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明細書 :カーボン材料の電荷特性制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-077608 (P2019-077608A)
公開日 令和元年5月23日(2019.5.23)
発明の名称または考案の名称 カーボン材料の電荷特性制御方法
国際特許分類 C01B  32/168       (2017.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
C01B  32/156       (2017.01)
H01L  35/22        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
H01L  35/24        (2006.01)
FI C01B 32/168
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 250E
B82Y 40/00
C01B 32/156
H01L 35/22
H01L 35/34
H01L 35/24
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2018-198435 (P2018-198435)
出願日 平成30年10月22日(2018.10.22)
優先権出願番号 2017203681
優先日 平成29年10月20日(2017.10.20)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】緒方 啓典
出願人 【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA07
4G146AA12
4G146AA19
4G146AB06
4G146AC16B
4G146AC19B
4G146AC27B
4G146AD14
4G146AD17
4G146AD21
4G146BA04
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB13
4G146CB19
4G146CB26
4G146CB31
4G146CB33
4G146CB34
4G146CB35
要約 【課題】水などの極性溶媒を含む各種溶媒中においてカーボン材料を高度に分散化させるとともに、ウェットプロセスで電荷極性、キャリア密度等の電荷特性を精密に制御することができるカーボン材料の電荷特性制御方法を提供する。さらにドライプロセスである混合粉砕と組み合わせることにより、電荷極性、キャリア密度等の電荷特性を精密に制御することができるカーボン材料の電荷特性制御方法を提供する。
【解決手段】本発明のカーボン材料の電荷特性制御方法は、カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料を、ドーパントと混合粉砕し、さらに同混合粉砕物を含む溶媒中に分散させたカーボン分散液に対し、ソルボサーマル法による反応処理を施し、ドーパントをカーボン材料にドーピングさせることによりカーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料を、ドーパントを含む溶媒中に分散させたカーボン分散液に対し、ソルボサーマル法による反応処理を施し、ドーパントをカーボン材料にドーピングさせることによりカーボン材料の電荷特性を制御することを特温度範囲の条件で行うことを特徴する請求項1に記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項2】
ソルボサーマル法による反応処理を、温度を使用する溶媒の融点以上、臨界点以下の温度範囲の条件で行うことを特徴する請求項1に記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項3】
ドーパントとして、フラーレン(C60、C70および高次フラーレン)およびフラーレン誘導体、トリフェニルホスフィン(TPP)およびトリフェニルホスフィン(TPP)誘導体、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(FTCNQ)若しくはテトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、テトラチアフルバレン(TTF)誘導体、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)誘導体、コバルトセン(CoCp)を含む各種シクロペンタジエニル錯体等有機金属錯体およびその多量体、イミダゾール、ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(DMBI)誘導体を含むイミダゾール誘導体、トリアリルメタン誘導体、トリフェニルメタン-カルビノールベース(TMP-CB)若しくはカルバゾールおよびカルバゾール誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドン(PVP)誘導体、キノリンおよびキノリン誘導体、ピリジンおよびピリジン誘導体、ピラジンおよびピラジン誘導体、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体を含む電子供与性分子および電子受容性分子のうちの1種、又は2種以上を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項4】
溶媒として、水およびアセトニトリル、エタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、ベンゼン誘導体等の有機溶媒のうちの1種、又は2種以上を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項5】
電荷特性が、電荷極性、キャリア密度、若しくはバンドギャップ、又はこれらの2以上である請求項1から4のいずれかに記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項6】
カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料とドーパントを、特定の圧力、反応時間及び反応温度のもとで混合粉砕することにより、カーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
【請求項7】
前記混合粉砕したカーボン材料及びドーパントにソルボサーマル法を適用することにより、カーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とする請求項6に記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料の電荷特性制御方法に関し、詳しくはカーボン材料の電荷極性やキャリア濃度等の電荷特性を精密に制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラファイト、ダイヤモンドや、カーボンナノチューブを代表とするナノカーボン材料を含むカーボン材料は、機能性材料として着目されている。その中で、特にナノカーボン材料であるカーボンナノチューブは、化学的安定性、優れた機械的強度、大きな比表面積、優れた光学特性・電気的特性・熱的特性等により、近年非常に着目されている材料である。
【0003】
カーボンナノチューブには、その炭素原子の結合及び並び方により、半導体性のナノチューブと金属性のナノチューブの2種類がある。カーボンナノチューブは、一般に半導体性のものと金属性のものが混合した形態で得られ、実使用にはいずれか一方の性質のみを用いることが多いため、金属性、半導体性のカーボンナノチューブを分離精製するための研究がなされ報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。特に、半導体性を有するカーボンナノチューブは化学ドーピングにより電荷特性(n型、p型)やキャリア濃度を制御することが可能である(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5等)。
【0004】
これらの電荷極性及びキャリア濃度を制御したカーボンナノチューブはそのままの状態では水や汎用の溶媒には分散が困難であり、精密に電荷極性及びキャリア濃度を制御したカーボンナノチューブを汎用の溶媒中に分散させ、ウェットプロセスにより薄膜作成を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-18947号公報
【特許文献2】特開2011-162410号公報
【特許文献3】特開2007-217273号公報
【特許文献4】特開2008-214587号公報
【特許文献5】特開2011-57516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたもので、水などの極性溶媒を含む各種有機溶媒中においてカーボン材料を高度に分散化させるとともに、ウェットプロセスで電荷極性、キャリア密度等の電荷特性を精密に制御することができるカーボン材料の電荷特性制御方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、カーボン材料とドーパントを混合粉砕するのみで、電荷極性、キャリア密度等の電荷特性を精密に制御することができるカーボン材料の電荷特性制御方法をも提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、以下の技術的手段が提供される。
[1]カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料を、ドーパントを含む溶媒中に分散させたカーボン分散液に対し、ソルボサーマル法による反応処理を施し、ドーパントをカーボン材料にドーピングさせることによりカーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
[2]上記[1]の発明において、ソルボサーマル法による反応処理を、温度を使用する溶媒の融点以上、臨界点以下の温度範囲の条件で行うことを特徴するカーボン材料の電荷特性制御方法。
[3]上記[1]又は[2]の発明において、ドーパントとして、フラーレン(C60、C70および高次フラーレン)およびフラーレン誘導体、トリフェニルホスフィン(TPP)およびトリフェニルホスフィン(TPP)誘導体、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(FTCNQ)若しくはテトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、テトラチアフルバレン(TTF)誘導体、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)誘導体、コバルトセン(CoCp)を含む各種シクロペンタジエニル錯体等有機金属錯体およびその多量体、イミダゾール、ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(DMBI)誘導体を含むイミダゾール誘導体、トリアリルメタン誘導体、トリフェニルメタン-カルビノールベース(TMP-CB)若しくはカルバゾールおよびカルバゾール誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドン(PVP)誘導体、キノリンおよびキノリン誘導体、ピリジンおよびピリジン誘導体、ピラジンおよびピラジン誘導体、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体を含む電子供与性分子および電子受容性分子のうちの1種、又は2種以上を用いることを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
[4]溶媒として、水およびアセトニトリル、エタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、ベンゼンおよびベンゼン誘導体等の有機溶媒のうちの1種、又は2種以上を用いることを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
[5]電荷特性が、電荷極性、キャリア密度、若しくはバンドギャップ、又はこれらの2以上である上記[1]から[4]のいずれかに記載のカーボン材料の電荷特性制御方法。
[6]カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料とドーパントを、特定の圧力、反応時間及び反応温度のもとで混合粉砕することにより、カーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
[7]前記混合粉砕したカーボン材料及びドーパントにソルボサーマル法を適用することにより、カーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とするカーボン材料の電荷特性制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記手法を採用したので、水などの極性溶媒を含む、各種有機溶媒中においてカーボン材料を高度に分散化させるとともに、ウェットプロセスで電荷極性(n型、p型)、キャリア密度等の電荷特性を精密に制御することができるカーボン材料の電荷特性制御方法を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、カーボン材料又は表面が化学修飾されたカーボン材料とドーパントを、特定の圧力、反応時間及び反応温度のもとで混合粉砕することにより、カーボン材料の電荷特性を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図2】実施例1の試料のラマン散乱スペクトルの測定結果を示す図である。
【図3】実施例2の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図4】実施例3の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図5】実施例4の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図6】実施例4の試料のラマン散乱スペクトルの測定結果を示す図である。
【図7】実施例5の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図8】実施例5の試料のラマン散乱スペクトルの測定結果を示す図である。
【図9】実施例6の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図10】実施例6の試料のラマン散乱スペクトルの測定結果を示す図である。
【図11】実施例7の試料の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図12】実施例8の試料(反応条件A)の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図13】実施例8の試料(反応条件B)の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【図14】実施例8の試料のラマン散乱スペクトルの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施形態により詳しく説明する。

【0011】
本発明のカーボン材料の電荷特性制御方法は、カーボン材料又は表面が水酸基等で化学修飾されたカーボン材料を、ドーパントを含む溶媒中に分散させたカーボン分散液に対し、ソルボサーマル法による反応処理を施し、ドーパントをカーボン材料にドーピングさせることによりカーボン材料の電荷特性を制御することを特徴とするものである。

【0012】
本明細書において、カーボン材料とは、例えば、グラファイト、ダイヤモンドや、カーボンナノチューブを代表とするナノカーボン材料を含む機能性材料のことを意味する。

【0013】
また、ナノカーボン材料とは、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、フラーレン等、炭素原子とその結合から構成される物質を基本物質とし、それらに一部元素置換を施した物質およびこれらの表面が水酸基等、各種官能基で化学修飾された物質のことをいう。

【0014】
また、ソルボサーマル法とは、高温高圧の溶媒を反応場として湿式化学反応により固体を合成する方法である。

【0015】
ここでソルボサーマル法の具体例を述べる(実施例1)。内容積25mLのPTFE製内筒容器(三愛科学株式会社製HU-25)の中に、ドーパント/SWNTs(SWNT-OHs)/溶媒を入れる。同容器を耐圧ステンレス製外筒中に入れ、レンチを用いて締め込みを行う。耐圧ステンレス製外筒をマッフル炉に入れ、所定の反応温度、反応時間で反応を行う。また、溶媒のpHを制御することにより、反応性の制御を行う。

【0016】
圧力は、溶媒の種類、量および反応温度により制御を行う。

【0017】
本明細書において、電荷特性は、電荷極性、キャリア密度、バンドギャップ等であり、これら単独の特性に着目してもよいし、2以上の特性に同時に着目してもよい。

【0018】
本発明では、ドーパントとして、フラーレン(C60、C70および高次フラーレン)およびフラーレン誘導体、トリフェニルホスフィン(TPP)およびトリフェニルホスフィン(TPP)誘導体、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(FTCNQ)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体、テトラチアフルバレン(TTF)誘導体、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)誘導体、コバルトセン(CoCp)を含む各種シクロペンタジエニル錯体等有機金属錯体およびその多量体、イミダゾール、ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール(DMBI)誘導体を含むイミダゾール誘導体、トリアリルメタン誘導体、トリフェニルメタン-カルビノールベース(TMP-CB)、カルバゾールおよびカルバゾール誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドン(PVP)誘導体、キノリンおよびキノリン誘導体、ピリジンおよびピリジン誘導体、ピラジンおよびピラジン誘導体、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体のうちの1種、又は2種以上を用いることができる。もちろん、これらに限定されることはない。ドーパントとして、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラメチルテトラセレナバレン(TMTSF)を用いたときには電子ドープとなるが、その他の化合物でも電子ドープとなるものがある。一方、ドーパントとして、例えば、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(FTCNQ)、カルバゾールを用いたときには正孔ドープとなるが、その他の化合物でも正孔ドープになるものがある。

【0019】
また、本発明では、溶媒として、例えば、水、アセトニトリル、エタノール、メタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、ベンゼンおよびベンゼン誘導体等をはじめとする各種の有機溶媒のうちの1種、又は2種以上を用いることができる。もちろん、これらに限定されることはない。

【0020】
本発明では、ソルボサーマル法による反応処理は、使用する溶媒の融点以上の温度での処理であればよく、超臨界状態を含んでいてもよい。

【0021】
本発明では、ドーパントのドープ量は、圧力、溶媒の種類、溶解度、およびpHにより制御することができる。

【0022】
また、本発明において、例えば、カーボン材料がナノカーボン材料の一つであるカーボンナノチューブである場合、そのドーピングサイトが、チューブ内部、チューブ表面およびその欠陥部位、化学修飾部位、チューブとチューブの間若しくはチューブのバンドルの溝、又はこれらの2以上のサイトとすることができる。さらに、ナノカーボン材料がグラフェンである場合、グラフェン表面およびその欠陥部位、化学修飾部位およびエッジ等をドーピングサイトとすることができる。

【0023】
本発明により電荷特性を制御されたカーボン材料は、顕微ラマン、TEM、吸光度、FT-IR、シート抵抗、ゼーベック係数などによりその評価が可能となる。

【0024】
本発明により電荷特性を制御されたカーボン材料は、フレキシブル薄膜とすることができ、詳細な膜厚制御、モロフォロジー制御が可能となり、カーボン材料を用いた太陽電池、EL素子等各種デバイス、センサー、光触媒、熱電素子、熱電変換素子、各種トランジスター等への応用が可能となる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0026】
先ず、後述のいくつかの実施例で用いる水酸化単層カーボンナノチューブ(SWNT-OH)の合成方法について述べる。
【実施例】
【0027】
単層カーボンナノチューブ(SWNTs(アーク放電法)>99%:名城ナノカーボン)0.02176gと硝酸(HNO69~70%:和光純薬工業) 55mLをナスフラスコに加え、超音波洗浄機(3分程度)で分散させた。硫酸(HSO95.0%:和光純薬工業)165mLを加え、超音波洗浄機の湯浴を60℃に設定し、2時間撹拌した。この時、10分おきにガラス棒で撹拌した。
【実施例】
【0028】
三角フラスコに塩酸(HCl 35.0~37.0%:和光純薬工業)165mLを用意し、そこに反応液をゆっくり加えて15時間静置した。滴下は、氷水で冷やしながら行った。その後、三角フラスコにアンモニア水(NH25.0~27.9%:和光純薬工業)493mLを用意し、反応液を少量ずつ加えて中和させた。滴下は、氷水で冷やしながら行った。
【実施例】
【0029】
メンブレンフィルター(OmniporeTM Membrane Filters,親水化PTFE 0.2μm)を用いて、吸引ろ過を行った。フィルターに残った黒色物質を超音波洗浄機で脱イオン水中に分散させた。吸引ろ過はフィルターを替えながら数回に分けて行い、分散液は別の容器に移しておいた。分散液を吸引ろ過、脱イオン水への分散の洗浄操作を3回(ろ液が透明になるまで)行った。洗浄後、シャーレに広げて乾燥させ、黒色の粉末(0.02209g)を得た。この黒色の粉末が水酸化単層カーボンナノチューブ(SWNT-OH)であった。さらに、同試料を空気中で450℃、30分加熱処理を行うことにより開端処理を行った。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
ドーパントとしてのフラーレン(C60) 40.1mgをカーボン材料としてのアーク放電法により作成し、開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs(アーク放電法)>99%:名城ナノカーボン;以下同じ)1.0mgと乳鉢混合したものに精製水10mLに加えた分散液を作成した。内容積25mLのPTFE製内筒容器中に同分散液を入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度180℃で6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は、トルエンで洗浄し、未反応のC60分子を取り除いた。
【実施例】
【0031】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子:JEM2100F;加速電圧200kV);以下同じ)により観察した。その結果を図1に示す。図1から、フラーレン(C60)は、単層カーボンナノチューブに内包されるとともに、チューブ表面に共有結合していることが分かる。
【実施例】
【0032】
また、得られた試料のラマン散乱スペクトルを顕微ラマン分光装置(NanoPhoton:RAMANTouch(λex=532nm);以下同じ)で測定した。その結果を図2に示す。図2から、反応後の試料では、原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のRBMのピーク強度が弱くなっており、C60は単層カーボンナノチュ-ブ(SWNTs)に内包されていることが分かる。また、1460-1470cm-1付近に観測されるC60分子のAg(2)モードは、反応後の試料では、高波数シフトしており、一部のC60分子が単層カーボンナノチューブ表面に共有結合していることが分かる。
【実施例】
【0033】
[実施例2]
ドーパントとしてのフラーレン(C60)4.24mgを精製水6mL中に分散した開端処理した水酸化単層カーボンナノチューブ(SWNT-OH)分散液を作成した。この分散液を上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度300℃で5時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は、乾燥後、トルエンで洗浄し、未反応のC60分子を取り除いた。
【実施例】
【0034】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図3に示す。図3から、フラーレン(C60)は、カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されるとともに、チューブ表面に共有結合していることが分かる。
【実施例】
【0035】
[実施例3]
ドーパントとしてのフラーレン(C60)25.6mgをカーボン材料としての開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)1mgと乳鉢で混合したものを作成し、エタノール10mLに加えた分散液を作成した。この分散液を上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度130℃で6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は、乾燥後、トルエンで洗浄し、未反応のフラーレン(C60)分子を取り除いた。
【実施例】
【0036】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図4に示す。図4から、フラーレン(C60)は、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されるとともに、チューブ表面に共有結合していることが分かる。
【実施例】
【0037】
[実施例4]
ドーパントとしてテトラシアノキノジメタン(TCNQ)を用いたアセトニトリル飽和溶液10mLを作成した。内容積25mLのPTFE製内筒容器中に上記溶液および単層カーボンナノチューブ(SWNTs)を1mg入れ、この分散液を上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度150℃、6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は、乾燥後、アセトニトリルで洗浄し、未反応のテトラシアノキノジメタン(TCNQ)を取り除いた。反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図5に示す。図5から、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)は、チューブ内部に内包されるとともに、チューブ表面に付着していることが分かる。
【実施例】
【0038】
また、得られた試料のラマン散乱スペクトルを測定した。その結果を図6に示す。図6から、原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のRBMのピーク強度が弱くなっており、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)は単層カーボンナノチュ-ブ(SWNTs)に内包されていることが分かる。また、1440-1460cm-1付近に観測されるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)分子のC-CN stretchingモードは、反応後の試料では、低波数シフトしており、さらに1590cm-1に観測される単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のG-バンドが原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ高波数シフトしており、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)からテトラシアノキノジメタン(TCNQ)へ電子が移動していることが分かる。
【実施例】
【0039】
[実施例5]
ドーパントとしてのテトラシアノキノジメタン(TCNQ)80mgをカーボン材料としての開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)1mgと乳鉢混合したものを作成した。これを内容積25mLのPTFE製内筒容器中に精製水10mLとともに入れ、上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度150℃、6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は乾燥後、アセトニトリルで洗浄した。
【実施例】
【0040】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図7に示す。図7から、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)は、チューブ内部に内包されるとともに、チューブ表面に付着していることが分かる。
【実施例】
【0041】
また、得られた試料のラマン散乱スペクトルを測定した。その結果を図8に示す。図8から、原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のRBMのピーク強度が弱くなっており、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)は単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されていることが分かる。また、1440-1460cm-1付近に観測されるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)分子のC-CN stretchingモードは、反応後の試料では、低波数シフトしており、さらに1590cm-1に観測される単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のG-バンドが原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ高波数シフトしており、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)からテトラシアノキノジメタン(TCNQ)へ電子が移動していることが分かる。
【実施例】
【0042】
[実施例6]
ドーパントとしてのカルバゾール164mgを炭素原料としての開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)1mgと乳鉢混合した試料を作成した。内容積25mLのPTFE製内筒容器中に上記試料を入れ、精製水10mLに加えた。この分散液を上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度150℃、6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は乾燥後、アセトンで洗浄し、未反応のカルバゾールを取り除いた。
【実施例】
【0043】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図9に示す。図9から、カルバゾールは、チューブ内部に内包されるとともに、チューブ表面に付着していることが分かる。
【実施例】
【0044】
また、得られた試料のラマン散乱スペクトルを測定した。その結果を図10に示す。図10から、原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のRBMのピーク強度が弱くなっており、カルバゾールは単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されていることが分かる。また、1590cm-1に観測される単層カーボンナノチューブ(SWNTs)のG-バンドが原料の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に比べ高波数シフトしており、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)からカルバゾールへ電子が移動していることが分かる。
【実施例】
【0045】
[実施例7]
ドーパントとしてのトリフェノルホスフィン(TPP)102mgと炭素原料としての開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)1mgを乳鉢混合した試料を作成した。内容積25mLのPTFE製内筒容器中に上記試料を入れ、精製水10mLに加えた。この分散液を上記と同様のソルボサーマル容器に入れ、これをステンレス製の圧力容器に収容して密閉し、ソルボサーマル装置を用い、温度150℃、6時間、ソルボサーマル法により反応させた。反応後の試料は乾燥後、トルエンで洗浄した。
【実施例】
【0046】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。その結果を図11に示す。図11から、トリフェノルホスフィン(TPP)は、チューブ内部に内包されるとともに、チューブ表面に付着していることが分かる。
【実施例】
【0047】
[実施例8]
開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)6.4mgとドーパントとしてのコバルトセン(CoCp)243mgを乳鉢で混合後、これをソルボサーマル反応溶液に充填し、蒸留水10mLを加えた。同反応容器をマッフル炉中、下記の反応条件でそれぞれ反応を行った。
反応条件A:CoCp-SWNTs 90℃,6時間
反応条件B:CoCp-SWNTs 120℃,6時間
反応後の固形物は、フィルターを通し、エタノール洗浄を行った後、フィルターとともにガラス管に入れ、真空引きを行いながら、50℃で加熱乾燥を行った。その後、空気中、室温でラマン散乱測定(反応条件A、Bの試料)を行った。
【実施例】
【0048】
反応後の試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果を図12(反応条件Aの試料)、図13(反応条件Bの試料)にそれぞれ示す。
図12、図13から、それぞれコバルトセン(CoCp)は単層カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されるとともに、チューブ表面に付着物が存在していることが分かる。
【実施例】
【0049】
また、得られた試料のラマン散乱スペクトルを測定した。その結果を図14に示す。図14から、コバルトセン(CoCp)の反応温度の上昇とともにG-バンドは高波数シフトしており、ピーク位置は、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)で1590.8cm-1、CoCp-SWNTs(反応条件Aの試料)で1594.1cm-1、CoCp-SWNTs(反応条件Bの試料)で1597.5cm-1であった。また、90℃反応温度試料でRGBの高波数シフトが見られ、コバルトセン(CoCp)は、カーボンナノチューブ(SWNTs)に内包されていることがわかる。
【実施例】
【0050】
[実施例9]
炭素原料として開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)6.4mgとドーパントとしてコバルトセン(CoCp)243mgをアルゴン雰囲気下のグローブボックス中で5分間乳鉢で混合した後、試料を6つに分け、そのうち5つを個別にソルボサーマル反応溶液に充填し、蒸留水10mLを加えた。同反応容器をマッフル炉中、下記の反応条件でそれぞれ反応を行った。さらに比較のため、開端処理した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)6.4mgとドーパントとしてコバルトセン(CoCp)243mgをアルゴン雰囲気下のグローブボックス中で2分間乳鉢で混合した試料も作製した。
試料Cの反応条件:CoCp-SWNTs 60℃,2時間
試料Dの反応条件:CoCp-SWNTs 90℃,2時間
試料Eの反応条件:CoCp-SWNTs 120℃,6時間
試料Fの反応条件:CoCp-SWNTs 150℃,6時間
試料Gの反応条件:CoCp-SWNTs 180℃,6時間
試料H:5分間混合粉砕のみ
試料I:2分間混合粉砕のみ
反応後の固形物(試料C,D,E,F,G)および混合粉砕のみを行った試料(試料Hおよび試料I)は、それぞれフィルターを通し、エタノール洗浄を行った後、フィルターとともにガラス管に入れ、真空引きを行いながら、50℃で加熱乾燥を行った。その後、固形物をフィルター表面から取り外し、再度エタノール中に超音波分散し、同分散液をフィルターを通してフィルター上に薄膜を形成した。同薄膜をフィルターから取り外し、空気中、室温でゼーベック係数測定(試料C,D,E,F,G,H,I)を行った。ゼーベック係数測定は、武田理研社製TR6142(マンガニンヒーター線用定電圧電源)と、微小電圧増幅用機器として大倉電気社製マイクロボルトメーターMODEL-AM1001を2台、 KEITHLEY 2001マルチメーター(差動熱電対用電圧計)およびKEITHLEY181ナノボルトメーター(試料用電圧計)を用いた自作の装置を用いて室温で行った。
得られた試料の熱電能データ(ゼーベック係数)は、反応前の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)で+38.2μV/K、CoCp-SWNTs混合粉砕のみ(5分間)の試料(試料H)で-31.4μV/K、CoCp-SWNTs混合粉砕のみ(2分間)の試料(試料I)で-5.8μV/K、CoCp-SWNTs(試料C)で-37.0μV/K、CoCp-SWNTs(試料D)で-32.4μV/K、CoCp-SWNTs(試料E)で-21.7μV/K、CoCp-SWNTs(試料F)で-27.2μV/K、CoCp-SWNTs(試料G)で-14.6μV/Kであった。
以上により、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)とコバルトセン(CoCp)の混合粉砕のみでも電荷極性をp型からn型に転換することができることが確認された。
また、混合粉砕条件(粉砕時間、圧力、反応温度等)を変えることによりカーボン材料の電荷特性制御が可能であり、さらにソルボサーマル法と組み合わせることにより、さらに細かい電荷特性制御が可能となる。また、上記では、カーボン材料とドーパントを乳鉢粉砕するケースについて述べたが、もちろん本発明はボールミル法等、工業的に汎用性がある粉砕混合法にも広く適応することが可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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