の例としては、タバコ、シロイヌナズナ又はペチュニアの様な有用栽培植物、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイズ、イチゴ又はナスの様な農作物、及びユーカリ又はポプラ等の樹木等が挙げられる。上記の記載及び下記の実施例は、本発明の説明を行うための記載であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。

【0014】
【実施例】(プラスミドの構築)
本発明における実験に使用した融合遺伝子を図1に示す。
(A)35S-GUS:カリフラワーモザイクウイルス35S RNA遺伝子のプロモーター(CaMV35S)の下流に大腸菌由来のβ-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)を連結した。
(B)35S core-GUS:CaMV35Sコアプロモーター(90bpのコア配列)の下流にGUS遺伝子を連結した。
(C)pNtADH(2.5kb)-GUS:タバコアルコールデヒドロゲナーゼ(NtADH)プロモーターにGUS遺伝子を連結した。
(D)pNtADH(0.3kb)-GUS:NtADHプロモーターのTATA boxから214bp上流までのDNA断片にGUS遺伝子を連結した。
(E)ADH200-p35S core-GUS:ADH200をCaMV35Sコアプロモーター(90bp)-GUS融合遺伝子の5’上流に連結した。
(F)ADH100-p35S core-GUS:ADH200の5’側の110bp(ADH100)をCaMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝子の5’上流に連結した。
(G)PE200-p35S core-GUS:ペクチンエステラーゼ遺伝子のTATA boxの5’上流約200bp(PE200:参考文献:Shinmyoet al.,Biotech,Bioeng.,1998,58:329-332)をCaMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝子に連結した(負の対照)。尚、図1の各融合遺伝子の構造において、それぞれの記号は下記の遺伝子を示している。
R:T-DNAのライトボーダー配列
L:T-DNAのレフトボーダー配列
Km’:カナマイシン耐性遺伝子
TER:nos遺伝子のターミネーター

【0015】
(タバコ培養細胞への導入)
各バイナリープラスミド(上記A-G)を、アグロバクテリウム感染法により、タバコ培養細胞(BY2)の染色体上に、Gynheung et al.,Plant.Physiol.(1985) 79:568-570)に記載されている方法により導入した。目的遺伝子が導入されたと考えられる形質転換候補細胞は、カナマイシン耐性の表現型によって選抜した。

【0016】
(ベータグルクロニダーゼ活性測定)
各遺伝子について独立した形質転換体を独立50クローンずつ取得し(A-F)、ベータグルクロニダーゼ活性(GUS活性)の測定を行った。尚、負のコントロールであるGについてのみ、独立25クローンずつ取得した。1mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-β-D-グルクロニックアシッドを基質として添加して、37℃で30分間反応させた。本反応により、GUS活性を有するクローンは青色に染色される。GUS活性の測定を行った際の発色パターンを図2から図8に、また、GUS活性の結果を定量化してまとめたものを表1に示す。表1においてGUS活性の強弱を、++:高いGUS活性、+:低いGUS活性、-:検出限界以下、で示す。表中の数値は、それぞれのGUS活性を示す形質転換個体数を示す。

【0017】
【表1】
JP0003507858B2_000002t.gif【0018】(NtADHプロモーターによる遺伝子発現の安定化)
GUS活性を指標として、導入遺伝子の発現の安定化について検討を行った。35S-GUS融合遺伝子(図1A)では、約30%程度の割合で染色が見られない形質転換体が生じる(図2、表1A)。GUS活性の検出されない形質転換体については、PCR法によって導入遺伝子が染色体上に組み込まれていることを確認している。これに対して、pNtADH(2.5kb)-GU融合遺伝子(図1C)では、全クローンにおいて高いGUS活性が検出された(図4、表1B)。35S-GUS融合遺伝子においては、数回同様の解析を行うことによって、発現のバラツキが再現する事を確認した。この結果は、NtADHプロモーターは植物細胞の染色体において、導入された遺伝子の発現を安定化する機構を有する事を示している。

【0019】
(プロモーターの欠失解析)
そこでNtADHプロモーターの欠失解析を行う事により、遺伝子発現の安定化に関与している部位の同定を行った。その結果、NtADHプロモーターのTATA boxから214bp上流までのDNA断片にGUSを連結した導入遺伝子(pNtADH(0.3kb)-GUS:図1D)を導入したBY2細胞において、全クローンにGUS染色が見られた(図5、表1)。更に詳細に部位を特定するために、5’上流から段階的に欠失させたDNA断片について同様の解析を行った(図9)。即ち、TATA boxから、それぞれ214bp、195bp、146bp、104bp、34bpまでのDNA断片にGUS遺伝子を連結して、BY2細胞に導入し、それぞれ独立50クローン中で高いGUS活性を示すクローンの割合(GUS+%)をパーセンテージで示した。その結果、TATA boxから195bp上流までのDNA断片にGUSを連結した融合遺伝子の発現においてバラツキが起こり始め、高いGUS活性を示すクローンの割合は96%であった。TATA boxからそれぞれ146bp,104bp、34bp上流と、更に欠失が増加したDNA断片にGUSを連結した場合には、GUS活性を示すクローンの割合は更に減少した。

【0020】
上記の結果より、NtADH遺伝子のTATAボックスの直前5’上流214bpが発現安定化に機能するのに十分な、最小の領域であると結論した。当該遺伝子領域が、本発明の遺伝子であるADH200である。NtADHプロモーター遺伝子中における、ADH200領域の位置及びADH200の塩基配列を図10に示す。尚、図10の塩基配列中、末端に存在するTATA boxはADH200に含まれない。図10において、TATAはTATA box、ORFは翻訳可能領域を示す。ADH200の塩基配列の特徴としては、4-5塩基連続したアデニン(A)またはチミン(T)が繰り返し存在しており、この様な配列を有する領域は一般にDNAが折れ曲がり構造をとると言われている。この塩基配列上の特徴が、遺伝子発現の安定化に寄与していると考えられる。

【0021】
(ADH200による異種プロモーター発現の安定化)
次にADH200が異種プロモーターの発現を安定化できるかどうかを調べた。ADH200をカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sコアプロモーター(90bp)-GUS融合遺伝子の5’上流に連結しADH200-p35S core-GUS(図1E)、BY2細胞へ導入し、GUS活性を指標としてCaMVプロモーターの発現を評価した。p35S core-GUS融合遺伝子(図1B)を導入した形質転換体では発現のバラツキが見られること(図3)に対し、ADH200-p35S core-GUS融合遺伝子では全クローンで高いGUS活性が検出された(図6)。ADH200の5’側110bp(ADH100)をCaMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝子の5’上流に連結したADH100-p35S core-GUSの場合(図1F)では、GUS活性が低いクローンが存在し、遺伝子発現を安定化することはできなかった(図7、表1F)。

【0022】
更に、負の対照としてPE200を連結したPE200-p35S core-GUS融合遺伝子(図1G)では、GUS活性の低いクローンが認められ、発現のバラツキが生じた(図8)。図8において、25サンプル中6サンプルが検出限界以下であった。これらの結果は、ADH200DNA断片を5’上流に連結することによって、染色体に組み込まれたプロモーターの発現を安定化できることを示している。

【0023】
上記のADH200によるプロモーターの発現安定化を更に詳細に検討するため、図1に示す融合遺伝子のうち、A、B、Eを保有する形質転換BY2クローンより、それぞれ無作為に10クローンを選び、GUS活性の定量測定を行った(図11)。図11において、Aは35S-GUS(図1A)、Bは35S core-GUS(図1B)、CはADH200-p35S core-GUS(図1E)を導入したクローンにおける結果を示す。図11のA、B、Cにおいて、それぞれ図2、図3、図6で選抜した50クローンから無作為に10クローンを選び、各細胞の粗抽出液をGUS活性標品として、4-メチル-ウンベリフェリルグルクロニドを基質とした酵素反応を行った。図11において、単位時間および単位蛋白質重量あたりの反応生成物量(pmol)を比活性としている。

【0024】
その結果、35Sプロモータ-、および35Sコアプロモータ-では、GUS活性が検出限界以下から極めて低レベルの活性を示すクローンが存在した。即ち、35S-GUSにおいては1000pmol/min/mg未満が3クローン存在し(図11A)、35S core-GUSにおいては100pmol/min/mg未満が4クローン存在した(図11B)。これに対して、5’上流にADH200を連結したCaMV35Sプロモーター(ADH200-p35S core-GUS)では、すべてのクローンが10000pmol/min/mg以上のGUS活性を有し(図11C)ていた。以上の結果より、ADH200を付加する事により、導入したGUS遺伝子が活性を示さないクローン又は活性が非常に低いクローンが見られなくなり、遺伝子の発現が安定化している事が示された。

【0025】
【発明の効果】本発明のADH200のDNA断片を導入遺伝子に連結することによって、形質転換植物を作製する際に、導入遺伝子発現が活性化しないという発現のバラツキが回避され、安定な遺伝子の発現が可能となる。本技術は、植物の形質転換技術が必須となっている有用植物の分子育種や植物における有用物質生産などにおいて、威力を発揮することが期待できる。言い換えると、ADH200の連結によって導入遺伝子の発現を、周囲の染色体の転写環境に左右されず、正確に制御することが可能となり、遺伝子発現植物の安全性を高めることにも寄与できる。

【0026】
【配列表】<110>出願人氏名:奈良先端科学技術大学院大学長
<120>発明の名称: 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるDNA断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物
<160>配列の数:1
<210>配列番号:1
<211>配列の長さ:214
<212>配列の型:核酸
<213>起源:タバコアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター
<400>配列
GGGTCAAAAC ATCGTTAGGT TTAATAAATC AAATCGATTT TTCTCTTGAA ATATTACCAC 60
CACCTTTTTC TTATTACTCG ACAAAAACTC AAACAGTAAC ACAAAACAAA CAGCCAAAAA 120
CCGGTTTCGA AAACCCAGCG ACCAAAACAT GGAAATGGTT TTACTTTGGC CTGTTGTATT 180
CAACTTTTCG ATTTCACGAT TCTATATTTT CAGG 214
図面
【図2】
0
【図8】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図11】
8
【図9】
9
【図10】
10