TOP > 国内特許検索 > 植物ウイルスの検出方法と植物ウイルス検出キット > 明細書

明細書 :植物ウイルスの検出方法と植物ウイルス検出キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6198110号 (P6198110)
公開番号 特開2014-224729 (P2014-224729A)
登録日 平成29年9月1日(2017.9.1)
発行日 平成29年9月20日(2017.9.20)
公開日 平成26年12月4日(2014.12.4)
発明の名称または考案の名称 植物ウイルスの検出方法と植物ウイルス検出キット
国際特許分類 G01N  33/569       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
FI G01N 33/569 L
G01N 33/543 525C
G01N 33/543 545A
G01N 33/543 575
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2013-103488 (P2013-103488)
出願日 平成25年5月15日(2013.5.15)
審査請求日 平成28年5月10日(2016.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
発明者または考案者 【氏名】川合 昭
【氏名】鍵和田 聡
【氏名】西尾 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】大瀧 真理
参考文献・文献 特開2008-189613(JP,A)
国際公開第2010/122990(WO,A1)
特開昭63-246672(JP,A)
特開平06-308126(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48 - 33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
2枚のフィルター部材が上下に間隔をあけて配設された袋状または箱状のケース体、および、
前記ケース体の前記フィルター部材同士の間の空間に保持されている複数のビーズ体、
を含む植物ウイルス検出キットによって試料中の植物ウイルスを検出する方法であって、
前記フィルター部材は、液体を流通可能であり、かつ、前記ビーズ体よりも小さなメッシュを有し、
前記ビーズ体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されているもののみからなり、かつ、複数の前記ビーズ体が下側の前記フィルター部材の上に配置されており、
以下の工程:
(1)前記フィルター部材を通じて前記ケース体の内部に試料を供給して、前記ビーズ体と試料とを接触させる工程;
(2)前記ビーズ体と、標的植物ウイルスと特異的に結合する標識二次抗体とを接触させる工程;および
(3)標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を定性的に検出する工程
を含むことを特徴とする植物ウイルスの検出方法。
【請求項2】
前記ビーズ体の粒径は、0.010~0.100mmであることを特徴とする請求項1の植物ウイルスの検出方法。
【請求項3】
工程(2)における標識二次抗体の標識は酵素タンパク質であり、工程(3)では、酵素タンパク質に特異的に反応する基質の分解によって、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出することを特徴とする請求項1または2の植物ウイルスの検出方法。
【請求項4】
工程(2)における標識二次抗体の標識は蛍光色素分子であり、工程(3)では、蛍光色素分子の蛍光によって、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出することを特徴とする請求項1または2の植物ウイルスの検出方法。
【請求項5】
試料中の植物ウイルスを検出するための植物ウイルス検出キットであって、
液体を流通可能な2枚のフィルター部材が上下に間隔をあけて配設されたケース体、および、
前記ケース体の前記フィルター部材同士の間の空間に保持されている複数のビーズ体、
を含み、
前記フィルター部材は、液体を流通可能であり、かつ、前記ビーズ体よりも小さなメッシュを有し、前記ビーズ体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されているもののみからなり、かつ、複数の前記ビーズ体が下側の前記フィルター部材の上に配置されていることを特徴とする植物ウイルス検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ウイルスの検出方法および植物ウイルス検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物ウイルスや植物ウイルスの検出のためにELISA法(酵素免疫測定法)が広く用いられている。
【0003】
具体的には、例えば非特許文献1には、ガラスビーズを利用した小児RSウイルスの検出方法が提案されている。また、植物ウイルスの検出においては、例えば非特許文献2に記載されているように、プレートに固定した一次抗体に植物ウイルスを吸着させ、さらに、この植物ウイルスに結合させた二次抗体の酵素反応を検出するELISA方法(いわゆるサンドイッチ法と呼ばれる)が有効であることが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-125994号公報
【0005】

【非特許文献1】三国、杏林医学誌、13,355-344,1982
【非特許文献2】Voller et al, J.gen.Virol.33,165-167,1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、植物ウイルスの検出においては、ガラスビーズを利用した検出方法についての具体的な検討はなされていない。また、例えば非特許文献2のような従来のELISA法による植物ウイルスの検出においては、必ずしも検出感度が十分であるとは言い難く、また、検出時間を短縮することが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、検出感度が高く、短時間で試料中の植物ウイルスを検出することができる方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の植物ウイルス検出方法は、
2枚のフィルター部材が上下に間隔をあけて配設された袋状または箱状のケース体、および、
前記ケース体の前記フィルター部材同士の間の空間に保持されている複数のビーズ体、
を含む植物ウイルス検出キットによって試料中の植物ウイルスを検出する方法であって、
前記フィルター部材は、液体を流通可能であり、かつ、前記ビーズ体よりも小さなメッシュを有し、
前記ビーズ体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されているもののみからなり、かつ、複数の前記ビーズ体が下側の前記フィルター部材の上に配置されており、
以下の工程:
(1)前記フィルター部材を通じて前記ケース体の内部に試料を供給して、前記ビーズ体と試料とを接触させる工程;
(2)前記ビーズ体と、標的植物ウイルスと特異的に結合する標識二次抗体とを接触させる工程;および
(3)標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を定性的に検出する工程
を含むことを特徴としている。
【0009】
この植物ウイルス検出方法では、ビーズ体の粒径は、0.010~0.100mmであることが好ましい。
【0010】
この植物ウイルス検出方法では、工程(2)における標識二次抗体の標識は酵素タンパク質であり、工程(3)では、酵素タンパク質に特異的に反応する基質の分解によって、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出することが好ましい。
【0011】
この植物ウイルス検出方法では、工程(2)における標識二次抗体の標識は蛍光色素分子であり、工程(3)では、蛍光色素分子の蛍光によって、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出することが好ましい。
【0012】
また、本発明の植物ウイルス検出キットは、試料中の植物ウイルスを検出するための植物ウイルス検出キットであって、
液体を流通可能な2枚のフィルター部材が上下に間隔をあけて配設されたケース体、および、
前記ケース体の前記フィルター部材同士の間の空間に保持されている複数のビーズ体、
を含み、
前記フィルター部材は、液体を流通可能であり、かつ、前記ビーズ体よりも小さなメッシュを有し、前記ビーズ体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されているもののみからなり、かつ、複数の前記ビーズ体が下側の前記フィルター部材の上に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物ウイルスの検出方法によれば、検出感度が高く、短時間で植物ウイルスを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の植物ウイルスの検出キットの一実施形態を例示した概要断面図である。
【図2】本発明の植物ウイルスの検出キットの使用方法の一実施形態を例示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の植物ウイルスの検出方法の対象となる植物ウイルスは、特に限定されず、例えば、アルファモウイルス属(アルファルファモザイクウイルス)、カルモウイルス属(メロンえそ斑点ウイルス)、コモウイルス属(スカッシュモザイクウイルス)、ククモウイルス属(キュウリモザイクウイルス、キク微斑ウイルス)、ファバウイルス属(ソラマメウイルトウイルス)、ネポウイルス属(アラビスモザイクウイルス、タバコ輪点ウイルス、トマト黒色輪点ウイルス、トマト輪点ウイルス)、ポテックスウイルス属(ジャガイモXウイルス)、ポティウイルス属(パパイア輪点ウイルス、ジャガイモYウイルス、カボチャモザイクウイルス、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス)、トバモウイルス属(タバコモザイクウイルス、キュウリ緑斑モザイクウイルス、スイカ緑斑モザイクウイルス、ペッパーマイルドモットルウイルス、トマトモザイクウイルス)、トンブスウイルス属(トマトブッシースタントウイルス)、トスポウイルス属(トマト黄化えそウイルス、メロン黄化えそウイルス、スイカ灰白色斑紋ウイルス)、カルラウイルス属(カーネーション潜在ウイルス、キクBウイルス、インパチェンス潜在ウイルス)、カリモウイルス属(カリフラワーモザイクウイルス、ペチュニア葉脈透化ウイルス)、イラルウイルス属(プルヌスネクロティックリングスポットウイルス、タバコ条斑ウイルス)、ネクロウイルス属(トルコギキョウえそウイルス、タバコネクロシスウイルス)、ポティウイルス属(サツマイモ縮葉モザイクウイルス、カーネーションベインモットルウイルス、サツマイモ斑紋モザイクウイルス、タバコ脈緑モザイクウイルス、カブモザイクウイルス、トブラウイルス属(タバコ茎えそウイルス)、トスポウイルス属(インパチェンスネクロティックスポットウイルス、アイリスイエロースポットウイルス)、ウメ輪紋ウイルスなどを例示することができる。

【0017】
本発明の植物ウイルスの検出方法は、ELISA法のうち、サンドイッチ法と呼ばれる原理を利用する。

【0018】
具体的には、本発明の植物ウイルスの検出方法は、試料中の植物ウイルスを検出する方法であって、以下の工程:
(1)標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されたビーズ体と、試料とを接触させる工程、
(2)ビーズ体と、標的植物ウイルスと特異的に結合する標識二次抗体とを接触させる工程、および
(3)標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出する工程を含む。

【0019】
工程(1)では標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されたビーズ体と試料とを接触させる。

【0020】
ビーズ体は、従来使用されている、円盤状、真球状などの各種真球状を適宜使用することができるが、特に好ましくは真球状のビーズ体である。ビーズ体の材料は特に限定されないが、例えば、ガラスや、ポリスチレン、ラテックス粒子などのプラスチック、磁性ビーズを含む金属などを例示することができ、なかでも、ガラスビーズは取扱い性などに優れるため好ましく使用することができる。

【0021】
従来、ELISA法における固相としてガラスビーズを用いることは知られているが(例えば特許文献1、非特許文献1など)、植物ウイルスの検出におけるガラスビーズの有効性についての検討はこれまでなされていない。

【0022】
ビーズ体の粒径は、0.5mm以下であることが好ましく、0.010~0.100mmであることがより好ましい。ビーズ体の粒径がこの範囲であると、植物ウイルスの検出感度が向上する。

【0023】
一次抗体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する抗体であればよく、例えば、IgG、IgMなどを例示することができる。また、一次抗体は適宜希釈して使用することもできる。

【0024】
一次抗体は、例えば共有結合によってビーズ体に固定することができる。例えば、酸無水物を介した共有結合法による抗原の固定化方法としては、ビーズ体表面に存在する酸無水物基を介して抗原を固定化してもよいし、ビーズ体表面に存在するカルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、アジド基、イソシアネート基、クロロホルミル基、エポキシ基等の他の反応性官能基に酸無水物基体を導入した後、これを介して一次抗体を固定化してもよい。また、酸無水物基、反応性官能基のいずれも高分子材料表面に無い場合にはビーズ体表面に直接酸無水物基を導入して一次抗体を固定化してもよいし、あるいは反応性官能基を導入した後、酸無水物基を導入して一次抗体を固定化してもよい。

【0025】
そして、ビーズ体に一次抗体を固定した後に、ビーズ体表面において非特異的に抗原などと結合する部分を抗血清や非干渉性のタンパク質でブロックする操作(ブロッキング)を行う。ブロッキングには、スキムミルク、ウシ血清アルブミン(BSA),オボアルブミン,ヘモグロビン,ゼラチンなどを利用することができ、例えば、これらを塩化ナトリウムを含むトリス-塩酸緩衝液あるいはリン酸緩衝液に溶解してブロッキング液とし、一次抗体を固定化したビーズ体に作用せればよい。反応後は、例えば、0.05%ポリエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)、塩化ナトリウムを含むトリス-塩酸緩衝液またはリン酸緩衝液などで2~6回洗浄することができる。

【0026】
そして、ウイルスを検出するための試料は、例えば、検出すべき植物ウイルスに感染している可能性がある植物の葉などを例示することができ、このような試料を適宜なバッファーとともに摩砕したものをビーズ体とを接触させることができる。

【0027】
工程(1)において、試料中に検出すべき植物ウイルスが含まれている場合には、ビーズ体に固定された一次抗体に捕捉され、ビーズ体の表面に植物ウイルスが吸着された状態となる。

【0028】
工程(2)では、ビーズ体と、標的植物ウイルスと特異的に結合する標識二次抗体とを接触させる。

【0029】
標識二次抗体は、標的植物ウイルスと特異的に結合する抗体であればよく、例えば、IgG、IgMなどを例示することができ、一次抗体とは異なるエピトープに結合するものなどを適宜選択することができる。

【0030】
さらに、標識二次抗体は、予め標識されていることが望ましい。標識されていない二次抗体とビーズ体とを接触させる場合には、その後、適宜な酵素タンパク質などで標識する工程が必要となる。

【0031】
標識となる酵素タンパク質としては、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる。また、標識として、アビジン-ビオチンや蛍光色素分子を用いたり、抗体結合性を持つプロテインA、プロテインGやレクチンを介して標識を導入させる方法なども用いられる。

【0032】
また、工程(2)は、工程(1)と略同時に行うこともできる。この場合、例えば、工程(1)において試料と混合するバッファー(摩砕液)に標識二次抗体を添加しておくことなどが考慮される。

【0033】
工程(2)においては、試料中に検出すべき植物ウイルスが含まれている場合(工程(1)でビーズ体の表面に植物ウイルスが吸着された状態となっている場合)には、植物ウイルスに標識二次抗体が結合する。

【0034】
工程(3)では、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出する。

【0035】
工程(2)において、植物ウイルスに酵素タンパク質で標識された標識二次抗体が結合している場合には、基質を添加することで標識二次抗体の酵素タンパク質と基質とが特異的に反応するため、この反応(基質の分解)を検出することで標識二次抗体を検出することができ、これによって、試料中の植物ウイルスの存在を確認することができる。

【0036】
具体的には、酵素タンパク質の基質については、例えば標識酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合、蛍光法にて測定するには過酸化水素水と3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸などを用い、比色法にて測定するには過酸化水素水と4-ヒドロキシフェニル酢酸や3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン,1,2-フェニレンジアミンなどを用い、発光法にて測定するにはルミノール(Amersham 社) などを用いることができる。また、例えば、アルカリフォスファターゼ(AP)を用いる場合、蛍光法にて測定するには4-メチルウンベリフェリルリン酸などを用い、比色法にて測定するには4-ニトロフェニルリン酸やNADPなどを用いることができる。また、例えば、β-D-ガラクトシダーゼを用いる場合、蛍光法にて測定するには4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシドなどを用い、比色法にて測定するには2-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシドなどを用いることができる。

【0037】
また、蛍光色素分子で標識された標識二次抗体を用いる場合には、蛍光顕微鏡やフローサイトメーターからの光(電磁波)による、蛍光色素分子に固有の蛍光(励起波長)を検出することで、標的植物ウイルスと特異的に結合した標識二次抗体を検出することができる。これによって、試料中の植物ウイルスの存在を確認することができる。

【0038】
工程(3)においては、標識二次抗体と基質との反応を適宜な方法(例えば、蛍光法など)で検出することで、試料中の植物ウイルスの量などを検出することができる。

【0039】
本発明の植物ウイルスの検出方法は、ビーズ体(一次抗体が固定された)を利用して植物ウイルスの検出するため、従来の検出方法と比較して高感度で、かつ、短時間で植物ウイルスの検出が可能である。

【0040】
さらに、本発明の植物ウイルスの検出方法に適用可能な植物ウイルス検出キットについて説明する。

【0041】
図1は、本発明の植物ウイルスの検出キットの一実施形態を例示した概要断面図である。

【0042】
本発明の植物ウイルスの検出キットKには、例えば、図1に例示したビーズ体1およびケース体2が含まれる。

【0043】
具体的には、外部から液体を流通可能なケース体2の内部に、標的植物ウイルスと特異的に結合する一次抗体が固定されたビーズ体1が保持されている。ビーズ体1に一次抗体を固定する方法は、上述した適宜な方法を採用することができる。また、ビーズ体1の粒径は、上述したように、検出感度や洗浄容易性を考慮して、0.010~0.5mm程度の範囲で適宜設計することができる。

【0044】
ケース体2としては、例えば、ビーズ体1よりも小さなメッシュを有するフィルター部材21を備えた袋状または箱状の部材を例示することができる。具体的には、図1に例示したケース体2は、やや縦長のフレーム部22の下方において、上下に間隔をあけて2枚のフィルター部材21が配設されており、この2枚のフィルター部材21の間の空間に一次抗体が固定されたビーズ体1が保持されている。フィルター部材21は、液体(水)が流通可能であるため、例えば、上方からケース体2の内部に液体(水)を供給することで、ビーズ体1を洗浄して下方から排出することができる。

【0045】
ケース体2の材料は具体的に限定されないが、フレーム部22の材料としてはプラスチックなどを例示することができる。また、ケース体2の形状、大きさなども具体的に限定されないが、例えば、市販のプラスチックチューブ(1.5ml)に収納可能な形状、大きさに設計することができる。また、フィルター部材の材料も特に限定されず、例えば、織物、編物、開口形成された樹脂成形体、セラミックス、金属成形体などを例示することができる。

【0046】
図2は、本発明の植物ウイルスの検出キットの使用方法の一実施形態を例示した概要図である。

【0047】
本発明の植物ウイルスの検出キットKを使用する場合、例えば、図2(A)に例示したように、まず、プラスチックチューブT1(例えば、1.5ml)内に試料S(植物の葉など)を入れ、標識二次抗体を含む摩砕液Qを加え、ペレットミキサーMなどで摩砕する。次に、図2(B)に例示したように、図1に例示した、ビーズ体1を保持したケース体2をプラスチックチューブT1内に挿入し、試料S(摩砕液Q)とビーズ体1とを、例えば5~20分間接触させる。これによって、試料S中に標的植物ウイルスが含まれている場合には、ビーズ体1上に固定された一次抗体に、標識二次抗体で標識された標的植物ウイルスが結合する。続いて、図2(C)に例示したように、このケース体2を取り出し、別のプラスチックチューブT2(例えば、15ml)に上方から装着し、その上から洗浄液を流してフィルター部材21の内部のビーズ体1を洗浄する。図2(D)に例示したように、このケース体2をさらに別のプラスチックチューブT3(例えば、1.5ml)内に挿入し、例えば、標識二次抗体が酵素で標識されている場合には、この酵素と特異的に反応する基質液Lを添加することで標識二次抗体の酵素と基質とが反応するため、この反応を比色法などで検出することで植物ウイルスを検出することができる。

【0048】
本発明の植物ウイルスの検出方法は、以上の形態に限定されることはない。例えば、ビーズ体の洗浄や乾燥などのELISA法に従った適宜な工程を含むことができることは言うまでもない。また、標識二次抗体の標識となる酵素や蛍光色素分子などは、公知の材料を適宜利用することができる。さらに、本発明の植物ウイルスの検出キットには、摩砕液(標識二次抗体などを含む)や基質液などを含むことができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の植物ウイルスの検出方法の形態について実施例とともに説明するが、本発明の植物ウイルスの検出方法は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
<実施例1>抗体付着ガラスビーズ(ビーズ体)の作成
次の手順にて抗体付着ガラスビーズを作成した。
【実施例】
【0051】
ビーズ体としてのガラスビーズ(直径0.35-0.5 mm, 0.105-0.125 mm, 0.037-0.063 mm)に3%の3-アミノプロピルトリエトキシレンアセトン溶液を加え45℃で2時間振盪(60/m)した。アセトンで3回洗浄した後に、純水にて数回洗浄、1%のグルタルアルデヒド液で室温にて1時間振盪した。次いでpH 7.0 PBSで3-5回洗浄した。ガラスビーズ5 gについて、0.1 M PBS 5 mlとウメ輪紋ウイルス(以下PPV)に特異的に反応するIgG (1次抗体)62.5 μlを混ぜた溶液に浸して、室温で30分振盪した(60/m)。振盪後、4℃で一晩静置した。0.1 M PBSTで3回洗浄した後に、30%スキムミルク溶液にガラスビーズを浸し、37℃で2時間振盪した(30/m)。振盪後0.1M PBSTで白濁が無くなるまで洗浄し、純水で2回すすいだ。ろ紙を敷いたブフナ漏斗を用いて洗浄、軽く乾燥させた後に、ろ紙ごとシャーレに移して凍結乾燥機に2-3時間程度入れることで完全に乾燥させた。これを1.5 mlエッペンチューブ1本あたり0.1 gずつ小分けし-20℃で保存した。
【実施例】
【0052】
<実施例2>抗体付着ガラスビーズを用いた検定
実施例1で作製した抗体付着ガラスビーズを用いて次の通り検定を行った。
【実施例】
【0053】
1 cm角の葉片(0.02 g)をシール袋に入れて、磨砕Buffer(PBS-T-PVP 200 μl, PPV-IgG AP(標識二次抗体)コンジュゲート4 μl)で磨砕した。15 mlファルコンチューブにPPV抗体付着ガラスビーズを移しておき、ここに磨砕液を入れてなじませ37℃で10分間静置した。その後、洗浄瓶でPBS-Tをチューブに注入して(10ml以上)ビーズを洗浄した。ビーズが沈んだらデカンテーションで洗浄液を排除した。洗浄液が透明になるまで、数回、洗浄・排除を繰り返した。最後に、洗浄液がビーズ面に位置する状態になるまでピペットなどで残液を吸い取った。基質液(10%ジエタノールアミンpH 9.8を5 ml, p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム六水和物10 mg)をビーズの3倍量程度加え、デカンテーションでビーズ面上部の余分な基質液を捨てた。これを2回繰り返した後、ピペットなどでビーズ面までの基質液量にして、室温で5-15分程度静置する。基質液を肉眼あるいはNanodrop(Thermo Fisher Scientific社)によりA405の値を測定して判定した。
【実施例】
【0054】
まず、直径0.35-0.5 mmのガラスビーズを用いて、ビーズに付着させる1次抗体濃度を5段階に希釈して検定した。PPV感染ウメ葉および健全ウメ葉に対し測定を行ったところ、1次抗体が×10から×80希釈までいずれのビーズも、健全葉に比べ感染葉が高い数値となり、ウイルス検出が可能であることが明らかとなった(表1)。
【実施例】
【0055】
【表1】
JP0006198110B2_000002t.gif
【実施例】
【0056】
したがって、1次抗体の濃度は×80倍希釈であっても十分な感度でPPVを検出することができることが確認された。
【実施例】
【0057】

<実施例3>ガラスビーズの粒子径の検討
次に、ガラスビーズの粒子径を変えて検定を行った。3種類のガラスビーズ:直径0.35-0.5 mm(大)、直径0.105-0.125 mm(中)、直径0.037-0.063 mm(小)について1次抗体を付着させ、測定を行った。ビーズに付着させた1次抗体はいずれも×80希釈とした。
【実施例】
【0058】
結果を表2に示す。
【実施例】
【0059】
【表2】
JP0006198110B2_000003t.gif
【実施例】
【0060】
表2に示したように、いずれも健全葉に対し、感染葉について高い数値が得られた。なかでも小ビーズを用いた場合が最も検出値が大きくなることが確認された。
【実施例】
【0061】

<実施例4>従来のELISA法との比較
ガラスビーズを利用した本発明の方法と、従来のELISA法との検定比較を行った。
【実施例】
【0062】
本発明の方法では、実施例1と同様の方法で作製した抗体付着ガラスビーズ(1次抗体は×80希釈、ビーズの粒子径は直径0.35-0.5 mm)を使用し、PPV感染ウメ葉、健全ウメ葉の同一サンプルについて、実施例2と同様の手順で吸光度の測定を行った。
【実施例】
【0063】
一方、従来のELISA法は、0.05M炭酸Buffer(pH9.6)によりAnti PPV IgG(抗PPVウサギポリクローナル抗体)を500倍希釈した後、マイクロタイタープレート1ウェルごとに200μlを加え、30℃で4時間保温してウェルに抗体を付着させた後に、PBSTで4回洗浄した。PPV感染ウメ葉、健全ウメ葉のサンプルを20倍重量の磨砕液(20mM Tris-HCl)にて磨砕し1ウェルごと200 μl加えた。4℃で一晩静置後、PBSTで4回洗浄した。Conjugation buffer(20 mM Tris, 1 mM MgCl2, 0.02% KCl, 0.8% NaCl, 0.2% BSA, 2% PVP K25, 0.05% Tween20)にてPPV IgG-ALP(ALP標識抗PPVウサギポリクローナル抗体)を500倍希釈した後、1ウェルごと200 μl加え、30℃で5時間保温した。その後、PBSTで4回洗浄した。基質Buffer(10%ジエタノールアミン, pH9.8)にて基質(p-ニトロフェニルりん酸二ナトリウム六水和物)を1 mg/mlになるように調整し、1ウェルごと200μl加え、30℃で30分間反応させた。その後3N NaOHを1ウェルごと50 μl加えて反応を中止した。プレートリーダーSH-1000Lab(日立ハイテク)によりA405における吸光度を測定した。
【実施例】
【0064】
結果を表3に示す。
【実施例】
【0065】
【表3】
JP0006198110B2_000004t.gif
【実施例】
【0066】
表3に示したように、本発明の方法は、従来のELISA法よりも高感度にウイルスを検出することができた。
【実施例】
【0067】
また、従来のELISA法は、検定葉粗汁液との反応時間が一晩であり検定に2日かかるのに対し、本発明の方法は、粗汁液との反応時間が10分程度で十分であり、抗体付着ビーズさえあらかじめ準備しておけば、総検定時間を30分程度に抑えることができるため、従来の方法に比べて、検出にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ビーズ体
2 ケース体
図面
【図1】
0
【図2】
1