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明細書 :VNARのリフォールディング方法およびVNARの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-152644 (P2020-152644A)
公開日 令和2年9月24日(2020.9.24)
発明の名称または考案の名称 VNARのリフォールディング方法およびVNARの製造方法
国際特許分類 C07K  16/00        (2006.01)
C07K   1/14        (2006.01)
FI C07K 16/00 ZNA
C07K 1/14
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2019-049400 (P2019-049400)
出願日 平成31年3月18日(2019.3.18)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
発明者または考案者 【氏名】竹田 浩之
【氏名】澤崎 達也
【氏名】宮川 拓也
【氏名】田之倉 優
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
【識別番号】100194515、【弁理士】、【氏名又は名称】南野 研人
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA52
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA65
4H045FA67
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA05
要約 【課題】 リフォールディングの効率が改善され、収率が改善されたVNARのリフォールディング方法を提供する。
【解決手段】 本発明のVNARのリフォールディング方法は、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせるリフォールディング工程を含む。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせるリフォールディング工程を含む、VNARのリフォールディング方法。
【請求項2】
前記リフォールディング工程では、前記加圧後、圧力を維持し、
前記圧力の維持時間は、0分~50時間である、請求項1記載のリフォールディング方法。
【請求項3】
前記リフォールディング工程では、前記加圧、圧力の維持、および減圧を実施し、
前記減圧において、連続的に減圧する、請求項1または2記載のリフォールディング方法。
【請求項4】
前記リフォールディング工程の時間は、10分~52時間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
【請求項5】
前記加圧後の圧力は、10~500MPaである、請求項1から4のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
【請求項6】
大腸菌にVNARを発現させる発現工程と、
VNAR発現大腸菌からVNARを含む封入体を回収する回収工程とを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
【請求項7】
前記回収工程は、
前記VNAR発現大腸菌を破砕し、破砕液を調製する破砕工程と、
前記破砕液を遠心し、前記封入体を含む沈殿物を回収する沈殿物回収工程とを含む、請求項6記載のリフォールディング方法。
【請求項8】
前記沈殿物に、液体を積層し、封入体調製液を調製する調製工程を含み、
前記リフォールディング工程では、前記封入体調製液について、加圧することにより、VNARをリフォールディングさせる、請求項7記載のリフォールディング方法。
【請求項9】
前記沈殿物を洗浄する洗浄工程を含む、請求項7または8記載のリフォールディング方法。
【請求項10】
前記液体は、水である、請求項1から9のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
【請求項11】
前記リフォールディング工程を、圧力容器内で実施する、請求項1から10のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
【請求項12】
前記圧力容器の容積は、5L未満である、請求項11記載のリフォールディング方法。
【請求項13】
サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体からリフォールディングされたVNARを製造する製造工程を含み、
前記製造工程は、請求項1から12のいずれか一項に記載のVNARのリフォールディング方法により実施される、VNARの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、VNARのリフォールディング方法およびVNARの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二重特異性抗体、三重特異性抗体、キメラ抗原受容体等の抗体を用いたタンパク質の構造の複雑化に伴い、製造技術も高度化している。ただし、これらの複雑な構造のタンパク質は、製造に動物細胞を使用する必要があり、コストが極めて高いという問題がある。そこで、より分子量が小さく、抗体と同様に、抗原に対する結合活性を有するタンパク質が求められている。
【0003】
分子量が小さく、抗原に結合活性を有するタンパク質として、サメ抗体(IgNAR)が知られている。さらに、サメ抗体の可変部は、一本鎖からなり、この部分を切り出した人工抗体(VNAR、variable new antigen receptor)は、抗原の結合性を有し、かつより分子量が小さい(特許文献1)。このため、VNARは、大腸菌でも生産が可能である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2003/014161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VNARを大腸菌に発現させると、不溶性かつ不活性の凝集体(封入体)を形成する。このため、前記発現後、前記封入体を形成するVNARを、正常な折りたたみ構造のVNARにリフォールディングさせることが行なわれている。前記リフォールディングでは、塩酸グアニジン、尿素等の変性剤を利用し、アンフォールディングし、その後再度折りたたみを行なうことで、正常な折りたたみ構造のVNARを取得する。しかしながら、変性剤を用いたリフォールディングは、効率が悪く、リフォールディングされたVNARの収率も悪い。
【0006】
そこで、本発明は、リフォールディングの効率が改善し、収率が改善されたVNARのリフォールディング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のVNARのリフォールディング方法(以下、「リフォールディング方法」ともいう)は、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせるリフォールディング工程を含む。
【0008】
本発明のVNARの製造方法(以下、「製造方法」ともいう)は、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体からリフォールディングされたVNARを製造する製造工程を含み、
前記製造工程は、前記本発明のVNARのリフォールディング方法により実施される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、VNARのリフォールディングの効率が改善し、収率が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1におけるSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【図2】図2は、実施例2におけるアルファスクリーンの結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例3におけるSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【図4】図4は、実施例4におけるclone 11、clone 25およびclone 39の結果を示すグラフおよび写真である。
【図5】図5は、実施例5におけるSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【図6】図6は、実施例5におけるイオン交換クロマトグラフの結果を示すグラフおよびその一部の画分のSDS-PAGEの結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<リフォールディング方法>
本発明のVNARのリフォールディング方法は、前述のように、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせるリフォールディング工程を含む。本発明のリフォールディング方法は、VNARを含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。

【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、VNARを含む封入体に対して、液体の存在下で加圧することにより、VNARのリフォールディングが生じ、正常なフォールディングのVNARが発生することを見出し、本発明を確立するに至った。本発明において、VNARのリフォールディングは以下のメカニズムにより生じると推定される。なお、本発明は以下の推定メカニズムにより何ら制限されない。前記封入体内においてVNARはタンパク質間の疎水結合、ファンデルワールス力等により凝集している。このような封入体に対して、液体存在下で圧力を加えると、ファンデルワールス力が減少し、疎水結合が弱まることにより、VNAR間の相互作用が弱まり、凝集がほぐれると推定される。このようなメカニズムは、封入体内のVNARの全体に対して生じるため、VNARのリフォールディングの効率が改善し、その結果、収率が改善したと推定される。

【0013】
本発明において、「リフォールディングの効率」は、例えば、凝集しているVNARの構造が、正常なVNARに巻き戻される確率を意味する。前記効率は、例えば、凝集体内のタンパク質量に対するリフォールディング工程後の可溶性のVNARタンパク質量として間接的に評価できる。

【0014】
本発明において、「収率」は、例えば、凝集しているVNARのうち、正常なVNARに巻き戻された割合を意味する。前記収率は、例えば、凝集体内のタンパク質量に対するリフォールディング工程後の可溶性のVNARタンパク質量として評価できる。

【0015】
本発明において、「リフォールディング」は、例えば、凝集したタンパク質をアンフォールディングし、正常な構造にフォールディングさせることを意味する。本発明において、VNARのリフォールディングは、例えば、標的抗原に対する結合性が低下した、または無いVNARを、標的抗原に対する結合性を回復させる、すなわち、リフォールディング前のVNARと比較して、標的抗原に対する結合性を向上させることを意味する。

【0016】
本発明において、「VNAR」は、例えば、サメIgNARまたは新規抗原受容体(New Antigen Receptor)の可変ドメイン断片を意味する。前記VNARは、例えば、N末端からC末端にかけて、フレームワーク領域(FR)1、相補性決定領域(CDR)1、FR2、超可変領域(HV)2、FR3a、HV4、FR3b、CDR3、FR4をこの順序で含む。本発明において、リフォールディングに供するVNARの標的抗原は、特に制限されず、任意の抗原とできる。

【0017】
前記リフォールディング工程は、前述のように、VNARを含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせる。前記リフォールディング工程において、前記封入体および前記液体に加える圧力は、一定でもよいし、変動してもよい。また、前記リフォールディング工程では、一定の速度で圧力が上昇するように加圧してもよいし、段階的に圧力が上昇するように加圧してもよい。前記封入体および前記液体に加える圧力は、例えば、前記リフォールディング工程を実施する環境の圧力(常圧)より高ければよく、その上限は、特に制限されず、具体例として、常圧を超え、500MPa以下、10~500MPaであり、好ましくは、100~300MPaである。前記リフォールディング工程における温度は、例えば、0~50℃、4~30℃があげられる。前記リフォールディング工程の時間は、例えば、0~52時間、1分~52時間、10分~52時間、1~52時間、10~60分、10~30分等があげられる。本発明のリフォールディング方法によれば、例えば、10分程度(例えば、5~15分)と短時間で、VNARを含む封入体について、VNARをリフォールディングさせることができる。

【0018】
前記リフォールディング工程は、圧力容器内で実施してもよい。この場合、前記リフォールディング工程では、前記封入体および前記液体を前記圧力容器に導入後、前記圧力容器内の圧力を上昇させることにより実施できる。前記圧力容器の容積は、特に制限されず、例えば、前記封入体および前記液体の体積に応じて適宜決定できる。前記圧力容器の容積は、例えば、1~5L、0.1~0.5Lである。前記圧力容器の容積は、例えば、5L未満である。前記圧力容器は、例えば、密閉が可能である。

【0019】
前記リフォールディング工程において、前記封入体と前記液体とは、接触状態でもよいし、非接触状態でもよいが、前者が好ましい。前記液体は、例えば、水性媒体、非水性媒体があげられ、好ましくは、水性媒体である。前記水性媒体は、例えば、水、生理的食塩水、緩衝液等があげられる、リフォールディング後のVNARの均質性が向上することから、好ましくは、水である。前記水は、例えば、蒸留水、超純水等があげられる。前記水性溶媒は、さらに、塩;EDTA等のキレーター;アルギニン等のアミノ酸;等を含んでもよい。前記液体は、例えば、尿素、塩化グアニジン等の変性剤を実質的に含まないことが好ましい。前記「実質的に含まない」は、例えば、前記封入体におけるVNARが変性する量を含まない、または完全に含まないことを意味する。前記液体のpHは、特に制限されず、例えば、酸性、中性またはアルカリ性であり、リフォールディングされたVNARの収率が向上することから、好ましくは、アルカリ性(pH7より高い)である。

【0020】
前記リフォールディング工程では、例えば、前記加圧後、所望の圧力において、前記圧力を維持してもよい。前記所望の圧力、すなわち、加圧後の圧力は、例えば、前記リフォールディング工程を実施する環境の圧力(常圧)より高ければよく、その上限は、特に制限されない。前記加圧後の圧力は、例えば、10~500MPa、好ましくは、100~300MPaである。前記圧力の維持時間は、例えば、0分~50時間、1分~50時間、1~20時間、1~30分、10分~20時間であり、好ましくは、1~20時間、1~30分、10分~20時間である。

【0021】
前記リフォールディング工程では、前記加圧後、または前記圧力の維持後、減圧してもよい。この場合、前記リフォールディング工程では、前記加圧および減圧を実施してもよいし、前記加圧、圧力の維持および減圧を実施してもよい。前記リフォールディング工程では、一定の速度で圧力が減少するように減圧してもよいし、段階的に圧力が減少するように減圧してもよいが、前者が好ましい。

【0022】
本発明のリフォールディング方法は、例えば、前記リフォールディング工程後に、リフォールディングされたVNARを回収してもよい。前記VNARの回収は、例えば、前記リフォールディング工程後の処理液を遠心し、上清を回収することにより実施してもよい。また、前記VNARの回収は、例えば、フィルター等のろ材をろ過させ、得られたろ液を回収することにより実施してもよい。

【0023】
本発明のリフォールディング方法は、前記リフォールディング工程に先立ち、前記封入体を回収する回収工程を含んでもよい。前記回収工程は、例えば、前記封入体を含む宿主細胞から、前記封入体を回収することにより実施できる。前記宿主細胞は、特に制限されず、例えば、原核細胞でもよいし、真核細胞でもよい。前記宿主細胞は、例えば、大腸菌、酵母等の微生物;動物細胞、昆虫細胞、または植物細胞;これらの培養細胞等の非ヒト宿主、単離したヒト細胞またはその培養細胞等があげられ、好ましくは、大腸菌である。

【0024】
具体的には、まず、前記回収工程では、例えば、前記封入体を含む宿主細胞について、ホモジェナイザー、フレンチプレス等の機械的処理;超音波処理;等により前記宿主細胞を破砕し、破砕液を調製する(破砕工程)。前記宿主細胞を破砕する条件は、例えば、前記宿主細胞の種類及び前記破砕方法に応じて、適宜設定できる。つぎに、前記回収工程では、得られた破砕液を遠心し、前記封入体を含む沈殿物を回収する(沈殿物回収工程)。前記沈殿物回収工程において、前記遠心の条件は、例えば、前記封入体の大きさ、電荷等に応じて、適宜決定でき、具体例として、1000~100000×g、10000~40000×gがあげられる。

【0025】
本発明のリフォールディング方法は、例えば、リフォールディング工程後のVNARへの夾雑物の持ち込みを抑制できることから、前記沈殿物を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。前記洗浄工程は、例えば、前記沈殿物と洗浄液とを接触させることにより実施できる。前記洗浄工程では、前記洗浄液に前記沈殿物を分散(懸濁)させることが好ましい。これにより、本発明のリフォールディング方法は、例えば、フォールディング工程後のVNARへの夾雑物の持ち込みをより抑制できる。前記洗浄工程では、前記沈殿物と前記洗浄液との接触後、これらの混合物を遠心し、前記封入体を含む沈殿物を回収してもよい。前記遠心の条件は、例えば、前記沈殿物回収工程の説明における遠心の条件を援用できる。

【0026】
本発明のリフォールディング方法は、前記沈殿物回収工程で得られた沈殿物に対して、前記リフォールディング工程を実施してもよい。この場合、本発明のリフォールディング方法では、前記沈殿物回収工程後、前記沈殿物を液体と接触させ、封入体調製液を調製する(調製工程)。前記封入体調製液において、前記封入体は、その全部または一部が液体に分散されてもよいし、その全部または一部が分散されなくてもよい。前記封入体が液体に分散されている場合、前記封入体調製液は、例えば、封入体分散液または封入体混合液ということもできる。前記封入体が前記液体に分散されていない場合、前記封入体調製液は、例えば、封入体分離液または封入体積層液ということもできる。前記封入体分離液は、例えば、前記沈殿物に前記液体を積層することにより調製できる。この場合、前記沈殿物と前記液体の層とは、完全に分離してもよいし、その境界付近において両者が混合してもよい。前記調製工程において、前記液体は、例えば、前記リフォールディング工程における液体と同じでもよいし、異なってもよい。

【0027】
本発明のリフォールディング方法において、前記洗浄工程と、前記調製工程とは、組合せてもよい。この場合、本発明のリフォールディング方法は、前記洗浄工程後に前記調製工程を実施することが好ましい。

【0028】
前記封入体を含む宿主細胞は、例えば、前記宿主細胞にVNARを発現させることにより調製できる。このため、本発明のリフォールディング方法は、例えば、前記回収工程に先立ち、前記宿主細胞にVNARを発現させる発現工程を含んでもよい。前記発現工程は、例えば、前記宿主細胞に、VNARをコードする核酸を導入することにより実施できる。前記宿主細胞への核酸の導入方法は、特に制限されず、前記宿主細胞の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、前記核酸の導入方法は、例えば、ヒートショック法;リポソーム、カチオニックリピッド等の核酸導入試薬を用いる方法;レトロウイルス、レンチウイルス等のウイルスを用いる方法等があげられる。

【0029】
前記発現工程において、前記核酸は、VNARをコードする核酸を含む発現ベクターでもよい。前記発現ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。前記発現ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターがあげられる。前記導入方法としてヒートショック法により宿主細胞の形質転換を行う場合、前記ベクターは、例えば、バイナリーベクター等があげられる。前記発現ベクターは、例えば、pETDuet-1ベクター、pQE-80LベクターおよびpUCP26Kmベクター等があげられる。大腸菌等の細菌に形質転換を行う場合、前記発現ベクターは、pETDuet-1ベクター(ノバジェン社)、例えば、pQE-80Lベクター(QIAGEN社)等があげられる。

【0030】
前記発現ベクターは、例えば、前記VNARをコードするポリヌクレオチドの発現および/または前記VNARをコードするポリヌクレオチドがコードするVNAR(タンパク質)の発現を調節する、調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル配列、複製起点配列(ori)等があげられる。前記発現ベクターにおいて、前記調節配列の配置は特に制限されない。前記発現ベクターにおいて、前記調節配列は、例えば、前記VNARのポリヌクレオチドの発現およびこれがコードするVNARの発現を、機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて配置できる。前記調節配列は、例えば、前記発現ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記発現ベクターに、さらに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記発現ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置き換えてもよい。

【0031】
<VNARの製造方法>
本発明のリフォールディングされたVNARの製造方法は、前述のように、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体からリフォールディングされたVNARを製造する製造工程を含み、前記製造工程は、前記本発明のVNARのリフォールディング方法により実施される。本発明の製造方法は、前記製造工程が、前記本発明のVNARのリフォールディング方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法によれば、収率よくVNARを製造できる。本発明の製造方法は、前記本発明のリフォールディング方法の説明を援用できる。

【0032】
<VNAR>
本発明のサメ由来一本鎖抗体(VNAR)は、前記本発明のリフォールディングされたVNARの製造方法により得られる。本発明のVNARは、前記本発明のリフォールディングされたVNARの製造方法により得られることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のVNARは、例えば、抗体と同様に使用できる。本発明のVNARは、前記本発明のリフォールディング方法および製造方法の説明を援用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。なお、特に示さない限り、市販の試薬およびキット等は、そのプロトコルに従い使用した。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
本発明のリフォールディング方法により、サメ由来一本鎖抗体(VNAR)をリフォールディングできることを確認した。
【実施例】
【0035】
(1)形質転換体の調製
サメ(エイラクブカ)に、蛍光タンパク質(Venus)を免疫後、サメの血液を回収し、RT-PCRによりIgNAR可変領域のcDNAを得た。増幅した可変領域をファージミドベクターと連結し、VNAR提示ファージライブラリーを構築した。Venusをコートした試験管を用いて4ラウンドのバイオパンニングを実施後、複数のコロニーをシークエンス解析により解読し、配列の異なる3種類の抗Venus VNAR(clone 11、clone 25、clone 39)を獲得した。VNAR clone 11および clone 39をコードする塩基配列を、検出用のタグ配列(-GS linker-AGIA-His)とともにpET-30a(+)ベクターにクローニングした。下記配列番号1~4において、タグ配列およびそれをコードする塩基配列は下線で示している。そして、前記ベクターを、ヒートショック法により、大腸菌(BL21(DE3))に導入し、各VNARを発現する形質転換体を得た。
【実施例】
【0036】
VNAR clone 11-AGIA-Hisのアミノ酸配列(配列番号1)
MAAYVDQTPRMATKETGESLTINCVLRDTSYGLCATSWFRKNPGSTDWERITIGGRYVESVNKGSNSFSLQIKDLTVEDSVTFYCKARDGVQGILGVCDTAATGYHDGAGTVLTVNSGLTPPVISLFSETDELRANGFTSAGSGSGSGSGSGSEEAAGIARPLHHHHHH
【実施例】
【0037】
VNAR clone 11-AGIA-Hisをコードする塩基配列(配列番号2、終止コドン含)
5'-ATGGCTGCATATGTCGATCAAACACCACGAATGGCAACTAAAGAAACAGGCGAATCTCTGACAATCAACTGCGTCCTAAGGGATACTAGCTATGGCTTGTGCGCAACAAGCTGGTTTCGGAAAAATCCTGGTTCAACAGATTGGGAACGCATCACCATTGGCGGCCGATATGTTGAATCAGTCAACAAGGGAAGCAACTCGTTTTCTCTGCAAATCAAGGACCTAACAGTTGAAGACAGTGTCACATTTTACTGCAAAGCTCGAGATGGGGTACAGGGGATTCTGGGTGTGTGTGATACAGCAGCTACCGGCTACCATGATGGGGCTGGCACCGTGCTGACTGTGAATTCTGGACTGACTCCCCCAGTCATCAGTCTCTTCTCTGAAACTGATGAGTTGAGAGCAAACGGGTTCACTAGTGCAGGGTCCGGTTCTGGGTCTGGATCTGGCTCGGGCTCTGAAGAAGCAGCTGGTATTGCTCGCCCATTGCATCACCATCACCATCACTAG-3'
【実施例】
【0038】
VNAR clone 39-AGIA-Hisのアミノ酸配列(配列番号3)
MAAHVDQTPRMATKETGESLTINCVLRDTSCGLYATSWFRKNPGSTDWERITIGGRYVESVNKGSNSFSLQIKDLTVEDSVTFYCKARDARTPGSVGCSYRDRGYHDGAGTVLTVNSGLTPPVISLFSETDELRANGFTSAGSGSGSGSGSGSEEAAGIARPLHHHHHH
【実施例】
【0039】
VNAR clone 39-AGIA-Hisをコードする塩基配列(配列番号4、終止コドン含)
5'-ATGGCTGCACATGTCGATCAAACACCACGAATGGCAACTAAAGAAACAGGCGAATCTCTGACAATCAACTGCGTCCTAAGGGATACTAGCTGTGGCTTGTACGCAACAAGCTGGTTTCGGAAAAATCCTGGTTCAACAGATTGGGAACGCATCACCATTGGCGGCCGATATGTTGAATCAGTCAACAAGGGAAGCAACTCGTTTTCTCTGCAAATCAAGGACCTAACAGTTGAAGACAGTGTCACATTTTACTGCAAAGCTCGAGATGCCCGTACCCCGGGCAGTGTGGGATGCAGCTACAGGGATCGGGGCTACCATGATGGGGCTGGCACCGTGCTGACTGTGAATTCTGGACTGACTCCCCCAGTCATCAGTCTCTTCTCTGAAACTGATGAGTTGAGAGCAAACGGGTTCACTAGTGCAGGGTCCGGTTCTGGGTCTGGATCTGGCTCGGGCTCTGAAGAAGCAGCTGGTATTGCTCGCCCATTGCATCACCATCACCATCACTAG-3'
【実施例】
【0040】
(2)培養
前記形質転換体は、まず、LB培地において、37℃で5時間、OD600=約0.6(菌濃度≒8×10cells/mL)となるまで培養した。つぎに、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.5mmol/Lとなるように添加し、さらに、25℃で16時間培養した。得られた培養液を、4,000rpm、10分間、4℃で遠心分離し、集菌した。
【実施例】
【0041】
(3)封入体の回収
前記培養菌体1Lに対し、75mLのLysis buffer(20mmol/L Tris-HCl, pH 8.0, 300 mmol/L NaCl, protease inhibitor cocktail)を添加し、ソニケーションにより破砕した。破砕した菌体液を、40,000g、30分間、4℃で遠心分離し、沈殿した不溶性画分(封入体)を回収した。
【実施例】
【0042】
(4)封入体の洗浄
回収した前記封入体を、前記封入体1gあたり10mLのWash buffer A(20 mmol/L Tris-HCl, pH 8.0, 50 mmol/L NaCl, 0.5 mM EDTA, 125 mmol/L NDSB-201, 5% glycerol)で懸濁し、10,000g、30分間、4℃で遠心分離し、沈殿した封入体を回収した。回収した前記封入体を、前記封入体1gあたり10mLのWash buffer B(20 mmol/L Tris-HCl, pH 8.0, 50 mmol/L NaCl, 0.5 mmol/L EDTA, 5% glycerol)で懸濁し、10,000g、30分間、4℃で遠心分離し、沈殿した封入体を回収した。そして、回収した前記封入体を、前記封入体1gあたり10mLのMilliQ水に懸濁し、10,000g、30分間、4℃で遠心分離し、沈殿した封入体を回収し、洗浄封入体を得た。前記洗浄した封入体の一部をMilliQ水に懸濁し、BSAを標準タンパク質として、BCAアッセイ(Thermo Fisher Scientific社製)にて、タンパク質の濃度を測定した。その後、前記タンパク質濃度が、5mg/mLとなるようにMilliQ水で希釈し、封入体のサンプルを得た。
【実施例】
【0043】
(5)加圧処理
前記封入体のサンプルは、0.5mmol/Lのアルギニン添加群(+Arg)およびアルギニン非添加群(-Arg)に分けた。そして、前記封入体のサンプルを、前記タンパク質の終濃度が0.5mg/mLとなるように、pHを6、7、8、または9とした緩衝液にに懸濁した。pH6.0の緩衝液としては、50mmol/L MES、pH7.0の緩衝液としては、50mmol/L HEPES、pH8.0の緩衝液としては、50mmol/L Tris-HCl、pH9.0の緩衝液としては、50mmol/L CHESを用いた。各条件の封入体溶液を、密閉容器(Quick-Seal Centrifuge Tubes、BECKMAN COULTER社製)に封入後、加圧し、さらに、室温(約25℃、以下、同様。)、200MPa、16時間で維持した。そして、5分ごとに25MPaを減圧する段階的な減圧により、常圧(大気圧)まで減圧した。処理後の各溶液を、40,000g、30分間、4℃で遠心分離し、上清を回収した。以下、VNAR clone 11(tag)を含む封入体由来のサンプルをclone 11(tag)、VNAR clone 39(tag)を含む封入体由来のサンプルをclone 39(tag)という。各条件のclone 11(tag)およびclone 39(tag)を、SDS-PAGEに供し、バンドパターンを確認した。これらの結果を図1に示す。
【実施例】
【0044】
図1は、SDS-PAGEの結果を示す写真である。図1(A)および(B)は、それぞれ、clone 11(tag)およびclone 39(tag)の結果を示す。図1(A)および(B)において、各レーンは、左から、分子量マーカー(M)、未処理(NC)、アルギニン非添加群(-Arg)のpH6~9、アルギニン添加群(+Arg)のpH6~9の結果を示す。図1に示すように、いずれのクローンにおいても、アルギニンの有無、および処理時のpHに関わらず、本発明のリフォールディング方法により、シングルバンドが確認され、いずれの封入体からも、リフォールディングしたVNARが得られ、かつ得られたVNARの均質性が高いことが確認できた。なお、データは示していないが、前記実施例1(5)において、加圧5分、圧力の維持1分、および減圧5分で加圧処理した場合も同様の結果を得ている。
【実施例】
【0045】
[実施例2]
リフォールディングしたVNARの結合性を確認した。
【実施例】
【0046】
前記実施例1で得られたリフォールディング後のVNAR-AGIA-Hisを用い、アルファスクリーン法によりVenusへの結合性を確認した。具体的には、サンプルは、前記実施例1で得られた各VNAR clone 11(tag)またはclone 39(tag)を使用した。抗原試料は、ビオチン化Venus蛍光タンパク質(コムギ無細胞系で試験管内合成)を用いた。交差反応の確認用に、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、コムギ無細胞系で試験管内合成)を用いた。そして、下記参考文献1に記載の方法に従い、Alpha(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)Screen法により測定した。具体的には、まず、前記抗原試料1μLと、VNAR(0.5mg/mL)を1μLを、20μLの希釈液(100 mmol/L Tris-HCl, pH8.0、0.01% Tween20、1 mg/mL ウシ血清アルブミン)中で混和し、室温(25℃)で30分間静置し、反応液を調製した。その後、0.02μLの抗AGIAタグ抗体(1mg/mL)、AlphaScreen Protein A修飾アクセプタービーズ(PerkinElmer社製)0.08μLとAlphaScreenストレプトアビジン修飾ドナービーズ(PerkinElmer社製)0.08μLとを含む希釈液(100 mmol/L Tris-HCl, pH8.0、0.01% Tween20、1 mg/mL ウシ血清アルブミン)5μLを、前記反応液に添加し、さらに室温で60分静置した。そして、前記反応液中の抗原-抗体反応を、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer社製)を用いて検出した。
参考文献1:Yano, T., Takeda, H., Uematsu, A., Yamanaka, S., Nomura, S., Nemoto, K., et al. (2016). AGIA Tag System Based on a High Affinity Rabbit Monoclonal Antibody against Human Dopamine Receptor D1 for Protein Analysis. PLoS ONE, 11(6), e0156716.
【実施例】
【0047】
図2は、アルファスクリーンの結果を示すグラフである。図2において、縦軸は、化学蛍光発光(Chemical luminescence)を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。図2に示すように、いずれのVNARも、Venusには結合し、DHFRには結合しなかった。すなわち、封入体内のVNARが、本発明のリフォールディング方法により、リフォールディングしていることがわかった。また、加圧時にpHが中性または塩基性の場合、リフォールディングの効率が向上することがわかった。
【実施例】
【0048】
[実施例3]
本発明のリフォールディング方法により、リフォールディングの効率が改善し、VNARの収率が改善されることを確認し、またリフォールディング後の抗Venus VNARがVenusと結合することを確認した。
【実施例】
【0049】
VNARのリフォールディングをより正確に評価するため、本実施例ではタグを除去したVNARを調製した。前述のpET-30a-VNAR-GS linker-AGIA-HisプラスミドからインバースPCRを用いてタグ部分を削除した(pET-30a-VNAR clone 11、および clone 39)。また、VNAR clone 25をpET-30a(+)ベクターに挿入したプラスミドを作製した。そして、前記ベクターを、ヒートショック法により、大腸菌(BL21(DE3))に導入し、各VNARを発現する形質転換体を得た。
【実施例】
【0050】
VNAR clone 11のアミノ酸配列(配列番号5)
MAAYVDQTPRMATKETGESLTINCVLRDTSYGLCATSWFRKNPGSTDWERITIGGRYVESVNKGSNSFSLQIKDLTVEDSVTFYCKARDGVQGILGVCDTAATGYHDGAGTVLTVNSGLTPPVISLFSETDELRANGFTSA
【実施例】
【0051】
VNAR clone 11をコードする塩基配列(配列番号6、終止コドン含)
5'-ATGGCTGCATATGTCGATCAAACACCACGAATGGCAACTAAAGAAACAGGCGAATCTCTGACAATCAACTGCGTCCTAAGGGATACTAGCTATGGCTTGTGCGCAACAAGCTGGTTTCGGAAAAATCCTGGTTCAACAGATTGGGAACGCATCACCATTGGCGGCCGATATGTTGAATCAGTCAACAAGGGAAGCAACTCGTTTTCTCTGCAAATCAAGGACCTAACAGTTGAAGACAGTGTCACATTTTACTGCAAAGCTCGAGATGGGGTACAGGGGATTCTGGGTGTGTGTGATACAGCAGCTACCGGCTACCATGATGGGGCTGGCACCGTGCTGACTGTGAATTCTGGACTGACTCCCCCAGTCATCAGTCTCTTCTCTGAAACTGATGAGTTGAGAGCAAACGGGTTCACTAGTGCATAG-3'
【実施例】
【0052】
VNAR clone 25のアミノ酸配列(配列番号7)
MAAYVDQTPRMATKETGESLTINCVLRDTRYGLCATSWFRKNPGSTDWERITIGGRYVESVNKGSNSFSLQIKDLIVEDSVTFYCKAGVYLSAVMQRCYYHDGAGTVLTVNSGLTPPVISLFSETDELRANGFTSA
【実施例】
【0053】
VNAR clone 25をコードする塩基配列(配列番号8、終止コドン含)
5'-ATGGCTGCATATGTCGATCAAACACCACGAATGGCAACTAAAGAAACAGGCGAATCTCTGACAATCAACTGCGTCCTAAGGGATACTAGGTACGGCTTGTGCGCAACAAGCTGGTTTCGGAAAAATCCTGGTTCAACAGATTGGGAACGCATCACCATTGGCGGCCGATATGTTGAATCAGTCAACAAGGGAAGCAACTCGTTTTCTCTGCAAATCAAGGACCTAATAGTTGAAGACAGTGTCACATTTTACTGCAAAGCCGGCGTATATCTGAGTGCTGTGATGCAGCGTTGTTACTACCATGATGGGGCTGGCACCGTGCTGACTGTGAATTCTGGACTGACTCCCCCAGTCATCAGTCTCTTCTCTGAAACTGATGAGTTGAGAGCAAACGGGTTCACTAGTGCATAG-3'
【実施例】
【0054】
VNAR clone 39のアミノ酸配列(配列番号9)
MAAHVDQTPRMATKETGESLTINCVLRDTSCGLYATSWFRKNPGSTDWERITIGGRYVESVNKGSNSFSLQIKDLTVEDSVTFYCKARDARTPGSVGCSYRDRGYHDGAGTVLTVNSGLTPPVISLFSETDELRANGFTSA
【実施例】
【0055】
VNAR clone 39をコードする塩基配列(配列番号10、終止コドン含)
5'-ATGGCTGCACATGTCGATCAAACACCACGAATGGCAACTAAAGAAACAGGCGAATCTCTGACAATCAACTGCGTCCTAAGGGATACTAGCTGTGGCTTGTACGCAACAAGCTGGTTTCGGAAAAATCCTGGTTCAACAGATTGGGAACGCATCACCATTGGCGGCCGATATGTTGAATCAGTCAACAAGGGAAGCAACTCGTTTTCTCTGCAAATCAAGGACCTAACAGTTGAAGACAGTGTCACATTTTACTGCAAAGCTCGAGATGCCCGTACCCCGGGCAGTGTGGGATGCAGCTACAGGGATCGGGGCTACCATGATGGGGCTGGCACCGTGCTGACTGTGAATTCTGGACTGACTCCCCCAGTCATCAGTCTCTTCTCTGAAACTGATGAGTTGAGAGCAAACGGGTTCACTAGTGCATAG-3'
【実施例】
【0056】
(1)サンプルの調製
タグを含むVNAR clone 11を含む封入体およびVNAR clone 39を含む封入体に代えて、タグを含まないVNAR clone 11を含む封入体、VNAR clone 25を含む封入体、VNAR clone 39を含む封入体を用いた以外は、前記実施例1(5)と同様にして、加圧処理後、上清を回収したサンプルであるclone 11、clone 25およびclone 39を得た。得られたclone 11、clone 25およびclone 39のタンパク質濃度を、前記実施例1(4)と同様にして測定し、大腸菌培養液1Lあたりの収量を算出した。その結果、大腸菌培養液1Lあたりの収量は、clone 11が116mg、clone 25が108mg、clone 39が210mgであった。一般的に、変性剤を用いてリフォールディングした場合の大腸菌培養液1Lあたりの収量は、最大で100mg程度である。このため、本発明のリフォールディング方法によれば、より高い収率でVNARを回収できることがわかった。
【実施例】
【0057】
(2)SDS-PAGE
clone 11、clone 25およびclone 39を発現する大腸菌について、ソニケーション直後の可溶性画分(S)と、遠心後の不溶性画分(沈殿物、P)と、加圧処理および遠心後の可溶性画分(R)をSDS-PAGEに供し、バンドパターンを確認した。これらの結果を図3に示す。
【実施例】
【0058】
図3は、SDS-PAGEの結果を示す写真である。図3において、各レーンは、左から、分子量マーカー(M)、clone 11のソニケーション直後の可溶性画分(S)、不溶性画分未処理サンプル(P)および加圧処理サンプル(R)、clone 25の(S)、(P)および(R)、clone 39の(S)、(P)および(R)を示す。図3において矢印で示すように、いずれのクローンも、加圧処理サンプルのレーンにシングルバンドが確認され、均質にリフォールディングされたVNARが得られたことを確認した。
【実施例】
【0059】
(3)ゲル濾過クロマトグラフィー
各サンプルの可溶性画分(R)に対し、同モル量のVenusを添加し、Venus-VNAR複合体を形成した。前記各複合体を、下記条件のゲルろ過クロマトグラフィーに供し、ピーク画分(図4左側のグラフにおける、破線で示した部分)を回収した。
サンプル:Venus-VNAR複合体(20 mmol/L Tris-HCl, pH 8.0)
使用機器:M150システム(Barofold社製)
カラム:Superdex 75 HR(24 mL, GE Healthcare)
移動相:20mmol/L Tris-HCl, pH 8.0, 150 mmol/L NaCl
流速:0.5 mL/min
送液条件:1.2 CV
検出器:AKTA purifier(検出波長:280nm)
【実施例】
【0060】
(4)SDS-PAGE
280nmの吸光における各ピーク画分(第14~23画分)について、SDS-PAGEを行った。結果を図4に示す。
【実施例】
【0061】
図4(A)~(C)は、それぞれclone 11、clone 25およびclone 39の結果を示すグラフおよび写真である。図4において、左側のグラフは、ゲル濾過クロマトグラフィーの結果を示すグラフであり、右側の写真は、SDS-PAGEの結果を示す。図4右側の写真において、左端のレーンが、分子量マーカ(M)であり、その他の各レーンは、ゲル濾過クロマトグラフィーにおけるピーク画分(第14~23画分)と、その溶出前後の画分である。図4に示すように、各クローンにおいて、280nmの吸光におけるピーク画分では、Venus-VNAR複合体の形成が確認できた。
【実施例】
【0062】
以上のことから、本発明のリフォールディング方法により、リフォールディングの効率が改善し、VNARの収率が改善されることがわかった。また、リフォールディング後の抗Venus VNARがVenusと結合することがわかった。
【実施例】
【0063】
[実施例4]
異なる液体を用いた場合においても、本発明のリフォールディング方法により、VNARをリフォールディングできることを確認した。
【実施例】
【0064】
VNAR clone 11を含む封入体、VNAR clone 25を含む封入体、およびVNAR clone 39を含む封入体を、そのタンパク質の終濃度が、0.5mg/mLとなるように、超純水(MilliQ水)または50mmol/L Tris-HCl(pH8.0)に懸濁した以外は、実施例1(5)と同様にして、加圧処理を行なった。そして、加圧処理の前後のサンプルをSDS-PAGEに供し、バンドパターンを確認した。これらの結果を図5に示す。
【実施例】
【0065】
図5は、SDS-PAGEの結果を示す写真である。図5(A)は、50mmol/L Tris-HCl(pH8.0)に懸濁して処理した結果の写真であり、(B)は、MilliQ水に懸濁して処理した結果の写真である。図5において、各レーンは、左から、分子量マーカー(M)、clone 11の未処理サンプル(前)および加圧処理サンプル(後)、clone 25の未処理サンプル(前)および加圧処理サンプル(後)、clone 39の加圧処理サンプル(前)および処理サンプル(後)の結果を示す。図5に示すように、本発明のリフォールディング方法により、液体がMilliQ水であっても、緩衝液の場合と同様に、シングルバンドが確認され、均質にリフォールディングしたVNARが得られることが確認できた。
【実施例】
【0066】
clone 11について、以下の条件でイオン交換クロマトグラフィーに供し、各画分を回収した。1画分の回収量は、2mLとした。そして、第13~17、および32または40画分について、SDS-PAGEに供した。これらの結果を図6に示す。
【実施例】
【0067】
サンプル:加圧処理後の上清(20 mmol/L Tris-HCl, pH 8.0)
使用機器:AKTA purifier(GE Healthcare社製)
カラム: Resource Q(6 mL, GE Healthcare)
移動相:
移動相A:20 mmol/L Tris-HCl (pH 8.0)
移動相B:20 mmol/L Tris-HCl (pH 8.0), 1 mol/L NaCl
流速:6 mL/min
検出器:AKTA purifier(検出波長:280nmおよび260nm)
送液条件:
送液開始後、4カラム体積(CV)まで、移動相A 100%とし、その後、20CVの間に、移動相Aを100%から0%へ、移動相Bを0%から100%へ連続的に変化させた。その後、2CVの間、移動相B 100%とし、さらに、1CVの間、移動相A 100%とした。
【実施例】
【0068】
図6は、イオン交換クロマトグラフの結果を示すグラフおよびその一部の画分のSDS-PAGEの結果を示す写真である。図6(A)は、50mmol/L Tris-HCl(pH8.0)に懸濁して処理した結果を示し、(B)は、MilliQ水に懸濁して処理した結果を示す。図6において、上段のグラフは、イオン交換クロマトグラフィーの結果を示すグラフであり、下段の写真は、SDS-PAGEの結果を示す。図6の下段の写真において、左端のレーンが、分子量マーカ(M)であり、マーカーの隣のレーンが、イオン交換クロマトグラフィー前の加圧処理後のサンプル(S)であり、その他の各レーンは、イオン交換クロマトグラフィー後の画分(第13~17、および32または40画分)である。図6に示すように、本発明のリフォールディング方法により、液体がMilliQ水である場合、ピークがシャープであり、その他の領域におけるタンパク質のピークが見られず、緩衝液の場合と比較して、より均一な分子量のVNARが得られることが分かった。
【実施例】
【0069】
以上のことから、異なる液体を用いた場合においても、本発明のリフォールディング方法により、VNARをリフォールディングできることがわかった。また、前記液体として、水を用いることにより、より均質性の高いVNARをリフォールディングできることがわかった。
【実施例】
【0070】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【実施例】
【0071】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体について、液体存在下で加圧することにより、VNARをリフォールディングさせるリフォールディング工程を含む、VNARのリフォールディング方法。
(付記2)
前記リフォールディング工程では、前記加圧後、圧力を維持し、
前記圧力の維持時間は、0分~50時間である、付記1記載のリフォールディング方法。
(付記3)
前記リフォールディング工程では、前記加圧、圧力の維持、および減圧を実施し、
前記減圧において、連続的に減圧する、付記1または2記載のリフォールディング方法。
(付記4)
前記リフォールディング工程の時間は、10分~52時間である、付記1から3のいずれかに記載のリフォールディング方法。
(付記5)
前記加圧後の圧力は、10~500MPaである、付記1から4のいずれかに記載のリフォールディング方法。
(付記6)
大腸菌にVNARを発現させる発現工程と、
VNAR発現大腸菌からVNARを含む封入体を回収する回収工程とを含む、付記1から5のいずれかに記載のリフォールディング方法。
(付記7)
前記回収工程は、
前記VNAR発現大腸菌を破砕し、破砕液を調製する破砕工程と、
前記破砕液を遠心し、前記封入体を含む沈殿物を回収する沈殿物回収工程とを含む、付記6記載のリフォールディング方法。
(付記8)
前記沈殿物に、液体を積層し、封入体調製液を調製する調製工程を含み、
前記リフォールディング工程では、前記封入体調製液について、加圧することにより、VNARをリフォールディングさせる、付記7記載のリフォールディング方法。
(付記9)
前記沈殿物を洗浄する洗浄工程を含む、付記7または8記載のリフォールディング方法。
(付記10)
前記液体は、水である、付記1から9のいずれか一項に記載のリフォールディング方法。
(付記11)
前記リフォールディング工程を、圧力容器内で実施する、付記1から10のいずれかに記載のリフォールディング方法。
(付記12)
前記圧力容器の容積は、5L未満である、付記11記載のリフォールディング方法。
(付記13)
サメ由来一本鎖抗体(VNAR)を含む封入体からリフォールディングされたVNARを製造する製造工程を含み、
前記製造工程は、付記1から12のいずれかに記載のVNARのリフォールディング方法により実施される、VNARの製造方法。
(付記14)
付記13に記載のサメ由来一本鎖抗体(VNAR)の製造方法で得られる、VNAR。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明によれば、VNARのリフォールディングの効率および収率を改善できる。このため、本発明は、例えば、臨床分野、生化学分野、医薬分野等において極めて有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5