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明細書 :pH応答性コポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-143183 (P2020-143183A)
公開日 令和2年9月10日(2020.9.10)
発明の名称または考案の名称 pH応答性コポリマー
国際特許分類 C08F 220/10        (2006.01)
FI C08F 220/10
請求項の数または発明の数 17
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2019-038504 (P2019-038504)
出願日 平成31年3月4日(2019.3.4)
発明者または考案者 【氏名】澤田 和紀
【氏名】蛭田 勇樹
【氏名】チッテリオ ダニエル
出願人 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
個別代理人の代理人 【識別番号】110001656、【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4J100
Fターム 4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL09R
4J100BA02R
4J100BA04R
4J100BA07R
4J100BA15Q
4J100BA16Q
4J100BA32P
4J100BC04Q
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA51
4J100JA53
要約 【課題】中性付近のpHにおいて、pHに応答して電荷を変化させることができる、新規なpH応答性ポリマーを提供すること。
【解決手段】
pH応答性コポリマーは、下記一般式[I]
【化1】
JP2020143183A_000033t.gif
(式中、R1は主鎖を構成する有機基、R2は正電荷を持つカチオン性基、R3はpH応答性を持つアニオン性基、R4は電荷を持たない有機基、mは1以上の整数、nは1以上の整数、oは0以上の整数を表し、各繰返し単位中のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ単一種類のものでも複数種類のものであってもよい)
で表され、pH4~7の範囲に含まれる範囲内でpHに応じて電荷が変化する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式[I]:
【化1】
JP2020143183A_000027t.gif
(式中、R1は主鎖を構成する有機基、R2は正電荷を持つカチオン性基、R3はpH応答性を持つアニオン性基、R4は電荷を持たない有機基、mは1以上の整数、nは1以上の整数、oは0以上の整数を表し、各繰返し単位中のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ単一種類のものでも複数種類のものであってもよい)
で表され、pH4~7の範囲に含まれる範囲内でpHに応じて電荷が変化する、pH応答性コポリマー。
【請求項2】
前記アニオン性基が、下記一般式[II]:
【化2】
JP2020143183A_000028t.gif
(式中、R5はスペーサー基を表す)
で表される請求項1記載のpH応答性コポリマー。
【請求項3】
前記R5が、主鎖に結合するビニル系モノマー残基以外の構造として、置換されていてもよい炭素数1~6アルキレン基を含み、アルキレン基は、炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよく、炭素数3~10のシクロアルキレン基を含んでいてもよく、該シクロアルキレン基は、1個~4個の置換基で置換されていてもよい、請求項2記載のpH応答性コポリマー。
【請求項4】
前記R5がシクロアルキレン基を含む、請求項3記載のpH応答性コポリマー。
【請求項5】
前記一般式[II]に示されるカルボキシル基が、前記シクロアルキレン基に結合している請求項4記載のpH応答性コポリマー。
【請求項6】
前記アニオン性基が、
【化3】
JP2020143183A_000029t.gif

で示されるいずれかの構造を有する、請求項3記載のpH応答性コポリマー。
【請求項7】
前記一般式[I]中のoが0ではなく、前記R4が、主鎖に結合するビニル系モノマー残基以外の部分の構造として、炭素数1~15の、置換されていてもよいアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよい、請求項1~6のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項8】
前記R4が、1個~3個のエチレングリコール単位を含む、請求項7記載のpH応答性コポリマー。
【請求項9】
前記無電荷有機基が、
【化4】
JP2020143183A_000030t.gif

で示されるいずれかの構造を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項10】
前記カチオン性基が下記一般式[III]:
【化5】
JP2020143183A_000031t.gif
(式中、R6はスペーサー基、R7、R8及びR9は、互いに独立して炭素数1~6のアルキル基を表す)
で表される請求項1~9のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項11】
前記R1が下記一般式[IV]:
【化6】
JP2020143183A_000032t.gif
(式中、R10、R11及びR12は、互いに独立して水素又は炭素数1~6のアルキル基を表す)
で表される請求項1~10のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項12】
前記一般式[IV]中、R10、R11及びR12は、互いに独立して水素又はメチル基である請求項11記載のpH応答性コポリマー。
【請求項13】
前記一般式[I]中のm、n及びoの比率が、mを100とした場合、nが1~1000、oが0~1000である請求項1~12のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項14】
pH4.5~6.5の範囲内でpH応答性を発揮する、請求項1~13のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項15】
主鎖の少なくとも一端に官能基を有する請求項1~14のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
【請求項16】
前記官能基がカルボキシル基又はアミノ基である、請求項15記載のpH応答性コポリマー。
【請求項17】
請求項15又は16記載のpH応答性コポリマーから成るドラッグデリバリー用担体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用の担体等として有用な、pH応答性のコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
正電荷と負電荷からなる両性イオン基を持つコポリマーは、水分子と静電的に強い相互作用を引き起こし、表面に強い水和膜を形成することで、タンパク質などとの非特異吸着を抑えることができる。これにより、生体内における血中透過性に優れたドラッグキャリアの開発、また組織工学や生物医学分野において、細胞分離や生体材料などに応用されている(非特許文献1)。
【0003】
この両イオン性ポリマーにpH応答性を付与し、ポリマー自身の電荷をpHに応じて変化することができれば、DDSでのより高い到達効率の実現、タンパク質や細胞への吸着脱着の制御などが可能となり、より応用範囲が広がることが予測される。しかし、従来の研究では、生体や細胞に応用することが難しい、非常に低いpHのみでしか応答性を付与することができておらず、また、これに対する検討は行われていない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Liuchun Zheng, et al., REACT. FUNCT. POLYM, 2017, 118, 51-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、中性付近のpHにおいて、pHに応答して電荷を変化させることができる、新規なpH応答性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、正電荷を持つカチオン性基と、pH応答性を持つアニオン性基とをそれぞれ側鎖として有し、中性~弱酸性のpH領域においてpH応答性を発揮し、pHが低下すると分子全体として正電荷を有するpH応答性コポリマーを作出することに成功し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 下記一般式[I]:
【0008】
【化1】
JP2020143183A_000003t.gif

【0009】
(式中、R1は主鎖を構成する有機基、R2は正電荷を持つカチオン性基、R3はpH応答性を持つアニオン性基、R4は電荷を持たない有機基、mは1以上の整数、nは1以上の整数、oは0以上の整数を表し、各繰返し単位中のR1、R2、R3及びR4は、それぞれ単一種類のものでも複数種類のものであってもよい)
で表され、pH4~7の範囲に含まれる範囲内でpHに応じて電荷が変化する、pH応答性コポリマー。
(2) 前記アニオン性基が、下記一般式[II]:
【0010】
【化2】
JP2020143183A_000004t.gif

【0011】
(式中、R5はスペーサー基を表す)
で表される(1)記載のpH応答性コポリマー。
【0012】
(3) 前記R5が、主鎖に結合するビニル系モノマー残基以外の構造として、置換されていてもよい炭素数1~6アルキレン基を含み、アルキレン基は、炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよく、炭素数3~10のシクロアルキレン基を含んでいてもよく、該シクロアルキレン基は、1個~4個の置換基で置換されていてもよい、(2)記載のpH応答性コポリマー。
(4) 前記R5がシクロアルキレン基を含む、(3)記載のpH応答性コポリマー。
(5) 前記一般式[II]に示されるカルボキシル基が、前記シクロアルキレン基に結合している(4)記載のpH応答性コポリマー。
(6) 前記アニオン性基が、
【0013】
【化3】
JP2020143183A_000005t.gif

【0014】
で示されるいずれかの構造を有する、(3)記載のpH応答性コポリマー。
(7) 前記一般式[I]中のoが0ではなく、前記R4が、主鎖に結合するビニル系モノマー残基以外の部分の構造として、炭素数1~15の、置換されていてもよいアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよい、(1)~(6)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(8) 前記R4が、1個~3個のエチレングリコール単位を含む、(7)記載のpH応答性コポリマー。
(9) 前記無電荷有機基が、
【0015】
【化4】
JP2020143183A_000006t.gif

【0016】
で示されるいずれかの構造を有する、(1)~(8)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(10) 前記カチオン性基が下記一般式[III]:
【0017】
【化5】
JP2020143183A_000007t.gif

【0018】
(式中、R6はスペーサー基、R7、R8及びR9は、互いに独立して炭素数1~6のアルキル基を表す)
で表される(1)~(9)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(11) 前記R1が下記一般式[IV]:
【0019】
【化6】
JP2020143183A_000008t.gif

【0020】
(式中、R10、R11及びR12は、互いに独立して水素又は炭素数1~6のアルキル基を表す)
で表される(1)~(10)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(12) 前記一般式[IV]中、R10、R11及びR12は、互いに独立して水素又はメチル基である(11)記載のpH応答性コポリマー。
(13) 前記一般式[I]中のm、n及びoの比率が、mを100とした場合、nが1~1000、oが0~1000である(1)~(12)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(14) pH4.5~6.5の範囲内でpH応答性を発揮する、(1)~(13)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(15) 主鎖の少なくとも一端に官能基を有する(1)~(14)のいずれか1項に記載のpH応答性コポリマー。
(16) 前記官能基がカルボキシル基又はアミノ基である、(15)記載のpH応答性コポリマー。
(17) (15)又は(16)記載のpH応答性コポリマーから成るドラッグデリバリー用担体。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、中性~弱酸性のpH領域においてpH応答性を発揮し、pHが低下すると分子全体として正電荷を有するpH応答性コポリマーが初めて提供された。本発明のコポリマーは、pH中性域では電荷を持たないので、体内では強力な水和膜に覆われてタンパク質等による非特異吸着が防止され、pHが正常組織よりも低いことが知られているがん組織近傍では、低いpHのためにコポリマーが正電荷を獲得する。一方、がん細胞は負の電荷を帯びていることが知られているので、正電荷を獲得したコポリマーががん細胞に特異的に結合することになる。したがって、本発明のコポリマーは、特にがん細胞を標的としたDDSの担体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】下記実施例において合成した各コポリマーの、各種pH下におけるゼータ電位の測定結果を示す図である。
【図2】下記実施例において合成した各コポリマーを各種pH下においてヘパリンと接触させた後の動的光散乱(DLS)の結果を示す図である。
【図3】下記実施例において合成した各コポリマーについてのMTTアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記のとおり、本発明のpH応答性コポリマーは、前記一般式[I]で表される構造を有する。一般式[I]中、R1は、コポリマーの主鎖を構成する有機基であり、好ましくは前記一般式[IV]で表される構造を有するものである。前記一般式[IV]中、R10、R11及びR12は、互いに独立して水素又は炭素数1~6のアルキル基を表し、好ましくは水素又はメチル基である。後述のとおり、本発明のコポリマーは、後述するカチオン性基、アニオン性基又は無電荷有機基を有する、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー又はビニルアミド系モノマー(以下、「ビニル系モノマー」と呼ぶことがある)を付加重合することにより容易に製造することが可能であり、これらの場合には、一般式[IV]中のR10が水素又はメチル基、R11及びR12は水素になる。(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリルアミド等のビニル系モノマーは、これらが有するカルボキシル基やアミド基に、任意の基を容易に結合することが可能であるので、この点でも有利である。なお、各繰り返し単位中のR1は、同一のものでもよいし、異なっていてもよい。

【0024】
前記一般式[I]中、R2は、正電荷を持つカチオン性基である。R2は、好ましくは、前記一般式[III]で表される、第4級アンモニウム基を持つ基である。一般式[III]中、R6は任意のスペーサー基、R7、R8及びR9は、互いに独立して炭素数1~6のアルキル基を表す。

【0025】
R6は、上記のとおり、ビニル系モノマーの付加重合によりコポリマーを合成する場合には、ビニル系モノマーの残基である、

【0026】
【化7】
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【0027】
のいずれかの構造を主鎖に近い側の端部に有することになるが、合成にビニル系モノマーを用いない場合には、これらの残基はなくても問題ない。また、R6中、これらのビニル系モノマー残基以外の部分の構造としては、特に限定されないが、好ましい例として、炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキレン基を挙げることができ、これらのアルキレン基は炭素数1~3のアルキル基等の置換基により置換されていてもよく、また、炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造や、-OCO-又は-COO-に置き換わったエステル構造を少なくとも一部に含んでいてもよい。

【0028】
前記一般式[III]中、R7、R8及びR9は、さらに好ましくは、互いに独立して炭素数1~3のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。カチオン性基の好ましい1例として、下記実施例で採用した以下の構造のものを挙げることができる。

【0029】
【化8】
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【0030】
各繰返し単位中のカチオン性基は、同一のものでもよいし、異なっていてもよい。

【0031】
前記一般式[I]中、R3は、pH応答性を持つアニオン性基である。pH応答性アニオン性基は、弱酸性付近では電荷を持たないが、中性領域では水素原子を放出して負電荷を持つ基であれば特に限定されず、カルボキシル基、フェノール基、スルホンアミド基等を挙げることができる。これらのうち、カルボキシル基が好ましく、すなわち、アニオン性基は、前記一般式[II]で示される構造を有するものが好ましい。一般式[II]中、R5は任意のスペーサー基である。R5は、ビニル系モノマーの重合によりコポリマーを合成する場合には、上記したビニル系モノマー残基のいずれかの構造を主鎖に近い側の端部に有することになるが、合成にビニル系モノマーを用いない場合には、これらの残基はなくても問題ない。また、R5中、ビニル系モノマー残基以外の部分の構造としては、特に限定されないが、好ましい例として、炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキレン基を挙げることができ、これらのアルキレン基は例えば炭素数1~6のアルキル基等の置換基で置換されていてもよく、また、炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよい。さらに、R5は、炭素数3~10、好ましくは4~8のシクロアルキレン基を含んでいてもよく、前記カルボキシル基は、このシクロアルキレン基に結合していてもよい。該シクロアルキレン基は、1個~4個の、炭素数1~6のアルキル基等の置換基で置換されていてもよい。下記実施例において具体的に記載されるように、疎水性のシクロアルキレン基を導入することにより、コポリマー全体のpKaを大きくする(7により近づける)ことができる。


【0032】
アニオン性基の好ましい例として、下記実施例で採用した以下の構造のものを挙げることができる。

【0033】
【化9】
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【0034】
前記一般式[I]中、R4は、電荷を持たない有機基(以下、便宜的に「無電荷有機基」)である。無電荷有機基は、少なくともpH4~7の領域内で電荷を有さない任意の基であってよい。無電荷有機基は、存在しなくてもよい(すなわち、前記一般式[I]中のoが0)が、存在するとコポリマー全体のpKaを大きくする(7により近づける)ことができるので、存在する方が好ましい。R4は、ビニル系モノマーの重合によりコポリマーを合成する場合には、上記したビニル系モノマー残基のいずれかの構造を主鎖に近い側の端部に有することになるが、合成にビニル系モノマーを用いない場合には、これらの残基はなくても問題ない。また、R4中、ビニル系モノマー残基以外の部分の構造としては、特に限定されないが、好ましい例として、炭素数1~15、さらに好ましくは炭素数2~10のアルキレン基を挙げることができ、これらのアルキレン基は例えばヒドロキシ基や炭素数1~3のアルキル基等の置換基によって置換されていてもよく、また、炭素原子が酸素原子に置き換わったアルキレングリコール構造を少なくとも一部に含んでいてもよい。特に、1個~3個のエチレングリコール構造を含むものが好ましい。

【0035】
無電荷有機基の好ましい例として、下記実施例で採用した以下の構造のものを挙げることができる。

【0036】
【化10】
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【0037】
前記一般式[I]中、mは1以上、好ましくは5~100、さらに好ましくは10~50の整数、nは1以上の整数、好ましくは10~50の整数、さらに好ましくは10~50の整数、oは0以上の整数、好ましくは0~100、さらに好ましくは5~50の整数を表わす。m、n、oの好ましい比率は、mを100とした場合、好ましくはnが1~1000、さらに好ましくは25~400、さらに好ましくは50~200であり、また、好ましくはoが0~1000、さらに好ましくは0~400、さらに好ましくは20~200である。また、コポリマーの分子量は、特に限定されず、架橋剤を用いて合成するハイドロゲルのように分子量が非常に大きなものであっても良いが、通常、数平均分子量で2000~6万程度、好ましくは5000~3万程度である。

【0038】
前記一般式[I]で表される構造の主鎖の両端部の構造は任意の構造でよいが、本発明のコポリマーをDDS用担体として用いる場合の利便性に鑑み、少なくとも一端にカルボキシル基やアミノ基のような官能基を有していることが好ましい。下記実施例で合成したコポリマーは、一端にカルボキシル基を有する。

【0039】
本発明のコポリマーは、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。また、前記一般式[I]中のR1の一部に、分枝鎖を持つ構造の基を採用してグラフトコポリマーとしてもよい。

【0040】
本発明のコポリマーは、pH4~7の範囲に含まれる範囲内でpHに応じて電荷が変化する。より具体的には、中性付近では前記アニオン性基が電離しているために分子全体としては電荷がないか小さいが、pHが低下すると前記アニオン性基の電離が抑制され、一方、前記カチオン性基の電荷は変化しないので、分子全体としては、正電荷を帯びるようになる。ここで、「pH4~7の範囲に含まれる範囲内」は、pH4~7の全域でなくてもよく(全域であってもよいが)、pH4~7の範囲にそっくり含まれる任意の範囲内で、pHに応じて電荷が変化することを意味する。例えば、下記実施例に具体的に記載されるように、下記実施例で合成した好ましいコポリマーは、pHが約4.5~6.5の範囲内でpHに応じて電荷が変化するが、4.5~6.5の範囲は、4~7の範囲にそっくり含まれるので、「pH4~7の範囲に含まれる範囲内」に該当する。

【0041】
本発明のコポリマーは、上記したカチオン性基、アニオン性基又は無電荷有機基をそれぞれ含む、上記したビニル系モノマーを付加重合することにより合成することができる。ビニル系モノマーとしては、上記のとおり、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー又はビニルアミド系モノマーを好ましく用いることができ、これらのモノマーは、以下の構造を有する。

【0042】
【化11】
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【0043】
これらの式中、Rは、上記したカチオン性基、アニオン性基又は無電荷有機基の、前記ビニル系モノマー残基以外の部分である。

【0044】
これらの式中、各Rは、ビニル系モノマー残基であるカルボキシル基、アミド基、エステル基等の官能基に結合させる、有機合成化学の常識に従って容易にビニル系モノマーに結合させることができ、それらの方法の例は下記実施例に具体的に記載されている。また、付加重合もビニル系モノマーを付加重合する常法により行うことができ、下記実施例に具体的に記載されている。

【0045】
本発明のコポリマーは、限定されるものではないが、例えば、がん細胞を標的とするDDS用担体として利用することができる。本発明のコポリマーは、pH中性域では全体として電荷をほとんど又は全く持たないので、体内では強力な水和膜に覆われてタンパク質等による非特異吸着が防止され、pHが正常組織よりも低いがん組織近傍では、低いpHのためにコポリマーが正電荷を獲得する。一方、がん細胞は負の電荷を帯びているので、正電荷を獲得したコポリマーががん細胞に特異的に結合することになる。本発明のコポリマーを、DDS用担体として用いる場合、例えば、コポリマーの主鎖の一端の官能基に抗がん剤を結合して抗がん剤コンジュゲートを形成し、このコンジュゲートをがん患者に投与することが考えられる。投与量や投与経路は、結合する抗がん剤の投与量及び投与経路を踏襲することができる。

【0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

【0047】
実施例1 pH応答性コポリマーの合成
以下の合成スキームにしたがって、本発明のpH応答性コポリマーを合成した。

【0048】
【化12】
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【0049】
1. 化合物2の合成

【0050】
【化13】
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【0051】
100 mL二口ナスにN,N-ジメチル-4-アミノピリジン (470.4 mg, 3.85 mmol, 0.25 eq.)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物 (2.42 g, 15.5 mmol, 1.0 eq)を入れ、30分間真空を引いた。その後、テトラヒドロフラン(THF) 10 mL、化合物1 (1.87 mL, 15.4 mmol, 1.0 eq.)、トリエチルアミン (2.2 mL, 15.4 mmol, 1.0 eq.)を加え、室温で24時間撹拌させた。

【0052】
反応溶液をエバポレーションした後に、ジクロロメタン30 mLに溶解後、0.1 M HClで3回洗浄し、洗浄した有機層を飽和NaClで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的化合物 2 (3.01 g, 64%)をオイル状液体として得た。

【0053】
化合物2: Rf = 3.0 (silica gel, 酢酸エチル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
:δ = 6.09 (d, 1H, J = 0.8 Hz), 5.56 (t, 1H, J = 1.6 Hz), 4.30 (br, 4H), 2.82 (br, 2H), 1.96 (br, 2H), 1.90 (s, 3H), 1.74 (br, 2H), 1.50 (br, 4H)

【0054】
2. 化合物3の合成

【0055】
【化14】
JP2020143183A_000016t.gif

【0056】
100 mL二口ナスにN,N-ジメチル-4-アミノピリジン (476.1 mg, 3.85 mmol, 0.25 eq.)、3-メチルグルタル酸無水物 (1.97 g, 15.5 mmol, 1.0 eq)を入れ、30分間真空を引いた。その後、THF 10 mL、化合物1 (1.87 mL, 15.4 mmol, 1.0 eq.)、トリエチルアミン (2.2 mL, 15.4 mmol, 1.0 eq.)を加え、室温で23時間撹拌させた。

【0057】
反応溶液をエバポレーションした後に、ジクロロメタン30 mLに溶解後、0.1 M HClで3回洗浄し、洗浄した有機層を飽和NaClで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的化合物3 (3.36 g, 85%)をオイル状液体として得た。

【0058】
化合物3: Rf = 3.0 (silica gel, 酢酸エチル)
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
:δ = 6.08 (d, 1H, J = 0.8 Hz), 5.55 (t, 1H, J = 1.6 Hz), 4.30 (br, 4H), 2.40 (br, 2H), 2.26 (br, 2H), 1.89 (s, 3H), 1.04 (s, 3H)

【0059】
3. コポリマーAの合成

【0060】
【化15】
JP2020143183A_000017t.gif

【0061】
30 mL二口ナスに、2-(メタクリロイロキシ)エチルスクシネート (1160.2 mg, 5.04 mmol, 50 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (1086.1 mg, 5.00 mmol, 50 eq.)を加えた後に、化合物4 (56.0 mg, 0.200 mmol, 1.0 eq.)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) (4.0 mg, 0.0243 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (101.2 mg, 1.12 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール6.0 mLと超純水1.5 mLにより溶解させた。

【0062】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で19時間反応させた。

【0063】
反応後、反応液を約2 mLのメタノールに溶解させ、氷浴につけた500 mLのアセトンに滴下することで、再沈殿を行った。浮遊したピンク色の固体をろ過によって取り出し、シャーレに移して真空を引き、目的化合物 (1.85 g)をピンク色固体として得た。

【0064】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37 (br, 2H), 4.29 (br, 2H), 4.14 (br, 2H), 3.68 (br, 2H), 3.14 (br, 9H), 2.60 (br, 4H)

【0065】
4. コポリマーCの合成

【0066】
【化16】
JP2020143183A_000018t.gif

【0067】
30 mL二口ナスに、化合物2 (1002.1 mg, 3.52 mmol, 25 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (762.8 mg, 3.50 mmol, 25 eq.)を加えた後に、化合物4 (39.1 mg, 0.140 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (2.5 mg, 0.0152 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (63.0 mg, 0.700 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール4.2 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0068】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で21時間反応させた。

【0069】
反応後、反応液を約3 mLのメタノールに溶解させ、氷浴につけた500 mLのアセトンに滴下することで、再沈殿を行った。浮遊したピンク色の固体をろ過によって取り出し、シャーレに移して真空を引き、目的化合物 (1.33 g)をピンク色固体として得た。

【0070】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.34 (br, 4H), 4.15 (br, 2H), 3.98 (br, 1H), 3.70 (br, 2H), 3.13 (br, 9H), 2.61 (br, 4H)

【0071】
5. コポリマーIAの合成

【0072】
【化17】
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【0073】
30 mL二口ナスに、2-(メタクリロイロキ)エチルスクシネート (926.0 mg, 4.02 mmol, 20 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (869.0 mg, 4.00 mmol, 20 eq.)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート (270.4 mg, 2.07 mmol, 10 eq)を加えた後に、化合物4 (55.5 mg, 0.199 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (3.7 mg, 0.0225 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (91.1 mg, 1.01 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール6.0 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0074】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で20時間反応させた。

【0075】
反応後、反応液を約2 mLのmethanolに溶解させ、氷浴につけた500 mLのアセトンに滴下することで、再沈殿を行った。浮遊したピンク色の固体をろ過によって取り出し、シャーレに移して真空を引き、目的化合物 (1.86 g)をピンク色固体として得た。

【0076】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37 (br, 2H), 4.29 (br, 2H), 4.14 (br, 2H), 3.68 (br, 2H), 3.14 (br, 9H), 2.60 (br, 4H)

【0077】
6. コポリマーICの合成

【0078】
【化18】
JP2020143183A_000020t.gif

【0079】
30 mL二口ナスに、化合物2 (683.4 mg, 2.41 mmol, 20 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (413.4 mg, 2.40 mmol, 20 eq.)、2-ヒドロキシメチルメタクリレート (164.1 mg, 1.26 mmol, 10 eq)を加えた後に、化合物4 (33.0 mg, 1.16 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (2.5 mg, 0.0152 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (74.1 mg, 0.82 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール4.0 mLと超純水1.0 mLにより溶解させた。

【0080】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で20時間反応させた。

【0081】
反応後、反応液を約1 mLのメタノールに溶解させ、氷浴につけた500 mLのアセトンに滴下することで、再沈殿を行った。浮遊したピンク色の固体をろ過によって取り出し、シャーレに移して真空を引き、目的化合物 (0.92 g)をピンク色固体として得た。

【0082】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37 (br, 2H), 4.29 (br, 2H), 4.14 (br, 2H), 3.68 (br, 2H), 3.14 (br, 9H), 2.60 (br, 4H)

【0083】
7.コポリマーIIAの合成

【0084】
【化19】
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【0085】
30 mL二口ナスに、2-(メタクリロイロキシ)エチルスクシネート (922.8 mg, 4.01 mmol, 20 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (689.0 mg, 4.00 mmol, 20 eq.)、2-エトキシメチルメタクリレート (318.4 mg, 2.01 mmol, 10 eq)を加えた後に、化合物4 (55.5 mg, 0.190 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (3.8 mg, 0.0231 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (84.1 mg, 0.940 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール6.0 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0086】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で22時間反応させた。

【0087】
反応液をメタノールとRC/3.5 kDの透析膜を用いて透析を行った後、透析膜内の溶液をエバポレーション、真空を引くことで、目的化合物 (1.32 g)をピンク色固体として得た。

【0088】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37 (br, 2H), 4.29 (br, 2H), 4.14 (br, 2H), 3.68 (br, 2H), 3.48 (br, 1H), 3.13 (br, 9H), 2.60 (br, 4H)

【0089】
8. コポリマーIIBの合成

【0090】
【化20】
JP2020143183A_000022t.gif

【0091】
30 mL二口ナスに、化合物3 (633.0 mg, 2.45 mmol, 20 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (413.4 mg, 2.40 mmol, 20 eq.)、2-エトキシエチルメタクリレート (197.0 mg, 1.25 mmol, 10 eq)を加えた後に、化合物4 (33.0 mg, 0.120 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (2.4 mg, 0.0146 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (74.1 mg, 0.867 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール4.0 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0092】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で21時間反応させた。

【0093】
その後、反応液をメタノールとRC/3.5 kDの透析膜を用いて透析を行った後、透析膜内の溶液をエバポレーション、真空を引くことで、目的化合物 (0.51 g)をピンク色固体として得た。

【0094】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37-4.15 (br, 6H), 3.68 (br, 2H), 3.48 (br, 1H), 3.14 (br, 9H), 2.33 (br, 4H)

【0095】
9. コポリマーIICの合成 (m:n:o = 1:1:0.4)
30 mL二口ナスに、化合物2 (728.8 mg, 2.56 mmol, 20 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (413.4 mg, 2.40 mmol, 20 eq.)、2-エトキシエチルメタクリレート (205.0 mg, 1.29 mmol, 10 eq)を加えた後に、化合物4 (36.0 mg, 0.129 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (2.2 mg, 0.0134 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (80.1 mg, 0.889 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール4.0 mLと超純水1.0 mLにより溶解させた。

【0096】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で20時間反応させた。

【0097】
その後、反応液をメタノールとRC/3.5 kDの透析膜を用いて透析を行った後、透析膜内の溶液をエバポレーション、真空を引くことで、目的化合物 (1.11 g)をピンク色固体として得た。

【0098】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.38-4.06 (br, 6H), 3.68 (br, 2H), 3.47 (br, 1H), 3.13 (br, 9H), 2.85 (br, 1H)

【0099】
10. コポリマーIICの合成 (m:n:o = 0.5:0.5:1)

【0100】
【化21】
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【0101】
30 mL二口ナスに、化合物2 (719.7 mg, 2.58 mmol, 12.5 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (430.6 mg, 2.50 mmol, 12.5 eq.)、2-エトキシエチルメタクリレート (797.8 mg, 5.04 mmol, 25 eq)を加えた後に、化合物4 (55.7 mg, 0.200 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (3.5 mg, 0.0213 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (91.3 mg, 1.01 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール6.0 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0102】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で24時間反応させた。

【0103】
その後、反応液をメタノールとRC/3.5 kDの透析膜を用いて透析を行った後、透析膜内の溶液をエバポレーション、真空を引くことで、目的化合物 (1.20 g)をピンク色固体として得た。

【0104】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.38-4.07 (br, 6H), 3.64 (br, 2H), 3.49 (br, 8H), 3.13 (br, 9H), 2.88 (br, 2H)

【0105】
11. コポリマーIIICの合成 (m:n:o = 0.5:0.5:1)

【0106】
【化22】
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【0107】
30 mL二口ナスに、化合物2 (719.0 mg, 2.53 mmol, 12.5 eq.)、 [2-(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (430.6 mg, 2.50 mmol, 12.5 eq.)、2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチルメタクリレート (1161.8 mg, 5.00 mmol, 25 eq)を加えた後に、化合物4 (55.5 mg, 0.199 mmol, 1.0 eq.)、AIBN (3.5 mg, 0.0213 mmol, 0.1 eq.)、1,3,5-トリオキサン (99.9 mg, 1.11 mmol, 10 eq.)を加えた後に、メタノール6.0 mLと超純水1.2 mLにより溶解させた。

【0108】
その後、Arガスにより30分バブリングを行った後、80℃で24時間反応させた。

【0109】
その後、反応液をメタノールとRC/3.5 kDの透析膜を用いて透析を行った後、透析膜内の溶液をエバポレーション、真空を引くことで、目的化合物 (1.72 g)をピンク色固体として得た。

【0110】
1H NMR (500 MHz, D2O)
:δ =4.37-4.06 (br, 8H), 3.66 (br, 4H), 3.57 (br, 12H), 3.50 (br, 4H), 3.13 (br, 9H), 2.86 (br, 2H)

【0111】
実施例2 合成したコポリマーの物性
合成した各コポリマーの物性を下記表1に示す.

【0112】
【表1】
JP2020143183A_000025t.gif

【0113】
実施例3 pKaの測定
各コポリマーを超純水に溶解し、1M塩酸を添加してpHを下げた後、pHを測定しながら0.1M NaOHを徐々に加えて滴定を行い、pKaを算出した。結果を下記表2に示す。

【0114】
【表2】
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【0115】
表2に示されるように、pKaは、アニオン性基の構造並びに無電荷有機基の有無及び構造に応じて変化することが明らかになった。アニオン性基の疎水性が大きくなるほどpKaが増大して7に近づいた。また、無電荷有機基が存在する方がpKaが高く、その疎水性が高いほどpKaが高くなった。

【0116】
実施例4 ゼータ電位の測定
合成したコポリマーの電荷がpHに応じて変化するか否かを調べるため、pH4.0, 4.5, 5.0, 5.5, 6,0, 6.5, 7.4の範囲でそれぞれゼータ電位の測定を行った。これは次のようにして行った。

【0117】
まず、それぞれのポリマーA、C、IIC’、IIICを1.0 mgずつ量りとり、それぞれのpHに調整された5 mM リン酸バッファー (pH 5.5-7.4) または、クエン酸リン酸バッファー (pH 4.0-5.0)を5.0 mL加え、溶解させることで、サンプルの調製を行い、ゼータ電位を測定した。結果を図1に示す。

【0118】
図1に示されるように、各コポリマーは、pHが下がるとゼータ電位が増大し、正電荷を持つようになることが確認された。コポリマーA及びコポリマーBは、pH4~5.5の間でpHに依存して電荷が変化し、コポリマーIIC'とコポリマーIIICは、pH4.5~6.5の間でpHに依存して電荷が変化した。

【0119】
実施例5 ヘパリンとの結合試験
ヘパリンは、細胞膜に存在し、マイナスチャージを持つ高分子である。ヘパリンとの結合性を調べることにより、細胞膜への結合性を調べることができる。

【0120】
超純水を用いて、それぞれのコポリマーA、C、IIC’、IIICのストック溶液(20.0 mg/mL)とヘパリンのストック溶液を作製した(2.0 mg/mL)。その後、それぞれのpHに調整された5 mM リン酸バッファー (pH 5.5-7.4) または、クエン酸リン酸バッファー (pH 4.0-5.0)を1.8 mLに対し、あらかじめ用意したポリマーとヘパリンのストックソリューションを0.2 mLずつ加えることで、サンプルの調製を行った。次いで、コポリマーA、コポリマーC、コポリマーIIC’、コポリマーIIICとヘパリンの混合液を用いて、pH 4.0, 4.5, 5.0, 5.5, 6,0, 6.5, 7.4の範囲でそれぞれ動的光散乱(DLS)の測定を行った。結果を図2に示す。

【0121】
図2に示されるように、各コポリマーは、pH6.5ではヘパリンと結合しないが、より低いpH領域ではヘパリンと結合することが確認された。

【0122】
実施例6 MTTアッセイ
合成した各コポリマーの主鎖の一端(カルボキシル基がない側)を、常法によりオレゴングリーンで標識し、MTTアッセイを行った。

【0123】
A549細胞を24ウェルプレート(Iwaki)に播種し(1×104 cells、500 μL/well)、37 ℃の5% CO2インキュベーターで10% FBSを補充したNEAA、及び抗菌剤(Penicillin)を含むMEM中で21時間培養した。

【0124】
培養細胞に、各ポリマーをMEMで希釈したものを添加し、37 ℃の5% CO2インキュベーターで4時間曝露した。インキュベーション後、A549細胞をDPBSで2回washした。さらに、10% FBSを補充したNEAA及び抗菌剤を含むMEM 500μLを加えてさらに46時間インキュベートした。

【0125】
その後、MTT (5 mg/mL in DPBS)を培地で10倍希釈し、500μLずつウェルプレートに加えた。さらに2時間インキュベートした後、500μLの抽出緩衝液(酸性化イソプロパノール)をウェルプレートに添加し、プレートを15分間振盪した。

【0126】
溶液の吸光度を、TECAN Infinite M1000プレートリーダーによって570 nmおよび630 nmで測定し、ブランクで得られた100%吸光度に基づいて細胞生存の相対百分率を計算した。結果を図3に示す。なお、図3中、3種類のコポリマーのそれぞれについてのヒストグラムは、左から右に向かって、低濃度から高濃度に向かう濃度の順に並べてある。

【0127】
図3に示されるように、各コポリマーの細胞毒性はほとんど認められなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2