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明細書 :微量液滴に含まれる微粒子の光学・電子顕微鏡による定量方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-153960 (P2020-153960A)
公開日 令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称 微量液滴に含まれる微粒子の光学・電子顕微鏡による定量方法
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
G01N  23/2202      (2018.01)
G01N  23/2251      (2018.01)
G01N  23/04        (2018.01)
B82Y   5/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
G02B  21/34        (2006.01)
FI G01N 1/28 F
G01N 23/2202
G01N 23/2251
G01N 23/04
B82Y 5/00
B82Y 40/00
G02B 21/34
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2019-055757 (P2019-055757)
出願日 平成31年3月23日(2019.3.23)
発明者または考案者 【氏名】河崎 秀陽
【氏名】針山 孝彦
出願人 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100190067、【弁理士】、【氏名又は名称】續 成朗
審査請求 未請求
テーマコード 2G001
2G052
2H052
Fターム 2G001AA03
2G001BA07
2G001BA11
2G001CA03
2G001HA13
2G001KA10
2G001LA01
2G001MA02
2G001MA04
2G001PA17
2G001RA10
2G052AA40
2G052AD29
2G052AD55
2G052FA09
2G052GA32
2G052GA33
2G052JA09
2H052AE07
要約 【課題】微量液滴に含まれる微粒子を、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察によって、より正確に定量することができる方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る微量液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法は、体積が1fLから100pLの範囲の液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法において、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように前記液滴を形成する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
体積が1fLから100pLの範囲の液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法において、
定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように前記液滴を形成する、方法。
【請求項2】
前記微粒子を含有する試料液を、観察用保護剤を含有する溶液からなる薄膜層を表面に備える試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記観察用保護剤を含有する溶液が、ポリビニルアルコールを含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記微粒子および観察用保護剤を含有する試料液を試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料液に含まれる観察用保護剤の濃度が、0.01%から1.0%の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微粒子を含有する試料液、または前記微粒子および観察用保護剤を含有する試料液を、温度および湿度が制御された環境下で試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電子顕微鏡による定量方法である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
光学顕微鏡による定量方法であって、前記光学顕微鏡が蛍光顕微鏡である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
定量対象の微粒子を含有する試料液が滴下される光学顕微鏡用または電子顕微鏡用試料支持体であって、表面に観察用保護剤を含有する溶液からなる薄膜層を備える、試料支持体。
【請求項10】
前記観察用保護剤を含有する溶液が、ポリビニルアルコールを含有する、請求項9に記載の試料支持体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微量液滴に含まれる微粒子の光学・電子顕微鏡による定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の細胞と細胞の間には、生体内で発生、若しくは外部から侵入するナノサイズからマイクロサイズの細胞外微粒子が存在している。細胞外微粒子は、細胞外小胞であるマイクロベジクルやエクソソーム等の生体内由来のもの(内因性)と、PM2.5や花粉、ウイルス、ナノ粒子等の体外から生体内に取り込まれるもの(外因性)に分類される。なかでも、ウイルスの定量は、各種の診断や治療効果の判定において常に求められる技術である。また、近年、細胞外小胞の一つであるエクソソームを活用した創薬や診断への応用が期待されている。このように、細胞外微粒子に起因する生命現象の研究を推進するためには、それらの正確な定量は不可欠な技術である。
【0003】
試料液中に存在するナノ粒子の粒度分布や粒子数濃度を測定する手法として、ナノトラッキング法(Nano Tracking Analysis;NTA)が知られている。ナノトラッキング法は、液中に分散する粒子のブラウン運動を利用し、試料液にレーザー光を照射した際に個々の粒子が散乱する光の軌跡を高感度カメラを用いて解析することにより、個々の粒子の移動速度を算出し、これに基づいて粒径を解析する技術である。ナノトラッキング法では、10nmから1000nm程度の粒径を有する粒子の解析が可能であるとされており、これまでに、ドラッグデリバリーシステムの開発や、ウイルス、細胞外小胞の分析などに活用する試みがなされている。しかしながら、散乱光とブラウン運動の特性を利用する測定原理上、試料液中で粒子が凝集している場合には、解析の精度を確保することが難しい。また、粒子の種類によって散乱光の強弱が異なるため、試料液に複数種類の粒子が混在する場合には、散乱光が弱い粒子による測定結果への影響に留意しなければならない、また、微粒子内部のDNA、RNAの有無の情報は得ることができない、などの課題があった。
【0004】
上述したナノトラッキング法のように、微粒子の化学的特性、物理学的特性などを利用して定量を行う間接的な手法に対し、試料に含まれる対象の微粒子を直接観察して数を計測することができれば、微粒子の定量方法としては最も望ましい。
【0005】
しかしながら、微粒子の粒径にはバラつき(例えば1nmから100nmの範囲)があるため、微粒子の本来の形状を直接観察して数を計測するためには光学顕微鏡では難しく、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡を用いる必要があるというのが従来の慣例であった。また、通常、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察において、高倍率で観察しながら試料に含まれる微粒子の数を計測することは非常に時間を要する作業であるため、効率が悪い。
【0006】
光学顕微鏡観察、電子顕微鏡観察による微粒子の定量の効率性を向上させるためのアプローチとして、観察に用いる試料の体積をできるだけ少なくすることが挙げられる。近年、より微量の液滴の形成を可能にする技術の開発が進められており、一例として、静電力を利用した液滴形成方法が知られている。例えば、特許文献1には、ノズル先端から所定の間隔を隔てて設けられた基板とノズル内の液体との間にパルス電圧を印加することにより、ノズル先端から液体を引き出して液柱を形成し、この液柱をノズル内に引き戻す方向の引き戻し力を作用させることによって、液柱から液滴を分離する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、特許文献1に開示されるような液滴形成方法において、基板上に液滴を形成するとともに、ノズル内の液体と基板との間に流れる電流の時間波形を測定し、測定された電流の時間波形に基づいて、基板上に液滴を形成する際のパルス電圧の印加条件を決定する技術が開示されている。特許文献2によれば、これにより、基板上に液滴が形成される際の液体の挙動を好適に制御し、液滴量を分注毎に容易に安定させることができるとされている。なお、特許文献2では、決定されたパルス電圧の印加条件に基づいて基板上に液滴を形成するとともに、ノズル内の液体と基板との間に流れる電流の時間波形を測定し、測定された電流の時間波形に基づいて、液滴に含まれる粒子の個数を計測することが提案されているが、粒子を直接観察して数を計測するものではない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4191330号公報
【特許文献2】特許第4302591号公報
【特許文献3】国際公開第2015/115502号
【特許文献4】特開第2017-201289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2に開示されるような静電力を利用した液滴形成方法によって、fL(フェムトリットル)からpL(ピコリットル)オーダーの量の液滴を、試料を支持するための基板や膜など(以下、「試料支持体」と称する。)の上に形成し、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察するための微粒子試料を作製することができるようになったが、本発明者等は、ウイルスを含有する試料液を用いた電子顕微鏡による具体的な定量実験を重ねる中で、試料に含まれるウイルス(微粒子)をより正確に定量するためには、以下のような課題があることを認識するに至った。
【0010】
第一に、微粒子を含有する試料液を試料支持体上に着液させたときにできる着液痕(着液点)が不明瞭になりやすく、電子顕微鏡による高倍率での観察時に必ずしも判別が容易ではない場合があった。
【0011】
第二に、試料液に含まれる微粒子を試料支持体上に均一に分布させることが困難であった。特に、透過型電子顕微鏡用のTEMグリッドの上に微量の試料液を滴下すると、グリッドの金属格子部分に液滴中の微粒子が偏ってしまうため、微粒子分布の均一性を確保することは非常に困難である。
【0012】
第三に、従来の液滴形成装置では、試料支持体上に滴下される液滴量にバラつきが生じやすい。具体的には、装置のノズルから吐出された液滴が試料支持体上の複数箇所に飛散したり、ノズルから試料支持体上に着液するまでの間に試料液の体積が減少したりする場合があった。これは、仮に特許文献2に記載される技術が実装された装置を用いたとしても、改善の余地がある課題であると考えられる。
なお、上記課題はいずれも、光学顕微鏡による高倍率での観察時にも同様に当てはまる課題である。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、第一に、微粒子を含有する試料液を試料支持体上に着液させたときにできる着液痕を、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡などを含む光学顕微鏡による観察と電子顕微鏡観察においてより明確に判別可能にすることを課題としている。
また、本発明は、第二に、試料支持体上に滴下された試料液中の微粒子の分布の均一性を向上させることを課題としている。
また、本発明は、第三に、試料支持体上に滴下される試料液の液滴量のバラつきを低減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等はこれまでに、真空下においても哺乳動物、植物の組織や培養細胞、単一細胞等の含水状態の生物試料を変形させずに、生きたままの状態を保護できる真空下での電子顕微鏡観察用保護剤とそれを用いた電子顕微鏡による試料の観察、診断の方法を提案している(特許文献3)。
【0015】
本発明者等による先行発明は、電子顕微鏡観察用保護剤を対象の試料に塗布し、電子線またはプラズマを照射して試料表面に薄膜を形成して覆うことによって、電子顕微鏡による観察、診断を可能とするものである。特許文献3には、含水状態のウイルス粒子を電子顕微鏡を用いて観察、計数し、ウイルス濃度を定量する方法に関し、含水状態のウイルス粒子を基板上に濃縮し、基板上に濃縮した含水状態のウイルス粒子に電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、電子顕微鏡観察用保護剤を塗布した含水状態のウイルス粒子を基板とともに試料台に載置することが記載されている。これにより、本発明者等の先行発明においては、プラークアッセイ法や定量PCR法等の従来のウイルス定量法によって求められるウイルス濃度と矛盾しない精度で、ウイルス濃度を定量することができることが確認されている。
【0016】
また、本発明者等による別の先行発明では、電子顕微鏡によるナノ粒子の直接的な同定・定量のための検出キットおよび方法を提案している(特許文献4)。特許文献4には、ナノ粒子表面の電荷と相反する電荷を表面にチャージさせたプレートにナノ粒子を吸着させ、このナノ粒子に電子顕微鏡観察用保護剤を塗布し、スピンコートで均一にのばした後、プレートをSEM試料室に入れ、電子ビームを照射して薄膜を成膜することによって、ナノ粒子の表面を、電子顕微鏡観察用保護剤によって形成された薄膜で覆うことが記載されている。これにより、特許文献4では、観察対象のナノ粒子が既知であるか未知であるかを問わず、電子顕微鏡による直接観察で試料に含まれるナノ粒子を感度よく同定することができるとともに、簡便でありながら迅速かつ正確にナノ粒子を定量することができるとしている。
【0017】
しかしながら、上述した静電力を利用した液滴形成方法などを用いて得られるfLからpLオーダーの微量液滴に含まれるウイルスなどの微粒子を、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察によって、より正確に定量するためには、上記の先行発明とは異なる手法の開発が必要であった。
具体的には、試料支持体上に、微粒子を含有する微量の試料液を滴下した後、上記先行発明の電子顕微鏡観察用保護剤を塗布してスピンコートした場合、試料支持体表面に完全には付着していない微粒子が、回転遠心力によって試料液の着液点よりも外側に拡散してしまう可能性があるという懸念があった。また、試料支持体上に滴下された試料液の量に対して、塗布する電子顕微鏡観察用保護剤の量が多過ぎると、成膜される薄膜の膜厚が大きくなり、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察において微粒子の同定や定量が困難になる可能性があるという懸念があった。
【0018】
そこで、本発明者等は、真空下においても含水状態の生物試料を変形させずに、生きたままの状態を保護できることを志向して考案した上記先行発明の電子顕微鏡観察用保護剤を用いて作製した薄膜が、高い導電性を有することに加え、電子線透過性を有し、さらに電子線照射によっても形態が維持されるほどの安定性を備えるという性質に着目し、この電子顕微鏡観察用保護剤を試料に塗布する以外の用途に供することによって、上記の課題を解決し得ることを着想した。そして、本発明者等は、ウイルス等の微粒子を含有する試料液を用いて具体的な検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
(1)体積が1fLから100pLの範囲の液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法において、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように前記液滴を形成する、方法。
(2)前記微粒子を含有する試料液を、観察用保護剤を含有する溶液からなる薄膜層を表面に備える試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、(1)に記載の方法。
(3)前記観察用保護剤を含有する溶液が、ポリビニルアルコールを含有する、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記微粒子および観察用保護剤を含有する試料液を試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、(1)から(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)前記試料液に含まれる観察用保護剤の濃度が、0.01%から1.0%の範囲である、(4)に記載の方法。
(6)前記微粒子を含有する試料液、または前記微粒子および観察用保護剤を含有する試料液を、温度および湿度が制御された環境下で試料支持体上に滴下することによって、前記液滴を形成する、(1)から(5)のいずれか一項に記載の方法。
(7)電子顕微鏡による定量方法である、(1)から(6)のいずれか一項に記載の方法。
(8)光学顕微鏡による定量方法であって、前記光学顕微鏡が蛍光顕微鏡である、(1)から(6)のいずれか一項に記載の方法。
(9)定量対象の微粒子を含有する試料液が滴下される光学顕微鏡用または電子顕微鏡用試料支持体であって、表面に観察用保護剤を含有する溶液からなる薄膜層を備える、試料支持体。
(10)前記観察用保護剤を含有する溶液が、ポリビニルアルコールを含有する、(9)に記載の試料支持体。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように液滴を形成することにより、体積が1fLから100pLの範囲の液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法において、当該液滴を試料支持体上に着液させたときにできる着液痕を、光学顕微鏡観察、電子顕微鏡観察においてより明確に判別することができる。
また、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように液滴を形成することにより、試料支持体上に滴下された液滴中の微粒子の分布の均一性を向上させることができる。より具体的には、試料支持体上に滴下された液滴を乾燥させた際にコーヒーリングが生じたり(コーヒーリング現象)、結晶化が起こったりすることを抑制することができる。
また、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように液滴を形成することにより、試料支持体上に滴下される液滴量のバラつきを低減することができる。
また、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように液滴を形成することにより、試料支持体上に滴下された微量液滴に含まれる微粒子が着液点の外側に拡散する可能性を抑制し、かつ、当該微量液滴に含まれる微粒子の表面を、当該微粒子の光学顕微鏡観察または電子顕微鏡観察に適した膜厚で、観察用保護剤で形成された薄膜で覆うことができる。
【0021】
これらの効果により、本発明においては、微量液滴に含まれる微粒子を、光学顕微鏡または電子顕微鏡による直接観察によって、より迅速、簡便かつ正確に、効率良く定量することができる。特に、光学顕微鏡観察において、対象の微粒子がDNA、RNAを含有する微粒子である場合には、蛍光色素等による染色後に蛍光顕微鏡観察を行うことによって、他の光学顕微鏡による直接観察よりも迅速、簡便かつ正確に、効率良く定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したシリコン基板上に、液滴形成装置を用いて滴下した微量液滴の走査電子顕微鏡画像。
【図2】(a)PVAを1.0%の濃度で添加した観察用保護剤の溶液を用いて表面に薄膜層を形成したガラス基板上に、微粒子を含む試料液を滴下して得られた微量液滴の走査電子顕微鏡画像。(b)表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を有しないガラス基板を用いた場合の走査電子顕微鏡画像。
【図3】(a)観察用保護剤の溶液を用いて表面に薄膜層を形成したガラス基板上に、試料液として0.09%食塩水を滴下して得られた微量液滴の走査電子顕微鏡画像。(b)表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を有しないガラス基板を用いた場合の走査電子顕微鏡画像。
【図4】(a)直径約200nmのマイクロビーズを含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したガラス基板上に、液滴形成装置を用いて当該試料液を滴下した微量液滴の走査電子顕微鏡画像。(b)直径約100nmのマイクロビーズを含有する試料液を用いた場合の走査電子顕微鏡画像。(c)インフルエンザウイルスを含有する試料液を用いた場合の走査電子顕微鏡画像。
【図5】直径約100nmの蛍光マイクロビーズを含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したガラス基板上に、液滴形成装置を用いて当該試料液を滴下した微量液滴の蛍光顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、具体的な形態は以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更等があっても本発明に含まれる。

【0024】
本明細書において、「微量液滴」とは、体積が1fLから1000pLの範囲の液滴をいう。光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いてナノオーダー(1nmから1000nmの範囲)の粒径を有する微粒子を観察する場合、液滴の体積が小さいほど、より高倍率で、一枚の顕微鏡画像に液滴の全体像を投影させることができるので、微粒子の数の計測の効率が高まる。そのような観点から、本発明の一実施形態に係る微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法は、体積が1fLから100pLの範囲の液滴に含まれる微粒子を対象とする。また、好ましい実施形態では、体積が1fLから50pLの範囲の液滴に含まれる微粒子を対象とし、より好ましい実施形態では、体積が1fLから25pLの範囲の液滴に含まれる微粒子を対象とし、さらに好ましい実施形態では、体積が1fLから10pLの範囲の液滴に含まれる微粒子を対象とする。なお、体積が100pLを超える量の液滴に含まれる微粒子を対象とする場合であっても、本発明に係る方法を適用することができ、得られた顕微鏡画像を用いて対象の微粒子の数を計測することによって、本発明の所期の目的を達成することができる点に留意されたい。

【0025】
本明細書において、「観察用保護剤」の用語は、本発明者等による先行発明(特許文献3)に開示される、生存環境付与成分、糖類および電解質を主成分として含有する溶液(Surface Shielding Enhancer(SSE)溶液)をいう。

【0026】
観察用保護剤の組成は特に限定されないが、代表的には、以下の組成を例示することができ、これを原液とすることができる。
観察用保護剤の原液の組成および調製方法の具体例:水 500mLに、スクロース 5g、フルクトース 5g、塩化ナトリウム 5gを溶解させたものに、クエン酸 1.25g、グルタミン酸ナトリウム 0.05gを加え、pHを7.4に調整し、この水溶液とグリセリンを、水溶液:グリセリン=1:2の比率で混合する。

【0027】
観察用保護剤は、上述した原液をそのまま用いてもよく、原液を任意の溶剤で希釈して用いてもよい。溶剤としては、例えば、水、有機溶媒、および水と有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
観察用保護剤の原液を水で希釈する場合、例えば、上記原液を1/100から1/1000の範囲の濃度に希釈する、すなわち、上記原液を0.1%から0.01%の範囲で含有するように希釈することができる。この範囲内であると、光学顕微鏡または電子顕微鏡観察において、ウイルスやエクソソーム等の微粒子の外形がより明瞭になるため、顕微鏡画像における微粒子の同定がより迅速かつ容易に行うことができ、より正確な定量が可能となる。

【0028】
本発明の一実施形態に係る微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法では、定量対象の微粒子が観察用保護剤を含有する溶液に分散されるように液滴を形成する。
本実施形態において、液滴の形成に用いる原理、装置の種類は、体積が1fLから100pLの範囲の液滴が形成できれば、どのような形成手法でもよい。以下では、静電力を利用して液滴を形成する場合を例にして説明する。

【0029】
<静電力を利用する液滴形成装置を用いた微量液滴中の微粒子の観察>
静電力を利用する液滴形成装置として、例えば、浜松ナノテクノロジー社製の静電分注パターニング装置(ODS-P01)を用いることができる。
この静電式分注装置では、ノズル内の液体に挿入された電極と、試料支持体(基板)にパルス電源が接続されており、パルス電源からパルス電圧を印加すると、静電力によりノズル先端の液面が円錐形に変形し、ノズル先端から基板に向けてジェット流が射出され、このジェット流が基板上に蓄積して液滴が形成される。なお、基板は可動式の試料台に載置されており、試料台を前後左右に移動させることによって、基板上の複数箇所に液滴を形成することができる。この静電式分注装置によれば、ノズル径に依存することなく、fLからpLオーダーの微量液滴を分注することができる。

【0030】
<第一の実施形態>
本実施形態では、定量対象の微粒子を含有する試料液を、観察用保護剤を含有する溶液からなる薄膜層を表面に備える試料支持体上に滴下することによって、微量液滴を形成する。

【0031】
試料支持体は、観察用保護剤を含有する溶液(以下、「観察用保護剤の溶液」とも称する。)からなる薄膜層を表面に備えている。
観察用保護剤の溶液からなる薄膜層は、例えば、試料支持体の表面に観察用保護剤の溶液を滴下し、スピンコーティングした後、乾燥させることによって作製することができる。なお、観察用保護剤の溶液の溶媒に水を含む場合、予め試料支持体の表面を親水化処理しておくことが好ましく、そのための手法として、例えば、プラズマ等のエネルギー線を試料支持体の表面に照射してもよい。試料支持体の表面に滴下する観察用保護剤の溶液の量は特に限定されず、試料支持体の材質、表面の特性、表面積等に応じて、試料支持体の表面の、試料液が滴下される範囲に均一に薄膜層が形成されるように適宜調整される。

【0032】
観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を表面に備えることによって、試料支持体の表面の電場が安定する。このことは、例えば、試料支持体の表面のゼータ電位を指標として確認することができる。本実施形態では、観察用保護剤の溶液からなる薄膜が導電性を有するため、当該薄膜層の形成前の状態に関わらず、試料支持体の表面に導電性が付与され、試料液が滴下される範囲の電場が安定し、液滴形成装置のノズルから吐出される微量の試料液が試料支持体の表面に導かれる。これにより、試料支持体の表面への試料液の滴下の安定性が向上する。

【0033】
また、観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を表面に備えることによって、試料液を試料支持体の表面の薄膜層に滴下したときの着液点が明瞭になり、光学顕微鏡または電子顕微鏡による高倍率での観察において簡便に判別することができる。

【0034】
図1は、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したシリコン基板上に、液滴形成装置を用いて滴下した微量液滴の走査電子顕微鏡画像である。図1に示す液滴は直径約10μmであり、着液点(輪郭)が明瞭である。液滴形成装置のノズルからシリコン基板の表面に液滴が滴下される様子をハイスピードカメラで撮影し、画像を二値化して滴下された液滴の体積を計測したところ、約10pLと計算された。また、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を有しないガラス基板の場合と比較して、当該薄膜層を表面に備えるガラス基板では、滴下された液滴の体積値のバラつきが軽減されていることが確認された。
なお、使用した観察用保護剤の溶液は、上記の組成を有する観察用保護剤の原液を、水で1.0%の濃度に希釈した溶液であり、後述する図2~図4についても同様である。

【0035】
定量対象の微粒子を含有する試料液が試料支持体上に滴下されると、当該試料液の溶媒と、試料支持体の表面の薄膜層に含まれる観察用保護剤が局所的に混ざり合い、これにより、定量対象の微粒子が、観察用保護剤を含有する溶液中、すなわち試料支持体上に滴下された微量液滴中に分散される。

【0036】
このようにして形成された微量液滴をスピンコーティングし、試料支持体を電子顕微鏡の試料室に入れ、電子ビームを照射することによって、定量対象の微粒子の表面が、観察用保護剤によって形成された薄膜で覆われ、光学顕微鏡または電子顕微鏡による直接観察により、当該微粒子を定量することができる。

【0037】
観察用保護剤の溶液は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。PVAを添加した観察用保護剤の溶液を用いて試料支持体の表面に薄膜層を形成すると、当該薄膜層に試料液が滴下されたときの着液点がより明瞭になるため、光学顕微鏡または電子顕微鏡による高倍率での観察においてより簡便に判別することができる。PVAの添加濃度は特に限定されないが、0.5%から1.5%の範囲で添加すれば、その効果を得ることができる。

【0038】
図2(a)は、PVAを1.0%の濃度で添加した観察用保護剤の溶液を用いて表面に薄膜層を形成したガラス基板上に、微粒子(ポリスチレン製の単分散ラテックス蛍光粒子)を含む試料液を滴下して得られた微量液滴の走査電子顕微鏡画像である。図2(a)より、滴下された液滴の着液点(輪郭)が明瞭に確認され、個々の微粒子が定量可能に分散されていることが分かる。一方、図2(b)に示すように、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を有しないガラス基板を用いた場合には、液滴の着液点(輪郭)が不明瞭であり、コーヒーリング現象によるものと思われる模様と微粒子と思われる粒状のものが混在しており、微粒子の正確な定量は困難である。

【0039】
このように、本発明者等は、PVAを添加した観察用保護剤の溶液を用いてガラス基板の表面に薄膜層を形成し、液滴形成装置を用いて当該薄膜層に試料液を滴下したところ、PVAを添加しなかった場合と比較して、着液点がより明瞭になることを確認した。また、PVAを添加した観察用保護剤の溶液を用いて形成した薄膜層では、その表面に試料液を滴下した際のコーヒーリング現象の発生が劇的に抑制されることが分かった。

【0040】
さらに、本実施形態では、試料支持体の表面の薄膜層に滴下された液滴の結晶化を抑制する効果が得られる。
図3(a)は、観察用保護剤の溶液を用いて表面に薄膜層を形成したガラス基板上に、試料液として0.09%食塩水を滴下して得られた微量液滴の走査電子顕微鏡画像である。図3(a)に示すように、滴下された液滴の着液点(輪郭)が明瞭に確認されるが、塩の析出は見られない。一方、図3(b)に示すように、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を有しないガラス基板を用いた場合には、液滴の着液点(輪郭)は明瞭であるが、着液点の内側のほぼ全体に渡って塩の析出が生じており、微粒子の同定・定量はおよそ不可能な状態であることが分かる。

【0041】
<第二の実施形態>
本実施形態では、定量対象の微粒子を含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、当該試料液を試料支持体上に滴下することによって、微量液滴を形成する。

【0042】
試料液に観察用保護剤が含まれていることによって、液滴形成装置のノズルから吐出された液滴が試料支持体上の複数箇所に飛散することが抑制され、試料支持体上での液滴形成の安定性が向上する。その詳細なメカニズムについては必ずしも明らかではないが、例えば、試料液に観察用保護剤が含まれていることによって、当該試料液に含まれる微粒子のゼータ電位の安定性が高まることが考えられる。
また、試料液に観察用保護剤が含まれていることによって、液滴形成装置のノズルから吐出された液滴が試料支持体上に着液するまでの間に試料液の体積が減少することが抑制され、試料支持体上に滴下される液滴量のバラつきが軽減される。より具体的には、液滴形成装置のノズルから吐出される液滴の溶媒がノズルの先端部で蒸発することが抑制され、試料支持体上に着液する液滴の体積にバラつきが生じることが軽減される。

【0043】
本実施形態では、上記第一の実施形態のように、試料支持体の表面に、観察用保護剤の溶液からなる薄膜層が形成されていると、より好ましい。

【0044】
図4(a)、図4(b)、および図4(c)は、それぞれ、直径約200nmのマイクロビーズ、直径約100nmのマイクロビーズ、およびインフルエンザウイルスを含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したガラス基板上に、液滴形成装置を用いて当該試料液を滴下した微量液滴の走査電子顕微鏡画像である。いずれの画像も、滴下された液滴の着液点(輪郭)が明瞭に確認され、個々の微粒子が定量可能に分散されていることが分かる。
また、本発明者等は、金微粒子を含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、透過型電子顕微鏡観察用のTEMグリッド上に当該試料液を滴下したところ、各グリッドの中央付近に安定して液滴が着液し、グリッドの金属格子部分への金微粒子の偏りが抑制されることを確認している。

【0045】
図5は、直径約100nmの蛍光マイクロビーズを含有する試料液に観察用保護剤を含有させ、表面に観察用保護剤の溶液からなる薄膜層を形成したガラス基板上に、液滴形成装置を用いて当該試料液を滴下した微量液滴の蛍光顕微鏡画像である。図5に示すように、個々のマイクロビーズによる蛍光が判別可能であり、滴下された液滴に含まれるマイクロビーズが定量可能に分散されていることが分かる。このように、本実施形態によれば、従来直接観察による定量が困難であると考えられていた光学顕微鏡観察においても、簡便な手法によって試料に含まれる微粒子の数を計測することが可能であり、また、種々の蛍光標識技術と組み合わせることによって、対象の微粒子に含まれるDNA、RNAの有無の情報を得ることも可能である。

【0046】
<第三の実施形態>
本実施形態では、定量対象の微粒子を含有する試料液、または定量対象の微粒子および観察用保護剤を含有する試料液を、温度および湿度が制御された環境下で試料支持体上に滴下することによって、微量液滴を形成する。

【0047】
試料支持体上に試料液を滴下する際に使用することができる液滴形成装置の多くは、上で例示した静電力を利用する液滴形成装置のように、ノズル部に相当する構成を有している。そのため、当該ノズル部の先端から吐出された試料液が試料支持体の表面に到達するまでの間に装置周囲の環境条件(温度、湿度など)の影響を受ける可能性があり、とりわけfLからpLオーダーの微量液滴の形成においては、その影響によって、形成された液滴の量(体積)にバラつきが生じる可能性がある。試料支持体上に滴下された液滴の量にバラつきがあると、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察によって確認された液滴中に含まれる微粒子の数から算出される試料液中の微粒子濃度の値が、実際の値と整合しない可能性がある。

【0048】
そこで、本実施形態では、調温調湿環境下で、定量対象の微粒子を含有する試料液を試料支持体上に滴下することによって、液滴形成装置から分注される微量液滴の量のバラつきを低減させる。具体的には、例えば、液滴形成装置を構成するノズル部および試料支持体を載せるための試料ステージの全体が少なくとも覆われるように筐体を設け、当該筐体の外部から内部に、温度および湿度を一定の条件に調節した気体を供給しながら、試料支持体の表面に試料液を滴下する。供給する気体は試料の種類等によって適宜選択することができ、例えば、空気、窒素ガスなどが挙げられる。供給する気体の温度、湿度、供給速度、また、筐体の内部の温度、湿度、およびその他の条件については特に限定されず、液滴形成装置から試料支持体上への液滴の滴下やその後の光学顕微鏡観察、電子顕微鏡観察に負の影響を及ぼさない範囲で適宜調節することができる。例えば、試料液の溶媒が水を主成分とする場合には、試料液の液滴が液滴形成装置のノズル部から吐出されてから試料支持体上に着液するまでの間に、当該液滴の溶媒が蒸発することを抑制する観点から、筐体の内部の温度は20℃から25℃の範囲が好ましく、湿度は相対湿度(RH)で40%から70%の範囲を目安に調節するとよい。また、試料支持体上に滴下された液滴の乾燥速度を考慮して気体の供給速度を調節することによって、コーヒーリング現象の発生を効果的に抑制することができる。

【0049】
具体的な装置構成の一例として、液滴形成装置を構成するノズル部および試料支持体を載せるための試料ステージの全体を含む部分を、透明なアクリル板で作製した容器で囲むことによってチャンバー(液滴噴出室)を設け、このチャンバーの内部に、温度および湿度を一定の条件に調節した空気を10~50L/minの風量で送り込むことによって、チャンバー内の温度を23℃から25℃の範囲、相対湿度を60%から70%の範囲に調節することができる。このようなチャンバーを備える液滴形成装置を用いることにより、本発明者等は、ノズル先端部からの溶媒の蒸発による液滴量のバラつきが効果的に軽減されることを確認した。試料支持体上に滴下される液滴量のバラつきが軽減されることにより、定量対象の微粒子を含有する試料液中の微粒子濃度が、実際の濃度よりも高く、もしくは低く算出されるという計測誤差の範囲が狭くなるため、目的の微粒子の定量の精度をより高めることができる。

【0050】
<その他の実施形態>
本発明に係る微粒子の定量方法は、微量液滴に含まれる微粒子を光学顕微鏡観察または電子顕微鏡によって直接観察すること以外の手法への応用が可能である。その一例として、イムノクロマト法での利用について説明する。

【0051】
イムノクロマト法は、抗原抗体反応を利用した診断法として、インフルエンザウイルスなどの特定のウイルス抗原や様々な抗原を検出するための診断用キットが種々開発されている。現在利用可能なイムノクロマト法キットは、簡単な操作で目視により結果を確認することができる反面、目視で確認できる程度の結果(発色)を得る必要があるため、1回のテスト(1キット)に必要な抗体の量が比較的多い。また、目視による人為的な判定の過りや判断基準の違い、キットによる違いなど、診断結果の信頼性には注意が必要である。

【0052】
この点、上述したように、本発明に係る微量液滴に含まれる微粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡による定量方法が実用に耐え得ることが確認されたことは、光学顕微鏡観察や電子顕微鏡観察に用いる試料の量を従来の手法よりも少なくすることができるだけでなく、当該試料に含まれる微粒子との反応を検出するタイプの試験や検査においては、反応物質の量を少なくすることができることを意味している。このことをイムノクロマト法キットに応用すると、少量の抗体で、検体試料(目的の抗原を含む可能性のある試料)との反応結果を光学顕微鏡観察または電子顕微鏡観察によって判定することができると考えられる。つまり、検査に供することができる検体試料が少量の場合であっても精度の高い判定が可能であり、また、抗体の使用量を少なくすることができるので、キットの小型化も可能である。
また、従来のイムノクロマト法キットのように、テストラインの発色の程度や、コントロールラインとテストラインの発色の差を目視により評価する方式と比較して、光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いることによって、より客観的な判定が可能となる。さらに、光学顕微鏡観察、電子顕微鏡観察による判定を、機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)を用いた画像認識システムによって行うことや、人工知能(AI)を用いた自動解析システムとすることも可能である。

【0053】
近年、小型で廉価な卓上型の電子顕微鏡が開発され、従来の研究用としてだけでなく、材料開発や品質管理などを目的として、様々な分野において電子顕微鏡が活用されるようになっている。また、更なる省スペース化、操作性の向上等が進むにつれて、より多くの医療機関、研究機関、教育機関等において電子顕微鏡が導入されるようになるなど、電子顕微鏡を用いた観察を行うことができる環境が整備されることが期待されている。
このような状況を踏まえると、本発明に係る微粒子の定量方法を利用した検査・診断法を、光学顕微鏡、卓上型の電子顕微鏡と組み合わせて実用化することで、従来の手法による簡便さ・迅速性を確保しつつ、より正確な判定や診断が可能になると考えられる。
そして、このことによって、将来的には、光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いる検査・診断法が、都道府県や市区町村といった地方自治体レベルで普及すること、さらには、地域コミュニティや一般家庭での利用にまで広がる可能性がある。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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